ARR 0ドルから700億ドルへ:AWSのプロフィール

2002年、アマゾンはクラウド・インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスというサイドビジネスを立ち上げました。それから20年後、アマゾンの年間売上は700億ドルを超えました。巨大なビジネスです。実際、AWSの多額の利益はアマゾン全体の50%以上を占めています。

アマゾンの至宝です。偉大なビジネスがひしめくコングロマリットの中で、最高の存在です。AWSの最初のリーダーの一人であるアンディ・ジャッシーは、今やアマゾンのCEOになりました。

だから、AWSは有名な話だと思うでしょう。そうではありません。この記事を書いている間に雑談した私の家族のほとんどは、AWSの名前すら聞いたことがありませんでした。

それに比べ、コカ・コーラの2021年の売上高は約400億ドルでした。AWSはコカ・コーラの2倍近い売上を達成する勢いですが、その陰に隠れています。売上40億ドルの小さなZoomでさえ、もっとよく知られています。

さらに、AWSの歴史について書かれていることは、滑稽なほど間違っています。テッククランチをはじめとするほとんどの主要メディアは、AWSはアンディ・ジャッシーの「インターネットOS」構想の後、2003年に始まったと書いており、サービス自体は2006年に開始されたとしています。

どちらの 「事実」も完全に間違っています。Wayback Machineのようなサイトやキャッシュのような技術に助けられたインターネットのパンくずは、決して消えることはありません。AWSが最初にローンチしたのは2002年で、コリン・ブライヤーが率いていました。

年間売上高700億ドルを超えるビジネスにとって、会社の明確で正しい歴史がないのは不可解です。

しかし、だからこそ私はProduct Growthニュースレターを書き、今日最も重要なテクノロジー・ビジネスのプロダクトストーリーを伝えているのです。 ストライプペイプルコインベースカヤックで行ったように、AWSが業界を征服するために使用したプロダクトビジョン、戦略、ロードマップについて記録を正すつもりです。

今週は特に、ルチンとトップ・オブ・ザ・ラインのチームとのコラボレーションを紹介できることに興奮しています。彼らは、プロダクト主導の成長に関する最高のニュースレターを書いており、自身もセコイアから1500万ドルのシリーズAを調達したばかりです。AWSを分析するのにこれ以上のメンバーはいません。

我々はこの4ヶ月間、5,000億ドル以上の企業価値を持つであろうこの巨大企業の本当の歴史とプロダクトに関する教訓を得るために、深く掘り下げてきました。それでは、本題に入りましょう。


この記事は、「From 0 to $70B ARR: The AWS Profile」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

  1. 教訓 1:強みをプロダクト化する
  2. 教訓 2:逆算せよ
  3. 教訓 3:レゴブロックを作る
  4. 教訓 4:使用量に応じた価格
  5. 教訓 5:積極的に長期的に考える
  6. 教訓 6:顧客と深く付き合う
  7. 教訓 7:理想の顧客のために構築する
  8. 教訓 8:新プロダクトのフライホイールを作る
  9. 教訓 9:顧客のために成功を定義する
  10. 教訓 10:政府から必要とされるほど優秀になる
  11. 要点

著者:Aakash Gupta
翻訳者:渡辺圭祐


教訓 1:強みをプロダクト化する

1998年、アマゾンはまだ若い会社でした。その4年前にスタートしたアマゾンは、飛躍的な成長を遂げました。しかし、そのような成長の渦の中で、同社は常に次の1年の計画を立てていました。先のことを考えるのは現実的ではありませんでした。

その結果、コードベースはほとんど混乱していました。ビデオストリーミングのような新機能を追加するためのコードベースの変更には、本来必要な時間よりもはるかに長い時間がかかりました。同社はエンジニアを増員していましたが、物事をより速く構築することはできませんでした。

このようなフラストレーションを痛感した事業部門のひとつが、アマゾンの新しいeコマースサービス(Merchant.comとして知られる予定)でした。サイト上のあらゆるものが単一のモノリスに構築されているため、開発をサポートするには無理がありました。

その結果、「分散コンピューティング宣言」という社内エンジニアリング文書が作成され、広く回覧されました。それは伝説となりました。そしてイニシアティブは勢いを増しました。APIはMerchant.comの開発環境をよりスムーズにするために機能しました。APIはスピードと難易度の両方の問題を解決するのに役立ちました。

具体的には、サービス・アーキテクチャは3つの重要な進化を遂げました:

  1. マイクロサービス・アーキテクチャ・パターン
  2. 1対1のデータベースとマイクロサービスのマッピング
  3. 各チームが独立してリリースできるようにした 

これらの進化は非常に劇的で価値あるものであったため、2000年までには会社全体がこれに取り組むようになりました。アマゾンは、十分に文書化された一連のAPIを備えた「サービス企業」に意識的にシフトしました。

アマゾンはこれらのAPIアクセスシステムを無駄なく効率的に構築しました。倹約を中核的価値観とするベゾスのリーダーシップの下で、これらの社内サービスは、代替オプションと比較してかなりのコスト優位性を持って構築されました。

社内チームのためにこのような優れたオプションを開発することに成功した同社は、外部マーケットをテストすることになりました。2002年3月、コリン・ブライヤーに率いられ、同社は最初のAWSプロダクトをリリースしました。これは、アフィリエイト・マーケターをターゲットにしたものでした。SDK(ソフトウェア開発キット)は、アマゾンのプロダクトカタログに関する広範なデータを照会することを可能にしました。

このプロダクトはすぐに成功を収めました。アフィリエイターだけでなく、開発者からの関心もすぐに集まりました。

この機能をリリースして文字通り数時間後、私たちは何か大きなものを掴み、私たちの実験が私たちの期待をはるかに超えるものになることを知りました。

コリン・ブライヤー

世界中の開発者が、新しいウェブサイトやアプリケーションを開発するためにウェブサービスを利用していました。あるサイトでは、カバーアートに関するクイズが出題されました。また、気まぐれなbaconizer.comは、アマゾンのカタログにある2つのプロダクトのつながりをマッピングしました。

AWSの最初の機能は、メディアサイト向けのリッチなサービスとなりました。

教訓 2:逆算せよ

アフィリエイト・サービスはヒットしましたが、そのプロダクトはすでに提供されていません。それはAWSの始まりの機能ではあったが、AWSをグロースさせる機能ではありませんでした。そのために、アマゾンのリーダーシップは、ベゾスの哲学の重要な信条に立ち戻る必要がありました。

逆算のプロセスは、基本的な洞察から始まります。顧客は常にそれ以上のものを求めています。ジェフが言うように、「顧客は美しく、素晴らしく、不満足です。」

逆算は、この不満の震源地から発せられます。まず、顧客の不満の場所を明確に定義します。次に、チームは顧客のために逆算して発明する。最後に、3つの核となる成果物を作成する: 

  1. プレスリリース – ペインポイントを解決するプロダクトを発表する。プロダクトが本当に売れるように説得力を持つまで、繰り返し作成する。
  2. FAQ文書 – PRリリースに付随する補足文書で、社内関係者や潜在顧客からの予測可能な質問に答える。
  3. カスタマーエクスペリエンスを視覚的に表現することで、イノベーションの終着点を明確にする。

AWSチームはこれら3つをリアルタイムで完成させました。その年の7月、チームはアマゾンの有名なプレスリリースの1つをリリースしました。これは、私たち外部のオブザーバーが見ることのできる、貴重なプロダクトの成果物のひとつです。

ソース:アマゾンプレスアーカイブ

このプレスリリースの注目すべき点は、最初の2段落に、今後20年以上にわたるAWSのビジョンが凝縮されていることです:

本日、Amazon.com(Nasdaq: AMZN)は、開発者とウェブサイト所有者のために特別にデザインされた革新的なウェブソリューションとサービスを作成するためのプラットフォームである「Amazon.com Web Services」の最初のバージョンを開始しました。

開発者は、Amazon.com Web Services (www.amazon.com/webservices) を利用することで、Amazon.comのユニークな機能の数々をWebサイトに組み込むことができるアプリケーションやツールを無料で構築することができます

プレスリリース

2002年当時、AWSチームはすでに逆算して動いていた証拠です。アフィリエイト機能は、開発者が自分のウェブサイトにアマゾンのユニークな機能を組み込むための、将来のプラットフォームの「最初のバージョン」に過ぎないと認識していたのです。

逆算は一見シンプルですが、明確さを強制し、単に作るために作ること(「ビルドトラップ」)を防ぐのに役立ちます。AWSにとって、チームの視野を実際の顧客のニーズ解決に絞ることができました。Inc. 誌は、逆算を「アマゾンの秘密兵器」とまで呼んでいます

このワーキング・バックワード・プロセスの結果、初期のAWSプロダクトは2002年から2003年にかけて利用が伸び続け、同様のサービスに対するマーケットの需要が実証されました。アマゾン幹部は、分散コンピューティング・マニフェストとAWSの両方の成功に気づきました。

2003年にジェフ・ベゾスの自宅で行われたリトリートで、経営陣は自社のコアコンピタンスを特定するための演習を行いました。サービスとしてのインフラが特に高く評価されました。彼らは、アマゾンが信頼性が高く、スケーラブルで低コストのインフラを運用することに特に長けていることに気づきました。

そこで彼らは、本格的なAWSイニシアチブを構築するために、アフィリエイト機能にさらに投資することを決定しました。

教訓 3:レゴブロックを作る

本格的なAWSへの投資の一環として、ジェフは最も信頼できる幹部の一人であるアンディ・ジャッシーをプロジェクトに投入しました。アンディはこの仕事に慣れるにつれて、コンピュート、ストレージ、データベースにおける会社の強みをピンポイントで指摘しました。彼はまた、これらがウェブスケール・アプリケーションの3つの重要なビルディング・ブロックであると認識しました。

そのビジョンを明確にするために、彼はこれを「インターネットのためのオペレーティング・システム(OS)」と呼び始めました。これがAWSのプロダクトビジョンとなりました。ジャッシーは、ビジネスとエンジニアリングの混成チームを結成し、イニシアチブを開始しました。

2003年の間、チームの主な目的のひとつは、既存のユーザーから学ぶことでした。コリン・ブライヤーは、AWSの最初のローンチ前のこの時期を、エンジニアがコードを書かない実質18ヶ月間だったと表現しました

その代わり、チームの目標はユーザーのニーズを深く理解することでした。アマゾンはデータのユーザーを対象としたカンファレンスを開催しました。8人が集まりました。しかし、そのうちの1人が、AWSのもう1人の重要な初期採用者となります: 彼は現在もチーフ・エバンジェリストとして同社に在籍しています。

ジェフはAWSのニュースブログを立ち上げ、ほぼ毎日記事を書き続けています。彼は、アマゾン S3やAWSの機能をレゴブロックのように拡張する何千もの記事を書いてきました。これらの投稿は、社内外で、モダンなインターネットアプリケーションのためのビルディングブロックとしてのAWS機能の共通理解を構築するのに役立っています。

ソース:シアトル・タイムズ

ユーザーリサーチと、ジャッシーが「10人の優秀な技術者と10人の優秀なプロダクトマネージャー」と表現するような基本的な技術的洞察により、チームは初期のプロダクトロードマップをレゴブロックで作成しました。

一方、2004年半ばまでに、5万人の開発者がオリジナルのアフィリエイト向けアマゾンSDKをダウンロードしました。100以上のアプリケーションが構築されました

チームはSDKに続いて2つのベータサービスをリリースし、ウェブOSのビジョンを達成し始めました: アレクサ・ウェブ・インフォメーション・サービス(AWIS)とシンプル・キュー・サービス(SQS)です。AWISはプロダクトカタログの自然な進化でした。現在は終了しています。

SQSは現在も存在しています。SQSは、開発者がメッセージング・ミドルウェアを保守する必要なく、マイクロサービスをデカップリングしてスケールできるようにします。インターネットのOSレイヤーを構築する上で重要な役割を果たしました。

教訓 4:使用量に応じた価格

AWSのプロダクトは、2005年まで、ほとんどの部分が無料のベータ機能でした。その年の間に、チームは次のユーザーケースを理解することに集中し、それらの機能をベータ版から本格的なプロダクトへと卒業させました。

ウェブOS戦略の2つの至宝であるコンピュートとストレージは、秘密保持契約の下で顧客に提供されました。ベータ・テスターはこの2つを気に入りました。そこでジャッシーとチームは、優れたプロダクトと優れた価格モデルを組み合わせる必要があると考えました。

彼らは最終的に、使用量に基づいた価格を設定することに決めました。これが基本的な洞察となりました。使用量ベースで低価格のサービスを提供することで、AWSは最新のガレージ・スタートアップからフォーチュン500の大企業まで、あらゆる人に対応できるようになりました。

利用料金は最も民主的な価格モデルの一つでした。これは、最近ネットフリックスがユーザーに対して未使用のサブスクリプションをキャンセルするような顧客フレンドリーな動きを思い起こさせます。AWSを使い忘れても、請求書が届くことはありません。AWSから価値を見出せないのであれば、利用をやめればいいのです。

この価格モデルを最初に採用した象徴的な機能は、アマゾンのストレージプロダクトでした。2006年3月、アマゾンはシンプル・ストレージ・サービス(S3)をリリースしました。事実上無限に拡張可能で、安価で、オンラインで利用可能という、アマゾンの開発者が長年にわたって利用してきたタイプのストレージを、あらゆる開発者が利用できるようにするものでした。これは、ジャッシーのウェブOSに向けた第2のステップでした。

使用量に基づく価格設定について特に注目すべき点は、このサービスがスタートアップにとっていかに魅力的であったかということです。スタートアップの開発者がS3の機能をどのように説明したかは、傾聴に値します。S3は他のどのサービスよりもはるかに優れていました。

私たちがアクセスできるものには、S3が提供できるような機能に少しでも似たものは何もありませんでした。誰かがキャンディストアの鍵をくれたような気がしました。

2006年、スタートアップFilmmakerLiveでS3を利用したドン・アルバレス氏

大企業であれば、S3よりも安価なオンプレミスのストレージソリューションを社内で構築できることも多いです。しかし、スタートアップにとっては、データセンターを構築するための初期固定費は高すぎました。つまり、エアビーアンドビー、ピンタレスト、ストライプのような世代のスタートアップにとって、S3は明らかに優れた選択肢だったのです。

その年の後半、アマゾンはウェブOSの次に重要なコンポーネントであるコンピートを発表しました。Elastic Compute Cloud(EC2)は、S3からわずか4ヶ月後の8月にリリースされました。S3がどんな開発者にもアマゾンスタイルのストレージを提供したのに対し、EC2は事実上無限にスケーラブルで、安価で、オンラインで利用可能なコンピュートを提供しました。

基本的に、EC2アマゾンは、開発者がデータセンターで仮想コンピュータを借りることを可能にしました。これらのコンピューターで、開発者は自分のアプリケーションを実行することができます。1時間10セントで、「ウェブスケール」のアプリケーションを実行するためにコンピュータをスケールアップする簡単で比較的安価な方法でした。

オンラインで利用できることが重要で、そのデータは信頼性が高く、安全でもありました。当時、スタートアップがアマゾンと同じサービスを作ることはできたかもしれませんが、アマゾンの名前に支えられていなかったため、それほど成功しなかったでしょう。

S3と同様、EC2もほぼ瞬時にプロダクト・マーケット・フィットを証明しました。2つのプロダクトの成功の結果、同社は2006年に2,100万ドルの収益を計上することになりました。同社が長年にわたり多くの新プロダクトをリリースしてきたにもかかわらず、コンピュートとストレージは、その後10年以上にわたってアマゾンの収益の大半を占めることになりました。

ソース:Next Platform

教訓 5:積極的に長期的に考える

EC2とS3によって、アマゾンはサービスとしてのクラウド・インフラストラクチャマーケットを切り開きました。現金が流れ込んできました。アナリストは経営陣に営業利益率について質問攻めにしました。経営幹部は、反論しました。しかし社内では、アマゾンの利益率が高いことを知っていました。アマゾンはそのマージンをビジネスに再投資し続けました。

その一例が地理的な拡大でした。米国でEC2のフル・パブリック・ベータを開始したわずか数週間後、アマゾンはヨーロッパを追加しました。もしスタートアップが最初の数週間でヨーロッパに進出したとしましょう。失敗するように仕組まれていると笑うでしょう。しかし、AWSはそれを実行しました。長期的な視野に立ち、大きな投資をしました。そして成功しました。

これは長期的思考ではありません。これは積極的な長期的思考でした。次の数四半期のことだけを考えていたわけではありません。数十年先を見据えた投資だったのです。

アマゾンは非常に積極的に動くことを強く信じている。

クリス・ピンカム、2000年代前半のアマゾン・インフラストラクチャーのエンジニアリング責任者

その数カ月後、アマゾンは地理的な拡大に続き、またもや爆発的なプロダクト投入を行いました。コンピュートとストレージに続く、ウェブOSの次のコンポーネントはデータベースでした。アマゾンは、EC2とS3の上にHadoop(ハドゥープ)テクノロジーを使用したアマゾン SimpleDBを発表しました。

2006年から2007年にかけて、チームはウェブOSの重要な構成要素であると決定された3つのプロダクト、すなわちコンピュート、ストレージ、データベースのすべてを発表しました。アマゾンがこれほど短期間で幅広いサービスを立ち上げたのも、長期的な視野に立った積極的な姿勢の賜物です。

同社はまた、長期的な視野に立った価格設定も行いました。競合他社を「シャットアウト」するため、マージンは極限まで薄く抑えられていました。

2007年までには、開発者のウェブサイトはすでにAWSを恐ろしい「テッククランチ問題」の解決策として宣伝していました。あるスタートアップは、テッククランチに取り上げられると、100倍、あるいは1000倍のトラフィック負荷を経験することになります。しかし、オンプレミスのコンピュートとストレージ・システムでは、そのトラフィックをサポートすることができませんでした。サイトがクラッシュするのは、まさに訪問者が最も多いチームでした。

その結果、2008年にグーグルがAWSの真の競合となる最初のプロダクトをリリースした時、その評判はそれほど高くありませんでした。グーグルApp Engineの最初のプロダクトには、インフラだけでなく、ユーザー認証やメール送信のためのグーグルAPIのセットや、フル機能のローカル開発環境が含まれていました

しかし、これらの機能はAWSの勢いを止めることはできませんでした。App Engineは1日の使用量の上限が低かったのです。ウェブスケールには対応できていませんでした。ゲームに2年近く遅れたことは、その結果を招きました。アマゾンは2008年に限定的なサービスを提供したグーグルを超えていました。その年、AWSはベータ版サービスから本サービスへの移行に忙殺されました。

グーグル・クラウドがベータサービスを開始したのと同じ年に、EC2はサービス・レベル・アグリーメント(SLA)付きのパブリック・リリースを開始しました。アマゾンは、コンピュート・サービスがいつでも99.95%のリクエストに対応できるという驚くべき約束をしました。これにより顧客は、最大規模のアプリケーションであってもAWS上で確実に実行できるという確信を得ました。App Engineがスタートアップをターゲットにしている間に、EC2は中堅企業を経て企業へと移行していきました。

2009年までに、この戦略は見事に成功しました。AWSがサクセスストーリーになることは明らかでした。ジェフは年次書簡の中で、このビジネスラインを大きく取り上げています:

私たちはアマゾン・ウェブ・サービスに心から投資しています。

ジェフ・ベゾス

しかし、AWSはこの事業から利益を搾り取るのではなく、現金を流し続けました。これは、いくつかの注目すべきプロダクトの発表で明らかになりました。

コンピュート・サービスを拡張するために、アマゾンは処理ツールをリリースしました。4月にはElastic MapReduce(EMR)を発表しました。EMRは膨大なデータを素早く処理することを容易にしました。そして5月には、コンピュートのスケーリングを容易にするプロダクト群をリリースしました。Elastic Load Balancing(ELB)、Auto Scaling、CloudWatchは、開発者が急成長や「テッククランチ問題」をよりうまく管理するのに役立ちました。

アマゾンはストレージ事業も軽視していませんでした。同月、アマゾンはImport/Expertサービスもリリースしました。これにより、ユーザーはS3にデータを取り込みやすくなりました。

アマゾンはコンピュートとストレージの大々的な立ち上げに続き、第3の事業としてネットワーキングを開始しました。8月、アマゾンはVirtual Private Cloud(VPC)を発表しました。VPCによって、顧客はEC2インスタンスを独自の分離されたネットワークに立ち上げることができます。これは劇的なヒットとなりました。

このようなプロダクト発表が相次ぐ中、2010年2月、ついにクラウドインフラマーケットにおける第3のビッグプレーヤーが登場しました: Microsoft Azureです。 その時点で、AWSはすでに長い間先行していました。アジアに進出していたのです。なぜなら、AWSは積極的に長期的な視点に立っていたからです。

教訓 6:顧客と深く付き合う

グーグルやマイクロソフトのクラウド・チームが初期オファリングの準備に忙殺されている間、アマゾンは2010年に顧客のニーズについてより深く学ぶことに使いました。チームは、特に2つの重要な顧客との実践的な統合をサポートしました: ネットフリックス(今日の時価総額:850億ドル)とオートデスク(今日の時価総額:400億ドル)です。

AWSは、ネットフリックスとオートデスクのすべてのトラフィックをAWSに移行する方法を学ぶために働きました。それは、ネットフリックスとオートデスクのエンジニアリングチームと密接に関わるプロセスでした。これは、アマゾンのリーダーシップ原則である「カスタマー・オブセッション」の典型的な例でした。

深く付き合うことが功を奏しました。2010年末までに、ネットフリックスのトラフィックの大半はAWSによってサポートされるようになりました。当時のエンジニアリング担当副社長はこう書いています

我々はクラウドコンピューティングが未来だと考えています。

ネットフリックス エンジニアリング担当副社長 ジョン・チャンクッティ氏

AWSは、クラウドが未来であることを世界に証明することができました。その成功を生かすため、AWSはユースケースを広げました。

2010年には、Simple Notification Service(前述のグーグルメールAPIに対抗するため)、CloudFormation(宣言型Infrastructure as Codeツールの初期の例)、Route 53(API経由でアクセス可能なドメインネームシステム)など、一連のプロダクトが発表されました。

AWSがどのようにして何度も何度も正しい機能を選択したのかという質問に対して、ジャッシー氏はチームがどのようにプロダクトロードマップを構築したかを説明しました。90%は顧客と深く付き合うことから、10%は顧客に代わって発明することから。

多くの企業が顧客重視を謳っていますが、実際にそれを実践している企業はほとんどありません。私たちのロードマップと開発の90%は、顧客が重要だと述べることに基づいています。残りの10%は、顧客が言おうとしていることに耳を傾け、その間にある意味を読み取り、彼らのために革新しようとしています。

アンディ・ジャッシー

急成長しているウェブ2.0企業と多くの時間を過ごすことで、アマゾンは彼らのニーズに合ったプロダクトロードマップを作成することができました。

このことはアナリストの目にも明らかでした。ガートナーがクラウド・インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスとウェブ・ホスティングのマジック・クアドラントを発表したとき、アマゾンはビジョンの完全性という点で最高位にランクされました。

ソース:ガートナー

当時の競合は主にウェブ・ホスティング・プロバイダーで、その多くはサービスとしてのインフラマーケットから撤退しています。AT&T、Rackspace、ベライゾン、これらはテクノロジーのDNAを持たないネットワーク・プロバイダーです。もうクワドラントでは見かけなくなりました。

アマゾンは競争の弱さを心配する代わりに、顧客にこだわることに集中しました。

実際、チームがその年に焦点を当てた3番目の顧客は、自分自身(アマゾンの小売事業)という極めて重要なものでした。信頼性、バックアップ、スケーリングなどです。これらの障害を解決するために機能を追加し、またもや成功しました。2010年末までに、アマゾンリテールはウェブサービスをAWSに完全に移行したと発表しました。

ネットフリックス、オートデスク、アマゾンリテールをAWSに移行した後、チームはセールスマシンのスイッチを入れる自信を得ました。

教訓 7:理想の顧客のために構築する

完全なクラウドSaaSを提供するためのすべてのコンポーネントが整ったことで、アマゾンは2011年から2015年にかけて、一流のセールス実行力をそのプレイブックに加えました。もちろん、同社は急速なペースでプロダクトを発表し続けましたが、この時期に最も注目すべきことは、より大規模な顧客を獲得するために、意図的かつ高価なアウトバウンドセールスを開始したことです。

しかし、ただ万人向けに作ったわけではありません。皆のために作ることは、誰のためにもなりません。

セールスにはICP(理想顧客像)という概念があります。アマゾンの顧客は、どの分野でも2位か3位のプレーヤーでした。彼らは、変革的なITを受け入れる可能性が最も高い人たちでした。 一方、No.1のプレーヤーは、現在のソリューションに自信を持ち、基幹システムの根幹を引きちぎってアマゾンの手に渡すことを避けたいと考えている可能性がはるかに高いのです。

これにより、プロダクトチームと営業チームは、獲得したい3,500の指定アカウントに集中できるようになりました。そのためにAWSは軍隊を配備しました。ジャッシー氏がAWS re:Invent 2016で明らかにしたように、AWSはフィールドセールスとソリューションアーキテクチャチームに数千人を抱えていました。

AWSが営業チームを劇的に強化するようになった理由の1つは、競争でした。2013年までに、AzureはガートナーのInfrastructure as a Serviceにフォーカスした新しいクアドラントに登場しました。右下からスタートしたAzureは、2014年にはAWSのすぐ後ろにまで急浮上し、グーグル・クラウドも登場しました。それ以来、アマゾンが切り開いたマーケットに挑み続けているのが、この2社、そして遠く4番手に続くIBMです。

ソース:アントワーヌ・ラジェ

2012年から2015年にかけて、ガートナーは合計24の新規参入企業を分析しています。これらのプレーヤーが問題に資金を投じる一方で、AWSはすでに大規模な利益を上げていました。

教訓 8:新プロダクトのフライホイールを作る

2013年、VentureBeatは「Amazon’s ‘mountain of margin‘ in cloud services(アマゾンのクラウドサービスにおける「莫大な利益」)」という記事を掲載しました。それによると、同部門の粗利益率は80%を超えていました。

このマージンの多くは、10年前にチームが構想したオリジナルプロダクトの1つであるEC2がもたらしたものです。EC2がこのような多額のマージンを生み出すために用いた手法には、次の2つがあります:

  1. プロダクトを廃止しないこと
  2. 将来の使用に対する予約の割引を顧客に許可すること

どちらもやや直感に反します。ほとんどの企業は古いプロダクトを非推奨とし、メンテナンスの複雑さを軽減しています。しかし、AWSは古いサーバーを大切に扱いました。オフラインにする代わりに、新しいマシンよりも安いコストで顧客に提供したのです。

将来の予約を許可することも、直感に反しますが有用です。クラウドをオンラインにするために必要なハードウェアの量を予測しやすくなるからです。そうすることで、コストをコントロールすることができます。つまり、顧客とAWSの双方にとってメリットがあります。

EC2以外にも、AWSの利益を大きく左右するのがデータ転送です。帯域幅のコストは下がり続けていますが、AWSはデータ転送料金を同じ価格で請求し続けています。

EC2、データ転送、その他の既存プロダクトから得たこの利益はすべて、チャレンジャー・プレーヤーが覇権を握るための新プロダクトに投入されました。2013年、アマゾンはストリーミング・データをリアルタイムで処理するKinesisをリリースしました。これによって、アナリストはデータが起こっているときにそれを見ることができるようになりました。

これは私のような元ゲーミングPMには必須です。フォートナイトのイベントがあったとき、何人のプレイヤーがオンラインになったかを知る必要がありました。このようなデータのニーズは重要ですが、計算コストがかかります。

AWSインフラストラクチャの上に構築されたこの種のアプリケーションは、それ自体で大きな請求書を鳴らし、インフラコストでも大きな請求書を鳴らすという利点があります。

同様に、2014年にAWSはAWS Lambdaでサーバーレスの概念を導入しました。Lambdaを利用する顧客は、EC2コストのほぼ2倍を支払うことになります

これは、「AWS新プロダクトフライホイール」を生み出します。AWSは新プロダクトをリリースし、顧客がより多くのビジネス価値を生み出せるようにします。これにより、AWSのインフラプロダクトに対する需要が継続的に増加し、その結果、同社はさらに多くの新プロダクトの開発資金を確保できます。それぞれの活動が次の活動を生み出します。

フライホイールは、多額の利益を生み出すためにも機能します。規模が大きくなれば、すべてを再投資する必要はありません。2016年までには、AWSはアマゾンの総利益の原動力として十分に重要な存在となり、同社は年次報告書にAWSを記載するようになりました。

それ以来、アマゾンはAWSの驚異的な粗利益率を活用し、アマゾンの他の事業の原資となる営業利益率を高めています。AWSはコストセンターからプロフィットセンターへと変貌を遂げました。700億ドルという驚異的なARRで、営業利益率は約30%であり、さらに増加しています。

教訓 9:顧客のために成功を定義する

過去10年の終わり頃、マーケットにおけるAWSのリードは崩れ始めていました。IBM、グーグル、マイクロソフトなどがクラウド・コンピューティングに大きな賭けをし、それぞれのサービスを強化し始めました。

特にマイクロソフトは、このマーケットに多大な進出を果たしました。実際、マーケットアナリストのCloud Warsは、クラウド収益においてマイクロソフトがアマゾンを上回ると評価しています。

マイクロソフトが2019年に米軍の100億ドル規模のJEDI契約を獲得したことを受けて、AWSは営業人員を倍増すると発表しました。この営業戦略の転換は、戦争の叫びでした。

AWSの営業チームは、プロダクトの営業チームと同様に、顧客の目を通して成功を定義しました。実際、これはOBAM(Outcome-Based Account Management)として広く知られ、公表されている4段階のプロセスとして公式化されています:

  1. 探索:見込み客のデジタル戦略、外部要因、課題、機会に関する広範な調査に基づいて価値仮説を立案する。
  2. 関与:信頼と信用を獲得し、リードの適格性を確認し、最初の価値提案を提供する。顧客の成熟度は、組織構造、調達/法務の仕組みなどに基づいて評価される。
  3. 共感:組織文化、さらには個人的な意図、個人のコミュニケーションスタイルに基づき、各リードにオーダーメイドで適合するものを特定する。この段階は関係構築に重点を置いている。
  4. 支援:AWSリソースの役割と責任、アカウントのバリュープロポジションを具体化する。

OBAMは、プロダクトチームのワーキングベークワーズアプローチに非常に似ています。営業チームが顧客のために成功を定義することにかかっています。

そして、安っぽい名前にもかかわらず、それは非常にうまくいっています。

教訓 10:政府から必要とされるほど優秀になる

JEDI契約を失って以来(現在はキャンセルされている)、AWSは公共部門で驚異的な成長を遂げています。主な契約は以下の通り:

  • 国家安全保障局との100億ドルの契約
  • CIAとの5億ドルの契約
  • NASAとの6500万ドルの契約

AWSは、ITソフトウェア調達の経験を持つ元政府高官を少なくとも66人雇用しています。これにより、AWSは調達プロセスにおいて優位に立つことができます。

元政府調達担当者は、「『提案依頼書』プロセスに関連する官僚主義に精通している」ため、アマゾンの契約獲得に役立っています。相手側にいたことのある人物は、RFP提案がどのように競争的に検討され、分析されるかを正確に知っています。私たちが優位に立てるのはそこです。

ハゼム・エルダクドキー、AWSのシニア・テクニカル・プログラム・マネージャー、元DOJ司法省副最高情報責任者

2021年、エコノミック・タイムズ紙は、「AWSの公共部門ビジネスでは、過去3年間、毎年従業員数が倍増している。AWSは今後数年間、大規模な成長を予測している。」と出版している。

AWSは政府から必要とされるほど優秀な企業となったのです。そして、それは米国政府だけではありません。AWSはオーストラリアからジンバブエまで、世界中の政府と大規模な契約を結んでいます。

要点

ある事業分野で大きな成功を収めた既存のテック企業が、新たな事業分野に進出するのは最近では本当に珍しいことです。アマゾンはAWSでそれを見事に実現しました。まさに新しいビジネスラインを切り開いたのです。アマゾンのプロダクト立ち上げとビジネス成長の真の歴史を学ぶことで、私たちは時代を超越した10のプロダクト成長の教訓を得ることができます。


フォローして最新情報をチェック!

冷酷な優先順位付け

すべての高機能チームは優先順位をつけなければならない。月に一度でも、週に一度でもない。- しかし、厳しく、冷酷に。

優先順位付けとは、最も重要なことを最初に行うことを意味します。プロダクトを作るのであれば、最も顧客価値を生み出すことを最初に行うことを意味します。

私の経験では、優先順位を決定する技術は、その決定が非常に複雑になるため、チームに伝授するのが最も難しいスキルの1つです。通常、優先順位決定はプロダクトマネージャーの中核的な責任ですが、私は、最高のチームとは、全員が同じ目標に向かってマニアックに優先順位を決定し、互いに一貫性のある方法でそれを行っているチームであることを発見しました。

この記事では、優先順位付けについて考えるためのフレームワークについて紹介します。


  1. 優先順位付けのフレームワーク
  2. プロジェクト間の優先順位付け
    1. 1. 投資利益率の見積もり
    2. 2. 制約条件を適用する
  3. プロジェクト内での仕事の優先順位付け
    1. 1. 優先順位決定システムの構築
    2. 2. クオリティとスピードのトレードオフを行うためにプロダクトの仮定を使う
    3. 3. 出荷の時間的価値
  4. 優先順位付けは技術である

この記事は、「Ruthless prioritization」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者:Brandon Chu
翻訳者:渡辺圭祐


優先順位付けのフレームワーク

プロダクトマネジメントにおける優先順位付けは、2つのスコープに分けることができます:

  1. プロジェクト間の優先順位付け – これは、チームが次に行うべきプロジェクトを決定することです。
  2. プロジェクト内での作業の優先順位付け – これは、プロジェクトをいかに効率的に実行するかということです。

これからわかるように、それぞれのスコープに取り組むべき方法は大きく異なります。なぜなら、それぞれが異なるタイプの決断を迫られているからです。

プロジェクト間の優先順位を決めるとき、あなたはひとつの大きな決断を下さなければなりません。私のチームは次に何に投資するのか?これに取り組む正しい方法は、パズルを完成させるようなものです。すべてのピースを見つけるために厳密なプロセスを適用し、すべてのピースがどのように組み合わされるかに答えがあります。

プロジェクトの中で仕事の優先順位をつける場合、同じ決断を何百回も下さなければなりません。これは絶対に行う必要なのか?これに対する正しいアプローチ方法は、プロダクトを作るという無秩序な性質を受け入れ、絶対に必要なことを素早く決断する冷酷な考え方を身につけることです。

プロジェクト間の優先順位付け

パズルを解くための厳密なプロセス:私のチームは次に何に投資するのか?

この質問に答えるには厳密さが必要かもしれませんが、プロセスは複雑ではありません:

  1. 各プロジェクトの投資利益率を見積もる
  2. 3つの制約条件を適用する:依存関係、スケジュール、チーム構成
  3. パズルを組み立てる – ROI + 制約に基づいてプロジェクトを順番に進める

これらのコンセプトのほとんどは読者にとって新しいものではないと思うので、かなり手短に説明します。

1. 投資利益率の見積もり

すべてのプロジェクトの優先順位付けの基本は、投資利益率(ROI)です。ROIは、チームが単位時間内に生み出す顧客価値の量として測定されます。優先順位付けの目標は、時間の経過とともに生み出される顧客価値を最大化する仕事を常に行うことです。

プロジェクト間の優先順位を決めるには、2つのデータを見積もる必要があります:

  1. 生み出される顧客価値の量
  2. プロジェクトの完了までにかかる時間

各プロジェクトについてこのデータを入手したら、それらを単純に比較すれば、ほら、優先順位が決まります。

メカニズム的には、あなたがやろうとしていることはこのようなことです

もちろん、インパクトとエフォートの両方を見積もるのは難しいことで有名ですが、見積もるたびに間違っている確率が等しいと仮定すれば、ROIを計算することはプロジェクトの優先順位付けの正当な方法です。

ヒント:見積もりの労力を2倍、インパクトを半分にすれば、より現実に近くなる。

2. 制約条件を適用する

人生はスプレッドシートのように整然としているわけではないので、優先順位の決定に織り込まなければならない制約もあります。あなたが対処しなければならない主な制約は、依存関係、スケジュール、チーム構成です。

依存関係

依存関係とは、ある作業単位が完了しないと、別の作業単位が進まない場合に生じます。

例えば、あなたがモバイルチームで、顧客の携帯電話にシームレスなワンタップ決済ボタンを作りたいとします。あなたは、これが最もROIの高いプロジェクトであると認識し、早急に実行したいと考えました。

しかし、それを実現するためには、そもそも決済を受け付ける機能が必要であり、現在別のチームが取り組んでいます。他のチームの完成に依存しているということは、あなたはまだ何もできないということであり、正しい優先順位付けの決定は、ワンタップ機能を延期し、次にROIの高いプロジェクトを行うことです。

プロダクト作りには依存関係がつきものであり、規模が大きくなればなるほど、より複雑なシステムが構築されるため、プロダクトが成功すればするほど、依存関係は悪化します。大企業では、依存関係を理解し回避することが、優先順位をつける上で最も重要な次元になることが多いです。

余談ですが、スタートアップのスピードが速いのは、彼らがより懸命に働き、より野心的だからだと考える人が多いです。実際は、スピードの違いのほとんどは、依存関係がはるかに少ない(そして、何か失敗したときに動揺する顧客が少ない)ことから来ています。

逆の依存関係

他のチームの目標達成に大いに役立つプロジェクトがある場合があります。この場合、あなたは依存関係にあります。

もしあなたが、自分のプロダクトよりも会社のROIを最適化しているのなら(そうあるべきだが)、チームの優先順位を正しく決定するために、自分のプロジェクトだけでなく、ブロックを解除した依存プロジェクトの累積ROIを評価する必要があります。

他のチームのブロック解除に取り組むチームを見るたびに、私は彼らから尊敬の念を抱きます。このようなチームは、プロダクト会社にとって縁の下の力持ちであり、最も大きな力を発揮するチームなのです。

タイムライン

タイムラインは典型的な制約であり、誰もが経験したことがあるものです。特に深刻なのは、ROIの最も高い機能が出荷される前に、あなたのスタートアップが資金を使い果たして死んでしまうことです。

このような場合、もちろん正しい優先順位付けの決定は、時間枠内で達成可能なROIの最も高いプロジェクトを行うことです。

チームの構成

すべてのチームが平等というわけではなく、チーム内の特定の人たちの構成によって、どのプロジェクトに優先順位をつけるか、異なる決断が必要になることもあります。

例えば、インターンの集まりのような、入社して間もない人ばかりのチームがある場合です(インターンに失礼かもしれませんが、全ソフトウェアの50%はインターンによって作られています)。

このような状況では、たとえROIが最も高くても、顧客に対するリスクが大きいプロジェクトを優先することには注意すべきです。その代わりに、重要なコードやユーザー・エクスペリエンス・ジャーニーに触れないプロジェクトを優先した方が良い場合が多いです。

新人チームは、まず小さな成果を出荷して、足元を固めましょう。本番用の機能をいくつか開発したら、より複雑なプロジェクトに進むことができます。

プロジェクト間の優先順位付け: パズルを完成させ、仕事に取り掛かる

上記のすべての情報を収集するのに必要な作業量を矮小化しているが、いったんすべてを手に入れたら、あとはピースを組み立てるだけです。

プロジェクト内での仕事の優先順位付け

判断する冷酷な考え方: これは絶対に必要なのか?

プロジェクトの実行中は、優先順位付けの性質が異なります。混沌としています。毎日のように決断が求められ、プロジェクト間で優先順位をつけるときのように、ひとつひとつを深く分析する時間はありません。また、実際の顧客が影響を受け、自分たちの評判が危うく感じられるかもしれないので、チームにとってはより感情的な時間でもあります。

プロダクト作りのスピードとカオスに対抗する唯一の方法は、非情なマインドセットを身につけることです。チームが行っている作業を常に意識し、その作業の必要性について彼らに挑戦します。

冷酷なマインドセットを持つということは、現実を受け入れるということです。それは、どこに重点を置くべきか、日々厳しい選択を迫られることを認識することです。完璧なプロダクトを出荷することは幻想であり、出荷するためには常にトレードオフが必要だということを認識することです。

冷酷な考え方を持つことは、出荷する意志を持つことです。ステークホルダーや顧客の期待はチームに大きなプレッシャーを与え、その結果、チームは出荷を恐れるようになります。そして、小さな問題で汗をかくようになり、何も行動できなくなるようになるのです。重要なこと、つまり時間をかけて生み出される顧客価値を見失い、完璧であろうとし始めるのです。

立ち上げ時にバグがないチームを教えてくれれば、もっと前に出荷すべきだったチームを教えましょう。

現実には、プロジェクト内での作業の優先順位付けは混沌としているため、そのプロセスを定義することは無謀です。より生産的な戦略とは、「これは絶対に必要なのか」という問いに冷酷に答えられるよう、プロダクト開発のコンセプトをチームに浸透させることです。以下は、この記事の残りの部分で取り上げるものです:

  1. 優先順位決定システムの構築
  2. クオリティとスピードのトレードオフを行うためにプロダクトの仮定を使用する
  3. 出荷の時間的価値

1. 優先順位決定システムの構築

すべてのソフトウェアは負債です。現在バグがあり、時間が経てばさらにバグが増えます。新しいバグに直面したとき、チームがそれを修正すべきかどうかを素早く判断できなければ、最も重要な仕事に集中する能力が常に中断されることになります。

バグが出るたびに優先順位付けのミーティングをする余裕はないでしょうから、バグを修正するタイミングや次に進むタイミングを判断するシステムを作ることが、最もレバレッジの高いことの1つです。

以下は、私がチームのために生産的だと感じた例です:

X軸はバグがユーザーに影響を与える頻度を表し、Y軸はそのバグの深刻度を表します。赤い点がバグです。

このシステムを使うには、チームと協力して、どの程度の深刻度(この場合、ユーザーが支払えないこと)が深刻すぎるか、どの程度の頻度(この場合、影響を受けるユーザーが5%)が頻度高すぎるかを定義します。そして、そのバグがどのゾーンに当てはまるか、少なくとも1つのアクションをバックログに入れ、何もしない、というアクションセットに合意します。

これに投資すれば、あなたのチームはバグのトリアージマシンになり、誰かが価値の低いバグに取り組む可能性は組織的に取り除かれます。

2. クオリティとスピードのトレードオフを行うためにプロダクトの仮定を使う

プロダクトの初期に創業者が書いたクソコードについてよく耳にします。会社が成功するにつれて、このコードはチームに加わる新しいエンジニアにとって悪夢となっていきます。

創業者は下手なプログラマーだったのでしょうか?そうかもしれません。しかし、可能性が高いのは、当時はプロダクトが成功する見込みがなかったため、コードのクオリティにはあまり関心がなかったということです。それよりも、スピードと自分たちのアイデアの検証を重視していたのです。

出荷するためには、どのチームも必ずクオリティを犠牲にします。そしてそれは、プロダクトのクオリティにとって何が不可欠か、という優先順位の決定に帰着します。

ここで、スピード対クオリティのスペクトラムの正しい位置に自分を導く便利な方法を紹介しましょう。それは、プロダクトの仮定をベースにすることです。プロダクトの仮定とは、顧客の問題や、顧客のために構築しようとしているソリューションについて、あなたが抱いている基本的な信念のことです。

フェイスブックの初期の頃の単純な例で言えば、人々はオンラインでお互いにつながりたいと思っているという問題仮説があったでしょう。その問題が検証された後、他のユーザーを友達として追加できるようなプロダクトアイデアを考えました。

あなたのプロダクトについて考えてみると、このようなプロダクトの仮定に関して、3つの状況が考えられます:

  1. 解決しようとしている問題が想定である。
  2. 既知の問題を解決するためのソリューションが仮定である。
  3. どちらも仮定ではない(あなたは何が必要で、なぜ必要なのかを正確に知っている)。

このスペクトルの左側に位置する場合、顧客の問題について想定はしていますが、それが本当かどうかはわかりません。このような状況では、できるだけ早く出荷するために手を抜くべきで、存在しない問題を解決しようとするリスクを最小限に抑えることができます。

一方、あなたが解決しようとしている問題と、適切なソリューションを構築する方法について高い確信がある場合は、その機能が成功し、将来にわたって拡張する必要があることが分かっているため、クオリティを最大限に高めるべきです。

よく、チームを「実験」するチームと「コア」な仕事をするチームに分けている企業を見かけません。私の意見では、このような組織構造は、ほとんどのチームがプロダクトの想定スペクトルを理解できず、スピードとクオリティのどちらかにギアを切り替えることができないことを反映していません。

3. 出荷の時間的価値

ソフトウェアは、出荷されて初めて顧客に価値をもたらします。

このように、顧客により早く何かを出荷することに価値を置くことができるはずです。これは、私が少し前に書いた「出荷の時間的価値」という概念です。

例として、プロダクトチームがしばしば直面する困難な選択は、80%の顧客ベースには早く機能を出荷し、最後の20%にはその機能を遅らせるかどうかです。この選択は通常、最後の20%の構築には多くのニッチな機能が必要で、(最初の80%の構築の)倍の時間がかかる場合に生じます。

この選択を分解してみましょう:

図を見てみると、80%の顧客は、選択肢#1では付加価値を得る期間を享受しているのに対し、選択肢#2では待たなければならないことがわかります。では、#1を選ぶのは当然なのでしょうか?そうとは言い切れませんが、チームにとっては難しい選択です:

  1. なぜなら、その機能が機能しない20%の顧客は、彼らをサポートしないというあなたの選択を間違いなく認識し、腹を立てるだろうからです。彼らにとっては、何も提供しないよりも悪いことなのです。
  2. その機能が使える80%の顧客は、その機能を早く手に入れることで得られる特別な価値を実際には認識していません

この2つの効果の皮肉なところは、時間をかけてより多くの顧客価値を提供するという決断を下すことで、実際に腹を立てる顧客が増えるということです。不思議な時代です。

上記のようなことがあるにもかかわらず、このような選択を迫られた場合、私は通常、非情になって出荷することをチームに勧めます。その理由はこうです:

  1. もし顧客が完全な背景を知り、私たちのために決断を下すことができるのであれば、彼らの大半は私たちがそれを出荷することを望むでしょう。
  2. 長い目で見れば、チームが一貫してこの戦略に従えば、顧客が80%|20%の良い方に転ぶ回数は均等になり、その結果、常に100%を待つ企業と比較して、常に機能を早く手に入れることの効果が積み重なり、顧客は時間とともに指数関数的に多くの価値を得ることになります。

顧客により早く出荷することに価値を置くことは、理解するのは簡単ですが、痛みを伴うため行動に移すのは難しい概念の一つです。冷酷な優先順位決定者はこれを見抜き、顧客の利益のために行動します。

プロジェクト内での仕事の優先順位付け:冷酷な考え方は不自然

今回取り上げたコンセプトは、経験から学んだ内面化する価値のあるものに過ぎません。もっとたくさんあるし、自分の経験に基づいてこれらを微調整するのです。

悲しいことに、この業界のほとんどのチームは、プロダクト会社の中核的なミームであるにもかかわらず、冷酷な優先順位付けをするインセンティブを与えられていません。

例えば、大規模な組織では、チームは常に機能を出荷しており、ほとんどの社員は顧客が発表するまでその発表について聞くことすらありません。そのような環境において、従業員は自分のチームメイトが、同じ場所にいる他の従業員よりも3倍速く出荷できたことを理解できると思いますか?そうではないでしょう。むしろ、チームメイトが意識的に受け入れていたにもかかわらず、プロダクトに欠けているものしか目に入らないのです。

対照的に、完璧に洗練されたプロダクトは、社内で多くの賞賛を受ける傾向があります。出荷に2年もかかったのは残念です。そのような機能が出来るとは思っていなかったために解約したすべての顧客についてほとんど考えていませんのは残念です。

もっと良くなるようにチームに挑戦させる。冷酷になるよう挑め。


優先順位付けは技術である

あなたのチームの時間は、企業が自由に使える最も貴重な資源であり、もしあなたの仕事の一部がその時間を管理することであるなら、あなたはそれが得意になる必要があります。それは技術であり、練習すれば意図的にうまくなるものです。

優先順位の付け方について、最後にもうひとつだけ真実をお伝えしたい。「現在の計画よりも早く目標を達成する方法は必ずある。

常に。それを見つければいいのです。計画会議の最後に、「どうすれば半分の時間でできるでしょうか」と尋ねれば、奇跡的にチームは方法を見つけてくれます。

何年もプロダクトを出荷してきましたが、より少ない投資時間で同じ顧客価値を生み出す方法をチームが見つけられなかったという状況に私はまだ出くわしたことがありません。また、チームが物事の優先順位を完璧に決めたという状況にも出会ったことがありません。

常に方法はあるということを受け入れるなら、今プロジェクトを実行中であろうと、次にどのプロジェクトに取り組むかを決定中であろうと、冷酷かつ厳密に優先順位をつけることが唯一の論理的なことです。

たとえプロジェクトが国全体であっても。


終わりに、考えておくべきことがあります:

  1. この記事が役に立ったと感じたら、推薦またはシェアしてください。人々がこの記事に価値を見出すことを知ることは、私に書く🔋を与えてくれます。
  2. このような記事をもっと読みたい、あるいは投稿してあなたのストーリーを共有したいとお考えの方は、プロダクトマネジメントのブラックボックスを購読してください。

フォローして最新情報をチェック!

ペイパル:元祖プロダクトグロースカンパニー

2015年7月20日

どこにいたんだ?

当時はパロアルトに住んでいました。テクノロジー関係の仕事をしていました。ペイパルのスピンオフの日がやってきた」という見出しを見たとき、私は肩をすくめました。会社にも横目で見ていました:

➡️ 「何年も革新的なことをやっていないイーベイの中の会社じゃないのか?」

➡️ 「イーベイ以外でペイパルを使う人はいるのだろうか?」

➡️ 「あの会社は20年前の会社です。恐竜だよ。」

実は、一番記憶に残っているのは、イーロン・マスクがペイパルについて話している映像でした。その前の週末、私は彼の1時間のインタビューを見ていたのです。プロダクトに携わる私にとって、イーロンは企業について最も攻撃的なことを言ったのです。「私が2000年に書いたプロダクト計画を見てください。ほとんど違いがない。」


  1. 2015年7月20日
  2. フェーズ 1:プロダクトグロースのDNA – イーベイ以前 🧬
    1. 1998
    2. 1999
    3. 2000
    4. 2001
    5. 2002
  3. フェーズ 2:イーベイ時代 🐌
    1. 2007
    2. 2014
    3. 2015
  4. フェーズ 3:スピンオフ後 ↗️
    1. 2016
    2. 2017
    3. 2018
    4. 2021+
  5. ペイパルから学ぶ: プロダクトグロースのポイント

この記事は、「PayPal: The Original Product Growth Company」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者:Aakash Gupta
翻訳者:渡辺圭祐


彼は本質的に、彼らは十分に速く動いていなかったし、革新的でもなかったと主張しています。バレーにいた他の多くの人たちと同様、私も革新的でないと思われる会社には関心を持ちませんでした。イーベイの親会社の下で長年運営されてきたことで、技術者たちの間でイーベイというブランドの文化的な価値が失われていたのです。

しかし、私は間違っていました。悪いことに。皆さんも、この記事を読みながら、首を傾げることがあったかもしれません。おそらく、その株を買ったかどうかがリトマス試験紙になるのではないでしょうか。もしそうでなければ、あなたも間違っていたことになります。ペイパルは、分離独立後、実に目覚ましい発展を遂げました。株価は現在7倍です。これは、かつての親会社であるイーベイよりもはるかに速い企業価値のグロースである。また、決済会社のライバルであるビザやマスターカードよりもはるかに速い:

ペイパルの時価総額は、決済の競合他社やかつての親会社であるイーベイ、最大の決済ネットワークであるビザとマスターカードを大きく上回います。ソース:Yahoo Finance

ペイパルはどのようにして企業価値を飛躍的に高めたのか?なぜ時価総額が327Bドルに達し、かつての親会社イーベイの6.5倍になったのか?これはマスターカードにわずか24Bドル(7%)の差です。

ペイパルは元祖プロダクトグロースカンパニーです。このDNAは、スピンオフ以降、進化と加速を遂げた同社に息づいています。 ここでは、ペイパルの歴史的なストーリーを紹介しながら、プロダクトグロースプロフェッショナルにとって基礎となるべき8つのプロダクトグロースレッスンをお伝えします。


フェーズ 1:プロダクトグロースのDNA – イーベイ以前 🧬

1998

コンピュータサイエンスの学部を卒業してわずか1年後、マックス・レヴチンは会社を設立するためにシリコンバレーにやってきました。アイデアを求めていたマックスは、好奇心と野心に溢れ、世界で最も重要な偶然の出会いを実現するために、まさにうってつけの組み合わせでした。ある日の午後、彼はスタンフォード大学で行われた無名の金融講演会に参加しました。その部屋には6人しかいませんでした。マックスは、その日、ピーター・ティールの話を聞いていた5人のうちの1人でした。当時はまだ、ピーターが今ほど有名でなかったのは明らかです。

講演の後、マックスはピーターと婚約しました。彼は会社を興したいと思っていました。具体的には、暗号技術に興味がありました。ピーターもインターネット企業の立ち上げに興味がありました。ピーターは当時、31歳で小さな投資会社を経営していました。彼は、多くの友人がスタートアップのアシメトリーな報酬を経験するのを見てきました。そして、2人は手を組みました。

マックスの暗号への興味と、ピーターの金融マーケットへの興味を組み合わせたのです。ルーク・ノセックとともに、3人のオリジナル共同創業者が集まって、デジタルウォレットの会社を立ち上げました。当時はCofinityという名前だった。

ペイパルが誕生したのです。

教訓 1:PMF後にしかグロースしない

3人は、PDA用のデジタルウォレットとピアツーピアの決済機能であるFieldLinkを開発しました。残念ながら、このビジネスには2つの問題がありました。まず、PDAのマーケットが大きくなかったこと。第二に、お金を送ったり受け取ったりする人々のネットワークがなければ、デジタルウォレットはユーザーの核となる問題を解決することはできませんでした。単純に、プロダクト・マーケット・フィットがなかったのです。

ここで、ペイパルの歴史から得た最初のプロダクトグロースの教訓に出会うことになります。ユーザーのニーズに合っていること、十分に大きなマーケットであることなど、適切な特性がなければプロダクトをグロースさせることはできません。 この若い会社は、FieldLinkで無名のまま苦労し続けることはありませんでした。彼らはピボットしたのです。

実際、この先何十年も会社を支えることになるアイデアを見つけたのです。ウェブチェックアウトとEメールベースのデジタルウォレットに移行したのです。このプロダクトは、マーケット規模が大きく、プロダクトのマーケットフィットも高かったのです。このプロダクトは、「オンラインでお金を安全に送受信する」という、ますます普遍的になっていく顧客の課題を解決するものでした。 

この重要な条件を満たした時点で初めて、プロダクトグロースのためのプレイブックを書き始めたのです。そのことを知るために、歴史を辿っていきましょう。

1999

教訓 2:(最初の)リファラルプログラム

ペイパルの初期のホームページの画面。紹介プログラムは目立つ位置にあった。

ペイパルは、初めて(既知の)20ドルあげると20ドルもらえるオンライン顧客プロダクト紹介プログラムを開始しました。これは、ハイプ・サイクル・テクノロジーのトリガーとなる瞬間でした。当時のペイパルのマーケティング責任者、ルーク・ノセックの言葉です。

紹介プログラムは、最初の数ヶ月で着実に成功を収めました。それは便利なものでした。メールアドレスだけで、オンラインでお金を送ったり受け取ったりすることができるのです。しかも、最初は20ドルからスタートできました。アーリーアダプターたちは、この問題が解決する直接的なニーズを理解し始めると、ペイパルを使って、友人と一緒にお金を支払ったり受け取ったりしたいと思うようになりました。お金のやり取りは本来社会的なものであるため、紹介チャネルはプロダクトのグロースレバーとして完璧にフィットしていました。

3ヶ月目、紹介チャンネルは脱出速度に乗りました。指数関数的にグロースし始めたのです。このプログラムは、1日に5〜6%の複利効果を発揮していました。

これは、ペイパルのケーススタディから得た、プロダクトグロースにおける2つ目の大きな教訓です。リファラルチャネルを正しく調整することで、指数関数的なグロースを生み出すことができます。獲得したユーザーのLTVが低下するにつれて、ペイパルはインセンティブを減らしていきました。20ドルあげたら20ドル、10ドルあげたら10ドル。そして、5ドルあげれば5ドルもらえるようになった。

数年後、ピーター・ティール氏は、同社が設立後数年間、このプログラムに6,000万~7,000万ドルを費やしたと推定しています。インセンティブが時間とともに減少することを考えると、ペイパルで新たに5~600万人のアクティブな取引者を生み出したと私は推測しています。これこそ、プロダクトグロースのプロフェッショナルが舌を巻くスケールの大きさです。

教訓 3:(最初の)大きな加盟店との統合

イーベイでのペイパルチェックアウト体験の例。最近の写真です。2000年のものではありません。

ペイパルの歴史のこの時点で、私たちは2番目の大きな(顧客)グロースレバーである、大きな加盟店統合にも遭遇しています。ご存知の通り、インターネットのエコシステムのこの時点では、イーベイがEコマースの王者でした。アマゾンは何でも屋ではありませんでした。ショッピファイやエッツィーは、スモールビジネス向けには存在しませんでした。多くのEコマースがイーベイを経由していたのです。

ペイパルは、イーベイとの統合を構築するために、プロダクト/エンジニアリングチームを立ち上げました。短期間で、ペイパルボタンはイーベイの自社プラットフォームよりも多くのボリュームを生み出すようになったのです。

現在、加盟店との統合をサポートする専門のプロダクトグロースチームは、あらゆるフィンテック企業(スクエア、クラーナ、ストライプなど)で試行錯誤されている戦術です。しかし、これを大々的に示したのはペイパルが初めてでした。 

2000

ペイパルという名称が正式に登場したのは、2000年。ピーター・ティールのコンフィニティは、イーロン・マスクのX.comと合併しました。ソース:CompareRemit.com

ペイパルは、リファーラルやマーチャントインテグレーションという革新的なプロダクトのグロースレバーを駆使して、ますます高みを目指していく一方で、競争の激化にも直面していました。

その一つが、イーロン・マスクが立ち上げたデジタルバンクの新興企業、X.comです。2000年3月、両社は資金繰りが悪化したため、合併することになりました。イーロンはCEOに就任しました。今や有名になったイーロンの流儀で、社内の様子は激しかったのです。すべてが電光石火のスピードで動いていました。

ペイパルは、詐欺、決済、ウォレットに革新的な技術を導入しました。同社はマーチャントアカウントを立ち上げました。これは、ペイパルの歴史上、最も重要な決断の1つとなりました。顧客アカウントとマーチャントアカウントの両方を総合的に追求するようになったのです。ピーター・ティールが実際に退社しました。

結婚以来、一度も休暇を取っていなかったイーロンは、9月にようやく2週間の休暇を取りました。残念ながら、イーロンの留守中、会社では物事がうまくいきませんでした。イーロンは、自分がCEOの座から降りることを望む経営陣のもとに戻ってきました。10月にはピーター・ティールが復帰し、CEOの座に就きました。

一方、連邦準備制度理事会では、アラン・グリーンスパン議長が何度も金利を引き上げました。2000年3月10日、ナスダックはピークを迎えました。そこから2002年10月9日まで、世界中がマーケットの低迷に見舞われました。

ペイパルは、ドットコムバブルが崩壊した後にIPOし、下降の一途をたどりました。ソース:WSJ.

2001

インターネット株のバブル崩壊という状況にもかかわらず、ペイパルはアクティブユーザー数、取引量、取引高、時価総額を伸ばし続けました。

そんな中、9月11日が起きた。世界は衝撃を受けました。企業はIPOを止めました。ナスダックはニューヨークにあります。同時多発テロの震源地です。

2002

それでも、ペイパルのチームは耐え抜きました。同社は、9.11後に初めてIPOした企業です。IPOは大成功でした。株価は50%上昇しました。

しかし、マーチャント・インテグレーションプロダクトのグロース戦略は、創業4年目のスタートアップにとって、少し「成功しすぎ」だったのかもしれません。上場から1年も経たない7月8日、ペイパルはイーベイに15億ドルで買収されました。10月には、ペイパルはイーベイの一部となりました。


フェーズ 2:イーベイ時代 🐌

イーベイの傘下で、ペイパルは13年間、親会社との距離を縮めてきました。優秀な人材が多数在籍していたにもかかわらず、プロダクトのグロースは停滞しました。チームは、イーベイでのチェックアウト体験の強化に注力しました。しかし、これではアクティブアカウントは直線的にしか増えません。ペイメントビジネスをグロースさせるという鋭い視点が欠如していたのです。

2007

フォーチュンの作品に登場するペイパルマフィアの実行イメージ。有名どころでは、ジェレミー・ストッペルマン(Yelp)、デビッド・サックス(Yammer)、ピーター・ティール(Palantir)、キース・ラボア(スクエア)、リード・ホフマン(LinkedIn)、マックス・レブチン(アファーム)、イーロン・マスク(Tesla, SpaceX)などがいます。ソース:フォーチュン

イーベイ時代にペイパルに起こった最も大きな出来事の1つは、2007年のことでした。フォーチュン誌が「ペイパルマフィア」という有名な記事を掲載したのです。それまでシリコンバレーで知られていた事実が、全米のニュースになったのです。

2007年以降、ペイパルマフィアメンバーの成功が続いたことで、彼らに関する知識は増え続ける一方でした。実際、この記事の編集者のほとんどは、ペイパルマフィアのメンバーの名前は聞いたことがあっても、ペイパルの現CEOの名前を挙げることはできませんでした。彼は、この物語の重要な登場人物である。近いうちにお会いしましょう。

イーベイ時代、同社が貴重で戦略的な買収を行ったことは特筆に値します。

  • 2008年1月: フラウドサイエンス、リスク&不正管理
  • 2008年11月 Bill Me Later、9000以上のオンラインマーチャントと提携
  • 2013年9月: ベンモも所有していたブレーンツリー

これらの企業は結局、ペイパルのプロダクトグロースの重要な部分を担っています。

2014

2014年9月30日、ペイパルのすべてが変わりました。イーベイの首脳陣は、ベテランの技術幹部であるダン・シュルマン氏を起用しました。ダンはすでに2つの会社を上場させた経験がありました。彼の指揮の下、プライスラインはIPOしただけでなく、2000万ドルだった売上を10億ドルにまで伸ばしました。その後、リチャード・ブランソンにスカウトされ、自ら創業チームに加わった彼は、ヴァージン・モバイルでこの偉業を繰り返しました。だから、イーベイの上層部は、新しい経営者に大きな期待を寄せていたと言っていいでしょう。しかし、彼がどれほどの影響力を持つかは、誰も予想できませんでした。

世界で最も影響力のあるテックリーダーの一人、ダン・シュルマン。スクリーンショットは、eBay Inc.より。

2015

就任から1年足らずで、ダンは3社目の株式公開を成功させました。7月20日、彼はイーベイからペイパルを分離独立させました。ペイパルの時価総額はすぐに親会社を上回りました。


フェーズ 3:スピンオフ後 ↗️

2016

教訓 4:ユーザーを第一に考える

2016年、ペイパルはその戦略全体を大きく変更しました。18年間続いた、ファイル上の低価格の楽器に顧客を誘導することをやめたのです。その代わりに、彼らはユーザーを第一に考えた。顧客に選択肢を与え、どの楽器で支払うかを選べるようにしたのです。

つまり、ペイパルは1回の取引で得られる金額が少なくなりますが、顧客の支払いニーズはより満たされることになります。その結果、ペイパルにとって素晴らしい結果がもたらされました。ユーザーは、より高いロイヤリティという形で好意に応えてくれました。ユーザーはペイパルとの取引を増やし、取引量を増やしました。これが、ペイパルによる4つ目のプロダクトグロースの重要なインサイトです。

ユーザーを第一に考えることで、短期と長期をトレードオフすることができるかもしれません。ユーザーを第一に考えることは、どの業界のどの企業でもほとんど引くことができるプロダクトグロースのレバーなのです。

2017

教訓 5:ソーシャルを解き放つ(ベンモを使って)

2017年以降、ペイパルはベンモのソーシャルを解き放ちました。取引量は、6.8Bドルから5.8Bドルへと、毎期グロースしています。このグロースは絶対に凄まじいです:

17年第1四半期から21年第2四半期までのベンモのTPV(総支払量)。ソース:Quarterly Results

ベンモが人気なのは、そのP2P決済の技術が最高だからではありません。ベンモが人気なのは、ソーシャルネットワークに接続できるためです。ソーシャルペイメントを体験できるのです。これが、ペイパルのケーススタディにある5つ目の重要なプロダクトグロースレバーである「ソーシャルを解除する」です。

これは、単なるソーシャル紹介プログラム以上のものです。ソーシャルフィードをユーザーがベンモを利用する理由の中核とすることで、ペイパルはピアツーピア決済という基本的な実用性を超えたエンゲージメントのフックを作り出しました。ロブロックスやフォートナイトのようなゲーム会社は、何年も前からこのプロダクトグロースのテコを利用してきました。人々は、友人と一緒にプロダクトを使うことで、より長く付き合うことができます。

ベンモのようなソーシャルなループや体験を構築することは、今や試行錯誤の末のプロダクトグロースレバーと言えます。ペイパルは、フィンテック分野のほとんど誰よりも、このレバーをうまく使い続けています。

2018

教訓 6:両面ネットワーク効果の構築

同社が倍増させているもう一つの重要なプロダクトグロース戦略は、両面ネットワーク効果の構築である。それぞれのグループが他のグループを養うのです。顧客が増えれば、ペイパルは加盟店にとってより魅力的な存在になる。加盟店が増えれば、顧客にとっても魅力的になります。多くの加盟店や顧客を獲得することは、競合他社にとって1つではなく、2つの堀を追加することになります。

ペイパルは、常にこのレバレッジを追求してきました。しかし、2018年からこの領域に本当にダブルクリックしました。 6月21日、リスクサービスを提供するSimilityを買収。9月20日、ポイント・オブ・セールスのiZettleを買収。11月15日、ペイアウトのためのハイパーウォレットの買収を完了しました。(翌2019年11月20日、ハニーも買収)これらの買収はすべて連動しています。それらは、ペイパルの両面ネットワークに大きな価値を与えています:

同社の戦略的買収により、ペイパルの両面ネットワーク効果は強化された。インベスターデー・プレゼンテーション

これは、ペイパルの6番目の重要なプロダクトグロースの教訓です。二面的なネットワーク効果を構築して堀を強化する。買収でそうすることもできる。堀があるからこそ、マーケットプレイスビジネスは時価総額/売上高の倍率が高く取引されるのです。

教訓 7:新しいグロースプロダクトの構築

イーベイのもと、2014年の時点で、ペイパルはそのプロダクトについて限られたビジョンを持っていました。その「グロース戦略」と呼べるものには、決済における「常に次のイノベーションの中心にいる」といった決まり文句が含まれていました。しかし今、同社は顧客の金融について、より全体的に考えています。新しいグロースプロダクトを作っているのです。今のアプリを見てください:

今日のアプリには、ソーシャル・ピアツーピア決済、貯蓄、株式、Pay in 4、お得なキャンペーン、ウォレットがあります。もう小さなプロダクト表面積ではありません。ソース:インベスターデー・プレゼンテーション

これはすべて、「40~50のアプリに40~50の異なるパスワードはいらない」という顧客の苦痛を解決するためのペイパルの戦略の一部です。そこで同社は、銀行と提携して新しい金融商品をホワイトラベル化し、ペイパルブランドのログインの下に置くようにしています。暗号であれ、今すぐ買うであれ、後で支払うであれ、これらのプロダクトには巨大なマーケットがあります。ペイパルが各マーケットの勝者になることはないとしても、ユーザーのニーズを解決することには大いに貢献できます。最高の暗号アクセスや貯蓄口座を必要としない場合、ペイパルのログインにそれがあることは貴重です。

これは、ペイパルのケーススタディの7つ目のプロダクトグロースの教訓です:メインプロダクトに隣接して新しいプロダクトを構築します。重要なのは、これらのプロダクトが他のプロダクトを助ける枠組みの中にあることで、サイロ化されていないことです。新しいグロースプロダクトは、既存ユーザーの核となる問題を解決するものであれば、両プロダクトグループの粘着性を高めることができます。実際、ペイパルの暗号ユーザーの50%は毎日ログインしています!このエンゲージメントは、ペイパルの他の機能よりもはるかに粘着性があります。暗号によるログインの露出は、エンゲージメントの頻度が低い機能にも役立ちます。

2021+

教訓 8:まだまだ続くグロースレバーのイテレーション

その結果、現在に至ります。ペイパルはその地位に安住することはありません。今回取り上げた6つのグロースレバー(紹介、加盟店統合、ユーザーファースト、ソーシャル、両面ネットワーク、新グロースプロダクト)は、ペイパルから継続的に投資を受けています。最新のリファーラル・プログラムをご覧ください:

ペイパルは、紹介プログラムを繰り返し、変更し続けています。現在では、友人が5ドル使ってくれれば、2人で10ドルを受け取れるようになっています。ペイパルは、リワードの前にユーザーをダウンファネルに押し込んでいるのです。画像はイメージです。

これが、ペイパルのケーススタディから得た8つ目の、そして最後の教訓です。プロダクトのグロースは、「セット・アンド・フェザー・イット」ではないのです。ここで学んだグロースレバーの1つを追求したら、エンジニア、プロダクトマネージャー、アナリストからなるプロダクトチームを編成し、そのレバーを反復し続ける必要があります。

ペイパルから学ぶ: プロダクトグロースのポイント

グーグル検索をもとに、アクティブなアカウントの履歴を集計。どこにギャップがあるかを推定。最も重要な2つの時期、プロダクトのグロースが会社を牽引しました。画像はイメージです。

ペイパルの歴史を研究する中で、私たちは、ユーザーのニーズの解決、両面ネットワーク効果の構築、ソーシャル、リファラル、ユーザー第一主義、新グロースプロダクトなど、プロダクトグロースの専門家のコアツールキットのほぼ全てに遭遇しました。私たちは今、これらの戦略が実際の企業で適用されるのを戦術的に感じることができるようになりました。重要なのは、このツールキットをいつ使うか、つまりPMFの後に使うということです。また、各レバーを反復し続けることがいかに重要であるかを学びました。

今後の記事では、これらのツールキットをさらに掘り下げていきます。戦術を一般化します。より多くの企業の事例を研究していきます。プロダクトグロースのメールマガジンを購読してください。または、私のアーカイブをご覧ください。

注:私はアファームで働いていますが、この記事のすべての思考は私自身のものです。私はただの謙虚なメルマガライターで、研究の末にプロダクトグロースの教訓をコメントしたものです。

フォローして最新情報をチェック!

プロダクトマネージャーになるには

経験豊富なPMの皆さん、10月24日から1週間、プロダクト戦略に関するワークショップを担当します! 詳しくは下の方にジャンプしてください。


▼ 本記事の内容

  1. どうすれば最初のプロダクトマネージャーの仕事に就けるか?
    1. アソシエイトプロダクトマネージャー
    2. 社内異動
    3. 有名なテック企業から中小企業へ
    4. MBA
    5. 専門的な知識
    6. ネットワーキングと友人関係
    7. コールドアウトリーチ
    8. 買収されたスタートアップの創業者
  2. 最後に
  3. プロダクト戦略ワークショップ

この記事は、「How to become a product manager」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。この記事の内容をより幅広く、深く学びたい場合は、この記事の著者であるJackie Bavaroによる『世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~』をご覧ください。

著者: Jackie Bavaro
翻訳者: 渡辺圭祐


どうすれば最初のプロダクトマネージャーの仕事に就けるか?

このニュースレターの冒頭で、このような一般的で重要な質問をすることになり、興奮しています。私が知っている限り、プロダクト・マネジメントへの道は8つ(8つ!)あります。もし、他の道を見つけたら、ぜひ教えてください。

そして、これらすべての道について、「Cracking the PM Interview」と「Cracking the PM Career」が、面接を受けた後に仕事を得るための助けとなるでしょう。

アソシエイトプロダクトマネージャー

現在、大学の学部生であれば、この道は真っ当ですが、競争は激しいです。目立つためには、複数の優秀な証が必要です。

以下はその例です。

  • コンピュータ・サイエンスの専攻または副専攻(APMの一部の職務に必要)
  • 経済学、経営学、心理学、デザイン、認知科学などの分野で2つの専攻または副専攻
  • 起業家的なサイドプロジェクトやビジネスを始める
  • レジデント・アドバイザー(RA)、ティーチング・アシスタント(TA)、学校代表チームやクラブなどでのリーダー的役割
  • トップスクールに通う
  • 高いGPAを取得する
  • 会社に勤めている人からの紹介

このビデオでは、私が熱く語るパーラメンタリーディベートの様子など、学部生向けの情報をより詳しく紹介しています。

社内異動

プロダクトマネジメントの仕事に移行する場合、最も一般的な方法は社内異動です。既存の信頼性、人間関係、プロダクト知識を活用することができます。

その方法は以下の通りです。

  • 現在の仕事と並行して、PM的な仕事を引き受ける。チームにPMがいる場合、自分ができることは何かを聞いてみましょう。新機能を提案したり、優先順位付けを手伝ったりすることができます。プロダクトの助けが必要な社内プロジェクトがあれば、人手が足りないことが多いので探してみましょう。
  • PMの採用担当者に相談する。プロダクトマネジメントに興味があることを伝え、何かアドバイスや機会がないか聞いてみましょう。どのようなスキルを身につけるべきか、焦点を絞る手助けをしてくれるでしょう。運が良ければ、PMのミーティングに同席させてもらえるかもしれません。
  • 肩書きの変更をお願いする。すでにPMの仕事をしているのであれば、プロダクトマネージャーに肩書きを変更できないか、上司に尋ねてみましょう。
  • 異動を経験した同僚からアドバイスをもらう。社内異動のプロセスは会社によって異なるので、自分の会社ではどうなのか、必ず確認しておきましょう。特に、上司の恨みを買って、あなたの異動を阻止しようとする場合は注意が必要です。

この道を歩むには、現在の職務で素晴らしい仕事をすることに加えて、余分な仕事を引き受ける必要があるかもしれないことに留意してください。

有名なテック企業から中小企業へ

一流のテック企業(特にGoogle)で社内異動をするのは、本当に難しいことです。幸いなことに、それらの企業で別の仕事をしていれば、あなたの経験を評価してくれる中小企業でプロダクトマネージャーとして直接雇用されることもあります。

会社のプロダクトのベストプラクティスを吸収するようにしましょう。

  • もし可能であれば、プロダクトマネージャーと密接に仕事をすることができる職務に転職しましょう。
  • 会社のプロダクトプロセスを学ぶ。アイデアはどのようにしてプロダクト化されるのでしょうか?どのような文書やプロトタイプが作成されるのでしょうか?レビューやチェックポイントは何でしょうか?
  • PMとのミーティング、特にプロダクトレビューやプロダクトティアダウンに参加しましょう。
  • PMから送られてくる書類やメールを読んでみましょう。彼らが使っているテンプレートや共通のパターンはありますか?
  • 親しいPMに、PMのスキルアップを手伝ってもらえるか聞いてみる。PMになることに興味があることを伝え、彼らの仕事について話してくれるかどうか確認してみてください。

そして、あなたの知識を高く評価してくれる会社を探しましょう。

MBA

プロダクトマネージャーになるためにMBAは必要ありませんが、役立つことはあります。希望するレベルのPMの仕事に就くのが難しい場合、優れた学校のMBAがあなたの扉を開いてくれるでしょう。キャリアフェアに加え、同窓生ネットワークは、キャリアのどの段階でも仕事の機会を見つけるのに役立ちます。

私は採用担当者として、特に卒業後2年以内のMBA候補者に若干の偏見を持つ傾向があります。その理由を説明しますので、ぜひ落とし穴を避けてください。

  • 学習マインドの欠如:MBA受験者の多くは、自分がすべてを知っているかのように話します。自分は正しいやり方を学んだと思い込んでいて、現実の世界がもっと複雑であることに思いが至らないようです。そのため、協調的な会話をすることが難しくなります。
  • フレームワークへの過度の依存:既存のフレームワークを適用して問題を解決しようとするあまり、実際に何が起きているのかという深いところを見落としている人を見かけます。面接での質問が自分のフレームワークに当てはまらないと、答えようとしない人もいます。
  • 日々のPM業務に嫌悪感を抱く:MBAを取得した人の中には、プロダクトマネジメントをピープルマネジメントへの道のりの足がかりに過ぎないと考えている人もいるようです。野心に反するわけではありませんが、私がPMを雇うのは、優れたPMが必要だからです。私は、この仕事をうまくやりたいと思っている人を管理したいのです。

ビジネススクールを目指すのはお金も時間もかかりますが、多くの人がプロダクトマネジメントへの良い道だと感じています。

専門的な知識

重要な業界経験があれば、それを活かしてPMの仕事に就ける場合もあります。あなたの経験を評価してくれる会社を探してみてください。

以下はその例です。

  • 医師から医療系スタートアップのPMへ
  • 弁護士から弁護士が創業した会社のPMへ
  • 教師から教育工学のPMへ

この道のメリットは、必ずしもエントリーレベルのPMとしてスタートする必要がないことです。

ネットワーキングと友人関係

多くの企業は、PMの経験がない人を雇うことに抵抗があるようです。しかし、もしあなたが誰かと関係を築き、信用を得たなら、その人はあなたを自分の会社で採用することもあります。この方法は小規模なスタートアップに最適ですが、どんな規模の会社でも、社内にあなたの履歴書を提出する人がいると便利です。

コールドアウトリーチ

これは非常にトリッキーな道ですが、うまくいく人もいます。PMがいないプロダクトのパワーユーザーであれば、合理的なアプローチと言えます。採用担当者を見つけ、連絡を取る最適な方法を考え、相手が喜んで会ってくれるような説得力のあるメッセージを用意する必要があります。

このような場合、プロダクトの分析や改善のためのアイデアを自分なりにまとめておくと便利です。もしそれが十分なものであれば、あなたを雇うよう説得できるかもしれません。というのも、社内での文脈がわからないと、あなたのアイデアはたいてい、チームが考えていることに比べれば自明でインパクトが弱いからです。

買収されたスタートアップの創業者

念のため、この道も入れておきますが、買収されてPMになることを期待して会社を興すことはお勧めしません。会社を立ち上げるのは大変なことです。とはいえ、多くの偉大なPMがこの方法でスタートしました。会社が買収されると、創業者の居場所を見つける必要がありますが、PMは自然にフィットすることが多いのです。フェイスブックは、多くの元創業者のPMがいることで知られています。

最後に

PMになるには、さまざまな道があります。

  1. アソシエイトプロダクトマネージャー
  2. 社内異動
  3. 有名なテック企業から中小企業へ
  4. MBA
  5. 専門的な知識
  6. ネットワーキングと友人関係
  7. コールドアウトリーチ
  8. 買収されたスタートアップの創業者

プロダクトマネジメントへの道をすぐに見つけることができる人もいれば、数年かかる人もいます。このガイドが、あなたにとって最適なアプローチを見つける助けになれば幸いです。


プロダクト戦略ワークショップ

10月24日から、私はプロダクト戦略ワークショップを担当します:「Cracking the Product Strategy

機能のリストを提供することから、チームを鼓舞し、プロダクトを成功に導くプロダクト戦略を作成する方法について学びたい方は、ぜひご参加ください。

戦略の発見(ユーザーインサイトから戦略的インサイトへの移行方法)、戦略の立案(ビジョン、フレームワーク、ロードマップ)、戦略的アライメントの推進(人々の最高のアイデアを引き出し、彼らを乗せる)などを取り上げます。

参加はこちらから:https://maven.com/jackie-bavaro/cracking-the-product-strategy、プロモーションコード「35OFF」で35%割引になります。

コースはとてもマッチしているように思えますが、価格帯が合わないという方は、スカラシップに応募してください。


フォローして最新情報をチェック!

コンシューマー向けビジネスを立ち上げ、スケールする方法

ステップ1: アイデアを思いつく

こんにちは👋 レニーです! 今月の私のニュースレター✨無料版✨へようこそ。毎週、プロダクト、グロース、人間との仕事、その他仕事に関するストレスについて、読者の質問に謙虚に取り組んでいます。今すぐ購読して、毎号を手に入れよう。


スタートアップの創業者は、不可能を可能にする必要があります。これまでにないものを、これまでにないチームで作り、何十もの新しいスキルを学び、数え切れないほどの後戻りできない決断を下し、資金(とエネルギー)が尽きる前にすべてをやり遂げなければなりません。それはまるで、荒野で迷子になり、暗闇の中で、自分がどこに向かっているのか漠然とした感覚しか持てないようなものです。

もし、地図があったらと想像してください。

TikTokからレディット、ウーバー、エアビーアンドビーまで、私は何百もの企業の成長物語を研究する機会に恵まれました。これらの企業がどのように最初のユーザーを獲得しプロダクト・マーケット・フィットを見出しグロースエンジンを構築しリテンションコンバージョンバイラルポジショニング価格設定など、耐久性のあるビジネスを構築するために必要なほとんどすべての要素を上手くやってきたのかを探ってきました。しかし、これらの要素をすべて結びつけたことはありません。

今日から5週間、私が開発した6部構成のプレイブックを紹介します。このプレイブックは、コンシューマー向けビジネスを立ち上げ、スケールするための6つの基本ステップを案内するものです。今年の後半には、B2Bビジネス向けの同様のプレイブックを紹介する予定です。

この記事は、何百時間にもわたるリサーチ、インタビュー、そして総合的な分析から生み出されたものです。この本には、私がこれまで共有したことのない、まったく新しいフレームワーク、ストーリー、インサイトが含まれています。これまでで最高の作品になるかもしれません。何はともあれ、最も時間のかかる作業であることは間違いありません。

以下に、その内容を紹介します。

これらのステップ(あるいはどのステップでも!)に従えば必ず成功するというわけではありませんが、確率を上げることは間違いないでしょう。

では、さっそくステップ1に入りましょう。


▼本記事の内容

  1. ハイレベルな要点
  2. スタートアップのアイデアの出し方
    1. 戦略1:自分自身の問題に注目し、それを解決する
      1. ドロップボックス
      2. エッツィー(Etsy)
      3. カメオ(Cameo)
      4. エアビーアンドビー
      5. アップル
      6. サブスタック(Substack)
      7. ウーバー
      8. ヒップキャンプ
      9. スナップチャット
      10. ゴート(GOAT)
      11. ワッツアップ
      12. ワービー・パーカー
      13. カーム(Calm)
    2. 戦略2:自分の好奇心に注意を払い、いじくり回す
      1. コインベース
      2. グーグル
      3. オープンシー
      4. ミュージカリー(通称:TikTok)
      5. ツイッター
      6. ティンダー
      7. デュオリンゴ
      8. ヘッドスペース
      9. レント・ザ・ランウェイ(Rent the runway)
      10. ザ・リアルリアル(The RealReal)
    3. 戦略3:すでにうまくいっているものに注目し、それを倍増させる(別名ピボット)
      1. インスタグラム
      2. ユーチューブ
      3. リフト
      4. ピンタレスト
      5. ペイパル
      6. グロッシアー
      7. ディスコード
      8. ツイッチ
    4. 戦略4:パラダイムシフトに注目し、逆算する
      1. スポティファイ
      2. アマゾン
      3. 23andme
      4. インスタカート
      5. ステッチフィックス
    5. 戦略5:友人とブレインストーミングを行い、上記の4つのポイントに注意を払う
      1. サムタック(Thumbtack)
      2. ネットフリックス
      3. イェルプ
      4. レディット
      5. ネクストドア(NextDoor)
      6. ドアダッシュ
      7. バンブル
      8. イベントブライト
  3. 座って考えるべきか、アイデアがひらめくのを待つべきか?
  4. 良いアイデアとは何か?
    1. 1. アイデアについて考えずにはいられない
    2. 2. すぐにプロトタイプ作りに着手し、そのためのスキルも持っている
    3. 3. チャンスに対するユニークな洞察力をもっている
    4. 4. アイデアがわかりやすい
  5. アイデアを思いついたら、どうするか
    1. 1. 安価かつ迅速にプロトタイプを作成し、アイデアを検証する。
    2. 2. 潜在的な顧客に話を聞いて、アイデアを練り直す
    3. 3. 誰のために作っているのかを把握する
  6. 次週:🕵️ 超特殊な人を特定する
  7. 📚 さらに勉強したい方へ
    1. 📣 Lenny’s Talent Collectiveに参加する
    2. 🔥 注目の求人情報

この記事は、「How to kickstart and scale a consumer business」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Lenny Rachitsky
翻訳者: 渡辺圭祐


消える写真、オンデマンドの車、DVDの郵送、NFTのマーケットプレイスなど、すべてはアイデアから始まるのです。アイデアは重要でないと言われても、それを信じてはいけません。

「私自身、アイデアはそれほど重要ではないと思っていましたが、それは間違いだと確信しています。」

サム・アルトマン

このシリーズを始めるにあたり、現在最も成功している50のコンシューマービジネスが、どのようにスタートアップのアイデアを思いついたのかを調べてみました。以下、それを紹介します。

  1. スタートアップのアイデアを思いつくための最も一般的な5つの戦略
  2. 座って考えるべきか、アイデアがひらめくのを待つべきか?
  3. 良いアイデアであることを示すサインは何か?
  4. アイデアを思いついたら、どうすればいいのか?

この記事には、スタートアップの創業ストーリーの最大のコレクションも含まれています。

戦略に入る前に、私の調査から得られたいくつかの教訓(そして驚き)を紹介します:

ハイレベルな要点

  1. これらのコンシューマー創業者は非常に若かった。半数は30歳未満、80%は35歳未満で起業している。
  2. コンシューマー向けスタートアップのアイデアの3分の1以下は、創業者が自分自身の問題を解決しようとしたことから生まれている。私は、これがスタートアップのアイデアの大部分を占めると予想していました。
  3. ビッグアイデアを思いついたとき、積極的にスタートアップのアイデアを考えていた創業者は3分の1以下でした。つまり、ほとんどのスタートアップのアイデアは、有機的に出現したのです。
  4. コンシューマー向けスタートアップの勝利したアイデアのうち、ピボットから生まれたものはわずか18%でした。これも、もっと高いと思っていました。
  5. 創業者の3分の1以下は、プロダクトを構築するために必要なユニークなスキルを持っていた。
  6. ツイッター、スナップチャット、ピンタレスト、コインベース(Coinbase)、ティンダー、カーム(Calm)、エアビーアンドビーなど、コンシューマー向けビジネスの最大のアイデアの半分強は、当時は非常につまらないものだと感じられていた。
  7. 75%以上が2人以上の創業者により創業されている。
  8. 68%にエンジニアの共同創業者がいる。
  9. 42%は以前に会社を立ち上げたことがある。
  10. 創業チームの11%にMBAを取得した共同創業者がいた。
  11. ドアダッシュの1社だけが、潜在的な顧客やユーザーと積極的に話すことによって、アイデアを思いつきました。

私が行った分析は、このグーグル・シートで見ることができます。

スタートアップのアイデアの出し方

最も成功している50社以上のコンシューマー企業を調査した結果、優れたスタートアップのアイデアを思いつくための共通の戦略は5つしかなく、そのすべての根源は以下に注意を払うことに起因します:

  1. 自分自身の問題に注意を払い、それを解決する (~30%)
  2. 自分の好奇心に注意を払い、いじくり回す(~20%)
  3. すでにうまくいっていることに注意を払い、それを倍増させる (~18%)
  4. パラダイムシフトに注意を払い、逆算する (~15%)
  5. 友人とブレインストーミングを行い、上記の4つのポイントに注意を払う(〜15%)

これらの戦略を、今日の最大手のコンシューマービジネスに当てはめてみました。

以下、それぞれの戦略を深く掘り下げるとともに、各社の創業ストーリーを紹介します。それでは、さっそく本題に入りましょう。

戦略1:自分自身の問題に注目し、それを解決する

成功したコンシューマー企業の大部分(約30%)は、創業者が単に自分自身の問題を解決し、その解決策が他の人にとっても価値があることに気づいたことから生まれました。

例を挙げると、

  • ドロップボックス:ドリュー・ヒューストン(Drew Houston)はサムドライブを紛失し続けたため、クラウドベースのファイル同期サービスを開発しました。
  • エッツィー(Etsy):ロブ・カリン(Rob Kalin)は、自分の家具を販売する方法を探していましたが、良いものが見つかりませんでした。
  • カメオ(Cameo):スティーブン・ガラニス(Steven Galanis)とマーティン・ブレンカウ(Martin Blencowe)は、NFLのクライアントのためにビジネスを見つける必要があり、有名人へのアクセス権を有料で提供する実験を行いました。
  • エアビーアンドビー:ジョー・ゲビアとブライアン・チェスキーは、家賃を支払う方法を見つける必要があり、エアベッドを旅行者にレンタルすることにしました。
  • アップル:スティーブ・ウォズニアックは、満足できるコンピューターが見つからなかったので、自分で作りました。
  • サブスタック:クリス・ベストとハミッシュ・マッケンジーは、コンテンツとジャーナリズムが向かう方向を憂い、自分たちで解決策を構築することを決意しました。
  • ウーバー:ギャレット・キャンプ(Garrett Camp)は、サンフランシスコで確実に移動できないことに不満を持ち、より良い解決策を試し始めました。
  • ヒップキャンプ(Hipcamp):アリッサ・ラバージオは、素晴らしいキャンプ場を探すのに苦労していたため、それをもっと簡単にするためのウェブサイトを作りました。
  • スナップチャット:レジー・ブラウンは、プライベートな写真を安心して送れるようにしたいと考え、エヴァン・スピーゲルの協力を得て、消える写真を送るアプリを開発しました。
  • ゴート(GOAT):ダイシン・スガノは、エアジョーダンの偽物を買わされたことをきっかけに、よりよい解決策を考え始めました。
  • ワッツアップ:ヤン・コムは、友人の近況を知るためのシンプルな方法を求めていました。
  • ワービー・パーカー(Warby Parker):高価なメガネを紛失していた創業者たちは、もっと安く、もっと簡単にオンラインで注文できる方法があるはずだと考えました。
  • カーム(Calm):マイケル・アクトン・スミスは、瞑想が自分の苦しみに対処するのに役立つことを発見しました。

ポール・グレアムが言うように、「自分を苦しめるものには特に注意を払え」。

以下は、創業者たちが直面していた問題をどのように克服し、それによって起業のチャンスに気づいたかという話です。

ドロップボックス

「どこにでもUSBメモリを持ち歩くのが嫌になり、バスに乗る時でなければ洗濯機に入れるところだった。それは常に災害の一歩手前です。そして、ボストンからニューヨークへ移動中にサムドライブを忘れてしまい、仕事が手につかなくなり、ドロップボックスになるための最初のコード行を書き始めたのです。」

ドリュー・ヒューストン(CEO兼共同創業者)、foundrより

エッツィー(Etsy)

ソース:ユーチューブ

木工で自分の会社を立ち上げ、クチュールパソコンケースを作っていたのですが、それを売るのに最適な方法を探しました。オフラインの世界では、委託販売や卸売りがありますが、どちらも私の好みではありませんでした。また、オンラインの世界も見てみましたが、どちらもあまりうまくいきませんでした。

そして、『Get Crafty』の生みの親であるジーン・ライラ(Jean Railla)と仕事をするようになり、魔法のような出来事が起こりました…。彼女は私に、『Get Crafty』の再構築を手伝ってほしいと頼んできたのです。それが、私がウェブサイトをデザインするようになったきっかけです……。私は自分の家具を売りたいと思っていたので、そのアイデアが浮かんで、『Get Crafty』にマーケットプレイスを追加することをジーンに相談しました。彼女は、そして私もおそらく同意見だったと思いますが、マーケットプレイスは『Get Crafty』の中でやるのではなく、別に始めたほうがいいだろうと。『Get Crafty』は本当に人々が話し合うコミュニティでしたから、あることがきっかけで、マーケットプレイスとして作るというアイデアが生まれました。

そして、エッツィーを始めた当初は、自分が作っているものを売りたいところにマーケットプレイスを作って、それからすぐにこれらのものを作ることに戻ろうという考えでした。」

ロブ・カリン、共同創業者、From Scratchより

カメオ(Cameo)

「会社の始まりは、スティーブンとマーティン(共同創立者)が葬儀の席でおしゃべりしていたとき、マーティンは、私たちが最近カシアス・マーシュを管理するNFLエージェントになったこと、彼のブランド取引などを見つけるのに苦労していることについて話していました。

そこで彼らは、XドルでZのアスリートとYのアクティビティができる会社を立ち上げることにしたのです。例えば、マイケル・ジョーダンとゴルフに行く、セリーナ・ウィリアムズを娘の誕生日に招待する、などです。カメオが解決しようとした具体的な問題は、マーティンが抱えていた現金が支払われないという問題だった。最初はね。」

デボン・タウンゼントCTO兼共同創業者

エアビーアンドビー

ソース:Sequoia

「サンフランシスコに着いて、ジョーから家賃は1,150ドルだと聞かされました。そして、私は家賃を払うだけのお金を持っていません。ところがその週末、サンフランシスコで国際デザイン会議が開かれることがわかったんです。サンフランシスコのホテルはすべて完売していました。そのとき、私たちはこのアイデアを思いついたんです。『デザイン会議のために、この家を民泊にしたらどうだろう』ってね。

残念ながら、私はベッドを持っていなかったのですが、ジョーはエアベッドを3つ持っていました。そこで、押し入れからエアベッドを引っ張り出してきました。エアベッドを膨らませて、”airbedandbreakfast.com “と名付けたんです。

このアイデアを思いついたとき、私は母に『私は起業家になりました』と言ったのを覚えています。でも母は、『いいえ、あなたは失業中よ』と言ったんです。」

ブライアン・チェスキー(CEO兼共同創業者)、The Jordan Harbinger Showより

アップル

ソース:テッククランチ

「他人のコンピュータを使うのにお金を払うのは嫌だったので、自分でデザインすることにしたんです。すべてを一箇所に集めたかったし、すでに端末も持っていたから、その途中でした。」

スティーブ・ウォズニアック(共同創業者)、Byte magazineより

サブスタック(Substack)

「クリスは、結局公開しなかったブログ記事の下書きを書いていました。その下書きの中で、彼はアテンション・エコノミーの問題点、それがいかに悪いオンラインコンテンツや行動を誘発し、社会に悪い結果をもたらすかを説いていました。私は、彼が言っていることはすべて正しいですが、メディアの人々はすでにそれらの問題を知っており、彼らに欠けているのは意味のある解決策であると言いました(努力不足というわけではありません)。

私は、彼がより良い方法を提案するいくつかの段落を追加するよう提案しましたが、彼はそれをする代わりに、読者と作家の間の直接支払いに基づくものを作るべきだ、その方がすべての関係者のインセンティブをよりよく調整できるからだ、と私を説得し始めたのです。

私たちは二人ともStratecheryの読者で、ベン・トンプソンがこのモデルはとてもうまくいっていて、なぜもっと多くの人がこれを試さないのか分からないと言っているのを聞いていました。Stratecheryのようなものを運営するために必要なインフラを構築し、維持するための努力は自明ではないので、ベンがやっていることをどんなライターでも簡単にやろうとしたらどうなるのだろうかと考えました。そこで、私たちはブレインストーミングを始めたのです」。

ハミッシュ・マッケンジー(共同創業者)

ウーバー

「この街の悲しいタクシー事情は、ギャレット・キャンプの新しいライフスタイルをひどく窮屈なものにしていました。路上で確実にタクシーを呼ぶことができないため、彼は携帯電話の短縮ダイヤルにイエローキャブの配車番号を入れるようになりました。しかし、それさえも不満でした。『電話しても来ないし、路上で待っている間に、他のタクシーが2台も3台も通り過ぎるんです。それからまた電話するんですが、私が前に電話したことさえ覚えていないんです』。

常日頃から非効率的で落ち着かない日々を過ごしていた中、彼は最初の解決策を思いつきました。タクシーが必要な時、彼はすべてのイエローキャブ会社に電話し、最初に来たタクシーに乗るというものです。

しかし、この方法はタクシー会社から嫌われました。確認はできませんが、キャンプは自分の携帯電話がサンフランシスコのタクシー会社のブラックリストに載ってしまったと考えています。『私の電話には出ないんです。私はタクシーシステムから追放されたのです』。

キャンプは、この街の「ジプシー・キャブ」(黒い無名のセダン車)を使って実験を始めました。街頭で乗客に近づき、ヘッドライトを点滅させて料金を要求するのです。ほとんどのサンフランシスカン、特に女性は、身の危険を感じたり、メーターのないタクシーに不安を感じたりして、こうした無名のタクシーに近づきませんでした。

しかし、キャンプは、ほとんどの車が清潔で、運転手も親切であることを知りました。しかし、運転手にとって一番の問題は、タクシーに乗るまでの間、ホテルの前で待ちぼうけを食らうことでした。そこでキャンプが始めたのが、タウンカーの運転手の電話番号の収集です。『一時は、サンフランシスコで最も優秀な黒塗り車の運転手の電話番号が10〜15件も入っていましたよ』と彼は言います。

そして、彼はさらにシステムを利用し始めました。お気に入りのドライバーには、必要な時間の何時間も前にメールを送り、約束の時間にレストランやバーで落ち合うように伝えました。また、ある夜には、自分と友人たちのために、タウンカーとドライバーを一晩中レンタルした。1,000ドルもする贅沢なもので、夜が更けるころに街を走り回り、みんなを送り出すのは大変なことでした。

その時、キャンプの頭に『007』の未来的な映像が浮かびました。突然、彼は新しい概念に取りつかれたのです。彼は、オンデマンドの自動車サービスや、乗客が携帯電話の地図で追跡できる車のアイデアについて、マックロスキー(彼の恋人)と頻繁に話し合っていました。その年のあるとき、キャンプは、企業やブランドの新しいアイデアやロゴを書き留めるために持っていたモレスキンノートに、「Über」という言葉を書き込みました。

キャンプは、このようなサービスが欲しいという確信がありました。また、アップル社が2008年夏に発表したiPhoneとその新しいアプリストアが、『007/カジノ・ロワイヤル』の未来的なビジョンをついに現実のものとすることも知っていました。iPhoneは、地図上に対象物の位置を表示できるだけでなく、初期のモデルには加速度センサーが搭載されていたため、車が動いているかどうかも分かるようになっていました。つまり、iPhoneがタクシーメーターとして機能し、分単位、マイル単位で乗客に課金することが可能になったのです。

ウーバーのアイデアは、キャンプの頭の中で結晶化しつつありました。」

ガーディアン紙

ヒップキャンプ

ソース:Today

「私は初めてのキャンプを計画していました。それまでにも何度もキャンプをしたことがありましたが、いつも誰かが予約をしてくれていたのです。そのプロセスがどれほど難しいか、信じられませんでした。すべてが多くの異なるウェブサイト上で行われました。多くのサイトが予約で埋まっていました。情報は断片的でした。

ようやくキャンプ場を見つけました。そこに降り立つと、それは素晴らしいものでした。海に向かって歩いていくと、みんなサーフィンをしていました。ここはサーフィンに最適な場所です。ネットでそのキャンプ場については全部読みましたが、どこにもサーフィンのことは書いてありませんでした。私はサーフィンが大好きです。私はただ座ってこの美しい波のブレイクを眺めていましたが、一生懸命やったのに、このキャンプ場での最高の体験を逃してしまったことに気づきました。翌日、車で帰宅したとき、外に出ることが非常に困難であり、インターネットがそれを解決してくれるのではないかと思いつきました。

その年の暮れには、プログラミングを学びました。その年の6月には、超ベータ版のウェブサイトを立ち上げました。」

アリッサ・ラバージオ、CEO兼創業者

スナップチャット

ソース:インサイダー

「レジー・ブラウン(共同創業者)は、ブラントに注意深く指をかけ、そのきっちり巻かれた完璧さに感心していました。このような芸術品を吸うのは、ほとんど恥ずかしかったのです。[中略]話題は女の子に移った。レジーは夢見るような表情を浮かべました。『消える写真が送れればいいのに』彼はぼんやりとそうつぶやきました。[…]

レジーは、この新しいアイデアの有用性に注目しました。消える写真を送る方法です。ナンパ相手に自分のアソコの写真を送る心配もありません。そして、女の子は、消える写真なら、もっと過激な写真を送ってくれる可能性があります。

突然、彼は飛び起きて、エヴァン(・スピーゲル)がいるかどうか確かめるため、廊下をダッシュしました。エヴァンの部屋に飛び込んだレジーは、『おい、すごいアイディアがあるんだ!』と叫びました。レジーが自分のアイデアを説明し終わる前に、エヴァンの顔が明るくなりました。彼はすぐに元気を取り戻し、ほとんど酔っぱらってしまいました。まるで一緒にパーティーをしていたすべての夜のようでした、レジーのアイデアで飲んでいたことを除いては。『100万ドルのアイデアだ!』。エヴァンは最後にこう叫びました。」

ビリー・ギャラガー、『How to Turn Down a Billion Dollars: The Snapchat Story』より

ゴート(GOAT)

「[エアジョーダン5グレープス]が[eBayから]届いたとき、私はとても興奮しました。すぐに箱を開けて匂いを嗅いだんです。エアジョーダン5には独特の匂いがあるのですが、それがなかったんです。靴を履いてみても、しっくりこないんです。同じスニーカースタイルをたくさん買っていると、手にしたとき/足につけたときに何を期待すればいいのかが分かってきます。靴のディテールやジャンプマンロゴがずれて見えたり、後ろのポッドが膨らんで見えたり、靴紐の質感まで違っていたりしたのです。

フェイクシューズの購入は初めてで、全く期待はずれでした。eBayの和解のポリシーが悪く、買い手と売り手に問題を解決する負担がかかるため、私はお金を取り戻すことができませんでした。この体験は私に大きな影響を与え、初めてスニーカーを買うのが楽しみにならなくなりました。

共同創業者のエディーにその時のことを話すと、彼は私に質問を投げかけ始めたのです。

『こんなことは多くの人に起こるのか?』

『eBay以外で最高の仕事をしたのは誰?』

『この問題を解決するためにテクノロジーを活用している人はいるのか?』

『人々はどうやってスニーカーを探すのか?』

私が愛してやまないこの業界は、断片的で安全でないことが明らかになったのです。スニーカーを買う多くの人が、同じような問題にぶつかっていました。サブレディットやソーシャルアカウント、ブログには、偽物の見分け方を紹介するものがあります。NikeTalkのようなフォーラムでは、他の人が探している靴を見つけられるように、スプレッドシートに商品のSKUを書き込む人もいます。基本的に、誰もが本物のスニーカーを見つけて購入するために、情報を寄せ集めていたのです。

私たちは、既存の問題の多くをテクノロジーで解決できると考えていましたし、この分野ですでに持っている知識によって、さらに優位に立つことができました。また、情熱的で若い世代を対象とした業界を見つけることも重要だと考えました。GOATはその条件にぴったりで、私たちは何かをつかんだと思いました。あとは、作り始めるだけです」。

ダイシン・スガノ共同創業者)、Matrix Partnersより

ワッツアップ

「ヤンは、自分のアドレス帳を見せてくれました。彼の考えでは、人々の個人名の横にステータスがあれば、とてもクールなものになるというものでした」。そのステータスは、通話中なのか、バッテリーの残量が少ないのか、ジムにいるのか、などを表示するものでした。[…]

コーム(Koum)は、世界中のあらゆる電話番号とアプリを同期させるためのバックエンドコードを作成し、国際電話の接頭辞が記載されたウィキペディアの項目を熟読するのに何日もかけました。彼は、何百もの地域のニュアンスに対応するために、何か月もかけてうんざりするようなアップデートをすることになるのです。

アレックス・フィッシュマンForbes

ワービー・パーカー

「[ビジネススクールに入る直前]、私は誤って飛行機に眼鏡を置き忘れてしまい、700ドルもかかってしまったことがあります。フルタイムの学生として、新しいメガネにそれだけのお金を払うことを正当化することはできなかったんです。その頃、アップルストアで200ドルも出して買ったiPhone 3Gは、魔法のような機能を備えていました。一方、メガネの技術は800年も前のものであり、意味を成しませんでした。[…]

私は、なぜメガネがこんなに高いのか、誰にでも文句を言っていました。そして、アンディはメガネを失くし続け、オンラインで何でも買っていたのですが、なぜ新しいメガネをオンラインで買えないのか、なぜ誰もメガネをオンラインで効果的に売っていないのかが理解できなかったのです。そこで私たちは、アイウェア業界のさまざまな部分に不満を感じながら、この会話を始めました。

[共同創業者]のニールは、眼鏡の非営利団体で何年も働いていたので、おそらく私たちよりもずっと詳しいと思います。ある日、みんなでコンピューター室に集まって、ニールにいろいろと質問したんですが、そのとき私たちは、この大きなチャンスに目を見張ったんです。そして、『そうだ、メガネを売ればいいじゃないか』と思いつきました。そして、私たち全員の頭の中で電球が光ったのです。」

デイブ・ギルボアニール・ブルメンタール、共同創業者、How I Built Thisより

カーム(Calm)

「私は、毎日オフィスに行くことに耐えられなかったのです…。毎朝、頭痛と体の痛みで目が覚め、トラックに轢かれたような気がして、鎮痛剤を飲んでいました。だから、この鎮痛剤で一日のスタートを切るような感じでした。ビジネスの根本的な問題に取り組んでいなかったり、取り組もうとしてもうまくいかなかったり、そういう時期があったからこそ、カームにつながったのです。

創業するのに最高のビジネスの一つは、痒いところに手が届くようなもので、私は瞑想が何なのか、マインドフルネスが何なのか知りませんでした。しかし、私の親愛なる友人であるアレックス・チューは、彼が10代の頃(とても珍しい10代でした)買ったCD-ROMで瞑想をしていました。彼はよく私に、『いいか、お前、瞑想をやってみろ』と言っていましたが、私は『そんなのやめちまえよ。そんなものは必要ない。何か実用的なことを教えてくれ』という感じでした。

しかし、ゆっくりと、しかし確実に、今までわからなかったものが分かり始め、私はある程度それを理解しました。私にとって重要なブレークスルーは、私が前にやったことがないことをしたときでした。私は一人で休暇を取りました。オーストリア・アルプスのリゾート地で、朝からテニスをし、ノートに落書きをし、本を読み、噂に聞いていた瞑想に挑戦しました。そして、それはただ信じられないものでした。霧が晴れました。崖に顔を押しつけられ、ビジネスで直面している問題の出口が見えなかったのですが、一歩下がって見通しを立てるだけでも、非常に価値があることでした。そして、たくさんの本や研究論文を読んで、これは科学だ、マインドフルネスは人間の脳の配線を変える方法なんだと気づきました。これをシンプルに、親しみやすく、誰にでもできるようにしたらどうでしょう。これは世界最大のチャンスであり、ビジネスのひとつになるかもしれません。

帰ってきて、アレックスとそのことを話したら、『そうか、やっとわかったか。行こうぜ』って。[…]

彼はcalm.comを所有している人を見つけて、『なんて素晴らしいドメインなんだ、世界をもっと落ち着かせる手助けをして、そこでどんなビジネスを構築できるんだ』と言ったのです。私は『このドメインはいくらですか』と聞きました。すると彼は『100万ポンド(約1億円)だ』と言うので、私は『そうですか』と答えました。

1年後、テレビゲームをしていたら、calm.comを持っている人が売りたいから取引してくれと言うんです。もっともっと安い値段で買うことができたんです。それでcalm.comを買ったんですが、このビジネスのためのドングリの種をまいたようなものです」。

マイケル・アクトン・スミス(共同創業者)、The Diary of a CEOより

自分自身の問題を解決することで、スタートアップのアイデアを見つけるためのアドバイス。

  1. 自己認識を深めること:日々、自分が抱えている課題に注意を向けましょう。
  2. やる気を出す:自分を行動に駆り立てるような問題に注意を払いましょう。
  3. 自分のアイデアを当たり前だと思わない:あなたが価値を感じているなら、他の人もそう思っているはずです。

戦略2:自分の好奇心に注意を払い、いじくり回す

コンシューマー向けビジネスの最大手の20%は、創業者が好奇心と直感に従い、時間をかけてアイデアをいじり続けた結果、誕生しました。ほとんどの場合、アイデアを思いついた後、すぐにプロトタイプを作り、そこに何かがあることを確認しました。

例を挙げると、

  • コインベース:ブライアン・アームストロングはクリプトのアプリケーションに興奮し、ビットコインのウォレットを作ることにしました。
  • グーグル:ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、ウェブの数学的特性に興味を持ち、ページをランク付けするためのクローラーを構築しました。
  • オープンシー(OpenSea):デビン・フィンザー(Devin Finzer)は、新しいERC721標準が可能にしたことに興奮し、数ヶ月でオープンシーのベータ版を出荷しました。
  • ミュージカリー(通称TikTok):アレックス・ジュー は、ビデオと音楽を組み合わせるティーンエイジャーに注目し、すぐにプロトタイプを作りました。
  • ツイッター:ジャック・ドーシーは、シンプルなステータスアップデートを友人に送る方法を作ることに興奮し、2週間でプロトタイプを作りました。
  • ティンダー:ハッカソンでプロトタイプを作った初期のチームは、その作業をやめられなくなりました。
  • デュオリンゴ:ルイス・フォン・アン(Luis Von Ahn)は、学問的に言語学習の探求を始め、それをビジネスとして構築できるかどうか、興奮を覚えました。
  • レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway):ジェン・ハイマン(Jenn Hyman)の妹は、主に写真のために一度ドレスを着てみたいと言ったが、それでも新しいドレスを買わなければならなかった。
  • ザ・リアルリアル(The RealReal):ジュリー・ウェインライト(Julie Wainwright)の彼女は、買い物に出かけた先で高級な委託販売品を購入し、それがオンラインでもっと効果的に行えることを認識した。

「自分を騙してアイデアに気づかせる良い方法は、クールだと思えるプロジェクトに取り組むことです。そうすれば、自然と足りないものを作る傾向が強くなります。すでにあるものを作っても、それほど面白いとは思えないでしょうから。」

ポール・グレアム

スティーブ・ジョブズが言ったように、人が自分のやっていることに多くの情熱を持たなければならないのは、「そうでなければ、どんな理性的な人でもあきらめてしまうからです。好きでなければ、失敗する。だから、好きでなければならないし、情熱を持たなければならないです。」からです。

ここでは、好奇心に従うことで巨大なビジネスへの道を見つけた創業者たちのストーリーを紹介します。

コインベース

ソース:ツイッター

「たまたまハッカーニュースで(ビットコインのホワイトペーパーを)見たんです。ネットでなんとなく読んでいたのですが……。初めて読んだときに理解できたとは言いませんが、私はコンピュータサイエンスと経済学の学位を持っていて、その何かが私の心を捉えたのです。この本を読んで、『これは5年間で一番重要なことかもしれない』と思ったのをはっきりと覚えています。[…]

そして、エアビーアンドビーでは、世界190カ国で事業を展開しようとしていました。どの国でどのようにお金が動いているのか、知ることは不可能でした。金融サービスが世界のイノベーションを妨げている、人類の進歩を妨げている、それは人々がこのグローバル経済に参加する自由がないためだ、イノベーションに対するあらゆる障壁のためだ、と私は感じていました。

想像してみてください アメリカのような社会が持っているイノベーションやセキュリティへの信頼を 190カ国で実現できたとしたら。インターネットや携帯電話が使えるだけでクリプトが使えるようになるんです。その手助けができるとしたら……。そう考えたら、ものすごくワクワクしてきました。」

ブライアン・アームストロング(CEO兼創業者)、How I Built Thisより

グーグル

「[ラリー]・ペイジは、ウェブ検索のためのより良い方法を探していたわけではありません。スタンフォード大学の卒業生がインターネット企業を創業して大金を得ていたにもかかわらず、ペイジは主にその数学的特性からウェブを面白いと感じていたのです。各コンピュータはノードであり、ウェブページのリンクはノード間の接続であるという、典型的なグラフ構造でした。[…]

これは、実りある研究でした。あるページから別のページへのリンクをたどるのは簡単ですが、バックリンクを発見するのは簡単ではないことにペイジは気がつきました。つまり、あるページを見たときに、そのページにどのようなリンクが張られているのかが分からないのです。このことが、ペイジを悩ませました。彼は、誰が誰にリンクしているのかを知ることができれば、非常に便利だと考えたのです。[中略]ペイジは自分が何に巻き込まれているのかよくわからないまま、クローラーを作り始めたのです」。

ジョン・バッテル、Wired

オープンシー

「当初、オープンシーのアイデアはクリプトキティーズの関心から生まれました。デジタル商品のマーケットプレイスはかなり以前から存在していますが、それらは自己完結型のエコシステムになりがちです。特定のゲームのための個別のマーケットプレイス、ドメイン名のマーケットプレイス、チケットのマーケットプレイスなどです。デジタル資産のためのイーベイのようなものをスケールアップすることは、デジタル所有権に関する標準化がほとんどなされていなかったため、困難でした。ERC721が登場したことで、初めてそのような発想が可能になったように感じました。

私たちは、新しいERC721プロジェクトのさまざまなコミュニティに参加することでアイデアを検証し[…]、数カ月以内にオープンシーの最初のバージョンを出荷し、プロダクトを世に送り出し、アーリーアダプターのテストを開始しました。」

デビン・フィンザー(CEO兼共同創業者)、DeFi Primeより

ミュージカリー(通称:TikTok)

「ある日、サンフランシスコからマウンテンビューに向かうカルトレインに乗ったら、10代の若者たちで混雑していました。彼らの行動を観察すると、50パーセントは音楽を聴き、残りの50パーセントはスピーカーを乗せて音楽を加えながら写真やビデオを撮っていました。ティーンはソーシャルメディア、写真、ビデオ、音楽にとても情熱的なので、『この3つの非常にパワフルな要素をひとつのアプリにまとめ、ミュージックビデオのためのソーシャルネットワークを構築できないか』と考えたのです」。

アレックス・ジュー(CEO兼共同創業者)、Forbesより

ツイッター

「ジャック・ドーシーはセントルイスで育ち、14歳のときに配車ルーティングに夢中になりました。それは彼がソフトウェアを書きたいと思ったものだったので、それに取り掛かったのです。彼はセントルイスにいて、そこにはバイクメッセンジャーはいなかったのですが、これにこだわって、配車用のオープンソースソフトウェアを書き、今日までさまざまなタクシー会社で使われています。彼はこのルーティングの歴史があり、インスタントメッセージのステータスメッセージを初めて見たときから、『これを利用してステータスサービスを作ったらどうだろう』と考えていたのです。

つまり、『自分の近況を簡単に友だちと共有できたら、友だちも自分の近況を知ることができるのではないか』というアイデアです。でも、ブログの記事やライブジャーナルのエントリーを全部書くのは面倒です。当時、私たちはSMSに興味があったので、SMSを使って何か面白いことができないかと考えていました。そして、ステータスとSMSを結びつけたのです(2006年3月)。

そして、2週間でプロトタイプを完成させ、オデオのみんなに見せました。すると、みんな大喜びでした。ジャックからこのアイデアを聞いたとき、クールなアイデアだと思いましたが、実際に作ってチームに見せると、みんなが使い始めました。初めて使った週末、私は家のカーペットを全部はがして、ひどい週末を過ごしていたと思います。自分がやっていることが、下を見れば彼がやっていることがわかるということに、ただただ衝撃を受けたんです。『自分がそれを知っているなんて信じられない」と、思わず笑ってしまいました。』

ビズ・ストーン(共同創業者)、MediaShift

ティンダー

「共同創業者のショーンは、入社して2週間ほど経ったころ、ハッカソンに参加しました。ショーンは、以前からデート・プロダクトを作り上げる可能性があると話していたので、2つの情熱的なプロジェクトの互換性から、2人[ショーンとジョー・ムニョス]はペアを組むことになりました。2月のハッカソンの期間中、彼らはティンダーの最初のプロトタイプを作りました。」

ジョーダン・クルック、テッククランチより

デュオリンゴ

「すべては、私と博士課程の学生セヴリン・ハッカーとの間のカーネギー・メロン大学の学術的なプロジェクトとして始まりました。私は2社目の会社をグーグルに売却したばかりで、2人とも教育に関連することに取り組みたいと考えていました。教育は非常に一般的なものなので、(米国を除く)どこでも大きな需要がある1つの種類、言語教育に集中することにしました。」

ルイス・フォン・アン共同創業者)、Quoraより

ヘッドスペース

「スポーツ科学の学位取得の途中でイギリスを離れ、何らかの意味を求めてアジアを旅し、何年もの修行の末にチベット仏教の僧侶として出家しました。1日4回の儀式的な瞑想の中で、私はこの伝統の外にいる多くの人々が瞑想とは何かを知らない、あるいは否定的な先入観を持っていることに気づきました……。

そして、袈裟ではなく、スーツにネクタイ姿でイギリスに戻り、マインドフルネスに関心のある医師を見つけました。そして、その医師のロンドンのクリニックで働くことになり、そこで広告会社の重役であるリッチ・ピアソンに紹介されました。私が瞑想を教え、彼がマーケティングのレッスンをするというスキルの交換を始めたのです。

リッチは素晴らしいビジョンを持っていて、私がやっていることの可能性を見出してくれました。彼は、当時とても新しいものであったアプリを作るように私を説得しようとしましたが、私はそれは悪い計画だと思い、2010年にイベントシリーズとしてヘッドスペースを立ち上げました。イベントでインスピレーションを受けましが、家に帰ってから何をしたらいいかわからないというフィードバックを受け、リッチは私にセッションの一部を録音するように頼みました。それから約3年後、その録音がアプリのメイン素材となったのです。」

アンディ・プディコム(共同創業者)、Soho House

レント・ザ・ランウェイ(Rent the runway)

「ビジネススクールの2年目、サンクスギビングで帰省したとき、ベッキーのアパートにいたんです。ベッキーはお店に行って、家賃より高いドレスを買ったばかりだったんです。私は責任感の強い姉として、クレジットカードで借金をするくらいなら、クローゼットにあるドレスをもう一度着たほうがいいと言ったんです。すると彼女の返事はこうでした。私のクローゼットにあるものは、私にとってすべて死蔵品よ。写真を撮ったし、フェイスブックにもアップされたし、新しいものが必要なの。

ベッキーは25歳で、ニューヨークに住む普通の女の子でした。彼女はセレブではないけれど、写真を撮られること、そして何かを着ることができないことについて話していたんです。

というのも、私は妹と、素晴らしいドレスを着て、自信を持ってパーティーに参加し、美しいと感じる経験について会話をしているのだと気づいたのです。妹が気にしていたのは、そのことだったのです。妹は、クローゼットの中にあるアイテムの所有権など気にもしていませんでした。もうひとつ気にしていたのは、パーティーの後にフェイスブックに投稿して、みんなと共有できるような写真です。」

ジェン・ハイマンCEO兼共同創業者)、How I Built This

ザ・リアルリアル(The RealReal)

「ザ・リアルリアルのアイデアは、ガールフレンドとショッピングに出かけたときに生まれました。私の彼女は、高級ブティックの裏にある委託販売用のラックから商品を購入しました。私は、彼女が委託販売で買い物をしたり、オンラインの再販サイトで購入することを知りませんでした。私が彼女にその店のオーナーを信頼している理由を尋ねると、彼女は、お店は美しくキュレートされ、シャネル、ルイ・ヴィトン、グッチなど、驚くほどお得に買えるからだそうです。その時、私は委託販売に対する認識を改めました。

そして、ラグジュアリーマーケットとリセールマーケットを徹底的に調査し、自分でもリセール方法を試しました。[…]

2011年12月、私はハッとし、3月初旬には社名を決め、ビジネスを登録し、資本金を集めました。2011年6月、私は店をオープンさせたのです」。

ジュリー・ウェインライト(CEO、共同創業者)、Marin Magazine

好奇心に従ってスタートアップのアイデアを見つけるためのアドバイス

  1. いじくり回す時間を確保する:ワクワクしたら、そのアイデアを探求するためのスペースを生活の中に作りましょう。
  2. 構築する:考えるだけではダメです。プロトタイプを作りましょう。
  3. シンプルに:できるだけ安く、できるだけ早く、そのアイデアをテストしましょう。あなたの最初のアイデアが正確に正しいとは限りません。

戦略3:すでにうまくいっているものに注目し、それを倍増させる(別名ピボット)

コンシューマービジネスを成功させるための3番目に一般的な方法は、私が調べた企業の15%強が辿った方法ですが、まず何かを立ち上げ、どの要素が(予想外に)最もうまくいくか細心の注意を払い、そしてその要素をダブルダウン(別名ピボット)することです。例を挙げると、

  • インスタグラム:ケビン・シストロムは、人々がBurbnを使って場所にチェックインするのではなく、他のアプリからダウンロードしたフィルタリングされた写真を共有することが多いことに気づきました。
  • ユーチューブ:創業者たちは、動画ベースの出会い系サイトが、あらゆる種類の動画のための汎用プラットフォームとしてより有用であることに気づきました。
  • リフト:ローガン・グリーンとジョン・ジマーは、長距離ライドシェアサービスのジムライドが苦戦していること、しかし短距離移動に対する需要は十分にあることに気づきました。
  • ピンタレスト:ベン・シルバーマンは、彼のEコマースアプリToteがうまくいっていませんが、人々はお気に入りのアイテムのコレクションを保存するのが好きだということに気づきました。
  • グロッシアー:エミリー・ワイスは、既存の美容コミュニティInto the Glossで、パーソナライズされた美容プロダクトのニーズが芽生えていることに気づきました。
  • ペイパル:創業チームは、何が可能で何が有用かを学んだ上で、携帯電話での暗号化から、PalmPilotでの現金化、メールでの現金化へと1年でピボットしました。
  • ディスコード:ジェイソン・シトロンは、自分のゲームビジネスはうまくいっていませんが、その音声とテキストのチャット機能が人々に愛されていることに気づきました。
  • ツイッチ:チームが試した他のプロダクトはすべて衰退しましたが、このサイドプロジェクトはグロースを続けました。

この戦略の最も優れている点は、自分がいま最も興奮するものを何でも立ち上げようという気にさせることです。なぜなら、たとえそのアイデアがうまくいかなかったとしても、それがより大きなアイデアにつながるかもしれないからです。

「星は決して揃わないし、人生の信号がすべて同時に青になることはありません。宇宙はあなたに逆らうことはしませんが、わざわざピンを並べようとはしません。条件は決して完璧ではありません。『いつか』は、あなたの夢を一緒に墓場まで持っていく病気なのです。賛否両論リストも然り。自分にとって重要なことで、『いずれ』やりたいと思ったら、とにかくやって、途中で軌道修正すればいいのです。」

ティム・フェリス

「もし、どちらかを選ばなければならない2つの道があり、一方が他方より明らかに優れていないとしたら、どちらがわずかに優れているかを見極めようと多くの時間を費やすよりも、ただ1つを選んでそれを実行することでしょう。そして、時には間違っていることもあった……しかし、選択の際に延々と迷うよりも、ただ道を選んで実行したほうがいいことも多いのです。」

イーロン・マスク、ペイパルについて語る

ここでは、ピボットや、すでにうまくいっていたアイデアを単に倍加させることによって、巨大なビジネスへの道を見つけた企業のストーリーを紹介します。

インスタグラム

ソース:Inc.

インスタグラムを始める前、私たちは全く別のスタートアップをやっていたことを、ほとんどの人は知りません。私たちはBurbnというものをやっていました。ユーザー数は100人程度だったと記憶しています。チェックインアプリで、フォースクエアとGowallaが合体したようなものでした。[…]

でも、実際に使ってみて、うまくいっていないことがよくわかりました。ただ、HipstamaticやCameraBagなど、世の中に存在するフィルターアプリから正方形の画像を投稿することだけは、人々に支持されました。

そして、その投稿は最も多くの「いいね!」を獲得しました。最も多くのコメントを得ることができました。私はBurbnの写真以外の投稿を無視するようになりました。

ある日、共同創業者のマイクと私は座って、『よし、何かを変えなくては、誰も私たちのやっていることを知らないのだから』と言いました。私たちは、『そうだ。とにかく、私たちのサービスでみんながやっていることをやってみよう。写真以外はすべてカットしよう。フィルターを組み込んで、「いいね!」やコメントもできるようにして、どうなるか見てみよう』と。本当に、ローンチした初日に2万5,000人のユーザーを獲得したんです」。

ケヴィン・シストロム(CEO兼共同創業者)、Startups.com

ユーチューブ

「ユーチューブが2005年5月にローンチした当初は、あらゆる種類の動画を扱う汎用的なプラットフォームというよりも、まだ出会い系サービスを目的としていました。そのため、初期のころは、(写真/メッセージだけでなく)デートのための動画プラットフォームのニーズがあるかどうかを確かめようとしていたのです。

そのために、ユーチューブに来るユーザーを募集しようとしたのを覚えています。すぐに、出会い系プラットフォームはメディアタイプとして動画の需要がないことに気づいたので、あらゆるタイプのコンテンツクリエイターを狙うためにアプリをオープンしました。」

スティーブ・チェン(共同創業者

リフト

「私たちはジムライドという長距離ライドシェアプラットフォームを運営していましたが、ビジネスを見ていると、人々が長距離の移動をすることはかなり稀であることに気づきました。また、『今週末にロサンゼルスに向かう』以上の信頼性が求められており、ピックアップの調整も大きな課題でした。

ジョン・ジマー[共同創業者]は、あるハッキングの日に「On My Way」というものをモックアップしました。これは、ジムライドのピックアップのために乗客に近づくと、それを通知するサービスです。また、「ジムライド・インスタント」という名前も考えていましたが、それが合法かどうかは分かりませんでした。

ところが、ウーバーの黒塗り車両が普及し始めた頃、サイドカーがまさに私たちが考えていたプロダクトをローンチすると発表したのです。これは、私たちが比喩的な意味でアクセルを踏むのに必要な、背中を押す一撃でした。創業者たちは、エンジニアとデザイナーを数人集め、3週間後には、ジムライドの小さなチームが、多くのハードワークを経て、リフトを立ち上げたのです」。

エヴァン・ゴールディンアダム・フィッシュマン(リフトの初期社員

ピンタレスト

しかし、Toteのユーザーは、アプリで購入することはありませんでしたが、「お気に入り」のコレクションをどんどん集めて、友人と共有していました。子供の頃、昆虫を集めていたシルバーマンにとっては、コレクションを互いに共有する傾向があることを示す一例となりました。すでに、バーチャルなコレクションを公開するサイトは数多くありましたが、どれも1つのアイテムに限定されていました。

そこでシルバーマンは、Toteを立ち上げて1年後、本や愛らしい犬の写真、婦人服など、自分のコレクションをすべて同じサイト上で表示できる視覚的に魅力的な方法を提供することに切り替えたのです。[中略]立ち上げから半年後、当時はまだ招待制だったピンタレストが、8万ものコレクションを持つに至ったのです」。

Fast Company

ペイパル

「もちろん、どちらのチームも、世界一の電子メール決済システムを構築しようとはしていませんでした。X.comにとっても、Confinityと同様、この機能は後付けで生まれたものでした。

1999年秋、マスクとX.com社のエンジニアが、ユーザー間で電子メールを使った決済について議論したところ、メールアドレスは、当座預金番号のようなユニークな識別子として機能することが分かりました。そのエンジニアであるニック・キャロルは、このプログラムの構築には『それさえあれば』と、わずか数日しかかからなかったと回想しています。

マスクも同意見でした。『送金するのは簡単なことです。文字通り、SQLデータベースで数字を1つ選び、それをデクリメントして、データベースの別の行に移動させるだけです。超バカバカしい。私の子供も作りました。12歳なんですけどね』。

キャロルもマスクも、この機能の成功は意外だったようでした。『完全に拡張機能だった』とキャロルは認めました。エイミー・ロウ・クレメントは、X.comのチームが個人間決済のプロダクトを単に『ユーザー獲得エンジンで、コアビジネスではありません。それは、オンライン金融小売店だった』と考えていました。

実際、マスクは、X.comの他のプロダクトが同じように盛り上がらないことに苛立っていました。『金融サービスの集積という難しい部分を見せようと思っても、誰も興味を示さない。そして、電子メールでの決済を見せると、これが簡単な部分ですが、誰もが興味を示したのです』と、マスク氏は2012年のカリフォルニア工科大学の卒業式で説明しました。『だから、環境からフィードバックを得ることが重要だと思います。できるだけクローズドループにしたいのです』。

フラストレーションを感じながらも、チームはプロダクトの強いマーケットからのフィードバックに応え、初期段階のEメールプロダクトに焦点を移しました。」

ジミー・ソニ著The Founders: The Story of Paypal and the Entrepreneurs Who Shaped Silicon Valley

グロッシアー

私が「Into the Gloss」(彼女が形成したコミュニティ)を始めたのは、人々が美を称え、日常生活を共有できる空間を作りたかったからです。私がインタビューした女性たちや、このサイトを中心に形成されたコミュニティは、自分たちの経験について多くのことを語ってくれました。そして私は、ブランドが自分たちの顧客の力を活用できていないことに気づきました。これまでは、『ブランドは最善を知っている』というアプローチ、つまり、問題があって、それを解決するためのプロダクトというものでした。私たちのコミュニティと一緒に、人々が自分自身の専門家として力を発揮できるような、現代的なビューティ体験を創造できると確信したとき、本当にアハの瞬間でした」。

エミリー・ワイス(CEO兼創業者)、Irish Tatler

ディスコード

「彼の最初の会社は、ビデオゲームスタジオとして始まり、2008年のiPhoneアップストアの初日にゲームをローンチしたほどでした。しかし、それは立ち消えになり、最終的にはOpenFeintというゲーマー向けのソーシャルネットワークにピボットしました。彼はそれを日本のゲーム大手Greeに売却し、タブレットとコアなマルチプレイヤーゲームを中心に、新しいタイプのゲーム会社を作るというアイデアを持って、2012年に別の会社Hammer & Chiselを立ち上げました。この会社は、リーグ・オブ・レジェンドによく似たオンラインマルチプレイヤーゲームであるFates Foreverというゲームを作りました。また、このゲームにはボイスチャットとテキストチャットが組み込まれており、プレイヤー同士が会話しながらプレイすることができました。

そして、シリコンバレーらしいことが起こりました。シトロンと彼のチームは、自分たちのゲームで最も優れているのはチャット機能であると気づいたのです。これは2014年頃のことで、誰もがまだTeamSpeakやスカイプを使っていて、誰もがまだTeamSpeakやスカイプを嫌っていた時代です。シトロンとHammer & Chiselチームは、もっといいものができると思い、やってみようと思ったのです。

それは、痛みを伴う移行でした。Hammer & Chiselは、ゲーム開発チームを閉鎖し、会社の3分の1を解雇し、多くの人を新しい役割にシフトさせ、約6ヶ月かけて会社とその文化を方向転換させました。その新しいアイデアがうまくいくことも明らかではありませんでした。ディスコードに全面的に参加しようと決めたとき、ユーザー数は10人ほどでした」とシトロンは言います。リーグ・オブ・レジェンドをプレイしているグループが1つ、WoWのギルドが1つ、他はそれほどでもありませんでした。友達に見せると、『これはいい!』と言って、全く使ってくれないんです」。

ユーザーと話し、データを見た後、チームはその問題に気づきました。ディスコードは確かにスカイプより優れていましたが、それでもまだあまり良くはありませんでした。通話ができない、品質が安定しない。ディスコードのチームは、アプリの最初の数ヶ月の間に、音声技術を3回完全に作り直すことになりました。同じ頃、ディスコードは、ユーザーが自分のサーバーで他の人を管理したり、禁止したり、役割や権限を与えたりできる機能を開始しました。そのとき、ディスコードを試した人たちは、すぐにその良さに気づき始めました。そして、友人にそのことを伝えました。」

デイヴィッド・ピアース、Protocol

ツイッチ

「[エメット・シアーとジャスティン・カン]二人が初めて一緒に仕事をしたのは、イエール大学のクラスメートとして、2005年にKikoというウェブカレンダーのスタートアップを立ち上げた時でした。しかし、それは長くは続きませんでした。マイクロソフト・アウトルックのパワーと、当時グーグルの新しい電子メールプロダクトであったGmailのモダンなウェブ感覚を組み合わせるためにデザインされたKikoは、立ち上げから1ヶ月後、別のソリューションに埋もれてしまったのです。グーグルカレンダーです。14ヶ月後、Kikoは出口を見つけました…イーベイで25万8000ドルで売られたのです。

この資金を元に、彼らは家族向けソーシャルネットワークのフェイスブックや、暗闇で光る遺伝子接合バラの販売会社など、さらなる挫折の連続から学びました。そして二人は、Y Combinatorの創業者ポール・グレアムが5万ドルを投じてでも見たいと思ったあるアイデアにたどり着きました。

Justin.tvは2007年初めに放送を開始し、すぐに大きな話題となりました。カンはNBCのTodayとABCのNightlineに出演したこともあります。シアーは、「トゥルーマンショー」のような実験がうまくいったのは、今回のプロダクトがクリエイターが自分たちのために欲しいと思うものだったからだと言います。

2007年10月、このサイトは他の放送局にも開放されました。3年後、Justin.tvはベンチャーキャピタルから720万ドルを調達し、1カ月に約3,100万人のユニークユーザーを獲得していました。

2010年末、同社は2つの「スカンクワークス」プロジェクトに取り組み始めました。1つは、マイケル・セイベルが率いるJustin.tvのモバイル向けプロジェクトで、これがスピンオフしてインスタグラムの動画向けスタートアップSocialcamとなり、2012年に6000万ドルでAutodeskに売却されることになります。もうひとつは、シアーが率いるタスクフォースで、サイト上のビデオゲームコンテンツの視聴者を増やすためのもので、これも独自のプロダクトとしてTwitchTVという新サイトになります。

TwitchTV(後にTwitchと短縮)は、前身サイトをしのぐ勢いでした。一方、Justin.tvのスターは色あせてしまいました。」

エリック・ジョンソン、Vox

倍返しでスタートアップのアイデアを見つけるためのアドバイス:

  1. 愛すべき者たちを殺す:あなたは自分のアイデアを気に入っていても、他の人がそれを気に入らなければ、それはうまくいきません。
  2. うまくいっていることを当たり前だと思わない:もし、あなたのプロダクトのどこかが、人々にとって価値のあるものであることが証明されているなら、それは稀有なことです。それを受け入れてください。
  3. いろいろと試す:より多くのアイデアを出せば出すほど、より刺さるものが見つかる可能性が高まります。

戦略4:パラダイムシフトに注目し、逆算する

アイデアを出すためのもう1つの一般的な戦略は、世界が進んでいる場所のシフトに気づき、それを逆算することです。マイク・メープルズ・ジュニアは、「未来から始めて、逆算する」と言い、ポール・グレアムは、「未来に生き、そして足りないものを作る」と言いました。

「モバイルからソーシャル、クリプトまで、技術のスピードアップ、コストダウン、普及率の向上など、数年の複合的な発展がどのようなものになるか、想像できなかった例はたくさんあるのです。私たちは、速いスピードで複合的に発展しているもの、あるいはその代わりに、導入が合理的に急速に拡大しているものを監視すべきです。その証拠に、その瞬間に目の前にある数字よりも、成長率や外挿された技術曲線の中にあるのです」。

エラッド・ギル(創業者・投資家

それを実践している創業者の例:

  • スポティファイ:ダニエル・エックは、音楽の未来が有料であることに気づきました。
  • アマゾン:ジェフ・ベゾスは、ウェブが年率2,300%で成長していることに着目し、オンライン販売で最も利益を得られる商品、すなわち本を見つけました。
  • 23andme:アン・ウォジッキーは、遺伝子情報が突然安価で入手可能になったことに気づきました。
  • インスタカート:マックス・マレンと アプアバ・メフタは、オンデマンドのライドシェアリングとデリバリーサービスの台頭に注目しました。
  • スティッチフィックス:カトリーナ・レイクは、小売業がオンラインに移行していくことに気づきました。

彼らのストーリーを紹介します。

スポティファイ

「海賊版を法律で取り締まることはできないということに気づきました。この問題を解決する唯一の方法は、海賊版よりも優れていて、同時に音楽業界を補償するサービスを作ることでした。それがスポティファイを生み出したのです。」

ダニエル・エック(CEO兼創業者)、Fast Company

アマゾン

「ニューヨークでクオンツ系ヘッジファンドで働いていたとき、ウェブ利用が年率2,300%で伸びているという驚くべき統計に出会いました。そこで、そのグロースの文脈で意味のあるビジネスプランを見つけようと思い、最初のベストプロダクトとして本を選びました。

そこで、販売できそうな商品を20種類ほどリストアップしてみたところ、最初の商品として本が最適でした。なぜなら、本はある点で非常に珍しく、他のどのカテゴリーよりも本のカテゴリーの商品数が圧倒的に多いからです。2番目は音楽です。音楽CDは常時20万枚程度ですが、書籍では常時300万冊以上の書籍が世界各地で活動し、印刷されています。」

ジェフ・ベゾス(創業者兼CEO)、ユーチューブより

23andme

「たまたま、ウォール街で投資をしていたときに、遺伝子情報に気づきました。私は本当に幸運でした。1つは突然個人が自分のゲノムにアクセスできるようになったことです。そして、Web2.0という大きな流れが生まれました。ソーシャルネットワークが出現したのです。そして、お互いに相手を見つけることができるようになりました。これはすごいことです。とても興味深かったです。

そして、医療における大きな問題のひとつに、データの不足があることに気づきました。栄養学の研究をしている姉が、『こういう研究を見ると、200人の患者がここにいて、200人がそこにいるようなものだ』と言うんです。素粒子物理学者である父は、『統計学を知っている人なら、これでは何も見つからないと分かるはずだ。たくさんのデータが必要なんだ』と。グーグルの世界では、大量のデータの価値と、それを使って何ができるかを明らかに教えてくれていました。

そこで私は、なぜスタンフォードが必要なのか、なぜファイザーがこの研究をする必要があるのかという考えから、幸運にもこの考えに至りました。私は、この人たちに自分のゲノムについて学ばせることができるのです。とても素晴らしいことです。自分の遺伝子を知ることができるのです。そして、この全く新しい研究モデルでみんなを集めようというわけです。クラウドソーシングのようなものです。私たちは世界中のデータを手に入れることができるのです。スタンフォードやファイザーや他の人たちは必要ありません。人体実験でなくていいのです。生きた参加者として、研究に参加してほしいのです。そこで私たちは、このクールなテクノロジーとWeb 2.0のコンセプトを融合させるというアイデアを思いつきました。そして、会社を立ち上げたのです。」

アン・ウォジッキ(CEO兼共同創業者)Talks at Googleより

インスタカート

「起業までの10年間、いくつかの人生経験を経て、最終的にこれがコンシューマーの大きなニーズになるというインサイトを得ることができました。Web1.0のデリバリーサービスの導入や、大学時代に書いたフードマーケットプレイスのビジネスプラン、そしてサンフランシスコに引っ越してきた2011年に見たライドシェアの黎明期などです。

2012年4月にこのインサイトを得てから、私はこの会社を立ち上げるべく猛進し、最も賢い友人たちにこのアイデアを話し、フィードバックを得るようになりました。幸運なことに、そのうちの一人がブランドンで、2012年6月にアプルヴァに紹介してくれました。彼は、アマゾンで働いた経験から、同じようなコンシューマーインサイトを持っていたのです。そして、アプルヴァと私は、2012年7月にブランドンを3人目の共同創業者として迎え入れました。あとは、歴史の通りです。」

マックス・マレン(共同創業者)

ステッチフィックス

「私がパルテノンから転職し、VCであるリーダー・ベンチャーズのアソシエイトになったのは、ちょうどiPhoneが登場した2007年のことです。私は、小売について考えていました。ネットフリックスが台頭する中、ブロックバスターの経済学を研究しました。一方は実店舗での売上を独占する会社、もう一方は無店舗での売上を独占する会社でした。これは完璧なケーススタディでした。そして、いつ規模が縮小するのかがよくわかりました。ネットフリックスがマーケットシェア30%程度になると、必ず地元のブロックバスターが閉鎖されるのです。残りの70%の顧客は、ネットフリックスを試すか、遠くまで映画を買いに行くか、決断を迫られたのです。ネットフリックスを利用する人が増え、ブロックバスター社にプレッシャーをかけます。さらに別の店舗が閉鎖され、より多くの顧客が『試すか、移動するか』の決断を迫られ、負のスパイラルに陥ってしまいます。

私は、他の小売業も戦略を見直さなければ、ブロックバスター社のような運命をたどるかもしれないと考えました。例えば、10年後にジーンズを買う人はどうするのでしょう?6店舗を回り、棚からジーンズを取り出し、すべて試着するという従来のモデルにはならないことはわかっていました。また、現在のeコマースのようなモデルにもならないと思っていました。ブラウザで15個のタブを開き、商品のサイズを確認し、他の買い物客の意見を参考にするのです。そして、何足も買って、サイズが合わないものは返品する。

私はデータが好きなので、データを使えばアパレルでもっと良い体験ができると思ったのです」。

カトリーナ・レイク(創業者)、ハーバード・ビジネス・レビューより

未来を見ることでスタートアップのアイデアを見つけるためのアドバイス

  1. 時間をかけて考えること:5年後、10年後、20年後に大きく変わっているものは何だろう?
  2. ソフトウェアが食べていないものは何だろう?:顧客体験の悪い大きなマーケットを見つける。
  3. もしそれが可能なら、どんなことが素晴らしいだろうか?:理想の体験から始めて、それを可能にするために必要なことを考えよう。

戦略5:友人とブレインストーミングを行い、上記の4つのポイントに注意を払う

最後の戦略は、単純に友人と一緒に座ってアイデアを考えることです。私が調べた50社のうち8社は、積極的なブレーンストーミングによってアイデアを発見しました。マイケル・サイベルは、この道について素晴らしいアドバイスをしています(30秒のクリップ)。

これがうまくいっている例をいくつか紹介します。

サムタック(Thumbtack)

「起業するときの常識は、自分が直面したことのある問題に取り組むことです。

しかし、サムタックでは、そのようなことはしませんでした。その代わり、1年間、毎週電話でブレインストーミングを行い、もし成功すれば、人々に機会を創出することができるようなものを始めようと考えたのです。私たちは、規模に応じたインパクトにフォーカスしていました。自分たちが一般的な人々を代表しているわけではないことは分かっていました。私たち自身はそうでなくとも、多くの人が直面している問題に焦点を当てました。

1年間で、たくさんのアイデアを壁にぶつけました。その中で、最初に引っかかったのが、オンライン上のすべての金融口座を集約するアグリゲーターでした。そして数週間後、Mint.comが立ち上がり、テッククランチ50を受賞しました。そこで私たちは、2番目の(そしてもっと良い!)アイデアであるサムタックに移りました。サムタックのアイデアが浮かんだ具体的な瞬間は覚えていません。これらのアイデアはすべて、世の中の人々が直面している問題を観察し、テクノロジーを使って物事を少しでも良くする方法はないかと考えたことから生まれたものです」。

サンダー・ダニエルズ(共同創業者)

ネットフリックス

「シリコンバレーは、良いオリジン・ストーリーが大好きです。すべてを変えたアイデア、真夜中の電球のような瞬間、もしこれを違う方法でできたら? という会話。オリジン・ストーリーは、しばしば天啓に基づくものです。懐疑的な投資家、警戒心の強い役員、好奇心旺盛な記者、そして最終的には一般の人々に語る物語は、たいてい特定の瞬間、つまりすべてが明らかになった瞬間を強調します。[…]

ネットフリックスに関する有名な話に、ブロックバスターで『アポロ13』の延滞料40ドルを請求された後、リードはこのアイデアを思いついたというものがあります。彼は、もし延滞料がなかったらどうだろう、と考えたのです。ネットフリックスのアイデアが生まれたのです。この話はとても美しいです。役に立ちます。マーケティングで言うところの「感情的な真実」です。しかし、本書を読めばわかるように、この物語がすべてではありません。確かに『アポロ13』の延滞はありましたが、ネットフリックスのアイデアは延滞料とは何の関係もなく、むしろ当初は延滞料を請求していたくらいです。もっと重要なのは、ネットフリックスのアイデアは、神がかり的にひらめいたわけではありません。完璧で便利で明らかに正しいと思われるものが、一瞬にして浮かんだのではありません。

実は、良いアイデアには、悪いアイデアが1000個はあるのです。そして、その違いを見分けるのが難しい場合もあるのです。

カスタマイズされたスポーツ用品。サーフボードのカスタマイズ。愛犬のためにつくられたドッグフード。これらはすべて、私がリードに提案したアイデアです。何時間もかけて練り上げたアイデアです。何カ月ものリサーチ、何百時間もの議論、ファミリーレストランでの長時間のミーティングを経て、最終的にネットフリックスになったアイデアよりも、良いアイデアだと思いました。

何がうまくいって、何がうまくいかないのか、私にはまったくわかりませんでした。1997年当時、私が知っていたのは、自分の会社を興したいということと、インターネットでモノを売りたいということだけでした。それだけだったんです」。

マーク・ランドルフ(CEO兼共同創業者、『That Will Never Workより

イェルプ

「マックス(・レフチン)の小さなオフィスは、レンガが敷き詰められた小さな粗末なオフィスで、さまざまな人々がインターネットの小さなアイデアに取り組んでいるだけでした。インターネット上で次に大きなものになるのは何だろうと、私は興味をそそられました。そして、これは楽しい練習だと思いました。これは、マックスに売り込んで、彼が本当に喜んでくれるような魅力的なアイデアを思いつくかどうかを確かめるための、良い試練だと思ったんです。[…]

インキュベータ内でも、この地域のスペースに関心が集まっていました。それは、私たちが観察していたことでもあります。クレイグリストがクラシファイドを切り出して、新聞社のビジネスを破壊してしまったので、イエローページにスポットライトが当たりました。

そこで私たちは、イエローページよりも優れたものは何かを考えるようになりました。共同創業者のラッセル・シモンズもペイパルの初期の人ですが、レビュー、口コミの収集、オンライン化、ソーシャルネットワーキングとの融合について考え、話し合いました。フレンドスターやマイスペースがそうです。興味深いと思いましたが、レビューだけのソーシャルネットワークを作れるとは思っていませんでした。

アイデアがまとまるまで、2ヵ月か1ヵ月半くらいかかりました。最終的に私は、『サンフランシスコで腕のいい医者は誰か』というような質問をされたらどうしよう、私は専門家でありたいし、役に立つ情報を提供するために答えるのが大好きなんだ、と(ラッセルに)言いました。そこで、質問に関するやりとりの中から、『友達におすすめを聞くサイトを作れないか』というアイデアが生まれました。

ジェレミー・ストッペルマン(CEO兼共同創業者)、How I Built Thisより

レディット

「コネチカットのどこかで、バージニアに戻る非常に長い列車の中で、私の携帯電話が鳴りました。ポール・グレアムからでした。彼は私たちに戻って来て欲しいが、私たちのアイデアを他のものに変えることが条件だと言っていました。彼らの間違いを証明するのは、ここまでです。私たちは次の駅で降りたのですが、その夜、ポールにシャーロッツヴィルに戻る飛行機のチケットを2枚買ってもらい、私たちはボストンに1時間だけ戻って、『携帯による食品注文よりも良いアイデアを考える』ために彼と一緒に行動できるようになりました。[…]

Y Combinatorのオフィスに戻り、パートナー抜きでポール・グレアムと二人だけで会いました。彼は、モバイルのことは一旦忘れて、ブラウザのために何かを作ることを検討するようにと言いました。[…]

彼は、つい最近TheFacebook.comという大学専用のサイトが立ち上げられたばかりのインターネットを使っていて、私たちが感じている不満について尋ねました。スティーブは、スラッシュドットというニュースサイトの熱心な読者でした。スラッシュドットは、編集者による監視と、コメント投稿者の強固なコミュニティ、さらにモデレーションシステムを備えたサイトです。毎日たくさんのタブを開き、さまざまなニュースサイトを表示させていましたが、ノイズからシグナルを取り除く方法がありませんでした。

当時、del.icio.usというウェブサイトがあり、ウェブサイトをオンライン上でブックマークすることができたので、コンピューターを飛び回っても、参考文献はついてくるようになりました。その副産物として、del.icio.us/popularという、その時々に最も人気のあるブックマークされたURLを集約した興味深いものがありました。del.icio.usにはない何かがここにはありましたが、私たちは、ブックマークされた最も人気のあるリンクではなく、共有された最も人気のあるリンクを分類する、より大きな何かの可能性を感じていました。

まだ機能的なことは分かっていませんでしたが、枯れ木に印刷されたような古いニュースアグリゲーションのモデルは、インターネット時代には適さないということは分かっていたのです。実際、このビジョンは、まさにその会議でポール・グラハムによって最もよく結晶化されました。『これだ!ウェブのトップページを作るべきだ』」。

アレクシス・オハニアン(CEO兼共同創業者)、レディットより

ネクストドア(NextDoor)

ソース:Social Capital Blog

「私たちには上下関係が全くありませんでした。そして、朝10時から10億円規模のアイデアを出すために、立ったままミーティングをしていました。それは楽しいことでした。私たちはそれを面白がっていたのです。

そして、アイデアが出ると、みんながそれについて話し、『じゃあ、誰がそれに取り組みたいんだ?』となりました。

私たちは、オンライン・コミュニティの構築と活用に重点を置いたアイデアを数多く持っていました。そのうちのひとつが、後にネクストドアとなるアイデアです。共同創業者のひとりがやってきて、『近所にできた穴の修理を頼もうとしているんだけど、周りに住んでいる人たちとコミュニケーションをとる方法がないんだ』と言ったんです。

私は彼が『ああ、それは超面白い』と言った瞬間を覚えています。。それから私たちは、友人や家族、知り合いのためにフェイスブックがあり、仕事上の連絡のためにリンクトインがある、というようなことを始めました。リンクトインは仕事上の連絡先。でも、身近にいる人たちとコミュニケーションをとるには、どうしたらいいのでしょう?」

サラ・リアリー(CEO兼共同創業者)、マイク・メープルズ・ジュニアより

ドアダッシュ

ソース:The Stanford Daily

「B-schoolの2年目に、私たちは何かを作りたいと思いました。私たちは一軒一軒を訪ね、ビジネスオーナーに自分たちの仕事について教えてくれるように頼みました。私にとって最も有益な質問は、『今日ここに来てからやったことを全部教えてください』でした。

デリバリーが最初に出てきたのは、マカロン屋さんでした。インタビューを終えて、店長がデリバリーの注文を断っているのを小耳に挟んだ。なぜ、企業は街中にオンデマンドでモノを送れないのか?オンデマンドのフェデックスがあってもいいのでは?

私たちは、まずコンシューマー向けの部分のみをテストしました。http://paloaltodelivery.com で静的なHTMLページを作り、グーグルボイスの番号と地元のレストランのPDFメニューをいくつか載せて、6ドルで配達することを提案しました。

数時間後、トニー(Xu)と私は車で帰宅中に、最初の注文を受けました。私はノートを手に取り、その人が近所のタイ料理店から何を望んでいるかを書き出しました。テイクアウトの注文をして、車でレストランに行き、料理を買って、お客さんのところに持っていき、Squareで請求する。

すぐに追いつけなくなりました。教室を飛び出して、何度も電話に出たことを覚えています。私たちはおそらく、『スケールしないことをやる』ということをやりすぎたのでしょう。」

エバン・ムーア(共同創業者)、ツイッターより

バンブル

ソース:テッククランチ

「アンドレイ・アンドレフからメールを受け取りました。私たちは2013年に会っていて、彼はいつも、私がティンダーの後に次のステップに進むときに話を聞きたいと言っていました。彼は本当に説得力のある人で、『おい!俺のデートアプリのCMOになってくれ』と言われたんです。当時、私は出会い系アプリにアレルギーがあり、もう二度とその世界には入りたくないと思っていました。そのとき私は、『本当にありがとうございます。でも、私は自分の会社を立ち上げてCEOになりたいと思っています。女の子と女性のための、賛辞を通貨とするソーシャルネットワークを始めようと思っているんだ……』。

私はこの夏、インターネット上で見知らぬ人から罵倒されるなど、本当につらい思いをしたので、若い女の子たちのためにインターネットをきれいにしたいと強く思っていました。このビジョンをアンドレイに話したら、『素晴らしいビジョンだ。私は、インターネット上でこのような問題をいつも目にしていますし、ここに何かあるはずです。このコンセプトをデートアプリにしたらどうだろう』と。彼は頭がおかしいと思いました。でもね、彼は正しかった。女性のためのデート空間を向上させる大きなチャンスがあったのです。

私たちは座って、女性のための出会い系アプリがどのようなものか、どのように機能するか、私たちの過去の経験をどのように生かせるかについてブレインストーミングを行い、ある一つのことにたどり着きました。デートで女性が主役になることはありません。常に男性がリードし、女性を誘うものでした。男には力があり、女は弱くもろく、王子様に救われるのを待っているという図式がありました。

私たちは、台本をひっくり返し、つながりによって人々に力を与え、男性側の拒絶を減らし、女性には最初の一歩を踏み出し、自信を持つ力を与えることにしました。それがBumbleの始まりです。そして、5年後の今、世界で約6000万人のユーザーを抱えています。」

ホイットニー・ウルフ・ハード(CEO兼共同創業者)、ThoughtEconomicsより

イベントブライト

「ケビン・ハーツはすでにXoomから移行しており、次に何をしたいか、何を作りたいかを考え始めていました。ですから、彼はアイデア出しの段階に入っていたのです。

実際にプロトタイプを作り、ある程度、初期バージョンを作り込んだアイデアもいくつかありました。そのうちのひとつは、あらゆるイベントのチケットを販売するための、とてもシンプルな取引プラットフォームでした。[これが、私たちが一緒に取り組むことになった最初のアイデアで、たまたまうまくいったのです」。

ジュリア・ハーツ(CEO兼共同創業者)、How I Built Thisより

座って考えるべきか、アイデアがひらめくのを待つべきか?

私が調べた50社以上の企業の中で、座って積極的に起業のアイデアを考えていた創業者は10人以下でした。他の多くの創業者は、受動的に起業のアイデアを考えていたとは思いますが、ほとんどは積極的に考えようとはしていませんでした。大多数のアイデアは、創業者たちが自分たちの問題を解決しようとしたり、生来の好奇心に従ったり、何かを試してみて、うまくいった部分を倍増させたり、もっと良いユーザー体験について突然の洞察を得たりして、有機的に出現したのです。

これは、アイデア出しに時間をかけてはいけないということではなく、コンシューマー向けスタートアップの最大のアイデアのほとんどがそこから生まれていないことを意味しています。

良いアイデアとは何か?

あなたのアイデアがうまくいくかどうかを本当に知る方法はありませんし(そうでなければ、どこかのVCは1000点満点でしょう)、多くの本当に良いアイデアは失敗しますが、私の調査によると、あなたのアイデアが以下の要素を多く持っていればいるほど、成功する可能性は高くなります。

1. アイデアについて考えずにはいられない

スタートアップが本当に失敗するのは、創業者があきらめたときだけです。自分のアイデアに情熱的であればあるほど、その可能性は低くなります。

インスタカート、マックス・マレン: 「私はこの会社を立ち上げるために戦々恐々としていた。」

ワービー・パーカー、ニール・ブルメンタール:「考え事をしていて眠れない時ってあるじゃないですか。[中略]私たち4人はそれぞれ、自分たちは本当に何かを掴んでいると思い、本当に眠れなくなるような感覚を胃の中に持っていました。そして、その翌日、私たち全員が学校に戻り、それを実現するために必要なことは何でもすることを約束しました。」

コインベース、ブライアン・アームストロング:「それは、ある種の強迫観念のようなものでした。なんて言うのでしょう。自分ではどうしようもなかったんです。このウサギの穴に落ちたら、抜け出せなくなる。これは、投げやりなプロジェクトではないからです。」

「創業者から、本当に好きなアイデアを思いつくまで起業を待っていればよかったという声を何度も聞きます。」

サム・アルトマン

2. すぐにプロトタイプ作りに着手し、そのためのスキルも持っている

私が調査した企業のほとんどは、創業者がアイデアを思いついてから、数時間、数日、数週間後に集まってきたスクラップ的な実験から生まれました。必ずしもそうとは限りませんが、成功したコンシューマー向け企業にはよくあることのようです。これが、80%以上のスタートアップにエンジニアの共同創業者がいた理由だと思われます。

ツイッター:「私たちは2週間でプロトタイプを作りました」

ティンダー:「ハッカソンの間に、最初のプロトタイプを作りました。」

リフト:「創業者は数人のエンジニアとデザイナーを集め、3週間後に多くのハードワークを経て、その小さなチームがリフトを立ち上げました。」

パトレオン:「アイデアを話すためのミーティングをしたその日に、私は家に帰ってコードを書きました。他のどのプロジェクトよりも、情熱的に取り組みました。私にとってそれはレースのように感じられ、もしこれを早く進めなければ、他の誰かがやってしまい、私はそれを後悔するのではないかという恐怖がありました。」

3. チャンスに対するユニークな洞察力をもっている

私が調べたスタートアップのうち、専門的なスキルや経験を持つ創業者が立ち上げたものは約半分でしたが、大半の創業者は、それまでの経験に基づき、その機会について独自の洞察力を持っていました。

例えば、アレックス・ジューはTikTokの前にビデオや音楽アプリに携わっており、ラリーとサーゲイは研究論文を書き、引用がコンテンツの価値の証であることを見抜いていた。ブライアン・アームストロングは経済学とコンピュータサイエンスの2つの学士号を取得していました。このようなユニークな洞察力は、優れたアイデアが最初はクレイジーに思えたり(エアビーアンドビー、ウーバーなど)、つまらないものに思えたり(カメオ、ドアダッシュなど)、不可能に思えたり(ウーバー、スポティファイ、ドアダッシュなど)する理由でもあり、あなたは周りの人と違った世界を見ているのです。

そのため、私が共有したストーリーの中で、ユーザーリサーチが初期のアイデア出しの大きな要因であることはほとんどないことにも注目してください。ほとんどのアイデアは、創業者の経験、ビジョン、直感から生まれているのです。

4. アイデアがわかりやすい

私たちが見てきたすべてのプロダクトは、1~2文で説明することができます。この点については、本連載の第3回でより多くの時間を割くことにします。

大まかに言えば、そのアイデアについて考えずにはいられない、ビジネスチャンスに対するユニークな洞察力と適切なスキルを持った適切な創業者と、マーケットのタイミングを組み合わせることができれば、巨大なコンシューマービジネスの機会を生み出すことができるのです。

このことは、あなたのアイデアが誰かに盗まれることを心配する必要がない理由でもあります。このような稀な組み合わせを、適切なタイミングで手にする人が他にいる可能性は、非常に低いのです。

アイデアを思いついたら、どうするか

ウォルト・ディズニーが言ったように、「始めるための方法は、話すのをやめて、やり始めることだ」。ここでは、あなたがワクワクするようなアイデアを思いついたら、すぐに何をすべきかについてアドバイスします。

1. 安価かつ迅速にプロトタイプを作成し、アイデアを検証する。

スティッチフィックス:「レイクはサーベイモンキーを使って顧客の好みを追跡し、腕いっぱいに服を積んで顧客の家に行き、スタイリング料$20の小切手を受け取った。」

ネットフリックス:「通勤の途中で車を回して、住んでいる町まで戻り、DVDを買おうとしたんです。そこで中古の音楽CDを買って、切手一枚分の値段でサンタクルーズのリードの家に郵送しました。翌朝、それが良いアイデアなのか悪いアイデアなのかがわかりました。」

ドアダッシュ:「まずコンシューマーの部分だけテストしました。http://paloaltodelivery.com に静的なHTMLページを作り、グーグルボイスの番号と地元のレストランのPDFメニューをいくつか載せて、6ドルで配達するようにしました。小さなアドワーズキャンペーンを行い、誰かが検索しているかどうか確認しました。数時間後、トニーと私は車で帰宅中に最初の注文を受けました。」

レックルーム:「彼らは90日以内に最初のゲームを作り、SteamVRで静かにローンチしました。」

ヒップキャンプ:「私はその年の後半にプログラミングの方法を学びました。その年の6月には、とてもとてもベータ版のウェブサイトを立ち上げました。」

アイデアの検証に関するTodd Jacksonの詳細な投稿をお見逃しなく。

2. 潜在的な顧客に話を聞いて、アイデアを練り直す

レント・ザ・ランウェイ:『ダイアン・フォン・ファステンバーグに電話してみようか。ダイアン・フォン・ファステンバーグを知ってる?』とジェニーは言いました。そして私は、『もちろん、ダイアン・フォン・ファステンバーグなんて知らないわ。でも、彼女のEメールアドレスはわかるかもしれない』と言いました。ジェニーと私はその日の午後、ダイアン・フォン・ファステンバーグの多くの異なるバージョンのメールアドレスにメールを書きました。私たちは基本的に、『ハーバード・ビジネス・スクールに通う2人の女性です。ぜひお伺いしてお話させてください』と。そして、ここで運が味方したのが、彼女か彼女のオフィスの誰かがそのメールを開いてくれたことです。彼女は『明日の午後5時に会いましょう』と返事をくれました。そして、その翌日、私たちはニューヨークまで車で行き、DVFのドレスを着て、彼女のオフィスに行き、自己紹介をしました。」

レックルーム:「早期テスターを獲得するために、彼らはWeWorkのロビーに設置し、通りすがりの人々にアプリをチェックするように頼みました。」

ディスコード:「シトロンとスタンはすぐにサーバーに飛び込み、ボイスチャットに飛び込んで、現れた人と話し始めました。」

3. 誰のために作っているのかを把握する

そして、これこそが、私たちがまさに次の記事で焦点を当てようとしていることなのです。

次週:🕵️ 超特殊な人を特定する

最後に2つの名言を。

「失敗を気にする必要はない。正しいのは一度だけだ。」

ドリュー・ヒューストン

「重要なのは、尻をあげて何かをすることだ。単純なことだ。多くの人がアイデアを持っていますが、今すぐ何かをしようと決める人は少ないです。明日ではなく、来週でもない。来週でもない。今日なのだ。真の起業家とは、夢想家ではなく、行動する人である。」

ノーラン・ブッシュネル

アリッサ・ラバージオ(ヒップキャンプ)、 クリス・ベストハミッシュ・マッケンジー (サブスタック)、 デボン・タウンゼント(カメオ)、エバン・ゴールディンアダム・フィッシュマン (リフト)、 ジュリア・ハーツ (イベントブライト)、 マックス・マレン (インスタカート)、サンダー・ダニエルス (サムタック) 、そして、スティーブ・チェン (ユーチューブ) がこのシリーズのパート1で寛大にも彼らの話を共有してくれて、本当にありがとうと言う気持ちで一杯です。


📚 さらに勉強したい方へ

  1. ポール・グレアムによる「スタートアップのアイデアの出し方
  2. マイケル・セイベルによる「スタートアップのアイデアの入手とテスト方法
  3. トッド・ジャクソンによる「スタートアップのアイデアを検証する方法
  4. サム・アルトマンとダスティン・モスコヴィッツによる「スタートアップの始め方
  5. マイク・メイプルズ・ジュニアによる「ブレイクスルーの作り方
  6. ファースト・ラウンド・キャピタルによる「スタートアップのアイデアを見つけるための12のフレームワーク
  7. パイオニアによる「正しいアイデアの見つけ方
  8. ジェイソン・シェンによる「430億ドルに成長した5つのスタートアップ・ピボットの知られざる裏側

充実した、生産的な一週間をお過ごしください🙏


📣 Lenny’s Talent Collectiveに参加する

Lenny’s Talent Collectiveに参加すると、新しい機会を待っている世界レベルのプロダクトとグロースの人材が隔月で送られてきます。

新しい仕事を探している人は、Lenny’s Talent Collective に参加して、厳選された企業から個別の機会を得てください。公開でも匿名でも参加でき、いつでも退会できます。

🔥 注目の求人情報

ファウンテン(Fountain):シニアプロダクトマネージャー(リモート)

レンダー(Render):プロダクトマネージャー (リモート)

マインズ(Mine’d):プロダクト責任者 (ニューヨーク、リモート)

オープンストア(OpenStore):プロダクトマーケティングマネージャー (マイアミ)

アシュビー(Ashby):ファーストリードUXデザイナー (ロサンゼルス、サンフランシスコ、バンクーバー、オースティン、トライベッカ)

ウェトス(Wethos):グロースプロダクトマーケティングディレクター (リモート)

スクラッチパッド(Scratchpad):シニアプロダクトマネージャー (リモート)

ジョビー・アビエーション(Joby Aviation):エアタクシーのプロダクトマネージャー・オペレーション(カリフォルニア州サンカルロス)


このニュースレターはいかがでしたか?このニュースレターをお友達と共有したり、まだ購読されていない場合は、購読をご検討ください。
敬具

レニー 👋


フォローして最新記事をチェック!

プロダクトマネージャーの3つのキャリアステージ

プロダクトマネージャー、シニアプロダクトマネージャー、プロダクトディレクターの違いは何でしょうか?

私が新米プロダクトマネージャーの頃は、自分とシニアプロダクトマネージャーの何が違うのか、全く分かりませんでした。

私は仕様書を書き、彼らは仕様書を書きました。


この記事は、「The 3 Stages of a Product Manager’s Career」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。この記事の内容をより幅広く、深く学びたい場合は、この記事の著者であるJackie Bavaroによる『世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~』をご覧ください。

著者: Jackie Bavaro
翻訳者: 渡辺圭祐


私は次のリリースで何を作るべきかを1ページで書きましたし、彼らもそうしました。

プロダクト責任者が送る戦略文書も、より広い範囲(機能ではなくプロダクト)の仕様書に過ぎないように思えました。

だから、キャリアアップは一直線だと思い込んでいたのです。キャリアガイドに書かれているレベル別のスキルのグリッドを見ると、みんな同じ仕事とスキルを持っていて、ただ習得のレベルが違うだけだという考えが強くなっていました。私は、リード、GPM(グループプロダクトマネージャー)、プロダクト責任者、そして最終的にはCEOに昇進するまで、プロダクトを出荷することでどんどん上達すると思っていました。

これは非常に誤解を招きやすいメンタルモデルです。私は、シニアプロダクトマネージャーやプロダクト責任者が行う他のすべての仕事を見逃していました。彼らの仕事のほとんどは、私が招待された会議の外で行われたのです。私がアサナのマネージャーだったとき、多くの部下が同じような誤ったメンタルモデルを持っていることに気づきました。

プロダクトで成功するために何が必要なのかを理解したかったのです。シェラヤス・ドーシ(Shreyas Doshi)のスコープ/インパクト・マトリクスは、まさに私の心に響くものでした。キャリアを積んでいくと、仕事ができるようになることもあれば、範囲が広がることもあります。しかし、範囲が広がれば広がるほど、また初心者に戻ってしまいます。新しい仕事は得意ではないし、それを実感することもあります。

でも、範囲が広がるというのはどういうことなのでしょうか。ただ単に、より大きなチームを任されただけなのでしょうか?調べていくうちに、差別化できるのは所有するプロダクトの範囲ではなく、昇進することで手にするまったく新しい責任(とそれに伴う期待)であることに気づきました。実は、ステージが上がるごとに、「偉大であること」の定義全体が変わってくるのです。

各ステージで「偉大であること」の定義全体が変化する

プロダクトのキャリアには、3つのステージがある。

3本の矢印が重なった図。前半はプロダクトの出荷、25%から75%はプロダクト戦略、後半は組織的な卓越性をカバーする。

プロダクトの出荷

最初のステージは、プロダクトの出荷です。ここでは、発見、定義、デザイン、開発、出荷、報告という、日々のプロダクトライフサイクルの仕事が行われます。

このステージで、優れたプロダクトマネージャーは、顧客を喜ばせ、ビジネス目標を達成するプロダクトを出荷します。

あなたがインターン、アソシエイト・プロダクトマネージャー(APM)、PM1、PM2であるならば、おそらくこれがあなたの仕事の全てでしょう。プロダクトの出荷がだんだん上手になっていくでしょう。しかし、ある時点で停滞し始めます。プロダクトセンスや分析力、実行力を高めるだけでは、シニアプロダクトマネージャーにはなれません。なぜなら、シニアプロダクトマネージャーになると、仕事の内容が変わるからです。

プロダクト戦略

シニアプロダクトマネージャーになると、新たな責任を担うことになります。これまでは、何をやるかを指示されるだけでした。新しいビジネスチャンスを見つけ、それを勝ち取るためのプランを組み立てるのが、あなたの責任です。これまで通り、お客様に喜ばれるプロダクトを出荷し、目標を達成する必要がありますが、今度は自分が目標を設定することになるのです。

この段階で、優れたPMは、プロダクトがマーケットで成功するための勝利の戦略を考え出すのです。

シニアプロダクトマネージャーやリードプロダクトマネージャーになると、プロダクト戦略がどんどん上手になります。ピープル・マネージャーになれば、部下にとって最高の上司になろうとするかもしれません。しかし、ディレクター(特にシニアディレクター)に飛躍しようとすれば、また仕事の内容が変わってくるでしょう。

組織の卓越性

第3ステージのあなたの仕事は、優れたチームを作ることです。一人のプロダクトマネージャーとしてできることを超えて、組織が勝つための戦略を立て、勝つためのプロダクトを出荷できるように、人を雇い、指導し、プロセスを設定することがあなたの責任です。

そして、あなたの下に強力な組織を作ることは、仕事の半分に過ぎません。残りの半分は、会社の他の部分に対する戦略的アドバイザーになることです。このステージでは、他のエグゼクティブと一緒に会議に出席します。自分の組織を代表することもあれば、会社のことを考える賢い人の一人として同席することもあります。他の会社のリーダーとの関係や信頼関係は非常に重要です。

このステージでは、優れたプロダクトリーダーは、成功したプロダクトを大規模に出荷し、会社全体の強力な戦略的アドバイザーとなることで、会社の成功に貢献します。

最後に

プロダクトマネジメントは1つの仕事ではなく、3つの仕事です。この業界では、昇進するにつれて、役割や成功の形がどれだけ変わるかについて、あまり明確には語られてきませんでした。

キャリアアップを目指すのであれば、自分がどのステージにいるのか、次の昇進はステージ内なのか、ステージをまたぐものなのかを知ることが重要です。

ステージ内での昇進を目指すのであれば、それは本当に自分の技術を向上させることなのです。より速く、より少ないミスで、より良い結果を出せるようになるまで、「今やっていることを続ける」のです。同僚からのフィードバックは、自分の改善点を的確に指摘する傾向があるので、注意してください。

次のステージへの昇進を目指すのであれば、より意識的に行動する必要があります。新しい職務にシフトし始めると、現在の職務で出来の悪い仕事をしていると感じることがよくあります。自分が戦略に集中できるように、プロジェクトマネジメントの一部をリードエンジニアに譲るかもしれません。会社全体にとって正しいことをしようとするあまり、直属の上司の一人を怒らせてしまうかもしれません。上司や上司の同僚と協力して、次のステージに進むために最も重要なフィードバックを得てください。

各レベルで昇進するために必要なことをもっと詳しく知りたい場合は、『世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~』に、例を挙げて章立てしてあります。


フォローして最新記事をチェック!

ジョブストーリーを書くための5つのヒント

機能とプロダクトを定義する新しい方法から学ぶ。

ジョブストーリーは、プロダクトをデザインする際に、チームの会話と発見を促進する強力な方法です。雑念を排除して、片付けるべきジョブにぴったりと切り込むためのものです。ジョブストーリーは、プロダクトのデザインプロスにおいて、思い込み、主観、ペルソナ、実装ではなく、文脈、因果関係、動機に焦点を当てることを促します。

もっと知りたいですか?JTBDに関する無料のPDFブックをダウンロードするか、ペーパーバックとkindleで購入する

ジョブストーリーを書くようになってから、あるストーリーが他のものより優れているという特徴に注目するようになりました。ストーリーがよくできていれば、私や私のチームは議論すべきことをすぐに切り出すことができ、全員が同じ認識に立つことができるため、プロダクトデザインプロセスを劇的に改善することができます。
ここでは、ジョブストーリーを書く際に役立つ5つのヒントをご紹介します。

  1. 1. 文脈的な情報を加えて状況を洗練させる
  2. 2. ジョブストーリーは、ペルソナではなく、実在の人物から生まれる
  3. 3. 機能(ソリューション)が差し込めるモジュール式のジョブストーリーをデザインする
  4. 4. 動機に力を加える
  5. 5. ジョブストーリーは単一視点である必要はない

この記事は、「5 Tips For Writing A Job Story」を著書の了解を得て翻訳したものです。

著者: Alan Klement
翻訳者: 渡辺圭祐


1. 文脈的な情報を加えて状況を洗練させる

デヴィッド・ウーが、「状況とは、あらゆる条件を含むものである」と説明したとき、私の心に響きました。私は、状況に文脈を追加することで、お客様がプロダクトや機能を使うことを躊躇してしまうような不安にも対処できる、有効なソリューションをデザインしやすくなることを発見しました。
例えてみましょう。

  1. 何か食べたいとき……。
  2. 急いでいて、何か食べたいとき……。
  3. 急いでいるいて、お腹が空いていて何か食べたいとき……。
  4. 急いでいるとて、お腹が空いていて、何かをしながら片手で食べられるものが欲しくて、次にいつ食べられるかわからないとき、……。

このような状況であればあるほど、より良いソリューションを見出すことができるのです。バージョン1では、座敷のあるレストランが利用できるでしょう。バージョン4では、ピザやスニッカーズバーが最適でしょう。

2. ジョブストーリーは、ペルソナではなく、実在の人物から生まれる

ペルソナは、思い込みや属性の寄せ集めであるため、プロダクトデザインに破壊的な影響を与えることがあります。ペルソナは、ユーザーを知っているという誤った感覚を与え、その結果、デザインにギャップを生じさせる可能性があります。例えば、ペルソナに不安な気持ちや、なぜプロダクトAプロダクトBを選んだのか、プロダクトAプロダクトBを選んだときに他に何があったのか、初めてアプリを開いたときに最初に何をすればいいのかわからなかった……といったことは聞くことができないのです。

ジョブストーリーは、実際のユーザーインタビューからしか生まれないのです。機能や新プロダクトをデザインする前に、実際の人々に話を聞き、彼らがあなたや競合のプロダクトを使用する際にあった不安や文脈をすべて明らかにする必要があるのです。
もしあなたがインタビューのやり方を知りたいなら、クリス・スピークボブ・モエスタの「The Mattress Interview」を聴いてみてください。また、クリス、ボブ、エルヴィンは、片付けるべきジョブのためのユーザーインタビューをユーデミーのコースで行っています。

ペルソナを好む人がいるもう一つの理由は、ユーザーについて、あるいはユーザーから得たすべての情報を整理する方法を他に知らないからです。ジョブストーリーをどのように整理するかは、今後の記事で取り上げる予定です。

3. 機能(ソリューション)が差し込めるモジュール式のジョブストーリーをデザインする

ジョブストーリーをデザインするとき、ソリューションと混同しないことが重要です。これは、実装を定義することを推奨するユーザーストーリーとのもう一つの重要な違いです。

ペルソナ(またはシチュエーション)とソリューションを混在させる場合……。

以下は、効果的なユーザーストーリーの書き方について書かれた資料です。著者は、ユーザーストーリーを発展させるために「詳細を追加する」サブストーリーを作成することも勧めています。以下はその例です。

ユーザーとして、私はハードディスク全体をバックアップすることができる。

…そして、詳細を追加した後….

パワーユーザーとして、ファイルサイズ、作成日、更新日に基づいてバックアップするファイルやフォルダーを指定することができる。

そして……。

ユーザーとして、バックアップしないフォルダを指定することで、保存する必要のないものでバックアップドライブがいっぱいにならないようにすることができる。

上記の例から、パワーユーザーファイルサイズ、作成日、……を基にバックアップするファイルやフォルダーを指定することをあまり気にしなかったとします。この場合、何が問題だったのか、どのように判断するのでしょうか。ペルソナが間違っているのでしょうか?機能が間違っているのでしょうか?ペルソナに対する機能が間違っているのでしょうか?

状況(ジョブ)とソリューションを分ける

ここで重要なのは、ジョブをソリューションと分けて考えると、それぞれを異なるタイミングで探索できることに気がつくということです。モジュール化されたストーリーとソリューションのもう一つの利点は、ジョブがどこで重なり合うのか、いくつかのジョブが共通のソリューションを共有することになるのかが分かるようになることです。

ジョブストーリーがソリューションや他のジョブストーリーとどのように関連するかは、別のトピックになります。その間に、ジョブストーリーと機能の関係をこのように視覚化することから始めてください。

最後の画像は、私が「シチュエーション別セグメント」と呼んでいるものを参照しています。これは、私が最近考えているアイデアで、独自に調査する必要があるトピックです。

4. 動機に力を加える

デヴィッド・ウーのもう一つのアイデアは、動機に力を加えることです。状況-動機-期待される結果というジョブストーリーのフォーマットにおいて、動機の段階は、引く力と押す力を加えることによって補強することができるのです。動機に力を加えることは、状況に文脈を加えることによく似ています。アマゾンのメーデー機能について、ロス・ベルモントは以下のように言及しています。

タブレットを使っていて問題が発生したとき、すぐに助けを得て、始めたことを終わらせることができる。

動機づけの部分にこだわってみましょう。すぐに助けを得て、力を加えたい。

状況

タブレットを使っていて、問題が発生した。

動機

すぐに助けを得たい….

力:途中だったのでイライラしている…。

力:今やっていることが終わるか不安だ。

力:助けを求めるのに緊張する……。

力:助けを求めるとバカにされそうで……。

力:自分が取り組んでいることを他人に見せるのは恥ずかしい…。

期待される結果

自分が始めたことを終わらせることができる。

ストーリーに力が加わっていれば、ユーザーをプロダクトや機能から遠ざける力を減らし、プロダクトや機能の方に引き寄せる力を高めるのに役立つソリューションをデザインすることができる。アマゾンの場合、次のようなことが考えられます。

  • ヘルプを受けるのに長い時間待たされることがないよう、ユーザーを安心させる。( 今やっていることが終わるかどうか不安だ )
  • カスタマーサポートの担当者がタブレットにアクセスできる範囲をユーザーが選択できるようにする。(自分が作業しているものを他人に見せるのは恥ずかしい)
  • ヘルプを求めることがいかに一般的であるかをお客様に理解してもらう。( 助けを求めるとバカにされるかもしれない)

5. ジョブストーリーは単一視点である必要はない

最近、私は、ストーリーを一人の人間の視点に縛られないというアイデアを試しています。その代わりに、三人称の視点で物語を書いています。

いつ

ある人が住宅ローンを組むために銀行に行き、申込書に記入するとき。

動機

申請者は、申請が受理されたかどうかを知りたい…。

銀行員は、申込書が正しく記入されているかどうかを確認したい…。

銀行は、申込者が許容できる信用履歴を持っているかどうかを確認したい…。

期待される結果

住宅ローンが低リスクの人に迅速に提供され、それによって銀行が利益を得られると確信する。

繰り返しになりますが、私はこれらを実験しているので、人々がこれについてどう考えるかについてのフィードバックが欲しいのです。今のところ、3人称のストーリーは、eBayのようなリアルタイムの入札サイトのように、複数の関係者を相手にするプロダクトで効果を発揮しているようです。

もっと詳しく

ジョブストーリーを使ったプロダクトデザインはまだ途中ですが、このコンセプトは実践すればするほど、調整が加えられ、さらに発展していくことでしょう。これらが出てきたら、引き続きコメントしていきたいと思います。

Your Job Story Needs A Struggling Moment」、「5 Tips For Writing A Job Story

JTBDとジョブストーリーについて、拙著『When Coffee and Kale Compete』から、より深く理解してください。

『コーヒーとケールが競演するとき』でJTBDについてもっと知ることができます。

この本はPDFでダウンロードできますし、ペーパーバックやキンドルでも購入できます。また、オンラインで読むこともできます。

片付けるべきジョブ(Jobs to be Done)についてもっと知りたい、JTBDのコンセプトをあなたのビジネスやスタートアップに適用する手助けが欲しいという方は、私にご連絡ください。


フォローして最新記事をチェック!

マーケティングはグロースだけではない:完全な戦略のための3つの要素

ダイレクトレスポンスメーラーからデジタルファーストのアクイジションループまで、マーケティングのツールは変化しているかもしれませんが、企業が世界中でより激しい競争に直面する中で、効果的なマーケティング戦略の必要性は高まる一方です。

一般的に、マーケティングとグロース・マーケティングを混同して考える人がいますが、それは、多くのアーリーステージのスタートアップ企業にとって、グロースとは生き残りのことだからです。グロース・マーケティングは、企業の成功にとって重要な役割を果たしますが、完璧なマーケティング戦略に必要なすべてを網羅するものではありません。

マーケティングリーダーになるためには、従来のグロースの定義を超え、マーケティングの3つの領域、すなわちブランド・マーケティング、グロース・マーケティング、プロダクト・マーケティングを統合することも必要です。そして、マーケット、顧客、ビジネスの変化を積極的に捉え、より強固な戦略を構築することができるようになるのです。

今回は、マーケティング戦略の策定と強化に役立つ情報をお伝えします。

  1. マーケティングの3つの領域
    1. 1. ブランド・マーケティング
    2. 2. プロダクト・マーケティング
    3. 3. グロース・マーケティング
  2. 統合マーケティング戦略のインパクト
    1. 1. ある領域での変化は、他の領域にも影響を与える
    2. 2. 各ドメインの変化が複合的な効果をもたらすような順序にする
    3. 3. 各ドメインの変化は異なる時間軸で起こるため、積極性が不可欠である
  3. 複数ドメインマーケティング戦略の長所
    1. 戦略をアップデートする時期であることを示すシグナル
    2. 内部要因:オーディエンスの拡大
    3. 内部:ビジネスモデルの進化
    4. 内部:プロダクトの発売
    5. 外部環境:マクロトレンド
    6. 外部環境:競争環境と規制の動向
    7. 外部要因:テクノロジーやユーザーの行動変化
  4. ピースをつなげる

この記事は、「Marketing is More Than Growth: The 3 Parts of a Complete Strategy」を著書の了解を得て翻訳したものです。

著者:Stephanie Kwok & Natalie Rothfels
翻訳者:渡辺圭祐

ステファニー・クヮック:リフォージ(Reforge)の客員役員。以前はファンデュエル(FanDuel)の顧客マーケティング担当副社長を務め、戦略・オペレーション、エンゲージメント・リテンションの副社長も兼任。

ナタリー・ロスフェルス:リフォージの客員運営者であり、リーダーシップコーチングを行う。クイズレット(Quizlet)とカーン・アカデミー(Khan Academy)でプロダクトリーダーを務め、それ以前は教室の先生を務める。


マーケティングの3つの領域

マーケティング担当者は、しばしば1つの領域の専門知識からスタートしますが、マーケティングリーダーは、顧客のプロダクト体験に影響を与える3つの異なる領域(ブランド・マーケティング、グロース・マーケティング、プロダクト・マーケティング)に精通し、専門知識を身につける必要があります。

1. ブランド・マーケティング

ブランド・マーケティングは、組織の存在理由を、意味のある感情的な結びつきで表現します。明確な企業ストーリー、ブランド・アイデンティティ、顧客が共感したり、憧れたりするような物語的なポジショニングをカプセル化することで、プロダクトに馴染みのない見込み客を引き込みます。ブランド・マーケティングは、新規顧客を獲得するための認知度と意思を高めるだけでなく、顧客ライフサイクルのあらゆるタッチポイントで(ブランドパートナーシップやドリップキャンペーンなどを通じて)強化し続けることができます。

2. プロダクト・マーケティング

プロダクト・マーケティングは、ブランド・プロミスを実現するために組織が行っていることを共有します。優れたプロダクト・マーケティングは、各プロダクトの背後にある価値、代替品との違い、ユーザーに与えるポジティブな影響などを顧客に理解してもらうためのものです。これは多くの場合、パッケージング、価格設定、ユーザーにとってアクセスしやすく理解しやすい機能の提供といった形で行われます。

3. グロース・マーケティング

グロース・マーケティングとは、顧客を獲得し、維持するために、どのように顧客にアプローチするかということです。グロース・マーケティングでは、トリガー、チャネル、メッセージング、パーソナライゼーションなどを駆使して、顧客をプロダクトに引き込み、その価値を体験させ(アクイジション)、その価値を維持させます(リテンション)。この作業には、既存のグロースループ(例:有料マーケティング、ユーザー生成コンテンツ、口コミによる紹介)やリテンションループ(例:パーソナライズされたコンテンツを推奨するトリガー付きのライフサイクルメール)を強化し、顧客がプロダクトの価値を実感できるようにすることが含まれることが多いです。 

この3つの領域は、あらゆるマーケティング戦略へのインプットとなります。マーケターは、各領域が他の領域にどのように影響するかを理解し、3つの領域が協調して機能する戦略を構築することで、マーケティングリーダーになることができます。

統合マーケティング戦略のインパクト

これらのパズルのピースの接続点を、ステファニーがファンデュエル(FanDuel)に在籍していた時の例を使って説明しましょう。

2015年、ファンデュエルは、多額のリアルマネー賞金付きのデイリーファンタジースポーツトーナメントを提供するゲーム会社でした。ステファニーが入社した当時、同社は元ポーカープレイヤーの大規模なコホートを含むハイステークスゲーマーに最初のマーケット・フィットを見出した後、新しいオーディエンスの拡大を優先していました。

数億ドルの新規資金調達と、2番手のドラフトキングス社との競争激化により、同社はグロース・マーケティングに重点を置くようになりました。過去には、高額賞金を獲得した顧客の声を掲載したダイレクトレスポンス広告で成功を収めたこともあり、このメッセージを継続しながら、有料メディアへの投資を増やしました。この大規模な投資が功を奏し、前年比約5倍の成長を遂げる新規顧客を大量に獲得することができました。

当初は、KPIを達成したかのように見えました。しかし、顧客がプロダクトを使い始めると、すぐに離反し、ファンデュエルは競合他社とともに、世間から大きなマイナス評価を受けるようになりました。

結局のところ、新規顧客は「誰でも大金を手にするチャンスがある」というブランドの約束に引き寄せられたのですが、プロダクトはこの新しい顧客に約束を果たすほどには進化していなかったのです。その一方で、1日に数分しかプレイしないような新しい顧客には、広告に登場するような7桁の賞金を獲得する可能性はほとんどありませんでした。

この例は、すべてのマーケティング領域を効果的に統合することがなぜ非常に重要なのかについて、3つの教訓を与えてくれています。

1. ある領域での変化は、他の領域にも影響を与える

グロース・マーケティングは新規顧客の獲得に成功しましたが、約束した価値が提供されなかったため、その顧客は最終的に離反しました。マーケティングチームは、ある領域の変化が他の領域に与える影響を調べることで、より統合された形で活動することができます。グロース・マーケティング・チャネルは、潜在顧客や既存顧客にブランドを提供するものであり、グロース・マーケティング戦略とブランド・マーケティング戦略は連動している必要があります。

同様に、プロダクトの価値提案とグロース戦略で獲得する新しい顧客層が一致しない場合、それらの顧客は最終的に定着せず、グロースへのプラスの影響も減少します。

2. 各ドメインの変化が複合的な効果をもたらすような順序にする

ファンデュエルは、有料メディアで新規ユーザーを獲得するために数百万ドルを投じる前に、まずプロダクト・マーケティングとブランド・マーケティングに注力することで、より良い投資対効果を得られたと思われます。

ファンデュエルは、多額の賞金を獲得するというブランドプロミスを実現することは、この大規模な新規ユーザーにとって非常に困難であることを認識することができたはずです。この層に対するグロース・マーケティング活動を強化する前に、プロダクト・マーケティング戦略を見直すか、あるいはブランド戦略を再検討して修正する必要があったのです。

ドメインごとにサイロ化されたマーケティングチームは、一見バラバラに見えるこれらの要素を統合するのに苦労することが多いです。統合に成功したチームは、より脆い戦略をとることができます。

3. 各ドメインの変化は異なる時間軸で起こるため、積極性が不可欠である

グロース・マーケティングのパフォーマンスはすぐに測定できますが、プロダクト・マーケティングとブランド・マーケティングは開発に数ヶ月かかり、その影響は何年にもわたって広がることがあります。

ファンデュエルは、顧客からの信頼を失い、それを回復するために苦難の道を歩まなければならなくなりました。ファンデュエルのチームは、自分たちが実現できる約束(賞金を保証するのではなく、スポーツをもっと楽しくすることなど)に向けてブランドをシフトさせましたが、疎外された顧客との信頼を回復するには時間がかかりました。このように、マーケティングリーダーは、企業戦略にインパクトを与えるために、3つの領域でどのような変化が必要なのか、積極的に先を見据えることが非常に重要なのです。

複数ドメインマーケティング戦略の長所

ファンデュエルのケースは、極端な例です。ブランド戦略、プロダクト、グロース・マーケティングの間に断絶があり、さらに広告を電波に乗せて流すことへの反発やネガティブなPRスキャンダルが重なり、大幅な顧客離れと会社や業界全体を締め付ける規制に拍車がかかってしまったのです。

しかし、ほとんどの場合はそれほど極端ではなく、領域間の断絶は、より大きなインパクトを与えるための大きなチャンスとなります。

例えば、強力なブランド・マーケティングは、有料チャンネルでできることにハロー効果を発揮します。マスタークラス(MasterClass)はこの点で素晴らしいです。有名な専門家が教えるクラスの高品質なビデオ予告編により、専門家から学び、専門家により楽しまれる場所として、ブランドのポジショニングを強化しているのです。

同様に、プロダクト・マーケティングも、適切なチャネルで適切なオーディエンスを集めることができれば、より効果的なものになります。これは、マーケットプレイスのような複雑なビジネスモデルで、一度に複数のオーディエンスに対応する場合は、さらに重要です。例えば、ユーデミー(Udemy)はアラカルトのコース購入を通じて個人にサービスを提供していますが、コース作成者(プラットフォーム上で供給を行い、収益を求める)や企業(従業員の福利厚生としてサブスクリプションを購入する)にもサービスを提供しています。消費者はスキルを素早く習得するために、クリエイターは専門知識を収益化するために、企業はコスト効率の高い方法で従業員を成長させ、維持するために、それぞれ異なるニーズを持っているため、プロダクトはこれらのオーディエンスに対して異なる位置付けとなっています。また、これらの異なるオーディエンスを獲得するためには、消費者向けのクチコミや有料メディア、企業向けの直接セールスなど、異なるマーケティングチャネルが必要です。

あなたが3つの領域すべてを監督するマーケティングリーダーであろうと、1つの領域を監督するリーダーであろうと、1つの領域に集中する個人の貢献者であろうと、それぞれのパズルのピースが交差する部分に注目し、誰が、どこで、何を、どのように、そしてなぜ、より大きなインパクトを与えるかを調整することによって、あなたのインパクトを増幅させることができるのです。

戦略をアップデートする時期であることを示すシグナル

会社や四半期の年次計画サイクルは、マーケティング戦略全体(または単一のマーケティング領域の有効性)を拡大評価する自然な瞬間です。これらのタッチポイントは、会社とマーケティング戦略の間の整合性を確保し、来年(または3年から5年のビジョン)の大きなシフトを識別し、それらのシフトをサポートするために今(またはすぐに)変更する必要があるものを示すのに役立ちます。

しかし、それは、変化の激しい多くの組織にとっては希望的観測に過ぎません。もしかしたら、日々の業務に追われ、一歩下がって考える余裕がないのかもしれません。会社の戦略があまりにも頻繁に変わるので、あなたのチームが先に進むことができないのかもしれません。

いずれにせよ、マーケティングリーダーは、刻々と変化する情勢に伴う不確実性にもかかわらず、どこにどのように投資すべきかを明確にする必要があります。マーケティングリーダーは、これらの内的・外的要因を積極的にモニターすることをお勧めします。なぜなら、これらはしばしば、戦略を見直す必要性を引き起こす変曲点のシグナルとなるからです。

内的要因には、以下のようなものがあります。

  • オーディエンスの拡大
  • ビジネスモデルの進化
  • プロダクトの発売

また、外部要因には以下のようなものがあります。

  • マクロトレンド
  • 競合環境と規制の動向
  • 技術やユーザーの行動変化

(追伸: マーケティング戦略コースでは、これらについてより深くお話しています)

内部要因:オーディエンスの拡大

新しい顧客セグメントや地域に拡大するには、現在のブランドのポジショニング、価値提案、チャンネルが新しく獲得した顧客に響くかどうかを評価する必要があります。

例えば、ClassPassが男性向けのサービスを開始したとき、1つの性別の顧客だけを対象にしていると思われないよう、ブランドのポジショニングとグロース・マーケティング戦略を見直す必要がありました。これは、ファンデュエルの例でも見られることです。ファンデュエルは、より多くのレクリエーション・ユーザーに対応するために、ブランドとプロダクトのマーケティング戦略を転換する必要がありました。

内部:ビジネスモデルの進化

マネタイズモデルや価格設定の変更は、LTV/CAC率、投資回収、および顧客の価値観に影響を与えます。同様に、SaaSモデルとエンタープライズモデルでは、異なるブランディングやチャネルへの投資が必要になる場合があります。

例えば、Figmaは、ボトムアップのグロース戦略(デザイナーが自社にデザイナーを増やし、そのデザイナーが他の部門に有機的に広がっていく)で立ち上げましたが、B2Cサービスを補完し、さまざまな規模の企業に対する明確なB2Bセールスチャネルを確立しました。そのためには、パッケージングや価格体系を変更し、最終的には、組織内のより多くの部門に対応するプロダクト(例:FigJam)へと移行する必要がありました。

内部:プロダクトの発売

新プロダクトの発売は、企業が販売するプロダクトのポートフォリオを変化させます。優れたマーケティング担当者は、プロダクト体験全体と顧客層について何が変わったかを理解しようとし、それが自社の戦略をどのように変えるかについて意見を形成します。優れたマーケティングリーダーは、自分たちの戦略がどのように変化すべきかを積極的に見極め、それに応じてプロダクトの発売にも影響を与えます。

ナタリーのチームは、クイズレット(Quizlet)の既存の学生のサブセットに対して、より明確な問題を解決する新プロダクトを発売しました。それは、信頼できるコンテンツ作家による有料コンテンツで、高得点の資格試験に焦点を当てたものでした。学生はすでにクイズレットのプロダクトに慣れ親しんでいましたが、勉強の過程でさまざまなタイミングでプロダクトを使用していたため、新しいプロダクトの提供に対する認識は理想的ではありませんでした。

そのため、クイズレットは、既存の学生が簡単に新しいサービスにコンバートできると考えるのではなく、プロダクト全体とライフサイクル・マーケティングに統合するために、より重い作業を行う必要があったのです。

外部環境:マクロトレンド

パンデミックは、ユーザーの行動、消費習慣、そしてあらゆる種類の新しいニーズを変化させることが分かっています。マーケティング担当者は、現在の戦略が通用するのか、それともさらに大きな波を起こすチャンスがあるのかを知るために、マーケットで何が起こっているかを意識する必要があります。 

在宅医療に特化したヘルスケアスタートアップのNurxは、2020年初頭、コロナウイルスが流行したことで、予定外ながら大きな追い風を経験しました。在宅ケアの需要が急増する一方で、メディアチャネル全体の価格が急落したのです。Nurxの最高マーケティング責任者であるカテリン・ワトソンは、このトレンドをリアルタイムで察知し、テレビなど、これまで深入りしなかったチャネルに支出を向け直しました。

コンバージョンの向上、メディア価格の低下、メディア習慣の変化というパーフェクトストームにより、一夜にして全サービスが100%の成長を遂げました。STI検査、緊急避妊、ヘルペス治療などのサービスは、他に選択肢がなかったため、爆発的に普及し始めました。テレビの前でCOVIDの最新ニュースを見ている人々に、新しいメディアでアプローチすることができたのです。マーケティングチームとしては、「より多くの患者さんを救うために、この瞬間に立ち向かおう」と考えました。できる限り多くのメディアを購入し、新しいチャンネルを学ぼう」と考えたのです。すぐにクリエイティブを再利用し、今ではテレビは私たちのミックスの中核をなしています。

カテリン・ワトソン
外部環境:競争環境と規制の動向

競争環境が変化し、新たなマーケット機会が生まれたとき、企業はマーケティング戦略を転換し、優位に立つことができるはずです。

2018年にスポーツベットが合法化された際、ファンデュエルやドラフトキングスといった初期参入企業は、合法性を強調した同様の広告や、安全・安心な決済に焦点を当てたプロダクト機能など、迅速にマーケットに投入することを優先しました。ここ数年で業界が確立され、競合他社がひしめくようになると、各社はブランド構築のための投資から、差別化されたプロダクト機能(ファンデュエルの同一ゲームパーレイなど)の開発とマーケティングにシフトし、自社を際立たせるためにマーケティング戦略を転換しています。

外部要因:テクノロジーやユーザーの行動変化

新しいテクノロジーが導入されたり、広く採用されたりすると、企業はオーディエンスにリーチし、より良い価値提案を提供するための新しい仕組みやツールを手に入れることができます。

GPSや心拍数、皮膚温度などを追跡する高度なセンサーは、今や一般的なものとなっています。これらの技術により、フィットネス企業は、個人のトレーニングプランを提供し、改善するために、はるかに詳細な活動行動を収集し、利用することができるようになりました。同様に、数クリックで会社設立、送受信、給与計算ができるテクノロジーは、起業のハードルを下げ、起業家精神の成長を加速させます。

ピースをつなげる

明確で効果的、かつ進化するマーケティング戦略は、優れたマーケティングリーダーと優れたマーケティング貢献者を区別するものです。毎週KPIに影響を与えるキャンペーンの実施、プロダクトや顧客に関する深い専門知識の開発、価格設定やプロダクト提供のパッケージ化、ブランドの声の形成、企業戦略への影響など、多くの責任を負わなければならないことに圧倒されることがあります。

あなたは一人ではありません。私たちの新しいマーケティング戦略プログラムは、あなたがより統合された戦略を開発し、これら3つの領域それぞれをより深く理解できるようにするために作られたものです。このプログラムは、現代のマーケティングリーダーとして避けられない紆余曲折に対応するための自信を与えてくれることでしょう。


フォローして最新記事をチェック!

カスタマーアクイジションコストの把握

VCが使うフレームワーク

私が過去5年間、VCとして格闘してきたのは、事業の単位経済性をいかにして本当に理解するかということです。LTV>CPA (ライフタイムバリューは獲得コストよりも大きい) の基本コンセプトは非常にシンプルです。複雑なのは、事業が拡大するにつれて、これらの経済性がどうなるかを考えようとするときです。


この記事は、「Understanding Customer Acquisition Costs」を著書の了解を得て翻訳したものです。

著者:Rob Moffat
翻訳者:渡辺圭祐


ライフタイムバリューの計算については、ビル・ガーリーがここで詳しく説明しているので、ここでは触れません。私が注目したいのは、CPAです。

VCとして、しばしばCPAのヘッドライン数字を提示されますが、それ以上ではありません。これは、表面的にはよく見えますが、根本的な問題を覆い隠してしまうことがあります。例えば、アーリーステージのeコマース事業で、LTVが30ユーロ、全体のCPAが20ユーロとします。これは堅実なビジネスのように見えます。さらに掘り下げると、ユーザーの50%は無料チャネル(PR、SEO)で獲得しているため、残りの50%(SEMで獲得)のCPAは40ユーロになります。無料チャネルは、急速にスケールアップするのが難しい場合が多いので、投資後に急成長したい場合は、SEMを利用するのが一般的です。しかし、この場合、SEMによる顧客獲得は不経済です(30ユーロのLTVは40ユーロのCPAより低いです)。VCとしては、このビジネスが合理的な方法で急成長できるかどうかを心配し始めることになります。


以下は、このようなミックス効果を考慮し、CPAをより深く考えるためのフレームワークです。


このアイデアは、全体的なCPAを、新規顧客を獲得するための費用と、昔の顧客を呼び戻すための費用に分解し、主要な獲得チャネルを無料と有料に分解することです。

留意すべきこと:

  • 訪問者から顧客への転換率は、チャネルによって大きく異なることが多いため、CPV(訪問者あたりのコスト)ではなく、CPAについて考えることが重要です。(CPA = CPV / コンバージョン率)。例えば、コンバージョンレートは、通常、PR主導の直接訪問者よりもSEMの方がはるかに高いです。
  • オフライン広告(テレビ、屋外)の影響を測定することは困難ですが、可能です。2つのアプローチが可能です:オフライン広告でユニークなURL(またはバウチャーコード)を使用する、またはオフライン広告を実行しているときに直前と比較して、サイトの直接訪問数の上昇を測定します。どちらも完璧ではありませんが、当て推量よりは優れています。
  • SEM CPAにブランド広告の費用を含めない。自社ブランド用語のクリックは、CPAがかなり低くなるため、サイトへの直接の訪問者と同じように考えるのがベストです。
  • 本当に無料のチャネルは、あなたのURLを直接入力した人だけです。その他の「無料」チャネル(SEO、CRM)には、考慮すべき変動コストがあります(ただし、SEOやCRMを設置するための初期投資は1回限りのコストであるため、含めるべきではありません)。
  • 新規訪問者と再訪問者の獲得コストを区別するには、ウェブ分析システムに時間と資金を投資する必要があります。始めたばかりのときは、意味のあるリピーターがいないため、これを優先する必要はありません。
  • 簡略化のため、考えられるすべてのチャネル(ターゲット・ディスプレイ広告、ソーシャルなど)を含めていませんが、これらも同じように扱うことができます。

いくつかの注意点/制限:

  • このフレームワークは、「ラストクリック」アトリビューションを想定しています(アトリビューションについての詳細はこちら)。これは、すぐに購入されるタイプのプロダクトのための合理的な仮定方法ですが、より長い販売サイクルを持つプロダクトに関しては、より充実したアトリビューション手法の開発を考える必要があります。さらに洗練されたものになると、ブランド広告の「ハロー」効果を組み込んでみることもできます。
  • 上記の点を踏まえ、このフレームワークにはリターゲティングは含まれていません。リターゲティングについて考える最も簡単な方法は、おそらく別のチャネルとして考えることですが、それは他の有料マーケティングに依存します(ここで適切なアトリビューションがより重要になるのです)。
  • 最初にメーリングリストや無料のプロダクトに顧客を登録させ、後で有料に変換しようとする場合、分析は難しくなります。理想的な世界では、ユーザーがお金を払った瞬間から始めて、そこからすべてのマーケティングコストを追跡します。しかし、これは非常に複雑になる可能性があります。通常、妥協案としては、マーケティング・チャネル全体で「サインアップあたりのコスト」を比較することです。
  • 割引を多用する場合(グルーポン、1箱目無料)、これらを獲得コストに考慮し、適切なチャネルに割り当てる必要があります。
  • これはウェブ中心のフレームワークですが、モバイルの原則も全く同じです。

あなたが上記の線に沿って顧客獲得コストをマッピングしたら、その意味について考える必要があります。これを行う方法の1つは、次のとおりです。

  1. 今後1年間で、各チャネルのCPAを現実的にどの程度まで削減できるか(SEMをより洗練させ、コンバージョン率を高めることで)?
  2. 今後1年間で、現実的にLTVをどの程度まで高めることができるか(リピートの増加、マージンの改善など)?
  3. このCPAとLTVで、それぞれの獲得チャネルが意味をなすか?もしそうでないなら、そうでないチャネルを切り捨てます。

次に、グロースについて考えましょう:

  1. 無料チャネルでの獲得量を増やすには、どうしたらよいでしょうか?(顧客基盤がある場合、CRMから始めるのがベストです)。そのための現実的な目標は何ですか?
  2. 有料チャンネルのCPAを上げるとどうなりますか?どのような限界にぶつかりますか?一般的に、CPAは高く始まり、洗練されるにつれて下がり、その後、関連性の低い検索語から、またはより広いターゲティングでボリュームを探し始めると、徐々に上がり始めます。よくある間違いは、関連性の高いロングテールSEMからCPAを取得し、これがカテゴリーで最も人気のある「ヘッド」用語にも適用されると仮定することです。
  3. 見ておくべき他のマーケティングチャネルはありますか?ダイレクトレスポンスTVや屋外広告は、一部のオンラインビジネス(特にモバイルのビジネス)には有効なようですが、他のビジネスには全て有効というわけではありません。新しいオーディエンス(インスタグラム、スナップチャットなど)に対して最初に最適化することで、最高の価値を見出すことができる場合がよくあります。
  4. 最大予算に達するまで、またはCPAが高くなりすぎるまで、最も安価なチャンネルから始めて、有料広告による獲得を積み重ねます。

上記が少し理論的であれば申し訳ありません – いつものように理論はここでの戦いの10%であり、90%は実行と正確な粒状のデータを持っていることを確認することです。「現実世界」でのフィードバックをお待ちしています。とはいえ、私が見てきた最高のマーケティングオペレーション(Lovefilm、The Hut、Wooga、Housetrip)は、上記の理論を本当によく理解しています。


フォローして最新記事をチェック!

良いリテンションとは何か

こんにちは、そして私の週刊ニュースレターの無料月刊版へようこそ。レニーです。毎週、プロダクト、グロース、人間との仕事、その他オフィスでストレスを感じていることに関する読者の質問に取り組んでいます。

もしあなたが有料購読者でなければ、今月の見逃し記事をどうぞ。

  1. プロダクト・マーケット・フィットを確認する方法
  2. 上司に悪い知らせを伝えるには
  3. コンバージョン機会の中で優先順位をつけるコツ

今週の記事もとても楽しみですので、さっそくご紹介します。


▼ 本記事の内容

  1. 良いリテンションと素晴らしいリテンションとは?
    1. 良いユーザーリテンションと素晴らしいユーザーリテンション
    2. 良い売上継続率(NRR)と素晴らしい売上継続率
  2. エキスパートへの謝辞
  3. 免責事項:リテンションが低くても問題ない場合がある理由
  4. 1. 良いユーザーリテンションとは?
    1. コンシューマー向けソーシャル:~25%で「良い」、~45%で「素晴らしい」
    2. コンシューマー向けトランザクション:~30%で「良い」、~50%は「素晴らしい」
    3. コンシューマー向けSaaS: ~40%で「良い」、~70%は「素晴らしい」
    4. 中小企業/中堅企業向けSaaS:~60%で「良い」、~80%は「素晴らしい」
    5. エンタープライズSaaS:~75%で「良い」、~90%は「素晴らしい」
  5. 2. 良い売上継続率とは?
    1. コンシューマー向けSaaS:~55%で「良い」、~80%は「素晴らしい」
    2. ボトムアップ型SaaS:~100%で「良い」、 ~120%は「素晴らしい」
    3. 導入・拡大期の超小規模企業向けSaaS:~80%で「良い」、~100%は「素晴らしい」
    4. 導入・拡大期の中小企業/中堅企業向けSaaS:~90%で「良い」、~110%は「素晴らしい」
    5. エンタープライズSaaS:~110%で「良い」、~130%は「素晴らしい」
  6. まとめ

この記事は『What is good retention』を、著者の了解を得た上で翻訳したものです。

著者:Lenny Rachitsky
翻訳者:渡辺圭祐


Q:良いリテンションと素晴らしいリテンションとは何だとお考えですか?

「優れたリテンションは、プロダクトをグロースさせるためのスケーラブルな方法です。リテンションは、プロダクト・マーケット・フィットを示す最良の指標であり、ユーザーの生涯価値を決める最も重要な要素であり、高いリテンションはあらゆる最適な獲得戦略の原動力となるのです。これは、グロースのトリプルワード・スコアに相当するものです。」

ケイシー・ウィンタース

リテンションは、ビジネスを構築する(そして投資する)際に最も重要な指標であると広く考えられていますが、最も理解されていない指標の1つでもあります。なぜでしょうか?なぜなら、あなたがグロースのエキスパートか経験豊富な投資家でない限り、逸話や古いブログ記事、見当違いのベンチマークに頼ってしまうことが多いからです。私自身、スタートアップ企業と仕事をしているときに、何度もこの問題にぶつかりました。

そこで、ケイシー・ウィンターズ(Casey Winters)(元ピンタレスト、グラブハブのグロース責任者、現在はイベントブライトのCPO)が私たちの会話の中でこの問題を提起したとき、私たちはこの機会に新しい調査をすることにしました。そこで私たちは、最も経験豊富な20人のグロース・プラクティショナーに連絡を取り、2つの簡単な質問を投げかけました。

  1. 良いリテンションと素晴らしいリテンションとは何だとお考えですか?(6ヶ月時点
  2. 良い売上継続率と素晴らしい売上継続率について、どのようにお考えですか?(12ヶ月)

これらのインサイトをもとに、入手可能な公開データを組み合わせて、私たちは、ほとんどのタイプのビジネスにおける「良い」「素晴らしい」リテンションのための一連の具体的な推奨事項を導き出しました。以下では、これらの結論を視覚的に要約し、各エキスパートによる詳細な推奨事項と、今日の多くの大企業の公開データをご覧いただけます。

この記事の関連記事として、ケイシーはリテンションを高める方法などを掘り下げたエッセイも発表していますので、ぜひご覧になってください。

それでは、さっそく本題に入りましょう。

良いリテンションと素晴らしいリテンションとは?

良いユーザーリテンションと素晴らしいユーザーリテンション

  • コンシューマーソーシャル:~25%で「良い」、~45%は「素晴らしい」
  • コンシューマー向けトランザクション:~30%で「良い」、~50%は「素晴らしい」
  • コンシューマー向けSaaS:~40%で「良い」、~70%は「素晴らしい」
  • 中小企業/中堅企業SaaS:~60%で「良い」、~80%は「素晴らしい」
  • エンタープライズSaaS:~70%で「良い」、~90%は「素晴らしい」

良い売上継続率(NRR)と素晴らしい売上継続率

  • コンシューマー向けSaaS:~55%で「良い」、~80%は「素晴らしい」
  • ボトムアップ型SaaS:~100%で「良い」、~120%は「素晴らしい」
  • 導入・拡大期の超小規模企業向けSaaS:~80%で「良い」、~100%は「素晴らしい」
  • 導入・拡大期の中小企業/中堅企業向けSaaSの展開:~90%で「良い」、~110%は「素晴らしい」
  • エンタープライズSaaS:~110%で「良い」、~130%は「素晴らしい」

このビジュアルガイドは、高解像度のPDFにリンクしています。

ソース:LennysNewsletter.com

エキスパートへの謝辞

アダム・フィッシュマン(Adam Fishman) (パトレオン、Imperfect Foods)、 アンドリュー・チェン(Andrew Chen) (ウーバー、a16z)、アンディ・ジョン(Andy Johns) (ツイッター、フェイスブック、ウェルスフロント)、 ブライアン・バルフォア(Brian Balfour) (リフォージ)、 ブライアン・ローゼンバーグ(Brian Rothenberg) (イベントブライト、タスクラビット)、 チェンリー・ワン(ChenLi Wang) (ドロップボックス)、ダン・ホッケンマイアー(Dan Hockenmaier) (サムタック)、 エレーナ・ヴェルナ(Elena Verna)(サーベイモンキー、ミロ)、ファリード・モサバット(Fareed Mosavat) (スラック)、 ジェイミー・クイント(Jamie Quint) (Notion、レディット)、ジェフ・チャン(Jeff Chang) (ピンタレスト)、 ジュリー・ズオ (Julie Zhou) (Hipmunk、Yik Yak、アドロール)、 ケビン・クオック (Kevin Kwok) (グレイロック)、リー・ジン (Li Jin) (a16z)、メルシー・グレース(Merci Grace) (スラック)、マイク・デュボー(Mike Duboe) (スティッチ・フィックス、グレイロック)、ナオミ・イオニータ(Naomi Ionita) (エバーノート、メンロー・ベンチャーズ)、ニック・ソマン(Nick Soman) (ガスト、ディーセント)、サラ・グォ(Sarah Guo) (グレイロック)、 ショーン・クラウズ(Shaun Clowes) (アトラシアン、ミュールソフト)、ユーリ・ティメン(Yuriy Timen) (グラマリー)。 そしてもちろん、この研究の素晴らしいパートナーであるケイシー・ウィンターズも。

免責事項:リテンションが低くても問題ない場合がある理由

ある人にとっては、これらのリテンションベンチマークは高く見えるでしょう。これは、大成功するビジネスを構築するためのハードルが高いからです。正直なところ、ほとんどのスタートアップが失敗するのはそのためです。しかし、リテンションは正しく把握すべき重要な指標ではありますが、真空地帯で生きているわけではありません。リテンション率が低くても問題ない場合もあります。

  1. まだ始めたばかり:すぐにこのレベルのリテンションが見られなくても、絶望しないでください。これらのベンチマークを参考に、リテンションとアクイジションの間で優先順位を決めましょう。また、リテンションを高めるための3つのアプローチについては、ケイシーの投稿をお読みください。しかし、スタートアップ企業がリテンションを大幅に向上させることはほとんどない、ということを知っておいてください。
  2. CACと限界費用が低い:グロースは、CAC、リテンション、ユニットエコノミクスの間でバランスを取る必要があります(SEO、口コミ、バイラルなど)。安く新規ユーザーを獲得できるのであれば、より多くのユーザーを失う余裕があります。ダン・ホッケンマイアーによるこのスレッドでは、スポティファイやツイッターのようなビジネスで低いリテンションがOKである理由を説明しています。
  3. ベンチャースケールのビジネスを構築しているわけではない:これらのベンチマークは、象徴的で大規模なスケーラブルビジネスの構築を支援した人々から得たものです。このレベルのリテンションは、プロダクト・マーケット・フィット、あるいは持続可能なビジネスの構築には必要ありません。しかし、拡張性のある獲得戦略を推進するための平坦なリテンションカーブは、あなたのビジネスを存続させるために十分なものです。

最終的に重要なのは、リテンションが持続的なグロースを支えることなのです。

ファリード・モサバット(Fareed Mosavat)

では、その詳細をご紹介しましょう。

1. 良いユーザーリテンションとは?

ユーザーリテンションとは、サインアップしたユーザーのうち、6ヶ月後にまだアクティブ(プロダクトを使用したり、購入したり、写真を投稿したり)である割合と定義しましょう。

コンシューマー向けソーシャル:~25%で「良い」、~45%で「素晴らしい」

スナップチャット、ツイッター、インスタグラムなど、無料で利用でき、一般的に広告でサポートされている企業が含まれます。このカテゴリの分母は、登録ユーザーです。

エキスパートの意見

  • ジェフ・チャン:25%以上で「良い」、40%以上は「素晴らしい」
  • ケイシー・ウィンタース:25%以上で「良い」、45%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローテンバーグ:25%以上で「良い」、50%以上は「素晴らしい」
  • ジェイミー・クイント:30%以上で「良い」、40%以上は「素晴らしい」
  • チェンリー・ワン:30%以上で「良い」、50%以上は「素晴らしい」
  • ジュリー・ズオ:30%以上で「良い」、60%以上は「素晴らしい」
  • ケビン・クオック:30%以上で「良い」、60%以上は「素晴らしい」
  • アンドリュー・チェン:50%以上で「良い」、75%以上は「素晴らしい」

上場企業

  • フェイスブック:6ヶ月間のユーザーリテンション:60 – 70%
  • インスタグラム:6ヶ月間のユーザーリテンション:50 – 60%
  • スナップチャット:3ヶ月間のユーザーリテンション:33%、24ヶ月間のユーザーリテンション:30%(ソースソース
  • ツイッター:3ヶ月間のユーザーリテンション:31%、24ヶ月間のユーザーリテンション:22% (ソースソース)

コンシューマー向けトランザクション:~30%で「良い」、~50%は「素晴らしい」

エアビーアンドビー、リフト、ターボタックスなど、一般的に単発の購入で支えられている企業が含まれます。このカテゴリの分母は、少なくとも1回のトランザクションを行ったユーザーです。

エキスパートの意見

  • ケイシー・ウィンタース:15%以上で「良い」、35%以上は「素晴らしい」
  • ケビン・クオック:30%以上で「良い」、50%以上は「素晴らしい」
  • ダン・ホッケンマイヤー:30%以上で「良い」、50%以上は「素晴らしい」
  • リー・ジン:30%以上で「良い」、50%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローテンバーグ:30%以上で「良い」、60%以上は「素晴らしい」
  • チェンリー・ワン:30%以上で「良い」、70%以上は「素晴らしい」

上場企業

  • ターボタックス:12ヶ月のカスタマーリテンション:77% (ソース)
  • リフト:12ヶ月のカスタマーリテンション:22% (ソース)

コンシューマー向けSaaS: ~40%で「良い」、~70%は「素晴らしい」

ネットフリックス、スポティファイ、フールーなど、コンシューマー向けに月額/年額サブスクリプションを販売している企業も含まれます。このカテゴリの分母は、有料のサブスクリプションを開始したユーザーです。

エキスパートの意見

  • ダン・ホッケンマイアー:40%以上で「良い」、60%以上は「素晴らしい」
  • アダム・フィッシュマン:40%以上で「良い」、70%以上は「素晴らしい」
  • ジェフ・チャン:50%以上で「良い」、70%以上は「素晴らしい」
  • マイク・デュボー:50%以上で「良い」、70%以上は「素晴らしい」
  • エレナ・ベルナ:70%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」

上場企業

  • アマゾン・プライム:12ヶ月間のカスタマーリテンション:93%(ソース
  • ドロップボックス:12ヶ月のカスタマーリテンション:80%以上
  • スポティファイ:6ヶ月間のカスタマーリテンション:72%(ソースソース
  • ネットフリックス:12ヶ月のカスタマーリテンション:66%(ソース)
  • フールー:12ヶ月のカスタマーリテンション:53% (ソース)

中小企業/中堅企業向けSaaS:~60%で「良い」、~80%は「素晴らしい」

アサナ、スラック、アトラシアンなど、主に従業員数100~1000人程度の企業に対してサブスクリプションプロダクトを販売している企業が含まれます。このカテゴリの分母は、有償サブスクリプションを開始した企業です。

エキスパートの意見

  • ユーリ・ティメン:60%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」
  • マイク・デュボー:60%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:70%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」
  • ファリード・モサバット:70%以上で「良い」、85%以上は「素晴らしい」
  • チェンリー・ワン:70%以上で「良い」、85%以上は「素晴らしい」
  • アンディ・ジョーンズ:70%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • ダン・ホッケンマイアー:70%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • メルシー・グレース:80%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」

上場企業

  • アトラシアン:12ヶ月のカスタマーリテンション:98%(ソース
  • スラック:12ヶ月のカスタマーリテンション:90-95%(ソースソース
  • クイックブックス:12ヶ月のカスタマーリテンション:79% (ソース)

エンタープライズSaaS:~75%で「良い」、~90%は「素晴らしい」

セールスフォース、ワークデイ、ADPなど、主に大企業(従業員数1000人以上)向けにサブスクリプションプロダクトを販売している企業が含まれます。

エキスパートの意見

  • アンディ・ジョーンズ:70%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローテンバーグ:75%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • ジェフ・チャン:80%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:85%以上で「良い」、95%以上は「素晴らしい」
  • ニック・ソマン:85%以上で「良い」、95%以上は「素晴らしい」
  • ショーン・クラウズ:85%以上で「良い」、95%以上は「素晴らしい」

エキスパートの意見

  • ワークデイ:12ヶ月のカスタマーリテンション:95% (ソース)
  • セールスフォース:12ヶ月間のカスタマーリテンション:90% (ソース)
  • ADP:12ヶ月間のカスタマーリテンション:90%以上 (ソース)

2. 良い売上継続率とは?

売上継続率とは、1年前の企業の月間経常収益(MRR)を、同じカスタマーグループからの当月分のMRRで割ったものと定義しましょう。基本的には、1つのカスタマーグループからどれだけの収益を長期間にわたって得ているのでしょうか?

このセクションは、前のセクションとは少し異なるカテゴリがあることにお気づきでしょう。これは、ビジネスが販売するカスタマーが、(ユーザーリテンションとは異なり)売上継続率に影響を与えるためです。例えば、ボトムアップ型SaaSではネットワーク効果によって売上継続率が向上しますが、VSB(超小規模企業)では多くの企業が倒産するため、不本意な解約が一般的で、ランド・アンド・エクスパンド・モデル(導入・拡大)では高いユーザー解約率を補う形でユーザーあたりの収益が増加します。

では、売上継続率の良し悪しについて、ビジネスタイプ別に見てみましょう。

コンシューマー向けSaaS:~55%で「良い」、~80%は「素晴らしい」

ネットフリックス、スポティファイ、フールーなど、コンシューマー向けに月額/年額サブスクリプションを販売している企業がこれにあたります。このカテゴリの分母は、有料のサブスクリプションを開始したユーザーです。

エキスパートの意見

  • ケイシー・ウィンタース:50%以上で「良い」、70%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローゼンバーグ:55%以上で「良い」、75%以上は「素晴らしい」
  • ユーリ・ティメン:60%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」
  • ダン・ホッケンマイアー:65%以上で「良い」、75%以上は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:70%以上で「良い」、80%以上は「素晴らしい」
  • アンディ・ジョーンズ:70%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • マイク・デュボー:70%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」

ボトムアップ型SaaS:~100%で「良い」、 ~120%は「素晴らしい」

スラック、フィグマ、ズームなど、企業内の個人貢献者にセルフサービスのプロシューマー向けサブスクリプションプロダクトを提供する企業も含まれます。

エキスパートの意見

  • ジェフ・チャン:100%以上で「良い」、110%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・バルフォア:100%以上で「良い」、120%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローテンバーグ:100%以上で「良い」、120%以上は「素晴らしい」
  • ファリード・モサバット:110%以上で「良い」、130%以上は「素晴らしい」
  • ナオミ・イオニータ:110%以上で「良い」、130%以上は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:110%以上で「良い」、130%以上は「素晴らしい」
  • ジェイミー・クイント:120%以上で「良い」、140%以上は「素晴らしい」
  • メルシー・グレース:120%以上で「良い」、140%以上は「素晴らしい」

上場企業

導入・拡大期の超小規模企業向けSaaS:~80%で「良い」、~100%は「素晴らしい」

ガストなど、従業員数100人未満のアーリーステージ企業向けにサブスクリプションサービスを販売している企業も含まれます。

エキスパートの意見

  • ブライアン・バルフォア:80%以上で「良い」、90%以上は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:85%以上で「良い」、105%以上は「素晴らしい」
  • ファリード・モサバット:90%以上で「良い」、110%以上は「素晴らしい」

導入・拡大期の中小企業/中堅企業向けSaaS:~90%で「良い」、~110%は「素晴らしい」

アトラシアン、ボックス(Box)、ゼンデスクなど、従業員数100~1000人程度の企業向けにサブスクリプションサービスを販売している企業が含まれます。

エキスパートの意見

  • マイク・デュボー:85% で「良い」、110%は「素晴らしい」
  • サラ・グォ:90%以上で「良い」、110%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・バルフォア:100%以上で「良い」、120%以上は「素晴らしい」
  • ブライアン・ローゼンバーグ:100%以上で「良い」、120%以上は「素晴らしい」
  • アダム・フィッシュマン:100%以上で「良い」、125%以上は「素晴らしい」

上場企業

エンタープライズSaaS:~110%で「良い」、~130%は「素晴らしい」

セールスフォース、ワークデイ、ADPなど、主に従業員数1000人以上の大企業向けにサブスクリプションプロダクトを販売している企業が含まれます。

エキスパートの意見

  • ジェフ・チャン:110%以上で「良い」、120%以上は「素晴らしい」
  • ナオミ・イオニタ:120%以上で「良い」、140%以上は「素晴らしい」

上場企業

まとめ

この記事から他に何も得られないとしたら、それはリテンションが重要であるということです。非常に重要です。あなたのビジネスが成功するか失敗するかは、他のどの指標よりも重要なのです。そして、あなたのビジネスにとって良いリテンションがどのようなものかを理解すればするほど、前者をより良く達成することができるのです。このリサーチが、ビジネスを構築している方、投資をしている方、あるいは単に興味がある方にとって、お役に立つことを願っています。

この記事に関するご意見、ご感想、ご質問などがありましたら、ぜひお寄せください。また、ケイシーの関連記事もお読みください

このニュースレターが貴重なものだとお感じになられたなら、ご友人と共有されるか、まだ購読されていないなら、ご購読をご検討ください。

レニー 👋


フォローして最新情報をチェック!

プロダクトチームとフィーチャーチームの比較

この記事は多くの人を動揺させるに違いありません。

それは残念なことですが、テック企業におけるプロダクトの役割をめぐる継続的なノイズと混乱の度合いは、悪化の一途をたどっています。 さらに、プロダクト担当者のためのカンファレンスでの講演やトレーニングプログラム、いわゆる認定プログラムにおいて、問題点や問題行動が制度化されつつあるのを私は目の当たりにしています。

私は過去に何度かこの問題について話しており、特にEmpowered Product Teams(権限を与えられたプロダクトチーム)に関する記事と基調講演で述べています。 しかし、多くの人はその中で自分の聞きたいことだけを聞いており、私はもっと明確に伝える必要があることが分かってきました。

ですから、この記事は読むのが辛いかもしれませんが、もしあなたがプロダクトの世界の人々からの矛盾した混乱したメッセージにイライラしているなら、ここで我慢していただければ、私は必要な明瞭さを提供できるのではないかと期待しています。


翻訳者注:
この記事の翻訳にあたり、マーティ・ケーガンにお願いしたところ、この記事の内容は既にEMPOWEREDの中に記載されているとのことでした。しかし、この記事の内容より幅広く、深く学びたい場合は、INSPIREDとEMPOWEREDの本で勉強するのが良いと言及すれば記事を公開して大丈夫だろうとのことでしたので、以下にリンクをシェアしておきます。この記事は、以下の本の軽量版で、より深く広く勉強されたい方は下の本よりお願いします。

この記事は、『Product vs. Feature Teams』を著者の了解を得た上で翻訳したものです。

著者: Marty Cagan
翻訳者: 渡辺圭祐


技術者の世界では、大まかに言って3種類の「プロダクトチーム」が存在します。

最も一般的なのは、数の上ではプロダクトチームではなく、デリバリーチームです。「開発チーム」「スクラムチーム」「エンジニアリングチーム」とも呼ばれ、もしあなたの会社がSAFeのようなものを行っているなら、残念ながらこれはあなたのことです。 この状況では、何人かの開発者と、プロダクトオーナーがいます。 このモデルにおけるプロダクトオーナーは、私が「バックログマネージャー」と呼んでいるものです。 誰かがこのマネジメント作業を行う必要がありますが、これはアウトプットを提供するためのものであり、私が懸念している、顧客のための真の一貫したイノベーションの必要性とは、実はほとんど関係がないのです。 このモデルがなぜウォーターフォールを再パッケージ化したものに過ぎず、真のテックプロダクト企業では使われないのかについては、別のところで書きました。 そこで、この話は終わりにしましょう。

この記事は、他の2つのタイプのチームの違いについて書いているのです。

さて、これから非標準的で合意もされていない用語集を紹介することになるので、公正に警告しておきましょう。 しかし、今日、業界として、他の2種類のチームを「プロダクトチーム」または「スクワッド」と呼んでいるので、それらの用語集を使わなければならないのです。 しかし、これからわかるように、表面的なレベルでは似ていますが、特にプロダクトマネージャーの役割について話すと、両者は劇的に異なっているのです。

エンパワードプロダクトチーム(権限を与えられたプロダクトチーム)の良さについて書いたとき、私はここでプロダクトチームと呼び続けることにしました。 具体的には、プロダクト、デザイン、エンジニアリングのクロスファンクショナルであること、(アウトプットではなく)結果に焦点を当て、それによって評価されること、そして、解決するよう依頼された問題の最善の方法を見出す権限を与えられていること、です。

この意味でのプロダクトチームの目的は、顧客が好む方法で問題を解決し、かつ私たちのビジネスに役立つようにすることです。

そうでないことを望むかもしれませんが、世の中のチームのうち、このような意味でのプロダクト・チームはごく一部であることは分かっています。

多くの場合、チームにはまったく権限が与えられていません。 それに対して、彼らはビジネスに奉仕するために存在しています。

この記事では、この第3のクラスのチームをフィーチャー・チームと呼ぶことにします。 私は、フィーチャー・チームの確立された定義を少し曲げていますが、これらのチームがすべてアウトプットについてであるということを強調するのに役立つので、この用語を使用しています。 フィーチャー、そして時にはプロジェクトもそうです。 通常、ロードマップと呼ばれる優先順位付けされたリストという形でチームに提供されます。

しかし、ここでさらに深く掘り下げる必要があります。

プロダクトには常に4つのリスクがあることを思い出してください。

  • 価値リスク(人々はそれを買うか、あるいは使うことを選択するか?)
  • ユーザビリティリスク(使い方がわかるか?)
  • 実現可能性リスク(今ある時間、スキル、テクノロジーで構築可能か?)
  • ビジネス実行可能性リスク(このソリューションは、私たちのビジネスの様々な局面で有効か?)

プロダクトチームでは、プロダクトマネージャーは価値実行可能性を確保することに明確に責任を持ち、デザイナーはユーザビリティを確保することに責任を持ち、テックリードは実現可能性を確保することに責任を持ちます。 このようなチームでは、全員が納得できる解決策を見出すために、激しいギブアンドテイクで真に協力し合うのです。

私が、エンパワードプロダクトチームの真のプロダクトマネージャーであることがいかに大変であるかを話したり書いたりするとき、それはまさに価値と実行可能性を確保するのが難しいからです。 もし、これを簡単に考えているのなら、この記事をぜひ読んでみてください。

しかし、フィーチャーチーム(機能チーム)には、ユーザビリティを保証するデザイナーがいますし、実現可能性を保証するエンジニアもいます。しかし、これは理解すべき重要なことですが、ロードマップにその機能を要求したステークホルダーや経営者の責任は、価値とビジネスの実現性にあるのです。

もし彼らが「機能xを作って欲しい」と言えば、彼らは機能xがある程度の価値をもたらすと信じており、機能xがビジネスにとって実現可能なものだと信じているのです。

ステークホルダーは、価値と実行可能性に対して暗黙の責任を負っているにもかかわらず、彼らが期待した結果が実現されなかった場合、あなたとあなたのチームを非難する原因を探すことは、指摘しておく価値があります。 時間がかかりすぎた、デザインが悪かった、期日までに間に合わせるために重要な機能を削った、などなど。 そしてもちろん、あなたのチームは、そもそもこのプロダクトが作る価値があるとは思ってもいなかったでしょう。 この問題については、昔からよく言われていることで、私も何度も書いています。

表面的には、フィーチャーチームも真のエンパワーメントを受けたプロダクトチームも、どちらもスクワッドです。 そのため、両者は似ているように見えますが、その違いは深いのです。

まず、プロダクトマネージャーの役割から見ていきましょう。 エンパワードプロダクトチームでは、プロダクトマネージャーは価値と実行可能性を保証する必要があり、顧客、データ、業界、特にビジネス(セールス、マーケティング、財務、サポート、法務など)についての深い知識は絶対に譲れず、不可欠なものです。

しかし、フィーチャーチームでは、その知識は(せいぜい)関係者の間で分散しているのが現状です。

いずれにせよ、このモデルにおけるプロダクトマネージャーの責任は、フィーチャーチームの場合、非常に異なることがおわかりいただけると思います。

フィーチャーチームのプロダクトマネージャーの仕事は、最も一般的には、機能をデザインし提供するための「猫の群れ」、または、特定の何かに責任を持つわけではない、漠然とした弱いクロスファンクショナルリーダーという形で説明されます。 このようなフィーチャーチームは、しばしば自分たちがプロダクト発掘を行っていると思っていますが、実際には単なるデザインとちょっとしたユーザビリティ・テストのようなものです。

しかし、フィーチャーチームがプロダクトマネージャーの役割に与える影響は他にもあります。

チームに権限が与えられていないため、(はっきり言えば、アウトプットを提供するように言われても、意味のある権限は与えられていない真のプロダクトデザイナー(サービスデザイン、インタラクションデザイン、ビジュアルデザイン、ユーザーリサーチに長けた人)を惹きつけ、維持することは非常に難しいのです。

フィーチャーチームがある場合、デザイナーは(もしいれば)グラフィックデザイナーであることがほとんどです。 グラフィックデザインやビジュアルデザインが重要でないわけではありませんが、ここで重要なのは、誰かが少なくともインタラクションデザインを理解し、できればユーザーリサーチを行う必要があるという大きなギャップがあることです。 したがって、このモデルでは、これらのギャップを埋めようとするプロダクトマネージャーへのプレッシャーが非常によく見られます。

デザイナーが使うツールを学ぶことは難しくありませんが、良いデザインとユーザーリサーチの方法を学ぶことは難しいからです。 悲しいことに、多くのプロダクトマネージャーは、本物のプロのプロダクトデザイナーと仕事をする機会がないため、自分が何を失っているのかさえわかっていないのです。

幸運にも、あなたのチームに真のプロダクトデザイナーがいる場合(少なくとも、彼らがそのスキルを十分に発揮できる会社に転職するまでは)、彼らは通常(そして当然)プロダクトマネージャーの目的とは何かを疑問に思うでしょう。

その結果、フィーチャーチームでは、プロダクトマネージャーの役割は主にプロジェクトマネージャーであり、一部(未熟な)デザイナーであるということになります。

エンジニアにも同じようなフラストレーションがあります。 プロジェクトマネージャーであるプロダクトマネージャーは、エンジニアが考える仕事のやり方としばしば対立します。 言うまでもなく、このモデルではエンジニアは納品に追いやられており、何度も言うように、もしそうであれば、エンジニアの本当の価値は半分程度しか得られません(したがって、優秀なエンジニアは退職して、本当に自分の技術を発揮できる、エンパワードプロダクトチームに入りたいと思うでしょう)。

プロダクトマネージャーは「会社で最も強力な人材の一人である」必要があり、「CEOはプロダクトマネージャーを会社の将来のリーダー候補とみなすべきである」、そして「強力なプロダクトマネージャーはプロダクトのCEOである」と私が書くとき、私は間違いなくフィーチャーチームのプロダクトマネージャーについて話しているのではありません

この時点で、あなたがフィーチャー・チーム・モデルで仕事をしているのか、それともエンパワーメントされたプロダクト・チーム・モデルで仕事をしているのかが分かっていればいいのですが、私は、人々がしばしば、自分がフィーチャー・チーム・モデルであることを認めたがらないことを学びました。

そこで、あなたのチームに適用できるテストをいくつか紹介しましょう。

  • 優先順位をつけた機能と日程が記載されたロードマップが提供されているか、または、ビジネス上の成果とともに解決すべき問題が割り当てられているか?
  • あなたとデザイナーの間に役割の混乱があるか?
  • あなたとデリバリー・マネージャーの間に役割分担の混乱はあるか?
  • 一日の大半をプロジェクトマネジメントに費やしていないか?
  • OKRを使用したが、結局拒否されるか、成果と機能を意図的にマッシュアップして納品するのか、混乱したか?
  • あなたのチームには、宣教師や傭兵がいるか?
  • 説明責任のレベルはどの程度か?

フィーチャーチームとプロダクトチームは、表面的には非常によく似ていますが、その運営方法、権限委譲と説明責任のレベル、そして特にプロダクトマネージャーの責任において、劇的に異なっています。

私は、いくつかの例外を除いて、最高の企業の最高のプロダクトチームは、エンパワードプロダクトチームモデルであると断言します。 しかし、私が最高のプロダクト会社と考える会社であっても、すべてのプロダクトチームが権限を与えられているわけではないことを認めます。 実際、いくつかのチームはフィーチャーチームです。 通常、それはリーダーシップがその特定のチームをまだ信頼していないためです。 信頼を得るには、まずその信頼が必要な場合もあります。 また、リーダーが解決策を指示することが問題である場合もあります。

私は、真にエンパワードプロダクトチームに対する強い偏見を、これまで隠そうとはしてきませんでした。 しかし、私は、単にエンパワードチームを支持するだけでなく、フィーチャー・チームや、彼らが引き起こす問題、そして、彼らがもたらす悪い結果を呼び起こす必要があると信じています。

今日、数え切れないほどの企業が、デリバリー・チーム・モデルの無駄さに気づき、テクノロジーを駆使した真のプロダクト・カンパニーに変身する必要があることを知りながら、フィーチャー・チームに移行するための表面的な変更で「その条件を満たせる」と思っているのです。

最後に、フィーチャーチームのプロダクトマネージャー権限を与えられたプロダクトチームとの違いを強調しておきたいと思います。 これは、全く異なる仕事であり、全く異なるスキルセットを必要とします。 おそらく、同じ職種であるべきでさえないでしょう。

多くのデザイナーやエンジニアが、真のプロダクトマネージャーに触れたことがなく、真にエンパワーメントされたチームで働くことができないのは、私にとって悲しいことです。 だからこそ私は、世の中には十分に活用されていない人材がたくさんいると主張し、優れた企業が行っているような働き方をするよう説得を続けているのです。

今すぐできることの1つは、次にプロダクト関連の記事やツイートを読んだり、カンファレンスの講演に参加したり、プロダクトトレーニングに参加したりするときに、著者や講演者やトレーナーが、エンパワードプロダクトチームモデルについて話しているか、それともフィーチャーチームモデルについて話しているか、考えてみることです。

更新: この投稿に関して寄せられた多くの質問に対応するフォローアップ記事を投稿しました。

マーティ・ケーガン

SVPG 創設者・パートナー・プロダクト担当


フォローして最新情報をチェック!

Marty Caganの他の記事を読む 👀

👉 Marty Cagan

プロダクトの付加価値の測り方

この記事は、Oleg Yaによるプロダクトマネジメントの基礎と、人々に必要とされるプロダクトを作るための連載の一部です。

今回は、プロダクトの付加価値を測定する方法を学びます。

簡単な例を使って、さまざまな種類のプロダクトでどのように機能するかを紹介します。これまでの記事で、なぜ付加価値を高めることがプロダクト業務の核心であるのかについて説明しました。また、プロダクトメトリクスが必ずしも問題解決の効果を明確に特徴付けるものではないことを説明し、問題解決効率と付加価値メトリクスという概念を導入しました。

効率や付加価値の測定は、意外と複雑です。このエッセイでは、それらを測定するための試行錯誤の方法を探っていきます。

この無料のGrowth Skills Assessment Testで、あなたのプロダクトマネジメントとデータのスキルをテストしてください。
GoPracticeによるシミュレータでデータ駆動型のプロダクトマネジメントを学びましょう。
▼本記事の内容
  1. 付加価値測定の課題
  2. 特定の「ジョブ」の中で競合と比較した付加価値の測定
  3. プロダクトの付加価値をどう評価するか
  4. 効率性の変数が共通の単位である場合の付加価値の測定
  5. 効率変数に異なる単位がある場合の付加価値測定
  6. アマゾンのチームはどのように顧客の問題解決の効率を高めて構築していくか
  7. 変数の重要性は解決する問題や文脈によって異なる
  8. 「デート相手を探す」というタスクの付加価値測定
  9. ソリューションのパフォーマンス指標を定義することが不可能なタスク
  10. 付加価値は重要な成長ドライバー

この記事は、「How to measure the added value of a product」を著者の了解を得た上で翻訳し、公開するものです。

著者: Oleg Ya
翻訳者: 渡辺圭祐

付加価値測定の課題

プロダクトの問題解決効果や付加価値を測定することは、いくつかの理由から困難です。

  • 効率性は、プロダクトそのものだけでなく、それが使用されるタスクにも依存します。例えば、SUVがアイスランドの広い道路を走るのと、ローマの狭い道路を走るのとでは、その性能は大きく異なります。
  • プロダクトの有効性は、その状況に応じて変化します。例えば、日陰のテーブルの付加価値は、涼しい日と暑い日とでは大きく異なります。
  • プロダクトの価値は主観的なものです。ドラマ映画が好きな人もいれば、コメディ映画が好きな人もいます。黒が好きな人もいれば、紫が好きな人もいます。
  • 価値観は必ずしも合理的なものではありません。人は自分の認知バイアスに影響されることもあれば、不完全な情報を持っていて感情的に判断することもあります。

にもかかわらず、一般に人々は価値について非常によく理解しています。私たちは、どの靴がランニングに適しているか、どの靴が劇場に行くのに適しているかを知っています。どのテレビシリーズが面白くて、どのテレビシリーズがつまらないかも知っています。また、ある仕事をするときに、どの社員がより適任であるかということもわかります。

これらの判断には、たとえ定量的に測定できなくても、問題に対するさまざまな解決策の有効性や価値を判断し、比較できることが必要です。

しかし、他人のためにプロダクトを作るとなると、事態はさらに複雑になります。プロダクトの有効性を評価する方法は、タスク、コンテクスト、個人の特性によって異なるからです。

ですから、プロダクトの効果や代替品との比較による付加価値を測定することは、プロダクトワークの基本中の基本なのです。そのような測定なしに、プロダクトを良くすることの意味を語ることはできないでしょう。しかし、その前に、付加価値を測定するためのコンテキストを絞り込む必要があります。

特定の「ジョブ」の中で競合と比較した付加価値の測定

ここでは、プロダクトの付加価値を測定することについて、次のような話はしないことにします。

  • 特定の競争相手(代替品)に関して。
  • 特定の競合他社(代替品)に対して、または「片付けるべきジョブ」(Job To Be Done)の特定のタスクの中で。

ここでは、クレイトン・クリステンセン版JTBDのフレームワークに従って「Job To Be Done」を定義することにします。

  • 人が解決したい問題
  • その問題が発生する背景

プロダクトの付加価値をどう評価するか

プロダクトの付加価値を推定するための大まかなプロセスは以下の通りです。

ステップ1.「片付けるべきジョブ」を解決する有効性を定義する変数を決定する。重要:変数は、問題を解決する特定の方法に依存すべきではありません。それらは「ジョブ」によって定義されるため、どのような方法の有効性を測定するのにも適しているはずです。

例えば、「ジョンはUberを使って空港まで行きたい。」という表現は、問題を解決する特定の方法を参照しているので、適切ではありません。しかし、「ジョンはできるだけ早く空港に行きたい」という表現は、問題を解決するさまざまな方法に適用できるので、適しています。目的地に着くまでの時間を使って、さまざまな解決策の効率を比較することができるのです。

ステップ2.これらの変数に基づいて、利用可能な解決策を比較します。

  • すべての特性が1つの測定単位で測定される場合、それらを組み合わせてプロダクトの有効性を特徴付ける1つの指標にする。
  • もし特性が異なる単位で測定されるのであれば、ユーザーにとっての各要素の重みと重要性を理解するようにする。そして、それに基づいて、どのプロダクトがよりよく問題を解決してくれるかを理解する。

例えば、ジョンが移動に費やす時間を基準に、空港へのさまざまな移動方法を比較することができます。しかし、空港までのさまざまな移動手段のコストと利便性の両方を考慮する必要があるかもしれません。その場合、ジョンにとって何が最も重要なのかに基づいて、それらの要因に優先順位を付ける必要があります。

この方法は、具体的な「片付けるべきジョブ」と「状況」によって、さまざまに応用することができます。以下、いくつかの例を見て、あなたのプロダクトの付加価値を測定するために、この方法を適用するのに役立てましょう。議論をしやすくするために、例を簡略化しています。

効率性の変数が共通の単位である場合の付加価値の測定

オンラインマーケットプレイスで決済を受け付けるという「片付けるべきジョブ」を考えてみましょう。

現在利用している決済代行会社は、決済ごとに3%の手数料を取っています。そこに競合するサービスが現れ、競争力のある2%の手数料でオンライン決済を提供します。

この段階で、2番目のプロバイダーの付加価値は、御社の売上高の1%のになります。御社の事業規模であれば、この付加価値でサービスを統合し、実験を行うことができます。

新サービスを統合して一部のユーザーに提供した後、新しいプロバイダーの決済スループット(開始されたトランザクションのうち正常に処理された割合)が古いプロバイダーより悪いことに気づきました。この問題のために、古いプロバイダーの0.3%に比べ、新しいプロバイダーは売上高の1.5%を失うことになります。

現在、オンライン決済プロバイダーの効率性を評価するための 2 つの特性があります。サービスの手数料率と決済スループットです。これらの特性は両方とも同じ単位で測定されるので、それぞれのソリューションの全体的な有効性を特徴付ける複合的な指標を計算することができます。

実験を始めてから1ヵ月後、もうひとつの重要な変数である、各プロバイダーがどれだけ効果的に不正取引を検知しブロックしているかについての最初のデータが届きました。

この場合、旧サービスはよりずさんな作業で0.5%の不正取引があったのに対し、新プロバイダーは0.1%まで不正取引を削減しました。

3つの特性はすべて同じ単位で測定されるため、オンライン決済ソリューションの効率性を特徴付ける1つの指標に簡単にまとめることができます。この結合された指標は、異なるソリューションの付加価値を評価し、比較するのに役立ちます。

導き出された変数が、決済受け入れの問題を解決する有効性を完全に特徴づけるものであれば、新しい支払いプロバイダーは、古いプロバイダーと比較して付加価値を生み出すことになります。旧サービスでは、マーケットの売上高の 3.8% のコストがかかっていたのに対し、新サービスでは 3.6% でした。したがって、新サービスは売上高に対して 0.2%の付加価値を持つことになります。

この例では、「片付けるべきジョブ」のすべての特性が共通の測定単位を持ち、その結果、単一の効率指標を導出することができました。しかし、これは常に可能なことではありません。別の「ジョブ」の例を見てみましょう。

効率変数に異なる単位がある場合の付加価値測定

ネットで商品を買うというジョブを考えてみましょう。

まず、問題解決の効率を決定する変数を定義します。

  • プロダクトの入手可能性:プロダクトが入手できなければ、問題を解決することは不可能である。
  • 商品のコスト:店頭での商品価格が安ければ安いほど、購入者にとってはありがたい。
  • 配送料:送料は安ければ安いほどよい。
  • 配送スピード:購入者が商品を受け取るのが早ければ早いほど良い。
  • 配送の信頼性:定期的に配送に支障をきたすようなサービスであれば、他のサービスを選択する理由になる可能性がある。
  • 返送の条件と費用:購入者は、商品が合わなかった場合、簡単に返品できることを望んでいる。

オンライン決済の例では、問題解決のためのパフォーマンス変数はすべて売上高に占める割合として測定されたので、総合的なパフォーマンス指標を簡単に導き出すことができました。しかし、オンラインショッピングのユースケースの場合、状況は異なります。

配送スピードは時間で、コストはお金で、信頼性は時間通りに配送された注文の割合で測定されます。これらの情報を複合して1つの効率指標にすることはできません。

代わりに、それぞれの変数を個別に比較して、利用可能なオンラインストアの付加価値を計算する必要があります。

これらの変数を比較することで、自社プロダクト(あるオンラインストア)がユーザーにとって付加価値を生み出しているかどうかを把握することができます。

また、この方法を発展させ、ショップのさまざまなカテゴリーの商品について、これらの変数を計算することもできます。これにより、自社プロダクトの効果が高いユースケースと低いユースケースを把握することができます。

効率性の変数(異なるカテゴリーの商品の品揃えと価格、コスト、信頼性、配送の容易さ、返品条件など)に関して、自社のオンラインストアと他社プロダクトを比較するダッシュボードがあれば、自社の効率性が高いところと遅れているところを理解することができます。例えば、プレミアムブランドから高価な服を買うという問題解決においては競合他社より優れているかもしれませんが、スポーツシューズのカテゴリーでは大きく遅れをとっているのではないでしょうか。

多くの場合、効率性の変数で自社プロダクトを代替品と比較することで、ユーザー行動やマーケットシェアの動態を理解することができます。これは、より広範なプロダクト戦略について考え始めるための良い基礎となります。これらの変数に対する理解やプロダクトの関連性能を、プロジェクトの優先順位付けや実行のガイドとして使用する必要があります。

以前の記事で、私たちは同様の方法を用いて、通常のタクシーサービスと比較したUberの付加価値を評価しました。すべての変数を1つの指標にまとめることができなかったので、それぞれの変数について個別にプロダクトを比較しました。

アマゾンのチームはどのように顧客の問題解決の効率を高めて構築していくか

Invent and Wander(発明と放浪)』は、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが株主に宛てたスピーチや手紙を集めたものです。

これらの手紙は、ベゾスが創業当初から、顧客の問題解決の効率を高める方法を見つけることを中心にプロダクト作りを行ってきたことを明確に示しています。次の引用がそれをよく表しています。

「今後10年で何が変わるのか」という質問をよく受けます。これは非常に興味深い質問で、よくある質問です。しかし、「今後10年で変わらないものは何か」という質問はほとんどありません。そして、この2つの質問のうち、実は2番目の質問の方がより重要であると申し上げたいのです。なぜなら、時間的に安定しているものを中心にビジネス戦略を構築することができるからです。[中略]私たちの小売ビジネスでは、お客様が低価格を望んでいることは分かっていますし、それは10年後も同じだとも思っています。お客様は、迅速な配達を希望し、豊富な品揃えを求めるのです。10年後にお客様がやってきて、「ジェフ、アマゾンは大好きだけど、もう少し価格が高ければいいのに」とか「アマゾンは大好きだけど、もう少しゆっくり配達してくれたらいいのに」と言う未来は想像もつかないでしょう。ありえないことです。だから、私たちがこうしたことに力を注ぎ、それを紡ぎ出すことで、今日注いだエネルギーが10年後にもお客さまに還元されることが分かっているのです。長期的に見ても真実であるとわかっているものがあれば、それに多くのエネルギーを注ぐことができるのです。

ジェフ・ベゾス

低価格、迅速な配達、豊富な品揃え。アマゾンのプロジェクトのほとんどは、顧客の問題を解決するために、これらの点を改善することを目的としています。以下はその例です。

  • 2004年に開始されたプライム契約は、契約者のコストと配送時間を削減しました。この値下げにより需要が増え、商品の固定費の割合が減少したため、再び値下げが可能になりました。
  • サードパーティー向けマーケットプレイスの立ち上げにより、利用できる商品の幅が広がり、アマゾン自社商品との競争も激化し、消費者の価格も低下しました。
  • FBA(Fulfilled by Amazon)の開始により、マーケットプレイスからの商品の配送の信頼性とスピードが向上し、再び需要が高まり、価格が低下しました。

下のグラフは、米国の様々なマーケットプレイスにおいて、納期が2日以内で購入可能な商品数を示しています。

アマゾンは競合他社を大きく引き離しており、他のプレーヤーが直接競合するチャンスはもはやありません。

  • 販売者にとっては、アマゾンに商品を置く方が収益性が高い。売上が高いということは、アマゾンがより効率的に問題を解決してくれることを意味します。
  • その結果、アマゾンは最も多くの販売者を抱え、ひいてはほとんどのカテゴリーで最も優れた商品のセレクションを持っているのです。
  • 販売者の数が多いということは、競争が激化し、アマゾンが競合他社に比べて低価格であることを保証することになります。
  • アマゾンが販売チャネルとして重要であるため、販売者はアマゾンの厳しい要件を遵守し、高いレベルのサービスを提供することを余儀なくされます。

このように、アマゾンは直接の競合他社の多くよりも効率的にエンドユーザーの問題を解決しているのです。アマゾンの顧客が、ウォルマートやイーベイを含む代替品に乗り換える理由はないのです。

長年にわたるオンラインショッピング体験の効率化のための一貫した取り組みにより、アマゾンは代替品よりも大きな付加価値を生み出し、米国をはじめとする各国のEコマースマーケットにおける優位性の基盤となっているのです。

変数の重要性は解決する問題や文脈によって異なる

もしアマゾンがオンラインショッピングの問題を解決するあらゆる面で強いのであれば、他のEコマースプラットフォームはどのように対抗できるのでしょうか。

それは簡単なことです。特定のタスクやコンテキストの中では、アマゾンは効率性の面で競合他社に負けることがあるのです。

例えば、高価なデザイナーズ・ブランドの購入には、アマゾンよりもファーフェッチの方が適しています。多くの高価な衣類やアクセサリーのブランドは、安価な代替品を遠ざけるために、アマゾンへの出品を渋っています。一方、ファーフェッチは高級品の販売に力を入れており、このセグメントではより完全で高品質な品揃えを実現することができます。

アリエクスプレスは、他の店舗があまりカバーしていない地域に住む人々が低価格の商品を購入するという問題を解決するのに適しています(オンライン、オフラインともに)。このようなタスクや状況では、配送時間や返品の利便性はあまり重要ではありません(アリエクスプレスの平均配送時間は数週間で、返品には購入した商品よりも多くの費用がかかることがよくあります)。このユースケースで重要な変数は、低価格と、地元の店舗では手に入らない「ユニークな」品揃えです。

フランスのVeepeeのようなフラッシュセールサービスは、売れ残りから在庫を形成するため、ブランド品を最大70%割引で提供することができます。もし、あなたが新しいコレクションの中から特定のモデルのナイキスニーカーを必要としているなら、このサービスは役に立ちません。もし、あなたがナイキのスニーカーを大幅に値引きして買いたいだけなら、Veepeeはアマゾンを凌駕するでしょう。

マイケル・ポーターが言ったように、あなたの目標は業界で一番になることではありません。特定のセグメントのタスクとコンテキストに合わせたユニークなプロダクトを提供することです。タスクとコンテクストを絞り込むことで、付加価値を生み出すセグメントを見つけ、そこに最適化することができます。そのために、特定の「片付けるべきジョブ」のコンテクストで付加価値を評価するのです。

「デート相手を探す」というタスクの付加価値測定

上記では、オンライン決済やショッピングの付加価値を評価するアプローチを考えました。1つ目のケースでは、すべてのパフォーマンス変数を1つの指標に還元することができました。2つ目のケースでは、変数を分離し、それぞれの変数に基づいたソリューションを比較しました。

しかし、変数の選択と比較がもっと難しいタスクがあります。その一例が、デートの相手を見つけるというタスクです。

出会い系サイトやアプリを利用したことがある人なら、多くのプロフィールに目を通し、メッセージを書き、相手候補と関係を築き、会う約束をするなど、この活動には努力と時間が必要なことを知っているはずです。

この場合、「ジョブ」を理解した上で、パフォーマンス指標を定義することができます。例えば、1回のデートに要する時間と労力を一つの選択肢とすることができます。

例えば、2つのデートアプリをダウンロードし、それぞれに1時間かけたとしましょう。

  • 1つ目のアプリでは、7件のマッチングと4件のチャットが成立し、2件のデートの約束を取り付けたとします。
  • 2つ目のアプリでは、2件のマッチングと1件のアクティブなチャット、そして1件のデートの約束をしました。

最初のプロダクトでは、時間と労力の投資に対してより大きなリターンを得ました。つまり、より多くの価値を生み出しました。このアプリケーションに時間と労力を投資し続ける可能性が高くなります。

この指標は、「ジョブ」の有効性をかなりよく特徴づけています。しかし、どのように測ればいいのでしょうか?

最も簡単な方法は、実際のプロダクト使用データに基づいています。例えば、ユーザーがデートやアクティブなチャット(デートの良い代理指標)を得るためにどれくらいの労力(アプリ内の時間、閲覧したプロフィール、送信したメッセージ)がかかるか、などです。

このような指標は簡単に計算できますが、競合プロダクトに対して計算することができないため、自社のパフォーマンスが競合プロダクトと比べてどうなのかがわからないという問題があります。付加価値を生み出しているのか、そうでないのか。

もう一つの方法は、定期的に、自社プロダクトと競合プロダクトに同じ労力を投入してもらう調査を行い、その結果(アクティブチャットや日付)を比較することです。この方法はコストがかかりますが、代替品との関係で付加価値を分析することができます。

ソリューションのパフォーマンス指標を定義することが不可能なタスク

問題解決の効率や付加価値を評価するための指標を定義することが非常に困難なタスクが数多く存在します。

例えば、夜の余暇活動として、本を読むより映画が良いのかどうか、どのように判断すれば良いのでしょうか。ネットフリックスの新シリーズは、プレイステーションの新しいゲームよりも面白いでしょうか?

タスクによっては、効率の客観的な尺度を定義することが不可能なものもあります。このような場合は、プロダクトメトリクスに目を向け、ユーザーのフィードバックやアクティビティに基づいて効果を測定する必要があります(プロダクトメトリクス)。

前回の記事では、これは最善の方法ではないことを説明しました。理想的には、パフォーマンス・メトリクスは、問題を解決するための特定の方法(つまり、特定のプロダクト)に縛られるべきではありません。しかし、状況によっては、この方法に頼らざるを得ないこともあります。

同じようなジャンルのモバイルゲームでは、どのプロダクトがユーザーの問題を最もよく解決しているかを比較するために、リテンションとエンゲージメントが良い指標になるでしょう。映画の場合、ユーザーレビューに基づく平均評価は、どのプロダクトがより楽しい時間を過ごすのに役立つかを理解するのに役立ちます。

付加価値は重要な成長ドライバー

人々が新しいプロダクトを選ぶのは、そのプロダクトが自分の生活をより良くしてくれるからです。だからこそ、付加価値を高めることがプロダクト・ワークの核となるのです。

このような仕事を意識的に行うには、プロダクトの付加価値を代替品と比較して測定できるようにする必要があります。

ステップ1.課題を解決する有効性を特徴づける変数を決定する。重要:選択する変数は、問題を解決する方法に依存してはなりません。それらは問題そのものによって定義され、したがって、どのような解決策の有効性を測定するのにも適しているはずです。

ステップ2.これらの変数に基づいて、問題を解決するために利用可能なプロダクトを比較する。

  • すべての特性が共通の単位で測定される場合、プロダクトの有効性を特徴付けるために複合指標を使用することができます。
  • もし、特性が異なる単位で測定されているのであれば、それぞれの要素がユーザーにとってどのような重みと重要性を持っているのかを理解するようにします。そして、それに基づいて、どのプロダクトがより良い問題解決につながるかを理解するのです。
  • 場合によっては、あなた自身の「ジョブ」に対する理解から、パフォーマンス指標を定義する必要があります。

タスクやコンテキストによっては、プロダクトに結びつかないパフォーマンス指標を決めることはできないでよう(例えば、仕事が終わった夜に見る映画を選ぶなど)。そのような場合は、プロダクトメトリクスを使用することができます。

付加価値の測定は複雑ですが、プロダクト開発に有意義に取り組むためには非常に重要です。


プロダクトマネジャーのためのプロダクトポジショニング

プロダクトがどのように位置づけられるかを理解することが重要である理由

プロダクトマネージャーの重要な責務は、プロダクトがマーケットにおいてどのように位置づけられるかを定義することです。価格、ユーザーエクスペリエンス、機能、性能、ブランディング、カスタマーサービス、パートナーシップは、ターゲットとなる顧客が、既存のマーケットにおける代替品と比較して、あるプロダクトの価値をどのように認識するかに影響を及ぼします。

ポルシェ、アウディ、フォルクスワーゲンは、VWグループ内のポートフォリオとして、ユニークなプロダクトを持つグローバルブランドとして、同じ自動車マーケットに共存しています。これは、独自のプロダクトポジショニングの結果です。ポルシェを求める顧客がフォルクスワーゲンを検討することはないでしょうし、その逆もまた然りです。しかし、アウディのターゲットとなる顧客は、ポルシェとのつながりによって、より高い価値を感じるかもしれません。

▼ 本記事の内容
  1. ランド・アンド・エクスパンド戦略の解説
  2. プロダクトポジショニング – ケーススタディ – アーキモト
  3. プロダクトマネージャーにとって重要なこと
    1. 1. 複数のプロダクトにより、競合に対して、主要な価格帯でのプロダクトポジショニングを強化することができる
    2. 2. 複数プロダクト間のポジショニングを慎重に行うことで、特定のプロダクトに嗜好が偏るようなプロダクト戦略ができる
    3. 3. ポジショニングは、段階的に展開することで、戦略を促進させることもできる

この記事は、「Product Positioning for Product Managers」を著者の了解を得て翻訳したものです。
著者: Stephen Pittman
翻訳者: 渡辺圭

ランド・アンド・エクスパンド戦略の解説

新しいマーケットや破壊的なプロダクトは、顧客が認識し、求めるものを再定義する余地があります。例えば、キャッシュアプリ(Cash App)のユーザーは、友人や家族から払い戻しを受けるために無料アプリをダウンロードするかもしれませんが、その後、そのユーザー体験を好むと判断し、直接口座振込を追加します。次に、デビットカードを追加し、最終的にはETFやビットコインを購入するようになります。

地方銀行と競合するこれらのサービスはすべて、ピアツーピア決済のためにダウンロードした同じアプリで可能なのです。これは、プロダクトを試すための障壁が低い、いわゆる「ランド・アンド・エクスパンド」戦略です。時間の経過とともに、顧客の特定のニーズに対応するために収益を生むサービスが追加されます。そして、Cash Appのエコシステムは、親会社ブロック(Block)傘下のスクエア(Square)のエコシステムに効果的な顧客獲得戦略を提供します。

プロダクトポジショニング – ケーススタディ – アーキモト

アーキモト(Arcimoto) (NASDAQ: FUV) は、オレゴン州ユージーンに拠点を置く電気自動車会社です。同社の使命は、持続可能な交通システムへの移行を促進することです。しかし、このミッションにはひねりが加えられています。アーキモトは、このシフトは、大型で価格が高く汚染を引き起こす自動車から、適切なサイズで超効率的かつ手頃な価格の電気自動車(EV)へと移行したときに実現されると考えています。

マーク・フローンマイヤーは、アーキモトの創設者兼CEOです。彼は、ソフトウェア会社Garage Gamesを売却した後、より小型の車両デザインでEVマーケットを追求することを決意し、同社を設立しました。プロダクト戦略は、材料とバッテリーの必要量を減らすために、車両の重量を大幅に削減することでした。主な成果は、エネルギー効率の向上と材料費の削減です。これにより、最終的な小売価格と車両運用にかかる総費用を下げることができるのです。

彼らのプロダクトのひとつであるファン・ユーティリティ・ヴィークル(Fun Utility Vehicle: FUV)は、安定性を高めるためのリバーストライク構成の3輪に、前輪駆動、デュアルで独立した電気モーターを加えたタンデム2シーターです。低重心と1,300ポンドの車体重量が安全性をさらに高めています。また、スチールフレームは乗用車のルーフクラッシュ耐性をクリアしています。また、従来の自動車に比べ、重量が軽いため、エネルギー効率は173マイル/ガロン相当(MPGe)となっています。

FUVの目標小売価格は、2〜3年後のスケールアップ生産で12,000ドル前後からとなります。しかし、少量生産での現在の小売価格は17,900ドルからとなっています。より標準的な4輪EVの平均小売価格は約46,000ドルで、テスラ・モデルYのような人気モデルは62,990ドルからとなっています。FUVは、短時間の通勤や街中での用事のために、セカンドカーとしてより手頃な価格のEVの選択肢として位置づけられるでしょう。

アーキモトは、2021年1月にオレゴン州ユージーンのティルティングモーターワークスを買収し、特許取得済みのティルティングトライク技術をマイクロモビリティに焦点を当てた新プロダクトに使用することを発表しました。今年初め、マーク・フローンメイヤーは、操縦性を向上させるために傾斜技術を搭載した第3世代のプロトタイプeTrikeを公開しました。

アーキモトはこのeTrikeをミーンリーンマシン(Mean Lean Machine: MLM)と呼び、今年(2022年)の第4四半期を目標にプロダクトを発売します。MLMの販売開始価格はまだ発表されていませんが、eBikeを参考にすると、基本構成に含まれる内容によって、4,000〜7,000米ドルの範囲になると推測されます。

MLMの構成と価格は、FUVをより多く販売するために慎重に設定されるのだと思います。FUVにはもっとたくさんの機能があるけれども、MLMに比べると価格はそれなりに上がる、というのが価値観でしょう。MLMがFUVの販売台数とカニバリゼーションになるとは思えませんが、都市部の個人はよりコンパクトなデザインを好むかもしれません。マーケットが判断することです。また、MLMは生産台数が増えれば増えるほど、FUVよりも早く粗利率を改善できるかもしれません。

近年、eBikeの人気は高まっており、その大半は1,000~4,000米ドルの価格で販売されています。しかし、バッテリーの大きさ、航続距離、2輪での安定性などの面で制約があります。また、従来の自転車よりもはるかに重いのですが、坂道を登るのを助けてくれます。アーキモトは、eBikeを検討している消費者に、より安定性と航続距離のあるeTrikeをアップセルすることができると予測しているのでしょう。アーキモトMLMは、風雨からライダーを保護するオプションやタンデム構成も含む予定です。

価格だけを見れば、アーキモトはMLMやFUVなどのコンシューマー向けから、デリベレーター(Deliverator)やラピッドレスポンダー(Rapid Responder)などの企業向けまで、3輪をベースにしたオプションを揃え、EVを倍増させています。また、旅行先でFUVをレンタルする企業向けには、フリート販売も可能です。DoorDash、UberEats、Grubhub、Postmatesなどのブランド向けのデリベレーターフリートは、主要マーケットにおけるギグ・エコノミー向けのレンタルを可能にします。

アーキモトのプロダクトのポジショニング


上図は、4 輪EVの平均価格が 46,000 ドルであるのに対し、アーキモトMLM (eTrike)、FUV、デリベレーター、ラピッドレスポンダーの3輪構成が、推定 4,000 ドルから 35,000 ドルという価格で、複数の用途に対応していることを示しています。

アーキモトは、GMC e-Hummer 1 台の材料とバッテリーで、Tesla EV 2 台、アーキモトFUV 8 台、アーキモトMLM 100 台を製造できると見積もっています。アーキモトは持続可能なエネルギーへの移行に向け、自律走行型 EV の Robotaxis が1 マイルあたり 1 ドル以下の価格で大規模なライドシェアに容易に利用できるようになるまで、4 輪 EV が高い小売価格で達成できることを加速させます。

リチウムイオン電池と半導体チップは、EVの需要が指数関数的に増加する一方で、近中期的には供給制約が続くと思われます。テスラは昨年からEVの価格を複数回引き上げ、需給のバランスを取っています。ガソリン価格が上昇を続ければ、そのEV需要はさらに加速する可能性が高いです。

供給制約が続き、価格が上昇すれば、アーキモトの省資源・低価格のオプションの需要が高まる可能性があります。つまり、持続可能なエネルギーへの移行を加速させるためには、3輪のプロダクトポジショニングにおいて、リバーストライクEVがより重要になる可能性があるのです。MLMは、高価格のFUVには乗りたくないが、自転車では無理な合理的な通勤のためにEVを導入したいという見込み客を転換させる重要な役割を果たす可能性があります。

また、デリベレーターは、都市部でのラストワンマイル配送のニーズに応えるため、ブランドEVフリートに対して強力な価値を提供します。食品、食料品、薬、花、パッケージ商品、電子機器などは、従来の4輪車の選択肢を覆すこのEVの構成で簡単に配達することができます。そして、より高いデリベレーターの価格設定は、ビジネスユースケースによって支えられています。

MLMの最小限のフォームファクターは、FUVのより多くの機能がより高価であるべきということをサポートします。また、デリベレーターの価格が高いことで、量産によってFUVの初期価格がMLMの価格帯に近づくまで、現在の17,900ドルの初期価格を維持することができるのです。MLMとデリベレーターは、FUVの価格設定をサポートするブックエンドとして機能します。

アーキモトのポジショニング

アメリカ北東部のような多くの地域では、EVを囲う付属品があっても、冬季の天候が問題になります。これらのEVは、小さな子供のいる家庭や、通勤時間が長い人にとって、主要な車の代わりとなるものではありません。しかし、通勤時間が短い家庭や、用事を済ませるためのセカンドカーとしてなら、アーキモトEVは有力な選択肢となります。現在、アーキモトEVは、アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ネバダ、オレゴン、ワシントンのみで販売されていますが、アーキモトが新施設で生産規模を拡大するにつれて、他の州への販売も拡大していく予定です。

アーキモトの 1~2 人乗り 3 輪リバーストライク EV は、従来の 4 輪クーペ、セダン、SUV、ピックアップトラック、バン、スポーツカーのデザインから大幅に軸足を移したものです。しかし、推定4,000ドルから35,000ドルの価格帯で展開するアーキモトのEVプロダクトラインは、適切な価格であれば、FUVデザインだけよりもはるかに早く収益の成長を促進することができます。

また、デリベレーターとラピッドレスポンダーは、EV生産の大部分を効率化するために、FUVのシャーシの上に最終的な構成を載せたものに過ぎないのです。今年は、2025年までに第一工場で週1,000台のFUV(デリベレーター、ラピッドレスポンダー、FUVシャーシをベースにした他のデザインを含む)を生産する目標に向けて、アーキモトにとって重要な年になるでしょう。

プロダクトマネージャーにとって重要なこと

それでは、アーキモトのケーススタディやプロダクトポジショニングから得られる重要なポイントは何でしょうか。

1. 複数のプロダクトにより、競合に対して、主要な価格帯でのプロダクトポジショニングを強化することができる
プロダクトポジショニングにおける複数プロダクト

上図は、X軸が価格の上昇、Y軸が性能の上昇で、複数のプロダクトが図示されています。つまり、左下がローエンドプロダクト、右上がハイエンドプロダクトということになる。

「X」、「Y」、「Z」は、より高性能で高価格なプロダクトの採用を目指すプロダクトポートフォリオ戦略です。「Z」は「Y」と大きな価格差をつける位置づけにあります。 そのため、同クラスで高性能な「Y」は「Z 」に対してお得感があります。そして、「X」は、「Y」の優位性をさらに確立しつつ、提供される性能に対してより良い価格設定でローエンドマーケットにも対応する、という位置づけになります。

この戦略は、よりプレミアムなプロダクトでより高い粗利を追求するのに適しているでしょう。ブランドは重要であり、高性能プロダクト間のシナジーを活用して、中性能プロダクトをサポートする必要があります。これは、共通のプラットフォームやブランドの核となる技術を使うことで実現できます。

2. 複数プロダクト間のポジショニングを慎重に行うことで、特定のプロダクトに嗜好が偏るようなプロダクト戦略ができる

上図の「XX」は、ローエンドでは「x」に対して性能面で、価格面では「yy」に対して相対的に競争力のある位置にあります。そして、「yy」は「Y」に対して、価格面でより有利な価格設定になっています。つまり、「XX」と「yy」の両プロダクトは、そのポジショニングと連動して、より低価格でマーケットが大きそうな「XX」を中心に売上を伸ばしているのです。プロダクトZのポジショニングは、「XX」と「yy」の売上に焦点を当てたこの戦略にはあまり影響を及ぼしません。

戦略を促進するポジショニング
3. ポジショニングは、段階的に展開することで、戦略を促進させることもできる

ウェアラブルやスマートデバイスなどのスマートハードウェア技術に関連したプロダクト販売やサービスでは、主要なビジネスの前提条件を検証するために、初期展開の範囲や条件について交渉する必要があります。プロダクト会社によっては、無償トライアルを実施し、顧客企業の負担を軽減しています。

私は、クライアントには発注書を持ってゲームに参加してほしいと思っています。しかし、新しいもののリスクを軽減するために、私は「アルファ展開」を提案することも好きです。これは、たとえ多くの企業で使われているプロダクトであっても、特定の顧客に対して初めて導入するものだからです。90日間のトライアルで終了するのではなく、最低90日間の継続的な導入の最前線となります。その後、「ベータ展開」にアップグレードされるか、30日前に通知してキャンセルされるまで、月ごとに自動更新されます。

90日間に限定され、その後は月単位となり、規模は50~100台程度となるため、サブスクリプションサービスの価格は上図の「A」のように高く、デバイスは定価で販売されます。しかし、規模を小さくすることで、トータルコストは抑えられます。価格については、範囲(例:12ヶ月)や規模(例:1,000台)を大きくすることで安くなります。

しかし、これらの「アルファ展開」を成功させる鍵は、以下の通りです。

  1. 8週間のプログラムで顧客の成功を検証するための目標を定義する。
  2. 8週間を2週間のスプリントに分割して展開する。各スプリントには、8週間の目標に対する進捗を追跡するための重要な結果を設定する。
  3. ラーニングプランを使用して、何がうまくいっていないか、何がうまくいっているか、プロダクト機能、トレーニング、コミュニケーションなどの改善方法に関するフィードバックなど、主要なインサイトを収集する。
  4. スプリント後のアップデートやデータレビューを行い、主要なステークホルダーが進捗や次のステップに関与できるようにする。
  5. 8週間プログラムの結果をもとに、「ベータ展開」スケーリングプランの推奨事項を、途中経過と完全な形で提示する。サブスクリプションサービスは、上の図の「B」のように、より多くの範囲と規模を持つ低価格のサービスです。10倍のステップアップは、より詳細な目的をテストするためです。


プロダクト、セールス、カスタマーサクセス、エンジニアリングの各チームが協力し合い、主要アカウント内での展開が拡大するにつれ、プロダクト体験とサービスのパフォーマンスが顧客固有のニーズと比較して向上していきます。このように、キーステップごとに導入規模が10倍になると、「A」→「B」→「C」→「D」のように、パフォーマンスが向上する一方でサブスクリプション価格が低下することがあります。 このように、共通の目標に向かって協力し合うことで、ウィンウィンの結果を得ることができるのです。そして、100台のデバイスから始まる「アルファ展開」は、「D」の「デルタ展開」に到達すると10万台のデバイスになり、大企業のアカウントでも同じプロセスでスケーリングを続けることができるようになるのです。


ステファンは、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置き、睡眠時無呼吸症候群とその関連疾患の新規治療法の発見に取り組む臨床段階の企業、アプニメッド社のウェアラブル担当ゼネラルマネージャーを務めています。それ以前は、自身の会社であるSD Pittman & CoやLuminopia、Philips、Respironicsを通じて、ウェアラブル、デジタル治療薬、医療機器に関する顧客のプロダクトをリードしてきました。チュレーン大学で生物医学工学の理学士号と理学修士号を取得しています。

ステファン・ピットマン(Stephen Pittman)

sdpittman.substack.com


フォローして最新情報をチェック!

プロダクトの機能の肥大化をどのように防ぐか?

プロダクトを作るとき、どの機能を作り、どの機能を手放すかの線引きが難しいことがあります。この線引きがうまくいかないと、「フィーチャー・ブロート(Feature Bloat)」という、プロダクトが遭遇する最も恐ろしい用語に行き着くことになります。

フィーチャークリープ、フィーチャーファイト、フィーチャーオーバーロードとも呼ばれるように、機能が多すぎることは、すべてのチームが気をつけなければならないことです。顧客離れ、複雑すぎるプロダクト、そして予期せぬ技術的負債につながる可能性があります。

このような罠を回避し、目的を持って機能を構築する方法について、以下にいくつかのヒントをまとめました。

ポイント
  • 問題を解決しようとするときは、常に「何を」「なぜ」と問うこと。
  • チームが機会を特定するのに役立つプロダクト問題テンプレートを使用する。
  • フィードバックを重視し、リクエストを実行に移さないことで、偏りを避ける。
  • 目的を念頭に置き、ロードマップの優先順位を決める。
  • 光り物よりもユーザビリティを優先する。
▼本記事の内容
  1. 機能の「何を」「なぜ」作るか
  2. プロダクト問題テンプレート
  3. 検証をやめ、無効化を始める
  4. フィードバック vs リクエスト
  5. すでに知っていることを検証しない
  6. ロードマップの優先順位をつける
  7. ユーザビリティを優先する

この記事は「How To Avoid Feature Bloat」を翻訳したものです。
著者: Andrea Saez
翻訳者: 渡辺圭祐

機能の「何を」「なぜ」作るか

次に何に注力すべきかを考えるとき、プロダクトマネージャーは常に2つの重要な質問をする必要があります。

  • 私たちが解決しようとしているのは、どんな問題なのか?
  • なぜ、それを解決しようとするのか?

これにより、チームはアウトプットや解決策ではなく、プロダクト戦略に集中することができます。言い換えれば、最終結果ではなく、目的にフォーカスを置くということです。

これにより、チームは適切な発見を行い、仮説を立て、実験を行い、アイデアを進める価値が実際にあるかどうかを理解することができるようになるのです。

プロダクト問題テンプレート

手始めとして、プロダクト問題のテンプレートを使用することから始めるとよいでしょう。このテンプレートは、チームの誰もが新しいアイデアを提案するときに使うことができます。

  • どのような問題を解決しようとしているのか?
  • 仮説
  • ユーザーにとってどんな価値があるのか?
  • 私たちの会社にどんな価値をもたらすか?

では、実際に誰かが送ってきそうなアイデアを例にとって考えてみましょう。

顧客のための社内コミュニティを作ろう。

なぜ、これが問題提起ではなく、解決策なのかわかりますか?

上の提案は、「××をしよう」という一点だけに焦点を当てています。理由を説明しておらず、単に何かをするための生の発言です。

代わりに、チームにテンプレートに記入してもらうことができます。上の例をとると、次のようなものになるでしょう。

  • どのような問題を解決しようとしているのか?
    私たちは、顧客とより密接に関わり合いたいと考えています。
  • 仮説
    もし、ユーザーとのより良い関わり方を見つけることができれば、彼らの知識を活用し、より多くの質問をし、より多くの実験を行い、より良い関係を築くことができるようになるはずです。これがあれば、解約を減らし、初期ユーザーを適用させることができるのです!
  • ユーザーにとってどんな価値があるのか?
    当社とのコミュニケーションと透明性が高まります。
  • 私たちの会社にどんな価値をもたらすか?
    より多くの顧客と話し、発見し、彼らの問題を理解することができる。

上記のようなシンプルなテンプレートがあれば、チーム全体が成果や解決すべき問題について考えるようになります。「Xをやろう」という会話から、「この問題を解決するにはどうしたらいいか」という会話に変わり、組織全体でプロダクトシンキングを確立することができるのです。

この時点で初めて、オーディエンス(コミュニティもその一つかもしれません)を巻き込む方法に焦点を当て、最終的な解決策のためにあらゆる可能性を模索することができるのです。

検証をやめ、無効化を始める

機能追加を評価する際、プロダクトマネージャーはしばしば顧客の声を参考にします。

しかし、多くのチームが2つの重大な間違いを犯しているのを私はまだ見ています。

  1. 「要件」と「新機能のリクエスト」を集めようとする。
  2. すでに知っていることを検証しようとする

これこそが、多くのプロダクトチームが不要な機能のループに陥っている原因です。

ここでは、その対策について説明します。

フィードバック vs リクエスト

プロダクトマネジメントとは、フィードバックを受けることであり、リクエストを受けることではありません(もちろん、代理店で働いている場合は別ですが)。

その会話を変え、「機能リクエスト」という言葉を捨てましょう。

代わりに、これらの機能リクエストを「顧客フィードバック」と呼ぶようにしましょう。

これは、リクエストに基づいて新しい機能を構築するのではなく、お客様のフィードバックに基づいて機能追加を慎重に検討することを意味します。これにより、質問をして問題を理解し、顧客とプロダクトに利益をもたらす解決策を実行することも可能になります。

覚えておいてほしいのは、顧客は自分の現在の経験に基づいて機能追加を依頼する傾向があるということです。彼らは問題があることを知っていますが、最善の解決策は何かを定義するのはあなた次第なのです。

すでに知っていることを検証しない

フィードバックを分析し、すでに知っていることに基づいて質問をすると、自分自身を牽制することになり、まったく何も学べません。

そうではなく、今までとは違うアプローチで、自分が知っていることを無効にするような質問を始めてみてください。そうすることで、プロダクト機能を追加することを避けることができるかもしれません。悪い機能は、偏見や狭い視野から生まれることが多いのです。

適切な顧客調査によってこのサイクルを断ち切り、現在の仮説がいかに間違っているかを理解することができます。

ロードマップの優先順位をつける

明確なロードマップを持って、ファネルの一番上の意思決定プロセスから始めることで、作る必要があると思われるものの半分に優先順位をつけることができます。

ロードマップの作成には、遅延によるコストの分析、マーケットリサーチ、競合他社の分析など、多くのことが必要ですが、シンプルで堅実なスタート地点は、明確な目標を設定することです。

この目標を設定することで、組織全体が集中力を維持し、実際にプロセスの早い段階で機能の肥大化を避けることができます。

つまり、もしあなたが作ろうと思っているものが、現在その目的に合っていなければ、すぐに選択肢として捨てることができるのです。

ユーザビリティを優先する

新しいプロダクトをデザインする場合、機能を増やしたからといって、ユーザーが幸せになるとは限りません。

顧客にとっての使いやすさを優先することで、ソリューションの複雑さをある程度取り除いてください。

言い換えれば、あなたは、世界中のすべてのベルとホイッスルと魔法のユニコーンをデザインすることができますが、それはあなたがそれを構築する必要があることを意味するものではありません。

実際に役立つものを最も現実的で本質的な形で作り、顧客に提示し、次のイテレーションで再評価を行います。

これを「構築、測定、学習」のループと呼びます。

構築、測定、学習のループ

  • あなたのユニコーンの最小限の愛すべきバージョンを構築する。
  • 作ったものの成功を測定する。
  • その経験から学習する。

そして、必要であれば、その上にさらに構築することができます。多くの場合、人々が欲しがっていると考えていた光り輝くものの半分が、そもそも必要でなかったことがわかります。

おめでとうございます!あなたのチームは機能の肥大化を避けることができました。

– – – – –

原文はUserpilot Blogに掲載されています。


フォローして最新記事をチェック!

スタートアップがキャズムを超えるための5つのプロダクトマーケティングのヒント

グロース段階のスタートアップ企業でプロダクトマーケティングに携わっている場合、その仕事はほぼ1つに集約されます。それは、会社がキャズムを超えるのを助けることです。

キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』より 画像引用元: Words by Sorensen

この記事は、「5 product marketing tips to help your startup cross the chasm」を著者の了解を得た上で翻訳したものです。

著者: Hugh McFall
翻訳者: 渡辺圭祐

▼本記事の内容

1. 機能発表の優先順位を上げる
2.週次スプリントサイクルで集中力と対応力を維持する
3. プロダクトを棚に並べる
4. ローンチは道半ば。プロダクトをブックツアーに参加させる
5. 顧客が話すように仕向ける

キャズムとは、アーリーアダプターとメインストリームマーケットの間にある危険なギャップのことで、ジェフリー・ムーアがその著書『Crossing the Chasm』で初めて紹介しました。この本は1991年に出版され、現在でもプロダクトマーケティング担当者にとって必読の書となっています。

例えば、あなたがムーアのアドバイスに従って行動し、完全なソリューションを販売し、狭い範囲の先陣マーケットを見つけ、主流に食い込むための良い計画を持っているとしましょう。

次に何をすればいいのでしょうか。集中力と規律を保ち、迅速に行動し、すべてのプロダクトと機能のリリースを最大限に活用するために、どのような実用的なステップがあるでしょうか?

グロース段階にあるスタートアップのB2Bマーケティングチームの多くは、自由に使えるリソースが少ないという現実があります。広告予算もチームも小さく、絶対に必要なときだけ拡大します。

一方、あなたの会社は動きが速く、プロダクトは日々変化しています。例えば私が働いているところでは、2018年はほぼ毎週新機能をリリースし、半ダースの統合を行い、ジョイントベンチャーを立ち上げました。私はプロダクトマーケティングのリードとしてこれらのプロジェクトすべてに携わることができ、その過程で重要な教訓を学びました。正しい戦略、プロセス、活動を導入することができれば、マーケティングチームとして卓越したインパクトを与え、優れたプロダクトをローンチし、会社がキャズムを越えるために自分の役割を果たすことができるようになります。

あなたがプロダクトマーケティング担当者なら、チームを大きくしたり、広告費を増やしたりすることなく、すぐに実践できる5つのアイデアをご紹介します。

  1. 機能発表の優先順位付けを改善する
  2. 週次スプリントサイクルで集中力と対応力を維持する
  3. プロダクトを棚に並べることに責任を持つ
  4. プロダクトを「ブックツアー」に連れて行く
  5. 顧客が話すように仕向ける

1. 機能発表の優先順位を上げる

私の会社では、毎週のように新機能をリリースしています。新機能や改良点のリストが常に更新され、そのすべてが発表のチャンスに思えたからです。私たちが作り上げたものに興奮し、そのすべてみんなに知らせたいと思ったのです。細かい改良点はブログで紹介し、あまり関係のない機能はプレスリリースやウェビナーで紹介するようにしましたが、そのうち何かがおかしいと思うようになりました。

機能発表に優先順位をつけないと、主に2つの問題が発生します。第一に、ターゲットオーディエンスの注目を集める機会は限られています。大多数のオーディエンスにとってそれほど重要でない機能で、彼らの信頼と注目を失うことは避けなければなりません。例えば、新しいビジネスを促進する可能性のある、より大きな、より重要なリリースを促進するために時間を使うことができるのであれば、マイナーで未検証の機能を促進するために時間を浪費することはできないのです。

インターコムの賢い人たちに触発され、私たちはプロダクトマーケティング発表のフレームワークを導入することで、この問題を解決する方法を見つけました。私たちが作るすべての機能やプロダクトについて、プロダクトマーケティングチームは、プロダクト、セールス、サポートの意見を聞きながら、シンプルな2×2のマトリックスを使用して、P1からP4までの優先順位を割り当てています。

機能に優先順位を付けると、優先順位に応じて実施すべきマーケティング活動のリストができあがります。どのチャンネルを使うか、どのように優先順位をつけるかによって、表の見方は変わってきますが、以下はその例で、ここにあるテンプレートはコピーしてご自分の仕事に使ってください。

もちろん、P1のリリースは最も大きなものです。例えば、プレスリリース、プレスサイクル、専用のランディングページ、ローンチビデオが用意される一方、P4のリリースはチェンジログが作成され、顧客向けメールのアップデートに箇条書きされるだけかもしれません。それは、小さな(しかし重要な)変更を見逃すことなく、重要なものをよりよくマーケティングするのに役立つのです。


2.週次スプリントサイクルで集中力と対応力を維持する

スタートアップ企業で働くと、優先順位が常に変わるという事実があります。小規模なマーケティングチームである私たちは、長期的な戦略や目標と短期的な優先事項のバランスをとる最善の方法を見出そうと、しばらく悩みました。

自分たちのチームの取り組みだけでなく、他のチームからの優先順位の高い依頼が、思いもよらないタイミングでやってくるのです。チームプレーヤーでありたいと思いつつも、自分たちにも優先順位があり、やらなければならないことがあるのです。

しかし、その答えはずっと目の前にあったのです。彼らは、機能要求を管理し、競合する優先順位のバランスをとり、常に新しい機能を立ち上げるために、素晴らしいアジャイル開発プロセスを構築しました。私たちは、アジャイルプロジェクトマネジメントが、私たち自身のやり方で、マーケティングにも有効であることに気づきました。アジャイルプロジェクトマネジメントの導入方法に関する素晴らしいリソースをいくつか見つけ、私たちはそれを実行に移しました。

マーケティングに関連するすべてのリクエストをバックログに入れるところから始めます。このような感じです。

このテンプレートを使って、あなただけのバックログを始めましょう

各タスクは要約され、分類され(例:セールス資料、成功事例、ウェビナー、オペレーションなど)、タイムスタンプが押され、誰が依頼したか、誰が責任を負うかが記載されています。誰かが(Slack、メール、対面などで)リクエストすると、いつでもバックログに入るのです。ここにマーケティングバックログのテンプレートがあるので、興味があれば使ってみてください。

そして、毎週金曜日にスプリントプランニングのミーティングを行い、バックログを確認し、優先順位をつけてタスクを割り当て、これから1週間のToDoとしてリストアップしていきます。月曜の朝には最終チェックを行い、「他のことに気を取られることなく、そのスプリントのタスクを完了させる」という明確なミッションを持って1週間をスタートさせます。

他のチームでは、チームの規模や組織構造などによって、この方法は少し異なるかもしれません。しかし、私たちは、アジャイルワークフローを開始し、何がうまくいき、何がうまくいかないかについてチームとオープンに話し合い、常にそれを改善することが最も重要だと考えています。そうすることで、仕事の優先順位付けと仕上げがうまくいき、他のチームへの対応と透明性が高まり、優れたプロジェクトマネジメントの土台を築くことができるのです。


3. プロダクトを棚に並べる

プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングの連携について、俗説があります。プロダクトマネジメントはプロダクトを棚に並べ、プロダクトマーケティングはプロダクトを棚から出すことを担当します。確かに、プロダクトマネージャーの主な仕事はプロダクトを提供することですが、そのために彼らが構築するプロセスは間違いなくもっと重要です。そして、それが良いプロセスであれば、最初からプロダクトマーケティングと絡み合っているはずです。

プロダクトマーケティング担当者は、何を作るか、誰のためか、誰のためでないか、どのように機能するか、どのように呼ぶか、などを決定する上で大きな役割を担っているのです。ここでは、そのための方法をいくつかご紹介します。

  • 競合他社の調査:競合他社が何を作り、どのようなポジショニングをとっているのか、そして次にどこへ向かうのか、プロダクトチームが知るべき重要な事柄です。
  • ポジショニング:新プロダクトや新機能の開発に着手したら、ローンチのかなり前から、そのポジショニングの確立に向けた作業を開始すべきです。そうすることで、あなたが作ろうとしているものが何なのか、どんな問題を解決するのか、競合と比較してどうなのか、会社全体が理解し、興奮するようになります。
  • メッセージング:プロダクトマネージャーと協力して、社内のポジショニング・ステートメントを顧客向けのメッセージに落とし込みましょう。第一段階を終えたら、セールスチームやカスタマーサクセスチームからフィードバックをもらいましょう。彼らは日々顧客と最前線で接しており、あなたのメッセージングが実際に響くかどうか、貴重な意見をくれるはずです。このメッセージングが完成すれば、ローンチコンテンツやセールストークのすべてのベースとなります。
  • ベータテストに参加する:ベータテストに参加し、顧客がどのようにプロダクトを使用するかを観察してください。彼らが抱えている問題をどのような言葉で表現しているのか、そしてその問題を解決するためにあなたのプロダクトがどのように役立っているのかを聞くことで、あなたのポジショニングとメッセージをより適切なものにすることができます。また、ベータ版の顧客は、通常、ローンチ日に証言を寄せてくれる人たちなので、彼らとの関係を構築する良い機会にもなります。

プロダクトを棚に並べ、セールスチームにそのプロダクトを棚から出すためのツールとリソースを与えることで、プロダクトマーケティング担当者は、プロダクトマネジメントとセールスの間の要としての地位を固めることができます。そして、それこそが、あなたが目指すべき姿なのです。


4. ローンチ日は道半ば。プロダクトをブックツアーに参加させる

ローンチ日は、プロダクトマーケティングとプロダクト教育の境界線である。しかし、小規模なスタートアップ企業、特にデマンドジェネレーションマネージャーがいない企業では、プロダクトマーケターが両方の責任を負ってしまいます。

リサーチ、ポジショニング、ネーミング、コンテンツの作成、チームのトレーニングなど、ローンチ日には膨大な量の仕事がありますが、あなたの仕事はまだ半分しか終わっていません。ローンチ日に第一印象を与えたら、次は新プロダクトをロードショーして、新しいオーディエンスにその存在を知ってもらい、より多くの人に使ってもらう番です。

私は、自分の仕事をブックツアーのように考えることが有効だと考えています。ローンチ後の数日から数カ月間は、イベントでの講演、メディアのインタビューやQ&A、トレーニングウェビナーの開催、ゲストブログ記事の執筆などを行う必要があります。ローンチ日に膨大な労力を費やしたとしても、ローンチ後に何をするかによって、プロダクトの成功が左右されることはよくあることです。

例えば、P1やP2のような大規模なローンチの準備をする場合、ローンチ当日に行うすべてのことを計画するだけではいけません。より大きなインパクトを与え、実際に採用を促進するために、ローンチ後30~60日間の主要な活動を計画しましょう。


5. 顧客が話すように仕向ける

新プロダクトや新機能をリリースし、その採用を促進しようとするとき、成功は新しいフェイスブックキャンペーンや別のA/Bテストでは得られないでしょう。それは、既存の顧客からの良い口コミによってもたらされます。

口コミは重要なチャネルですが、測定やグロースが最も困難なチャネルでもあります。このため、特にプロダクトマーケティング担当者は、口コミは自分ではコントロールできないと考えるかもしれません。あなたは、「これは素晴らしいプロダクトで、私たちはそれをマーケットに送り出すことに成功しました。今、需要創造とコミュニケーションは、人々がこのプロダクトについて話すようにする必要があるのです。」と言うかもしれません。

しかし、口コミ、あなたが積極的に奨励し、形成することができるものです。実際、新しいリリースを長期的に成功させたいのであれば、そうしなければなりません。でも、どうすればいいのでしょう?

優れたポジショニングとメッセージングがあれば、新しいリリースのたびに、シンプルで説得力のあるストーリーを顧客に提供することができます。しかし、実際にそのストーリーを語り、あなたが作ったものを宣伝するよう、彼らを励まさなければなりません。これは、ローンチ日以降、あなたのプロダクトを喜んで使い、人々に伝えている優良顧客を支持者にすることから始まります。

ここでは、それを実現するための3つの方法を紹介します。

  • ローンチ日に参加させる:あらゆるチャネルで、特にローンチ日とローンチ後のプロモーションで、顧客にスポットライトを当てるあらゆる機会を探しましょう。ベータ版の機能を使用してもらい、ローンチ記念の記事に掲載できるような体験談を提供してもらいましょう。ウェビナーでデモをしてもらいましょう。新プロダクトに対する信頼感を高めるには、初日から顧客に応援してもらうのが一番です。
  • ケーススタディを公開する:大規模なリリースの場合、ベータ版で新プロダクトを使用している顧客が何人かいて、実際にそのプロダクトを使って仕事をしていることが多いでしょう。その顧客が新プロダクトで成功を収めたのであれば、その成功を詳細なケーススタディにまとめましょう。そうすることで、潜在顧客は、あなたの新プロダクトをどのように使い、どのような価値を得ることができるのか、明確な青写真を得ることができます。
  • 業界イベントでの講演をサポートする:B2Bの場合、顧客の多くは、会議の基調講演やトークセッションで、御社のような新しいテクノロジーをどのように導入したかを話したがります。たとえそれが、提案書のほとんどを自分で書き、スライドをまとめるのを手伝うということであっても、これを支援し、奨励するためにできることは何でもしてください。彼らが同業者の前であなたのプロダクトについて話すことは、あなたがするよりもずっと有益です。これは、雪だるま式に広がっていきます。もし、あなたの顧客が最初の数回の講演やウェビナーで成功を収めれば、彼らはもっと多くの講演を求められるようになるでしょう。

メッセージングがうまくいったら、顧客にできるだけ多くのメガホンを与えましょう。なぜなら、長い目で見れば、プロダクトの成否を決めるのは、あなたが言うことではなく、彼らが言うことだからです。


人を雇ったり、広告費をかけたりすれば、次のプロダクトのローンチを成功させられると思いたいかもしれません。しかし、そこに到達するためには、以下の5つのヒントが役に立ちます。

  1. 機能発表の優先順位を上げる
  2. 週次スプリントサイクルで集中力と対応力を維持する
  3. プロダクトを棚に並べることに責任を持つ
  4. プロダクトを「ブックツアー」に連れて行く
  5. 顧客が話すように仕向ける

更新:この投稿への好意的な反応に基づき、サンフランシスコで開催された2019 Product Marketing summitで、このことについて詳しく話しました。ここでご覧ください。

フィードバック、アイデア、またはチャットしたいことがありますか?お気軽に hugh.mcfall@gmail.com までご連絡ください。また、もっと知りたい方は、Crossing the Chasmの素晴らしいまとめがこちらです。


フォローして最新情報をチェック!

Caseyによるプロダクト・マーケット・フィットの見つけ方

プロダクトリーダーとして、またグロースの経歴を持つ者として、私が実際に取り組んでいることの多くが、プロダクトとマーケットのフィット(適合性)であることに驚かされます。プロダクト担当者は、プロダクトが価値を提供していることを確認した後、人々にプロダクトの価値を伝えるなど、あくまでもグロースに注力すべきなのです。ですから、グロースに投資する前に、プロダクト・マーケット・フィットがどのようなものかをしっかりと理解することが重要です。しかし、創業者やプロダクトリーダーはこの質問に答えるのに苦労しています。インターネット上のアドバイスやブログ記事では、「プロダクト・マーケット・フィットを見ればわかる」「突然、すべてがうまくいくようになる」と頻繁に唱えられています。これは、あまり実用的なアドバイスではありません。私は世界一の専門家だとは言いませんが、複数のスタートアップをスケールアップし、新しいプロダクトをローンチし、何十社もの企業にアドバイスや投資をしてきた中で、私が学んだことは以下のとおりです。


▼ 本記事の内容

  1. プロダクト・マーケット・フィットの定量的アプローチ
  2. プロダクト・マーケット・フィットへの道
  3. マーケット投入までの時間
  4. フォーカス
  5. ローンチ当初の目標
  6. ビジョンの変更
  7. グロース戦略
  8. リスク
  9. 適用可能な企業タイプ
  10. では、どちらを使うべきなのでしょうか?

この記事は、「Casey’s Guide to Finding Product/Market Fit」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Casey Winters
翻訳者: 渡辺圭祐


プロダクト・マーケット・フィットの定量的アプローチ

私は、プロダクト・マーケット・フィットを、持続的なグロースを可能にする満足度と定義しています。なぜなら、顧客が本当に満足することはほとんどないからです。ジェフ・ベゾス氏は株主通信で頻繁に真珠のような知恵を落としていますが、その中で私のお気に入りは次の言葉です。

私が顧客について好きなことのひとつは、顧客が神懸かり的に不満を抱いていることです。彼らの期待は決して静的なものではなく、上昇するものです。これは人間の本質です。私たちは、狩猟採集時代から満足することで成長してきたのではありません。人々はより良い方法を求めて貪欲であり、昨日の「すごい」はすぐに今日の「普通」になる。

それをプロダクト・マーケット・フィットの用語で言うと、プロダクト・マーケット・フィットは正の勾配を持ちます。顧客の期待は時間とともに高まり続け、実際、完全な満足は達成不可能な漸近線である可能性が高いのです。では、プロダクト・マーケット・フィットとは何でしょうか。プロダクト・マーケット・フィットとは、顧客が文句を言わなくなり、完全に満足することではありません。不満がなくなることはありません。完全に満足することもないでしょう。プロダクト・マーケット・フィットとは、顧客が離れていくのを止めることです。視覚的に表現すると、顧客の期待は、プロダクト体験が達成することをほとんど望めない漸近線ですが、プロダクト・マーケット・フィットは、プロダクトが飛び越え、時間とともにそれ以上の傾斜を維持しようとすることができる線です。

すべてのプロダクトは、理論上のプロダクト・マーケット・フィット線より低いところから始まり、あるものはその線を越えて、時間とともにその線より上に留まろうと努力する。

ですから、ほとんどの企業にとって、満足度を測定する代わりに、リテンションを測定することが、プロダクト・マーケット・フィットを示す最良の信号なのです。リテンションを測定するのはとても簡単です。コホート分析を行い、時系列でグラフ化し、リテンションカーブが平らになっているかどうかを確認します。以前にもお話したように、リテンションカーブの測定は非常に重要です。プロダクトの場合、通常、プロダクト価値を最もよく表す、顧客がプロダクトで取る重要な行動があります。ピンタレストの場合、それはコンテンツの一部を保存することでした。Grubhubの場合は、オンラインで料理を注文することでした。また、商品には、その商品を使う頻度というものがあります。ピンタレストの場合、人々は週単位で興味のあるトピックのサイトを閲覧していると判断しました。Grubhubの場合、人々は通常、月に1、2回食べ物を注文していました。キーアクションと指定頻度が決まれば、コホートグラフはキーアクションをY軸、指定頻度をX軸とします。これは、企業が他の満足度測定を無視すべきということではなく、プロダクト・マーケット・フィットがどのようなものかを明確に理解するためには、これが最良のスタートとなるのです。

このグラフは、ユーザーのグループを測定し、そのうち何人がプロダクトの主要なアクションを実行したかを時系列で表示します。通常、最初のうちは急激に落ちますが、プロダクト・マーケット・フィットしているプロダクトでは、一定の割合で一貫して価値を見出し続けます。

スタートアップに長く携わっている人なら、顧客維持率が高くても、なかなかグロースしないスタートアップを間違いなく見てきたはずです。もしあなたがグロースしていないなら、間違いなくプロダクト・マーケット・フィットがないのです。つまり、プロダクト・マーケット・フィットはリテンションだけでは測れないのです。リテンションは、持続的なグロースを生み出すものでなければならず、つまりリテンションの割合が重要なのです。なぜリテンションが重要なのか?新規顧客のアクイジションは、いくつかの重要なアクイジションループを経て、リテンション顧客から直接行われることがほとんどです。リテンション顧客は、

  • 商品の魅力を伝えるために、他の人に商品の話をする。
  • 人々をプロダクトに直接招待し、プロダクトに惹きつける。
  • 自分または会社がコンテンツを作成し、他の人と共有することで、その人をプロダクトに引きつける。
  • 自社に十分な資金をもたらし、その資金を健全な投資回収期間のある有料会員獲得や販売ループに投資し、顧客をプロダクトに引きつける。

私は、多くの創業者がこのことを誤解し、グロースを促進するためのグロースハックやPRバンプを探しているのを目にしてきました。この種の戦術は、持続可能なグロース戦略への順序付けを助ける場合にのみ有用ですが、直接持続可能なグロース戦略になることはほとんどありません。そのため、他の満足度の測定がやはり重要になることがあります。それが存在しない場合、これらのループの最初の2つは、そこからグロースを促進することは不可能です。

持続可能なグロースとは、これらのループのうち1つ以上が、毎月のアクイジションコホートのサイズを大きくし、リテンションカーブを平坦にすることで測定されます。指定された頻度で主要なアクションを行い、新規顧客の前月比伸び率が平坦化されたリテンションカーブは、私が見つけた真のプロダクト・マーケット・フィットを測定する最良の方法です。もしリテンション率が、新規ユーザーを獲得し続けるループをサポートできないのであれば、プロダクト・マーケット・フィットを見つけるためにリテンションを改善する必要があります。10%のリテンションユーザーでスケールできる企業もあれば、40%必要な企業もあり、これらはすべてアクイジションループの強さによって決まります。以下のグラフは、1ヶ月のコホート・リテンションと新規ユーザーの月次成長率を示しています。

ある月のリテンションカーブが時間とともに一貫して平坦になり、さらに毎月新規ユーザーが増加することが、真のプロダクト/マーケットフィットと言えるでしょう。

プロダクトの満足度がリテンションで測れないとしたら?こんなことが起こります。プロダクトの中には、1回しか使わないものや、使用頻度が極端に少ないものがあります。そのような場合、私はプロダクトの性質に応じて、満足度を測定するためのカスタムアンケートを使用するのが好きです。Rahul Vohraは、Superhumanでこのために使用したプロセスについて説明しており、それは素晴らしいものです。しかし、新規ユーザーのコホートを月ごとに測定することを忘れないでください。このようなシナリオでは、アクイジションがより重要になります。

プロダクト・マーケット・フィットへの道

ほとんどのプロダクトは、プロダクト・マーケット・フィットを見つけるのに2、3年かかります。上記の測定フレームワークでまだそこまで到達していなくても、心配する必要はありません。まずは、自分がどの程度進んでいるのか、改善するためのアプローチを理解することが大切です。プロダクト・マーケット・フィットに向けた推進には、2つの段階があります。

  • プロダクトが価値あるものであり、顧客に提供できるように、プロダクトビジョンを十分に構築すること。
  • あなたがターゲットにしている価値を顧客に理解してもらい、受け取ってもらうこと。

第一段階にいる場合、一般的には、プロダクト・マーケット・フィットを測定するために、とにかく顧客にプロダクトを使わせてはいないでしょう。私は、エリック・リースモデルとキース・ラボイスモデルと呼んで簡略化していますが(両者とも不公平です)、顧客アクセスを許可するまでの構築期間を含め、多くの軸で正反対の考え方を持っています。これらの軸を考えることで、次に何をすべきか、成功した企業がこのフェーズで何をしたかを理解することができます。以下に、主な違いの概要を説明します。

これは確かに単純化しすぎですが、新しいプロダクトで考慮すべき事柄の範囲を示すのに役立つはずです。それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。
(オリジナルの表はこちらをご覧ください)

マーケット投入までの時間

リースモデルは、何を作るべきか、そして作ったものが実際に顧客の問題を解決しているかどうかを理解するために、早い段階で頻繁に顧客と話をすることを重視しています。ラボイスモデルは、創業者のビジョンに突き動かされているため、顧客からのフィードバックは、顧客がそれに触れる前に創業者が思い描いたものを構築することよりも重要ではありません。

成功はどちらのモードでも達成できます。フードデリバリーの分野では、Doordashの創業者Tony XuとZerocaterの創業者Arram Sabetiが、スケールのために多くのテクノロジーに投資する前に、スプレッドシートと創業者の手作業で初期モデルを証明したことは有名です。Codaの創業者兼CEOであるShishir Mehrotraは、一般公開の前に4年間かけてプロダクトを作り上げ、現在、会社は急成長しています。実際には、マーケットに出るまでに時間がかかる企業は、たいていアルファ版またはベータ版の顧客を持ち、プロダクトへのフィードバックループをまだ駆動しています。Codaは、例えばUberの従業員を使っていました。

フォーカス

リースモデルは、顧客セグメントをターゲットとし、彼らのペインポイントを見つけ出し、価値あるものを構築しようとする傾向があります。ラボイスモデルは、問題とターゲットとなるソリューションの両方について強いビジョンを持ち、それを最初から構築することから始めます。リースモデルは、データサイエンティストやゼネコンなどのセグメントを深く理解し、プロダクトソリューションが解決できる問題を特定し、そのセグメントで構築とテストを行いたい企業ビジネスで一般的なモデルです。この場合、同じ問題に対する異なるソリューションを試したり、同じタイプの顧客の異なる問題をターゲットにしたりするため、初期のピボットが見られる可能性が高くなります。私がグレイロックにいた頃、このようなタイプの企業をいくつかインキュベートして成功しましたが、最初のイテレーションが成功することはほとんどなかったのです。

ここで、リースのモデルの問題点の1つは、プロダクト・マーケット・フィットが成功しても、すべてのスピードバンプを回避できることは稀であるということです。創業者が強いビジョンとモチベーションを持ち、「問題に惚れ込んでいる」状態でなければ、スピードバンプはかえって障害となり、企業は早々に方向転換して、多くの「早く失敗する」ことを引き起こしてしまうのです。Thumbtackの創業者たちは、このような状況を切り抜け、最終的なプロダクト・マーケット・フィットをあきらめなかった良い例です。

ビジョンを持った創業者の多くは、プロダクト体験を出し、最終的にそのプロダクトソリューションに興味を持つマーケットを見つけます。TikTokとHousepartyは、当初、子供向けのプロダクトを作ろうとしたわけではありません。クラブハウスはアトランタで爆発的に売れ始め、その創業者達は二人ともシリコンバレーにいます。しかし、スクエアとFaireは、最初のターゲットマーケットについてかなり強い考えを持っており、それらのマーケットとのプロダクト・マーケット・フィットを見いだしました。

ローンチ当初の目標

エリック・リースモデルでプロダクトをローンチする唯一の目的は、ターゲット顧客からフィードバックを得ることです。これらのローンチは一般的に、何かがうまくいっているかどうかを知るためにターゲット顧客から十分なシグナルを受け取るために、規模が制限されます。ラボアモデルにおける初期の目標は、プロダクト創出のきっかけとなった最初のビジョンを達成することです。プロダクトは、ローンチされるプロダクトソリューションに魅了されるマーケットを広く探している可能性があるため、このモデルでは、通常、ローンチはより広範囲に及びます。たとえターゲットとなるマーケットに関する強力な論文があったとしても、ローンチ初日からその価値を提供できるようなプロダクトでなければならないため、可能な限り多くのマーケットに参入しようと、より大規模な立ち上げを行う可能性が高くなります。ネットワークビジネスでは、人々がプロダクト・マーケット・フィットを体験するために必要な流動性を確保するために、より大きな努力が必要となる場合があります。マーケットプレイスでは、まず供給と需要のどちらをターゲットにするかで順序が決まりますが、直接的なネットワーク効果では、量によってより推進されます。ツイッターとフォースクエアは共に初期流動性を正しく得るために SXSW でローンチしました。Grubhubでは、新しいマーケットを立ち上げるときはいつも、最初の2 週間で50 のレストランと契約し、顧客に見せる良いセレクションを持つことを目標としていました。

ビジョンの変更

エリック・リースのモデルは、ビジョンに対して非常に柔軟性があり、この分野の企業は、顧客のニーズを中心に頻繁にピボットします。インスタグラム、ツイッター、グルーポン、Slack、ピンタレスト、GOAT、その他多くの成功者は、ある方向からスタートし、失敗や最初のアイデアの一部しかうまくいかなかったり、新しい考えによってプロダクトやミッションを大きく変え、プロダクト・マーケット・フィットを見い出しました。ラボアモデルでは、最初から1つのビジョンが会社を動かしています。Opendoorは、データサイエンスとインスタントセールスによって不動産を作り変えるというミッションでスタートし、そのビジョンから大きく外れることなく現在に至っています。

この分野は、ピボットの成功に関するあらゆるニュースを耳にするにもかかわらず、ラボアモデルに傾倒することが支配的な戦略であると思います。やみくもに多くのスタートアップのアイデアを試すことは、暗い部屋でドアを探しているようなものです。成功したビジョンは、その部屋に明かりを灯し、誰もがドアを見て、そこに向かって走り出すことができるのです。大きなピボットの多くも、創業者による新しいとはいえ強力なビジョンに導かれていたのです。

グロース戦略

エリック・リースモデルでは、初期段階でのグロースを引き出すための主な方法として、プロダクトの変更を考えています。そのためには、顧客とチームの間で緊密なフィードバックループを構築し、チームが微調整や適応を行い、潜在顧客を満足させるために全く新しいものを作り上げることができるようにする必要があります。この種の企業では通常、長期的には拡張不可能ですが、初期のプロダクトをより多くの人々に効率的に提供できるようなグロースハックを活用するケースが見られます。ラボアモデルは、プロダクトの変更がより困難であることを示唆しています。プロダクトビジョンは通常、負担が大きいため、プロダクト変更に頼ってグロースすることは非常にコストがかかります。ラボイスは、プロダクトの利用を拡大するために、強力なマーケット参入戦略モデルと強力なマーケティング力を活用することを好みます。もちろん、私は、拡張可能なループの観点から考えることは、支配的な戦略であると信じています。

リスク

ほとんどの会社が失敗しているので、起業における失敗モードについて話すのは奇妙なことです。しかし、それぞれのモデルには、回避可能な失敗のタイプの傾向があり、創業者はそれをよく理解しておく必要があります。エリック・リースのモデルは、最終的な目的地がない反復や、進歩したように見えてそうでない「早く失敗する」ことを多くする傾向があります。5年ほど前、スタートアップスタジオでこのようなことが多く見られました。その中で、永続的な会社をつくったところはひとつもありません。ラボアモデルには、まったく異なるリスクがあります。これは、最近耳にする多くの暗号のピッチのように、問題を探している解決策を見つけることができる場所です(どれだけのICOがプロダクト・マーケット・フィットを見つけたでしょうか? 1つでもあるでしょうか)。過去にこの分野で記憶に残る失敗をしたのは、Color LabsとClinkleです。これらの企業は、人々がそれを欲しいと思うことを確認することなく、自分たちが持っているものを一生懸命売ることに多くの労力を費やしてしまうことがあるのです。また、この分野のスタートアップは、ビジョンに没頭するあまり、実際にローンチすることができないこともあります。マジックリープは、ARの分野では最近の例です。ラボイスモデルは、注意深くなければ、マーケットを解放するための重要な洞察のいくつかを隠してしまうこともあります。インスタグラムやピンタレストは、当初のビジョンのほんの一部しかうまくいかなかったので、その要素だけにフォーカスしてピボットを行い、巨大なビジネスを築き上げたのです。

適用可能な企業タイプ

これらのモデルはどのようなタイプのビジネスにも使えますが、特定のモデルに傾く傾向があります。エリック・リースモデルは、エンタープライズビジネスにおいて非常に一般的です。なぜなら、創業者は特定のセグメントが、解決されていない日々の問題や、信頼できるビジネスモデルを作るために支払うべきお金を持っていると確信しており、そのセグメントのすべてを学び、解決するために支払う意思を持つ問題を見つけるからです。クイック・トゥ・ローンチの要素は、多くのテクノロジーに投資する前に流動性を検証するためにマッチングを手動で行うことができるマーケットプレイスで一般的なものです。ラボイスモデルは、ハードウェアの場合、イテレーションに長い時間がかかるため、より一般的です。また、顧客向けモデルでは、創業者が新しい習慣やインタラクションを幅広いマーケットに試してもらう必要がある場合が一般的です。

では、どちらを使うべきなのでしょうか?

これらの例から、どちらの極端さもかなり危険であることがお分かりいただけると思います。また、これらのモデルのどちらかを強く信じている人たちでさえ、企業が適切なときにそのアプローチから逸脱したことに関して選択的記憶を持っているようです。創業者は、自分たちのビジネスにプロダクト・マーケット・フィットを見出す機会を最大化するために、どのモデルのどの部分を適用する必要があるかについて、強い意見を構築する必要があります。私の個人的な考えでは、強いビジョンとマーケットからのフィードバックの組み合わせは、この2つのアプローチのうちかなり優位な組み合わせであり、他の軸の多くは、構築するプロダクトに依存するものです。私は、どちらのモデルもグロース戦略の面ではかなり弱いと思っています。「チケットを売る」は、強力なアクイジションループを通じてグロースを実現するための最も効果的な方法がプロダクトであることを無視しています。新しいプロダクトが新たなグロースをもたらすと仮定するのは、運が良くない限り、「作れば来る」という幻想です。


プロダクト・マーケット・フィットがどのようなものかを理解する理由は、もちろん企業の創業者にとっても重要です。プロダクト/マーケットフィットのラインを直接測定することは不可能ですが、リテンションカーブと新規ユーザーの伸びを測定することで、その会社がその上にいるかどうかを測定することは可能です。毎月のリテンションカーブが平坦になり、健全な投資回収期間で新規ユーザー数が増加すれば、プロダクト・マーケット・フィットがあると確信できます。自分のプロダクトでこうは言えないという方は、具体的に何に取り組めばいいのか、どう応用すればいいのか、いくつかの軸を示すことができたのではないでしょうか。次の問題は、それをスケールアップし、お客様の期待が高まり続ける中で維持することです。これらのコンセプトについてもっと知りたい方は、Reforgeプロダクト戦略プログラムの中で劇的に展開しています。

現在、私のScrambled Eggsプレイリストを聴いています。

この記事のドラフトを読んでフィードバックをくれたKevin KwokとEmily Yuhasに感謝します。


フォローして最新情報をチェック!

コミュニティ主導の成長:プロダクト主導の成長の拡張パック

プロダクト主導の成長の基本的な前提は、ユーザーがプロダクトを見つけ、採用し、使用するよう後押しするGo-to-Marketジャーニーの主役はプロダクトである、ということです。マーケット参入戦略として、プロダクト主導型はユーザー中心の企業にとって非常に効果的です。

しかし、現実には、ソフトウェアを見つけ、採用し、使い始め、そして使い続けるというプロセスは、あなたとユーザーとの間のバブルの中で起こるものではありません。人は本来、アドバイスを求める生き物です。つまり、プロセスのあらゆる段階で、ツールを探し始める前から、外部の意見を求めているのです。私たちは常に、友人や同僚、インターネット上の見知らぬ人から、何を食べるべきか、どんな服を着るべきか、どこに住むべきか、といった情報を入手しているのです。これは、ソフトウェアを購入する際にも当てはまります。

コミュニティ主導の成長は、プロダクト主導の成長に加え、乗数として機能します。ユーザーとの交流を積極的に促進し、プロダクト以外の価値を提供することで、コミュニティ主導の成長は、企業が顧客のパイプライン、機能要求、リアルタイムのサポートをより強く把握できるようにし、ユーザーがプロダクトを最大限に活用できるようにします。そして、このようなユーザーがチャンピオンとなり、コミュニティを強化するアクティブなメンバーで構成されるフライホイールとなるのです。


▼ 本記事の内容
  1. なぜ今なのか?
  2. すべての創業者がコミュニティ主導の成長について考えるべき理由
  3. コミュニティ主導の成長のプレイブック
    1. 1.コミュニティ・オブ・プラクティスの作成から始める
    2. 2. ベスト・チャンピオンを認定して報酬を与える
    3. 3.企業コンテンツにステークホルダーを参加させる
    4. 4.ユーザーが作成したテンプレートとチュートリアルを促進する
  4. 優れたコミュニティには、優れた責任が伴う

この記事は、「Community-Led Growth: The Product-Led Growth Expansion Pack」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Corinne Marie Riley
翻訳者: 渡辺圭祐


私たちが考えるプロダクト主導の成長とはどのようなものか

プロダクト主導+コミュニティ主導の成長とは、実際にはどのようなものなのか

なぜ今なのか?

ネットで居場所を見つける必要性を感じている人が増えているので、テクノロジーの多くの側面と同様に、COVIDはコミュニティ主導の成長を加速させる役割を担ってきました。しかし、コミュニティ主導の成長の実現には長い時間がかかりました。このようにSaaSが細分化された世界では、ユーザーは選択肢に圧倒され、ツールを選択するためにインフルエンサーに注目するようになり、一方でコミュニケーションや共有のチャネルも増えました。買い手が何を探しているのかわからないままセールスコールに現れる時代はとうに過ぎ去り、買い手は利用可能なツールについてより明確な意見を持ってテーブルにつくようになっているのです。

  • セールス主導の世界では、セールス担当者を信頼しなければなりません。
  • プロダクト主導の成長の世界では、ユーザーは自分自身を信頼して最適なプロダクトを選びます。
  • コミュニティ主導の成長の世界では、買い手は友人や仲間といったコミュニティに指針を求めます。

すべての創業者がコミュニティ主導の成長について考えるべき理由

1. ユーザーとの共生を実現する:コミュニティ主導の成長では、ユーザーにとってより魅力的なもの、つまりユーザーが興味のあるトピックを中心に展開されるムーブメントを作り出すことができます。そうすることで、自社プロダクトの枠を超えた価値を提供することができ、自然とユーザーとの共生関係を築くことができるのです。

2. マーケットのオピニオンリーダーになる:コミュニティを知り、理解したら、そのコミュニティが最も必要とするコンテンツやサービスを提供するようにしましょう。よく管理されたコミュニティは、夜中に互いの質問に答え、仲間とトラブルシューティングを行い、ベストプラクティスに関するコンテンツを共有することで、他の方法では考えられなかったような新しい解決策を思いつくことができます。このようなソート・リーダーシップは、やがてあなたの会社のブランドとなるのです。

3. リアルタイムの洞察と実行可能な反応:多くの場合、企業との最初の接点はコミュニティ・チャネルである可能性があります。カスタマーサポートは、リアルタイムで問題に答えることができるようになり、ピアツーピアの応答によってチケットの数を減らし、よりスリムになるという利点があります。また、プロダクトチームは、ユーザーがどのような問題で困っているのか、どのようなリクエストがあるのか、そして一般的にどのようなフィードバックがあるのかを確認することができます。

コミュニティ主導の成長のプレイブック

コミュニティは通常、コミュニティ・プラットフォームでユーザーを集め、複数のコミュニティ・チャンネル(イベント、ジョブボード、ニュースレターなど)を通じて、時間をかけてエコシステムを拡大していくことでスタートします。規模の大小にかかわらず、参加者の多いコミュニティは積極的に管理する必要があります。それには、時間、1対1の会話、パーソナライズ、そしてリーダーシップが必要です。コミュニティのエコシステムが拡大するにつれ、コミュニティ責任者の役割はますます重要になるでしょう。

「どんなに優れたコミュニティツールでも、運営する人がコミュニティだと感じられなければ、うまくいきません。Slackのグループチャットに人を放り込んでも、コミュニティを作ることにはなりません。」

サラ・ウッド アップストリームのグロース&コミュニティ責任者
(Sarah Wood, Head of Growth & Community Upstream)

コミュニティ主導の成長を最適化する方法についてのプレイブックはまだありませんが、企業が何千人ものアクティブな参加者を持つコミュニティを作るためにうまく組み合わせている4つの主要な戦略があります。

1.コミュニティ・オブ・プラクティス(実践共同体)の作成から始める

コミュニティは、ほとんどのメンバーやコンテンツ(企業やユーザーが作成したもの)を見ることができる中心的なハブであり、コミュニティのほとんどが「住んでいる」場所です。Slackはコミュニティを作るための出発点として知られていますが、コミュニティを可能にするSaaSの世界は指数関数的に成長しています。コミュニティ・プラットフォームは、オープンソースの開発者向け、会員制、音声、イベント、チャットなど、コミュニティの種類やインタラクションの形態に合わせて、よりニッチで機能特化したものになってきています。

では、現在、コミュニティ構築者たちは、自分たちのコミュニティで何が起こっているかだけでなく、そもそも実践ベースのコミュニティを構築するための方法論や哲学をよりよく理解するために、どこに行けばいいのでしょうか?大まかに言えば、CMXのようなハブは、コミュニティのリーダーが人脈を構築するのに役立ちます。そして、Uncommonのようなコミュニティプログラムは、AsanaのJoshua Zerkel、LoomのShahed Khan、NotionのKate Taylorなど、コミュニティ空間での深い経験を持つエキスパートからの学びを共有することに焦点をあてています。ニュースレターや今後のイベントを通じて、コミュニティ構築者同士を結びつけ、実践のコミュニティを育み、成長させるための力を与えてくれるでしょう。その他の便利なツールは?Community Clubが提供するコミュニティに関する、このディレクトリ/マーケットマップのようなものは、各セグメントにおけるツールの概要、フィードバック、価格を見ることができます(詳細は以下からご覧ください)。

十分な規模があれば、コミュニティを「自社で」構築することも可能です(例:Atlassian CommunitySalesforce Communityなど)。

プロダクトに関係なく、企業主導のコミュニティには主に2つのタイプがあります。

  • プロダクトのコミュニティプロダクトに特化して構築され、主にユーザーがプロダクトについて質問したり、互いにインサイトを共有したり、会社とつながりを維持するためのスペースとして機能します。
  • 実践共同体(Community of Practice):実践共同体という考え方は、人類学者ジャン・レーヴと教育理論家エティエンヌ・ヴェンガーの著書『Situated Learning』の中で生み出されたものです。実践共同体は、特定の分野について学ぶという共通の目的を持ったメンバーを結びつけるものです。これを技術分野に応用すると、実践コミュニティが大きく発展することが分かってきました。企業は、自社のプロダクトよりも広い範囲で何かを構築するというアイデアを受け入れ、その代わりに、ある役割やスペース内のすべての人々を含めることを目的としています。例えば、FunlRevOps Co-Opを作り、RevOpsの役割を持つ誰もが参加でき、同時にそのユーザーのために特別に設計されたFunlのGTMプロダクトについて学ぶことができるようにしました。同様に、TwineはCPOに特化したソフトウェアを販売しながら、すべてのCPOのためのコミュニティを作りました。コミュニティ・マネージャーとセールス・チームは、プロダクトの使用例を紹介し、適切なタイミングで潜在的なユーザーに直接コンタクトを取ることができます。

私たちは、コミュニティで何かをするたびに、「これはRevOpsコミュニティにとって価値があるのか?」と自問します。もし、その答えがノーであれば、私たちはそのようなことはしません。このおかげで、90日間でコミュニティを0人から1,000人以上に拡大し、持続的な関係を築き、彼らが抱えている課題を把握することができ、プロダクト開発に役立っています。

マシュー・ヴォルム(Funl CEO / RevOps Co-Op)

2. ベスト・チャンピオンを認定して報酬を与える

一部の企業は、コミュニティのメンバーがコンテンツを投稿し、その結果、プロダクトの支持者になるためのインセンティブとして、「認定」プログラムを作成し、成功を収めています。最も効果的なケースは、「無料の」販売員、つまり自社プロダクトの熱心な信奉者を生み出し、その見返りとして、キャリアを決定づけるような個人的な専門的検証を受けることです(例えば、履歴書やLinkedInに堂々と認定証を掲示することになります)。認定プログラムは、その価値を薄めず、かつ優秀な人材を惹きつけるだけの関心と話題性を生み出すというバランスに依存しているため、実行するのは容易ではありません。

成功例としては、以下のようなものがあります。

3.企業コンテンツにステークホルダーを参加させる

コンテンツマーケティングは誰にとっても新しいものではありませんが、変化しているのは、ユーザーがコンテンツを作成し、参加する役割です。これは2つのインパクトがあります。1つは、あなたが活動しているマーケットや、あなたのツールが持つ多くの使用例についてユーザーを「教育」する機会であり、もう1つは、「クリエイター」の輪を広げることで生まれるネットワーク効果です。主な媒体は以下の2つです。

ポッドキャスト – マーケットや特定のツールに関するポッドキャストを開始し、その分野のユーザーや専門家を招き、真のソートパートナーシップを築く企業が増えています。Utmost(グレイロックのポートフォリオ企業)は、過去9ヶ月間にエクステンド・ワークフォースに関する30話のポッドキャストを作成し、マーケットのあらゆる側面の関係者や企業(自社の顧客ではない場合でも)を招いて、この分野の重要性とユートモストがソリューションにおいて果たす役割についてリスナーを教育しています。もう一つの成功例は、AstronomerのチームによるThe Airflow Podcastで、NetlifyがAirflowを使って複雑なSparkジョブの集合からオーケストレーションロジックを切り離す方法など、プロダクトのアップデートとベストプラクティスを共有しています。

ブログ記事/ニュースレター:強力なコミュニティ主導のコンテンツマーケティングとは、企業が主要なステークホルダーにインタビューを行い、さらに自社のユーザーがプロダクトの最適な使用方法についてコンテンツを提供することを奨励することです(「証明書」の例の多くでは、ブログ記事を書くことが必須となっています)。

4.ユーザーが作成したテンプレートとチュートリアルを促進する

最後に、コミュニティを巻き込むには、プロダクトを成功させるための手順、アイデア、テンプレートを提供することが必要です。しかし、ある程度の規模になると、作成しなければならないコンテンツの量が、作成できる速度よりも多くなります。十分なプロダクト愛があれば、ユーザーが自らチュートリアルを共有するようになるかもしれません(これは素晴らしい兆候です)。もし人々があなたのプロダクト(例:Zapier)の使い方についてDIYのYouTube動画を投稿しているなら、おそらくあなたはこの周りにコミュニティを作るべきでしょう。彼らがこれらのインサイトを公に共有するためのスペースを作ることは、彼らがより多くを作成することを奨励するだけでなく、あなたの見込み客のための「リポジトリ」を集中化します。成功した事例をいくつか紹介します。

優れたコミュニティには、優れた責任が伴う

コミュニティ主導の成長を実現する企業の波がやってくる。

1. 次世代コミュニティ・プラットフォーム: 新しいコミュニティ・プラットフォーム(Slack 2.0)は、コンテンツ共有、ナレッジ・リポジトリ、イベント企画、ユーザーオンボーディング、セグメンテーション、Q&Aなど、差別化されたユースケースと高い機能性を備えています。一方、既存の大規模プラットフォームは、Discordが2つの小規模スタートアップByte(ビデオ中心のコミュニティ)とZyper(ブランド中心のコミュニティ)を買収したように、無機的にでも利用者を拡大しようとしている。

2.コミュニティ・データ分析:インサイトマイニング、プラットフォームに依存しないソフトウェアで、コミュニティのすべてのエンドポイントを統合し、セールス、成功、サポートチーム、プロダクトチームなどのための実行可能なワークフローを推進します。コミュニティ・データのマイニングは自明な問題ではありません。なぜなら、何十ものソースがあり、それぞれが大規模なデータ・ポイントを持ち、ユーザーごとに異なる名前、異なるタイプの行動をとり、多くの場合、完全な情報を伝達しないことがあるからです。しかし、これはコミュニティから価値を得るための重要な要素でもあります。これらのツールで追跡する指標は、これらのチャネルを成長させる上で非常に貴重なものとなります。3月末にステルスから登場したCommon Roomのような新しいツールは、組織がチャンネルを超えてコミュニティ・データからインサイトを見て、理解し、分析することを可能にし、Twitter、Slack、GitHub、Intercom、Discourse、Discordなどのプラットフォームにおいて、適切かつパーソナルな方法でコミュニティの人々との関係を深め、より効果的にコミュニティを運営することができるようマーケットに出てきています。

優れたコミュニティには大きな責任が伴います。企業は、コミュニティへの参加を企業文化やアイデンティティの一部として積極的に取り入れる必要があります。ユーザーが参加する可能性のある多くのコミュニティで差別化を図ることは容易ではありませんが、効果的に管理すれば、GTMに重大な影響を与える可能性があります。

もしあなたがコミュニティを実現するためのツールを作っていたり、コミュニティ主導の成長を使っているなら、ぜひノートを交換し、corinne@greylock.com で詳細を教えてください。

素晴らしい技術コミュニティに参加したいですか?アクティブなコミュニティのデータベースはこちらです。


フォローして最新情報をチェック!

3つのペルソナ:マーケティング、プロダクト、アナリティクスはどのように顧客を定義しようとしているのか?

私はこれまで、マーケティング、プロダクト、アナリティクスの分野で仕事をしてきました。米国マーケティング協会では、これらすべてをマーケティングと定義していますが、実際には、これらの部門が1つのフィーチャー・チームの範囲に含まれることはほとんどなく、これらのグループの人々は、多くの場合、物事をまったく違った見方で見ています。このことが組織に混乱をもたらす主な原因の1つは、ペルソナの作成にあります。3つのグループはそれぞれ独自の方法でペルソナを定義しており、同じストーリーは語られません。そして、多くの場合、これらは全く異なるものであるにもかかわらず、マーケティング・ペルソナと呼ばれています。それぞれを別々に定義してみるために歩き、それぞれの最適な使い方とよくある落とし穴を避ける方法についてお話しします。


▼ 本記事の内容
  1. アナリティクス・ペルソナ
  2. プロダクト・ペルソナ
  3. マーケティング・ペルソナ
  4. ペルソナの違いによる問題点

この記事は、「The Three Personas: How Marketing, Product, and Analytics Attempt to Define The Customer」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Casey Winters
翻訳者: 渡辺圭祐


アナリティクス・ペルソナ

アナリティクス・ペルソナは、このグループの中で最もわかりやすいものです。アナリティクス・ペルソナは、ユーザーの利用状況に基づいてユーザーのクラスタに注目し、その利用状況に基づいてユーザーを定義することによって作成されます。ピンタレストでは、これらをコアユーザー、カジュアルユーザー、マージナルユーザー、休眠ユーザーと定義しました。コアな人は毎日、カジュアルな人は毎週、マージナルな人は毎月、そして休眠ユーザーはピンタレストに全く来なくなっていました。このセグメンテーションは、あなたのプロダクトが時間とともに魅力的になっているかどうかを確認するのに役立つことがあります。重要なプロジェクトには、2つのグループの統計的な違いを理解することで、例えば、マージナルからカジュアルへの移行が含まれることがあります。そして、カジュアル層が行っていてマージナル層が行っていないことを、マージナル層にも行うように仕向けることができるかもしれません。これらの違いの中には、単なる相関関係(行動そのものが重要なのではなく、より人を表している)もあれば、因果関係のあるものもあり、マージナルユーザーへのインセンティブや教育といった実験によって、彼らがカジュアルユーザーになる可能性があります。

プロダクト・ペルソナ

プロダクト・ペルソナは、アナリティクス・ペルソナと同様、既存のユーザーを理解することに重点を置いています。アナリティクス・ペルソナとは対照的に、プロダクト・ペルソナは定性調査に基づき、ユーザーがどのような行動を取るかだけでなく、そのユーザーがどのような人物であるかを定義します。プロダクトを毎月使っている人と、毎日使っている人は、同じペルソナである可能性があります。Grubhubでペルソナを作成する際には、定性・定量調査を組み合わせて定義する必要がありました。お客様との電話やアンケートのやり取りを経て、2つの具体的な基準に基づいてGrubhubを利用する4つのペルソナを定義することができました:自発的に注文するか、前もって計画しておくか、そして自分のために注文するか、他の人と一緒に注文するか。これらのペルソナをデータと照らし合わせてみると、あるセグメントはカスタマーサービスに高いコストがかかるため、サービスを提供するには不利であること、またあるセグメントは潜在能力は高いが、まだ適切なプロダクトを構築していないため、現状では価値が低いことがわかりました。これは、今後のプロダクト戦略の参考になりました。

マーケティング・ペルソナ

マーケティング・ペルソナは、最初の2つのペルソナとは異なり、通常、将来を見据えたペルソナで、企業が到達しようとする顧客に関するものです。このペルソナは、「今いる顧客」ではなく「欲しい顧客」です。マーケティングペルソナは、プロダクトの発売時やマーケットの拡大時によく使われます。なぜなら、アナリティクスやプロダクトペルソナを構築するための既存のユーザーやデータが存在しないからです。

マーケティング・ペルソナは、狙うべきターゲットマーケットを定義するために存在します。マーケティング担当者は、すべての人をターゲットにしようとすることはほとんどありません。特定のニーズ(物理的、感情的)を持つニッチを定義し、そのグループにとって魅力的なプロダクトを作ろうとするのです。マーケティング担当者は、このペルソナを定義するためのツールを数多く持っています。人口統計学や心理学的データに目を通し、競合の状況を把握し、新しいマーケットの機会を見出します。このペルソナは、プロダクト以外の人々をターゲットにしているため、このプロセスで作成される一般的なツールの1つは、ターゲット顧客の典型的な1日をマッピングすることです。通勤時にラジオで何を聴いているか、朝のコーヒーはどこで飲むか、夕食時にテレビで何を見るか、などです。そこから、マーケティング担当者は、その時間帯にターゲットに広告を出し、プロダクトを紹介する機会を特定するのです。

ペルソナの違いによる問題点

これらのペルソナにはすべて長所と短所があり、一律に考えるのではなく、組み合わせて使うことをお勧めします。アナリティクス・ペルソナの危険な点は、人々をその活動のみに基づいて見てしまい、その動機や性格などを見ないことです。データからは決して得られない重要な洞察が、顧客と話すことで10分以内に得られることがあるのです。また、プロダクトやアナリティクスのペルソナは、現在の顧客が理解すべき最も重要な顧客であることを前提としています。これは必ずしもそうとは限りません。多くの場合、マーケットを拡大する必要があります。また、既存のユーザーに焦点を当てることで、これから入ってくるユーザーにとってプロダクトが悪くなることもあります。

マーケティング・ペルソナにも欠点があります。ペルソナは二次的なデータに基づいているため、マーケティング担当者は、存在しないペルソナや小さすぎて重要でないペルソナを作り出してしまうことがあるのです。そのため、多くのマーケティングチームが、自分たちをよりクールにしたようなペルソナを作ってしまうのです。ファッションデザイナーが、誰のためにデザインするのかと聞かれたときに、「ニューヨークのギャラリーのオーナー」などと答えるのはそのためです。そのような人たちは、世界に500人ほどしかいないのです。さて、最後のシナリオでは、マーケティング・ペルソナと真のペルソナの願望との間に曖昧な線があることを明記しておきますが、ご理解いただけると思います。

また、マーケティング・ペルソナは、ニッチとターゲティングに基づいているため、オーガニック・グロース戦略やマーケットが無限に広がるようなプロダクトには役立たないことがあります。ピンタレストで約5,000万人のユーザーを対象にマーケティング・ペルソナを作ろうとしたとき、「これで一体何をするつもりなのか?私たちは、広告にお金をかけているわけではありません。私たちのターゲティングは、ピンタレストが関連するものをインターネットで検索した人によって定義されています。」と問いかけました。同じように、グーグル検索にもターゲットがあるのでしょうか?もちろん、インターネットに接続しているすべての人をターゲットと呼ぶことができるのであれば、そうです。しかし、グーグル・ホームのチームは、発売時に非常に具体的なターゲットを想定していたに違いありません。

また、多くのインターネットプロダクトにおいて、パーソナライゼーションの代わりにあらゆる種類のペルソナが誤って使用されています。電子メールはその代表的な例です。多くの企業はいまだに、特定のペルソナのために専用のメールを作成し、リストをセグメント化し、カスタムコピーを書き、カスタムコンテンツを追加して、多くの時間を費やしています。しかし、パーソナライゼーションとワン・トゥ・ワンメッセージの世界では、このようなことはあまり意味を持ちません。ピンタレストは、2億人以上のユーザーに対して、Eメールとプッシュで自動化されたパーソナライズされたワン・トゥ・ワンメッセージを行っています。ピンタレストは、あなたがどのようなアナリティクス、プロダクト、マーケティング・ペルソナであるかを知らなくても、効果的なメッセージを送ることができます。これは、独自の技術でもありません。多くのサードパーティ企業が、データの少ない中小企業向けにこれと同じタイプのシステムを構築する手助けをすることができるのです。


ペルソナは、ビジネスを成長させ、顧客によりよいサービスを提供するための機会を特定するのに役立つ、非常に便利なツールです。企業のほぼすべてのフェーズで、ペルソナを使用する必要があります。ペルソナの種類、使用方法、間違いを防ぐ方法を理解することは、ペルソナを定義する労力に見合うものであることを確認するための鍵です。

現在、SquarepusherのBig Loadaを聴いています。


フォローして最新情報をチェック!

プロダクトリーダーが失敗する理由

CPOやプロダクト責任者の仲間で、「ああ、私は今、絶好調です」と言う人にまだ会ったことがありません。プロダクトリーダー仲間との会話では、プロダクトリーダーの役割にまつわるミームが生まれ始めているほどです。それは、

「どうしてもクビになる前に、ポイントを稼ごうとするんだな」

では、典型的なCPOが自分の役割を、数年、つまりビジネスを少しでも助けるのに十分な期間生き残ろうとすることだと感じているとしたら、何がその原因なのでしょうか。なぜ、プロダクトリーダーとして耐えることがそんなに難しいのでしょうか?


▼ 本記事の内容
  1. 失敗モード 1:誰がプロダクトビジョンを持っているか?
  2. 失敗モード 2:専門知識と必要とされるプロダクト開発のタイプは一致しているか?
  3. 失敗モード 3:ニーズの変化に合わせてプロダクトリーダーを適応させることができるか?

この記事は、『Why Product Leaders Fail』を著者の了解を得た上で翻訳したものです。
著者: Casey Winters
翻訳者: 渡辺圭祐


私は、会社がどの程度の段階にあるかによって、3つの一般的な失敗モードがあると思います。会社のステージが早ければ早いほど、創業者・CEOとのズレが答えになることが多いようです。プロダクトリーダーがプロダクトリーダーの役割を引き受ける際に誰も言わない事は、十中八九、創業者やCEOはまだプロダクトのビジョンを推進したいと考えているということです。そして、そのビジョンの実行を支援することを望んでいます。そして、創業者が規模を拡大するにつれて、創業者の直感は、社内のプロダクトに関する専門知識と比較して、その有効性が薄れていきますが、創業者がそれを受け入れるには、長い時間がかかります。この移行期は、非常に不安定なものです。

レイターステージ企業の場合、CPOが得意とするのはある種のプロダクト業務だけであり、ビジネスに必要なプロダクト業務の種類は時間とともに変化していく、というのがより妥当な答えでしょう。これは、2つの形で現れます。プロダクトリーダーは、現在必要とされている仕事のタイプにマッチしないスキルを持っているか、あるいは、実行するにつれて必要とされるスキルが変化し、リーダーが適応できないか、です。プロダクトリーダーは、その新しい仕事に向いていないだけでなく、その仕事に興味を持つ可能性も低くなります。

それでは、これらの失敗モードについて、そして、その失敗をより少なくするためにプロダクトリーダーとCEOの双方ができることについてお話しましょう。

失敗モード 1:誰がプロダクトビジョンを持っているか?

創業者は、顧客やプロダクトについて非常に優れた直感を持っている傾向があります。なぜなら、率直に言って、誰も顧客とその問題について考えるのにそれほど多くの時間を費やしてこなかったからです。スタートアップがプロダクトリーダーを採用する場合、この種のリーダーを採用するのは初めてのことです。面接のプロセスは不器用で、最適化されておらず、創業者はまだ本当のニーズを明確にする方法を見つけ出せていません。一般的に、このプロセスで起こることは、創業者とプロダクトリーダー候補の両方が、将来のプロダクトビジョンについて意見を交わすことです。しかし、創業者にとっては、プロダクトリーダー候補が創業者をどれだけ助けてくれるのか、効果的なテストにはなりませんし、プロダクトリーダーにとっては、自分がプロダクトビジョンに大きな発言力を持つという誤った印象を与えかねません。

可能な限り、創業者は外部の専門家を活用して、この種の役割のリクルートと面接のプロセスを構成する必要があります。プロセスを開始する前に明確にしておくべき重要な質問の1つは、このリーダーがプロダクトビジョンの設定においてどのような役割を果たすのか、ということです。プロダクト/エンジニアリング/デザインを専門としない創業者であれば、ビジョンを定義するよう求められるかもしれません。プロダクト、技術、デザインのバックグラウンドを持つ創業者の場合、会社が大きくなるまでは、通常、そのようなことはありません。プロダクトエグゼクティブは、通常、創業者主導のビジョンにおいて、コンサルティングや実行の役割を担います。創業者は、候補者にそれがどちらであるかを伝える必要がありますし、候補者はそれを尋ねる必要があります。この2つは、どちらもあまり行われません。

創業者は、この質問に対する答えを理解したら、適切なスキルがあるかどうかを吟味する必要があります。本当に必要なのはビジョンを実行することであるなら、面接の多くをビジョンに費やすべきではありません。もちろん、候補者はビジョンを理解する必要がありますが、あなたが本当に学ぶべきは、あなたからビジョンを受け取り、それを無数の困難な方法で実現することに抵抗がないかということです。

失敗モード 2:専門知識と必要とされるプロダクト開発のタイプは一致しているか?

企業によって、長期的な成功を収めるために必要なプロダクト戦略へのアプローチは大きく異なります。私たちの多くは、プロダクト開発には様々な種類があることを理解しています。技術やプロセスの拡張、新しいプロダクト・マーケット・フィットを見つけるための新プロダクト開発、現在のプロダクト・マーケット・フィットを強化するための新機能の開発とユーザー体験の反復、そして、既存のプロダクト・マーケット・フィットを最大数のユーザーに体験してもらうためのグロースワークなどがあるのです。伝統的にプロダクトリーダーは、どちらかの専門家になることに傾いています。例えば、私は間違いなくグロースの専門家として最も知られています。

創業者は、プロダクトリーダーを採用しようとする際に、自分たちが実際に直面しているプロダクトの課題がどのようなものなのかを理解していないことが多いのです。ネットワークビジネスでは、新しい機能よりも、より多くのユーザーを獲得することがプロダクトをより強固にするため、グロースに重点を置く傾向があります。DTCのeコマース企業やブランドは、常に新プロダクトを発表しています。SaaSビジネスでは、時間をかけて多くの新機能を立ち上げる必要がある傾向があります。常に新しい機能を作りたがるプロダクト・リーダーをネットワーク・エフェクト・ビジネスに採用しても、うまくいかない可能性が高いのです。

失敗モード 3:ニーズの変化に合わせてプロダクトリーダーを適応させることができるか?

創業者が適切なタイミングで適切なスキルを持つリーダーを採用したとしても、企業の規模が大きくなるにつれて、そのスキルの比重を変化させる必要があります。今日、プロダクトリーダーの仕事は、ビジネスが必要とするものになることです。つまり、旧来のプロダクトリーダーがスペシャリストであるのに対し、新時代のプロダクトリーダーは、スケーリング、新プロダクト開発、機能追加、グロースなど、ビジネスのニーズに合わせたポートフォリオのバランスを取り、ビジネスニーズの変化に応じて、時間の経過と共にそのバランスを大きく変えていくカメレオンである必要があるのです。これは難しいことですが、プロダクトリーダーが企業内で長期的に成功するためには、必然的にそうやって進化していかなければならないのです。

グロース志向のリーダーとして、私はEventbriteでより多くの時間をスケーリング、機能、新プロダクトの拡張作業に費やしています。

プロダクト・リーダーシップは、非常に難しいものです。創業者とプロダクト・リーダーの両方が、役割を採用する前に期待することを一致させ、組織が今どの問題に焦点を当てているかを一致させることで、その難しさをある程度解消することができます。そして、プロダクトのニーズの変化に合わせて進化していけるかどうかは、プロダクトリーダーにかかっています。ニーズがいつ変化するかを理解し、それに合わせて組織を変化させることができるのは、どちらもプロダクトリーダーなのです。

現在、レオン・ヴァインホールの「レア、フォーエバー」を聴いています。


フォローして最新情報をチェック!

データではなく、インサイトを提供する

データ戦略の重要性を苦労して知った方法

IoTプロダクトは、大量のデータを生成することで知られています。IoTプロダクトを導入する理由は、このデータを生成・収集するためであり、データそのものが価値を提供するものだと主張する人さえいます。私はそうは思いません。IoTプロダクトはインサイトを提供する必要があるのです。

この記事では、データ戦略を持つことの重要性を説明し、私がどのようにこのことを苦労して発見したかを共有します。

▼本記事の内容
  1. あなたのデータ戦略とは?
  2. データは多ければ多いほど良いのか?
  3. 常にデータ戦略でリードする
  4. 業界知識の重要性
  5. 結論 インサイトを提供する

この記事は、「Provide Insights, Not Data」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Daniel Elizalde
翻訳者: 渡辺圭祐

あなたのデータ戦略とは?

結局のところ、IoTプロダクトも、顧客から見れば他のプロダクトと変わりません。価値を提供するかしないかです。そのプロダクトが果たすべき仕事を解決するか、しないかです。

なぜ、このような話をするのでしょうか。なぜなら、企業がIoTプロダクトを構築する際に直面する最大の課題の1つは、データ戦略、つまりデータからどのように価値を引き出すかについての計画を持つことだからです。

データ戦略とは、データの収集と管理にとどまりません。プロダクトで達成したい最終目標を定義することから始まり、IoTテクノロジースタックを用いて、スタックの各レイヤーで収集、保存、分析、転送する必要があるデータを理解することができます。これは、IoT意思決定フレームワークのData Decision Areaを通過する際の重要な目的の1つです。

データは多ければ多いほど良いのか?

そうではありません。明確なデータ戦略を持つことの重要性について、あるエピソードを紹介しましょう。

私はキャリアの初期に、ある半導体製造会社向けにターンキーIoTソリューションを開発しました。顧客は(仮)ケビンといい、新しいハードウェア・チップの特性評価プロセスを自動化するために、私の勤める会社に依頼しました。キャラクタライズとは、コンピュータ・チップに想像しうるあらゆる入力を与え、その出力を記録して、エンジニアがチップを設計する際に使用した数学モデルにできるだけ近い性能を確保することを意味します。

手作業であらゆる入力の組み合わせを設定するのは不可能な作業です。しかし、もしコンピュータに入力を代行させ、すべての出力データをクラウドに保存することができれば、多くの時間を節約し、プロダクト全体の品質を向上させることができるはずです。そこで、私たちが登場したのです。

ソリューションのインストールとプロビジョニングが完了すると、ケビンと彼のチームは非常に興奮しました。プロジェクトは大成功でした。

数ヵ月後、ケビンから助けを求める電話がかかってきました。「データがあふれかえっていて、どうしたらいいか分からない」。私たちが開発したシステムには、高速のセンサーやアクチュエーターがたくさんあり、1秒間に何ギガバイトものデータを生成していたのです。そう、1秒間に。

ほんの数分システムを動かすだけで、膨大なデータが作成され、その新しい情報を理解するのに数週間を要します。可視化の問題は解決されましたが、その一方で、大量のデータを管理、分析、処理することができないという、別の(おそらくより大きな)問題を生み出してしまったのです。

常にデータ戦略でリードする

後悔先に立たずとはよく言ったものです。今日、私は、このカスタムソリューションで顧客が要求するものを提供するだけでなく、顧客の最終的な目標を理解するためにもっと良い仕事をするべきだったということがよくわかります。

誤解しないでいただきたいのですが、私の会社から見れば、この展開は成功でした。時間通りに予算内で納品し、お客様はピカピカの新システムに喜んでサインしてくれました。しかし、実際には、私たちは問題を悪化させてしまったのです。

この話は1回限りではありません。実際、私は世界中のプロダクト担当者と話をする中で、このようなことが何度も起こっているのを目の当たりにしています。企業は、お客様が本当に成し遂げようとしていることを深く掘り下げるのではなく、問題の症状に対処することに重点を置きすぎているのです。また、インサイト(洞察)ではなく、単なるデータを提供することに重きを置いている場合も少なくありません。

幸運なことに、ケビンは私の会社を信頼してくれて、データが多すぎるという問題を解決するために、プロジェクトの第2段階を手伝ってくれることになったのです。今回は、彼のチームだけでなく、会社全体のニーズを深く掘り下げることに気をつけました。

すると、彼らはデータ操作の専門知識を持たず、データアナリストもおらず、私たちが開発したシステムを引き継ぐのに必要な知識もないことがすぐにわかりました。

私はその後数カ月間、彼らと共にデータ戦略とデータ管理ソリューションを導入し、これらの懸念に対処しました。データ量を減らし、すべてのデータ(他部門からのデータも含む)をプライベートクラウドに一元化し、分析・可視化レイヤーを追加しました。その後、物事はずっとよく見えるようになりました。

この教訓は決して忘れないでしょう。

機械や “モノ “は、膨大な量のデータを生成することができます。疲れることはないので、昼も夜もデータを出し続けることができます。ノンストップです。明確なデータ戦略と、そのデータを使って価値を提供するための明確な道筋がなければ、IoTソリューションは役に立ちません。ノイズを増やすだけです。

業界知識の重要性

古いジョークにこんなものがあります。羊飼いが羊の世話をしていると、突然スポーツカーに乗った青年が立ち寄った。羊飼いが羊の世話をしていると、突然スポーツカーに乗った青年が通りかかり、「羊の数を当てたら、1匹飼ってもいいですか?羊飼いは同意する。羊飼いはそれを受け入れ、青年は最新鋭の計算機で計算を始める。「羊の数は280匹です」。

羊飼いはため息をつきながら、「あなたの職業を当てたら、羊を返してもらってもいいですか」と青年に言った。羊飼いはため息をつきながら、青年に言った。羊飼いは、「あなたはコンサルタントですね」と言う。青年は驚いて、「どうしてわかったんですか!」と聞く。「まあ、あなたは私に高額な料金を請求しているし、私がすでに知っていることを話している。そして、私の犬を取り上げているのだから、明らかにあなたは私のビジネスについて何も知らないのだ」と。

この話は、プロダクトマネージャーにも当てはまる。そのため、解決する必要のない問題を解決してしまったり、多くのデータを出すだけで価値のないものを作ってしまったりすることがよくあるのです。

今思えば、ケビンのシステム構築の際も、業界知識のなさが問題を引き起こしました。私(と私の会社)にとっては、新しい業界でした。私たちは、他の業界向けに高性能なIoTソリューションを構築する方法を知っており、ソリューション空間は非常によく翻訳されましたが、問題空間は全く異なっていました。

私たちは、お客様について、またお客様の抱える問題について、十分な時間をかけて学んできましたが、その業界の課題に対する参照枠を持っていなかったのです。その結果、部分的には価値のあるプロダクトでしたが、問題を完全に解決することはできませんでした。

では、この羊飼いとコンサルタントの物語から得られる教訓は何でしょうか。

顧客の業界を知ること。プロダクトマネジャーは、顧客のビジネスについてできる限り理解する必要があります。言い換えれば、深い業界の知識を持つ必要があるのです。

顧客とその業界の同業者が直面する課題の専門家になれば、プロダクトについてより良い質問と判断ができるようになり、ひいては顧客により多くの価値を提供することができるようになるのです。

結論 インサイトを提供する

今日の多くのIoTプロダクトは、インサイトではなく、データを生成することに重点を置いています。その結果、ソリューションの価値を活かせず、データから有用な情報を抽出するために余分な作業を強いられ、失望するお客様が続出しています。

プロダクトマネージャーは、ターゲットとする業界の最も一般的な課題を理解するなど、お客様の世界を理解する責任があります。そうして初めて、顧客のニーズを解決するための確固たるデータ戦略を構築することができるのです。

原文はiotforall.comに掲載されています。


フォローして最新情報をチェック!

プロダクトの機会を評価する

最近、私はプロダクトスペックの再発明について、また、プロダクトスペックの基礎として、重量のあるPRDから軽量の高忠実度プロトタイプに移行する理由について書きました。しかし、このようなアイデアはどこから来るのでしょうか。また、そもそもプロダクトを作りたいかどうか、どのように判断するのでしょうか。

*この記事は「Assessing Product Opportunities」を、著者の了承を得て翻訳したものです。
著者: マーティ・ケーガン(Marty Cagan)
翻訳者: 渡辺圭祐

新しいプロダクトを生み出すチャンスは、成熟したマーケットも含め、あらゆるところに存在します。なぜなら、何が可能であるかは常に変化しているからです。常に新しい技術が生まれ、新しい才能を持った人が会社に加わり、競合他社が現れては消えていきます。プロダクトマネージャーは、どれが有望でどれがそうでないか、魅力的に見えるものについては、どれを追求すべきか、どれを他の人に任せるのが最善か、どのアイデアはまだプロダクト化の準備ができていないかを判断するために、素早く機会を評価する能力が必要なのです。

多くの企業では、「このプロダクトはどうしてもやらなければならない」と上から降ってくるだけです。また、マーケティング部門がどのようなプロダクトが必要かを決定する企業もあります。

いずれの場合も、プロダクトを作るかどうかを決めるプロセスが直感に任されていることが多すぎます(もっとひどいのは、大口の顧客が「特別な」資金を提供すると言い出し、それがプロダクト化への取り組みの基礎になることです)。

通常、ビジネスサイドまたはマーケティング担当者は、解決すべき問題を記述することを目的とした何らかの形式のマーケット要求文書(MRD)を作成し、ビジネスの正当性も含めて記述します。MRDの目的は機会を説明することであり、解決策を説明することではありません。少なくとも理論的にはそうです。実際には、多くの企業はMRDを作成しませんし、作成したとしても、それはMRDと呼ばれるプロダクトスペックであることがほとんどです。MRDを作成した場合、PRDと同じような問題が発生します。書くのに時間がかかりすぎ、読まれず、必要な質問に答えられないことがよくあります。

その結果、多くのプロダクトマネジャーがMRDを無視してしまうのです。しかし、何もせず、ただプロダクトに飛びつくことの問題点は、一般的に、飛びつく前に見ることが良いということです。課題は、これを素早く、軽量で、しかも効果的な方法で行うことです。

私は、この「プロダクト機会評価」を、プロダクトマネジャーの極めて重要な責務と考えています。良いプロダクト機会評価の目的は、a) 会社が悪い機会に時間とお金を浪費するのを防ぐこと、b) 良い機会については、成功するために何が必要かを理解すること、のいずれかである。

幸いなことに、有用なプロダクト機会評価を行うことはそれほど難しいことではありません。私はプロダクトマネージャーに10の基本的な質問に答えるようお願いしています。

  1. このプロダクトはどんな問題を解決するのか?(価値提案)
  2. 誰のためにその問題を解決するのか?(ターゲットマーケット)
  3. その機会はどのくらい大きいか?(マーケット規模)
  4. どのような代替案があるのか?(競合状況)
  5. なぜ、私たちはこれを追求するのに最適なのか?(差別化要因)
  6. なぜ今なのか?(マーケットの窓)
  7. このプロダクトをどのように市場に投入するのか?(マーケット参入戦略)
  8. このプロダクトの成功/収益をどのように測定するのか?(測定基準/収益戦略)
  9. 成功のために重要な要素は何か?(ソリューション要件)
  10. 上記を踏まえた上で、おすすめは?(GoかNo-Goか)

答えるのが最も難しい質問は、たいてい最初のものです。しかし、ほとんどのプロダクトマネージャーは、そのプロダクトが解決しようとする問題は何かと尋ねると、解決しようとする問題についての明確で説得力のある説明ではなく、機能や性能のとりとめのないリストが返ってくるのが普通です。

もう一つの難しい問題は、機会の大きさを評価することです。この点については、業界アナリスト、業界団体、財務担当者、そして自分自身のボトムアップの計算から、考えを得ることができます。しかし、今は、保守的に考え、すべての機会が10億ドルのマーケットである必要はないことを認識する必要があります。

「Go-to-market」戦略は、このプロダクトがどのように販売されるかを示すものであり、プロダクト要件に非常に大きな影響を与えるため、特に重要です。

ソリューション要件は、調査中に特定された特別なニーズや要件を指します。ここでも、プロダクトを説明するのではなく、依存関係や制約を明確にします。例えば、システムインテグレーターを通じて販売されるプロダクトであれば、この種のパートナーは、提供するプロダクトの拡張性に関する要件を持っています。同様に、ブランディングやパートナーシップの要件もあります。

プロダクト組織は、良い機会を追求し、優れたプロダクトソリューションを提供することが全てです。新プロダクトを生み出すチャンスはどこにでもあります。プロダクトマネージャーは、新しいチャンスを効果的に評価し、会社にとって最も可能性のあるものを見極めることができることが重要です。また、悪いプロダクトのアイデアを追って多大な時間とコストが失われる前に、この段階で見極めることも同様に重要です。追求すべきプロダクトを正しく選択することは、企業にとって最も重要な決定の一つです。

プロダクト機会評価の結果を上層部に提示し、議論することが重要です。そして、この機会を満たすプロダクトを追求するかどうか、会社として明確にGoかNoかの判断を下すことが必要です。もし、プロダクト開発を進めることになれば、自分が何をしようとしているのか、成功するためには何が必要なのか、より詳しい情報を得ることができます。

では、CEOから「我々はこれをやっているのだから、早くプロダクトに取りかかれ」と言われたら、どうすればいいのでしょうか。まず、プロダクトをやることには戦略的な理由がある場合もあり、マーケットで成功しそうにない場合でもプロダクトを追求する必要がある場合があることを認識してください。とはいえ、このように軽量で迅速なプロダクト機会評価を行うことは、このプロダクトがどのようなものかをより良く知ることができるという点で価値があると私は考えています。しかし、少なくとも、成功するために自分が直面している問題を知ることができるのです。

マーティ・ケーガン

SVPGの創業者兼プロダクト担当パートナー


この記事の著者であるMarty Caganは、PMにとって有名な一冊である『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』の著者でもあります。PMについて興味のある方は、こちらからご確認ください。


Marty Caganの他の記事を読む👀

👉 Marty Cagan

フォローして最新情報をチェック!

MVPM: 有用なプロダクトマネージャーになるためにフォーカスしてはならないこと

この図をご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。プロダクトマネジメントが多様なスキルセットの交差点であることをエレガントに示しています。

Originally from http://www.mindtheproduct.com/2011/10/what-exactly-is-a-product-manager/

そのシンプルさゆえに、この言葉はプロダクトマネジメントのミームとして最も成功を収め、プロダクトマネジメントという学問にとって良い影響を与えてきました。

昔、若いPMの卵であった私は、この言葉によって、学習の幅を広げるために構成する必要があることに気づきました。しかし、どこに焦点を当てるべきかということについては、教えてくれませんでした。私はすべてを学ぼうとし始めましたが、今にして思えばそれは間違いでした。

この3つの円についてすべてを学ぶには、この地球上に十分な時間はありませんので、この図が役に立つとしても、結局は非現実的なものになってしまいます。

そうですね…あまり参考にならないですね

それよりも、その交点を構成するものが何であるかを知る方がずっと役に立ちます。

この交差点は、私がMVPM(Minimum Viable Product Manager)と呼んでいるもので、効果的なジェネラリストプロダクトマネージャーになるために役立つ一連のスキルや知識を定義しており、ほとんどすべての問題に取り組むことができる人たちです。

MVPMは、決して、効果的になるためにそのスキルを習得する必要があることを意味するものではありません。それはこれから始める人にとって非現実的であり、逆効果です。その代わりに、この本は、存在しないプロダクトマネジメントのコースのシラバスのようなものと考えてください。

私は、若き日の自分、新米プロダクトマネージャー、そしてレベルアップを目指す経験豊富なPMのために、この本を書きました。図と対称になるように、スキルは分野ごとのセクションに分けられています。ここでは、注力すべき3つの重要なコンセプトとスキル、そして注力すべきではない1つのスキルを取り上げています。できるだけ平易な言葉で、どの分野にも冷静に取り組もうとする人向けに書いています。


▼本記事の内容
  1. テクノロジー
  2. ビジネス
  3. ユーザーエクスペリエンス

この記事は、MVPM: Minimum Viable Product Managerを、著者の了承を得た上で翻訳したものです。
著者: Brandon Chu
翻訳者: 渡辺圭祐

テクノロジー

1. スタック

エンジニアが「スタック」と呼ぶのは、プロダクトに機能を提供する(つまりプロダクトを動作させる)ために使用されるテクノロジーのレイヤーのことを指します。お客様がランディングページを開いた瞬間から、アカウントを削除するまでの間、スタック内のテクノロジーがすべてを処理します。

最速の学習方法 – エンジニアに頼んで、スタックを高レベルで説明してもらう。各技術の名前を書き留めておく。これらの用語を素早くググれば、選択した各技術の高レベルの利点とトレードオフ、およびそれらがどのように調和して動作するかを学ぶことができます。簡単にウサギの穴に落ちてしまうので、ハイレベルなものにとどめておきましょう(検索キーワードに「トレードオフ+メリット+対(trade offs + benefits + vs)」を追加してください)。

どうすればより良いPMになれるのか?– エンジニアが何かを構築する方法について議論しているとき、専門用語が部屋中に飛び交います。スタックを知っていれば、少なくともそれについていくことができますし、時間が経つにつれて、スタックのどの深さを指しているのか理解できるようになります。一般的に、スタックの中で触らなければならない層が多いほど、あるいは層が深いほど、変更はより複雑でリスクの高いものになります。これを知ることで、問題を解決するための別の方法を再度検討するようになるかもしれません。

2. システムアーキテクチャー

スタックがどのような技術を使用しているかを表すとすれば、システム・アーキテクチャは、それらの技術がどのように構成され、プロダクトを提供するために連携しているかを表します。スタックが主に生の技術的能力であるのに対し、プロダクトのアーキテクチャは顧客が意図する動作を設計に取り入れるものである。

最速の学習方法 – エンジニアにアーキテクチャを描くように頼む。このような答えが返ってくるでしょう。

「なぜトリプルストアというものは2つしかないのか?」

まず、慌てないことです。システムの各コンポーネント(ボックス)が何をするのか、説明してもらってください。あるものはインターネットのリクエストを処理し、あるものは「ビジネスロジック」を収容し、さらにあるものは保存されるデータを保持します(シリンダー)。

次に、信じられないかもしれませんが、これはあなたにとって非常に有益なことです。

アーキテクチャを理解すると、プロダクトをシステムのように考えるようになり、それは一般的にエンジニアも同じように考えるでしょう。システム内の各コンポーネントが全体にどのように寄与しているかを理解することで、より良い意思決定やトレードオフを行うことができるようになります。

一般的に、システムの中で最も接続の多い部品は、データや機能を依存しているものが多いため、変更が最も複雑になります。ビルドを完了するために変更しなければならないコンポーネントが多ければ多いほど、依存関係も増え、プロジェクトの実行は困難になります。

大企業では、扱うコンポーネントの数は、対話が必要なチームやグループの数と同義であることが多く、プロジェクトを実行するために必要な調整も多くなります。

3. データモデルとそのAPI

データモデルは、プロダクトが使用する情報を整理し、その情報の断片が互いにどのように関連しているかを標準化するものです。「情報」とは、ユーザープロダクトクレジットカードなどのことを指し、これらを総称して「エンティティ」と呼びます。これらのエンティティは、特定の構造化された方法で互いに関連付けることができます。例えば、ユーザーは多くのプロダクトを持つことができますが、クレジットカードは1つしか持つことができません。

データモデルは、特定のエンティティが特定のコンポーネントに「住んでいる」という点で、システムアーキテクチャと密接に関係しています。ユーザーモデルはコンポーネントAにあり、商品データもそうかもしれませんが、クレジットカードはその機密性から、コンポーネントBに置かれます。しかし、その中でどのユーザーがクレジットカードを保持しているかを知る必要がある場合、データを共有するためにコンポーネントAからコンポーネントBに接続する必要があります。それはより難しく、それを達成するためにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が必要になります。

APIはデータモデルの上に構築され、任意の2つのコンポーネントが互いに会話し、その基礎となるモデルに関する情報を交換する方法を表します。重要なのは、APIによって外部のコンポーネントと対話できるようになることです。GoogleマップからUberを呼び出すとき、GoogleマップアプリはUberのコンポーネントと会話しているのです。ほとんどのアプリケーションには、パブリックAPIとプライベートAPIがあり、それぞれインターネット上の誰でも使えるものと、指定した人だけが使えるものがあります。公開APIを知ることは、あなたのプロダクトが外部とどのように相互作用できるかを理解するために重要です。

最速の学習方法 – まず、パブリックAPIについて理解することに集中すべきです。これらは通常簡単に見つけることができ、多くの場合、あなたのウェブサイトの開発者向けドキュメントに掲載されています。それらを見たとき、コードを見ることになるので、あなたのバックグラウンドによっては、それが怖かったり、そうでなかったりするかもしれませんが、ドキュメントが中途半端であれば、それは関係なく、問題なく読むことができるはずです。APIを研究することの良さは、APIが基本的なデータモデルのほとんどを表していることが多いので、一石二鳥であることです。

どうすればより良いPMになれるのか?– データモデルを知ることは、より良いプロダクトを作るためにどのような情報を利用できるか、そしてその情報にアクセスすることがどれだけ難しいかを知る能力を拡大します。APIを知ることは、パートナーやサードパーティの開発者があなたのアプリケーションから取得できる情報の種類を理解し、どのような種類の統合が可能かを理解することを意味します。ソフトウェアの拡張性は、最も価値のある特性の1つであり、他のプロダクト(あなたの顧客が毎日使っている可能性のあるプロダクト)とうまく連携できることは、すぐにテーブルステークスとなりつつあるのです。

4. 注力すべきではない分野

プログラミング。誤解しないでください、私はプログラミングが好きですし、より良くするのに役立ちますが、高度に技術的なプロダクトでない限り、効果的なPMになるためにプログラミングは必要ありません。もしあなたがPMとしてコーディングをしていることに気づいたら、実際にレバレッジの高い仕事をしているのか、他に何をすべきなのか、自問自答する必要があるかもしれません。とはいえ、少なくとも1つのアプリを作り、本番環境に出荷した経験は、非常に価値があり、楽しいものだと思います。

ビジネス

1.プロジェクトマネジメント

退屈ですよね。私も嫌いですが、本当に大切なことです。プロジェクトをうまく運営できなければ、良いPMになることはできない。その通りです。

最速の学習方法 – これは難しい。効果的なプロジェクトマネージャーになるには、多くの経験と時間が必要です。本を読めばいくらでもわかるが、結局は人間の行動の問題なのです。一緒に仕事をすることになる様々な性格について学ぶには時間がかかりますし、どのようにアプローチするかについてのアドバイスも、その人の性格に左右されることが多いのです。

とはいえ、学習曲線を加速させるために投資できるソフトウェア特有のものがいくつかあります。

  1. プロダクト開発の基本を理解し、チームと共感できるようにする。バージョン管理(Git)、共同プログラミング(GitHub)、品質保証プロセス、そして、いつどのようにコードがユーザーにデプロイされるのかについて、高いレベルで学ぶことができます。
  2. ソフトウェアチームを悩ませる一般的な問題と、それを解決するために他の人々が開発したプロセスについて学ぶ。アジャイル、スクラム、カンバンといったものを目にすることがあるでしょう。自分の会社が使っているかどうかに関わらず、それらのアプローチの背後にある哲学を学ぶことには価値があります。
  3. 会社での意思決定を理解し、ステークホルダーをマッピングする。ステークホルダーとは、顧客、上司、チームメンバーの上司、他のPMのことです。プロジェクトがどのような状況、方向性で進んでいるのかを、ステークホルダーが気にするレベルで全員が把握できるような方法を見つける(これも自分で見つける必要があります)。

どうすればより良いPMになれるのか?– チームとより多くのことを成し遂げられるようになり、人々はあなたと一緒に働くことを楽しむようになる。なぜなら、誰もが管理の悪いプロジェクトを嫌うからです。

2. インパクトのモデル化

測定されないものがうまくいくことはほとんどありません。すべてのプロダクトは、ユーザーの成長、機能の採用、収益など、最終的な成功に結びつく定量的な目標を持っている必要があります。

あなたのチームが次に作ることができる最も高いレバレッジのものを議論しているとき、そのプロダクトがこれらの測定基準でどのようにダイヤルを動かすかのモデルを開発できることが重要です。

最速の学習方法-スプレッドシートを使うときが来たのです。良いモデルは、2つのことを明確に示しています。

プロダクトのユニットエコノミクスと、それを生み出す仮定

  • 新規顧客の獲得にいくらかかるか?
  • プロダクトの提供にはどれくらいの費用がかかるか?
  • コンバージョンは目標の針路をどれだけ変えるのか?

予測される影響とそれを生み出す前提条件

  • このプロダクトは今後1年間でどれだけの効果をもたらすか?次の3年間は?
  • このプロダクトを強化し、サポートするために何人の従業員が必要か?
  • コスト削減、インフレ、競争などの市場原理を長期的にどのように考慮するのか?
偽物のモデル成長率が大好きだ

どうすればより良いPMになれるのか?– プロダクトのモデルを構築することは、直感的な仮定をテストし、プロダクトが十分な可能性を持ち、それを実行する価値があることを確認するための素晴らしい方法です。また、ステークホルダーが納得する形でプロジェクトを正当化したり、他のプロジェクトとの機会損失を簡単に比較できるようになるため、仕事もやりやすくなります。

3. データ収集と分析

迅速な意思決定を行うためには、独自にデータを収集することが不可欠です。なぜなら、分析に携わったことのある人なら誰でも、インサイトはデータの反復的な探索によって得られるものであり、自分で考えた完璧なレポートではないことを知っているからです。

また、重要な時にデータに基づいた意思決定を行う能力も低下させます。ほぼ毎日、あるシナリオでプロダクトがどのように振る舞うべきかという決定が飛び込んできますが、決定をサポートするデータがあれば、あなたとあなたのチームは正しい方向に向かっていると自信を持つことが簡単にできます。

最速の学習方法 – 目標はデータの独立性。SQLクエリーを書く必要があるか、ドラッグ&ドロップのインターフェースを使うかは、会社のデータインフラに依存します。それが何であれ、利用可能なツールを学ぶために投資する必要があります。ググってみてください。

どうすればより良いPMになれるのか?– データに簡単にアクセスでき、それを快適に利用できれば、より多くのデータを利用でき、より反復的な作業ができるようになります。次に何を作るかを検討しているときでも、発売したプロダクトがどうなっているかを見ているときでも、データを重要なインプットとして意思決定に利用する反射神経が身につき、その結果、より良いプロダクトが生まれるのです。

4. 注力すべきでない分野

経営学部の出身者から言わせてもらうと、戦略的なビジネスケースや3年計画など、MBAの成果物を作って時間を浪費しないでほしいのです。私はそれをデタラメとまでは言いませんが、ソフトウェアで成功するための方法ではありません。ビジョンを理解し、それを達成するために解決すべき問題を見つけ、それを解決するための仮説を立て、実際の顧客とできるだけ早くそれを検証する。同じことを繰り返す。

ユーザーエクスペリエンス

1. プロダクトのデザインパターンを知る

ほとんどのプロダクトは、計画的かどうかにかかわらず、時間の経過とともにデザインパターンを発達させます。パターンとは、プロダクトの中で同じビジュアルやインタラクティブなコンポーネントを一貫して使用することです。ボタンのテキストはすべてフォントサイズ25px、フォームのフィールドは3つ以内、エラーが発生するたびに爆発音を鳴らし、ユーザーに詳細をメールで通知する、これらはすべてパターンです。

ランダムな例、thenextweb.comのマテリアルデザイン

プロダクトのパターンを知ることは、ユーザーがプロダクトをどのように頭の中でマッピングしているかを理解し、時間をかけて効果的に新機能を与えるには非常に重要です。いつもは「新しい機能を追加する」という緑色のボタンをユーザーに与えているのに、今回は「あなたの心を揺さぶる」というオレンジ色のボタンに切り替えたら、ユーザーは混乱するでしょう。

プロダクトが成長するにつれ、パターンの一貫した使用はさらに重要になります。なぜなら、パターンを使用することで、チームは互いに独立して作業しながらも、まとまりを感じるプロダクトを構築できるからです。

デザインパターンはまた、スタイルガイドやコンポーネントなどのテクニカルパターンと調和して開発されるのが一般的です。

最速の学習方法 – デザイナーは、これらのパターンを熟知しているはずですし、スタイルガイドへのリンクも教えてくれるはずです。また、フロントエンドエンジニアに相談すれば、パターンライブラリへのリンクを教えてくれるでしょう。

どうすればより良いPMになれるのか?– 簡単に言うと、パターンに基づいてプロダクトを設計することは、はるかに簡単で迅速です。パターンによって、あなたのチームが過去に行った設計上の決定、つまり、顧客にとって使いやすいプロダクトを実現するための決定の上に立つことができるのです。もし、既存のパターンを壊す必要があるのなら(もちろんそうする正当な理由もありますが)、プロダクトの長期的な健全性のためにそれが必要であるという正当な理由を用意しておいてください。

2. ユーザー・エクスペリエンス・リサーチの実行方法を知る

PMは顧客の声であることが前提です。ユーザーを理解しなければ、優れたプロダクトを作ることはできません。一人の人間に直接インタビューすることから、何百万ものユーザーの行動を定量的に分析することまで、優れたリサーチの基本を理解することは、あなたの仕事にとって不可欠なことなのです。

最速の学習方法 – 効果的なリサーチは非常に大きな分野なので、ウサギの穴に行かせるのではなく、次のことを理解することに集中することをお勧めします。

  • サンプルサイズと統計的有意差の計算方法を理解する。
  • サンプルを正規化する方法と、それがなぜ重要なのかを理解する。
  • 調査やインタビューにおいて、偏りのない、誘導的でない質問をする方法を理解する。
  • 結果を統合し、誤った結論を出さないようにする方法を理解する。

どうすればより良いPMになれるのか?– 一貫して頻繁にプロダクトを顧客にテストすることで、プロダクト開発における当て推量(およびリスク)の多くを取り除くことができます。プロジェクトが始まる前から、解決しようと考えている問題が本当にあるのかどうかを検証するために、テストを行うべきです。デザインと開発の段階では、プロダクトのデザインが使いやすく、顧客の問題を解決する可能性が高いかどうかをテストする必要があります。リリース後は、解決したかった顧客の問題が解決されたかどうかを検証する必要があります。

3. アイデアをプロトタイプ化する方法を知っておく

プロトタイピングとは、アイデアを効果的に表現するためのビジュアルモックアップを作成できることを意味します。プロトタイプは、以下のことを実現するのに十分なものでなければなりません。

プロダクトコンセプトを明確に伝える

プロダクトの体験を口頭や文章で伝えることは非常に困難です。プロトタイプは、人々が見ることができ、できれば対話できるもの(コードなしで可能)であれば、10倍以上の効果があります。

これには2つの理由があります。第一に、顧客が実際に操作するものという観点からプロダクトを明確にしなければならないこと、第二に、人間は本来視覚的に考えるものなので、プロトタイプは、チームの全員が同じ言葉で話し、それぞれの視点を効果的に伝えることができるように、競争の場を平準化するためです。

デザインの遅れや欠落がある場合、チームのブロックを解除する

多くのプロジェクトでは、プロダクトのデザインが開発に先行していることが重要です。デザイナーが「開発の先を行く」ことを心がけるのは、開発者が特定の方向性でプロダクトを作り始めると、その切り替えコストが格段に高くなるためです。

プロダクトデザインの多くは反復的で、開発と並行して行われるため、挫折(例えば、ユーザー調査によってデザインが効果的でないと判断された場合など)があると、デザインはすぐに遅れをとることになります。そんなときこそ、PMは腕まくりをしてリードデザイナーの「デザインインターン」となり、エンジニアが開発を続けられるよう、ピクセルのプッシュやモックアップの出荷をサポートしなければならないのです。

最速の学習方法 – これを正当化するために時間を費やすことはしませんが、Sketchを使い始めるといいでしょう。

どうすればより良いPMになれるのか?– プロトタイプを作成し、自分の考えていることを人に見せることで、相手が理解していると思い込むのではなく、自分のアイデアに対してチームからより良いフィードバックが得られるようになり、誤ったコミュニケーションによって無駄な労力を費やすリスクを減らすことができるのです。また、たまには実際に目に見えるものを作ってみるのもいいものです。

4. 注力すべきでない分野

優れたビジュアルデザイナーであることにこだわらないことです。洗練されたインターフェイスを作る能力は、プロダクトデザインという深い技術を学ぶためにキャリアを積んできた人にとっては、冗長で無力なものです。あなたがデザインに精通しているのであれば別ですが(もちろん、そういう人もいます)、おそらくあなたは自分が優れていると思っているだけで、実際は最低なのです。

MVPM

このようなことを学ぶことを矮小化したいわけではありません。簡単なことではありませんし、多くの時間がかかるので、少しずつ取り組んで、学ぶことを楽しんでください。この記事が、あなたが優れたプロダクトマネジャーになるための探求において、少しでも効率的であることを願っています。


他におすすめの記事はこちらです。

プロダクトマネジメントのブラックボックス

7 Heuristics for being a Product Director

The Time Value of Shipping


Brandon Chuの他の記事を読む👀

👉 Brandon Chu

フォローして最新情報をチェック!

プロダクトとは何か?

この記事は、へそ曲がりのようなものではないことをお約束します。 これは、重要かつ基本的なトピックに関する非常に現実的な記事となります。

*この記事は「What is a Product?」を、著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Marty Cagan
翻訳者: 渡辺圭祐

権限を与えられたプロダクトチームに関する以前の記事が人気を博した結果の1つは、プロダクトに関して混乱しているいくつかの重要な領域が明らかになったことです。

プロダクトとは何かという一般的な話題には多くの重要な側面がありますが、この記事では、真に機能横断的なプロダクトチームであることが、単なる業界の流行語ではなく、なぜ非常に重要なのかについてお話したいと思います。

少し背景を説明すると、プロダクトが初めて説明されたとき、私は非常にエンジニアリング中心の会社(HP Labs)でエンジニアをしていました。 もしあなたが何らかのエンジニアでないなら、一般的に頭でっかちだと思われていました。 デザイナーでさえ、自分のことを「ヒューマンファクターズエンジニア」と呼んでいました。

私がテックリーダーとしての指導を受けていたとき、エンジニアリング・マネージャーは、実世界に向けたプロダクトを作るときにはエンジニアリングだけでは不十分であることを理解するよう求めました。 彼はホワイトボードに、非常にシンプルですが重要な方程式を書きました。

プロダクト=カスタマー×ビジネス×テクノロジー

そして、成功するテックプロダクトは、顧客の課題を解決し、我々のビジネスの課題を解決し、技術の課題を解決しなければならない、と説明したのです。

この方程式は、テックプロダクトにおける4つの大きなリスクに対応しています。ユーザビリティ・リスクへの対応は、顧客に対するソリューションの一部であり、実現可能性リスクへの対応は、技術に対するソリューションの一部であり、事業実現性リスクへの対応は、事業に対するソリューションの一部なのです。 そして、価値リスクは、この3つすべての関数です。

さらに、この3つのうち1つでも対処できなければ、結果(プロダクト)は失敗に終わることを指摘しました(数学が苦手な人のために、ゼロの何倍でもゼロである)。

そして、ビジネスを解決するプロダクトマネージャーの役割、顧客を解決するデザイナーの役割、そして、技術を解決するエンジニアの役割について、私はすでにかなり熟知していると説明しました。

さらに、この3つの領域は深く絡み合っていると説明しました。

技術的な決断は、デザイナーができることに(良くも悪くも)劇的な影響を与えます。 同様に、デザイン上の決定は、ビジネス上の考慮事項に大きな影響を与える可能性があります。 そしてもちろん、ビジネス上の制約は、デザインやテクノロジーの選択肢に影響を与える可能性があるでしょう。

私が技術責任者になったことで、彼は私に、私の仕事はもはやエンジニアリングだけではない、と強調しました。 私は、プロダクト・マネージャーやデザイナーと協力し、効果的な解決策を見出さなければならないのです。

願わくば、ほとんどの皆さんにとって、これが「プロダクト101」のすべてだと思います。 いずれにせよ、もうお分かりだと思います。 しかし、プロダクトの世界にいる多くの人は、そうではないと言えるでしょう。

私は常に、ビジネスモデルが全てだと考えているスタートアップの創業者やプロダクトマネージャーに会っています。 彼らは、大金を稼ぐことが確実な美しいビジネスを示す、すべて記入された(しかし検証されていない)ビジネスモデルのキャンバスを持ってきます。 価格設定、コスト構造、価値提案、市場参入戦略など、すべて考え尽くされています。 必要なのは、アプリを作成できる代理店の名前だけです。 今書いたことが大げさであればいいのですが。

また、私はあまりにも多くのデザイナー、そして一部のデザインリーダー(そして少なからぬプロダクトマネージャー)に出会いますが、プロダクトはユーザー体験がすべてだと考えています。 彼らは、顧客を満足させれば成功すると信じているのです。 そんな簡単なことならいいのですが。 彼らは、収益、コスト、販売、マーケティング、法律、プライバシーなど、経済やその他のビジネス上の考慮事項について、関心があるふりをすることさえしません。

また、プロダクトマネジメントにもデザインにも意味を見出さないエンジニアがたくさんいることも周知の事実です。

プロダクトマネジメント、ユーザー・エクスペリエンス・デザイン、エンジニアリングの各リーダーが、このプロダクトの基本的な方程式を深く理解し、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアにも積極的に指導することが絶対に必要です。

この点を強調するために、ここではっきりと言います。

もし、あなたの会社のCEOが、プロダクトマネージャーの一人または数人が、ビジネスの本当の仕組みを全く理解していないと考えたら、その人は信頼され、力を与えられる望みはほとんどないでしょう。 CEOは、この点に関してプロダクトマネージャーを判断しており、もし彼らがナイーブであるとか、もっと悪いと思われたら、その認識を覆すのは非常に難しくなるでしょう。 ですから、私は新任のプロダクトマネージャーには、絶対に下調べをする必要があると、かなり執拗に言っています。

さらに、もしCEOがプロダクト、デザイン、エンジニアリングのリーダーの一人または複数を、ビジネスの解決に何が必要かを理解していないと見なすなら、そのリーダーは重要な決定がなされるときにテーブルにつくチャンスはほとんどないでしょう。

だから、ビジネスがすべてだとか、顧客がすべてだとか、技術がすべてだとか、そんなことは言わせません。 プロダクトはそれよりも難しいのです。 この3つがすべてなのです。

この記事の原稿を手伝ってくれたSVPGパートナーのクリス・ジョーンズに特別な謝意を表します。


この記事の著者であるMarty Caganは、PMにとって有名な一冊である『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』の著者でもあります。PMについて興味のある方は、こちらからご確認ください。


Marty Caganの他の記事を読む👀

👉 Marty Cagan

フォローして最新情報をチェック!

プロダクトマネージャーのキャリアパス

プロダクトマネージャーの仕事もさることながら、そのキャリアパスもまた曖昧なものです。プロダクトマネージャーを目指すなら、どうすればいいのか?そして、プロダクトマネージャーという仕事のゴールは何なのか。世間では「プロダクトマネージャー」とだけ言われていますが、プロダクトマネージャーにもいろいろな種類があり、それぞれ専門的になることができます。今回は、プロダクトマネージャーのキャリアパスの全体像、専門性、ステップアップの方法、ヒエラルキーなどを紹介する記事をリストアップしてみました。

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。
私のプロダクトマネジメントに関する記事のリーディングリストはこちらから参照ください。👉 Glasp – Product Management

準備ができたら、さっそく始めましょう。

▼本記事の内容
  1. プロダクトマネジャーのキャリアパス
  2. プロダクトマネジャーの専門性
  3. (アソシエイト) プロダクトマネージャーになるには
  4. プロダクトマネージャーからシニアプロダクトマネージャーへ
  5. シニアプロダクトマネージャーからプロダクトリーダーへ
  6. プロダクトマネージャー – 階層

この記事はProduct Manager’s Career Pathを翻訳したものです。
著者・翻訳者: 渡辺圭祐

プロダクトマネジャーのキャリアパス

プロダクトマネージャーのキャリアパスとは? (What is the Product Manager Career Path?)
https://www.productplan.com/learn/product-manager-career-path/
By: ProductPlan (@ProductPlan)

画像1
Source: What is the Product Manager Career Path?

アソシエイトプロダクトマネージャー
アソシエイト・プロダクトマネージャーは、プロダクトマネージャーが行うすべてのことを行いますが、その規模は小さいです。プロジェクトの優先順位を決める必要はありますが、プロダクト戦略やロードマップを定義する必要はありません。

この役割では、ユーザーへの共感を示し、問題発見と問題定義の能力をアピールする必要があります。また、他の人と協力し、あらゆる方面の話に耳を傾けることができることを示す必要があります。

仕事中は、関係するすべてのステークホルダーにプロダクトの状況を伝える必要があります。ビジネスの目標と顧客のニーズを調整し、利益とのバランスを保つ必要があります。

アソシエイト・プロダクト・マネージャーは、「これは我々がやっていることで、なぜそれをやっているのか」という質問に絶えず答えています。彼らは、成功を決定するための指標を頼りにしているのです。

採用担当者は、候補者がユーザーへの明確な興味と情熱を持っていることを望んでいます。CS、ビジネス、その他関連分野の学士号を取得している傾向があります。

💡 プロダクトマネージャーになるには?
「上記の活動を完全に把握する必要があります。あなたは、プロダクトセットに関する「頼りになる」人物としての地位を確立していることでしょう。さらに、エンジニアリング、UX、マーケティング、その他のチームと優れた協力関係を構築している必要があります。」

プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーは、他のチームメンバーにとって「頼りになる」存在です。戦術的な動きやプロセス、人間関係を聞かれることが多いでしょう。そして、あなたはデータによってよく知られているはずです。このポジションに就くには、ある程度の専門的な経験と、コラボレーション、優先順位付け、コミュニケーションなどのスキルが必要です。

💡 シニアプロダクトマネージャーになるには?
• 経営陣が自信を持って仕事ができるように、あなたのプロダクトによる顧客の利益を示し、目標達成に貢献できれば最高です。そして、具体的なユーザーの問題を定義し、それをプロダクトの指標やビジネスゴールと結びつけることができることです。そして、すべてが適切に運用され、スムーズに動く必要があります。
• キャリアを加速させるために忙しいからといって、反応的なタスク/質問ではなく、戦略的な意思決定に多くの時間を割けるようになると良いでしょう。

シニアプロダクトマネージャー
シニアプロダクトマネージャーの多くは、アソシエイトプロダクトマネージャーやプロダクトマネージャーと同じ職務を担当します。しかし、シニアプロダクトマネージャーの職務は、より影響力が強く、より可視性の高いプロダクトです。そして、彼らはより広いプロダクトプロセスを見ています。

シニアプロダクトマネージャーは、自分自身で検討する能力を示す専門的な経験を持っているべきであり、それは相互依存的な要素を持つ説明可能でデータ駆動型の意思決定であるべきです。

シニアプロダクトマネージャーは、経営者やその他の主要なステークホルダーを巻き込みながら、依存関係にあるチームとプロダクト戦略を共有する必要があります。

言うまでもなく、シニアプロダクトマネージャーは、プロダクトおよび市場に関する深い知識を持っている必要があります。

そして、シニアプロダクトマネージャーは、アソシエイトプロダクトマネージャーやミッドレベルプロダクトマネージャーを指導することができます。

💡 プロダクト・ディレクターになるには?
2つの要件を満たす必要があります。ひとつは、他のプロダクトマネジャーにとって重要なアドバイスの源となることです。そしてもうひとつは、シニアリーダーシップに対してプロダクトチームを擁護する存在になることです。

プロダクト・ディレクター
プロダクト担当ディレクターには、リーダーシップの経験が必要です。そして、役員へのプレゼンの経験や、以前行った仕事をするためのチーム作りの能力が必要です。

プロダクトのディレクターは、より良いプロセスを作り、チーム全体のパフォーマンスを上げ、組織全体のコンセンサスを構築することに重点を置いています。そして、定期的に社内のメンバーと会い、物事が起きていることとその理由、プロダクトに必要なものなどを説明するのです。そのため、この役割はデータに依存します。

市場の動向、最新情報、競合の動き、新プロダクトのベストプラクティス、プロダクト開発プロセスの改善方法など、プロダクト担当ディレクターは多くの市場調査を行っています。

プロダクト・ディレクターは、他のプロダクト・マネージャーのメンターでもあります。プロダクトマネージャーのメンターとしてだけでなく、プロダクトチームの強みを見つけ、それを彼らのために発揮する必要があります。

そして、会社や市場のエグゼクティブレベルで起こっていることをすべてチームが理解できるようにするのです。

プロダクト担当副社長
プロダクト担当副社長は、プロダクト組織のハイレベルなサポートリソースであり、プロダクトビジョン全体とそれが組織にどのようにフィットするかについて責任を負います。

プロダクト担当副社長の仕事と責任は、プロダクト組織の予算を管理し、プロダクトに関する戦略的な決定がビジネスゴールと一致していることを確認し、社内政治や内紛からチームを保護することです。

通常、プロダクト担当副社長は、1年後にチームに何が必要かを検討することに時間を費やします。そして、その目標を達成するために、チームを組織し、戦術的に行動させる必要があります。

プロダクト担当副社長は、ほとんどの場合、プロダクト管理における10年以上の実務経験が必要です。そして、少なくとも5年以上、開発チームと仕事をし、管理し、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアを率いてきたことが必要です。

チーフ・プロダクト・オフィサー
チーフ・プロダクト・オフィサー(最高プロダクト責任者)は、通常、プロダクトリーダーとして多くのプロダクト担当副社長を管理する人か、プロダクト担当副社長の単なる拡大版のどちらかです。

チーフ・プロダクト・オフィサーは、プロダクトポートフォリオに目を配り、予算、人員リソース、リサーチが適切に投資され、ROIが最大化されることを確認します。

3年から5年の時間枠の中で戦略的な意思決定をするのです。そして、チームを鼓舞するためにプロダクト目標を設定するのです。

組織全体のパフォーマンスを上げるために、人を指導し、動機づけをする責任があります。この役割で成功するためには、客観的な基準に基づいて開発、測定、改善する必要があります。

この役割の経験要件は様々ですが、通常10年以上から15年以上、あるいは20年以上となります。

プロダクトマネジャーの専門性

専門化が進むプロダクトマネジメント (The Growing Specialization of Product Management)
https://www.reforge.com/blog/product-specializations
By: Adam Fishman (@fishmanaf) and Keya Patel (Linkedin @keyapat)

PMには専門分野があるにもかかわらず、多くの人はPMには標準的なタイプがあり、その役割は同等であると考えています。これは、PMのキャリアが浅かったり、PMへの理解が浅かったりするために起こることです。しかし、PMの役割がすべて同じだと考えてしまうと、問題が生じてきます。

1.ツールが伝わらない: PMは、どのような問題に対しても、自分が使い慣れた同じツールやアプローチを適用します。

2.地道な努力の積み重ね: PMにとって新しいプロダクト分野である場合、PMは苦労し始める可能性があります。

3. 集中の低下: PMの役割が均等であれば、どこに焦点を合わせればいいのかがわかりません。その結果、プロダクトマネジャーの学習は通常遅くなります。

4. 才能の混乱: 具体的な専門分野やスキルを確認せず、他組織での実績に基づいてPMを採用します。

5. 競合する同僚: 企業や採用担当者が、頭の片隅でPMを比較します。

PMの役割はそれぞれ異なりますが、どのPMにも共通して求められるスキルがあります。それは、通常、

「分析、ダッシュボードや主要なコールアウトの解釈、指標や財務目標の理解・設定、開発者・データサイエンスとの協働などに関する技術的・データ的な快適さ。」
コミュニケーションとコラボレーション: 部門横断的なチームを動機付け、目標に向かって導くと同時に、他者(他のチームや経営幹部など)からの賛同を得る。」
「曖昧なプロダクト・顧客ニーズを分解し、適切な解決策を見つけるために実験や反復を行う問題解決力。」
「エンドユーザーと共感し、耳を傾け、共創して、既存のペインポイントを解決したり、新しいペインポイントを特定するユーザー理解。」
「チーム、プロダクト、組織にまたがる多くの可動部分を考慮に入れながら、より大局的な組織、ユーザー、投資家の目標に集中するための戦略的思考。」

そして、PMの専門性には4つのタイプがあります。

画像2

フィーチャー・ワーク
PMの仕事の大半はフィーチャー・ワークです。通常、プロダクトマネージャーはこの分野でキャリアをスタートさせます。

グロースワーク
グロースプロダクトの仕事は、既存の市場をより多く獲得することで価値を創造し、獲得します。」

スケーリングワーク
「スケーリングは、プロダクトチームが機能、成長、プロダクト・マーケット・フィット拡大作業にわたって新しいものを出荷する能力を維持することを保証します。」

プロダクト・マーケット・フィットの拡大
「プロダクト・マーケット・フィットの拡張は、隣接市場、隣接プロダクト、またはその両方に拡張するために、非増加的な方法でプロダクト・マーケット・フィットの上限を増やすことです。」

最後に、これらのプロダクトワークの各領域が、PMのスペシャリティにどのように直接マッピングされるかを見てみましょう。

フィーチャー・ワーク → コアPM
「プロダクトの特徴的な作業を主に行うプロダクトマネージャーはコアPMと呼ばれます。コアPMは、顧客のペインポイントやニーズを解決することにレーザーフォーカスしています。」

グロースワーク → グロースPM
「グロースPMは通常、獲得、CAC、サインアップ、無料トライアル開始、コンバージョン/購入率、マネタイズ、ARPU、リテンションなどのビジネス指標を通して、プロダクトと顧客の旅にレーザーフォーカスしています。」

スケーリング → プラットフォームPM
「プラットフォームPMは、プロダクトワークのスケーリングにフォーカスしています。プラットフォームPMは、組織の継続的な成長のために、社内の顧客/ニーズに焦点を当て、社内のプラットフォームやサービスの拡張を行います。」

プロダクト・マーケット・フィットの拡大 → イノベーションPM
「イノベーションPMは、プロダクト・マーケット・フィットに到達し、それを拡大するための新しい機会を特定し、実験することにレーザーフォーカスしています。」

(アソシエイト) プロダクトマネージャーになるには

HubSpotのPMが語る、プロダクトマネージャーになるための方法 (How to Become a Product Manager, Straight From a HubSpot PM)
https://blog.hubspot.com/service/become-product-manager
By: Scott Judson

(アソシエイト)プロダクトマネージャーになるには、創造的な問題解決能力、戦略的な考え方、協調的な姿勢、卓越したコミュニケーション能力、高い共感力などのスキルが必要です。しかし、これらのスキルは経験を通じて成長させることができますので、それを高めていく姿勢が必要です。

まだプロダクトマネージャーになっていない人は、基本的にプロダクトマネージャーになるには2つの方法があります。1つ目は、今働いていない会社でプロダクトマネージャーになる方法です。おそらく、こちらの方法の方が一般的であることは想像がつくと思います。では、その手順をみていきましょう。

1. 役割について調べ、現役のプロダクトマネージャーと話をする

リンクトインで既存のプロダクトマネージャーとつながったり、YouTubeでプロダクトマネージャーが自分の役割を説明しているビデオを見たりしてもよいでしょう。そうすることで、その仕事に何が必要なのか、また、プロダクトマネージャーを募集しているのはどのような企業なのか、よりよく理解できるようになるはずです。

2. プロダクトマネジメントの認定コースを受講する

PMの役割は外から見ると複雑そうで、それについて調べるのも大変だと思うので、プロダクトマネジメントのコースを受講することをお勧めします。

また、資格を持っていれば、他の候補者の履歴書と差をつけることができます。

3. サイドプロジェクトを立ち上げ、失敗も含めて記録する

サイドプロジェクトを始め、それを最初から最後まで監督することは、あなたにできる最良のことです。プロジェクトを最初から最後まで管理したのですから、プロダクトの開発から発売までのライフサイクルを管理することができます。プロジェクトを通してどのように問題を解決したかを示すだけでなく、失敗や間違いを伝えることで、あなたがそれを学び、プロダクト開発のライフサイクルを管理するスキルを持っていることを証明することができるのです。

4. コミュニケーションとストーリーテリングのスキルを磨く

プロダクトマネジメントには、高いインパクトを与えながらアイデアを簡潔に伝えることができるよう、強いコミュニケーション能力とストーリーテリング能力が必要です。

5. 技術的なバックグラウンドを身につける

プロダクトマネージャーは通常、技術系企業で働くため、初歩的な技術的バックグラウンドを持っていると良いでしょう。そして、この知識を得ることで、必要に応じて新しい技術的なことを学ぶ意欲があることを将来の雇用主に示すことができます。

6. 該当する場合は、アソシエイト・プロダクト・マネジメント・プログラムに応募する

アソシエイト・プロダクト・マネジメント(APM)プログラムは、新卒や早期キャリアのプロフェッショナルに、プロダクトマネジメント分野に参入する機会を提供します。未経験者でも応募可能です。ポジションは一時的なものですが、多くのプログラムは企業内の正社員につながるものです。

7. PM職への応募

APMプログラムに合格した場合は、このステップを行う必要はありません。しかし、キャリアが進んでいる方やAPMプログラムに参加しなかった方は、今こそPMのポジションに応募する時です。小規模な組織から始めて、より大きな企業や有名な企業へとステップアップしていくことをお勧めします。

2つ目の方法は、現在働いている会社でプロダクト・マネージャーになることです。あなたの会社にプロダクト・マネジメント・チームがあれば、このステップを踏むことができます。

1. 仕事でエンド・ツー・エンドで自分の担当できるプロジェクトを見つける

プロダクトマネージャーの認定コースを受講しているのであれば、その例になります。コースだけでなく、会社でも、自分が最後までオーナーになれるプロジェクトがあるかもしれません。あるいは、自分でビジネスを始めることもできます。ただ、大事なのは、新しいアイデアを試して失敗してもいいように、問題設定に取り組むことです。プロダクトマネージャーへの道程で、役に立つヒントを拾ってください。

2. 職場のサイドプロジェクトとして、ボランティアで問題解決に取り組む

企業は、スタートアップ企業であろうと大手組織であろうと、最も困難な課題に取り組む権限を労働者に与えています。本業とは関係のない課題に取り組む自主性や時間がない場合は、自分と上司がやりがいを感じられる課題を見つけるまで模索を続けましょう。

問題を特定したり、チームメイトや上司に問い合わせたりすることも可能です。通常の業務に加え、自分が所有するソリューションの研究、テスト、実装などの雑務を引き受けましょう。

3.困難な問題に取り組み、調査を行い、部門を超えたコラボレーションを主導する実績を作る

会社でも、資格取得コースでも、困難な問題はたくさんあります。プロダクトマネージャー候補として、協働することが必要です。そして大切なことは、取り組んでいるプロジェクトや実験を記録し、発見したことを記録し、学んだことを活かして、プロダクトチームとのネットワーク作りを始めることなのです。また、現在の会社以外でPMのポジションを求めている場合は、個人のブログやリンクトインのプロフィールに自分の成果を記録しておくとよいでしょう。

4. 会社のPM職の募集に応募する

上記のような経験や実績があれば、あなたの会社のプロダクトマネージャーの求人に応募することができます。見込み客や顧客と気楽に話ができる、応募するプロダクトの役割について専門知識がある、測定・分析し、社内の関係者に重要な結果をパッケージングできる、などのスキルをアピールすることができます。そして、これらのスキル、成功や失敗の経験、部門を超えたコラボレーション、プロジェクトのオーナーシップが、面接でのあなたのアピールポイントになることでしょう。

プロダクトマネージャーからシニアプロダクトマネージャーへ

シニアプロダクトマネージャーになるには (Becoming a senior Product Manager)
https://www.lennysnewsletter.com/p/senior-product-manager
By: Lenny Rachitsky (@lennysan) and Jackie Bavaro (@jackiebo)

プロダクトマネージャーのキャリアは神秘的です。個人の貢献者としてスタートし、CPOやプロダクト担当の副社長になるために出世する、という認識を私たちは共有しています。しかし、その中間はどうなっているのでしょうか?

Jackie Bavaroは、シニアPMにレベルアップするために何にフォーカスすべきか、最高のフレーミングを説明します。シニアPMには、3つの最も重要な差別化要因があります。

1. 戦略
シニアプロダクトマネージャーは、プロダクトの長期的な戦略をどれだけ推進するかによって、仕事の優先順位を決めます。
戦略には3つの部分があります。(1)ビジョン、(2)戦略フレームワーク、(3)ロードマップ。どれから始めても構いません。

2. 自律性
優れたシニアPMは、多くのフィードバックやアドバイスを求めますが、上司の助けがなくても、チームを率い、ステークホルダーに対応し、問題を処理し、優れたプロダクトを出荷することができます。彼らは、与えられた指示をそのまま受け入れるのではなく、どのタイミングでそれに異議を唱えるべきかを理解しています。

自律性とは、単に能力が高いということではなく、自律的に機能するために必要な信頼を勝ち取ることを意味します。そのためには、積極的なコミュニケーションと、立ち上げを成功させた実績が必要です。上司と意図的に仕事を共有することも必要でしょう。

3. ニュアンス
上級になればなるほど、「ケース・状況による」が正しい答えのはずなのに、判断を迫られることが多くなります。これらの判断を認識し、整理して推論するのがシニアPMです。彼らは、混乱した状況や難しいトレードオフに対処することができます。

彼らは、プロダクトに関する専門知識と高度なメンタルモデルを持っているので、思考プロセスを数分で書き出すことができます。彼らは、混乱した問題領域で取り組むべき最も重要な課題を素早く特定することができます。

同僚や関係者は、あなたが洗練された思考に磨きをかけるための理想的なガイドです。彼らの悩みを真剣に受け止め、その裏にある複雑さに目を向けてください。彼らが正しいと思う条件とは何でしょうか?

シニアプロダクトマネージャーからプロダクトリーダーへ

渓谷を渡る。プロダクトマネージャーからプロダクトリーダーへ – リフォージ (Crossing the Canyon: Product Manager to Product Leader — Reforge)
Crossing the Canyon: Product Manager to Product Leader — Reforge Navigating a product manager career path can be tough. Our ex www.reforge.com By: Fareed Mosavat (@far33d) and Casey Winters (@onecaseman)

シニアプロダクトマネージャーとプロダクトリーダーの間には、峡谷があります。シニアプロダクトマネージャーからプロダクトリーダーへの移行で、数多くのキャリアが行き詰まるのを目の当たりにします。なぜなら、それはほとんど別の仕事であり、いくつかの新しいスキルが必要だからです。また、シニアプロダクトマネージャーとプロダクトリーダーのインセンティブが一致していないため、難しいのです。

アソシエイト・プロダクト・マネージャーからシニア・プロダクト・マネージャーになると、同じような問題を解決し続けることになりますが、問題は難しくなっていきます。

シニアプロダクトマネージャーからプロダクトリーダーへの移行で重要なのは、
1つのタイプのプロダクトワークの深さ→複数のタイプのプロダクトワークの広さ。

プロダクトマネジメントには、1.フィーチャー・ワーク、2.グロースワーク、3.スケーリングワーク、4.PMF拡大ワークという4つのタイプの仕事があります。このうちのどれかの分野で専門性と深みを身につけるのです。

プロダクトリーダーとして成功するために、
• プロダクトの問題点に対して広い視野を持つ。
• さまざまなタイプのプロダクトワークでROIを最大化する。
• I字型からT字型へ。

自分の仕事をうまくやること → 他人の仕事をうまくやるように訓練すること。

プロダクトリーダーとしてのあなたの価値は、あなたのアウトプットではなく、チームのトータルアウトプットで評価されます。そのため、他の人を上手に育てることが必要です。しかし、あなたが生まれ持った強みというのは、教えるのが最も難しいということを覚えておいてください。

そして、これが招く最も一般的な罠は、最も重要なプロジェクトを自分のために残しておくことです。これは、マネージャーのデス・スパイラルと呼ばれるものです。

今ある資源で解決する → 資源を配分し、周囲に影響を与えることで解決する。

組織横断的にリーダーワークをプロデュースする。自分の直接のコントロール範囲外の問題を解決するために、組織内の他者に影響を与える必要があります。しかし、通常、難しいのは、1.上にも横にも影響を与えることは新しいスキルであり、2. 自分が成功したかどうかを判断されることがない

個人のスコープを広げる → 組織のスコープを広げる。

プロダクトリーダーとして、新しいチームを可能にするために、自分の責任の一部を脱ぎ捨てて、自分の範囲を狭める必要があるのです。そして、軌道修正やエスカレーションを行うべき問題を特定するために、十分なコンテクストを取得し、一貫して十分なコンテクストを提供できるようなシステムを構築する必要があるのです。

プロダクトマネージャー – 階層

クワンの「プロダクトニーズの階層構造」。プロダクトマネジャーの4つのレベル Kwan’s Hierarchy of Product Needs: The Four Levels of Product Managers
https://www.heavybit.com/library/blog/kwans-hierarchy-of-product-needs-the-four-levels-of-product-managers/
By: Connie Kwan (@Conniekwan_)

プロダクトマネージャーの仕事は、意思決定をすることです。意思決定のリスクが高ければ高いほど、その意思決定をサポートするプロダクト・マネージャーには、より多くの経験を積ませたいものです。このように、プロダクトマネージャーには4つのレベルがあります。

画像3

レベル1:出荷⛵️(PM)

「PMが満たすべき最も基本的なニーズは、機能を出荷することです。」このレベルの仕事には、正しい仕様について設計と議論し、顧客のニーズを持ついくつかの機能をテストすることが含まれます。また、エンジニアと仕様についてコミュニケーションをとりながら、日々エンジニアと協力してプロダクトを成功裏にリリースしていきます。

レベル2:企画 🚂(シニアPM)

プロダクト・マーケット・フィットに挑戦し続け、3〜6ヶ月の中期的なビジョンを持ってチームをマネジメントしていく役割です。そして、顧客の真のニーズを引き出す必要があります。また、複数のインプットを用いてプロダクトのビジョンを描き、そのビジョンに基づいてチームをまとめることが求められます。

レベル3 戦略的 ✈️(ディレクター〜VP)

戦略PMは、会社のビジョンを掲げ、BHGへの道筋を見える化します。各経路の検証を行い、テストやリスク低減の方法を見出します。

レベル4戦略的パートナー 🚀(CPO)

企業が急成長するとき、CPOは必要です。CPOは、会社のプロダクト文化を設定し、強化するのに役立ちます。また、CPOはCEOやCFOと社外とのパートナーシップの機会をもたらします。また、CPOは、チーム、取締役会、ユーザーに対して、プロダクトストーリーを作り、伝え、会社の収益と資金調達の流れを維持する手助けをします。

この記事が、プロダクトマネージャーのキャリアパスの全体像を理解する一助となれば幸いです。何か質問があれば、TwitterLinkedInのDMでお願いします。

次に何をすべきか覚えていますか?

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。
私のプロダクトマネジメントに関する記事のリーディングリストはこちらから参照ください。👉 Glasp – Product Management

では、また次回。

Kei


フォローして最新情報をチェック!

プロダクトマネジメントのブラックボックス

PMは「なぜ存在するのか」と問われると悲しくなる

プロダクトマネジメントの世界には、すべてのPMが経験したことのある通過儀礼があります。

「プロダクトマネージャーって何する人?」

私は、この質問をするデザイナーやエンジニアに共感します。なぜなら、プロダクトマネージャーの活動は断片的であり、真の規律が見えてこないからです。

プロダクトマネジメントを始めた当初は、自分がやっていることすら知りませんでした。それどころか、私は初めての創業者で、「スタートアップをやっている」だけだと思っていました。

その後、PMの仕事の面接を受けたとき、より有能な人たちが、私は実際にプロダクトマネジメントをやっているのだと教えてくれたのです。そして、私はその仕事に就きました。その仕事を始めて間もない頃、私は上記のような悪名高い質問を受けました。私は気分を害することなく、むしろ彼らと同じように興味を持ち、プロダクトマネジメントについて(何度も)読みました。インターネット上では、さまざまなことが言われていました。

  • 私はプロジェクトマネージャーではない。そして、そうだと思われたら、怒るべきである。
  • 私はプロジェクト・マネージャーではないので、「何を」「なぜ」ということを考える必要がある。
  • 私はビジョナリーであるべきだ、顧客の声であるべきだ、ミスター・ゲット・シット・ダン(パッパとやる人)であるべきだ、などなど。

私はそのすべてを吸収しました。最初の数ヶ月は、私のプロダクトマネジメントのバイブルである『Good Product Manager, Bad Product Manager』を毎週のように読み返しました。

そして、何度もプロダクトを出荷しました。そして、すぐに役立つと感じるようになりました。

その仕事を始めて数年後、私は他のプロダクトチームを管理するようになりました。他のPMは私に、彼らがなぜ存在するのかという質問に答えることができるように、それを定義してくれることを期待するようになりました。私は、これまで読んだ最高の投稿のカクテルと、長年にわたって経験した例を提供しました。

私は現在Shopifyにおり、3つ目のプロダクトマネージャーの役割を担っていますが、改めて自分が本当にやっていることは何なのか、前提を見直すことになりました。Shopifyは真のエンジニアリング文化であり、会社の規模に比してプロダクトマネージャーは非常に少数です。ちなみに、私が以前勤めていた会社では、PMと社員の比率は1:10でした。Shopifyは(ディレクターも含めて)1:80に近いです。

私が入社した最初の週に、あるエンジニアから「あの質問」をされました。

ここで働いていてよかったと思うことのひとつは、プロダクトをいかに効率的に構築し出荷するかという、別のアプローチを観察することができたことです。Shopifyのエンジニアやデザイナーは、非常に才能があり、意見がはっきりしていて、自立しています。

また、変えてはいけないものを見つけ出し、そうすることで「なぜ」を優先し、「何」を抽象化することを余儀なくされました。この記事はShopifyについてでもなく、効果的なプロダクトマネージャーになるための方法についてでもありません。なぜプロダクトマネージメントが存在するのかについてです。

▼本記事の内容
  1. なぜプロダクトマネジメントなのか
  2. スピード
  3. スケール
  4. カオスのカクテル
  5. なぜプロダクトマネージャーなのか
  6. 良いプロダクトを開発するのは難しい
  7. プロダクトマネージャーは複合的である
  8. なぜブラックボックスは存在し続けるのか

*この記事は、The Black Box of Product Managementを著者の了解を得た上で翻訳したものです。

著者: Brandon Chu
翻訳者: 渡辺圭祐

なぜプロダクトマネジメントなのか

プロダクトマネジメントは、企業にとって2つの指数関数的な力が作用した副産物です。

スピード: 技術革新のスピードが加速している業界に存在する企業。
スケール: プロダクト、組織、顧客の成長により、複雑性が増している。

スピードは指数関数的な力であり、一定期間ごとに、前回よりも多くの変化が起きている。スケールについても同様で、機能、従業員、ユーザーが増えるたびに、前よりも複雑さが増していきます。

プロダクトマネジメントという職業が主にソフトウェア会社で普及してきたのは、ソフトウェアが本質的にスピードとスケーラビリティの点において優れているからです。

スピード

インターネットは、ソフトウェア製品を市場に送り出す方法を変えました。毎年リリースされ、段ボール箱が棚に並んでいた時代はとうに過ぎ去りました。この20年間、チームはコードを書き、それを配備し、すべての顧客に即座にアップデートを提供してきました。

ソフトウェア開発そのものへの参入障壁が低くなったのです。高度なプログラミング言語が持つ親しみやすさと、オープンソースライブラリの普及により、開発者はかつてないほどの生産性を手に入れました。同時に、機能的なプロダクトを構築し、それを配備するためのインフラコストは、基本的にゼロになりました。

つまり、世の中のあらゆる大きな問題は、何百もの独立したチームがその解決に取り組んでいる可能性が高いのです。

このように、スピードには2つの意味があります。ソフトウェア開発で何かを市場に投入する速さと、(重要なことですが)企業が生き残るためにいかに速くすることを競争によって強いられるかということです。

スケール

50人以下のスタートアップがプロダクトマネージャーをほとんど持たない理由は、その複雑さがまだ管理可能であるからです。CEOと共同創業者は、集中した問題に向けて会社を調整し、スクラップなスタートアップの力をその問題に解放することができるのです。

しかし、会社が成長するにつれ、機能が追加され、顧客が多様化し、チームが大きくなるにつれて、複雑さが出てきます。そして、その複雑さは指数関数的に大きくなっていきます。

例えば、20人のスタートアップがどれだけのミーティングを行えると思いますか?

その答えは、なぜ私たちが指数関数的な概念を苦手としているのかを示しています。

会社が解決する問題も同様に複雑さを増していきます。チームが高度な問題を解決すると、何百もの派生的な問題が生まれ、そのすべてが解決されることを待ち望んでいます。しかし、会社はそのすべてを解決することはできません。何百もの解決すべき問題に直面したとき、どこに焦点を当てるかは、企業にとって最も重要な決定となります。

カオスのカクテル

スピードとスケールが同時に企業に与える影響を考えると、企業の全体像を考える人がいなければ、最終的に物事が脱線してしまうことは容易に想像がつくでしょう。最終的にその役割を担うのはCEOですが、CEOがマルチタスクの限界に達したとき、他の誰がその穴を埋められるでしょうか?

なぜプロダクトマネージャーなのか

確かに、プロダクトにはある程度の管理が必要です。では、なぜプロダクトを管理できるように全員を訓練するのではなく、特定の役割を担う人を採用するのでしょうか。

簡単に言うと、プロダクトを管理するのは想像以上に難しく、できるようになるには長年の経験が必要だからです。長い答えはこうです。

良いプロダクトを開発するのは難しい

プロダクトマネージャーのコアコンピテンシーは、プロダクト開発を真に理解することです。つまり、どのような問題を解決すべきかを見極め、それを解決するためにどのようにチームと協働するかということです。

何度か立ち上げを経験した人なら、教科書とは裏腹に、以下のような直線的なプロダクト開発プロセスがおとぎ話であることを知っています。

たとえ、各ステップ間にフィードバックループを設けたとしても、機能チームがチェックリストを通じて協力し合うという、整然とした連続したステップという考え方は欠陥があります。テクノロジーが指数関数的に進歩する世界には、単純にそぐわないのです。

世の中の変化が速すぎて、3カ月前のリサーチ結果を元に開発することはできません。

私は、現代のプロダクト開発は、ユーザーの要望を実現するために、相互に関連する分野がネットワークで連携したシステムであると考えます。プロダクトマネージャーは、このネットワークにおけるコミュニケーションを促進するAPIです。

各ノードは、専門分野の幅広いバケットを表し、それぞれが、それを習得するために人々がキャリアを捧げるほどの深みを備えています。これは、スピードとスケールがクリティカルマスに達した企業におけるプロダクト開発の重要な品質です。あまりにも多くのことを知らなければならないので、あるチームだけが効果的にプロダクトを提供することができたのです。

プロダクト開発のプロセスは、このシステムが時間軸の中でどのように動くかを示すものです。

プロダクトマネージャーは、問題の特定からプロダクトの発売まで、このシステムの指揮を執り、ネットワーク内の各ノードが他のノードの進捗を認識し、ユーザーが開発中のプロダクトをますます欲しくなるようにします。

最後に、組織の規模が大きくなると、複数のチームが必要になります。そして、効果的なプロダクト開発システムは、それらのチームを調整し、企業のビジョンに焦点を当てます。

プロダクト開発のAPIとして、プロダクトマネージャーは、重複する作業を排除し、他のチームがより速く開発できるようにインフラを共有することで、会社全体の効率化をサポートします。

プロダクトマネージャーは複合的である

プロダクトマネージャーは、このシステムの責任者として必要なスキルを身につけるために何年も費やします。複合的で、深さよりも広さを重視した学習方法です。

私はこれまで、プログラミング、UIデザイン、UXリサーチ、ファイナンシャル・モデリング、ビジネス開発、サポート、コピーライティング、会計、法務、契約交渉、レポート、マーケティング、ブログ記事、FAQ、プロダクトコピーなど、あらゆることをやってきました。

どの分野もエキスパートにはなれなかったし、いくつかの分野では境界線上の能力を獲得しました。APIとして役に立つだけの知識はあっても、(良い意味で)危険な知識はありませんでした。これこそがプロダクトマネージャーのスキルセットの真骨頂であり、開発者タイプの人々にとってPMがもたらす価値を正確に理解することを難しくしています。

PMは、プロダクト開発システム全体に責任を持つために、各分野についてただ十分であるというレベルで知識を備えています。

PMは、各分野に精通し、プロダクト開発システム全体に責任を持つことができるため、チーム全体に効果的に情報を伝達するために必要なあらゆる言語でコミュニケーションすることができます。

また、システム全体における変化の影響を評価する上でも、最適な立場にあります。最近、ShopifyのCEOと交わした会話で、彼はこのことを非常に簡潔に表現していました。

「優れたプロダクト担当者は、世の中の仕組みの変化がログファイルにどのような影響を与えるかを理解しています。そして、彼らはその影響をリアルタイムで察知することができるのです。」
トビ・リュトケ (言い直されています)

まさにその通りです。

スピードがキングであり、世界が指数関数的に変化している世界では、行動の前に合意を形成する時間を持つことは、しばしば贅沢なことなのです。チームはスピードを維持するために日々重要な決定を下す必要があり、それらの決定には大きなトレードオフや利害関係者間の対立があります。

そのような意思決定を推進するのは、プロダクトマネージャー以外の誰の仕事でもないのです。

なぜブラックボックスは存在し続けるのか

エンジニアやデザイナーの仕事は、PMの影響を短期的に観察することが難しいため、定量化しやすいのですが、プロダクトマネジメントにまつわる曖昧さは、しばらく残ります。

いつか、大学院で学位を取得し、プロダクトマネジメントへの明確なキャリアパスができるかもしれませんが、今はまだそうではありません。それまでは、企業の規模は拡大し続け、世界はより速くなり続け、遅かれ早かれ「これを管理する人が必要だ」と提案されることになるでしょう。

もしあなたがPMなら、次に誰かがあなたの存在に異議を唱えたとしても、腹を立てないでください。曖昧さを受け入れ(結局、あなたはPMなのですから)、自分の目的に自信を持ってください。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

そういえば、Shopifyは採用活動をしています。

他にお勧めの記事はこちらです。

7 Heuristics for being a Product Director (プロダクトディレクターになるための7つのヒューリスティック)

Product Partnerships (pt. 1/2)— The Making of a Partnership (プロダクト・パートナーシップ (pt. 1/2) – パートナーシップの成り立ち)

The Time Value of Shipping (配送の時間的価値)

#SWLH (Startups, Wanderlust, and Life Hacking)」に掲載されました。


Brandon Chuの他の記事を読む👀

👉 Brandon Chu

フォローして最新情報をチェック!

プロダクト開発の見方を変える15のアイデア

プロダクトマネージャーのためのアイデアとメンタルモデル

▼本記事の内容

*この記事は、15 Ideas That Will Shape Your View Of Building Productsを著者の了解を得た上で翻訳したものです。

著者: Alex Pedicini
翻訳者: 渡辺圭祐

1. Whyから始める (Start with Why)

「人々は、あなたが何をしたかを買うのではなく、なぜそれをしたかを買うのだ」。サイモン・シネックのリーダーシップの教えは、リーダーやプロダクトマネージャーがコミュニケーションやインスピレーションを得るための素晴らしいモデルとなっています。多くのリーダーはWhat(プロダクトやソリューション)から始めますが、シネックはWhy(存在意義)とHow(行動の指針となる理念や価値観)から始めることを提唱しています。

画像1
The Golden Circle — Start With Why

2. パレートの法則 (Pareto principle)

80/20の法則とも呼ばれ、結果の大部分は少数の原因から生まれるという考え方です。ビジネスに与える影響の大部分を占める機能や顧客を絞り込み、その機能の改善とユーザーの喜びに焦点を当てます。

3. ドッグフーディング (Eating your own dogfood)

これは自社プロダクトをテストし、使用することで、顧客に共感し、機会領域を特定する練習です。一般的なユーザーと同じ環境や状況でプロダクトをテストすることができれば、さらに効果的です。

4. ベロシティ(速度) (Velocity)

スピードとベロシティは同じではありません。スピードは方向に関係なく進む速さを表し、ベロシティは変位した距離を表します。プロダクト開発では、ベロシティが必要であり、進むべき方向は戦略に向かっているのです。ベロシティを上げるには、優先順位をつけ、戦略に貢献しないタスクやプロジェクトにはノーと言うことが必要です。

画像2

5. 二次的思考(セカンド・オーダー・シンキング (Second-order thinking)

目の前の決断の因果関係を考える一次思考とは対照的に、二次思考では「次に何が起こるか」を考えます。この思考法では、主に、変化や決断がもたらす予期せぬ結果や影響を理解する必要があります。10-10-10ルールは、自分の決定が2次、3次に及ぼす影響を理解するために特に役立ちます。

6. 可逆的な意思決定と不可逆的な意思決定 (Reversible vs. Irreversible decisions)

これは、ジェフ・ベゾスが2016年の株主への手紙で書いていることです。意思決定には、意思決定の大部分を占め、後で簡単に変更できる可逆的なものと、変更しにくい不可逆的なものがあるという考え方です。可逆的な意思決定は、すぐに軌道修正できるので、完全な情報がなくても素早く行うべきです。不可逆的な意思決定は慎重に行うべきで、結論を出すまでに、より広範な情報収集が必要です。重要なのは、自分がどちらのタイプの決断をしているのかをあらかじめ知っておくことです。

7. 機会費用 (Opportunity costs)

すべての決断にはトレードオフがつきものです。あるものを選択することで、別のものにノーと言うことになるのです。これは、優先順位をつけるときやロードマップを作成するときに特に当てはまります。優先順位をつける最も簡単な方法は、「今すぐやるべき、もっと価値のあることはないか」と問うことです。- もし答えがイエスなら、そのもっと価値のあることに取りかかればいいのです。

8. 選択のパラドックス (Paradox of choice)

選択肢が多ければ多いほど、必ずしも顧客が幸せになるとは限りません。人々は提示された選択肢に圧倒され、優柔不断になり、満足度が低くなる可能性があります。それよりも、よりスマートなデフォルト設定と、適切なタイミングで適切な選択肢を提示することに注力し、意思決定の疲労を回避することが重要です。

9. 逆転の思考 (Inversion)

問題に対して異なる視点を持つには、しばしばその問題を逆から考えることが有効です。何かがうまくいく理由を考え抜くのではなく、うまくいかない理由を考えるのです。また、現状から将来を予測するのではなく、最終目標から逆算してバックキャスティングしてみる。このようなことを促進するために、プロジェクトを始める前に「プレモルテム(Premortem)」を実施することが有効なテクニックです。

10. 確率的思考 (Probabilistic thinking)

プロダクト開発では、仮定と不完全な情報に基づいて意思決定を行う必要があります。確率論的思考とは、論理と推定を駆使して、ある事象がどのような結果をもたらすかを推測するプロセスです。このような思考は、どのような問題を解決し、どのようなソリューションを構築するかについて、どこに賭けるべきかの判断材料となります。

11. スケールしないことをする (Do things that don’t scale)

ソフトウェアによって私たちは信じられないほどのスケールで物事を行うことができますが、すべてのプロダクトや企業は小さなところから始まったことを忘れないでください。スケールしないことをするのは、手作業で仕事をすることが、学習への近道であることを思い出させるためです。そうすることで、あなたが目指している問題や顧客に近づくことができますし、そうしなければ見逃してしまうような別の機会も見えてくるかもしれません。時間が経ち、成功すれば、これらの作業を自動化することができます。

12. 前線基地を確保する (Secure the beachhead)

Geoffrey Moore氏は、著書「Crossing the Chasm」の中で、テクノロジー採用のライフサイクルの橋渡しについて述べています。この本では、まずターゲットとなる顧客層の小さなセグメントを特定して販売することで、アーリーアダプターからメインストリーム消費者へとプロダクトを移行させる方法について論じています。この考え方は、まずニッチな市場を見つけ、その狭い市場を満足させてからプロダクトや顧客層を広げていくことに似ています。

13. ビタミン剤と鎮痛剤 (Vitamins vs. Painkillers)

あなたのプロダクトが「あると便利なもの」(ビタミン剤)なのか「なくてはならないもの」(鎮痛剤)なのかを理解しましょう。プロダクトのポジショニングと販売の鍵は、あなたのプロダクトが解決する真のペインポイント、その問題を経験する人、そしてその問題を引き起こす「きっかけ」を特定することです。

14. マズローの欲求階層説 (Maslow’s Hierarchy of Needs)

マズローの欲求階層説は、人間の5つの基本的な動機と欲求を説明したものです。人間の欲求はほとんど変化しませんが、その欲求を達成するための解決策は頻繁に変化します。成功するソフトウェア製品はすべて、これらの基本的欲求のうち少なくとも1つを満たしていることに結びつけることができます。

画像3

15. 制約条件の理論 (Theory of constraints)

「鎖はもっとも弱い輪の部分以上は強くない」。 ボトルネックを特定し、その制約を減らしたり取り除いたりする作業を行うことで、単位時間当たりの処理能力を向上させることができます。このモデルは、あなたが作っているプロダクトであれ、あなたが依存しているプロセスであれ、作業中のあらゆるシステムに適用することができます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−

1. Start with Why (Whyから始める)
2. Pareto principle (パレートの法則)
3. Eating your own dogfood (ドッグフーディング)
4. Velocity (ベロシティ)
5. Second-order thinking (二次的思考)
6. Reversible vs. Irreversible decisions (可逆的な意思決定と不可逆的な意思決定)
7. Opportunity costs (機会費用)
8. Paradox of choice (選択のパラドックス)
9. Inversion (逆転の思考)
10. Probabilistic thinking (確率的思考)
11. Do things that don’t scale (スケールしないことをする)
12. Secure the beachhead (前線基地を確保する)
13. Vitamins vs. Painkillers (ビタミン剤と鎮痛剤)
14. Maslow’s Hierarchy of Needs (マズローの欲求階層説)
15. Theory of constraints (制約条件の理論)


フォローして最新情報をチェック!

そして、あなたは仲間を通して私たちを知る(TikTokのグラフデザイン)

欧米では、ソーシャルメディアの第一期の末尾にいるような気がします。生き残った企業を振り返ると、ある種のアプリケーションアーキテクチャの選択がいたるところで見受けられます。今では、コンテンツユニットの無限縦スクロールフィード、いいね、フォロー、コメント、プロフィール写真やユーザー名など、この古生代のソーシャル時代の特徴的なデザインはすべて熟知しています。

しかし、これらのデザインパターンが勝ち残った理由があるように、生存者バイアスによって、固有のトレードオフに目をつぶってはならないのです。ソーシャルスタートアップの次の波は、現在のソーシャル既存企業のこれらの選択の弱点から学ぶべきでしょう[1]。いずれにせよ、強力な既存勢力に正面から挑むのは得策ではありません。これらのアプリのデザインは、表面積が集中しているため、攻撃のベクトルが斜めになっています。

*この記事は「And You Will Know Us by the Company We Keep」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。
著者: Eugene Wei
翻訳者: 渡辺圭祐

[1] 既存のソーシャル・ネットワークがどこで間違ったかを指摘するのは簡単です。もちろん、現在の地位を確立するために、彼らは多くの正しいことをしなければなりませんでした。これほど大規模なオンラインネットワークは歴史上存在しなかったことを考えれば、多くの間違いは後から振り返れば理解できることです。しかし、より良い方向に向かうためには、彼らがどこで失敗したかを学ぶ方が簡単です。

これらの欠陥の多くはすでに様々な場所で指摘され、議論されていますが、ある重大な設計ミスが、私のところに送られてきたソーシャルメディアのテストフライトの多くで頭をもたげ続けています。以前にも、ネット上で交わされたさまざまな会話の中で、私はこのことについて触れたことがあります。私はこれを「グラフデザインの問題」と呼んでいます。

ソーシャル・グラフからユーザーエクスペリエンスを形成するアプリをデザインするとき、ユーザーがあなたのプロダクト/サービスから最大の価値を得るために最適なグラフで終わることをどのように確認しますか?

根本的な帰属の誤りは、常に私の注意すべきメンタルモデルの一つです。このソーシャルメディア版は、ソーシャルアプリ上での人々の行動を、その人の生来の性質に帰するのは過剰で、アプリが彼らを配置する社会的文脈に帰するのは過少である、というものです。ソーシャルメディアにおいて、おそらく最も重要な文脈上の影響力は、その人のソーシャル・グラフです。誰をフォローし、誰にフォローされているのか。

動きを止めたサメが死ぬように[2]、欧米のソーシャルメディアアプリのほとんどは、グラフを構築しなければ死にます。なぜなら、最も有名な欧米のソーシャルアプリのほとんどは、ソーシャル・グラフとコンテンツフィードという2つのものを交互に並べることを選択したからです。つまり、ほとんどのソーシャルメディアアプリは、ユーザーがフォローしているアカウントによって投稿されたコンテンツによって構成される無限の縦スクロールフィードを提供します。TikTokに関する私のエッセイシリーズ (順に「TikTokと組分け帽子」、「アルゴリズムのように見る」、「アメリカンアイドル」)では、これをソーシャル・グラフを使用してインタレスト・グラフを近似することと呼んでいます。

[2]ラム換気に頼るサメの中には、エラに水をかけて呼吸するために泳がなければならないものがあります。しかし、多くの種類のサメはそうではありません。グラフに依存して動くソーシャルアプリを「グラフ換気」と呼ぶべきかもしれません。

このデザインは、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなど、昔からよく見かけますね。特に、今日のインターネット利用の主流である携帯電話に適しており、縦方向に持ったときに縦長のビューポートを提供します。

この選択が理にかなっているかどうかについては、後ほど説明します。今のところ、このアーキテクチャは、ソーシャル・グラフのスケーリングを優先するアプリに有利であることだけを指摘しておきます。ユーザーに最初から人々をフォローしてもらうことが不可欠です。そうでなければ、フィードが空っぽになってしまうからです。

これは、古典的なソーシャルメディアの鶏と卵のコールドスタート問題です。シリコンバレーのプロダクトマネージャーなら誰でも、ツイッターとフェイスブックの重要なキーポイントとなる指標がいかに似ているかという話を聞いたことがあるはずです。ユーザーが最低限必要な数のアカウントをフォローすることで、そのユーザーはWAU、あるいはDAUになります。十分な数のアカウントをフォローできていないユーザーは、解約する可能性が最も高いのです。多くの伝説的な成長チームは、数千万人、数億人のユーザーに、できるだけ多くのユーザーをフォローするよう誘導することで、その名声を築きました。

しかし、やはりこの義務は、ソーシャル・グラフから直接フィードを構築するという選択から完全に派生しています。「TikTokと組分け帽子」の中で、私はこう書きました。

しかし、もしあなたが誰もフォローしなくても、あなたのためにインタレスト・グラフを構築する方法があるとしたらどうでしょう?もし、ソーシャル・グラフを構築する長くて骨の折れる中間ステップをスキップして、直接インタレスト・グラフにジャンプできるとしたらどうでしょうか?そして、それを数百万人のユーザーを対象に、本当に素早く、安く、大規模に行うことができるとしたら?そして、これを実現するアルゴリズムが、ユーザーが積極的に調整することなく、ほぼリアルタイムでユーザーの嗜好に合わせることができたらどうでしょう?

TikTokと組分け帽子

インタレスト・グラフをソーシャル・グラフで近似する場合の問題点は、ソーシャル・グラフには規模が大きくなると負のネットワーク効果が働くことです。ツイッターのようなソーシャル・ネットワークを例にとると、一方通行のフォローグラフ構造はインタレスト・グラフの構築に適しているが、問題は、あなたがフォローしている一人の人物のすべてに興味を持つことはほとんどないということである。グルーバー氏のアップルに関する考え方は面白いかもしれないですが、彼のヤンキースに関するツイートは面白くないかもしれない。あるいは、技術に関する私のツイートは楽しめるが、映画に関するツイートは楽しめないかもしれない。などなど。ツイッターのリストを使ったり、特定の人やトピックをミュートしたりブロックしたりすることもできますが、どれも面倒で、それに取り組むエネルギーや意志がある人はほとんどいないでしょう。

TikTokと組分け帽子

ほとんどすべてのフィードは、ゼロサムアテンションランドで互いに競い合うことになり、その結果、興味や娯楽という同じ軸で競争することに引っ張られてしまうのです。インスタグラムの責任者であるAdam Mosseri氏は最近、来年におけるアプリの一連の優先事項を発表しましたが、そのうちの1つが動画への注力を強化することでした。「人々はインスタグラムにエンターテイメントを求めており、厳しい競争があり、やることが増えている。我々はそれを受け入れなければならない、そしてそれは変化を意味する。」とMosseri氏は言いました。

私は、「Status as a Service」の中で、ソーシャル・ネットワークは、ソーシャルキャピタル、エンターテイメント、ユーティリティの3つの軸で競争する傾向があると指摘しました。エンターテイメントに焦点を当てると、その人のソーシャル・グラフからコンテンツフィードを構築することの問題は、率直に言って、私たちが知っている人がいつも面白いとは限らないということです。私は自分の友人や家族を愛しています。だからといって、彼らがナエナエを踊っているところを見たいとは思いません。その逆もしかりです [3]。私たちが誰をフォローしているかは、欧米のソーシャルメディアの多くで目にするものの関連性と質に不釣り合いな影響を与えますが、それはアプリがそのように設計されているからです。

[3] 編集後記: 彼を知っている人たちだけではありません。私がナエナエを踊る姿など、誰も見たくはないのです。

同時に、誰が私たちをフォローしているかということも、同じくらい重要なことかもしれません。ソーシャル・エクスペリエンスに関する議論では、この点が軽視されがちですが、おそらくそれは、ユーザーが誰をフォローするかよりもさらにコントロールしにくい決定であるためです。しかし、ソーシャルメディアに何を投稿するかは、それを見る可能性のある人物に大きく依存することは驚くにはあたりません。私たちのフォロワーは、私たちの暗黙のオーディエンスです。

最も有名な例を挙げると、フェイスブックの解約問題の根源は、グラフが急成長して自分の人生のすべての人を網羅するようになったときに始まりました。前述のように、友達だからといって、その人の投稿をすべてニュースフィードで見たいというわけではありません。逆に、生活のあらゆる場面で多くの人にフォローされることで、コンテクストが大きく崩れることになりました。誰もが、そしてその母親もフェイスブックに参加しているということではなく、特に、すべての人の母親がフェイスブックに参加しているということです。[4]

[4] グルーチョのマルクスの口癖で、自分が会員になるようなクラブには入らないというのがありますが、それを一般化したようなものです。つまり、ほとんどの人は、自分が最も地位の高いメンバーであるクラブには属したくないということです。なぜなら、定義上、クラブのメンバーの地位の中央値は、自分の地位を下げることになるからです。しかし、それが安定した構成になりえないとは言いません。WeChatのような実用性を重視したネットワークは、ステータス・ダイナミックスにそれほど左右されません。当然ながら、単一のフィードに集中することはあまりありません。

ソーシャル・ネットワークを始めたばかりの頃は、フォロワーが増えることが悪いことだと想像するのは難しいものです。しかし、多くのツイッターユーザーは、2万人、5万人、10万人とフォロワーを増やしていくうちに、不満を漏らすようになります。突然、あなたのホットな発言の数々が、同じようにホットな反発を集めるようになるのです。突然、自分のアイデアをエーテルに吐き出すことが楽しくなくなるのです。そうなんです。小さなバイオリンにブーイングを。しかし、これが第一世界の問題であると考えるかどうかは別として、ソーシャルメディアの経験における相転移が、発生からかなり時間が経たないと発見しにくいことを示すものであることは確かです。

もっと強く言うと、グラフデザインの問題は、元に戻すのが難しい間違いのクラスに入るので、ソーシャルカンパニーにとって特に危険なのです。ジェフ・ベゾスは、1997年のアマゾンの株主への手紙の中で、2つのタイプの決定について書いています。

ある種の決定は、結果的に不可逆的なもの、あるいはほとんど不可逆的なもの、つまり一方通行のドアであり、これらの決定は、十分に熟考し、相談しながら、整然と、慎重に、ゆっくりと行わなければならない。一方通行のドアを通り抜け、反対側にあるものが気に入らなければ、元の場所には戻れない。これをタイプ1の決断と呼ぶことができます。しかし、ほとんどの決断はそうではありません。それらは変更可能であり、可逆的であり、双方向のドアなのです。最適でないタイプ2の決断をした場合、その結果に長く耐える必要はありません。ドアを開けて、また通ればいいのです。タイプ2の決定は、判断力の高い個人または小さなグループによって迅速に行うことができ、またそうする必要があります。

グラフデザインの問題が一方通行なのは、ユーザーがそうさせるからというのが大きいです。ほとんどのソーシャルメディアユーザーは、人をフォローした後にフォローを解除することはありません。その理由の多くは、社会的な適合性に起因します。フォローを解除するのは気まずく、特に相手に会う可能性がある場合は不快に感じるものです。僕は、偶然会うかもしれない人をフォロー解除するときはいつも、水回りのクーラーにいるラリー・デイヴィッドのように、眉を寄せて、「Curb Your Enthusiasm」で彼がマスターしたあの独特の口調で、軽蔑されたことに対する憤りと、偽善的行為を見つけたことに対する喜びとが等しく混ざった声で、追い詰めるのを想像してしまいます。「Eugene、私をフォローしてないわね。と〜ってもと〜っても面白い。」

人々が自分のソーシャル・グラフを刈り込むよりも追加する傾向があるなら、ユーザーの設計を支援するソーシャル・グラフは、一方通行の決定として扱われるべきです。そして、ベゾスが指摘したように、一方通行の決定は慎重に扱われるべきです。[5]

[5] ツイッターが、たとえ自分ではフォローしていない人のツイートであっても、自分がフォローしている人が「いいね」を押したという理由だけでツイートを自分のタイムラインに投稿し始めたとき、私は非常に混乱し始めました。フォローされていないと怒っている人は、すでにフォローされていると思い込んでいるのかもしれません。

多くのソーシャルアプリは、その構成上、グラフのスケールが大きくなるにつれて、位相のずれが生じてきます。友人やフォロワーが少ない最初の頃のユーザー体験は、その数字が上がるにつれて変化します。最初は、人数が多いほど賑やかです。さあ、パーティーの始まりです。しかし、ある程度の規模を超えると、負のネットワーク効果が忍び込んできます。そして、その対処法を変えなければ、いつの間にか心の健康のために、ソーシャルメディアを休むと宣言している自分に気づくのです。

ユーザーは、ことわざの「ゆでガエル」のように、この現象に気づかないだけでなく、アプリを操作する人も、手遅れになるまで位相の変化に気づかないかもしれないのです。ソーシャル・グラフは経路に依存しています。

古典的な例ですが、これが今も続いているかどうかは分かりませんが、ピンタレストがローンチ時に女性ユーザに大きく偏り、その過程で多くの潜在的な男性ユーザを失ったことがあります。これは、各ユーザーのソーシャル・グラフからフィードを構築する機能でした。女性はピン留めの最も強力な初期利用者であったため、男性は自分のネットワーク内の女性からのピンの洪水を目にすることになりました。これは、ピンタレストが女性中心のソーシャルアプリと認識され、一部の男性ユーザーを追い出すという反射的ループを生み出し、自己実現的なステレオタイプになりました。フィードの別のコンテンツ選択の試行錯誤があれば、この偏りを修正できたかもしれません。

しかし、これもまた、欧米のソーシャルメディアデザインに特有の問題です。ソーシャル・グラフとインタレスト・グラフを混同することで、存在する必要のないコンテンツマッチングの問題を引き起こしてしまったのです。TikTokやReddit、あるいはもっと純粋な興味や娯楽のネットワークと思われるもので、友人が私をフォローしなくても、私は怒りません。それらのプロダクトでは、各人が自分の興味に従うべきであることが非常に明確になっています。

中国のソーシャルインフラの構築方法は、少なくともこの点では、より論理的です。WeChatは支配的なソーシャル・グラフを所有しており、中国の他のインターネットに対する基礎的なソーシャルインフラとして機能しています(ただし、必ずしも信頼できるものではありません) [6]。WeChatが所有するソーシャル・グラフを複製するのではなく、他のアプリは、別のグラフを必要とするかしないかわかりませんが、自分たちの得意なことに集中することができます。

[6] 過去にDouyinやTaobaoで行われたように、WeChatの競合他社が何らかのカテゴリーでアプリへのリンクをブロックする可能性があります。これは、私企業が支配的なソーシャル・グラフを所有することの危険性であり、規制当局が介入する必要があるところです。

また、欧米のソーシャルアプリは、広告収入に大きく依存しています。欧米のソーシャルアプリは、広告収入に大きく依存しており、その収益源はフィードへのトラフィックです。つまり、フィードの関連性が最も重要なのです。ソーシャル・グラフが自分の興味からずれると、つまらないコンテンツがフィードに入り込んできます。シグナルとノイズの比率(S/N比)は間違った方向にシフトします。フィードを修正するためにソーシャル・グラフを刈り込んで調整する代わりに、ほとんどのユーザーは最も簡単なことをします: 解約です。

ソーシャルアプリのプロダクトマネージャーやデザイナーとして、あなたは反対するかもしれません。ユーザーは誰をフォローするかを選択し、他のユーザーはその人をフォローすることを選択します。それは、あなたのコントロールの及ばないところです。しかし、これでは、アプリがスケールに手をかけて、各ユーザーを特定のタイプのグラフに誘導する方法をすべて無視していることになります。

例えば、最初のユーザー登録のフローです。毎週、新しいソーシャルアプリTestflightで、このモーダルダイアログに遭遇するようです。

私が注目するのは、この要求がどこに出てくるか、そしてアプリがどのような枠組みで要求してくるかです。ほとんどの場合、ユーザーはアプリが何であるかを理解する前に、自分の連絡帳へのアクセスを許可し、一致するユーザーをフォローするよう求められます (さらに悪いことに、連絡帳に招待メールを送りつけるよう求められます)。このようなアプリは、連絡帳の複製を促すことで、人々の現実世界のソーシャル・グラフを基にすることを明確に選択しているのです。

ソーシャルアプリが、サインアップフローの中でこの許可を重要なものとして優先させるのは、驚くことではありません。iOSの連絡帳は、新しいアプリが独自のソーシャル・グラフを構築するために利用できる唯一の「オープンソース」のソーシャル・グラフとなりました。「The Network’s the Thing」では、ネットワークそのものがソーシャル・ネットワークの価値の大部分を提供し、フィードにどのような種類のコンテンツを許可するか、それらがどのようにフォーマットされるかという議論は、はるかに重要性が低いと主張しました。フェイスブックやツイッターのような巨大なソーシャル・グラフが、サードパーティのアプリにそのグラフを利用させ、さらにはそれを丸ごと複製させたのは、ほんの一瞬のことでした。

有名なのはインスタグラムで、ツイッターのソーシャル・グラフを利用することで、独自のソーシャル・グラフを構築するための素晴らしいスタートを切りました。しかし、これらの企業は、自分たちが将来の競争相手を武装させていることに気づくのにそう時間はかかりませんでした。そして、グラフへのアクセスを厳しく取り締まりました。アプリのオプションとしてフェイスブックやツイッターの認証を提供することはできますが、独自のソーシャル・グラフが必要な場合は、現在ではモバイルの連絡帳が最も利用しやすくなっています。

アプリがソーシャル・グラフの形状に影響を与えるもう一つの方法は、フォローリストの提案です。このようなリストは、初回起動時に表示されたり、フィードに表示されたり、時にはフィードと一緒に表示されることがよくあります。

ツイッターの初期ユーザーが幸運にも最初のバージョンのフォロー推奨リストに載ることができ、今日、何十万、何百万ものフォロワーを持つに至っています。

これは大規模なソーシャル・キャピタルの助成金でしたが、私はそのリストの多くの選択が不可解だと感じています。数年前、友人が初めてツイッターのアカウントを開設し、登録時にツイッターが提案したアカウントのリストを私に見せました。そこには、ドナルド・トランプが含まれていました。政治的な傾向がどうであれ、この選択はいかがなものかと思います。新規ユーザー全員に、最悪のツイッターの1つである政治的ツイッター(バイデン氏の提案にも懐疑的だ)を押し付けようというわけです。かっこいいですね。

週末にファイトクラブに通うような人たちにとっては、政治的ツイッターは完璧なドーパミン抑制剤かもしれませんが、ユーザーが初めて登録し、ツイッターが彼らのことを何も知らないとしたら、それは奇妙な賭けです。

何年もの間、人々はフェイスブックの「友達紹介」ウィジェットに驚嘆していました。わあ、どうして私があの人を知っているのか、そうだ、もちろん友達になってあげよう。しかし、先に述べたように、ニュースフィードの構築方法を考えると、それはグラフデザインのミスだったのかもしれません。

逆に、ユーザーが適切なタイプのフォロワーを獲得できるようにすることも重要です。カルトは、双方向の影響力によって支えられています。カルトのリーダーは、カリスマ性を発揮して信者を増やし、その信者がカルトのリーダーを形成するのです。これは共生的なフィードバックのループであり、必ずしも健全なものではありません。

グラフの設計ミスは、一方通行であることに加え、アプリがある程度プロダクト・マーケット・フィットを達成した後に顕在化する傾向があるため、悪質なものとなります。その時点で、結晶化したソーシャル・グラフを元に戻すことは困難であるだけでなく、そうすることは、そのアプリをそのまま受け入れているユーザーの期待に背くことになります。やるならやる、やらないならやらないという二重苦です。たとえ局所的な最大値であっても、ある程度のプロダクト・マーケット・フィットを達成したアプリは、元に戻すのに本当の勇気が必要です。

だからといって、ソーシャルアプリが問題を解決しようとするのを止めることはできません。フィードへのトラフィックが減ることは、多くのソーシャルアプリにとって存続の危機です。しかし、グラフのデザインという根本的な問題を解決する代わりに、ほとんどのアプリは問題を修正することを選択します。最も一般的な方法は、時系列ではなく、アルゴリズムによるフィードに変更することです。このアルゴリズムは、あなたがフォローすることを選択したアカウントからのコンテンツをフィルタリングすることを任務としています。ノイズよりもシグナルを復元しようとするのです。何を残し、何を捨てるかを決めるために、フィードのアルゴリズムは様々なシグナルを見ますが、基本的なレベルでは、何があなたの興味を引くかを推測しようとしています。

それでも、これは上流のエラーに対する応急処置です。フェイスブックが数年ごとに、ニュースコンテンツと、あなたが知っている人たちによるより個人的なコンテンツの間で揺れ動いているのを見てください。根本的な問題は、ニュースフィードのストーリーを一枚岩のソーシャル・グラフからソーシングすることにあると認めるまでは、解約を真に解決することはできないでしょう。しかし、ニュースフィードのこの基本的なアーキテクチャから離れることは、同社の長い歴史の中で最も大胆な決断となるでしょう。[7] なぜなら、彼らの収益のほとんどすべては、現在機能しているニュースフィードから得られているからだけではなく、一枚岩のグラフを組み立てることが、政府の反トラスト法に対する彼らの最強の建築的防御となるかもしれないからです。

[7] 皮肉なことに、ニュースフィードそのものへの移行は、おそらく彼らの以前の最も大胆な決断でした。

ツイッターは、双方向の友達付き合いが主流のフェイスブックとは異なり、一方通行のフォローで構成されるグラフで構築されています。理論的には、このことはグラフデザインの問題にさらされることを減らすはずです。しかし、ソーシャル・グラフの上に構築されたインタレスト・グラフが持つのと同じ欠陥に悩まされています。ある人の興味には興味があっても、他の人の興味には興味がないこともあります。ツイッターは、一つのニッチに集中するピュアプレイのツイッターアカウントを好みます。しかし、ほとんどの人は、自分が好きなトピックをきれいに分けてツイートするために、複数のツイッターアカウントを運用しません。

私はシステムの欠陥を発見する方法として、それを破ろうとしている人たちを観察するのが好きです。ソーシャルメディアの上級者は、グラフデザインの問題を回避するために、長い間、ハッキングを試みてきました。インスタグラムやツイッターの裏アカウントを作成するユーザーは、ある特定の目的に適した代替グラフを作成するために、そうしているのです。このような戦術を実行するためにユーザーが複数のアカウントを作成する必要がないような代替的なソーシャル・アーキテクチャを想像することができます。しかし、各ソーシャルメディアのアカウントが1つのIDにしか関連付けられないこの世界では、ユーザーはアカウントごとに1つのグラフに縛られることになるのです。

グラフデザインの問題を解決するアプリの賢い方法のひとつは、ユーザーが興味を失ったアカウントのフォローを解除する負担をなくすことです。私たちのソーシャル・グラフが人生を通じて変化するように、オンライン上のソーシャル・グラフも変化する可能性があります。幼稚園のときの友だちが、小学校、高校、大学、そしてその先にいる友だちと同じであるとは限りません。

より忠実度の高いソーシャル・プロダクトは、私たちの交流パターンを観察しながら、時間とともに自動的にソーシャル・グラフに手を加えていくでしょう。ツイッターやインスタグラムが、しばらく交流のないアカウントや休眠状態のアカウントなどを黙ってアンフォローするのを想像してみてください。ツイッターやフェイスブックは、ミュートなどの方法で、友達やフォローを解除せずに、人々の目に触れるものを減らすことができますが、それは大変な作業で、正直なところ、私はそれらのどれを使っても臆病者のように感じます。

メッセージングアプリは、2人またはグループ間の直接的なコミュニケーションに重点を置いているため、最新のメッセージを含むスレッドをアプリケーションウィンドウの最上部に押し出すことで、自然にこれを実現することができます。私たちの生活から外れた人は、画面の下の方に落ちていくだけです。後入先出し法は、常に合理的、効率的、汎用的な妥当性の検討方法です。

グラフデザインの問題に対するもう一つの可能な解決策は、ユーザーのコンテンツフィードをソーシャル・グラフから切り離すことです。TikTokに関する3つの記事で、このアプリのアーキテクチャが、ほとんどの西洋のソーシャルメディアのアーキテクチャと根本的に異なることを書きました。TikTokは、ユーザーに関連するフィードを作成するために、いかなるアカウントもフォローする必要がありません。その代わり、2つのことを行います。

まず、表示されるすべてのコンテンツに対するユーザーの反応を観察することで、ユーザーが何に興味を持っているかを理解しようとします。これは、あなたの趣味嗜好を学ぼうとするものであり、非常に良い仕事です。TikTokは、インタレスト・グラフとして構築されています。

次に、TikTokはすべての候補動画を2段階の審査にかけています。まず、最も恐ろしくて悪質な品質フィルターのひとつにビデオを通します。それは、数百人のZ世代のユーザーを中心としたパネルです。[8] テスト視聴者が興味を示さなかった場合、ビデオはTikTokのゴミ箱に捨てられ、誰かが誰かのプロフィールで直接ビデオを探した場合を除き、二度と見ることはできません。

[8] いえ、それはちょっと違います。このテスト視聴者は誰でもいいのです。しかし、TikTokのユーザー層は若年層に偏っているため、そのパネルのほとんどがZ世代になります。また、「OK Boomer」とつぶやくZ世代のユーザーの集団は、動物界でハイエナやスズメバチに次いで恐ろしい集団狩猟であることは周知の事実です。

次に、そのビデオが各ユーザーの趣味嗜好に基づいて興味を持つかどうかを、アルゴリズムで判断します。その動画の作者をフォローしていなくても、TikTokのアルゴリズムが「これは面白い」と思えば、自分のFor Youページに表示されるのです。

最近、インスタグラムはユーザーがフォローしていないアカウントの投稿を表示することを開始すると発表しました。これは、純粋なエンターテインメントとしてのTikTokの優位性に対して、インスタグラムが譲歩したに等しいと言えるでしょう。

アプリによっては、何らかのトピックやコンテンツピッカーを使用するものもあります。「あなたが好きな音楽や映画のジャンルを教えてください。」「どのようなニューストピックに興味がありますか。」そして、機械学習とユーザー全体からのシグナルを使って、あなたに関連するフィードを提供しようとします。

このアプローチの有効性は、大きく異なります。Spotifyの1曲から生成されたプレイリストは非常に効果的なのに、ポッドキャストのおすすめは一般的だと感じるのはなぜでしょうか?ネットフリックス賞など、何年も何百万ドルもかけて研究してきたのに、なぜネットフリックスのレコメンデーションはまだ一般的だと感じ、そしてそれが本当に重要ではないのでしょうか?アマゾンの本のレコメンドが堅実である一方、ニュースサイトの記事レコメンドが無作為に感じられるのはなぜでしょうか?なぜ、あるコンテンツのレコメンデーションが他より優れているのかを掘り下げるだけでも、別の記事が必要なほど、このテーマは複雑なのです。

グラフデザインに焦点を当てたこの記事で重要なのは、コンテンツピッカーのようなものが、ソーシャル・グラフから明確に逸脱していることです。ツイッターがアカウントだけでなくトピックもフォローできるようにしたのは、純粋なインタレスト・グラフへの半歩を踏み出す一つの試みと見ることができるでしょう。

アプリはソーシャルであればあるほど楽しいというわけではありませんし、人々は知り合った人と興味を共有することがないわけではありません。私たちは皆、自分の興味と自分の人生に関わる人々の両方を大切にしています。それが重なれば、なおさらです。ただ、現在のソーシャルアプリと10年以上暮らしてきて、それらが完全に相関していると仮定した場合のマイナス面を示す事例がたくさんあるのです。

二次的な検討事項として、アプリケーションが長期的にどのようなインタラクションを目指して構築されているかが挙げられます。一対一のインタラクションなのか、それとも大勢の視聴者に向けてのブロードキャストなのか?ユーザーの何パーセントが、単に消費するのではなく、創造することを望んでいるのでしょうか?あなたのアプリは、実生活で知り合った人たちのグラフが最適なのか、それとも共通の興味を持つ見知らぬ人たちをつなぐグラフが最適なのか?それとも、その両方をミックスしたもの?アプリは同じ会社や組織の人たちのためのものですか?文化や国境を越えた交流ができるのか、それとも様々な地域がそれぞれのグラフに分離されるのがベストなのでしょうか?

次世代のソーシャル・プロダクトチームは、どのようなタイプのソーシャル・グラフが長期的に最高のユーザーエクスペリエンスを提供するかをより積極的に考えることができますし、またそうすべきです。

確かではありませんが、私が聞いた話では、多くのソーシャル・ネットワークが特定のデザインを念頭に置いてグラフを構築したようには思えません。そのため、グラフのデザインは、答えよりも未解決の問題が多いエクササイズになっています。ある意味では、フェイスブックが当初ハーバードの学生たちだけのために作られたことで、偶然にもグラフデザインに役立つ制約が課せられたのかもしれません。

グラフデザインは、ある種のデザインとは異なり、簡単にプロトタイプを作成することができません。ソーシャル・ネットワークは少なくとも部分的には複雑な適応システムであり、グラフがスケールに達したときにどのような種類のインタラクションが発生するかをプロトタイプ化することは困難です。

しかし、従来の複雑な適応システムがあまりにも複雑で、予測することが無駄であるのに対し、ソーシャル・ネットワークは2つの点で異なっています。一つは、人間の性質が一貫していること。もうひとつは、超スケールなソーシャル・ネットワークを数多く研究できることです。これらのネットワークは、グラフデザインにおいて特定の選択をした場合に何が起こるかを示す、大規模な実世界のテストケースなのです。

また、それらは世界中の複数のマーケットに存在しています。このため、特に中国とアメリカのように文化やマーケットの違いを超えて比較する場合、明確な経路依存性を研究することが可能です。文脈の違いはあるものの、荒らしなどの問題は普遍的で、何らかの強力な根本的メカニズムが働いていることが示唆されます。

グラフデザインにまつわる糸をたぐり寄せると、多くのウサギの穴に深く潜り込むことができます。繋がる人々が全く知らない人同士である場合、どのようにして十分な信頼を確立するのでしょうか (例えば、評価システムを通じて)。アプリの中核がコンテンツフィードである場合、そのフィードは、ユーザーがフォローしているアカウントが投稿したストーリーのみから抽出する必要があるのでしょうか?それらのアカウントから候補を抽出する必要があるのでしょうか?フィードは、ユーザー間の健全なインタラクションに適したアーキテクチャなのでしょうか?

グラフデザインの問題を考えるのは、誰の仕事でしょうか?そして、いつ?例えば、グロースチームの戦略は、グラフデザインによって決定されるべきです。グロースチームは、グラフをあらゆる方向に拡張することだけを仕事とする不正なチームとして扱われるべきではありません。グロースチームは、グラフの成長がどのようなもので、良いものなのか、悪いものなのかを知る必要があり、それによって、より長期的なビジョンに沿った戦略を立てることができるのです。

最近、TikTokは、私が現実世界で知っている人たちともっとつながるようにと、私を後押ししてくれるようになりました。知り合いをフォローするよう促されたり、動画を共有すると、共有した動画を見たという通知がよく届きます。この通知によって、その人がTikTokのアカウントを持っていて、ユーザー名が何であるかを知ることができるのです。

これまで、私はTikTokを楽しむために、現実の知り合いをフォローすることなく過ごしてきました。おそらくTikTokは、ビデオの共有をアプリ自体に内在させようとしているのでしょう。しかし、ここまで書けば、私がソーシャル・プロダクトのグラフを変更することは、より慎重に扱われるべき動きだと考えていることは明らかでしょう。私が知っているほとんどの人はTikTokを作らないので(わかる、わかる、これで私が年寄りだとわかる)、彼らをフォローしても私のFYPにはあまり影響がないでしょう。TikTok動画を作成する割合がはるかに高い若いコホートにとっては、お互いをフォローすることはより理にかなっているかもしれません。

一方、デフォルトの公開グラフ構造を持つアプリは、判断しようとする人間の生来の衝動を刺激します。待って、私の知っているこの人は、TikTokのどのアカウントをフォローしているの?チッ、チッ。

TikTokがユーザーに現実世界のソーシャル・グラフを再現するよう促すべきかどうかの答えは、単純明快なものではありません。グラフデザインは、より深い考察を必要とする学問であることを説明するために、この話を持ち出しただけです。グラフデザインは、その名の通り、デザイン的であるべきなのです。

「フォロー」という言葉がぴったりです。誰に従うかは、自己実現的な予言になりかねません。まず、あなたがグラフを作り、次にグラフがあなたを作るのです。多くの研究が、人間は最も長い時間を一緒に過ごした人と同じ周波数で振動する傾向があることを示しています。シリコンバレーの賢人Naval Ravikantは、動物学の「5匹のチンパンジー理論」を広めました。これは、どのチンパンジーが最も多く一緒にいるか観察することで、その人の気分や行動を推し量ることができるという理論です。

このソーシャルメディアのバージョンは、ユーザーがアプリ上でどのような行動をとるかを、フォローしている人、フォローしている人、そしてフェイスブックのニュースフィードやツイッターのタイムラインなど、その人たちと交流せざるを得ない「空間」で予測することができるというものです。私たちは皆、ソーシャルメディア上で自身の最悪のバージョンである人々を知っています。根本的な帰属の誤りは、彼らが環境やインセンティブに反応しているだけかもしれないのに、私たちは彼らが生まれつきひどいと思うようになることを予測しています。

人間はチンパンジーではないので、一度に何十もの異なる社会集団のメンバーをこなす傾向があります。リードの法則は、ネットワークのユーティリティは指数関数的に拡大すると予測しています。なぜなら、ネットワーク内の各人が他のすべてのノードと接続できるだけでなく、可能なサブグループの数は2^N-N-1 (Nはそのネットワーク内の人の数)であるからです。

しかし、ソーシャルアプリでそのようなサブグループが簡単に形成されるかどうかは、設計上の問題です。一枚岩なフィードは、健全なインタラクションのために最適でなくとも、大きなサブグループに人々を強制的に誘導する傾向があります。ツイッターのタイムラインやフェイスブックのニュースフィードはユーザーごとに異なりますが、それでも大規模なパブリックコモンズのような錯覚があります。あなたが投稿したものを誰もが見る可能性があるため、誰もが見るかのように操作する必要があります。

これに対し、メッセージング・アプリは、ユーザー自身が自分に最も関係のあるサブグループを形成する傾向があります。フェイスブックグループは、ニュースフィードよりも柔軟なアーキテクチャです。人間は多人数で構成されており、ソーシャルアプリは彼らの様々なコミュニケーション・プライバシーのニーズに合わせてフレキシブルに対応すべきです。

多くのハイテク企業がSlackを導入し、その後、突然、従業員の反乱に対処していることに気づくのは当然のことです。グループのコミュニケーション・トポロジーを変更すると、メンバー間のダイナミズムが変化します。Slackの公開チャンネルは、企業内の公共の広場として機能し、より多くの社員が互いの考えを知ることができます。その結果、ある社員は、特定の会社の方針に対する懸念など、少数意見だと思っていたことを共有する仲間を見つけることができます。以前は、電子メールというコミュニケーション技術によって、多くの企業が比較的平和に運営されていたということが、今になって分かってきたのです。

欧米のソーシャルメディアでは、2021年の今、グラフデザインがソーシャルメディアの初期よりも重要であることは、様々な意味で常に決まっていたに違いありません。インターネットの黎明期には、公共のソーシャル・グラフはまばらで、存在しないに等しいものでした。ほとんどの場合、私たちのグラフは、私たちが知っているメールアドレスと、お気に入りのニュースグループで時折見かける誰かのユーザーネームに限られていたのです。インターネットと共に育った世代に、インターネット黎明期の新しいオンライン接続がいかに密かな興奮をもたらすものであったかを説明するのは難しいです。名前しか知らない人を探し出すのがどんなに大変だったことでしょうか。

現在、私たちは世界中の誰とでもつながることができる、十分すぎるほどの手段を持っています。スマートフォンとインターネットがあれば、どんな相手とも十中八九連絡が取れるので、アドレス帳に登録する必要はほとんどないと感じています。

ネットで相手を探すのが当たり前の世の中で[9]、より気の利いた仕掛けは、適切な文脈で適切な相手とつながることです。私の携帯電話には十数種類のメッセージング・アプリがインストールされていますが、どれも大体同じように見えます。ここでは、グラフデザインにおける失敗を避けるために、グラフデザインについて主に防御的に論じてきましたが、グラフデザインを攻撃的に使うというのも、肯定的な見方です。グラフの構造そのものが価値あるもの、さらに言えばユニークなインテリジェンスを内包するような、ユニークなグラフを作るにはどうしたらいいのでしょうか?

[9] メッセージングアプリは巨大でありながら、ほとんどの場合、ほとんど収益を生まないお粗末なビジネスであることが、それがコモディティであることを示す一つのサインです。これは、コモディティ・ビジネスに期待される財務プロファイルです。

リンクトインは、シリコンバレーの人々が最も不満に思うソーシャルアプリかもしれません。しかし、多くの不満はもっともですが、その膨大な時価総額はグラフの価値の証です。プロフェッショナル・グラフを、現在だけでなく、長い時間軸や組織的な次元でマッピングすれば、採用担当者はそのグラフを閲覧するために大金を支払うことになるのです。

現在のソーシャル・ネットワークが社会にとって良いものかどうかという議論については、私はまだ実現されていない潜在的な可能性に注目したく思います。ウィキペディアのような奇跡もありますが、もっと多くの種類の大規模なコラボレーションが可能になるのではないでしょうか?

1週間おきくらいに、すごい人を紹介されたり、今まで聞いたこともないようなアカウントに驚かされたりします。しかし、ソーシャル・ネットワークがこのような紹介を促進しないことに、私は悲しみというより希望を感じています。10年後には、今日のソーシャル・グラフは、その構成があまりにも原始的であるため、鈍器のように見えることでしょう。

そして、その10年間を振り返り、適切なタイミングで、適切な文脈で、どれだけ多くの素晴らしい人々に出会えたかを確認し、本当の宝物は、その過程でできた友人であったことに気づくことでしょう。


Eugeneの他の記事を読む👀

👉 Eugene Wei

フォローして最新情報をチェック!

ネットワーク効果完全ガイド

プロダクト開発において、ネットワーク効果は不思議なキーワードの一つです。ネットワーク効果に関する記事はたくさんあり、中には専門家向けの詳しい素晴らしい記事もあります。しかし、ネットワーク効果の各コンセプトをマッピングし、それらがどのように関連しているかを説明している記事は見当たりません。そこで、ネットワーク効果の詳細や関係、概念を思い出すために、いつでも戻ってこられるように、この記事を書くことにしました。

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。

準備ができたら、さっそく始めましょう。


▼本記事の内容
  1. ネットワーク効果とは?
  2. なぜネットワーク効果なのか?
  3. ネットワークの法則
    1. サルノフの法則
    2. メトカーフの法則
    3. リードの法則
  4. ネットワークの特性
    1. ノードとリンク
    2. ネットワーク密度
    3. 方向性
    4. 1対1と1対多
    5. クラスタリング
    6. クリティカルマス
    7. 不規則性
    8. 非対称性
    9. 漸近的ネットワーク効果
    10. 同一面ネットワーク効果
    11. 間接的ネットワーク効果
    12. クロスサイドネットワーク効果
    13. 負のネットワーク効果
    14. 隠れたネットワーク効果
  5. ネットワーク効果の種類
    1. 直接的
    2. 2面的ネットワーク効果
    3. データ
    4. 技術パフォーマンス
    5. 「社会的 」ネットワーク効果
    6. コンテンツ・ネットワーク効果
  6. ネットワークを自己成長させる方法
  7. ネットワーク効果を測定する方法
  8. 押さえておくべきポイント
    1. マルチテナント
    2. ディスインターミディエーション(仲介者の排除)
    3. スイッチング・コスト
    4. リテンション
    5. 実名制 vs 偽名制 vs 匿名制
    6. 蒸発冷却効果
    7. ソーシャルネットワークのデススパイラル
  9. 紛らわしい概念
    1. バイラル効果とバイラリティ
    2. 幾何学的 (指数・非線形) 成長 vs. 線形成長
    3. 強化
    4. 規模の経済性 (スケール効果)
    5. ブランド
    6. エンベッディング

*この記事は「Network Effects Total Guide」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者・翻訳者: 渡辺圭祐

ネットワーク効果とは?

ネットワーク効果とは、「あるプロダクトやサービスが、より多くの人に使われることによって、さらなる価値を獲得する現象」のことです。

Michael Mauboussin氏 (@mjmauboussin) によると、「ネットワーク効果とは、ある財を使う人の数が増えることによって、その財の価値が上昇するときに存在する。すべてのものが同じであれば、小さなネットワークよりも大きなネットワークに接続されている方が良い。新しい顧客が増えれば、すべての参加者にとってネットワークの価値が高まるのは当然である。つまり、早く大きくなることは、より大きな価値を生み出すだけでなく、競合するネットワークが定着しないことを保証する意味でも重要なのだ。」

これはネットワーク効果をうまく説明していますね。メッセージングアプリなど、自分の友人や家族の人数が多いネットワークや場所に参加したいと思うのは、その人たちとメッセージを交わす機会が増え、便利だからだと考えると、容易に想像がつくのではないでしょうか。

ネットワーク効果には、さまざまな種類があります。NFXは、ネットワーク効果を強い順に13種類に分類しています。

• 物理的 (例: 固定電話)
• プロトコル (例: イーサネット)
• パーソナル・ユーティリティ (例: iMessage、WhatsApp)
• パーソナル (例: フェイスブック)
• マーケットネットワーク (例: HoneyBook、AngelList)
• マーケットプレイス (例: eBay、Craigslist)
• プラットフォーム (例: ウィンドウズ、iOS、Android)
• 漸近的マーケットプレイス (例: Uber、Lyft)
• データ (例: Waze、Yelp!)
• 技術的パフォーマンス (例: Bittorrent、Skype)
• 言語 (例: Google、Xerox)
• 信念 (例: 通貨、宗教)
• バンドワゴン (例: Slack、Apple)

🔗 関連記事:
• Two Powerful Mental Models: Network Effects and Critical Mass by Tren Griffin (@trengriffin)

なぜネットワーク効果なのか?

ネットワーク効果は、1994年以降のすべてのハイテク企業の価値の70%を説明することができ、それはデジタル世界における防御力と価値創造の最高の形です (他の3つはブランド、エンベッディング、規模の経済です)。今日、ブランド、供給側の規模の経済、知的財産、規制など、競合他社に対して堀 (Moat)を形成できる要因が脅威に直面し、ネットワーク効果の重要性が増しています。以下は2004年と2021年の時価総額上位12社ですが、2004年には1社しかなかったネットワーク効果を持つ企業が、2021年には8社もあることがわかります。

ネットワーク効果から得られる価値は指数関数的に増加しています。下の図は、一人のユーザーがどのようにネットワークに付加価値を与えているかを説明したものです。この図では、価値がリンクの二乗として増加するのに対して、コストはリンクに伴って直線的に増加することがわかります。

* この図はメトカーフの法則に基づくもので、場合によっては根本的な欠陥があると言われています。説明の一例としてご覧ください。

ネットワークの法則

ネットワーク効果を説明する法則として最も有名なのはメトカーフの法則ですが、他にもネットワーク効果に関する法則はいくつかあります。

サルノフの法則

サルノフの法則とは、ネットワークの価値はネットワークの規模に正比例して増大するというものです。Nに比例し、Nはネットワーク上のユーザーの総数です。これは、少数のコアノードが多数の周辺ノード (ラジオやテレビの視聴者) に向けて送信する放送ネットワークを正確に記述していますが、この定義は、いくつかの種類のネットワークに対して過小評価であることが判明しました。

メトカーフの法則

メトカーフの法則は、ネットワーク効果における最も有名な法則の1つです。基本的な考え方は、「通信ネットワークの価値は、ネットワーク上のユーザー数の2乗に比例して大きくなる (N²、ここでNはネットワーク上のユーザーの総数)」というものです。

ネットワーク上のノード間のリンク数は、数学的にはN² (Nはノードの数) の割合で増加するため、メトカーフの法則が成立します。当初はイーサネット、ファックス、電話網などの通信網を表すために作られましたが、現在ではインターネットの出現により、ソーシャルネットワークや市場も含まれるようになりました。

メトカーフの法則の根本的な欠陥は、ネットワーク効果の威力がネットワーク参加者の数に影響されるだけでなく、すべてのつながりやすべてのグループに等しい価値を割り当ててしまうことにあると言われています。参加者間の親和性は重要であり、参加者間の商取引の価値も重要です。

リードの法則

リードの法則は、グループ形成型のネットワークでは、ネットワーク上のノードの総数をNとすると、2^Nの割合で値が増加します。

単純なグループコミュニケーションをサポートするネットワーク内部では、潜在的なグループの数が1よりかなり多いため、リードは、ネットワーク内のリンクの総数 (ネットワーク密度)は、ノードの総数(N²)の関数だけではないとして、N²ではなく2^Nという数式を提案しました。実際には、ノードの総数に潜在的なサブグループまたはクラスタの総数を加えた関数であり、ネットワークが成長するにつれてかなり速く増加します。

ほとんどのインターネット・ネットワークはクラスタ形成が可能なため、ほぼ間違いなくリードの法則に従い、メトカーフの法則やサーノフの法則の予測よりもかなり速いペースで価値が拡大していくでしょう。

ネットワークの特性

ノードとリンク

簡単に言うと、ネットワークはノードとリンクで構成されています。ノードとは、ネットワークの参加者一人ひとりのことです。買い手、売り手、消費者、デバイス、そしてあらゆる個人のユーザーである可能性があります。同じネットワーク内でも、様々なタイプのノードが非常に多様な機能を担っている場合があります。ノードの価値は、それがリンクされているノードの強さと価値に影響されるという点は注目に値します。中心的なノードは、リンクが少なく価値のない周辺的なノードよりも、多くのリンクを持ち、より多くの価値があります。また、少数の強力なノードとのリンクを持つ周辺ノードは、より高い価値を持ちます。ノードの強さ、近さ、活動には違いがあるため、すべての関係が等しく作られるわけではありません。

リンクとは、ネットワークにおけるノードまたはノードのグループ間の接続を指します。ノード間のリンクはすべて同じに作成されるわけではありません。リンクの方向性は異なる場合があります。リンクの強さは、2つのノード間の耐久性、近接性、および活発さによって決定されます。

ネットワーク密度

ノードに対するリンクの比率は、ネットワークの密度を決定します。比率が大きければ、ネットワークはより密になります。一般的に、ネットワークの密度が高ければ、ネットワーク効果もより強力になります。リンクの相互接続性は、他のノード間のリンクを強化・増強します。

ネットワーク内では、通常、密度は不均一に広がっています。ネットワークの特定のセクションは、他のセクションよりも著しく高い密度を持つかもしれません。そこで、ネットワークの中で最も密度が高く、アクティビティの高い部分である「ホワイト・ホット・センター」を探し、それを実現するためのプロダクトや機能を作ることに集中する必要があります。なぜなら、他のノードはホワイト・ホット・センターの活動に引き寄せられ、そこから外に向かってより速く放射状に広がっていくからです。

方向性

ノード間のリンクは、有向または無向のいずれかになります。方向性は、ネットワークのノード間のリンクの性質に応じて決定されます。有向リンクは、一方のノードが他方のノードを一方的に指し示すことを意味します。

有向リンクの例として、ツイッターがあります。芸能人や政治家など有名な人は膨大なフォロワーを持っていますが、通常はお互いに影響し合っていません。情報の流れは、大きな中心ノードから小さな周辺ノードへの一方通行です。

一方、フェイスブックやWhatsAppのように、リンクが必ず相互作用するものは、無向リンクの例と言えます。プラットフォーム上で誰かと会話をすると、情報とインタラクションの流れは双方向になります。

このように、ネットワーク内のノード間のインタラクションがどちらに流れるかによって、ネットワーク内のノード間のリンクの方向が決まります。お金、情報、コミュニケーション、その他、ノード間のインタラクションとして流れる可能性のあるものはすべて、そのインタラクションの一部となり得ます。

1対1と1対多

ネットワーク上のノード間の関係は、1対1の場合もあれば、1対多の場合もあります。1対多の関係は、一方向のインタラクションの流れを持つ有向リンクであるという事実によって区別されます。これに対して、1対1のリンクは、一般に機能的にインタラクションするものです。その結果、無指向性で双方向性があります。

クラスタリング

2つのクラスタが1つのリンクでつながっていて、2つのクラスタをつなぐリンクが他にない場合、その接続リンクはブリッジと呼ばれます。現実には、ノードが均等に分散していることはほとんどありません。ノードはネットワーク全体よりもクラスタ化したり、より緊密なローカルグループを形成する傾向があります。

フェイスブックメッセンジャーのようなパーソナル・ユーティリティ・ネットワークでは、クラスタリングを見ることができます。人々は、より広いネットワークよりもアクティブなサブグループを形成しています。

クラスタリング度が高いネットワークは、ネットワークが成長するにつれてその価値が指数関数的に増加するため、非常に強力なネットワーク効果を持つことができます。

クリティカルマス

「ネットワークのクリティカルマスとは、ネットワークが生み出す価値が、プロダクトそのものや競合プロダクトの価値を上回る時点を指す」。それがいつ起こるかは、ネットワークの種類によって決まります。また、プラットフォームが自己成長するために必要なメンバー数やネットワーク規模とも表現され、基本的には、ネットワークの拡大よりも得られる価値が早く上昇するため、自己成長します。

例えば、物理的な直接ネットワークである電話は、初期段階でクリティカルマスを獲得することができます。なぜなら、2人が電話を使うということは、それだけで単体のプロダクト本来の価値を超える十分な価値を持つことになるからです。

ネットワーク効果によって与えられた防御力を十分に活用するためには、ネットワーク効果を持つほとんどのビジネスが最終的にクリティカルマスを達成しなければなりません。ネットワークがクリティカルマスに達する前のプロダクトは、非常に影響を受けやすく、ユーザーにとって何の役にも立たない可能性があります。このようなプロダクトでは、ネットワーク効果の恩恵が効いてくる前であっても、アーリーアダプターにプロダクトを使用してもらうために十分な初期価値を作り出すことが頻繁に問題となります。

クリティカルマスに到達する方法については、以下の「ネットワークを自己成長させる方法」を参照してください。

不規則性

ネットワークには通常、不規則性があります。ネットワークには、クラスター、ホットスポット、デッドスポットなどが存在します。実例を想像していただくとわかりやすいと思います。企業の規模 (10人規模の企業と1,000人規模の企業)、場所、現実の人間関係によって、ネットワークのあり方は異なります。

非対称性

この用語は主にマーケットプレイスに関連するもので、非対称性には2つのタイプがあります。

最初の非対称性は、一方の側と他方の側 (複数)のノードを獲得する難易度が異なるというものです。

マーケットプレイスの需要側、つまり買い手は、状況によっては難しいかもしれません。このような状況では、お金を払うことに熱心な顧客(買い手)を集めることができれば、提供者(売り手)は通常、少しの努力で速く現れます。これを 「需要制約型マーケットプレイス 」と呼びます。

ある状況下では、供給側の方が難しい側面があり、供給側が安定すれば、需要側の顧客が自然に市場に集まってきます。これを 「供給制約型マーケットプレイス」と呼びます。例えば、UberやLyftの有料会員獲得費用の大半はドライバー獲得に費やされており、これは供給サイドです。同様に、OpenTableは、開始から7年後に需要(レストランを予約したい人)を引きつけるだけの供給量を構築するまで、供給側のレストランを一つずつ徐々に獲得していく必要がありました。

マーケットプレイスにおけるもう一つの非対称性は、サイド内、あるいはノードの種類内における非対称性についてです。別の言い方をすれば、すべての需要と供給が同じに作られているわけではありません。一般的に、ある種のノードは他のノードよりも有用であり、1000倍の価値を持つノードも存在します。

🔗 関連記事:
• How to Kickstart and Scale a Marketplace Business — Phase 1: Crack the Chicken-and-Egg Problem 🐣 by Lenny Rachitsky(@lennysan)

漸近的ネットワーク効果

ネットワーク効果の定義は、「ネットワーク効果とは、プロダクトやビジネスにおいて、新しいユーザーが増えるごとに、他のすべてのユーザーにとってそのプロダクト/サービス/体験の価値が高まる仕組み 」です。しかし、ネットワーク効果は、ネットワークの発達のある段階を超えると、価値が上昇しなくなることがあります。ある規模を超えると、漸近的なネットワークの成長は、現在のユーザーに価値を追加しなくなります。

例としてUberが挙げられます。なぜなら、Uberの消費者は4分程度の待ち時間を過ぎると、ドライバーの数が増えてもあまり得をしなくなるからです。需要側の価値の上昇がゼロに近づくと、供給増加の価値は「漸近」します。

🔗 関連記事: 
• The Intentional Network Effects of Uber by James Currier (@JamesCurrier)
• The Empty Promise of Data Moats by Martin Casado (@martin_casado) and Peter Lauten (@peter_lauten)

同一面ネットワーク効果

多面的なネットワークの同じ側で発生する直接的なネットワーク効果は、同一面ネットワーク効果(2面またはN面ネットワーク)と呼ばれます。

Uberは、ライダーが増えれば増えるほど、混雑や料金の上昇によりライダーが待つ時間が増えるため、負の同一面ネットワーク効果を持ちます。

一方、ウィンドウズは正の同一面ネットワーク効果を持っています。なぜなら、ウィンドウズユーザーは、ファイルの互換性により、ウィンドウズユーザーが増えることで利益を得ることができるからです。2人のウィンドウズユーザーは簡単にファイルを交換することができ、同じプラットフォームを使う人が増えれば増えるほど、ファイルを共有できる個人の数は増えます。

間接的ネットワーク効果

間接的ネットワーク効果とは、ある種類のノードが他の側のノードに直接利益を与え、同じ側の他のノードには直接利益を与えない結果、ネットワークの価値が上昇することです。同じ側のノードは、ネットワークの反対側にいる補完的なユーザーがネットワークを使用する動機を高めるため、間接的に互いを利することになり、同じ側のすべてのノードに利益をもたらします。

例えば、eBayのような二面性のある市場では、新しい売り手が加わっても、他の売り手に対してすぐに有利になることはありません。実際、eBayの出品者が新たに加わったところで、他のすべてのeBay出品者の競争が激化するだけです。しかし、商品の在庫が増えることで、マーケットプレイス全体が消費者にとってより魅力的になるため、出品者が増えることで、見込み客が全体的に増える結果、間接的に他の出品者を助けることになるのです。新しいベンダーが増えるごとに、ネットワークの価値も間接的に高まっていくのです。

間接的なネットワーク効果が働いているもう一つの顕著な例は、ウィンドウズのようなオペレーティング・システムです。ウィンドウズの新規開発者は、他の開発者を何ら助けることはありません。しかし、ウィンドウズアプリのライブラリが増えれば、ウィンドウズユーザーの数も増えます。さらに、ウィンドウズのユーザー数の増加は、自社ソフトウェアの購入希望者数を拡大するため、すべての開発者にとって有益となります。

クロスサイドネットワーク効果

クロスサイドネットワーク効果とは、間接的なネットワーク効果とは異なり、複数のサイドを持つネットワークにおいて、もう一方のサイドのユーザーが加わることにより、そのサイドのユーザーにとっての価値が直接的に増加することを指します。

例えば、Uberは、各ドライバーが参加することで、ライダーがより速く、より安く車に乗る機会が増えるため、クロスサイドネットワーク効果が正となります。

負のネットワーク効果

ネットワークの規模やユーザー数が増加すると、ネットワークの価値が低下する場合があります。ネットワークの負の効果には2種類あります。それは、ネットワークの輻輳とネットワーク汚染です。

ネットワークの輻輳は、道路の交通量に見ることができます。ラッシュアワーになると、車の数が増え、道路のネットワークは混雑します。通信ネットワークでも、同じような状況が見られることがあります。

ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアでは、ネットワーク汚染が観察されます。コンテンツが増えれば、通常、ユーザーの利益になり、ネットワークの価値も上がりますが、同時に、詐欺や不正、不適切なコンテンツも出てきます。それを理解し、正のネットワーク効果を維持し、成功するためのプロダクト機能を作る必要があります。

隠れたネットワーク効果

企業によっては、ネットワーク効果があっても、それが見え隠れしていることがあります。ネットワーク効果に見えないネットワーク効果を持つ企業はダイヤモンドの原石です。そのネットワークは評価が難しいため、短期的には過小評価されがちですが、長期的には不釣り合いなほど強力です。

ネットワーク効果に見えないネットワーク効果は、企業が長期的な成功を収めるのに役立つ明確な利点を提供するかもしれません。明確な利点がある一方で、起業家が克服すべき独特のハードルも存在します。

遅いネットワーク
遅いネットワークとは、ネットワークを立ち上げてから、その価値を発揮するまでに比較的時間がかかるネットワークのことです。

プロダクトの消費サイクルが長い場合や、使用頻度が少ないという状態は、遅いネットワークによく見られ、ネットワーク効果の出現を遅くします。遅いネットワークは、速いネットワークとは対照的に、利益がすぐに明らかにならないため、過小評価されることがあります。たとえ企業が迅速に発展していても、遅いネットワークのネットワーク効果が現れるには何年もかかるかもしれません。

例えば、ラムダスクールのネットワーク効果は、原理的には理解しやすいものです。1) より多くの (より優秀な)学生を獲得することで、ラムダの卒業生を採用したいと考える企業をより多く見つけることができ、(2) 最近の卒業生を頼り、学び、雇用されるために、ラムダ同窓生のより深いネットワークを確立することができます。しかし、そのネットワークの真価が発揮されるには、何年もかかります。

未完成のネットワーク
未完成のネットワークとは、プロダクトの特徴や戦略的な判断により、一時的に何らかの形で不完全な状態になることです。しかし、ひとたびネットワークが完成すれば、ネットワーク効果はすぐに明らかになります。

OpenTableは数年前、未完成のネットワークでした。当初、OpenTableはネットワーク効果よりもSaaS (Software as a Service)企業であるかのように思われていました。レストランはOpenTableに月々200ドルを支払ってオンライン予約を受け付けるようにし、OpenTableウィジェットをウェブサイトに埋め込んでいました。

OpenTableの人気が高まるにつれ、レストラン利用者が新しいレストランを見つけるのに最も便利な方法になる可能性を見出しました。そして、レストランを探すためのウェブサイトやアプリケーションなど、消費者向けのプロダクトへの投資は、レストランが十分に増えてから行うようにし、ネットワークを完成させました。利用者が増える=レストランが増える=ネットワーク効果が高まるという流れになっています。

スロットル型ネットワーク
スロットルネットワークとは、プロダクトの特徴や戦略的決定によってネットワークの規模や参加が実質的に制限され、ネットワーク効果の強さが偽装されているものです。

フェイスブックの初期は、ある意味においてはスロットル型ネットワークでした。参加するには、ハーバードのメールアドレスを持っている必要がありました。そして、徐々に.eduのメールアドレスを持つ他の人に拡大され、その後、一般の人々全体に拡大されました。フェイスブックはユーザーのサイトへの関与を制限しなかったため、ネットワーク効果がより可視化されましたが、意図的にネットワークの幅を制限していました。

潜在的ネットワーク (別名「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」ネットワーク)
また、ツールやプロダクトから始めて、ネットワークに至る企業もたくさんあります。「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」企業の典型的な例は、Delicious (ブックマーク)やインスタグラム(フィルター)です。しかし、プロダクトや技術を開発する前に、ネットワークの確立から始める企業もあります。

このアイデアは、ネットワークとして機能するコミュニティを開発することから始め、個人がつながり、参加し、互いに価値を提供し合うというものです。そして、最終的には、そのネットワークへの参加を促進するプロダクトが登場します。プロダクトが登場する前には、ネットワークを評価したり、収益化したりするものがないため、プロダクトが登場する前にネットワークの強さや可能性を見極めることは不可能かもしれません。

このような潜在的なネットワークは、「隠れたネットワーク効果 」の中でも最も予測や実行が難しいものです。これらのコミュニティは、潜在的なネットワークというよりもむしろオーディエンスであることが多く、消費者がネットワークよりも中心的なノードに価値を見出すことを暗示しています。ツールやプロダクトがオーディエンスに過ぎない場合、ビジネスは (例: DTCプロダクト) ネットワークのように指数関数的に成長するのではなく、直線的にスケールします。プロダクトのないネットワークとオーディエンスを見分けるのは難しいものです。多くの著名な起業家が、互いに交流したい人たちのネットワークを構築したと勘違いしていますが、実際に構築したのは、有名なアイドルの作品を求めている視聴者であることがわかりました。

🔗 関連記事: 
• Hidden Networks: Network Effects That Don’t Look Like Network Effects by D’Arcy Coolican (@DCoolican)

ネットワーク効果の種類

直接的

あるプロダクトの利用率が高まると、そのプロダクトの消費者にとっての価値が直接的に上昇します。最も強く、最も単純なネットワーク効果です。

上図に見られるように、デジタルネットワークの各ノードは、他のすべてのノードと接続されています。直接ネットワークに新しいノードが入るたびに、既存のすべてのノードに新しいリンクが追加されます。したがって、新しいリンクの数 (ネットワーク密度) は、ノードの数が二乗 (N²) になるにつれて増加します。ネットワークの価値は密度に比例するため、ノードが増えるごとにネットワークの価値は幾何級数的に増加します。

直接的なネットワーク効果には5つのタイプがあります。

物理的
物理ノード (電話やケーブルボックスなど) や物理リンクに関連する直接ネットワーク効果は、物理的直接ネットワーク効果 (例: 地中の電線) と呼ばれます。これは直接的なネットワーク効果と、スケール効果やエンベッディングなどの追加的な防御力を併せ持つため、最も防御力が高いネットワーク効果のタイプです。物理的ネットワーク効果を持つ企業と競争するには、物理的な制約だけでなく、多額の初期資本投資が必要です。

物理的な直接的ネットワーク効果を持つビジネスには、道路、鉄道、エネルギー、下水道、天然ガス、ケーブル、ブロードバンドインターネットなどがあります。現実には、物理的ネットワークの大半は公益事業であり、独占し、最終的には国有化される勝者総取りのマーケットです。

その多くが、マーケットをリードしながらも、貧弱あるいは不十分なサービスを提供しているという事実が、物理的ネットワークの強い防御力を示す最も強い証拠です。

プロトコル
通信や計算の標準が宣言されると、すべてのノードとノード作成者はそのプロトコルを使ってネットワークに接続できるようになります。ビットコインやイーサリアムのようなプロトコルネットワークは、比較的新しいものです。単一の企業、企業集団、またはパネルがプロトコル設定者になることができます。

プロトコルネットワーク効果の例として、イーサネットがあります。Robert Metcalfeは、3Comを設立する際に、DEC、Intel、Xeroxを説得し、標準速度10メガビット/秒、48ビットアドレス、グローバル16ビットイーサタイプフィールドを持つ、ローカルコンピュータネットワーク用の標準プロトコルとしてイーサネットを採用させました。競合する独自プロトコルもありましたが、イーサネットの普及とシェア拡大に伴い、イーサネットに対応したプロダクトがマーケットに溢れるようになりました。相対的な性能はともかく、これによってイーサネットの価値は複利的に高まり、ライバルの価値は低下していきました。イーサネット接続は、瞬く間に現在のすべてのコンピュータで一般的になりました。

このような採用方法の成功には、マーケティング、ソーシャルエンジニアリング、ニッチマーケットの選択が技術よりも重要であることが多いのです。ベータマックスが間違いなく優れたフォーマットであったにもかかわらず、VHSがベータマックスに勝利したのはそのためです。

パーソナル・ユーティリティ
パーソナル・ユーティリティ・ネットワークは、2つの特徴で判断されます。1つ目はフェイスブックメッセンジャーのように、ユーザーの個人的なアイデンティティが当該ネットワークにリンクしていて、ユーザーネームが実名であるのが一般的であるということです。2つ目は、ユーザーの個人生活や職業生活で日常的に必要とされていることです。

人々は、パーソナル・ユーティリティ・ネットワークを活用して、ネットワークとつながり、交流しています。そのため、使用しないことは日常生活において大きな障害となり、人々の個人的・職業的なつながりにかなりの悪影響を及ぼす可能性があります。

パーソナル
人のアイデンティティや評判がプロダクトと結びついている場合、パーソナル・ネットワーク効果が発揮されます。パーソナル・ネットワークの人々は、現実の知り合いに説得されて参加することが多いです。現実の知り合いが皆、自分のアイデンティティや評判を守るために同じプロダクトを使っているのであれば、そのネットワークに参加することには (あなたにとって) 大きな価値があります。

パーソナル・ネットワークは、個人のアイデンティティと評判を取り入れ、各ユーザーのペルソナを他のユーザーのペルソナに結びつけます。追加された各ノードは、新しい潜在的なオーディエンスであると同時に、ネットワークの残りの部分に対する新しいコンテンツプロバイダを意味します。

2つの側面において、パーソナル・ネットワークはパーソナル・ユーティリティ・ネットワークと異なります。パーソナル・ユーティリティ・ネットワークは、一般的に完了しなければならないタスクのために利用されます。ユーザーは、かなりの実用的な価値を見出すことができます。第二に、パーソナル・ユーティリティ・ネットワークは公共のコミュニケーションに使われるというよりも、主にプライベートなコミュニケーションに使われます。パーソナル・ネットワークは、かつてほど重要ではありません。使うのをやめても、生活はあまり変わりません。仕事を探していないときは、フェイスブック、ツイッター、リンクトインなどのソーシャルメディアは通常必要ありません。

マーケット・ネットワーク
マーケット・ネットワークは、パーソナル・ネットワークのアイデンティティおよびコミュニケーション機能と、マーケットプレイスに関連する取引という点を強調し、目的を組み合わせたものです。マーケット・ネットワークは、通常、既存のオフラインの専門家ネットワークを改善することから始まります。ノード間のリンクは直接的であるため、マーケット・ネットワークは直接的なネットワーク効果の一種とみなされます。

2面的ネットワーク効果

学術文献では、2つ目の大きなタイプのネットワーク効果である2面的ネットワーク効果を 「間接ネットワーク効果」 と呼んでいます。しかし、2面的ネットワークは直接ネットワーク効果と間接ネットワーク効果の両方を持ちうるため、これは誤解を招きやすいと言えます。2面的ネットワークの基本的な特徴は、供給側のユーザーと需要側のユーザーという2つの異なるユーザー層が存在することです。彼らはそれぞれ異なる理由でネットワークに参加しますが、いずれも相手側に付加価値を与えます。

マーケットプレイス
買い手と売り手は、マーケットプレイスの両側面です。Craigslistのような両面成功型のマーケットプレイスは、破壊するのが難しいことで知られています。両者を切り離すには、両者にとってより良い価値提案を同時に提供しなければ、誰も動きません。顧客は商人から買うために来ており、商人は顧客から買うために来ています。一方は、もう一方がいなければ離れることができません。

2面的マーケットプレイスでは、アプリやウェブサイトそのものではなく、ネットワークが価値の大部分を提供します。そのため、eBayやCraigslistのようなマーケットプレイスは、10年以上も事実上同じように見えるのです。

マルチテナントの発生は、マーケットプレイスの防御力における一つの重大な欠点を露呈しています。人々はeBayとEtsyの両方で同時に商品を販売することができます。家主はCraigslistとTrulia両方に同時に自分のアパートを載せることができ、入居者は両方のサイトで空いているアパートを検索することができます。

マーケットプレイスで成功するには、会員がマルチテナントに魅力を感じないほど、特に供給側で多くの価値を提供する、または「ロックイン」状態にするプロダクト/サービスを構築することです。

プラットフォーム
2面的プラットフォームは、供給側のノード (開発者) と需要側のノード (ユーザー) が、プラットフォームの中間者 (中央ノード) を通じて価値を交換します。プラットフォームそのものも両者にとって有益です。

2面的プラットフォームのネットワーク効果は、2面的マーケットプレイスのネットワーク効果に似ており、対立する目的を持つ2つのサイドを含み、一方の方向に利益をもたらします。一方、供給側は、プラットフォームで独占的に利用できるプロダクトを作成します。供給側は、プラットフォームと統合するために、ある程度の努力をしなければなりません。供給側が作り、販売するプロダクトは、プラットフォームの機能であり、プラットフォームから切り離すことはできません。

プラットフォームとマーケットプレイス・ネットワーク効果の違いは、オンラインマーケットプレイスに比べて、プラットフォーム自体の機能や利点が、ネットワークに対するプラットフォームのユーティリティに大きな役割を果たし得るということです。

プラットフォームもマーケットプレイスと同様、プラットフォームの両側がマルチテナントである可能性があるという脆弱性があります。

漸近的マーケットプレイス
漸近的マーケットプレイスは、そのネットワーク効果がネットワークの発達のある段階を超えると、価値が上昇しなくなることがあります。ある規模を超えると、漸近的なネットワークの成長は、現在のユーザーに価値を追加しなくなります。

ネットワーク効果から得られる価値について調べてみましょう。下のグラフは、さまざまなタイプのマーケットプレイスの価値曲線を示しています。
赤が漸近的なマーケットプレイスです。はじめのうちは、ノードの数が増えればすぐに価値が上がりますが、ある時点で、一定以上の価値を得ることができなくなります。

例として、Uberが挙げられます。なぜなら、Uberの消費者は、4分程度の待ち時間を過ぎると、ドライバーの数が増えてもあまり得をしないからです。需要側の価値の上昇がゼロに近づくと、供給増加の価値は 「漸近 」します。

漸近的マーケットプレイスは、他のタイプのマーケットプレイスよりも競争の影響を受けやすいという特徴があります。マルチテナントの場合、漸近的マーケットプレイスはさらに脆弱になる可能性があります。多くのライダーは、移動のためにLyftとUberの両方を利用し、その時々にどちらが最良の価格と最短の待ち時間を提供しているかによって使い分けています。

🔗 関連記事:
• The Intentional Network Effects of Uber by James Currier (@JamesCurrier)

データ

データネットワーク効果とは、より多くのデータを収集すればするほど、そのプロダクトの価値が上昇するというものです。データネットワークの各ノードは、重要なデータを中央のデータベースに供給します。集約されたデータの価値が高まれば、各ユーザーのデータの価値も高まります。

プロダクトにより多くの利用とより有意義なデータの生成の間に関係がない場合、ネットワーク効果はなく、スケールインパクトがあるだけです。

Wazeは、重大なデータネットワーク効果を持つサービスの優れた例です。Wazeを利用するほぼすべての人が有用なデータを提供しているだけでなく、データはリアルタイムで使用されるため、データセットは定期的に更新されなければなりません。その結果、ネットワークが広ければ広いほど、個々の道路に関するデータはいつでもより正確になります。Wazeは、より多くのデータがほぼ無限に価値を生み出すため、事実上すべてのサービスよりも漸近的なデータネットワーク効果が低くなっています。

技術パフォーマンス

技術パフォーマンスネットワーク効果とは、プロダクトの技術的パフォーマンスがユーザー数の増加に伴って直接的に向上することです。技術的パフォーマンスネットワーク効果を持つネットワーク上のデバイスやユーザーが多ければ多いほど、基礎となる技術の動作が改善・向上されます。その結果、プロダクト/サービスはより速く、より安価に、またはより簡単に使用できるようになります。

技術パフォーマンスネットワーク効果は、技術的な優位性とは異なります。技術的優位性は、競合他社に追いつかれる可能性があるため、長期的な防御力を持ちません。

「社会的 」ネットワーク効果

社会的ネットワーク効果とは、人と人との心理やインタラクションについて述べたものです。人と人の間には、目に見えないネットワークがつながっています。そして、私たちの肉体がノードで、身振り手振りや言葉がリンクになっています。

人々にプロダクトを使う理由を与え、使い続けるという選択を強化することによって、使う人が増えれば増えるほど、その人にとって価値あるプロダクトを作ることができます。

ソーシャルネットワーク効果は構築するのも、防御力を強化するのも最も難しいですが、構築できればプロダクトにとって大きなアドバンテージになります。

言語
言語は、人間のネットワークが互いにインターフェースするためのプロトコルです。歴史上、言語は「勝ち組・負け組」の傾向を示してきました。専門用語は、より多くの人々に受け入れられることで、すべてのユーザーにとってますます価値が高まります。

もしあなたがスタートアップの創業者であれば、2つの方法で言語ネットワーク効果を活用することができます。

1つ目は、ビジネスカテゴリーを作り、そのカテゴリーで1番と呼ばれる存在になる方法です。確かなネットワーク効果を得ることができます。例としてビットコインが挙げられます。ビットコインは暗号の中でNo.1として知られており、最も恩恵を受けています。暗号通貨はたくさんありますが、ビットコインは全体の時価総額の40%近くを占めています。

2つ目の方法は、企業やプロダクトの名前を挙げることです。「ウーバーを呼ぶ」と聞けば、個人タクシーで目的地に行くことを意味します。「ググる」もその好例です。

信念
金、ビットコイン、宗教などに信念ネットワーク効果を見出すことができます。人々が何かを信じると、他の人々もそれを信じたくなります。その結果、人々が信じていることを信じないことには大きな社会的影響があり、人々が信じていることを信じるのをやめることにはもっと大きな影響があるかもしれません。

つまり、人々が信念を信じれば信じるほど、信念を信じる人にとっては価値が高まるということです。

バンドワゴン
バンドワゴンは、人々が仲間外れにされたくないために、あるネットワークに参加せざるを得ないと感じるときに起こります。

たとえば、1998年に人々がGoogleを使い始めたときは、クールな人々がGoogleを使っているという一般的な感覚がありました。Googleを使わなかった人たちは、コミュニティに取り残されたのです。

アップルもバンドワゴンネットワーク効果の好例です。毎年、洗練されたパフォーマンスで新プロダクトのデモとローンチに話題性とFOMOを製造しています。

コンテンツ・ネットワーク効果

コンテンツ・ネットワーク効果とは、ビデオやブログなどのコンテンツをホストするコンテンツ・プラットフォームによって生み出されるものです。これは、ソーシャルネットワーク内の既存ユーザーに依存するコネクションモデル(ユーザー同士を繋げるモデル)とは異なり、新規ユーザーに対してより大きな価値を提供するところまで迅速に到達することを可能にします。

コンテンツ・プラットフォームで作成されたコンテンツは、競争の原点です。YouTubeの動画、インスタグラムの写真、PinterestのPinboardなどが、ユーザーにとっての価値の主要な源泉となります。

コンテンツ・ネットワーク効果は、鶏と卵の問題の解決策の一つと言われています。フェイスブックやツイッターのようなプロダクトは、当初はネットワークで人々を繋ぐことに重点を置いていました。しかし、BehanceやPinterestは、先にユーザーにコンテンツを作らせ、そのコンテンツを他のユーザーが楽しむことで、ユーザーがそのプロダクトを使い続けるようになりました。

🔗 関連記事:
• The Power of Network Effects: Why they make such Valuable Companies, and how to Harness them by Eric Jorgenson (@EricJorgenson)

ネットワークを自己成長させる方法

ネットワークの自己成長・鶏と卵の問題を解決するには、主に2つの方法があります。

1つ目は、シングルモードのユーティリティツールを作り、後からネットワークを構築する方法です (「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」(Come for the tool, stay for the network))。

基本的な考え方は、まずシングルプレーヤーのツールでユーザーを惹きつけ、その後、ネットワークに参加させるというものです。ツールは、クリティカルマスに到達するのに役立ちます。

その好例がインスタグラムです。彼らは革新的な写真フィルターを提供するアプリを開始しました。Hipstamaticという似たようなアプリにもフィルターがありましたが、それは無料ではありませんでした。インスタグラムは、ユーザーがフェイスブックやツイッターなどのネットワークで写真を簡単に共有できるようにしました。その後、インスタグラムは独自のネットワークを開始し、ユーザーがその上で写真を共有できるようにし、時間をかけて巨大なネットワークを構築しました。

🔗 関連記事:
• Come for the tool, stay for the network by Chris Dixon (@cdixon)

従来、ソーシャルネットワークは、最初からネットワークで人と人をつなごうとしていました。フェイスブックなら10日間で7人の友達を作る、ツイッターなら30人をフォローする、といったマジックナンバーをご存じでしょう。しかし、最近のアプリには、まずユーザーにコンテンツを作らせ、たくさんのコンテンツによって、コンテンツネットワーク効果を発揮させるという方法が見受けられます。そのため、コンテンツ・プラットフォーム企業は、コンテンツを作成し公開するための優れたユーティリティ・ツールを提供しています。例として、BehanceやPinterestなどがあります。

2つ目の解決策は、トークンによるインセンティブを利用することです。Web3の発展により、金銭的なインセンティブを持つトークンを発行できるようになりました。その基本的な考え方は、「ネットワーク効果が効いていない成長段階の初期に、トークン報酬を通じてユーザーに金銭的なユーティリティを提供し、ネイティブなユーティリティの欠如を補う 」というものです。Web3モデルは、コミュニティの構築に貢献した人々がその一部を所有できるため、中央集権的なWeb2モデルよりも公平であると言われています。

🔗 関連記事:
• The Web3 Playbook: Using Token Incentives to Bootstrap New Networks by Chris Dixon (@cdixon)

ネットワーク効果を測定する方法

プロダクトの種類によって、ネットワーク効果があるかどうかを確認するための指標はたくさんあります。全体として、5種類に分類されます。

最初のグループのメトリクスは、ユーザーの獲得に関連するものです。

1. オーガニックユーザーと有料ユーザーの比較: 新規ユーザーのうち、何パーセントがオーガニックユーザーか?

もしあなたのプロダクトがネットワーク効果を持つなら、有料ユーザーに対するオーガニックユーザーの割合は、時間とともに増えていくはずです。なぜなら、成長したネットワークは人を惹きつける価値を持っているので、自ら参加したいと思うユーザーが増えるからです。

2. トラフィックのソース: ネットワークが成長するにつれ、ネットワーク上のトラフィックやトランザクションは、ネットワーク自体から発生する内部生成と、外部ソースから発生する外部生成のどちらが多くなっているか?

トラフィックのソースは、ネットワーク上のトラフィックやトランザクションから直接発生したものと、外部から発生したものとを分けて測定することができます。もし、より多くのトラフィックが直接であるとわかれば、それは、ユーザーがネットワークの成長とともに、より価値を見出すようになったことを意味します。

例えば、Mediumが成長するにつれ、より多くの人が外部リンクではなく、Medium上でコンテンツを見つけるようになります。これは、「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」典型的な例と言えるでしょう。

3. 有料CACの時系列: 供給側を獲得するためにいくら必要か?

ビジネスにおける有償CAC (顧客獲得コスト) は、ネットワーク効果の「フライホイール」が加速するにつれて、時間の経過とともに減少するはずです。しかし、これは理論上のことであり、実際には様々な要因に影響されます。

2つ目のメトリクスは、競合他社に関連するものです。

4. マルチテナントの普及率: ユーザーのうち、何人が他の類似サービスも利用しているか?類似のサービスでアクティブになっているユーザーは何人いるか?

機能が同じでなくても、ユーザーが類似のサービスを利用していれば、関連するサービスも含めて理解する必要があります。自社のユーザーが競合他社のサービスも利用していることが分かれば、自社プロダクトを補強して、ユーザーが他へ流出することを防ぐことを検討するべきです。

5. スイッチングやマルチホーミングのコスト: ユーザーが新しい (あるいは存在しない) ネットワークに参加するのは、どれくらい簡単か?別のネットワークに参加する場合、ユーザーは新規ユーザーとしてどれだけの価値を得ることができるか?

あるネットワークのユーザーが、競合他社のネットワークにサインアップし、オンボーディング・プロセスを完了するのがどれだけ簡単かを理解することが重要です。競合のプロダクトが摩擦なく、新規ユーザーが初期に価値を得ることができれば (コールドスタート)、ユーザーがマルチテナント化し、乗り換えるのを促進させることになります。

3つ目のタイプの指標は、エンゲージメントに関連するものです。

6. ユーザーリテンションコーホート: 新しいコホートに対して、ユーザーリテンションは向上しているか?
ネットワーク効果とは、ユーザー数が増えるほど価値が上がるというものなので、新しく登録したユーザーは過去に登録したユーザーよりも高い価値を得ることができます。したがって、ネットワーク効果があるプロダクトであれば、新しいコホートほどリテンション率が向上していることになります。

7. コアアクションのリテンションコホート: プロダクトのコアアクションをしたユーザーコホートのリテンションは、新しいコホートで向上しているか?

コアアクションとは、プロダクトから価値を引き出すための行動であり、ネットワークの密度と効果が高まれば高まるほど、このコアアクションに基づくリテンションの向上が期待されます。

8. 売上継続率と有料ユーザーコホートのリテンション: 新しいコホートは、古いコホートに比べて、一定期間において、より良いリテンションを保っているか?

もし、あなたがサブスクリプションや有料のプロダクトを作っているならば、売上継続率と有料ユーザーリテンションに注目する必要があります。プロダクトにお金を払うということは、そのプロダクトの価値の度合いを示すことになるので、コホートの収益という観点からは、新しいコホートほど高いリテンションが得られるはずです。

9.場所・地域別のリテンション: 地域的なネットワーク効果を持つビジネスにおいて、新しいマーケットよりも古いマーケットのユーザーの方がリテンションが高いか?

最も古い、あるいは最も確立されたマーケットは、新しいマーケットよりもリテンションが高い傾向にあります。なぜなら、ローカルネットワーク効果プロダクトは、ネットワーク効果がマーケットごとに存在し、新しいマーケットには移管できないからです。したがって、地理的に成熟し、ネットワーク密度が高い古いマーケットの方がリテンションが高くなるはずです。

10. パワーユーザーカーブ (別名、L7 & L30チャート): ユーザーはパワーユーザーカーブの右側にシフトしているか?時間の経過とともに、ユーザーのエンゲージメントが高まっているか?

パワーユーザーカーブ (30日間使用の場合はL30チャート、7日間使用の場合はL7チャートとも呼ばれる) は、特定の時間枠の中でユーザーが特定のアクションを実行するためにアクティブだった日数の合計を示すユーザーエンゲージメントのヒストグラムです。ユーザーが特定の行動を実行する頻度をコホート単位で見ることで、ネットワーク効果企業を研究する際に、プロダクトがより多くのユーザーによってユーティリティを獲得しているかどうかを理解することができます。もし、プロダクトの価値がユーザー数の増加に伴って高まっているのであれば、時間の経過とともに、ユーザーの割合がより高頻度のエンゲージメントバケットに移行し、パワーユーザー曲線がより右肩上がりになるはずです。

4つ目のタイプのメトリクスは、マーケットプレイスに関連するものです。

11. マッチング率 (別名: 利用率、成功率など): マーケットプレイスの両者が、どれだけうまくお互いを見つけることができるか?

人は需要や供給を求めてマーケットにやってきます。そして、マーケットはこの2種類の人々をマッチングさせる必要があります。マッチング率とは、買い手が売り手を見つけることができるなど、人々の期待にどれだけ応えられるかを示すものです。

マーケットプレイスの運営者は、マッチングが起きない原因を探り、インセンティブの更新やプロダクトデザインの改善、他の仕組みによって、マッチング率を高める必要があります。

12.マーケットの厚み: 供給は十分か、ユーザーのニーズに合っているか?

「オファーデプス」または「マーケットデプス」という言葉は金融市場に由来し、価格が変動することなく比較的大きな注文に耐えることができるマーケットの能力を意味します。マーケットの深さは、各価格で出された買い注文と売り注文の数によって決定されます。

マーケットの深さは、ユーザーの体験に影響を与え、ユーザーがマッチングを見つけることができるかどうかを決定します。マーケットの厚みが増すほど、ユーザーは必要なサービスやプロダクトを見つける機会が増えますが、供給が多すぎると逆に目的のサービス等を発見するのが困難になり、負のネットワーク効果をもたらすため、この場合、マーケットは検索コストを削減する必要が出てきます。

13.マッチングに要する時間 (または在庫回転率、回転日数): 需要と供給がマッチングするまでにかかる時間はどのくらいか?

マッチングまでの時間が短ければ短いほど、売り手と買い手の双方にとってチャンスが増えます。そして、それはマーケットの価値を高めることになります。

例えば、労働市場で従業員が候補者を見つけるまでの時間や、OfferUpで売り手が商品を売るまでの時間を見ることができます。

14. 需要と供給の集中または分断: 供給側と需要側でマーケットプレイスがどの程度集中しているか?

供給側と需要側の双方で断片化が進んでいるマーケットプレイスは、より価値が高く、防御力が高いと言えます。つまり、需要側と供給側のいずれにおいても、一部の売り手/買い手が不当に大きな取引シェアを占めることがないため、ビジネスの持続可能性と多様性がより高くなるのです。マーケットプレイスにおける需要や供給が集中しすぎていると、重要な買い手や売り手が抜けた場合、取引の大部分が失われるかもしれません。

最後のメトリクスグループは、経済学に関連するものです。

15.価格決定力: 自社プロダクトはいくらで売ることができるか?ネットワークに留まるために、顧客はいくらなら支払ってもよいか?

ユーザーはネットワークからより多くの価値を得ることができれば、ネットワークへのアクセスにお金を払うことを躊躇しなくなります。支払いの種類としては、サブスクリプション、掲載料、またはその他のマネタイズ方法が考えられます。

16. ユニットエコノミクス: 基本的にビジネスはどうなっているか?

ネットワーク効果の向上は、時間の経過とともに単位経済性の改善に反映されることが多いです。これは、事業者がマーケットの様々なセグメントに提供しなければならないインセンティブの数が減少し、有料ユーザーのシェアが低下し、価格決定力が全体的に向上するためです。

🔗 関連記事:
• 16 Ways to Measure Network Effects by Li Jin (@ljin18) and D’Arcy Coolican (@DCoolican)

押さえておくべきポイント

たとえネットワーク効果があるプロダクトであっても、防御力を高めるために留意し、対処すべきことが山ほどあります。

マルチテナント

マルチテナントとは、自社と類似した複数のプラットフォームやサービスを同時に利用することです。これは競合ネットワークに参加するためのスイッチングコストが低いかゼロである場合に発生します。

マルチテナントの例としては、UberとLyftがあります。ライダーはUberとLyftを同時に利用し、価格と時間を比較して、どちらを利用するかを決定することができます。

また、インスタグラム、TikTokなどのソーシャルメディアでも起きています。ユーザーはすべてのプラットフォームで同じコンテンツを投稿しています。

マルチテナントは、ネットワークの防御力を低下させ、ネットワーク効果を減衰させますが、それは一定の範囲に限られます。なぜなら、大規模なネットワークは、新規ユーザー候補をより多く持ち、かつ、既存ユーザーを維持する可能性が高いからで、それらのユーザーがマルチテナントであったとしても、最終的には勝利することになります。

ディスインターミディエーション(仲介者の排除)

ディスインターミディエーションは、ユーザーが最初にマーケットプレイスやマーケットネットワークで取引を開始し、以降の取引をプロダクトから外して直接取引する場合に起こります。これはマーケットプレイスやマーケット・ネットワークでよく見られる現象で、ほとんどの取引ネットワークではリテンションが重要であり、マネタイズの源泉となるため、重要な脆弱性であると言えます。

スイッチング・コスト

「スイッチング・コストとは、消費者がブランド、サプライヤー、プロダクトなどを変更することによって発生するコストのことです。最も一般的なスイッチングコストは金銭的なものであるが、心理的コスト、努力ベースのコスト、時間ベースのスイッチングコストも存在する。」

スイッチングコストが高ければ、ユーザーはライフサイクルを通じて同じサービスやプラットフォームを使い続けるインセンティブがあるため、固定化する傾向があります。

🔗 関連記事:
• Switching Costs by Mitchell Grant

リテンション

リテンションとは、ユーザーがどれだけ頻繁にプロダクトを使用するために戻ってくるかということです。プロダクトチームにとって、リテンションは追跡すべき最も重要な指標です。なぜなら、リテンションが高ければ、何らかのネットワーク効果を見つけやすく、ユーザーがプロダクトやサービスに価値を見出していることを意味するからです。

弱いネットワーク効果は、リテンションが高くないネットワークに起因し、また、ネットワーク効果が弱い場合はリテンションが低くなります。ネットワーク効果は、ネットワークの大きさではなく、利用率の合計によって生じることを忘れないでください。そのため、ネットワークの規模を拡大するだけでは不十分であり、利用率を高めることも同様に重要です。

実名制 vs 偽名制 vs 匿名制

通常、実名に結びついたプロフィールを持つネットワークは、偽名プロフィールや匿名プロフィールを持つネットワークよりも、ネットワーク効果を生み出すのに効果的です。

フェイスブックやリンクトインなどの成功したソーシャル・ネットワークは、リアルアイデンティティ・プロフィールを大規模に必要とするものです。リアルアイデンティティは、評判と信頼が取引を加速させるマーケットプレイスとプラットフォームのビジネスにとっても重要です。

実名を使うことでユーザーのエンゲージメントが高まり、ネットワークのサイズ、密度、アクティビティが向上します。これらはすべて、組織におけるネットワーク効果を高めるために貢献します。ネットワーク効果は、ネットワーク内のノードの関与とコミットメントが高いほど強力になります。

ツイッター、Reddit、スナップチャットは、いずれも本名とは異なるユーザー名を採用していますが、それでも利用されています。これは、先に述べた匿名・偽名ネットワークとは異なり、ユーザーのアイデンティティが長期にわたって永続的で、現実世界のアイデンティティとある程度関連しているためです。

🔗 関連記事:
• Does Real Identity Matter for Networks? by (@JamesCurrier)

蒸発冷却効果

蒸発冷却効果とは、価値の高いメンバーが、コミュニティから何も得られないために離れていき、コミュニティの質が低下してしまう現象のことです。

後からコミュニティに参加した新しい人は、その質が平均より低い人になる傾向があるため、コミュニティが大きくなるにつれて、コミュニティの質も低下していくのです。

それに対処し、蒸発冷却効果の影響を最小化するために、いくつかの提案があります。

まず1つ目は、ソーシャルゲートを設けることです。ソーシャルゲートには、ある程度の基礎知識がないユーザーをコミュニティに入れない形式や、長期間にわたって活動していないユーザーアカウントを定期的に削除する形式があります。また、お金を徴収することも、コミュニティの質を維持するためによく行われる方法です。

2つ目は、コミュニティの特別な貢献者に高いステータスを与えることです。コミュニティの中で高いステータスを持てば、コミュニティを離れる動機がなくなり、蒸発冷却効果のスピードも遅くなります。

最後は、開放性と人とコンテンツのマッチングの両方をコントロールすることです。コミュニティの外部開放性が高く、人々がコミュニティ内の他の人々やコンテンツを簡単に見ることができる場合、コミュニティの成長は相対的に速くなる傾向があります。しかし、このタイプのコミュニティは、蒸発冷却効果に悩まされやすい傾向にあります。

🔗 関連記事: 
• The Evaporative Cooling Effect in Social Network by Cornell University (@Cornell)

ソーシャルネットワークのデススパイラル

メトカーフの法則が素晴らしいと思われているのは、Nが増加することを前提にしているからです。しかし、Nが減少したらどうなるでしょうか。「エフラクタムの法則」という補完法則があり、それは「ユーザーを失うと、ネットワークの価値は指数関数的に減少する」というものです。

現実の例を出すと、パーティーで人気のある人が帰り始めると、パーティーの質が下がっていくのが分かると思います。

理論的には、ソーシャルネットワークのデススパイラルは、プラットフォームやサービスがエコシステム内の最大人数 (N = max) を獲得しても、ネットワークから得られる価値 (= N²) が参加者の期待より低い場合に起こります。

この場合、リテンションは最悪で、ネットワークはかなりの確率でダメになります。なぜなら、エフラクタムの法則で説明したように、人々がサービスやプラットフォームから離れ始め、それが他の人々の離脱を加速させるからです。しかし、ローカルネットワークの一部がすでにクリティカルマスに達しており、それが十分に大きければ、ネットワークは維持されるでしょう。

🔗 関連記事:
• Social network death spiral: How Metcalfe’s Law can work against you by Andrew Chen (@andrewchen)

紛らわしい概念

このセクションでは、ネットワーク効果に関する紛らわしい概念を列挙します。

バイラル効果とバイラリティ

バイラル効果とネットワーク効果を混同されることがあります。ネットワーク効果はリテンションと防御力に関するもので、バイラル効果は新しいユーザーにプロダクトを使ってもらうためのものです。

バイラル効果のあるプロダクトを作るのは、ネットワーク効果のあるプロダクトを作るより簡単だと言われています。また、バイラル効果があるからといって、ネットワーク効果があるプロダクトであるわけではなく、その逆もまた然りです。例えば、JibJab、Buzzfeed、QuizUpのようなバイラル効果のあるプロダクトは一旦は成功しましたが、ネットワーク効果を持たなかったため、短期間で消滅してしまいました。

🔗 関連記事:
• Growth Handbook by Kazuki (@kazuki_sf_)

幾何学的 (指数・非線形) 成長 vs. 線形成長

バイラル効果やネットワーク効果のないサービスやプロダクトは、直線的に成長する傾向があります。しかし、ネットワーク効果を持つビジネスがクリティカルマスに達すると、競合他社に比べてトラフィックを買う余裕があるか、バイラル効果があるため、非線形の成長を示すようになります。

強化

ネットワーク効果が発揮されると、ネットワーク効果を持つビジネスの上に他の種類の防御力を構築することがかなり容易になります。新しい防御力を構築することは、互いに影響し合い、補強し合っています。これを強化 (reinforcement) と呼びます。

規模の経済性 (スケール効果)

「規模の経済とは、生産が効率的になったときに企業が享受するコスト上の利点のことです。企業は生産量を増やし、コストを下げることで規模の経済を実現することができる。これは、コストがより多くの商品に分散されるために起こる。」

規模の効果が出始めると、ユーザーにとっては、規模の優位性がある企業を選ぶのは当然のことです。なぜなら、ユーザーが増えればボリュームが増え、それがサプライヤーからの安値につながり、そして顧客にとっては価格が安くなるからです。

🔗 関連記事:
• Economies of Scale by Will Kenton

ブランド

図表にあるように、ブランドは企業にとって強力な防御力の一つであり、ネットワーク効果とは異なるものです。あなたが誰で、何をしているのかが人々に認知されることで、ブランドが出現します。確立されたブランド・アイデンティティには、心理的なスイッチング・コストが存在します。人々は、慣れ親しんだものを好む心理があるため、あなたのブランドから、なじみのない、あるいはあまり知られていないブランドへ移行する傾向は低くなります。

エンベッディング

エンベディングも、図に「EMBED」とあるように、企業にとって有力な防御力の一つです。エンベッディングは、ユーザーの活動に直接プロダクトを組み込むことによって達成され、ユーザーがかなりの時間やエネルギー、またはその両方のコストを払わずに、競合他社に置き換えることを不可能にするものです。つまり、スイッチングコストを直接的に高めます。

ユーザーが個人ではなく、組織である場合、エンベッディングはより一般的になります。個人の日常生活にプロダクトを埋め込むのは難しいからです。エンベッディングの例としては、Workday、Oracle、SAPなどがあります。


この記事がネットワーク効果の全体像を理解する一助となれば幸いです。何か質問があれば、ツイッターリンクトインのDMでお願いします。

次に何をすべきか覚えていますか?

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。

では、また次回。
Kei


フォローして最新情報をチェック!

クリプトとNFT: Web3におけるネットワーク効果

クリプトとNFTを活用したWeb3プロジェクトは、複数の種類のネットワーク効果を組み合わせているが、それらのネットワーク効果も比較的弱い…少なくとも今のところ。


▼本記事の内容
  1. イーサリアム: レイヤー1 プロトコル
  2. アクシー・インフィニティ プレイ・トゥー・アーンのNFTゲーム
  3. 結論

*この記事は「Crypto & NFTs: Network Effects in Web3」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Sameer Singh
翻訳者: 渡辺圭祐


Web3は、2021年の技術トレンドを決定付けるものとなっており、その中心はネットワーク効果です。まず、文脈を整理することから始めましょう。

• Web 1.0は、ユーザーがオンラインで情報にアクセスできる「読み取り専用」のインターネットの段階でした (例: Yahoo, Googleなど)。

• Web 2.0は、ユーザーが情報にアクセスするだけでなく、それを作成することもできる「読み書き」の段階への移行でした (例: Facebook、Wikipedia)。この時代の価値創造は、企業からユーザーへと移行しましたが、依然として企業が所有・運営する閉じたネットワークの中で行われていました。

Web3はインターネットの次のフェーズで、ユーザーによって所有・運営される分散型ネットワーク上で価値創造が行われることを意味しています。これは、暗号プロトコルやNFTを含む様々な補完的イノベーションによって実現されています。

この記事の目的は、Web3の可能性や技術的な複雑さを解明することではなく、この時代におけるネットワーク効果の本質に焦点を当てたいと思います。

これまで、私は様々なWeb3プロジェクトにおいて、4つのユニークなネットワーク効果モデルのうち3つ(マーケットプレイスインタラクションネットワークプラットフォーム)に出会ってきました。これらのWeb3モデルには、いくつかの共通した特徴があります。

1. ネットワーク効果はネイティブにレイヤー化されており、どのプロジェクトでも複数の形態のネットワーク効果が組み合わされています。
2. また、そのネットワーク効果は、少なくともこれまでのところWeb 2.0の亜種と比べると弱く、防御力に欠けます。

これらのパターンについて、2つのケーススタディ (イーサリアムアクシー・インフィニティ) を使って説明します。それらはまた、そのネットワーク効果がより広いWeb3の背景と多くの特性を共有しているため、代表的な例です。

イーサリアム: レイヤー1 プロトコル

イーサリアムはしばしばレイヤー1プロトコル(大文字の「L」)と呼ばれます。つまり、他のプロジェクトが作成される際の基盤となるブロックチェーンの「コンピュータ」です。上のアニメーションは、イーサリアムにおける3つの異なるタイプのネットワーク効果を示しています。それらをより深く見てみましょう。

ネットワーク効果1:イーサリアムのブロックチェーンとイーサトークン(インタラクションネットワーク)

イーサリアムのブロックチェーンは、基本的に相互に接続されたコンピュータまたはノードのネットワークです。これらのノードはトランザクションを検証し、その努力の報酬として新しいイーサトークンを「造幣」します。ノードの追加により、プロトコルのスループットまたは容量が増加し、より多くのトークン取引と開発者の活動をサポートできるようになります。一見すると、これは単純で一方的なネットワーク効果に見えます。しかし、これは見た目よりも微妙なものです。なぜなら、より多くのノードが追加されても、他のノードのプロトコルの価値が上がるわけではないからです。むしろ他のノードにとっては、取引を検証して新しいトークンを鋳造するための競争が激しくなるため、価値が下がるのです。しかし、ノードが増えることで、イーサトークンの買い手にとっては容量が増え、その分価値が上がります。トークンの買い手が増えればイーサトークンの価値が上がり、その結果、ノードがトランザクションを検証する価値が高まります。言い換えれば、これらは2サイドのインタラクションネットワークにおけるクロスサイドネットワーク効果であり、サイドスイッチングが組み込まれています (トークン購入者はバリデーターにもなり得ますし、その逆もしかりです) 。

しかし、このネットワーク構造は、いくつかの課題も生み出しています。(1) 独特の負のネットワーク効果、(2) コモディティ化リスクです。まず、負のネットワーク効果について掘り下げましょう。イーサリアムやその他の暗号プロトコルは、ネットワーク輻輳のリスクに直面しています。つまり、アクティビティが多すぎるとプロトコルのキャパシティを圧迫し、取引手数料や処理時間の高騰につながる可能性があります。そのため、ある点を超えると、あるトークン購入者の追加は、他のすべてのトークン購入者のネットワークの価値を低下させます。このような負のネットワーク効果は、Web 2.0プロダクトには存在しません。これは暗号と電話やブロードバンドのような物理的ネットワークに特有のもので、トラフィックが多すぎると速度やサービス品質が低下してしまうのです。

2つ目の課題はコモディティ化リスクです。これは、ブロックチェーンがIDに依存しない、つまり各ノードのIDが他のノードやトークン購入者にとって重要でないことが一因です。そのため、新しいノードが増えるたびに、ネットワークへの付加価値が減少していきます。これをオリジナルの電話網のネットワーク効果と比較してみましょう。ブロックチェーンプロトコルとは異なり、電話ネットワークはアイデンティティに焦点を当てたものでした。つまり、特定の人が電話を持っていない場合、他の人が持っていても、その人と連絡を取ることはできませんでした。つまり、電話網のユーティリティは普及が進むにつれて、電話できる特定の個人の数が増えるにつれて、成長し続けたのです。これに対し、ブロックチェーンのインタラクションネットワークのネットワーク効果は、その規模が大きくなるにつれて弱まり、防御力が低下します。競合するブロックチェーンプロトコルは、単に取引量や活動量に対して「十分に大きく」なれば、競争することができます。そのため、競合するブロックチェーンプロトコルとトークンが乱立することになったのです。

ネットワーク効果2: イーサリアムのスマートコントラクト(プラットフォーム)

スマートコントラクトや分散型アプリ (DAppsまたは「レイヤー2」) を作成・実行する機能は、イーサリアムのプロトコルの要となるものです。DAppsはブロックチェーンの上に作成されたプログラムで、あらかじめ指定された条件に基づいて自動的に実行されます。エンドユーザーはこのDAppsと対話・取引するためにイーサトークンを取得する必要があります。その結果、イーサリアムのプロトコルにDApp開発者が加わることで、買い手にとってのイーサトークンの価値が高まります。これは、プラットフォームの特性を多く持っていますが、いくつかの重要な違いがあります。

第一に、Web 2.0プラットフォーム (iPhone、Salesforce、Shopifyなど) に見られる「マッチング」(または「アプリストア」) 要素がありません。これは、Web3がオープンなアーキテクチャを重視しているため、設計上そうなっています。しかし、これではユーザーが適切なDAppを見つけることが難しくなり、ネットワーク効果を弱める可能性があります。もちろん、サードパーティのアプリストアが時間をかけてこれを補うことは可能です。

第二に、ここにはイーサトークン以外の基礎的なプロダクトが存在しません。プラットフォームは通常、ユーザーがプラットフォームと一緒に関与する基礎的なプロダクトを持っています。この基礎となるプロダクトは、プラットフォームによって生み出される価値のほとんどを獲得することになります。例えば、iPhoneは、iOSアプリストアの最大の経済的利益を享受しています。アプリストア (プラットフォーム) に開発者が加わることで、ユーザーにとってiPhone (基礎プロダクト) の価値が高まったのです。しかし、イーサリアムの場合、開発者の追加は、買い手にとってイーサトークンの価値を高めるだけです (参照:Fat protocols)。イーサトークンは流動的でスイッチングコストがゼロであるため、ユーザーはいつでもそれを売却して別のトークンを購入し、別のブロックチェーン (例:ソラナ) 上に構築されたDAppsにアクセスできるため、これは防御力に直接影響を及ぼします。あなたがiPhoneをAndroid携帯、Windows携帯、Blackberryに数回タップするだけで変えることができ、それぞれの開発者のエコシステムにアクセスできると想像してください。もしそうだとしたら、iPhoneのプラットフォームネットワーク効果は、たとえそれが開発者によるより迅速なイノベーションにつながったとしても、意味のある防御の形ではなくなります。これがレイヤー1ブロックチェーン・プロトコルの才能であり、呪いでもあるのです。

この2つの要因によって、ビットコインやイーサリアムを超えて、カルダノからソラナなど、新しいレイヤー1ブロックチェーン・プロトコルの波が押し寄せているのです。

ネットワーク効果3: 構築可能性 (インタラクションネットワーク)

これは、レイヤー1プロトコルに防御力が無いということではありません。レイヤー1プロトコルは、開発者側のスイッチング・コストの恩恵を受けることができます。これは、スマートコントラクトの構築可能性、つまり開発者が既存のスマートコントラクトのコンポーネントを「リミックス」して新しいスマートコントラクトを作成できることに大きく起因しています。これは、TikTokのクリエイターが他の動画をリミックスして新しい動画を作成することと類似している部分があります。これは、プラットフォームの上に重ねられた別のネットワーク効果 (インタラクションネットワーク) と考えてください。あるプロトコルのスマートコントラクトが多ければ多いほど、開発者が新しいものを作るのは容易になります。しかし、クロスチェーンの構築可能性、つまりプロトコルをまたいで構築されたスマートコントラクトの構築可能性は、防御力への影響を希薄にする可能性があります。

ここで、イーサリアムや他のレイヤー1プロトコルの上に構築された実際の例であるDAppsに話が及びます。これらの多くはNFTを利用しており、簡単に言えば、ユニークなデジタル資産 (例えば、コレクションカード) と考えることができます。LootBored Ape Yacht ClubCryptoPunksのように、魅力的なコミュニティと行動を生み出しているものもあります。しかし、その価値や有用性がまだ不明確であるため、彼らのネットワーク効果を分類することは困難です。これは技術サイクルの初期段階では珍しいことではなく、実験することと伝道することが常に実用性に先行しています。他のタイプのDAppsはすでに明確なネットワーク効果を持っています。例えば、プレイ・トゥ・アーンのゲーム、つまりプレイヤーが遊ぶことによってトークンを獲得できるゲームです。その中で最も顕著なものを見てみましょう。

アクシー・インフィニティ プレイ・トゥー・アーンのNFTゲーム

アクシー・インフィニティは、2021年11月現在、月間プレイヤー数が220万人を超える最大のP2E (Play to Earn) ゲームです。上のアニメーションでご覧いただけるように、アクシー・インフィニティは4つの異なるネットワーク効果を兼ね備えています。

ネットワーク効果1:P2Eゲーム (インタラクションネットワーク)

このゲームはポケモンと似ているところがあり、プレイヤーはアクシーと呼ばれる生き物を育成し、バトルし、トレードできます。各アクシィは様々な属性とタイプを持っており、他のタイプに対して効果があったりなかったりします。プレイヤーは、バトルやその他のゲーム内のチャレンジに勝つと、報酬としてスムーズラブポーション (SLP) トークンを獲得します。このトークンを取引したり、売却することで、プレイヤーの収入源とすることができ、これが本作の「稼ぐ」要素です。

もちろん、これはマルチプレイヤーゲームなので、『Minecraft』や『Fortnite』のようなインタラクションネットワークになります利用者数が高ければ、他のプレイヤーとの発見、バトル、トレードの機会も多くなります。そのため、収入を得る能力も利用率に関係しています。ただし、これもアイデンティティにとらわれないもので、各プレイヤーのアイデンティティは重要ではありません。そのため、プレイヤーの利用率が上がっても、ゲームのユーティリティや稼ぐ力はある一定以上には上がりません。これは、このネットワーク効果の防御力に直接的かつマイナスの影響を及ぼします。

実際、初期のデータでは、プレイヤーの普及が進むとネットワークの混雑が生じ、稼ぐポテンシャルが低下する、つまり負のネットワーク効果が生じていることが指摘されています。これは、他のP2Eゲームにプレイヤーを奪わせ、競争させる絶好の機会を与えることになります。ですから、Splinterlands のような代替 P2E プロジェクトが人気を博していることは、驚くことではありません。Illuvium や Blankos Block Party のような今後登場するプロジェクトも、強い関心を集めています。

ネットワーク効果2: アクシー・マーケットプレイス (マーケットプレイス)

アクシー・マーケットプレイスは、アクシー・インフィニティのネットワーク効果の第2レイヤーとなるものです。この名前は一目瞭然で、プレイヤーがアクシー (およびその他のゲーム内アイテム) を売買するためのマーケットプレイスです。これは、サイドスイッチのあるWeb 2.0のマーケットプレイス (例: Poshmark) と劇的に異なるものではありません。その結果、マーケットプレイスのネットワーク効果は、ゲームのインタラクションネットワーク効果を強化することになります。プレイヤーはより多くのアクシーを繁殖させ、ゲーム内アイテムの多様性を高め、ゲームの価値と魅力を高めるのです。

注意すべき点は、アクシーはNFTであるということです。つまり、プレイヤーが自分のアクシーをOpenseaのような他のNFTマーケットプレイス (それ自体が強力なネットワーク効果を持つWeb 2.0スタイルのマーケットプレイス)で販売することを妨げるものは何もないのです。しかし、それぞれのアクシーはユニークな属性を持っており、アクシーの供給は非常に多様です。また、アクシー・マーケットプレイスはゲームと統合されているため、Openseaのようなサードパーティマーケットプレイスと比較して、ユニークなアクシーやゲーム内アイテムの「ロングテール」を集約することがはるかに容易です。その結果、2021年11月現在、アクシー・マーケットプレイスの取引者数はOpenseaの40%増となっています。

供給の差別化のおかげで、アクシー・インフィニティのマーケットプレイスを構成している要素は高い防御力を持ち、すなわちアクシー・マーケットプレイスはゲーム内アイテムの購入先であり続ける可能性が高いです。ただし、マーケットプレイスは、プレイヤーが他のP2Eゲームに移行するのを防ぐことはできないため、ゲームのエンゲージメントを維持するという防御力があることになります。

ネットワーク効果3:DAO(インタラクション・ネットワーク)

アクシー・インフィニティは、もともとスカイメイビスチームによって作られたものです。しかし、スカイメイビスはAxie Infinity Shards (AXS) という別のトークンの助けを借りて、アクシー・インフィニティのガバナンスをDAO (分散型自立組織) に移管することを目指しています。アトミコエンジェル (Atomico Angel) の仲間サラ・ドリンクウォーターはDAOを「目標とお金を共有したグループチャット」と表現していますが、これは正確な要約です。簡単に説明すると、AXSトークンの保有者は、アクシー・インフィニティ・プロジェクトの将来のロードマップを管理し投票するグループ (またはDAO) の一員となり、本質的に分散型経営陣の役割を担うことになるのです。

これはまた別の形のインタラクションネットワークであり、アイデンティティが防御力に影響します。この場合、ユーザーのアイデンティティの重要性はネットワークの規模に依存します。DAOの初期段階では、すべての参加者がお互いを知っており、信頼しているため、アイデンティティが重要になります。ユーザーが加わることで、視点の多様性が増し、アクシー・インフィニティ・プロジェクトへの影響も大きくなります。しかし、より多くの人がAXSトークンを取得し、エコシステムに参入することで、DAOは一握りの参加者から数千人以上に拡大することが可能です。スケールすると、AXS保有者の追加が、それ以上の価値をプロジェクトに与えることはなくなります。つまり、ネットワーク効果の価値は時間とともに平坦化または漸近化し、防御力が低下します。

しかし、DAOには他の利点もあります。オーナーシップとプロジェクトの将来について投票できるため、別の形の防衛力を導入できるのです。つまり、プロジェクト/コミュニティの成功 (および他者の失敗) に対する感情的な愛着や部族的な忠誠心です。これはネットワーク効果というよりも、心理的なスイッチングコストです。しかし、この場合、ネットワーク効果そのものよりも意味のある防衛力の一形態となる可能性があります。

ネットワーク効果4:アクシー・インフィニティ奨学金プログラム(プラットフォーム)

アクシー・インフィニティの最後のネットワーク効果レイヤーは、アクシー・インフィニティが生み出したエコシステムと関連しています。アクシー・インフィニティをプレイするためには、プレイヤーはアクシー・マーケットプレイスから3つのアクシーを購入する必要があり、最も安いものでも約200ドルかかります。これは、多くのプレイヤー、特に新興国のプレイヤーにとって大きな投資となります。この参入障壁を低くするために、アクシーを志望者に「レンタル」する「奨学金」プログラムが登場しました。奨学生がゲームから得た収益の一部を奨学金制度に提供する仕組みで、学生ローンとあまり変わりません。奨学金制度が増えれば、「アクシー・インフィニティ」は新たなプレイヤーにとって身近な存在になります。また、「アクシー・インフィニティ」を利用したい人が増えれば、奨学金制度の市場ポテンシャルが高まります。これは、アクシー・インフィニティを基軸としたプラットフォームとしての性格を持ちます。しかし、これはアクシー・インフィニティに限ったことではありません。これらのプログラムの多くは、Yield Guild Gamesのように、その後、The Sandboxのような他のP2Eゲームに拡張されています。それらのように、ここでのネットワーク効果は弱いままであり、持続的な防衛力の源泉とはなっていません。

結論

これらのケーススタディは、魅力的なクリプトとWeb3プロジェクトの多様なリストの中の2つに過ぎません。しかし、これらのネットワーク効果のパターンの多くは、Web3全体でも見られます。つまり、ネイティブにレイヤー化されたネットワーク効果で、防御力が比較的弱いのです。このことから、私は2つの予備的な仮説を立てました。

1つ目の可能性は、この時代、真のネットワーク効果はもはや構造的な防御力のソースとしては意味をなさないということです。その代わり、防御力は各プロジェクトコミュニティの部族的・心理的なスイッチングコストに依存することになります。この可能性は無視できませんが、私は懐疑的です。心理的なスイッチングコストは現実のものですが、この説明では、この時代にまだ起こっていないイノベーションの量をごまかすことになります。また、アクシー・マーケットプレイスやOpenseaは、たとえそれが今のところWeb 2.0を彷彿とさせるとしても、強力なネットワーク効果がまだ可能であることを示しています。

2つ目の可能性は、持続可能な防御性が現れるには、Web3のサイクルではまだ早すぎるということです。Web 1.0の初期の頃のYahooやWeb 2.0のMyspaceと似ていますね。言い換えれば、ほとんどのプロジェクトはまだWeb3の機能を試している段階であり、長期的な勝者 (より強力で防御可能なネットワーク効果) は、この実験段階の後にしか現れないでしょう。これが私の結論です。

もし、2つ目が最も可能性の高い説明であるならば、今後のWeb3プロジェクトにおけるネットワーク効果を評価するための幅広いフレームワークが必要です。ネットワーク効果には確かに面白いニュアンスがありますが、それを定義する基本的な問いは変わりません。

  • インタラクション: ユーザーはどのように他者と交流しているのか?
  • ネットワーク効果: あるユーザが加わることで、すべてのユーザの価値が向上するか?
  • スケーラビリティ (拡張性): 新しいユーザーはどのような形で価値に影響を与えるか?何か制限はあるか?
  • 防御性: 利用が進むにつれて、どのように変化するか?

これらの質問は、Web3プロジェクトの可能性を評価する上で非常に重要です。Web3の能力とより強力なネットワーク効果レイヤーを組み合わせたものが、この時代の最大の勝者になる可能性があります。

謝辞 サラ・ドリンクウォーターカイル・トレイジ
この記事についてご意見をいただきました。


フォローして最新情報をチェック!

TikTokと組分け帽子(TikTokのアルゴリズムとインタレストグラフの構築)

私はよく自分のことを文化的決定論者と表現しますが、これは他の支配的な世界観を持つ人々と区別するための手段であり、厳密な信奉者ではありません。というよりも、多くの場合、人々が文化以外のものに因果関係のある力を与えようとするとき、私はすぐに疑ってしまうのです。


*この記事は、「TikTok and the Sorting Hat」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Eugene Wei
翻訳者: 渡辺圭祐


2010年代は、中国のコンシューマーテック業界を追う上で興味深い時期でした。私は2011年にHuluを退社しましたが、サテライトオフィスであるHulu北京オフィスのチームとは今でも連絡を取り合っています。2011年に最後にHulu北京オフィスを訪れたとき、私は中国の新しいハイテク企業が米国マーケットに進出することはないだろうと思っていました。

米国には強力な既存企業があるし、中国のハイテク企業はまだ発展途上であるというだけではなかったのです。私の初期の仮説は、私が「文化的無知のベール」と呼んでいるものが、あまりにも不可解な障壁であるというものでした。つまり、WEIRD (Joseph Henrichの略語で、Western、Educated、Industrialized、Rich、Democraticの頭文字) ではない国の企業は、WEIRDな文化に進出するのに苦労するだろうと。私はその逆、つまり米国企業が中国やインドで競争することにも懐疑的でした。2つの国の間の文化的な距離が長ければ長いほど、一方の国の企業が他方の国で競争するのはより困難になるでしょう。それを克服するには、現地のリーダーシップチームを雇うか、その国の文化を熟知した人材を米国から送り込むことが必要だと考えられました。

ほとんどの場合、それは正しいのです。WeChatは米国に進出しようとしましたが、中国の友人や家族、仕事仲間とのコミュニケーションにこのアプリを使っていた中国系米国人を取り込むことしかできませんでした。

逆に言えば、米国は中国に大きな影響を与えていないということになります。グレートファイアウォールが多くの米国企業を中国マーケットから締め出すのに大きな役割を果たしたのは明らかですが、Uber Chinaのように米国企業が中国のマーケットに参入した数少ないケースでは、その結果はまちまちでした。

そのため、私はTikTokに魅了されています。2020年、私を含む多くの人々にとって、TikTokは最も面白いショート動画アプリです。米国政府は国家安全保障上のリスクとしてTikTokを禁止することを検討しています。それは今、誰もが知っている話題ですが、私はTikTokがどのようにして中国以外のマーケット、特に強力な既存企業が存在する米国で足場を固めたのかを追跡することに興味があります。

人は失敗から最も多くを学ぶと言われますが、それと同じように、私は例外から自分のメンタルモデルについて最も多くを学びます。上海の二人の男がデザインしたアプリが、YouTube、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットといった米国の動画アプリを追い回し、それが作られた文化とは全く異なる文化の中で、ミームの発生、変異、拡散の最も肥沃な源となったのはなぜでしょうか?

その答えは、国境を越えた技術競争の将来や、プロダクト開発者がどのようにプロダクト・マーケット・フィットを達成するかを理解する上で、重要な意味を持つと私は考えています。TikTokの台頭は、私の考えを一新しました。いくつかのカテゴリーでは、機械学習アルゴリズムの応答性と精度が高ければ、文化的な無知のベールを突き破ることができることがわかりました。今日では、文化が抽象化されることもあります。

TikTokの物語は、2014年、上海から始まります。Alex ZhuとLuyu “Louis” Yangは、教育用の短編動画アプリを立ち上げていましたが、全く人気がありませんでした。彼らは、口パクのミュージック動画に軸足を移すことを決め、米国と中国でMusical.lyを立ち上げました。皮肉なことに、このアプリは太平洋を越えてからの方が人気が出たため、彼らは自国である中国での取り組みをやめ、アメリカのマーケットに力を注ぎました。

初期のユーザー層は、アメリカの10代の女の子が中心でした。人気曲の公式バージョンに合わせて口パクをし、その動画を視聴者に配信して社会的なフィードバックを得ることができるアプリがついに登場したのです。

このアプリが人気を博したことは進歩的でした。しかし、このアプリには、アレックスとルイス、そして彼らのチームに問題がありました。アメリカのティーンエイジャーの女の子たちは、アレックスとルイスが本当に理解している視聴者ではありませんでした[1]。

[1] 公平に言えば、ほとんどのアメリカの親たちは、自分たちがティーンエイジャーの娘を理解していないと言うでしょう。

中国とアメリカの技術背景が重なり合っているこの時代、中国のマーケットはグレートファイアウォールのために、アメリカのテック企業にとってほとんど理解できないものでした。しかし、その逆に、アメリカは中国企業にとって、アメリカの文化的なファイヤーウォールともいえるもののために、ほとんど侵入できない状況にあります。ドローンのDJIを除けば[2]、Musical.ly以前に米国で本格的に進出した中国製アプリは思いつきません。初期の牽引力を高めるために、Musical.lyはこの文化的障壁を乗り越えなければなりません。

[2] DJIがアメリカで成功した理由の一つは、ドローンのオペレーションインターフェースが、標準的なオペレーションインターフェースを多用しており、文化的に特異なものではなかったということです。

「顧客の要望を聞けば、より速い馬を求めるだろう」と言われてきました (ヘンリー・フォードの言葉ですが、本当ではないかもしれない)。率直に言って、これは半分馬の言葉です。まず、お客さまが騎手だったらどうでしょう?

第二に、顧客の声だけに耳を傾けることはできませんが、顧客の声に耳を傾けることは堅実なSaaSビジネスを構築するための確実な方法であり、 コンシューマー分野であっても有用なシグナルを提供してくれます。以前にも書きましたが、顧客は「もっと速い馬が欲しい」と言うかもしれません。あなたが聞くべきことは、 馬にステロイドを注射することではなく、顧客の現在の移動手段である馬が遅すぎると感じているということです。

アレックスとルイスは、Musical.lyのアーリーアダプターの声に耳を傾けました。このアプリではフィードバックチャンネルを簡単に見つけることができました。また、このアプリを毎日使っているアメリカの10代の女の子たちは動画作成を簡単にするために何が必要かを積極的に話してくれました。彼女たちはプロダクトリクエストを大量に送り、Musical.lyチームのプロダクトロードマップの作成に貢献しました。また、透かしの入った動画を簡単にダウンロードして、YouTube、フェイスブック、インスタグラムなど他のネットワークで配信できるようにするなど、巧妙なグロースハックと相まって、ターゲットマーケットでうなぎ上りの成長を達成することができたのです。

しかし、Musical.lyは最終的に見えない漸近線にぶつかってしまいました。アメリカの10代の女の子の数は限られています。そのマーケットを飽和させてしまうと、利用者数と成長率は横ばいになってしまいました。そのとき、それまで断っていた中国のテクノロジー企業であるBytedanceが、『リトル・ウーマン』の最後に登場するジョー・マーチのベアー教授のように、突然魅力的に見えてきたのです。Musical.lyは中国で開発されたものの、中国では失敗し、代わりに米国で人気を博したアプリです。それを模倣してDouyinというアプリを作り、中国で成功していたBytedanceが皮肉なことに、その元のアプリであるMusical.lyを買収することになりました。

買収後、Bytedance社はMusical.lyをTikTokとして再ブランド化しました。しかし、もしそれだけであれば、なぜこのアプリが新しいオーナーの下で、停滞から見事に脱却したのかは明らかではありません。結局のところ、Bytedanceは米国政府がこの取引を承認すれば300億ドルから700億ドルで売れると噂されているアプリに、わずか100億ドルを支払ったにすぎません。

Bytedanceは、TikTokの成長を促進するために、特に二つのことを行いました。

まず一つ目は、財布を開き、かつて中国の富裕層がアメリカの不動産にお金をかけたように、アメリカでのユーザー獲得にお金をかけ始めました (6年前のコンドミニアム探しで、中国の全額現金払いのオファーに何度も負けたことを今でも恨んでいるわけではありませんよ)。TikTokは月に8〜9桁の広告費を費やしていると噂されていました。

TikTokの広告がどこにでもあることが、この説の信憑性を高めました。YouTube、インスタグラム、ツイッター、フェイスブック、モバイルゲームなど、いたるところでTikTokの広告を目にしました[3]。もしBytedance社が、私のまぶたの裏の広告を20ドル以下のCPMで購入できるのであれば、間違いなくそうしていたと思います。

[3] TikTokの広告は奇抜です。モバイルゲームで見るアプリの動画広告は、アプリが何であるか、何をするかについて何も伝えていません。何十回も見た広告では、おばあさんがリビングで突きをしていたり、子供が髪を乾かすと髪の色が変わったりしています。広告はもっとうまくアプリを売ることができると思うのですが、どうでしょう?

最初は賢明な投資とは思えませんでした。噂ではファネルの頂点に注ぎ込まれた新規ユーザーの30日間のリテンションは10%以下だと言われていました。彼らは広告費に火をつけているように見えました。

最終的には、その費用に対するROIは編曲点を迎えることになりますが、それは米国のマーケット獲得のための第二の要素である、BytedanceがTikTokに導入した最も重要な技術の一部、更新されたFor You Pageフィードアルゴリズムのおかげです。

Bytedanceはソフトウェアエンジニアのうち、アルゴリズムに注力している割合が非常に高く、最終的には半分以上を占めています。アルゴリズムの会社として知られており、最初はアルゴリズムを使ったニュースアプリ「Toutiao」でブレイクし、次にMusical.lyクローンの「Douyin」、そして今回のTikTokでもその名を知られています。

TikTokが登場する前、私はYouTubeが動画における最強の活用アルゴリズムを持っていると言っていましたが[4]、TikTokと比較するとYouTubeのアルゴリズムは原始的に感じられます (YouTubeのトップクリエイターたちは、クリック率と視聴時間に大きく依存するYouTubeのアルゴリズムを攻略する方法をとっくに見つけ出していますが、そのために多くのYouTube動画が徐々に長くなっているのは、私にとっては残念なことです) 。

[4] 探索と活用の問題は、アルゴリズム設計の古典のようなもので、通常は多腕バンディット問題との関連で語られます。ここでは単純に「どの動画を見せるか」という問題と考えてください。活用型のアルゴリズムは、あなたが好きなものをより多く提供し、探索型のアルゴリズムは、あなたが好きだと示したものだけでなく、より多くのものにあなたを触れさせようとします。YouTubeはよく活用型アルゴリズムと言われますが、それはあなたが好きなものをより多く押し付ける傾向があるからで、いつの間にかあなたを再教育しようとするオルタナティブ・ライトの動画を見ていることになります。

Bytedance社がMusical.lyを買収してTikTokというブランドに変更する前、DouyinというMusical.lyのクローンは、その効果的なアルゴリズムのおかげで、すでに中国マーケットでセンセーションを巻き起こしていました。数年前に北京を訪れた際、Hulu北京の元同僚たちと再会したのですが、彼らは皆、Douyinのフィードを見せてくれました。彼らはこのアプリが恐ろしく中毒性があり、アルゴリズムが不気味なほど鋭敏だと述べました。彼らの中には、毎晩ベッドに横になって動画を見るだけで1〜2時間が過ぎてしまうため、何ヶ月もスマホからアプリを削除せざるを得なかったという人もいました。

同じ旅行中に、元Huluの開発者で、現在はBytedanceのエンジニアリング部の上級幹部になっている人とコーヒーを飲みました。もちろん、アルゴリズムの仕組みについては口を閉ざしていましたが、アルゴリズムに特化した彼らのインフラの規模は明らかでした。街中にいくつかあるBytedanceのオフィスのひとつであるこのオフィスに出入りするたびに、オープンなフロアプランの中で何百人ものワーカーが横一列に並んで座っている様子に目を奪われました。それは、アメリカのフェイスブックのような巨大企業で見たものに似ていたが、さらに密度の高いものでした [5]。

[5] 目まぐるしいほどの雰囲気です。彼がうまくやっていることはよくわかりました。彼は私と友人たちをオフィスの地下にあるLuckin Coffeeに連れて行き、彼のスマホのアプリで飲み物を注文するように言いました。私が飲み物の代金を払おうとポケットから人民元を取り出そうとすると、彼は私の腕に手をかけて止めました。すると彼は「大丈夫、俺にはこれくらいの余裕があるよ」と笑いながら言ったのです。彼は決して自慢しているわけではなく、自分たちがどれだけうまくやっているかについて、まるで羊のように語っていました。その後、事務所の外の駐車場で待っていると、彼が通りかかり「車で送ろうか」と声をかけてきた。と聞かれたので「いや、地下鉄で行くよ」と答えました。すると、テスラのモデルXがやってきて、係員が車を降りると、彼は車に飛び乗って走り去っていきました。

Bytedanceでは、他社よりも多くの動画の特徴を調べているという噂があります。もしあなたがゲームのキャプチャをフィーチャーした動画が好きなら、アルゴリズムはその動画に注目します。子犬をフィーチャーした動画が好きなら、その動画は注目されます。私が調べたDouyinのフィードはどれも特徴的でした。私の友人たちは皆、このアプリで短時間過ごしただけで、自分の味覚にロックされてしまったと言っていました。

これこそが、何よりもBytedance社がMusical.lyをTikTokに変えるために採用した重要なアップグレードだったのです。Bytedance社の友人たちは、Musical.ly (現在のTikTok) をBytedance社のバックエンドアルゴリズムに接続した後、アプリの使用時間が2倍になったと、誇りを持って主張していました。私はその前後のデータを持っている友人たちに聞くまでは半信半疑でした。グラフの段階的な変化は、決して微妙なものではありませんでした。

Musical.lyがTikTokに改名された当時、Musical.lyはまだティーンエイジャーの女の子が口パクで動画を撮るのが主流でした。当時、米国の10代の若者の多くは、TikTokを「キモイ」と評していました。これは何がクールかということに気まぐれな若者の間で拡大しようとしているネットワークにとって、死を意味します。当時、このアプリをスクロールしていると、高校時代の劇団員の集まりを盗み聞きしているような気分になりました。面白かったですが、メインストリームのエンターテイメントの定番とは言えませんでした。

そこで、Bytedance社の莫大なマーケティング費用とTikTokのアルゴリズムの力のワンツーコンビネーションが救いの手を差し伸べたのです。ネットワークがアーリーアダプターグループから脱却するためには、多くの新しい人々やサブカルチャーをアプリに呼び込む必要があり、そこには莫大なマーケティング費用が必要となりますが、それに加えて、これらの異なるグループが1) すぐにお互いを見つけ、2) それぞれのスペースに分岐する方法も必要となります。

Bytedanceのショート動画アルゴリズムは、私が記憶している他のどのフィードアルゴリズムよりも、この2つの要件を満たしていました。それは、迅速かつ超効率的なマッチメーカーです。単にいくつかの動画を見るだけで、誰かをフォローしたり友達になったりしなくても、自分の好きなものをTikTokにすぐに教え込むことができます。TikTokという両面性のあるエンターテイメントネットワークにおいて、アルゴリズムは迅速で効率的なマーケットメーカーとして機能し、動画とその動画が喜ぶべきオーディエンスを結びつけます。アルゴリズムは、明示的なフォロワーグラフがなくてもこれを可能にします

同様に重要なのは、FYPのフィードをパーソナライズすることで、TikTokは異なる嗜好を持つサブカルチャーを分離するのに役立っているということです。ある人がドン引きする動画でも、他の人にとっては喜びとなり得ますが、どれがどれだかを見極めるのは簡単なことではありません。

TikTokのアルゴリズムは、ハリー・ポッターの世界に出てくる「組分け帽子」です。その魔法の帽子が、ホグワーツの生徒をグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの各寮に振り分けるように、TikTokのアルゴリズムは、ユーザーを何十ものサブカルチャーに振り分けます[6]。FYPのフィードには同じものはありません。

[6] 組分け帽子は、おそらくハリー・ポッターの世界で最も不思議なプロットデバイスである。これは遺伝子の決定論のメタファーなのでしょうか?ドラコはスリザリンになりたくないと思っていたのでしょうか?ドラコをその家に振り分けることで、彼の運命を形成したのでしょうか?帽子はバイアスがかかっていることで知られるアメリカの大学入試制度のメタファーでしょうか?グリフィンドールに振り分けられたハリー・ポッターは、レガシー入学なのでしょうか?

いわゆる「アイデアのマーケット」という素朴で理想的な夢を描いていたにもかかわらず、大規模なソーシャルネットワークの第一世代には、結果として生じる文化戦争に対処するための準備や装備がほとんど整っていないことが判明しました。意見の合わない他人同士を仲介するというコストのかかる仕事を引き受けるための、実質的なアイデアやインセンティブが得られるまでは、そのような人々を選別したほうがよいでしょう。意見の合わない人たちと一緒にネット上の剣闘士のような場に放り込まれることを喜ぶのは、結果として生じる暴力から非対称的に利益を得るトロールのようなタイプの人たちだけのようです。

ツイッターのコンテンツ・モデレーション問題を考えてみましょう。リベラル派と保守派を一緒のタイムラインに放り込んだ結果、どれだけのことが起きているのでしょうか。ツイッター社の社員は、公共の場での会話を改善したいとよく言っていますが、信頼度の低い会話の問題を解決するための実質的なアイデアが出るまでは、スリザリンとグリフィンドールを離しておいた方がいいでしょう (社会も同様です) [7]。

[7] 同じことが、NextDoorや歩道を歩いているだけのマイノリティを人種差別的にレポートするという問題にも言えます。この機能を削除したほうがいいでしょう。ある時点で、NextDoorは人種差別を解決できないという事実を直視する必要があります。あの機能をいじるのは自由ですし、ユーザーがレポートするためにあらゆる手段を講じることもできますが、逆選択の結果、その手段を講じるモチベーションが最も高い人が人種差別者であることが確実になります。

しばらくすると、TikTokに新しいサブカルチャーが出現しました。10代の女の子が口パクするだけではなくなったのです。TikTokには非常に多くのサブカルチャーが存在しており、私はそれらの一部を自分専用のFYPで見るだけなので、ほとんど追跡することができません。これにより、TikTokの魅力と、対応可能なマーケットが大きくなりました。中国ではDouyinがその道を歩んでいたので、Bytedanceには少なくともこのような高価な賭けに踏み切った前例がありましたが、メディアやエンターテイメントマーケットの競争が激しい米国でうまくいくかどうかはわかりませんでした。

大規模なソーシャルネットワークの中では、サブカルチャーであっても、ある程度の規模が必要です。Bytedanceはファネルの最上部を埋めるために多額の費用を払いましたが、そのアルゴリズムによって、最終的には存立可能な最小の規模を超えた多くのサブカルチャーを集めることができました。さらに特筆すべきは、それが驚くべき速さで行われたということです。

他の多くのソーシャルネットワークがどのように規模を拡大してきたかを考えてみましょう。通常の方法はオーガニックです。ユーザーはお互いにフォローしたり、友達になったりして、一度に一つずつ自分のグラフを構築していきます。この方法の課題は、ほとんどの場合、構築に時間がかかるという点です。また、ユーザーがグラフを構築するためには、「ツールのために来て、ネットワークのために残る (Come for the tool, stay for the network)」という格言に象徴されるように、何らかの理由を提供しなければなりません。今日では「ツール」の部分を構築するのはそれほど簡単ではありません。というのも、すでに多くの風景が採掘され、スケールの大きなネットワークは、どんなレベルの牽引力を持つツールでもコピーすることを学んでいるからです [8]。

[8] 欧米では、フェイスブックはファストフォローの達人です。彼らは、自分たちが発明した新しいソーシャル・グラフを立ち上げるのに苦労していますが、競合するソーシャルネットワークが少しでも人気を博しているのを発見すると、目にも止まらぬ速さでロックダウンしてクローンを出荷します。良い芸術家は借り、偉大な芸術家は盗み、最高の芸術家は最も早く盗む?競合他社としてのフェイスブックは、映画に出てくる、酔っ払ってふらふら歩きながらも、ターゲットを見つけた瞬間にチーターの群れのように疾走するゾンビのようなものを思い起こさせます。「28日後」や「アイ・アム・レジェンド」に出てくるようなタイプです。恐ろしいですね。

新しいソーシャルネットワークは、新しいコンテンツフォーマットを中心に構築されると考えている人もいますが、コンパクトなフェイスブックチームがケータリングディナーを用意して監禁しても、2〜3ヶ月でコピーできないようなフォーマットを考えることはほとんど不可能です。「Status as a Service」で書いたように、確かに新しいコンテンツフォーマットは、新しいプルーフ・オブ・ワークを作り出すかもしれません。しかし、それと同じくらい重要なのは、そのようなコンテンツを適切なオーディエンスに配信し、ソーシャルフィードバックループを閉じるための適切な構造を構築することです。

近年、規模を拡大させた新しいソーシャルネットワークは何でしょうか?思いつかないかもしれませんが、それは本当にないからです。フェイスブックでさえ、本当に成功した新しいソーシャルプロダクトを立ち上げることができませんでした。その理由の多くは、彼らがコンテンツフォーマットのギミックを中心に構築することに固執しているからです。

「Status as a Service」でネットワークを区別するために使った3つの目的、すなわちソーシャルキャピタル (ステータス)、エンターテイメント、ユーティリティを思い出してください。近いうちに別の記事で、なぜ私がネットワークをこの3つの軸で分類しているのかを説明する予定ですが、今はほとんどのネットワークがこの3つの目的をミックスして提供している一方で、ほとんどのネットワークがこの3つの目的のうちの1つに大きく傾いていることを知っておいてください。

例えば、VenmoやUberのようなネットワークは、ほとんどがユーティリティを目的としています。例えば、VenmoやUberのようなネットワークは、誰かにお金を支払う必要があったり、ここからあそこまで移動する必要があったりと、ユーティリティを重視しています。YouTubeのようなネットワークは、どちらかというとエンターテイメントを目的としています。また、多くの人が「ソーシャルネットワーク」という言葉を使うときに参照するネットワークの中には、よりソーシャルキャピタルに焦点を当てたものもあります。例えば、Soho Houseです。

TikTokは、純粋なソーシャルネットワークというよりは、ソーシャルキャピタルに焦点を当てたエンターテイメントネットワークです。私はTikTok上の人とは付き合いませんし、ほとんど知りません。TikTokは人と人とのネットワークで構成されていますが、クリエイターが短い動画で視聴者を獲得するという明確な理由でつながっています[9]。

[9] BytedanceはWeChatに対抗するソーシャルネットワークの構築に成功していませんが、努力が足りなかったわけではありません。そのための様々な選択肢があると思いますが、ソーシャルファーストではなかった多くの企業と同様に、彼らのDNAにはそれがないのです。フェイスブックが過小評価されているのは、機能的なソーシャル配管を大規模に構築する能力があるからで、これは稀なデザインスキルです。アマゾンやネットフリックスなど、さまざまな企業がソーシャル機能の構築を試みたものの、後に放棄しています。しかし、ソーシャルのDNAを持たない彼らがそれを実現するのは難しいでしょう。しかし、ソーシャルファーストのDNAを持っているということは、フェイスブックがソーシャル以外のサービスを構築するのが得意ではないということでもあります。彼らの動画や視聴タブは、依然として奇妙で焦点の定まらない混乱状態にあります。

何をもってソーシャルネットワークとするかは永遠に議論されるべきですが、ここで重要なのはエンターテイメントネットワークを別の表現で表すと、インタレストネットワークであるということです。TikTokは、あるグループのコンテンツを、そのコンテンツを楽しみたい他の人々にマッチングさせます。TikTokは世界中の何億人もの視聴者が何に興味を持っているかを把握しようとしているのです。このようにTikTokのアルゴリズムをフレーム化すると、TikTokの未実現の大きな可能性が見えてきます。

ソーシャル・グラフを利用してインタレストベースのネットワークを構築するというアイデアは、これまでもある種の近似性やハックのようなものでした。あるアプリで何人かの人をフォローすると、その人たちが投稿した内容の多くが自分にとって興味あるものであるという前提で、その人たちのコンテンツの一部を提供してくれるのです。大学時代にフェイスブックが成功したのは、刺激の多い大学生がお互いに興味を持っていたからです。ツイッターでも、時間はかかりましたが、うまくいきました。ツイッターの一方通行のフォローグラフは、フェイスブックの初期の双方向の友達モデルよりも柔軟にフォローする相手を選ぶことができましたが、ツイッターはユーザーが何をつぶやくべきかを訓練するためのフィードバックメカニズムを初期の段階で十分に提供していませんでした。初期の頃はソーシャルメディアを批判する人たちが引き合いに出すような、さまざまなステータスの更新が多く見られました 「ランチに何を食べたかなんて誰も気にしない 」というようなものです [10]。

[10] ツイッターがプロダクトマーケットフィットするまでの遅い道のりについては「Status as a Service」で述べています。

しかし、もし誰かをフォローしなくても、インタレスト・グラフを作ってくれる方法があったらどうでしょう?ソーシャル・グラフを作成するという長くて骨の折れる中間ステップを飛ばして、直接インタレスト・グラフに飛び込めるとしたらどうでしょう?そして、それを何百万人ものユーザーを対象とした大規模なスケールで、非常に迅速かつ安価に行うことができるとしたらどうでしょうか。そして、そのアルゴリズムが、あなたが積極的に調整しなくても、ほぼリアルタイムであなたの進化する好みに合わせて調整できるとしたらどうでしょう?

インタレスト・グラフをソーシャル・グラフで近似する際に問題となるのは、ソーシャル・グラフには規模に応じた負のネットワーク効果があるということです。ツイッターのようなソーシャル・ネットワークを例にとると、一方通行のフォロー・グラフ構造はインタレスト・グラフの構築に適していますが、問題はフォローしている一人の人物のすべてに興味を持つことはほとんどないということです。グルーバーのAppleに対する考えは好きでも、彼のヤンキースに関するツイートは好きではないかもしれません。あるいは、技術に関する私のツイートは好きだけど、映画のツイートは好きじゃないといった具合です。ツイッターのリストを使ったり、特定の人やトピックをミュートしたりブロックしたりすることもできますが、いずれも大きな手間で、取り組む気力や意志がある人はほとんどいないでしょう。

フェイスブックのユーザーが、同級生をフレンドにしていたのが、同僚や両親、結婚披露宴のオープンバーで知り合った人など、何百人、何千人もの人をフレンドにするようになったとき、フェイスブックに何が起こったかを考えてみてください。これを「コンテクストの崩壊」と呼ぶ人もいますが、どのような名称であっても、誰もが理解できる厄介な問題です。この現象は、多くのコホートにおいて、フェイスブックの訪問回数や投稿回数が減少していることに現れています。

スナップチャットは、友人間のコミュニケーション手段としてのユーティリティと、有名人が自分のファンに向けてコンテンツを発信する場としてのエンターテイメントを区別するのに苦労しています。物議を醸したデザイン変更で、スナップチャットはインフルエンサーが発信するコンテンツを右側の「発見」タブに分割し、友人との会話は左側の「チャット」に残しました。このデザイン変更は「カイリー・ジェンナーはあなたの友人ではない」と言っているように見えます。

TikTokにはソーシャル・グラフが存在しないため、大規模なソーシャル・グラフを使用することによる負のネットワーク効果がありません。TikTokは短い動画コンテンツから得られる純粋なインタレスト・グラフであり、そのアルゴリズムが非常に効率的であるため、ユーザーに大きな負担をかけることなくインタレスト・グラフを構築することができるのです。これは受動的なパーソナライゼーションであり、消費することによる学習です。動画は非常に短いので、ユーザーが単位時間あたりに提供する学習データの量は多くなります。映像が面白いので、ユーザーにとっては、このトレーニングプロセスが楽に感じられ、楽しくさえあります。

私は「あなたがTikTokを見つめるとき、TikTokはあなたを見つめる」という言葉が好きです。プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアがソーシャルのグロースハックに費やした時間を考えてみてください。友達を追加したり、フォローしたり、連絡先リストへのアクセスを許可するように人々を誘導したり、すべてはデッドゾーンを超えて、健全で堅牢なフィードを提供するために必要な最小の存立可能なグラフサイズに運ぶための試みです (ソーシャルプロダクトマネージャーなら誰でも、フェイスブックやツイッターの友達やフォローのグラフサイズを最小化するための重要な指標の話を何度も聞いたことがあるでしょう)。 新しいソーシャルプロダクトを使い始める前に、興味のあるテーマは何か、好きなミュージシャンは誰か、好きな映画は何か、といった興味をかきたてるようなUIをどれだけ見てきたかを考えてみてください [11]。

[11] 前回、ツイッターの新しいユーザー登録フローを使おうとしたら、とりわけドナルド・トランプのアカウントをフォローするよう勧められました。もっと効率的にオンボーディングして、すぐに素晴らしい体験をしてもらう方法は無数にあると思いますが、それはその中のひとつではありません。

TikTokが登場したことで、そのすべてがバイパスされました。TikTokは、二つの側面を持つエンターテイメントマーケットにおいて、クリエイターには比類のない動画作成ツールと潜在的な超スケールの配信を提供し、視聴者には時間とともによりパーソナライズされたエンターテイメントの無限の流れを提供します。このようにして、TikTokはプロダクトチームとインフラのほとんどが中国にありながら、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャット、YouTube、ネットフリックスなどの大手企業と同じ土俵で、注目を集めるマーケットのプレーヤーになったのです。シンデレラストーリーというよりは、ムーランストーリーでしょうか。

TikTokはアメリカでブレイクしただけではありません。TikTokはアメリカだけでなく、インドや中東など、中国のBytedance社のプロダクトチームにとっては文化や言語が異なる国々でも、信じられないほどの人気を博しました。別のマーケットや文化を完全なブラックボックスとして扱うことができる、非常に賢いアルゴリズムを想像してみてください。その国の人々は何が好きなのか?いや、それ以上に、その外国のそれぞれの国の個々の人は何が好きなのか?あなたはそれを理解する必要はありません。アルゴリズムがそれを処理します。アルゴリズムは知っています。

近年、私が中国で出会った中国のプロダクトチームは、アメリカのような異国の文化を理解するという点で、2011年に出会ったチームよりもはるかに進んでいるとは思えません。しかし、Bytedanceのアルゴリズムは、その問題を抽象化してしまいました [12] 。

[12]中国共産党とBytedanceの関係については、対米プロパガンダに利用されるのではないかという懸念がありますが、私はその問題は過大評価されているのではないかと考えています。しかし、文化を一連の刺激反応に抽象化するアルゴリズムは、文化をより危険なものにしているのではないでしょうか?

このレベルの超効率的なインタレストマッチングが、他の機会やマーケットにも適用されることを想像してみてください。未来のパーソナライズドTV?そうです。教育?私のTikTokのフィードには、料理やマジック、iPhoneのハックなど、さまざまな教育動画がすでにたくさんあります。アレックスとルイスがMusical.lyの前に作ろうとしていた、短い動画を使った教育アプリの夢がついに実現するかもしれません。

ショッピング?DouyinとToutiaoによって、中国ではすでに多くの商取引が行われています。求人情報の提供?少し無理がありますが、不可能ではありません。もしマイクロソフトがTikTokを買収したら、私はTikTokチームに私のLinkedInフィードの改善を任せるでしょう。本やニュースレター、ブログなど、パーソナライズされた読み物はどうでしょう?音楽は?ポッドキャストは?はい、はい、はい、お願いします。デートは?世界はTinderのような高いGINI係数、高くて不平等なデートマーケットに代わるものを絶対に必要としています。

Douyinは、より多様な動画と収益モデルで、この未来の多くをすでに可視化しています。中国では、動画によるEコマースが米国よりも何年も先に進んでいます (さまざまな理由がありますが、克服できないものはありません。これも別の記事で取り上げます)。TikTokは、私にとってはまだ純粋な娯楽のための時間つぶしのように感じられます。しかし、Douyinは研究のために中国語のアプリを使うためだけに持っている別のスマホで追っていますが、それ以上のものに感じられます。これは、幅広いユースケースのプラットフォームとしてのショート動画を実現したものだと感じています。

今日、米国の多くの人々がソーシャルメディアを仕事と表現するのには理由があります。そして、私のように多くの人がTikTokをもっと楽しいアプリだと感じるようになったのには理由があります。フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどのアプリは、ソーシャル・グラフの上に構築されているため、私たちのパフォーマンス的な社会的負担の規模、偏在性、リーチを増幅させています。ソーシャル機能をエンターテイメントやユーティリティ機能から切り離すのに苦労し、これまで存在しなかったソーシャルな人工物の側面を注入しています。

フェイスブックは中国のWeChatのように社会的なOSになるための道筋となるユーティリティへの移行に苦戦してきました。公平に見て、これらの機能の多くに対する競争は、米国でははるかに厳しいものとなっています。例えば、決済においてフェイスブックは、米国では問題なく機能し、ほとんどの人がデフォルトで利用しているクレジットカードと競争しなければなりませんが、中国ではAliPayやWeChat Payは、現金を主とする文化と競争していました。しかし、米国ではフェイスブックはコマースのような実用的なユースケースにはまだ本格的に進出していません [13]。

[13] 私は技術系のエリートたちが動画というメディアをどれだけ過小評価しているかについて、よく話しています。フェイスブックの別の歴史では、彼らは動画専用アプリへのシフトをより強力に進め、テキスト、写真、動画と梯子を登っていき、もしかしたらTikTokの前にTikTokになっていたかもしれません。もしそうなっていたら、今日の彼らの滞在時間の数字はもっと高くなっていたと思います。これまでのフェイスブックの破壊的な動きには限界があります。今後、中国と米国の技術エコシステムを比較する予定ですが、最も広くかつ重要なポイントのひとつは、中国が数ある中でも動画へのシフトにおいて米国を凌駕しているということです。次は米国が中国を追い越さないというわけではありませんが、今のところ、米国はいくつかのカテゴリーで後塵を拝しています。

インスタグラムはソーシャル・グラフとインタレスト・グラフの奇妙なハイブリッドですが、今では様々なフォーマットが混在しています。ストーリーズ・フィードはアプリのトップ・バーに追いやられ、より停滞していてあまり活発ではないオリジナル・フィードはデフォルトで縦に表示され続けています。メッセージは別のページに配置され、別のアプリで提供されます。長時間の動画は「Instagram TV」で表示されますが、これは制限時間を超えた動画のためのアプリということでしょうか。近いうちに、おそらくコマースも組み込まれるのではないでしょうか?一方、TikTokのように興味関心に基づいたアプローチを取りたいのであれば、デフォルトのタブになりそうな「発見」タブと呼ばれるものもあります。しかし、このアプリはフィードやフォーマット、機能がやや混乱したアプリ群に分散したフランケンシュタインのような状態になっていて、難しい決断をすることをずっと先延ばしにしてきたように思えます。

ツイッターは自分が何者であるかを理解していないようです。10人のツイッター社員に聞けば10通りの答えが返ってくるでしょう。そのためか、この会社のプロダクト哲学の主流は、時折危機を回避するために行われる、ある種の絶え間ない麻痺状態のように見えます。ツイッターがオープンなプロトコルになって、開発者コミュニティに任せればいいのにとずっと思ってきた理由のひとつは、かたつむりのようなペースでツイッターが動くからです。

残念なのはツイッターがインタレスト・グラフを先行して開発していたことです。これは主にユーザーの働きによるもので、ユーザーは自分が気になっていることをグラフにして知らせることができました。これはツイッターにとってあらゆる種類の新しいマーケットの基盤となったはずです。しかし、その代わりに、ユーザーはほとんど無視されているDMを使ってお互いに連絡を取り合うことで、自らその価値を引き出してきました [14] 。

[14] ツイッターはかつてVineを買収しましたが、その後、Vineを枯らしてしまいました。TikTokを買収できるテクノロジー企業の中で、ツイッターは最もそれに値しない企業なのかもしれません。少なくとも、自分たちが買ったものが何であるかを理解していることを示す読書感想文を提出するよう求められるべきでしょう。

他にもいくつかのハイテク企業を紹介しておきます。YouTubeは巨大な動画ネットワークですが、正直なところ、彼らは長年にわたってツイッターよりも出荷数が少ないかもしれません。動画作成ツールを持たず (持っているのでしょうか?)、TikTokにショート動画の分野を奪われてしまったことは、衝撃的でもあり、同時にそうでもありません。

アマゾンは少し前にショート動画のコマースアプリを立ち上げました。私はそれを試す時間もなく、あっという間に終わってしまいました。アマゾンは多くのことに長けていますが、TikTokのようなものを作るDNAを持っていませんでした。中国がリードしてきたショート動画コマースのビジョンを実現できなかったのは、彼らにとって衝撃的なミスです。

これらの動画の多くが撮影されている実際のカメラはAppleが所有していますが、彼らはソーシャルを理解していません [15] 。少なくとも、iPhoneがリリースされるたびに、カメラのハードウェアを改善し続けるでしょう。

[15] iMessagesはAppleにソーシャルのDNAがあれば、ソーシャルネットワークの巨人になれるかもしれませんが、日々、他のメッセージングアプリに機能性とデザイン性で引き離されています。でも、次のiOSリリースでは、ついにiMessagesにスレッド機能が追加されるのではないでしょうか。

TikTokの市場価値が、前述のアメリカの大手企業の市場価値に近いというわけではありません。もしあなたがまだTikTokを目新しいミーム・ショート動画アプリと考えているなら、それは真実から遠くないでしょう。さらにレベルを上げると、BytedanceとTikTokが米国でまだ活用できていない機会のリストは長く、米国政府からの禁止を食い止めたとしても、その多くを逃しても不思議ではありません。その多くは新しいフォームファクターを必要とし、特にBytedance社から切り離された場合、TikTok社のプロダクトチームがどれほど強力なものになるのかは不明です。また、コンシューマーマーケットでの実績が乏しいマイクロソフト社の下では、TikTokの潜在能力が十分に発揮されるかどうかは不明です [16]。

[16] TikTokには欠陥があるでしょうか?もちろんあります。完璧とは言えません。アルゴリズムが固執しすぎることもあります。あるミームの動画を気に入ると、翌日にはTikTokが同じミームのフォローアップ動画を大量に提供してくることがあります。しかし、反応性の高いアルゴリズムの優れた点は、GPT-3のプライミングのようにすぐにチューニングして、思い通りの結果を得られることです。TikTokのフィードに新しいサブカルチャーを注入するのに必要なのは、その中の動画を見つけて (YouTubeや自分のフィードとは異なる友人経由で簡単に見つけることができます)、それに「いいね!」をつけることだけということがよくあります。TikTokのもう一つの問題は、ポートレートモードのリップシンク動画アプリとして設計されたものに、他の多くのユースケースが詰め込まれていることです。縦長の動画は人やダンス、メイクの動画には適していますが、他の種類のコミュニケーションやストーリーテリングには適していません (私はいまだに、バスケットボールやサッカーのハイライトクリップで、水平方向の競技場をもっと見せることができないのが嫌で、これはインスタグラムとTikTokの両方に当てはまります) 。

しかし、そのプロダクト開発はどれもロケットサイエンスではありません。その多くは私の頭の中では明確になっています。さらに重要なことは、TikTokは、もし売却の一環としてBytedanceアルゴリズムで武装していれば、一般化されたインタレストマッチアルゴリズムを持っているので、米国のテックジャイアントに正面からではなく、斜めから切り込むことができるということです。このアプリを単なる子供向けの目新しいミーム動画アプリと見なすことは、そのはるかに大きな破壊的可能性を見逃すことになります。中国で開発されたアプリが米国に上陸し、注目を集めるマーケットで文化的な人気を獲得したことは、満足している米国のハイテク企業に警鐘を鳴らすべきです。これらの企業の多くが、ユーザーの関心事を把握することで、商品を販売したり広告を表示したりしていることを考えると、TikTokのようにインタレスト・グラフを作成するための近道を見つけた企業は、あらゆる種類の警鐘を鳴らすべきだと思います。

噂されているCFIUSの鉄槌によってTikTokが完全な禁止に至らなかったとしても、より多くの米国のハイテク企業が買収を試みないのは、私にとっては驚きです。一世代に一度の強制的な特売資産に入札しない企業があるとは思えません。ネット上では300億ドルという価格を見たことがあります。もしそれが本当なら、絶対にお買い得だと思います。私は迷わずその2倍を支払うでしょう。

欠点を挙げればきりがありませんが、最終的には正しいプロダクトビジョンと実行力があれば、簡単に解決できるものばかりです。TikTokは最も困難な部分であるアルゴリズムを解明しました。このアルゴリズムによって、中国から出たことのない、そしてこれからも出ないであろう人々で構成された巨大なチームが、彼らが直接経験したことのない文化やマーケットで巨大なマーケットシェアを獲得したのです。私のような文化決定論者にとっては、それは黒魔術のように感じられます。

Bytedanceを訪問した2018年の同じ中国旅行で、Huluの元同僚がNewsdogへの訪問を企画してくれました。それは、北京に本社を置くスタートアップが作った、インドマーケット向けのニュースアプリでした。エレベーターを降りてロビーに入ると、向かいの壁にはジェフ・ベゾスの有名な言葉「It’s Always Day One」の巨大な壁画が描かれていました。

その会社は友人の友人がCEOを務めています。私は会議室に座りアプリの説明を受けました。彼らはその年のわずか数カ月前にテンセントから5,000万ドルを調達しており、当時はインドでナンバーワンのニュースアプリでした。

彼は自分のスマホでアプリを開き、私に手渡しました。中国の「Toutiao」と同じように、上部のスクロールバーにさまざまなトピックが表示され、その下に縦に記事が並んでいました。これらはすべて、中国の「Toutiao」や多くのアプリのスタイルと同様に、アルゴリズムによって選ばれたストーリーでした。

すべてヒンディー語で書かれたストーリーに目を通しました。(そうそう、あるフィードには滝などの下に立っている、かなり挑発的な衣装を着た魅力的なインド人女性の写真が、どさくさに紛れて掲載されていたこともありました)。そして、アプリから顔を上げると、会議室のガラス越しに約40人の中国人エンジニア (ほとんどが男性) がパソコンを叩いているオフィスが見えました。そして、アプリの中のヒンディー語の物語のページに視線を戻しました。

「待てよ」その時思いました。「このオフィスにも、会社にも、ヒンディー語を読める人はいないの?」

彼は笑顔で私を見た。

「いや、いない 」と彼は言いました。「私たちの誰もが、何も読めません」。

NEXT POST: TikTokについての考察パート2、アプリのデザインがアルゴリズムに影響され、その逆の好循環が生じていることについて述べています。


Eugeneの他の記事を読む👀

👉 Eugene Wei

フォローして最新情報をチェック!

クリエイターエコノミーの中産階級の構築

アメリカン・ドリームは存在するが、現実はどうなのか?

[読者の皆さん、こんにちは。この記事は本日『Harvard Business Review』に掲載されました。楽しんでいただけると幸いです。また、以下のコメントであなたのご意見をお聞かせください。-Li].

[Update March 14, 2021: 私は初めてNFT “The Creator Middle Class “を作成しました。これは下の表紙イラストのアニメーション版で、現在は@jamesyoungさんが所有しています!].


▼本記事の内容
  1. 消えたクリエイターの中産階級
  2. クリエイターの中産階級を育てる10の戦略
  3. 不平等を助長する力
  4. より強い社会とプラットフォームへの道

* この記事は、「Building the Middle Class of the Creator Economy」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Li Jin
翻訳者: 渡辺圭祐


1788年、ジョージ・ワシントンは、アメリカは「産業と倹約の精神に富む人々にとって世界で最も好ましい国」であり、「財産が平等に分配され、人が住んでいない土地が大量にあり、生活手段を確保できる」という点で、社会的に最も低い階級の人々にとっても理想的な移民先になるだろうと予測しました。その広大な土地と宗教的寛容さに機会は内在していると彼は主張しました。

それから228年後の2016年、Musical.lyの共同CEOであり、後にBytedanceのプロダクト担当副社長を務めたAlex Zhuは、新しいソーシャルネットワークを立ち上げるという文脈で、ワシントンの言葉を繰り返しました。新しいプラットフォームを立ち上げることは、新しい国を立ち上げるようなものだと彼は言います。硬直化した経済や社会階層を持つ既存のネットワークから、新しいネットワークにユーザーを移行させるには、成功の可能性、つまりアメリカンドリームの魅力が必要です。さらに、新しいソーシャルネットワークでは、すべてのユーザーに上昇志向を持たせ、「中産階級が出てくるようにしなければならない」としました。

8歳から12歳の子供たちを対象に行った最近の調査によると、子供たちの約30%がユーチューバーを目指していることがわかりました。昨年、YouTubeクリエイターのDavid Dobrikは、平均6,000万回の再生回数で、毎月27万5,000ドルのアドセンス収入を得ていました。Substackでは、トップ10のクリエイターが合計で年間700万ドル以上の収入を得ています。先日、TikTokクリエイターとして初めてフォロワー数が1億人を突破したCharli D’Amelioは、16歳にして400万ドルの価値があると言われています。彼女がTikTokを始めたのはわずか1年半前です。

しかし、大スターダムにのし上がった人はいても、プラットフォーム上で幅広い層が経済的に安定した生活を送っている例はほとんどありません。現在のクリエイターの状況は、上流階級に富が集中する経済に近いのです。Patreonでは、2017年に連邦政府の最低賃金である月1,160ドルを稼いだクリエイターはわずか2%でした。Spotifyでは、フルタイムの最低賃金労働者の年間収入である1万5,080ドルを達成するためには、アーティストは年間350万回のストリーミングが必要です。そのため、ほとんどのアーティストはツアーやグッズで収入を補っています。一方、2016年のアメリカでは、成人の52%が48,500ドルから145,500ドルまでの中所得世帯で生活しています。

消えたクリエイターの中産階級

国家の持続可能性やプラットフォームの防衛力は、上位1%の人々に富が集中していない方が優れています。現実の世界では、健全な中産階級層は、社会的信頼を高め、製品やサービスへの安定した需要を提供し、イノベーションを推進する上で重要です。プラットフォームでは、富が集中していないということは、競合他社がトップクリエイターを奪い、ビジネス全体を脅かすリスクが少ないことを意味します。

WIRED誌の編集者であるクリス・アンダーソンが2004年に「ロングテール」理論を発表して以来、この考えは強化され、否定され、議論され続けてきました。アンダーソン氏は、インターネットが物理的な制限 (視聴者の地域性、希少な棚のスペース) を取り除くことで、ニッチな製品やクリエイターが活躍できるようになると主張しました。

検索カテゴリーでは、この現象が真実であることが証明されています。Google社は、日々、全クエリの15%が一度も検索されたことのないものであることを明らかにしており、この数字は2013年以降、安定しています。

しかし、コンテンツプラットフォームでは、デジタルコンテンツへの移行とロングテールの急増は相関していません。トップクリエイターは大成功を収めていますが、ロングテールのクリエイターはほとんど生き残れていません。例えば、Spotifyでは、上位43,000人のアーティスト (プラットフォーム利用者の約1.4%) がロイヤリティの90%を稼ぎ、1人当たり四半期平均22,395ドルを稼いでいます。それ以外の300万人のクリエイター、つまり98.6%のアーティストは、1人当たり36ドルの収入しかありません。

ビデオゲームの世界でも、少数のゲームクリエイターに成功がより集中している兆候が見られます。エレクトロニック・アーツのプロダクトリードであるラン・モーは、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」において、総利用者数が増加しているにもかかわらず、トップへの集中度が高まっていると指摘しています。この集中の理由として、ゲームへの参加に上限がないこと、ゲームのソーシャル性が勝者総取りのネットワーク効果をもたらすこと、の2点を挙げています。

1981年にシカゴ大学の経済学者シャーウィン・ローゼンが発表した論文には、テクノロジーの発達によって「スーパースター現象」がより顕著になることを予見する記述があります。ローゼンは、クリエイターエコノミーのように提供者が異質な市場では、成功は上位の者に偏ってもたらされると主張しました。「才能のない者が才能のある者の代わりにはなりません。 (中略) 平凡な歌手の歌を次々と聞いても、1つの傑出したパフォーマンスにはならない」。この現象は、流通コストを下げるテクノロジーによってさらに悪化しています。ある分野で最高の演奏者は、コンサートホールの大きさのような物理的な制約から解放され、無限の市場に対応し、より多くの収益を得ることができます。

では、クリエイター間の不平等は避けられないのでしょうか?ある程度は仕方がないでしょう。誰もが有名人になれるわけではありませんが、有名ではなくても、きちんとした収入の基盤となる顧客を持っている中産階級のクリエイターの例もあります。

クリエイターのプラットフォームは、誰もが成長し、成功できる機会を提供することで繁栄する」。これは確かなことです。アメリカンドリームがただの夢になってしまうと、プラットフォームの命運は不安定になります。Vineは、その教訓的な物語です。Vineは短編コメディ動画のフォーマットを発明し、2015年11月には月間アクティブユーザー数が2億人に達したにもかかわらず、インスタグラム、YouTube、スナップチャットなど、より多くの収入を得られ、より多くの視聴者を獲得でき、より幅広いクリエイティブツールを利用できるプラットフォームに、徐々にクリエイターを奪われていきました。他のプラットフォームの方が視聴者の増加や経済的成功などの機会が容易に得られるようになり、プラットフォームの衰退へとつながりました。

CharliとAddison Raeは常に出現し、存在しますが、クリエイターのプラットフォームには上昇志向の道筋を提供し、成功の機会を民主化することが不可欠です。そのためにはどうすればいいのでしょうか?

クリエイターの中産階級を育てる10の戦略

アメリカの中産階級は自然に生まれたものではなく、20世紀に広く繁栄をもたらした政策によって生まれました。ルーズベルトのニューディール政策、最低賃金や残業代、未成年者の雇用禁止などを定めた公正労働基準法、組合活動の活発化、GIビルの成立、連邦住宅管理局の設立などです。これらの政策は労働者に力を与え、富を生み出す機会を分配し、所得格差の拡大を緩和し、1960年代末にはアメリカの成人の61%を占める強力な中産階級を築くのに役立ちました。しかし、政策の優先順位が変わるにつれ、2019年には51%にまで減少しました。

プラットフォームは自らのエコシステムに影響を与える決定を下すこともできます。パッションエコノミーの性質上、不平等はつきものです。供給は異質で代替不可能であり、クリエイターが視聴者との間に築く信頼と親和性は評価されるべきものです。しかし、プラットフォームは、既存のものから新しいものまで、クリエイターの中間層を強化し、成功への道を広げるためにもっとできることがあります。多くの人が成功を手に入れられるようにするためのプラットフォームのデザインにはどのようなものがあるでしょうか。

1. リプレイバリューの低いコンテンツに絞る
人は同じポッドキャストを何回聞くことができますか?おそらく、何度も聴いているうちに、内容が繰り返しになって飽きてしまうでしょう。これに対して、好きな曲は何度でも繰り返し聴くことができます。ビデオゲームでは、何度もプレイすることに価値があるだけでなく、何百時間もプレイしているうちにプレイヤーが熟練し、ゲームをより楽しめるようになるため、限界効用が高まります。このことから、音楽やゲームプラットフォームのようにリプレイバリューが高いカテゴリーは、一部のメガヒットに集中しやすいと考えられます。より公平なクリエイターのエコシステムを構築するために、プラットフォームは多様なコンテンツを体験することがより魅力的なコンテンツタイプにユーザーを誘導することができます。

2. ユーザーの好みの異質性に対応し、ニッチを強化する
ローゼンのスーパースター経済学の理論は、「品質の異なる商品間の不完全代替」を前提としています。つまり、10%多くの命を救うことができる偉大な外科医は、10%の需要増よりもはるかに多くの需要を得ることができるのです。これは品質の客観性と呼ぶべき、様々なコンテンツカテゴリーの属性を強調するものです。つまり、あるコンテンツカテゴリーは、他のものよりも明確で普遍的な品質基準を持っているのです。例えば、「最高の」受験指導者は、テストの点数などの指標によって知ることができますが、「最高の」ファンフィクション作家は、ユーザーの好みが多様であるため、普遍的には存在しないかもしれません。

ユーザーの好みや意見が多様化すれば、多様なクリエイターが成功する機会が増えていきます。プラットフォームは、クリエイターやユーザーがこのようなニッチな分野を開拓し、発展させることを促すことができます。例えば、子供向けオンライン教育市場「Outschool」では、親御さんからの新しい授業テーマのリクエストを集約したメールを毎週先生に送っています。「ゴールデンドゥードルの絵を描く」や 「スクーターのレッスンとテクニック」など、毎週数十件の新しいリクエストが寄せられています。この機能により、クリエイターはどのようなニッチにクラスを提供すれば実りあるものになるかを理解することができます。

3. アルゴリズムでコンテンツを推薦し、ランダム性を持たせる
デジタル製品が無限にある中で、ロングテールが普及しない理由として、ユーザーが何を検索したらいいのかわかりにくいことや、レコメンドシステムの多くが、他のユーザーが消費・購入したものを勧めるだけの基本的なものであることが挙げられます。このシステムの弱点はユーザーが自分の興味のある分野以外のものを目にすることが少なく、フィルターバブルに閉じ込められてしまうことです。また、人気のあるクリエイターはますます人気になり、新人が抜きん出るのは困難となります。

しかし、ユーザーの検索をアルゴリズムが行うことで、ニッチな分野が発展する機会が増えます。TikTokのブログでは、ユーザーが動画を最後まで見たかどうか、シェアしたかどうか、クリエイターをフォローしたかどうか、デバイスの種類、言語、国など、レコメンドシステムに使用される多数のシグナルについて詳しく説明しています。しかし、注目すべきなのはTikTokはフィルターバブルに対抗し、フィードに多様性を導入することが直接の目標であるとも述べており、そのために、ユーザーのこれまでの興味とは異なる動画もFor Youページに表示しているという点です。

あなたのフィードには、あなたの興味に関連していない動画や、膨大な数の「いいね!」が集まっている動画が表示されることがあります。これは私たちのレコメンド手法の重要かつ意図的な要素です。For Youフィードに多様な動画を表示させることで、フィードをスクロールする際に、新しいカテゴリーのコンテンツを見たり、新しいクリエイターを発見したり、新しい視点やアイデアを体験する機会が増えます。

このようにランダム性を持たせることで、多くの視聴者を持たない一般的な新しいクリエイターが露出できるようになり、「金持ちがより金持ちになる」という硬直した社会的階層を作るのではなく、誰もがプラットフォームで成功できるようになるのです。実際、TikTokは「フォロワー数や、過去に高視聴率を記録したことがあるかどうかは、レコメンドシステムの直接的な要因ではありません」と明示しています。

4. コラボレーションとコミュニティを促進する
ダニエル・ピンクは、2001年に出版した『フリーエージェント・ネーション』の中で、「フリーエージェントは一人でボーリングをしているかもしれないが、一人でやっているわけではない (中略) 忠誠心がなくなったわけではなく、縦から横へと変わっただけだ」と書いています。これは、アメリカでは自営業が主流であり、会社が提供するネットワークがない世界では、仲間との強力なネットワークを構築する必要があることを指しています。これは現在のコンテンツクリエイターにも言えることです。

コラボレーションは様々な意味でクリエイターの成長と成功を促します。コンテンツの消費は、ユーザーがどのクリエイターをフォローしているかによって左右されるため、共同でコンテンツを制作することはクロスプロモーションの機会となります。音楽業界やYouTubeのクリエイターの間ではコラボレーションによる発見の促進という大きな前例があります。テイラー・ローレンツは、Hype HouseをはじめとするTikTokのコラボハウスについての記事で、クリエイターが一緒に生活しながらコンテンツを制作することのメリットを「一緒に住むことでチームワークが高まり、成長が早くなる。クリエイターは過酷なキャリアを精神的に支えることができる」と紹介しています。

Hype Houseの共同設立者であるトーマス・ペトロウは「私たちが入居したとき、チェイスには350万人のフォロワーがいました。もし彼が一人でアパートを借りていたとしたら、今は500万人か600万人かもしれません。しかし、900万人ではないでしょう。また、家があるとみんなが来たがる。2ベッドルームのアパートには誰も行きたがらない。今では、あらゆるビッグクリエイターを家に招くことが可能です」と述べました

スタートアップにとってのチャンスとは?まず、草の根的なクリエイターのコミュニティはすでに多く生まれていますが、プラットフォームはクリエイター同士が心の支えになったり、協力したり、教育を受けたりするために、もっと多くのことができるはずです。例えば、「Stir」では、YouTubeの動画や商品の販売など、コラボレーションの金銭面での処理を容易にしています。Teachableのオンライン教師コミュニティは、クリエイターが同じようなビジネスフェーズにいる人たちとネットワークを築くための専用スペースを提供しています。このように、新しいアンバンドルワークの世界では、正式な仲間がいないため、クリエイターは別のコミュニティを利用することで、より良いサービスを受けることができます。

5. 新進気鋭のクリエイターへの資金投資
クリエイターが新しいスモールビジネスであるならば、新しいスモールビジネス・レンディングとは何でしょうか?クリエイターの業種によっては、次の成長を実現するために先行投資が必要なものもあり、参入障壁を下げるために資金を提供することが有効です。クリエイターとして成功するためのリターンはベンチャー規模ではないかもしれませんが、ソーシャルトークンやクリエイターに特化したニッチなファンドなど、資金提供と教育をセットにした新しいモデルが考えられます。ポッドキャスティング分野のPodfundは後者の例で、ポッドキャストスタジオや有望なクリエイターに、レベニューシェアと引き換えに2万5,000ドルから15万ドルの資金を提供しています。

Patreon Capitalは、同社が2020年初頭に開始した取り組みで、クリエイターにマーチャントキャッシング(MCA)を提供しています。ニコラス・クアは、「Patreonはシリーズの制作予算をまかなうために約7万5,000ドルのキャッシングをチームに提供し、Multitude (ポッドキャスト制作会社) が今後2年間でNext StopのPatreonの収益から少し多めに返済することを想定しています。」と報告しています

作家、画家、音楽家、その他のクリエイティブな才能に関わらず、クリエイターの収益化のパラダイムは、継続的に支払いやサポートを受けること (パトロン) 、または何かを作る前に需要を確信すること (コミッション) でした。収入の予測可能性を高め、クリエイターに前もって資金を提供するプラットフォームはこのような前例に基づいています。

6. クリエイターへの報酬と視聴者層の関係を切り離す
他の多くのプラットフォームとは異なり、TikTok Creator Fundはコンテンツを商業的な必要性から切り離していますが、これはHank Greenが検討した結果です。TikTokでは、クリエイターファンドの支払いはエンゲージメントと再生回数に応じて行われます。一方、YouTubeは動画に表示された広告収入の55%をクリエイターに支払うため、クリエイターは広告主が好む富裕層向けのコンテンツを作るように仕向けられます。広告料が高く、広告主が求める視聴者であればあるほど、クリエイターの動画収益は大きくなります。同様に、インスタグラムでは、アフィリエイトリンクやブランドスポンサーによるマネタイズモデルが主流であるため、クリエイターは高収入の視聴者に向けてコンテンツを作ることになります。

Hank Greenはクリエイターファンドについて、「裕福な視聴者を抱えているクリエイターが、貧しい視聴者を抱えているクリエイターよりも自動的に多く稼ぐわけではない」と書いています。クリエイターファンドの「根本的な平等主義」は消費額の大きいクリエイターではなく、エンゲージメントの高いクリエイターに報酬を与えることに由来します。

コンテンツ制作の場がすでに不平等であるため、より裕福なクリエイターに金銭的な報酬を与えるだけでなく、意図的にシステムを設計することが重要です。2013年に「Journal of Computer-Mediated Communication」に掲載された論文によると、「オンラインコンテンツのクリエイターは比較的恵まれたグループに属する傾向がある」とのことです。この論文では、その理由については詳しく述べられていませんが、一般的な起業を妨げるより広範な理由、すなわち資本へのアクセス金銭的リスクを取る能力に関連しているのではないかと思います。

7. クリエイターがスーパーファンを利用できるようにする
購読やファンからの寄付によって、視聴者数がそれほど多くないクリエイターでも、多くの収入を得ることができます。このようなファンからの直接支払いモデルは、規模やリーチに報いる広告ベースのモデルとは対照的に、スーパーファンの収益化を促進します。YouTubeではクリエイターは1,000回の動画再生でわずか3~5ドルしか稼げません。一方、Twitchの購読料は月額4.99ドル、9.99ドル、24.99ドルと段階的に設定されています。Twitchの登録者1人が1ビューに相当するとすれば、YouTubeのRPM (Revenue Per Mille)の1,000倍以上のマネタイズレートになります。

Streamlootsはゲーム実況者がスーパーファンをさらに高いレベルでマネタイズすることを可能にします。平均的な購入者は、Streamlootsで実況者とのデジタルインタラクションに毎月26ドルを費やすのに対し、Twitchの購読料には6ドルを費やします。両方のプラットフォームを利用している実況者の場合、Streamlootsは総収益の62%を占めていますが、購入者の割合は27%に過ぎません。ユーザーはクリエイターに近づくために、より多くのお金を費やすことを厭わないのですが、一方で、購読によって受動的なサポートを示すこともあります。

観客の数と収益を切り離すことができる他のタイプのプロダクトとは何でしょうか?サブスクリプションのファンコミュニティ (MightyCircleなど) 、クリエイターへの有料アクセス (CameoLoopedOnlyFansなど) 、コースや電子書籍などの高額商品の販売などは、視聴者数が少ないクリエイターが成功するために役立ちます。私の「100人の真のファン」という記事は、ケビン・ケリーの名著「1,000人の真のファン」をもじったもので、少数のユーザーから収益を得ているクリエイターのための指針を示しています。

8.クリエイターに受動的(またはほぼ受動的)な収入機会を提供する
現実のアメリカでは、小学校の先生、トラックの運転手、看護師、営業の責任者などが中産階級の代表的な仕事です。これらの職業に共通していることは何でしょうか?それは、限界費用がゼロではないということです。つまり、1人でも多くの患者を治療したり、1人でも多くの人に販売したりするためには、より多くの時間と労力が必要になります。そのため、お客様の数には上限があり、結果的に収益の平準化が図られます。一方、デジタルコンテンツの世界では、視聴者を増やすための限界費用はゼロです。

限界費用がゼロに近いことで、デジタル・スーパースターが大量のオーディエンスを獲得する一方で、限界費用がないことで、わずかな労力や時間でデジタル商品を販売できる新興のクリエイターに有利に働くこともあります。例えば、クリエイターがソフトウェアや電子書籍、PDFなどのデジタルグッズを販売できるEコマースサイト「Gumroad」では、収益に極端なべき乗則が見られます。2020年9月に何かを獲得した19,480人のクリエイターのうち、その月に1,000ドル以上を稼いだのは9%、1万ドル以上を稼いだのは1%、10万ドル以上を稼いだのはわずか10人 (0.05%)でした。このように収益の集中が見られる一方で、すべてのクリエイターにとって、売上は (商品を最初に作った後の) 受動的な収入であり、クリエイターは時間をかけずに収益を拡大することができます。収入が増加すると、クリエイターは他の収入源に時間を割くことができ、様々な収入源のポートフォリオを作ることができます。

9. ユニバーサル・クリエイティブ・インカム(UCI)の提供
ユニバーサル・ベーシック・インカム (UBI) とは、政府による理論的な公的プログラムで、手段テストや労働条件なしにすべての国民に定期的な支払いが行われるというもので、最近になって急速に関心が高まっているアイデアです。

UBIのような政策は、経済学者から広く支持されており、1995年にアメリカの経済学者を対象に行われた調査では、78%が「政府は負の所得税に沿って福祉制度を再構築すべきだ」という提案を支持しています (一定の基準以上の所得者は国にお金を支払い、それ以下の所得者はお金を受け取る)。2020年3月のCovid-19を受けて、アメリカではUBIに似たCARES法が成立し、大人一人当たり1200ドル、子供一人当たり500ドルの直接現金支給が行われました。オーストリアでは、政府がフリーランスのアーティストを支援するために9,000万ユーロの基金を設立し、1万5,000人のアーティストに毎月1,000ユーロを6カ月間支給しています。

クリエイタープラットフォームがユニバーサル・クリエイティブ・インカムを検討する理由は何でしょうか?コンテンツ制作者に限って言えば、アメリカ人の71%が従業員よりも自営業を好むと回答しているにもかかわらず、自営業に踏み切れない理由はたくさんあります。障害となっているものの上位を占めるのは金銭的なものです。Freshbooks社の「2019 Self-Employment in America Report」によると、自営業の上位の障害は次のようなものでした。「収入が安定しないことを心配する」(35%)、「投資する現金がない」(28%)、「収入が減ることを心配する」(27%)となっています。

クリエイターにベーシックインカムを提供することは、より多くのクリエイターにコンテンツ制作により多くの時間を割いてもらうためのインセンティブとなる賢明な戦略かもしれません。TikTokのクリエイターファンドの発表は、この感情を反映しています。「米国のファンドは2億ドルでスタートし、革新的なコンテンツによって生計を立てる機会を求めている野心的なクリエイターを支援します。」

10. クリエイターへの教育・研修の実施
クリエイター・コラボ・ハウスが、学びを共有し、アイデアを交換することで参加者を部分的に高めているように、プラットフォームはこうした学びを促進し、クリエイターが成功するために何をすべきかを提案・指導することができます。

テイラー・ローレンツのHype Houseに関する記事によると、「チャーリー(D’Amelio) も、このグループが彼女の創造性を広げ、Vlogのような新しいコンテンツフォーマットに進出するのに役立ったと考えています。自分の部屋に一人でいたらやらなかったかもしれないことを、自分のコンフォートゾーンの外で試しています」と語っています。」

中国のインフルエンサー・インキュベーターは、この教育的な観点をさらに進めて、インフルエンサー (キーオピニオンリーダー、KOLと呼ばれる) の育成、成長、収益化に焦点を当てたマルチステップモデルを採用しています。2019年4月にIPOした業界リーダーのRuhnnは、新進気鋭のKOLに対して、コンテンツの作成方法、フォロワーとのエンゲージメント、メイクアップなどのトレーニングを含む一連のサービスを提供しています。マネタイズは、ファンをKOLのオンラインストアの顧客になるように誘導し、商品デザインから顧客サービスまで、Eコマースのロジスティクスをすべて管理するという形で行われます。2018年、Ruhnnの113人の契約KOLは、総売上高20億元(3億ドル)を生み出し、さまざまなソーシャルチャネルで約1億5000万人のファンを獲得しました。

ここでは、米国におけるクリエイター教育の製品化の例をいくつかご紹介します。

年間10億ドルの売り上げを誇るオールインワン・コース・プラットフォームのKajabiでは、オンライン・ビジネスを構築するためのコースを提供するKajabi Universityや、顧客の目標や次のステップについて顧客と戦略を練るカスタマー・サクセス・チームなどの教育リソースを提供しています。

Substackのブリッジ・メンターシップ・プログラムは、新しいSubstackライターと既存のSubstackライターがペアになって行う2ヶ月間のプログラムです。このプログラムでは、メンティーが「編集戦略やビジネスの支援を受け、ライティングスタイル、フィードバックの求め方、自分の価値の位置づけなど、クリエイティブなスキルを磨く」ことを約束しています。

On Deck Fellowshipはクリエイター教育の一環として、ポッドキャスターライターを対象としたフェローシップで、それぞれ教育プログラム、第一線で活躍するクリエイターとのセッション、ピアコミュニティで構成されています。

不平等を助長する力

アメリカではこの半世紀の間に、中産階級が四面楚歌の状態にあり、1971年から2011年にかけて全体に占める割合が10ポイントも減少しています。賃金の低迷に加えて、医療や育児など中産階級の生活を支える重要な要素のコストが上昇している現象は「中産階級の圧迫」と呼ばれています。アメリカ人の約半数が、中産階級の収入を得ることは若い頃よりも難しくなったと考えています。

現実の世界でもクリエイターの世界でも、不平等が拡大している大きな要因は、高所得者層が持つレバレッジにあります。急速な技術進歩により、熟練した労働者には賃金プレミアムが発生し、一方、オフショアリングや自動化が進む中で、低スキルの労働者は仕事を見つけることすら困難になっています。OECD諸国の中で、米国はスキルプレミアムが最も高い国です。

例えば、Twitchでは他のプラットフォームに移ることができ、視聴者にフォローしてもらうことができるレバレッジの効いたトップ配信者は、より多くの収益を得ることができます。例えばTwitchでは、平均視聴者数が1万人以上の配信者は、登録者の毎月の支払額の70%を保持しますが、小規模な配信者は50%です。

Shopify、Teachable、KajabiなどのSaaS型クリエイターツールは、基本的にクリエイターへの逆進性の高い税金として機能しており、トップクリエイターの収入に占める月額固定費の割合は少なくなっています。また、一般的には、GMVの増加に伴い、段階的なテイクレートが減少 (または交渉により引き下げられる)します。

多くの広告ベースのプラットフォームでは、広告収入へのアクセスは、すでに視聴者を集めているクリエイターに限られています。例えば、YouTubeのパートナープログラムの参加資格は、過去12ヶ月間に4,000時間以上の公開視聴時間があり、1,000人以上のチャンネル登録者がいることです。ポッドキャストの世界では、スポンサーシップ契約はポッドキャスターとブランドの間で直接交渉されることが多く、ポッドキャスターのロングテールは取り残されています。

より強い社会とプラットフォームへの道

パッションエコノミーは、クリエイターのレバレッジという概念に根ざし、それを称賛するものです。クリエイターは自分の個性を強調し、壊れないサービスや製品を提供しているため、完全に代替可能なギグワーカーよりも、プラットフォームに対してはるかに大きな力を持っています。クリエイターのプラットフォームは、様々な代替品や忠実な視聴者層が存在する中で、トップクリエイターにとどまってもらうためのインセンティブを与える必要があり、プラットフォームが不平等に陥りやすい要因となっています。課題は、トップクリエイターが持つレバレッジ、つまりトップの才能にスポットライトを当てることと、新人を引き上げることのバランスをとることです。

すべての人が上昇志向を持ち、経済的な安定を得て、学び成長する道があるとき、社会とプラットフォームは繁栄します。美しいのは、現実の世界でもデジタルの世界でも、この道を築くのは私たち自身だということです。


フォローして最新情報をチェック!

排他性の諸刃の剣 (The Double Edge Sword of Exclusivity)

先日、Bessemer Venture Partnersの投資家であるGaby Goldberg氏の素晴らしいMirror記事を読みました。

▼本記事の内容
  1. ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減
  2. 排他性という諸刃の剣

*この記事は、「The Double Edge Sword of Exclusivity」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Mason Nystrom
翻訳者: 渡辺圭祐


ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減

この記事の中でGoldberg氏は、彼女が「ソーシャル・トークン・パラドックス」と呼ぶものについて論じています。これは排他性に基づくソーシャル・トークン・コミュニティで生じる問題です。その問題とはソーシャル・トークンは新しいメンバーを加えることで価値が上がるのに、会員制のゲーテッド・コミュニティはグループを排他的に保たなければならず、そうしないと社会的価値やユーティリティの価値が下がってしまうというものです。このようにして、ソーシャル・トークンのパラドックスが生まれたのです。

訳者注: ゲーテッドコミュニティ(英語: Gated community)
ゲート(門)を設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、防犯性を向上させたまちづくりの手法。Wikipedia

他の方法でユーティリティを高めることができなければ、排他的なコミュニティはソーシャルトークン・パラドックスに直面し、以下のような悪循環を繰り返す運命にあります。

第1段階: ソーシャル・トークンを使って排他的なコミュニティを構築し、一定数のトークンを保有することでメンバーになる。

第2段階: 早期参入者がトークンを獲得することで、トークンの価値が上がる。また、新規参入者は、そのグループが排他的で社会的に価値があるという考えを強化するため、一時的に排他性が高まる。

第3段階: ある閾値(グループによって異なる)を超えると、新規メンバーの継続的な増加により、グループの社会的ユーティリティと排他性が低下し始める。しかし、新規メンバーはトークンを獲得せざるを得ないため、トークン価格は上昇する。

第4段階: 最終的に新規メンバーは、トークンの価値を確実にするために新規メンバーをリクルートするインセンティブが与えられる。しかし、十分な規模になると、新規メンバーは排他性の価値のリターンを減少させる結果となる。この時点でトークンは価値があり、ある程度のメンバー数でピークを迎える。

第5段階: メンバーは利益を得るため、または排他性/ユーティリティの低下を理由にトークンを売却する。最終的にコミュニティはある程度の均衡を保った後、再びこのサイクルを繰り返すことになる。

このパラドックスは、メンバーシップベースではないトークンでは起こりません。例えばビットコインの新規購入者は、それぞれビットコインの価値を高め(希少性を高め)、その結果、すべてのメンバーの目的が揃うことになります。ネットワークに新しいノードやメンバーが加わることで、ネットワークの価値が高まります。

排他性という諸刃の剣

残念ながら、排他的なコミュニティの成長には収穫逓減があります。一般的に、人が増えると排他性が減り、社会的価値が下がります。金銭的な価値と引き換えにメンバーになることは、排他性の最も一般的な形態です。カントリークラブ、イベント、購読料などは、金銭的価値と排他性を交換する形態です。 会員資格にはイベントなどの一時的なものもあれば、会費などの定期的なものもあります。

金銭的に得られる排他性やメンバーシップは諸刃の剣であり、ソーシャル・トークン・パラドックスに陥ります。また、コミュニティの規模や潜在的な成長を制限することになります。

バリュープロポジションとしての排他性は常に存在しますが、金銭的に完全に依存する必要はありません。

パフォーマンスまたは業績の排他性
パフォーマンスや業績は社会的に価値のあるシグナルです。パフォーマンスの評価は曖昧なことが多いですが、Rabbitholeはすでに、特定のタスクを完了したことをチェーン上に記録することを始めています。さらに、様々なDAOでタスクを完了した個人(例:ブロンズメンバー、シルバーメンバーなど)や過去の投票者にメンバーシップを与えることができます。実績や参加状況に応じてメンバーシップを階層化することで、異なるコミュニティの個人を1つのDAOやコミュニティに集めることができます。様々なDAOからトップの貢献者や投票者が1つのDAOに集まっていることを想像してみてください。

時間の排他性
時間に基づいたメンバーシップを作成することで、長期的なプレイヤーが集まり、ゲームや金銭などでは購入できない要素が加わります。時間によるメンバーシップは、達成されるまで何時間も何週間も作業に没頭するようなタスクのような成果と組み合わせることもできます。このモデルは参加するために多大な努力を必要とするコミュニティを発展させる動機付けとなります。

経験やサービスの排他性
経験を共有することで、社交クラブや大学生、同じ地域に住む人など、さまざまな人が結びつきます。経験は、慈善団体への加盟などの目的志向のものや、アーティストのコンサートに参加してからDiscordチャンネルへのアクセスを提供するNFTを得るというイベント志向のものもあります。

排他性についての最終的な考え
金銭的な独占性が否定されるわけではありません。活動や会員権など、人々がどのように資本を配分するかは、すべてトレードオフの関係にあります。排他性は目的や目標を共有するコミュニティに価値をもたらします。ソーシャル・トークン・コミュニティがネットワークを拡大しようとするとき、金銭的なものだけではないユーティリティや価値をもたらす方法を想像することが重要になるでしょう。


フォローして最新情報をチェック!

The Dao of DAOs

皆さん、こんにちは👋

自分で仕事をする面白さは仕事の内容が決まってないことですが、もし決まっていたとしたら、そのうちの1つは次のようなものになるかもしれません。「インターネットで遊んだ中で見つけた、最も面白いものを翻訳する」

数ヶ月前、私はNFTに関するツイートを目にするようになりました。私はNFTが何なのか知りませんでしたが、現場で働いている人たちは知っていたので、読んで、話して、考えて、書きました。何よりも学ぶために書きました。今ではNFTはどこにでもあります。BeepleのEverydaysはクリスティーズ(Christie’sというサイト)で6,900万ドルで落札されました。あなたのおばあさんもNFTを持っているかもしれませんね。NFTは急速に普及しています。

NFTについてツイッターやクラブハウスで話していた人たちは、次のものに向かっています。DAOです。

Web3の世界で新たな深みにはまるたびに、自分の手に負えないと感じるようになりました。Seed Clubを運営しているJess Sloss氏にDAOを調べていることを伝えると「🐇 meet 🕳」と書いてくれました。DAO (Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)は、次に深みに嵌ってしまう対象です。

この深さになると物事は乱暴になり始めます。私は声を大にして探求しています。すべての答えを持っているわけではありませんが、できれば一緒に何かを学びたいと思っています。

では、さっそく行ってみましょう。


▼本記事の内容
  1. The Dao of DAOs
  2. From NFTs to DAOs
  3. DAOの登場
  4. イーサリアムとDAO
  5. UniswapとCoinbaseの比較
  6. SushiSwapのフォーク
  7. 漸進的分散化(Progressive Decentralization)
  8. なぜDAOなのか?
  9. DAOの7つの力
  10. DAOの現在と未来

*この記事は、「The Dao of DAOs」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Packy McCormick
翻訳者: 渡辺圭祐


The Dao of DAOs

2016年6月17日にハッカーがThe DAOから盗んだイーサ(ETH)は、ハードフォークされていなかったとしたら、今日では66億ドルの価値があります。

2016年4月30日に発足したThe DAOは初期のDAO(Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)とベンチャーキャピタルファンドです。1万1,000人が当時の総供給量の14%にあたる1,150万ETH (約1億5,000万ドル相当) を投資し、その資金をまとめてクリプトプロジェクトに投資する予定でした。

機関投資家や富裕層(リミテッド・パートナー、LP)が資金を投じ、他の人々(ジェネラル・パートナー、GP)が企業に投資する従来のファンドとは異なり、The DAOの投資家はスマートコントラクトで設定された事前のルールに基づいて議案に投票することができます。各人の票数は、保有しているトークン数で重み付けされます。提案されたプロジェクトが十分な票を獲得することがトリガーとなり、スマートコントラクトは自動的にThe DAOの資金をプロジェクトのETHウォレットに投資しました。

The DAOのクラウドファンディングキャンペーンが始まって2週間後、TechCrunchは「The DAOは経済組織の考え方そのもののパラダイムシフトだ。完全な透明性、完全な株主管理、前例のない柔軟性、自律的なガバナンスを提供する」と書きました。

それから2ヶ月も経たないうちに、6月17日にハッカーがThe DAOを攻撃し、360万ETHを奪いました。当時、その額は約5,000万ドルにのぼりました。ETHが1,851ドルで取引されている今日、盗まれたETHは66億ドルの価値があり、史上最も高価なハッキングの一つに数えられています。

しかし、ハッカーたちは億万長者になったわけではありません。資金はスマートコントラクトの契約条件に基づいて28日間保留されたため、The DAOとより広範なイーサリアムコミュニティは、どう対応すべきかを考えるのに約1カ月かけることができました。議論の末、Vitalik Buterin率いるイーサリアムコアチームはイーサリアムブロックチェーンをハードフォークしました。それは基本的に強盗が起こらなかったことを除いては、すべてが同じである新バージョンでした。

訳者注:
後方互換性のないソフトウェアアップデートのことです。一般的には、ノードが古いノードのルールと競合する方法で新ルールを追加した場合に発生します。新しいノードは、新しいバージョンを操作する他のノードとのみ通信できます。その結果、ブロックチェーンは分割され、古いルールと新しいルールの2つのネットワークが作成されます。
参照: ハードフォークとソフトフォークの説明

イーサリアムのコアチームは、人々を強制的に移行させることはできませんでした。人々は以下の質問に答えながら、自らの意思で投票しました。「ハッキングを消去することのメリットは、人々の介入がイーサリアムへの信頼を失うというデメリットを上回るか?」ほとんどの人にとって、答えはイエスでした。一部の人々はハッキングが行われたイーサリアムのブロックチェーンをイーサリアムクラシックと名前を変えて使い続けましたが、私たちが知っているイーサリアムはフォークされたバージョンです。現在のイーサリアムのブロックチェーンを見ても、強盗の痕跡はありません。危害も反則もありません。

From NFTs to DAOs

しかし、オフチェーンではDAOの初期の勢いが失われたという弊害がありました。ビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなどの言葉は知っていても、DAOが何なのかは知らないかもしれません。実際、最後の400語はおそらくちんぷんかんぷんだと思います。

しかし、DAOは5年後に多様なユースケース、成長するソフトウェアツールキット、そして新しいガバナンスとインセンティブモデルを伴って再登場しています。私がフォローしている多くの賢い人々がNFTの次はDAOだと最近話しています。

私はジルの話を聞いていました。それで深みに嵌ってみることにしたのですが、予想以上に深かったですね。

NFTは比較的親しみやすいものです。キャッチーな見出しをつけるのも簡単です。「高価なJPEG?笑」なぜならNFTは最も基本的なもので、デジタルメディアを所有・収集可能なものにし、人々は時にそれに大金を払うからです。

DAOはNFTよりも一段階上の存在で、DAOはNFTを所有したり、NFTを作成したり、NFT以外の様々なことを行うことができ、NFTよりも大きな変革の可能性を秘めています。NFTはデジタルメディアの一部ですが、DAOはメディア企業全体になる可能性があります。

DAOはより複雑であるため、ヘッドラインやサウンドバイト、プライスタグで表現するのはそれほど簡単ではありません。しかし、そのために私たちはここにいるのです。

これは、DAOとは何か、どのように機能するのか、Web3の他の部分とどのように相互作用するのか、どのような利点があるのか、そしてこれらすべてがどこにつながっていくのかを考える私自身のプロセスを紹介する探求の始まりです。まずはシンプルに、そして積み重ねていきましょう。

• DAOの登場
• イーサリアムとDAO
• UniswapとCoinbaseの比較
• SushiSwapのフォーク
• 漸進的な分散化(Progressive Decentralization)
• なぜDAOなのか?
• DAOの7つの力
• DAOの現在と未来

すべての道はDAOに通ず。「Secure the BaaG」、「Power to the Person」、「We’re Never Going Back」、「The Value Chain of the Open Metaverse」、「Conjuring Scenius」など、私が書いてきた多くの探求的な作品は、知らず知らずのうちにDAOに向かっていました。これらの作品はすべて「ますますデジタル化が進むグローバルな世界で、私たちはどのように働き、投資し、創造し、一緒に遊ぶのか」という問いかけをしていました。

「Power to the Person」が「一人でどれだけのことができるか」であるならば、「DAO」は「みんなでどれだけのことができるか」です。

でも、待ってください。DAOって何でしょう?

DAOの登場

注: Web3に馴染みのない方、または復習が必要な方は「The Value Chain of the Open Metaverse」をお読みください。

まず、定義から説明しましょう。Scalar CapitalのLinda Xie氏は、彼女の投稿「A Beginner’s Guide to DAO」の中で、良い定義をしています。

DAO (Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン上で実行される、ルールを共有して調整を行う、ミッションを中心に組織されたグループのことです。

DAOはブロックチェーン上で運営され、役員や理事ではなくステークホルダーに意思決定権を与えるという点で「分散型」であり、スマートコントラクトを使用するという点で「自律型」です。スマートコントラクトとは、一般にアクセス可能なブロックチェーン上で実行され、一定の条件を満たした場合に人間の介入を必要とせずに行動を起こすアプリケーションやプログラムのことです。

DAOはプロジェクトの資金調達、コミュニティの運営、価値の共有のための新しい方法です。DAOはトップダウンのヒエラルキー構造ではなく、Web3テクノロジーと急速に進化するガバナンスとインセンティブシステムを用いて、意思決定権と金銭的報酬を分配します。一般的には、参加、貢献、投資に応じてトークンを発行することで実現しています。トークンの保有者は、提案を提出したり、投票したり、利益を共有したりすることができます。

ブロックチェーン、NFT、スマートコントラクト、DeFiプロトコル、DAppsがツールであるとすれば、DAOはそれらを使って新しいものを生み出す集団です。それらが「何」であるならば、DAOは「どのように」であると言えます。彼らはWeb3版の企業やコミュニティです。そして、人々が新しい要素や構造を試していくうちに、DAOは今では予測できないような特性を持つようになるでしょう。

DAOは、私たちの働き方、グループでの意思決定、資源の配分、富の分配、そして世界の大きな問題を解決する可能性を秘めていると支持者は考えています。DAOは、そもそもイーサリアムが誕生した理由でもあります。

イーサリアムとDAO

そもそも最初からDAOは存在していました。イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterinは、2013年のEthereum White Paperの序文で、Decentralized Autonomous Organizations(分散型自律組織)について言及しました。

Vitalikは、彼が2011年に設立したBitcoin Magazineに以前書いた「Bootstrapping a Decentralized Autonomous Corporation」という記事を参照していました。その中で、彼は次のような質問をし、答えようとしています。

この問題を別の方向からアプローチすることはできないだろうか。つまり、ある種の専門的な仕事をするのに人間が必要だとしても、その代わりに管理者を方程式から取り除くことはできないだろうか?

この投稿の中でVitalikは、Bitshares社の創業者ダニエル・ラリマーの「ビットコインは実はプロトDAOのようなもので、従来の会社に相当する新しいタイプの分散型企業である」という考えに言及しています。

• 株式 ≈ ビットコイン
• 株主 ≈ ビットコインの所有者
• 従業員 ≈ マイナー、バリデーター
• 給料 ≈ チェーンにブロックを追加した際のビットコインの報酬
• マーケティング ≈ ビットコインを宣伝するレーザーアイを持った人たち

しかし、ビットコインには限界があります。ちょっと間抜けな感じがします。実際にはあまり知らず、自分自身を変えることもできず、実際には何もしません。「ただ存在しているだけで、それを認識するのは世界に委ねられている」のです。それは本当に金のようなもので、人々がそれに何かをしたり、価値を与えたりするのをじっと待っているのです。

もっと親身になって、同じくらい複雑な例え話をすると(これが賢い読者がいることの良い点です!)、ビットコインが人工狭義知能(ANI)のようなものだとしたら、DAOは人工一般知能(AGI)のようなものです。ビットコインはプログラムされたことを上手にこなしますが、DAOは理論的には何でも上手にこなすことができます。

Vitalikはイーサリアムを紹介したときに以下のように言いました。

イーサリアムが提供しようとしているのは、任意の状態遷移関数をエンコードするための「コントラクト」を作成するために使用できる、本格的なチューリング完全プログラミング言語が組み込まれたブロックチェーンであり、ユーザーは数行のコードでロジックを書き上げるだけで、上述したあらゆるシステムや、まだ想像していない他の多くのシステムを作成することができます。

ビットコインはデジタルマネー。イーサリアムはアプリケーションから組織全体まで、あらゆるものを作ることができるプラットフォームです。

イーサリアム、ビットコイン、その他のブロックチェーンは、Web3技術スタックのレイヤー1です。ビットコインの場合、すべての魔法はレイヤー1で起こりますが、イーサリアムの場合、魔法のほとんどはレイヤー2、プロトコルとスマートコントラクトのレイヤーで起こります。

ソース: readthedocs.ioExample

レイヤー2は、プロトコルやスマートコントラクトのレゴブロックを作るところで、無数の組み合わせや形態で配置することができ、アート作品の作成からクリプトの取引まで、サードパーティを必要とせずに直接行うことができます。

ZoraはNFTプロトコルで、クリエイターが自分の作品を作成し、所有し、販売することができます。Uniswapプロトコルは「開発者、リクイディティ・プロバイダー(LP)、トレーダー、誰もがオープンでアクセス可能な金融市場に参加できる 」分散型の取引所です。Mirrorの分散型出版プラットフォームは「私たちが自分の考えを表現し、共有し、収益化する方法に革命を起こす」としています。

Zora、Mirror、Uniswapは全てのプロトコルですが、全てのプロトコルが必ずしもDAOではなく、その逆もまた然りです。その違いを理解するために、まずは中央集権型プラットフォームと分散型プロトコルを比較し、分散型プロトコルがDAOに進化するまでを説明します。

UniswapとCoinbaseの比較

クリプト化されているからといって分散化されているとは限らないし、分散化されているからといってDAOであるとは限らないのです。

Coinbaseはクリプトの売買を可能にしますが、それ以外の点では、株式や債券、通貨、商品などを取引する中央取引所のようなものです。一定の価格で買いたい人と、その価格で売りたい人をマッチングさせ、取引を円滑に進めるために取引ごとに手数料を取るのです。

企業としてのCoinbaseは典型的な中央集権的企業のように振る舞います。投資家がいて、取締役会があり、CEOがいて、良くも悪くも組織の方向性を決める決定を下します。どのクリプトをプラットフォームに上場させるかは、ユーザーではなくCoinbaseが決定します。Coinbaseは中央集権的な性質を持っているため、理解と使用が比較的簡単です。銀行口座に接続して資金を預け、クリプトを買い始めるだけです。それはうまくいきます。CoinbaseはダイレクトリスティングIPOで上場し、会社の価値は1000億ドルを超えると思われます。

翻訳者注: Coinbaseは2021年4月14日に米ナスダックに上場し、時価総額は一時1120億ドル(約12兆2000億円)を超えた。参照

一方、Uniswapはイーサリアムブロックチェーン上で運営される分散型の取引所です。Coinbaseとは異なり、Uniswapにはウォレットすらなく、純粋な取引所であるため、ユーザーは自分のクリプトを別の場所で保有する必要があります。

Uniswapは分散型であるため取引対象を決定することも、流動性を提供することも、銀行口座を持つこともありません。その代わりに、Uniswapは利用可能な流動性に基づいて価格を設定するスマートコントラクトを通じて、ユーザーが直接取引できるAutomated Market Maker(自動化マーケットメーカー)です。中間業者は存在せず、Uniswapはどのトークンが取引できるかを選びません。

その代わり、誰もがUniswapのリクイディティ・プロバイダー(LP)になることができます。例えばETHとUSDTのような安定したコインなど、任意のERC20トークンのペアをロックアップします(文字通りデジタル金庫に入れてしばらく触らないようにします)。 その代わり、そのペアの流動性の割合を表す流動性トークンを受け取ります。誰かがUniswapで取引をする際には、0.3%の取引手数料を支払い、その手数料は流動性トークンの保有量に応じてリクイディティ・プロバイダーに支払われます(もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください)。

Uniswap自体は単なるプロトコルであり、課金される取引手数料は一切受け取りません。昨年末までUniswapはDAOではありませんでした。トークンもなければ、時価総額もありませんでした。

今日、Uniswapの1日の取引量は10億ドル近くになり、1日の取引手数料が3000万ドル近くになり、今日の時点で170億ドルの時価総額になっています。

何が変わったのでしょうか?8月に入ってから事態は荒れていきました。

SushiSwapのフォーク

二つの道が森の中で分岐していて、私は…
私は道なき道を進んだ。
それがすべての違いを生んだのだ。
— ロバート・フロスト「The Road Not Taken」より

分散型プロトコルの優れた点は、コード、スマートコントラクト、取引履歴が公開されており、誰もが見たり、監査したり、コピーしたりできることです。このオープン性がチェック&バランスの役割を果たし、良い行動やプロトコルの最適化を促すことになります。なぜなら、プロトコルを開発しているチームのやり方に反対する人や、もっと良い方法で価値を生み出すことができると考える人が多ければ、そのプロトコルをフォークすることができるからです。

それがSushiSwapを開発したチームであるChef Nomi(仮名)がUniswapに対して行ったことです。

Uniswapの最初の2年間は創設者であるHayden Adamsの決定と、その上に構築されたスマートコントラクトに支配された、シンプルなプロトコルとして存在していました。トークンをLPに発行し、取引手数料のシェアを得ていましたが、それらのトークンはプロトコル自体には結びついておらず、ホルダーにはUniswapのガバナンスに対する発言権はなく、リクイディティ・プロバイダー(LP)が流動性の提供を止めるとすぐにオーナーシップは消滅してしまいました。

SushiSwapはそれを変えるために、Uniswapの進化形として2020年8月にローンチされました。

ブログ記事でSushiSwapチームはこう書いています。「Uniswapのエレガントなコアデザインを受け継ぎ、プロトコルのデザインを改善するのに役立つと信じているコミュニティ指向の機能を追加し、関係者にさらなる利益を提供しました。」

この文章を伝統的な企業として公の場で書くことを想像してみてください。「フェイスブックのソースコードとデザインを使って…」 そんなことはあり得ません。しかし、Web3は違います。フォークは期待されているのです。

SushiSwapはUniswapと一点を除いてほぼ同じです。SushiSwapでは0.30%の手数料が分割され「0.25%はアクティブなリクイディティプロバイダーに直接支払われ、残りの0.05%はSUSHIに変換されて(明らかにSushiSwapを通して)SUSHIトークンホルダーに分配される」という点です。SUSHIトークンを導入し、0.05%をトークンに配分することで、トークン保有者は積極的に流動性を提供していなくても、アップサイドに参加できることになります。早期に参入したり、取引可能なトークンでSUSHIを購入したりすることができます。

なるほど、ではSushiSwapはDAOなのでしょうか?そうではありません。

SUSHIは経済的には参加できますが、(今のところ)ガバナンストークンではありません。ガバナンスフレームワークであるOmakase DAOに取り組んでいて、プロトコルのコントロールをコミュニティに委ねる予定です。今のところ、コミュニティはSnapshotの改善提案に投票できますが、投票に拘束力はありません。

さて、今はDAOとは何かわかりますね?Uniswapです。

SushiSwapのフォークへの対応として、フォークされたプロトコルに移行させないために、Uniswapは2020年9月16日に待望のUNIトークンを発表しました。SUSHIとは異なり、UNIトークンは保有者にガバナンス権(提案に対する投票権や承認権やパートナーシップなどにUNIを割り当てる権利)を与えます。その投稿の中で、Uniswapのチームはこう書いています。

高度に分散化された金融インフラへのプロダクトマーケットフィットを独立して繁栄してきたプラットフォームで証明したUniswapは、現在、コミュニティ主導の成長、開発、自立に向けて特に有利な立場にあります。

UNIを発行すると同時に、UNI保有者は以下の所有権を得ました。

• Uniswapガバナンス権
• UNIコミュニティの財務
• プロトコルフィースイッチ
• uniswap.eth ENS名
• Uniswapデフォルトリスト(tokens.uniswap.eth)
• SOCKS流動性トークン

Uniswapは今日のSUSHISwapのように0.05%をUNIに還元するわけではありませんが、180日間のタイムロックの遅延を条件に、コミュニティは「プロトコルフィースイッチ」を所有し、そのロックアップが終了したときにコミュニティはその可否を投票することができます。

では、その結果はどうなるのでしょうか?Uniswapはフィー・スプリットの変更なしにDAOになったプロトコルで、SushiSwapはUniswapをフォークして新しいフィー・スプリットを作りましたが、まだDAOにはなっていません。

この例は重要なポイントを浮かび上がらせます: クリプト会社は初日からDAOになる必要はありませんし、一般的にはそうすべきではありません。進化することができるのです。初日からDAOとしてスタートしたThe DAOとは異なり、UniswapとSushiSwapの両社はVariant FundのJesse Walden氏が提唱する 「Progressive Decentralization」を経ています。

漸進的分散化(Progressive Decentralization)

Jesse Waldenは、私がWeb3やオーナーシップエコノミーについて理解しようとする際、最もよく参考にする人物です。そこで、MirrorのPatrick Rivera氏に、私がずっと疑問に思っていた「委員会で優れたプロダクトをデザインすることができるのか?」 と質問したところ、意外にもWalden氏の「Progressive Decentralization」の記事を紹介してくれました。

Waldenは委員会でプロダクトをデザインしようとしたり、初日からトークンを与えたりすることは意味がないと書いています。その代わりにWaldenは、「持続可能で、コンプライアンスを守り、コミュニティが所有するプロダクトを構築することを目標」として、3段階のプロセスで分散化に取り組む枠組みを示しました。

1. プロダクトマーケットフィット(製品と市場の適合)
クリプトスタートアップの初期は、他のスタートアップの初期と同じように、小規模で集中したチームが、プロダクトマーケットフィットを見つけるまで、構築、学習、反復に全力を注ぎます。プロダクトがひどいものであれば、コミュニティはそれを救うことはできず、トークンの所有権にかかわらず、関心を失ってしまうでしょう。VC が勝者と敗者にどれだけの時間を費やすかを見てみましょう。

Web3のスタートアップはオープンな性質を持っているため、既存のスマートコントラクトやコード、プロダクトを新しいものにスナップさせることで、素早く構築し、テストすることができます。DeFiが「お金のレゴ」と呼ばれるのには理由があって、誰かが何か新しいものを作るたびに、それが他の人が使えるビルディングブロックになるからです。魔法は新しいレゴを作ることではなく、チームが既存のレゴを組み合わせることで生まれることが多いです。

Waldenは「この段階では分散化を装うべきではない。プロダクトマーケットフィットを見極めるためには、必然的にコアチームがすべてのプロダクトに関する決定を行うことになる」と述べています。

これは私にとってWeb3企業に対する考え方が変わるきっかけとなりました。私はすべてのクリプトスタートアップを「Decentralization Maximalist(分散化最大主義者)」と呼ばれるグループに分類していましたが、実際にはそれはごく一部であり、トップのクリプトスタートアップはそれよりも現実的です。

多くのクリプトスタートアップは、プロダクトマーケットフィットを発見するために、従来のベンチャーキャピタルから調達しています。これはProtocol LabsとCooleyが開発した構造で、Y CombinatorのSAFEに似ていますが、会社が将来トークンを発行した場合に株式ではなくトークンに変換するという点が異なります。

2.コミュニティへの参加
プロダクトマーケットフィットを達成した企業は、より多くのステークホルダーに直接参加してもらうための実験を始めるべきです。

Waldenはそれをオープンソースの開発になぞらえ、コミュニティからの参加を募り、報奨金や助成金などのインセンティブを与え、オープンに開発を進め、コミュニティを構築し、意思決定に大まかなコンセンサスを導入しました。TwilioやStripeのようなオープンソースではない企業でも、自社のAPIをベースに構築する開発者の間にコミュニティを形成することで、強い競争力を築きました。

しかし、StripeやTwilioは開発者コミュニティに株式を配布していませんが、現時点では、クリプト企業はコミュニティへの参加と忠誠心を高めるために、継続的な貢献のインセンティブとして手数料やトークンを使用する方法について考え始めることができますし、そうすべきです。

手数料の面では、ユーザーに手数料を課して貢献者に還元するか、プラットフォームが十分なネットワーク効果を構築するまで手数料を課さないかというトレードオフがあります。クリプトサービスはオープンソースなので、高い料金を請求すると誰かがサービスをフォークしてしまう可能性がありますが、貢献者に還元できる料金を請求しないということは、貢献を促すための資金がないということになります。ここでの均衡状態はプロトコルが最小限の抽出を行うこと、つまり、コストをカバーするのに十分な料金を徴収することです。例えば、Uniswapはわずか0.30%の課金で、それをリクイディティ・プロバイダーに直接支払っています。

トークンの面では、チームは少数のコミュニティメンバーにトークンを発行し、ガバナンスのダイナミクスを試すことができます。この期間はコアチームに十分な意思決定権を与え、自分たちのビジョンに向けて意思決定に影響を与えられるようにするためのトレーニング期間です。この時点で、コアチームと初期の貢献者への報酬と、継続的な参加へのインセンティブとのバランスを考慮したトークンの配布計画を発表し、フィードバックを募る必要があります。ゲーム理論、数学、観察された行動、会話などを用いて、新しいインセンティブモデルやガバナンスモデルが構築され、日々テストされています。これについては、別のエッセイで紹介します(または、a16zの「On Crypto Governance」を読んだり、ゲーム理論の適用に関するこのビデオを見たり、Maker DAOのようなホワイトペーパーを読んだりしてください)。

3. 十分な非中央集権化
チームが最初の2つのステップを成功させた後は、トークンをより広いコミュニティに配布する準備ができています。これは従来のIPO、SPAC、買収に代わるもので「コミュニティへのイグジット(Exit to Community)」と呼ばれ、プロジェクトや企業がDAOになるポイントです。

これはスマートコントラクトを起動することで行われます。このスマートコントラクトは、今日誰がどれだけのトークンを取得するか、将来どのようにトークンを配布するか、トークンの所有権がどのような経済的・ガバナンス権を与えるかなど、すべてを決定する事前に定義されたルールに基づいて、トークンを採掘・配布します。

この時点から、プロトコルの将来の開発はコミュニティの手に委ねられています。コアチームはコミュニティでの地位や保有しているトークンの数に応じて意思決定に影響を与えるかもしれませんが、スマートコントラクトで定められたルールと、コミュニティの投票に基づいて行われた修正が将来の変化を決定します。新製品、採用、料金変更、マーケティングキャンペーンなど、あらゆることが提案され、トークン保有者の投票によって決定されます。おめでとうございます: あなたのプロトコルはDAOに移行しました。

しかし、プロジェクトをアイデアからDAOに移行させる方法がわかったところで、私を悩ませていたもう一つの疑問に答えなければなりません。そもそも、なぜコミュニティ参加や分散管理が望ましいのでしょうか?

なぜDAOなのか?

もし、分散化最大主義者(Decentralization Maximalist)がWeb3コミュニティのごく一部に過ぎず、関係者のほとんどが論理的で経済的に動機づけられた行動者であると信じるならば(そうでなければ、なぜインセンティブデザインがこれほどコアになるのでしょうか)、DAO構造には経済的・戦略的な利点があるはずです。「Progressive Decentralization」でWalden氏は2つの利点を強調しています。

1. コミュニティの参加とコントロールにより、プラットフォームのリスクが限定される
Chris Dixon氏はプラットフォームはユーザーや開発者を惹きつけるためにオープンな状態でスタートし、一定の規模やスケールに達した時点で利益を上げ、株主価値を最大化するために抜き取りを開始すると主張しています。

DAOはステークホルダーの価値を最大化することを目的としています。ユーザーや貢献者は、投資家でありオーナーでもあります。コミュニティ・オーナーシップは、奇妙で斬新なヒッピーのように見えますが、実際には、少数の外部投資家や役員が会社に大金を投じて、会社が何をすべきかを決定するよりも、より自然なモデルです。私たちがこのようにしている理由は、これまでは多くの小規模なオーナーやステークホルダーが意思決定において発言権を持つように調整することが困難だったからです。しかし、テクノロジーの進歩により、より自然なモデルが可能になりつつあります。

これを逆に考えてみましょう。もし私たちが幅広いコミュニティ・オーナーシップから始めて、現在のような外部投資家によるコントロールのモデルを導入しようとしたらどうなるでしょうか?人々がそれを許すはずがないと思います。

DAOの構造はプロトコルやプラットフォームが時間をかけてステークホルダーと一致することを意味しています。

2. 規制コンプライアンス
クリプトトークンは、Howeyテストで証券とみなされる可能性があり、その場合、流通が困難で高価になりますが、情報の非対称性やコアチームへの依存を解消して価値を生み出すことができれば、トークンは証券から非証券に変わる可能性があると分析されています。
(トークンの発行を考えている場合は、弁護士に相談してください)。

DAOを検討する確かな理由は2つありますが、それだけで勢いのある経済エンジンを作った多くの起業家がコミュニティに支配権を譲るほど説得力があるとは思えません。自分の周りにシステムを構築して、将来的に価値を引き出せるかどうかをチェックするような自意識の高い人もいるかもしれませんが、それほど多くはないでしょう。DAOモデルには何か他の利点があるはずです。

ハミルトン・ヘルマー(Hamilton Helmer)は何と言うでしょうか?

DAOの7つの力

現在、DAOは実験段階にあります。コンセプト自体が、メタ・プロダクトマーケットフィットするように取り組んでいます。この段階では、多くの人々が好奇心と、コミュニティへの参加、創造、コラボレーションの新しいモデルを試してみたいという思いから、DAOを作成しています。DAOはより良いものである必要はなく、ただ新しいものであればいいのです。

しかし、長期的には、Vitalikのビジョンである「経営者のいない会社」を実現するために、DAOは他の組織やガバナンスの形態と比較して、競争力のある優位性を持つ必要があります。DAOになるということは、堀(moat)を作ることです。「競争の破壊的な力からビジネスのマージンを守るための障壁」です。ハミルトン・ヘルマー氏は「7 Powers」の中で競争優位性の源泉を7つ挙げています。

ここでは、DAO構造がチームの堀を築くのに役立ちそうな点を見てみましょう。

規模の経済: 3/5 Helmers (5点満点中3点)
生産量が増えれば増えるほど、単位当たりのコストが下がるビジネスのこと。

DAOは世界中の人々や組織に、より大きな目標に向かって資源をプールする手段と動機を与えます。理論的には新しいユニットを生産したり、新しいユーザーを受け入れたりするたびにコストを下げることができます。また、DAOの構造は従来の組織よりも摩擦が少なく、必要に応じて多くのサービスに支払うことで、人件費を削減することができるかもしれません。しかし、DAOには従来の構造に比べて明確な利点がないため、3/5点としました。

ネットワーク経済: 5/5 Helmers
新しいユーザーがネットワークに参加すると、各ユーザーにとってサービスの価値が高まる。

ネットワーク経済はDAOが成功し、既存の企業を打ち負かす可能性がある領域です。これは成功したDAOにとって最強の堀となるでしょう。

ネットワーク経済の典型的な例はFacebookで、友人が参加するたびに、彼らと話したり、彼らが何をしているかを見ることができるので、その価値が高まります。DAOはステートフルなプロトコルと貨幣を直接組み合わせたクリプトネットワーク上に構築されており、ネットワーク効果をステロイドのように発揮します。DAOではユーザーがオーナーとなり、誰かがDAOに参加したりプロトコルを使用したりするたびに、そのユーザーのトークンの価値が理論上高くなります。さらに、DAOが強くなると、その上にさらに多くの人が集まり、さらに強くなり、さらに多くの人が集まる、というようにDAOが強くなっていきます。イーサリアムにはWindowsのようなプラットフォームネットワーク効果がありますが、金融のステロイドが入っています。いったんDAOが勢いづくと、それを元に戻すのは非常に難しいでしょう。

カウンターポジショニング: 4/5 Helmers
新規参入者が新しい優れたビジネスモデルを採用すると、既存のビジネスにダメージを与えることが予想されるため、既存企業は真似しない。

DAOモデル自体が他の点で有利であれば、DAOはDAOであるということだけで既存の企業に対して強い堀を築くことができます。FacebookのDAO版は、ユーザーが新しいメンバーを招待したり、自分のデータを共有したり、コンテンツに貢献したりすることで報酬を得ることができ、ZuckがFacebookをDAOにする可能性は雪だるま式に増えるわけではないという点で、Facebookに対して堀を築くことができます。この堀は伝統的な企業に対する堀である一方で、他のDAOに対する堀であるとは限らないため、5番目のHelmersをわずかに逃しています。

スイッチングコスト: 2/5 ヘルマー
追加購入の際に代替業者に切り替えることで発生する、顧客が期待する価値の損失。

これはやっかいなものです。一方で、DAOのメンバーは、あるDAOで所有しているトークンが競合するDAOに乗り換えると価値が下がる可能性があるため、スイッチングコストが発生します。しかし、SushiSwapの例が示すように、ブロックチェーンベースのプロトコルは、既存のプロトコルと互換性のある、非常に類似した新しいプロトコルにフォークすることができます。これにより、プロトコルがステークホルダーを満足させ、十分な報酬を得るために常に競争するというダーウィンの力学が生まれます。これは堀としては低いスコアですが、スイッチングコストの低さはDAOの美しさの一部です。

ブランド: 4/5 Helmers
売り手の歴史的な情報に基づいて、客観的に同一の提供物に高い価値を永続的に帰属させること。

特定のブランドが同じ商品に高い値段をつけられる理由の一つは、人々が自分のアイデンティティをそのブランドに結びつけているからである。ティファニーのブレスレットを身につけていると、普通のシルバーのブレスレットとは何かが違います。同じように、人々は自分が貢献しているメンバーやオーナーであるDAOに自分のアイデンティティを結びつけます。ビットコインがDAOだとすると、ビットコインを所有することでアイデンティティを確立している人たちのことを考えてみてください。彼らはビットコインを市場に出したり、押し目買いをしたり、信者ではない人を無料で叩いたりしています。

これでは5番目のHelmerにはなれません。なぜなら、それは両極端だからです。感情が高ぶり、DAOがメンバーの同意を得られないことをすれば、すぐに逃げ出してしまうかもしれません。イーサリアムのエコシステムを発展させるための助成金を授与するMoloch DAOには「rage quit」メカニズムが組み込まれていて、メンバーは特定のコミュニティの決定に同意できない場合、それを通して怒りをもって辞め、トークンを撤回することができるようになっているほどです。

追い詰められたリソース: 4/5 Helmers
価値を高めることができる魅力的な資産を、魅力的な条件で優先的に入手することができる権利。

DAOのコミュニティはその追い詰められた資源である。多くのDAOは人々を雇用したり、貢献に対して報酬を与えたりしていますが、DAOやその上に構築されたブロックチェーンの価値を高めるためだけに人々がDAOに貢献しているケースも多くあります。Moloch DAOではETHの価値を高めるために、メンバー自身がプールしたETHから助成金を与えたり、イーサリアムをより良くするために無償で作業をする提案をしたりすることができます。それらのエンジニアの時間は独立して価値があります。

プロセスパワー: 2/5 Helmers
コスト削減や優れたプロダクトを可能にする、企業の組織や活動のセットが組み込まれていること。

これも「エコシステムにとっては良いが、堀にとっては悪い」という評価です。DAOは、スマートコントラクト自体にプログラムされているため、本質的に文字通り組織や活動のセットが組み込まれていますが、同じ理由で、他のDAOやプロトコルに対して防御することはできません。レゴや取扱説明書を公開することの難しさは、誰もがプロセスをコピー&ペーストできるということです。最高のガバナンスとインセンティブの構造はコピーされ、微調整されるでしょう。

DAOのユーザー、貢献者、より広範なエコシステムのステークホルダーに経済的インセンティブを与え、それらのステークホルダーにDAOのガバナンスに対する発言権を与えることで、DAOは非常に強力な堀を構築する機会を得ます。最も強力なのはネットワーク効果で、いったんDAOが脱出速度に達すると、それを取り壊すのは難しいでしょう。特に、コミュニティのガバナンスによって、コミュニティが最も長期的な価値を生み出すと信じる方法で適応し、進化することができるはずだからです。

とはいえ、DAOはその堀を利用して安住することには注意が必要です。価値を引き出しすぎたり、少数のステークホルダーに権力を与えすぎたり、動きが遅すぎたり、その他にもコミュニティの十分に大きな部分を怒らせるようなことをしてはいけません。そんなことをすれば、他の人に隙を与えることになるからです。フォークの脅威は常に存在しています。適者生存なのです。

DAOの現在と未来

DAOは、The DAOのハッキングの問題から這い上がってきた後、自分たちの足場を見つけ始めたところです。非常に早い時期です。DeepDAOによると、上位のDAOの運用資産は9億5200万ドルに過ぎません。これは、すべてのDAOの資産を合わせると、時価総額で86番目に価値のあるクリプトにランクされることになります。

しかし、すでに魅力的な実験や動きが行われています。

Louis Grxは以下のようないくつかの異なるタイプのDAOを紹介しています。

クリエイターDAO: Jarrod Dicker氏、Patrick Rivera氏、Brian Flynn氏はクリエイターが自分の作品を所有し、その利益を真のファンと共有する可能性について書いています。現在、Creator DAOの主な例はありませんが、今日NFTを制作している人たちの中には、明日、ファンに購読ではなく投資をさせるDAOを立ち上げる人もいるのではないでしょうか。

プロトコルDAO: 金利プロトコルのCompoundや流動性プロトコルのAaveのようなDeFiプロトコルにより、クリプト所有者は何十億ドルもの価値のある資産から収入を得て、財務的報酬やガバナンスをコミュニティと共有することができます。

トークン化されたコミュニティ: 先週、ソーシャルマネープラットフォーム「Roll」がハッキングされ、トークン化されたコミュニティは打撃を受けました。しかし、DAOとは異なり、ハッキングはトークン化されたコミュニティを消滅させるのではなく、バラバラになったコミュニティとそのメンバーが集まって、影響を受けた人々を全体的にまとめることで、コミュニティをより強くしました。リチャード・キムのRNGはトークン化されたコミュニティの代表的な例であり、Miquelaの生みの親であるトレバー・マクフェドリーズが設立したFWBもそうである。

投資家DAO: ここで私たちは一周します。LAOはDAOが失敗したところを拾っています。LAOのメンバーは14,809ETHを拠出し、Flamingoのような他のDAOを含むブロックチェーンベースのプロジェクトに投資しています。

NFTと同様に、現在行われている初期の実験は将来の可能性のほんの一部である可能性が高い。DAOが数千億ドル規模の上場企業と競争するのは、数十年後かもしれません。例えば、分散型ライドシェアリングネットワークや、最小限の抽出手数料を徴収するアプリストアなどですが、私たちが考えるよりも早く実現するかもしれません。ジャックは最近絶好調で、クリプトを愛しています(最初のツイートをNFTとして販売したこともあります)。もしかしたら、Twitterの分散型ネットワーク「Blue Sky」を立ち上げ、その所有権とガバナンスをコミュニティに委ねることができるかもしれません。

小さく始まって進化する可能性の方が高いでしょう。今日、バランスシート上でビットコインを購入し、NFTを作成している企業(Charminタコベルがそうですね)は近い将来、小さなプロジェクトや会社の機能のためにDAOを実験的に導入するかもしれません。より多くのDAOツールが登場すれば、小規模なテストを行うことはますます容易になるでしょう。すでに、DAOレゴキットは充実してきています。

新しいツールは、より多くのアクセスを意味します。Seed Clubは、そのすべてをナビゲートすることもできます。新しい企業が、構築、実験、学習、反復、リミックス、再構築、テスト、プロダクトマーケットフィットの発見、コミュニティへの参加、そしていつの日かコミュニティへの還元を行うことが、これまで以上に容易になります。

この分野のエネルギーは伝染しやすく、コミュニティは非常に包括的で親切です。クリプトの残高が膨らんでいるからかもしれませんが、彼らは昨年のクリプトの冬にも建設を続け、次の冬が来ても建設を続けるでしょう。

ETHを買わされて深みに嵌った後、私は以前よりも混乱し、以前よりも好奇心が強くなり、この空間で人々が一緒に何を構築するかを見ることに非常に興奮しています。私は自分でCreator DAOを作ってみたいと思っています。DAOが最終的にどのような形になるのか、どのようなガバナンスやインセンティブモデルが主流となり、最もエネルギーを集めるのか、いつ1兆ドル規模のDAOが登場するのかはわかりませんが、必然的なもののように感じています。

DAOは斬新で、ちょっとしたヒッピーのように感じられます。プロジェクトや会社の所有権や支配権をコミュニティに与えるというのは、物事のやり方としては間違っていると思います。しかし、考えれば考えるほど、ステークホルダー・オーナーシップは自然な状態であり、このように広く分散したガバナンスやオーナーシップを調整する技術やモデルはこれまでなかったのではないかと思います。

タブラ・ラサと現代のテクノロジーがあれば、取締役会のコントロールが大きく集中しているシステムよりも、DAOのようなシステムを設計することができると思います。

私は、私たちがそこに到達すると信じ始めています。十分な情熱、ツール、発言力、インセンティブを持った賢い人々が、友好的な適者生存の文化と相まって、次の大きなものへの道を迅速に実験することができるのです。そうなれば、世界は大きく変わるでしょう。

透明性と価値の共有の精神に基づき、私がこの作品の研究に使用したすべてのソース資料のドキュメントを紹介します。DAO Links. クリプトの深みへの旅をお楽しみください。

Web3をサポートしてくれたPatrick、Jess、Ryan、そして編集を担当してくれたDanに感謝します。

今週の「Not Boring」はいかがでしたか?あなたのフィードバックが、この番組をより良いものにしてくれます。


Packy McCormickの他の記事を読む👀

👉 Packy McCormick

フォローして最新情報をチェック!

Status Monkeys (Status as a Serviceフレームワークを用いた社会的ネットワークとしてのNFTの分析)

Status as a Serviceフレームワークを用いた社会的ネットワークとしてのNFTの分析

先週の月曜日から新たにNot Boringに参加された1,901名の方々を歓迎します。67,713人のスマートで好奇心旺盛な人たちと一緒に、ここで購読してみませんか?

こんにちは、皆さん👋 

土曜日、プジャと私はCOVID以来初めての郊外での結婚式に行ってきました(クープとリズ、おめでとう!)。リッチモンドまでの往復で車の中にいる時間が長かったので、ワイルドなアイデアを考える時間がたくさんありました。

では、さっそくご紹介しましょう。


▼本記事の内容
  1. Status Monkeys
  2. Status as a Service(サービスとしてのステータス)
  3. NFTの最近の歴史を振り返る
  4. Investment as a Status(ステータスとしての投資)

* この記事は、「Status Monkeys」を著者の了承を得て翻訳したものです。

著者: Packy McCormick
翻訳者: 渡辺圭祐


Status Monkeys

この週末、ツイッターではThe DEADが私を追いかけてきました。Haley Joel Osment的な意味ではなく、このアバターがどこにでも出てきていたのです。

知らない人のために説明すると、この緑の男はCryptoPunkです。CryptoPunksは24×24ピクセルアートのNFTで、その数は10,000個にも及びますが、今後増えることはないでしょう。2017年6月にLarva Labsが作成したCryptoPunksは、OG NFTです。新しいNFTプロジェクトが刻々と登場する中、CryptoPunksはその古さゆえに希少価値があります。

そのため、ここ数週間でNFTの価値が急上昇すると、CryptoPunksがその先頭に立ちました。最も高価なPunkは、3月に4.2k ETHで販売されました。現在では757万米ドルの価値があります(2021年8月9日時点)。今、自分だけのPunkを購入したい場合、最も安いものでも51.85ETHです。これが最低価格です。この価格では、より一般的なPunkが購入できます。上の写真のようなApe、Alien、ZombieなどのレアなPunkを購入するには、もっと多くのETHを支払う必要があります。

その他、CryptoPunksについて知っておくべきことをいくつかリストアップします。

• Punkを所有することは、フェラーリや高価なハンドバッグを所有するようなステータスシンボルです。
• Punkのオーナーは、自分のPunkの画像をプロフィール画像(PFP = picture for proof and profile pic)として使用することがよくあります。
• 自分が所有していないPunkをプロフィール画像として表示すると、顰蹙を買います。

この週末、何百人もの人がプロフィール写真を、金曜日のオークションで1,201.725ETH(375万円)で落札された、あのたった一枚のZombie Punkに変えました。これほど多くの人が、分解されたパーティーハットの絵文字をつけたPunkを表示しても、誰も眉をひそめませんでした。

金曜日のオークションでは、478人の人々がPartyBidに参加しました。PartyBidは、Anish Agnihotri氏とPartyDAOのクルーが作った新製品で、人々がチームを結成してNFTに入札することができ、リソースをプールして、金持ちクジラに対抗して数百万ドルのPunkを狙うことができます。彼らは自らをParty of the Living Deadと呼びました。そして、彼らは勝利したのです。

ソース: Chuck Anderson

PartyBidは、NFTをよりソーシャルなものにしています。前もって文字通りのパーティーを行い、後ろでは何百人もの人々が高価なNFTを購入し、所有し、一緒に管理する機会を提供しています。そのソーシャル性はウェブサイトを見れば一目瞭然で、まるでFigmaMasterworksが子供を産んだかのように、カーソルやコメントがリアルタイムで飛び交っています。金曜日のオークションが進むにつれ、動くカーソルや絵文字で表現された何百人もの人々が、目に見えてサイト内をズームしていきました。言葉で説明するのは難しいのですが、上の画像を見ていただければわかると思います。ぜひ、ご自身で訪れて確認してみてください

ゾンビのようにNFTは死んでいるはずでしたが、どうなっているんでしょうか?

私には仮説があります。

木曜日の夜、Sriram KrishnanAarthi Ramamurthyと共にクラブハウスのGood Time Showに出演し、Gabby Dizon(YieldGuild)、3LAU、Donnie Dinch(Bitski)、Jarrodd Dicker(The Chernin Group)、Jon Lai(a16z)、Jesse Walden(Variant)とメタバースについて議論しました。

Not Boringの読者は、この時点でメタバースについてよく知っているでしょう。何ヶ月も何ヶ月も前から話題にしていますからね。メタバースに結びつけられそうなものは何でもメタバースに結びつけてしまう罪深さがあります。

ここ数週間でメタバースは主流になりました。Matthew Ballは9部作のシリーズを発表しました。Satya Nadellaはエンタープライズメタバースについて語りました(楽しそう!)。ZuckとCoは、この2週間で100万回も「メタバース」と口にしました。Ben Thompson氏はメタバースに関する記事を書いています。

メタバースではNFTが重要な役割を果たします。あらゆるものがデジタル化されたとき、自分が何かを所有していることを証明し、それをインターネット上で持ち運べるかどうかが鍵となります。しかし、これはメタバースの一部ではありません。ソーシャルネットワークの一部なのです。

Good Time Showでの会話の中で、Jarrod DickerがWeb3におけるコミュニティとステータスの重要性を持ち出したこと子供の頃の考えを呼び起こしました。NFTは、Eugene Wei氏のStatus as a Serviceにあるように、ソーシャルネットワークとして成功するための多くの要素を満たしています

完全なメタバースが登場する前に、JPEGよりも大きな何かがすでに起こっています。NFTは他のソーシャルネットワークやコミュニティの上に位置する新しいタイプのソーシャルネットワーク、つまりスーパーバースのようなものだと感じ始めており、ソーシャルネットワークを評価するのに、Wei氏が提唱したStatus as a Service(StaaS)以上のフレームワークはありません。

Status as a Service(サービスとしてのステータス)

(Status as a Serviceを読んで理解された方は、このセクションは読み飛ばしていただいて構いません)

Amazon、Hulu、Flipboard、Oculusでプロダクトリーダーを務めたEugene Weiは、インターネット上で最高の技術系エッセイストの一人です。彼が書いたものはすべて実質的に規範となりますが、2019年2月に書いたStatus as a Serviceは、彼の最大の貢献と言えるかもしれません。

この作品を見るとNot Boringが短く感じられます。なんと19,825語もあるのです。まだ読んでいない方はぜひ読んでいただきたいのですが、とりあえず、この作品に関連するいくつかの要点をまとめておきます。

StaaSは2つの原則から始まります。

• 人はステータスを求めるサルである
• 人はソーシャルキャピタルを最大化するために最も効率的な道を探す

これらは議論の余地がないですが、Wei氏は社会的ネットワークをステータスやソーシャルキャピタルの次元で分析してはいけないと主張しています。お金の方が簡単で、数字があり、測定されたものが分析されるからです。

ソーシャルキャピタルは多くの意味で金融資本の先行指標であり、その性質はより厳密に吟味されるべきものです。投資やビジネスの手法として優れているだけでなく、ソーシャルキャピタルのダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理と思われるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができるのです

Wei氏はNFTが流行する2年前に、1,000語にも満たない文章で、知らず知らずのうちに、今起きていることを分析するための基礎を築いていたのです。NFTはソーシャルキャピタルと金融資本の境界線を曖昧にするもので、メディアがすぐに指摘したように、数千ドル、数百万ドルのJPEG画像を購入することは不合理に思えます。

NFTを否定する人々が犯している過ちは、ソーシャルネットワークの分析において人々が犯している過ちと同じで、ソーシャルキャピタルの重要性を見落としているということです。従来、ソーシャルネットワークのネットワーク効果を説明する際には、以下のメトカーフの法則が用いられてきました。

通信ネットワークの価値は、そのシステムに接続しているユーザーの数の二乗(n^2)に比例する

この法則によれば、ソーシャルネットワークのユーザー数が多ければ多いほど、新しいユーザーにとっての価値が高まることになります。

問題はメトカーフの法則が現実の世界で起こっていることを完璧には説明できないことでした。メトカーフの法則によると、最初に大きくなったネットワークが新しいユーザーにとって最も価値があるため、ますます乗り越えられないリードを築き続けることが予測されます。しかし、フェイスブックはMySpaceを倒し、インスタグラムとスナップチャットは若いユーザーの関心をフェイスブックから奪いました。人々の嗜好はそれほどきれいには捉えられません。

ネットワーク効果やメトカーフの法則が間違っているのではなく、人々が純粋なユーティリティを超えてソーシャルネットワークを利用する理由が捉えられていなかったのです。そこでWei氏は、ソーシャルキャピタルを加えた、ソーシャルネットワークの強さを分析する新しいフレームワークを提案しました。

ソース: Eugene Wei

Wei氏はソーシャルネットワークの強さをソーシャルキャピタル、エンターテインメント、ユーティリティの3つの軸で評価しています。彼は記事の中でソーシャルキャピタルとユーティリティに注目しました。

ユーティリティは比較的理解しやすいです。Quoraで質問の答えを見つけたり、フェイスブックで連絡先がわからなくなった高校時代の友人に簡単に連絡が取れたりすれば、それらの製品はあなたにユーティリティを提供していることになります。

一方、ソーシャルキャピタルは定義が難しく、「成功したステータス・ゲーム」の創造に依存しています。新しいソーシャルネットワークが成功するものと失敗するものがある理由を説明するために、彼は暗号通貨というメタファーを使いました。

新しいソーシャルネットワークは、4つの点でイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に似ていると言います。

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。

実にいい比喩ですね。ビットコインとツイッターを例にとります。

1. ビットコインはビットコイン(BTC)を発行する。ツイッターはフォロワーを「発行」する。
2. マイナー(採掘者)はネットワークの安全性を確保するためにBTCを受け取る。ツイッターのユーザーは、140字/280字以内で気の利いたこと、面白いこと、心を開くようなことをつぶやくことでフォロワーを得る。
3. BTCを採掘するには以前よりもコストがかかり、2100万BTCがすべて採掘されるまでは、さらに難しくなる。ツイッターの初期には昼食に何を食べたかをつぶやくことでフォロワーを得ることができたが、現在では長いスレッドに頼るようになった。
4. これは自明である。

ビットコインもツイッターも15年前には存在しませんでした。しかし、今ではどちらも圧倒的な存在感を示しています。これらはアーリーアダプターに報酬を与え、ネットワークのために仕事をするインセンティブを与え、新しいトークンを採掘するのがますます困難になるようにすることで、無から有へと起動したのです。

4つのポイントはどれも理解しておく必要がありますが、最も役に立つのはステータスゲームにおけるプルーフ・オブ・ワークの考え方です。ツイッターに登録した人が登録しただけで100万人のフォロワーを獲得したとしても、100万人のフォロワーを持つことにソーシャルキャピタルはありません。フォロワー数が多いということは希少価値があるということであり、プルーフ・オブ・ワークの要件がその希少性を生み出しているのです。

エンターテインメントを抜きにして、Wei氏はソーシャルネットワークが辿ることのできる5つの曲線について語っていますが、そのうちの4つはソーシャルキャピタルと時間経過によるユーティリティのトレードオフです。

ソース: Eugene Wei

• 最初にユーティリティ、次にソーシャルキャピタル
ツールのために来て、ネットワークのために留まる(Come for the tool, stay for the network)」。インスタグラムはまず簡単な写真編集ツールでユーザーを魅了し、写真をベースにしたネットワーク上に人々が巨大なフォロワーやビジネスを構築するようになりました。

• 最初にソーシャルキャピタル、次にユーティリティ
Wei氏はFoursquare、Wikipedia、Quora、Redditをソーシャルキャピタルの付与を約束して人々に無料で仕事をさせ、それが大衆にとってのユーティリティーとなった製品として紹介しています。

• ユーティリティはあるが、ソーシャルキャピタルはない
メッセージングアプリは知り合いとのコミュニケーションには非常に便利ですが、ユーザーがソーシャルキャピタルを構築するのにはあまり役立ちません。

• ソーシャルキャピタルはあるが、ユーティリティは少ない
Wei氏はフェイスブックをこのカテゴリーに入れており、彼の友人の多くがフェイスブックを使うのをやめても生活に何の影響もなかったと述べています(これは私にも当てはまりますし、皆さんの多くにも当てはまるのではないでしょうか)。

• ソーシャルキャピタルとユーティリティーの両方を同時に持つ
5つ目のカテゴリー「聖杯」です。その例として、Wei氏は中国のWeChatを挙げています。WeChatはフェイスブックのようなMomentsフィード(ソーシャルキャピタル)と、私が過去の記事で書いたような多くのユーティリティーを組み合わせています。

人々はWeChat を使って友人にメッセージを送ったり、買い物をしたり、ニュースを読んだり、ゲームをしたり、実店舗で支払いをしたりしています……携帯電話でできることはほとんどすべてWeChatでできます。

WeChatは最初からソーシャルキャピタルとユーティリティーの組み合わせを実現していましたが、これは欧米ではあまり真似されていません。

しかし、Wei氏はうまくいったソーシャルネットワークであっても、成長を制限したり、完全な崩壊につながる2つの漸近線があることを指摘しています。

社会的漸近線の1つ目は、プルーフ・オブ・ワークです。
世界中の誰もが特定のソーシャルネットワーク上でソーシャルキャピタルを獲得するために必要なことをできるわけではないので、上限ができてしまうのです。私はTikTokに魅了されていますが、TikTokで動画を作ったことはありません。私はダンスが得意ではありませんし、TikTokのアルゴリズムが要求することを上手にこなすための努力はしないからです。TikTokは今でもとんでもない速さで成長していますが、ソーシャルネットワークが大好きな私でさえ使わないのであれば、どこかに天井があるのではないでしょうか。

社会的漸近線の2つ目は、ソーシャルキャピタルのインフレとデフレです。
インフレの側面は、あるソーシャルネットワークが成功しすぎて、多くの人が利用するようになると、その企業は必然的にアルゴリズムフィードを導入して、ノイズを全て処理する必要が出てくるということです。Wei氏はフェイスブックがアルゴリズムフィードを導入するのは、常にあり得ることだったと主張しています。なぜなら、豊富なデジタル世界で唯一の希少な資源はユーザーのアテンションであり、ユーザーが最も関心を持ちそうなものを配信する必要があるからです。理にかなっていますが、オーディエンスとのつながりをフェイスブックに依存していた企業にとっては厳しい状況でした。

デフレの側面では、ソーシャルネットワークは多くの人が参加すればするほど、クールでなくなっていきます。典型的な例は、フェイスブックに親が参加し始めた時に起こったことで、若者は皆、インスタグラムやスナップチャットに移ってしまいました。クールな子供たちが去り始めると、少しばかりクールでない子供たち、次のグループ、その次のグループと続き、また、クールでないグループ(この場合は親)がどんどん参加してくるので、クールである割合は急速に悪化していきます。

その時点で、その製品やサービスはユーティリティ軸上で可能な限り遠くに移動していなければ、解約の速度が速く鼻血が出る可能性がある」とWei氏は注意を促しています。

以下が議論の重要ポイントです。

• ソーシャルネットワークは、ネットワーク効果だけでなく、それ以外の要素も含めて分析する必要がある。

• 分析には3つの軸があります。ソーシャルキャピタル、ユーティリティー、エンターテイメントである。

• 新しいソーシャルネットワークはICOのようなもので、特に成功したものは適切な難易度のプルーフ・オブ・ワークを用いて希少性とステータスを生み出すことができる。

• ソーシャルネットワークには様々な道筋があるが、一番良いのは最初からソーシャルキャピタルとユーティリティが高いことである。

• 成功したソーシャルネットワークであっても、プルーフ・オブ・ワークの上限とソーシャルキャピタルのインフレ/デフレという2つの漸近線に直面する可能性がある。

• 高いソーシャルキャピタルでスタートしたネットワークが生き残り、成功するためには、これらの漸近線に到達する前にユーティリティを構築する方法を見つけ出す必要がある。

Wei氏は記事の残りの部分で、例を挙げて、この問題に豊かさを加えています。読んでいただきたいのですが、今回の目的のために、特に価値のある豆知識をいくつか紹介します。

• ソーシャルキャピタルは一時的なエネルギーとして利用できる
「このようなソーシャルキャピタル蓄積のインセンティブは、ステータスへのポテンシャル(位置)エネルギーを、ベンチャーが必要とするあらゆる形の運動エネルギーに変換する方法と考えることができます」。

• 新しいプルーフ・オブ・ワークがステータスゲームを長くする
ソーシャルネットワークが、ステータスゲームの半減期を長くするために新しい形のプルーフ・オブ・ワークを追加する必要がある理由と、ゲーム会社から学べることについて。「ラスベガスのカジノゲームは、リアルマネーを支払うことで、プレイのROIに魅力的なフロアを設定しています。MMORPGの中には、ゲームをプレイするという純粋なスキルの挑戦よりも長く続く、コミュニティの感覚のような他の利益をプレイヤーに提供しているものもあります。」

• ソーシャルキャピタルと金融資本はお互いに交換可能である
「レベルアップしたWorld of Warcraftのキャラクターという無形の資産がマーケットで売られた時にその価値が分かるように、こうした取引によってソーシャルキャピタルに具体的な価値を与えることができるのです。」

• ソーシャルグラフの移植性の欠如は、ユーザーにとってフラストレーションとなる
これは特に重要で、従来のソーシャルネットワークとNFTの主な違いを強調しているので、ここで大きく引用しておきます。

グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークの観点からはポジティブなことですが、ユーザーの観点からはフラストレーションが溜まります。独占禁止法の消費者福祉基準に基づいてソーシャルネットワークに取り組むことの難しさを考慮すると、巨大なネットワーク効果ビジネスの力を抑制するためのオプションとして、(多くの人が提案しているように)ユーザーが自分のグラフを他のネットワークに持ち込むことを許可することが挙げられるでしょう。これにより、ソーシャルネットワークはソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティーやエンターテイメントの軸での競争を余儀なくされます。

もし、ソーシャルネットワークの利点を、よりポータブルで分散化されたパッケージで得られるとしたらどうでしょう?今こそ、それをNFTに委ねる時なのです。

NFTの最近の歴史を振り返る

非常に簡単なおさらいですが、NFTはNon-Fungible Tokenの略です。NFTの特徴は、デジタル資産に希少性を持たせることです。希少性はエキゾチックカーや美術品、希少な切手のように、デジタル資産に価値を与えます。BeepleのEverydaysは、もし所有者が公式版を購入したことを証明する手段がなければ、6930万ドルでは売れなかったでしょう。

ソース: Beeple

NFTは2017年にCryptoKittiesで始まりましたが、2021年初頭に本当に熱くなりました(私が最初に書いたのは1月後半です)。BTCとETHが史上最高値を更新する中、BeepleとNBA TopShotが牽引しました。新しく暗号化された金持ちは、金持ちがすることをした: アートを買った。NFTは、信じられないような顔をされ、おもちゃのように扱われた。

ソース: The New York Times

そして、4月には暗号価格が暴落し、それに伴ってNFTも冷え込みました。NFTを信じられない人たちは、「ほら、jpegに何百万ドルも払う人が出てきたときにバブルだとわかったんだよ!」と言っていました。

6月には、暗号サイトのProtosが多くのブログの1つとしてこのような記事を掲載し、いずれも90%の取引量の崩壊を挙げています。

ソース: Protos

記事の2文目にはこう書かれていました。「NFTは5月3日にピークを迎え、1日で1億200万ドル分が販売された」。しかし、パーティーは正式に終わりました。「しかし、Protosが分析したデータによると、過去1週間に処理されたNFTの売上はわずか1,940万ドルでした。」

そして、この1ヶ月ほどの間におかしなことが起こりました。NFTが復活したのです。この24時間の間に、OpenSeaとAxie Infinityという2つのマーケットプレイスで1億600万ドル相当のNFTが取引されたのです。

DappRadarによると、過去30日間でトップ10のNFT市場の取引量は18億6000万ドルに達しました。

ソース: DappRadar

今回はゲイリー・ゲンスラー新会長の下でSECが規制に関心を高めていることや、インフラ法案へのワーナー・ポートマン修正案による潜在的な弊害にもかかわらず、ETHやBTCの価格が上昇していることから、ETHやBTCがNFTの価格を引っ張っているのではなく、逆にNFTが引っ張っているように感じられます。

では、なぜNFTが復活したのか、そしてなぜNFTはずっと存在し続けるのか。ここで友人のEugene Wei氏に話を聞いてみましょう。

Investment as a Status(ステータスとしての投資)

まずは、Wei氏自身が行った2つの原則から始めるのがよいでしょう。

・人はステータスを求めるサルである
・人はソーシャルキャピタルを最大化するための最も効率的な方法を探す

ステータスを求めるサルがソーシャルキャピタルを最大化するための最も効率的な方法として、デジタル・サルに変わり始めているという事実には非常にメタ的なものを感じます。

NFTサマーでは、サルが主導的な役割を果たしました。

先月のNFTコレクションの第3位は、Bored Ape Yacht Club(BAYC)です。CryptoPunksのようにBored Apesは1万匹しかいません。

ソース: DappRadar

Bored Ape Yacht Clubのウェブサイトでは、「トークンがサルのための沼地クラブの会員権を兼ねる限定NFTコレクション 」と称しています。

ソース: Bored Ape Yacht Club

CryptoPunksとは異なり、BAYCは4月30日に発売されたばかりのブランドです。しかし、ソーシャルキャピタルとユーティリティを兼ね備えていることから、すでにNFTコレクションの中で3番目に人気のあるコレクションとなっています。『The New Yorker』誌のKyle Chayka記者は、「Why Bored Ape Avatars Are Taking Over Twitter」という記事を書いていますが、その中でXMTPの創設者であるMatt Galligan氏(彼はツイッターのアバターにApeを使っています)は「高級時計や珍しいスニーカーを履くように、一種のステータスシンボルになった」と述べています。

ヨットクラブのデジタルな壁の外でも「サル」がテーマになっています。これまでで最も高価なCryptoPunks4枚のうち2枚が、そして7月に販売された最も高価な2枚が、希少なApesでした。

ソース: Larva Labs

人々がピクセル化されたサルの写真に何百万ドルも費やすことが不合理に思えるとしたら、「ソーシャルキャピタル・ダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理に思えるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができる」ということを思い出しましょう。

というわけで、明らかに現実味を帯びてきたものを否定するのではなく、もう少し深く掘り下げて、エンターテインメントも含め、StaaSの軸にNFTを取り入れてみましょう。

ソース: Status Monkeys


上のグラフこそが価値あるNFTの力なのです。ソーシャルキャピタルとユーティリティーが高く、エンターテイメント性も高い。ソーシャルネットワークの三要素が揃っているのです。

ソーシャルキャピタル
NFTはゲームに参加しているソーシャルキャピタルです。それはステータスとしての投資です。CryptoPunkとApeは1万人しかいませんが、その限られたセットの中に、特に価値のあるもの、つまりステータスの高いものがあります。CryptoPunkやBored Apeを所有し、それをツイッターやDiscord、Telegramのプロフィール写真として表示することは、あなたについて何かを語ることになります。早い時期から始めたか、金持ちか、早い時期から初めて今金持ちになったかのどちらかだと言われています。高価なものを使ってソーシャルキャピタルを増やすことは、新しいことではありません。美術品、高級車、ヨット、プライベートジェット、ハンドバッグなど、大金持ちがステータスを示すために購入する希少価値の高いものはたくさんあります。ただ、NFTはより見やすく、公共性が高いのです。

ユーティリティ
NFTは投資として、Discordグループへのアクセスチケットとして、さらにはデジタルで壁に掛けられるものとしてのユーティリティも備えています。NFTが進化し、より多くの人々に浸透していけば、NFTの所有者はイベントやユニークな体験にアクセスできるようになるでしょう。

すでに、Bored Apeを購入すると、Bored Ape Yacht Clubにアクセスできます。AxiesのようなNFTは、所有することで何万人もの人々の雇用につながるという、真のユーティリティを提供します。CryptoPunk社を設立したLarva Labs社のMeebitsは、3Dモデルとアニメーションが付属しており、ゲームのキャラクターとして利用することができます。

Meebits, from Larva Labs

エンターテイメント
Wei氏は(TikTokとSorting Hatという記事が出るまで)手を出しませんでしたが、成功しているソーシャルネットワークのほとんどは、エンターテインメント軸でも高得点を出しています。TikTokはソーシャルネットワークであると同時にエンターテインメントネットワークであると言っても過言ではありません。YouTubeも同様です。人々は毎日何時間もツイッターをスクロールして、何もせずに純粋に受動的なエンターテインメントを楽しんでいます。NFTも同様にエンターテインメントです。販売状況を見るのは楽しいですし、ApesやPunkを主役にしたペルソナやオンラインキャラクターをすでに作っている人もいます。PartyBidでの入札は投資であると同時に社会的な活動でもあります。

NFTのエンターテインメントの軸はまだ始まったばかりです。Punks Comicでは16人のPunksをモチーフにしたキャラクターが登場するコミックブックを制作しており、今後も続々と登場する予定です。Bored Apesにも近々展開される予定です。

ソース: Punks Comic

それは明らかに最初のステップに過ぎません。多くのNFT支持者はNFTとして記念されない大きな文化的イベントは存在しないと考えており、それはイベント自体に反映され、現実世界で何が起こるかによって変わるかもしれません。

では、NFTはソーシャルキャピタル、ユーティリティー、エンターテイメントを提供するものですが、新しいソーシャルネットワークはICOに似ているというWei氏の考えに対して、NFTはどうなのでしょうか?両者が暗号プロジェクトであることを考えると、これはあまりにも簡単なことです。

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。✅
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。✅
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。✅
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。✅✅✅

ここにはいくつかのニュアンスがあります。

NFTはソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルをより直接的に結びつけるものです。貴重なNFTを手に入れるには、鋳造されたばかりのものや、まだコミュニティが関心を持っていない時期のものをいち早く手に入れるのが一つの方法です。もう1つは、ただ飛びついて購入することです。前者は、どのプロジェクトを早期に支援すべきかを判断するためのプルーフ・オブ・ワークであり、後者はETHを提供してプロジェクトを支援し、参加するためのプルーフ・オブ・ステークに近いかもしれません。

直接的な類似点もあります。多くの人、特に年配の人は嘲笑するでしょう。

私も認めますが、NFTをソーシャルネットワークとして利用するのは橋を渡りすぎた感があります。

NFTはソーシャルネットワークではなく、どちらかというと、小さなコミュニティのように見えます。しかし、地元のエキゾチック・カー・クラブは、カントリー・クラブと同様に、ある種のソーシャルネットワークであり、分析に十分な意味を持つには小さすぎます。NFTはステータス・シグナリングとソーシャルキャピタルをグローバル・スケールでオンライン化します。しかし、フェイスブックやスナップチャット、TikTok、ツイッターがソーシャルネットワークだとすると、NFTは何か違うように感じます。

私もそう思います。しかし、それは正しい戦略でもあります。

Status as a Serviceの中で、Wei氏は「ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?」というセクションを書いています。基本的には既存のソーシャルネットワークと同じ中核的なプルーフ・オブ・ワークの仕組みを使い、いくつかの機能を追加しても、それぞれを使いこなすには同じスキルが必要であり、人々はより多くの人がいる方に引き寄せられてしまうため、うまくいかないのです。Bitcloutはツイッターのようなものですが、暗号化されており、ツイッターと同じように、気の利いたこと、面白いこと、知的なことを言う人に報酬を与えます。違うのは、Bitcloutで成功すれば自分のトークンの価値が上がり、お金を稼ぐことができるということです。ソーシャルキャピタルと金融資本を直接交換することで、人々が仕事を複製したり、仕事を新しいプラットフォームに移したりすることは可能ですが、それは困難です。

そうではなく、全く新しい行動に報酬を与える必要があります。NFTは既存のお気に入りのソーシャルネットワークから離れてもらうわけではないので、十分に機能するでしょう。むしろ、みんなが自分の好きな既存のSNSでNFTを自慢したり、話題にしたりする方が、NFTコレクションやその保有者全員にとって良いことだと思います。話題になることで、直接的に需要が増えることもあれば、間接的にチャンスが生まれることもあります。ネットフリックスの幹部がツイッターでみんながCryptoPunksについて話しているのを見たら、それを所有者に報酬を与える番組にするかもしれません。もしChristie’sの誰かが、自分が参加しているDiscordでみんながArt Blocksについて話しているのを見たら、Squiggleをオークションに出して、コレクション全体に信頼性と広がりをもたらすかもしれません。

SnowfroによるChromie Squiggle #5994, ArtBlocks

そうなれば、各NFTオーナー(またはオーナーグループ)は、ネットワーク上で利用できる膨大な量のソーシャルキャピタルを構築することになります。もしCryptoPunksがネットフリックスで番組を配信すれば、その番組に出演したPunksはそれだけで有名人になり、さまざまなソーシャルネットワークで利用できる外生的なソーシャルキャピタルを構築することができるかもしれません。

NFTは伝統的な意味でのソーシャルネットワークではありません。NFT社は存在しません。NFTには、すべてのNFTオーナーが集まり、NFT, Inc.が集約するようなホームとなる場所がありません。もしかしたらOpenSeaがやっているのかもしれません。CryptoVoxelsやDecentraland、The Sandboxのようなブロックチェーンゲーム/仮想世界のようなものかもしれません。フェイスブックの@harvard.eduアドレスのように、NFTを所有することが入場料になるような偽名のソーシャルネットワークを誰かが構築するのかもしれません。もっとも、上記のどれでもないでしょう。それは何か新しいもの、つまりスーパーバースです。

「スーパー 」は「超」という意味ではありません。NFTは他のネットワークの上に位置する、つまりスーパーなソーシャルネットワークかもしれないという意味です。

Wei氏が書いているように「グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークから見ればプラスですが、ユーザーから見ればフラストレーションが溜まります」。彼は、もし規制当局がソーシャルネットワークにグラフの移植を強制すれば、「ソーシャルネットワークは、ソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティやエンターテイメントの軸で競争することになります」と述べています。

もし、規制の代わりに、ポータビリティ(移植可能性)の力を証明する新規参入者がいたとしたらどうでしょう。私が「暗号は偉大なオンラインゲームのネイティブトークンのようなものだ」と書いたのは、そのポータビリティのことを指しています。ある場所でステータスを獲得し、プラットフォームのリスクなしに所有し、インターネット上で持ち歩くことができます。NFTの場合もプラットフォームの盛衰に関わらず、同じことが言えます。プロフィール写真があるソーシャルネットワーク(つまり、すべてのソーシャルネットワーク)は、NFTが広がるための肥沃な土壌となります。オーナーはすでに、ツイッターのアバターとしてPunkを表示したり、インスタグラムの写真にRTFKTのスニーカーを表示したりしています。

また、移動するのは個人だけではありません。特定のNFTを集団で所有するグループ、例えばPARTY OF THE LIVING DEADやNFTを所有するDAOなどは、Discordをベースキャンプにして、新しいプラットフォームには群れをなして移動し、そこから新たな領域へのミッションを開始することができます。新しいプラットフォームでも既存のプラットフォームでも、メンバーは貴重なNFTを所有することで得られる外生的なソーシャルキャピタルをもたらし、グループとしてNFTアバターのソーシャルキャピタルを構築することができます。このスレッドでは、ミニネットワークとしての小数化されたNFTと、1万個の希少価値のある資産を何十万人、何百万人もの人々に支えられ、宣伝された1万個の希少価値のある資産に変える能力について語っています。

(アバターは新しいクランタグやギルドバナーと考えてください。NFTはメタバースの新しいソーシャルハブとなるでしょう。突然、1万人のユニークなPFPが、1万人をはるかに超える人々の間で統一されたスレッドになるのです。これが実現するのを見るのが楽しみです。パンクスとBAYCにとって非常に有望だと思います。)

Wei氏はクリス・ディクソンの「ツールのために来て、ネットワークのために残る」というアイデアについて書きました。NFTは社会的にも経済的にも最も価値のある場所に、ツールのために来て、ネットワークをもたらすことを可能にします。

NFTに関する議論はほとんど、特定のNFTの価格やNFTの総需要がもしかしたら急激に下がるかもしれないというものです。バブルでない状態にもバブルとなる箇所があります。最近では、別の2017年ヴィンテージNFTコレクションEther Rocksの需要が急増し、ロックが10万ドル以上で取引されています。このプロジェクトのクリエーターでさえ「ブロックチェーン上のペットの石」と呼んでいます。この復活はコミュニティがどこまで自分の力を発揮して価値あるものを作れるかを試すもののようです。

ソース: EtherRocks

とはいえ、NFTはWei氏の2つの漸近線に対して耐性を持つという特性を持っているようです。

漸近線1のプルーフ・オブ・ワークに対して、NFTは無限に新しいプルーフ・オブ・ワークを追加する能力を持っており、Wei氏はそれによってステータスゲームの半減期を長くすることができると述べています。Wei氏は、ゲームの寿命を一般的なゲームの寿命よりも延ばすことに成功した2つの例として、ラスベガスのカジノゲームとMMORPGを挙げていますが、これらはNFTと共通する特徴を持っています。ラスベガスのカジノゲームのように、NFTは「リアルマネーを使って、プレイのROIに魅力的な下限を設定できる」。MMORPGのように、NFTのコミュニティの感覚は純粋なスキルによるプレイの難しさよりも長く続きます。とはいえ、NFTは暗号の採用と手頃な価格からの漸進に直面するでしょう。NBA TopShotとFractionalは正しい方向への一歩であり、希少性のメリットを維持しながら、あるいは希少性をコミュニティのような他のメリットに置き換えながら、NFTをより多くの人が利用できるようにするために、さらなるイノベーションが起こることは間違いありません。

社会的漸近線2のソーシャルキャピタルのインフレーションとデフレーションに対して、NFTには分散化されているという利点があります。あるプラットフォームでは、アルゴリズムによるフィードでNFTを紹介することがありますが、NFT自体は持ち運びが可能で、所有者が好きな場所で使用・表示することができます。また、NFTは一枚岩ではなく、小さなコミュニティの集合体であり、それぞれが独自の基準を持っているため、蒸発冷却の影響を受けにくいのです。パンクは1万人しかいませんが、最終的には、それぞれが独自の基準やルールを持つ小さなコミュニティを形成する何千ものDAOや小数所有グループが存在するかもしれません。そのフラクタル構造が、よりレジリエンスを高めてくれるはずです。さらに、出資の証明や所有者が売却時期を選択できることから、親がフェイスブックを買収したようにCryptoPunksを買収するには多くの時間とお金が必要になるでしょう。

まだ早いですよ。この手のものが大好きな私でさえ、PunkやApe、その他の主要なコレクションを所有していません。もっとインフラを整備して、バラバラのNFTプロジェクトをつなぐ布陣を整える必要があります。しかし、NFTには、ツイッター、インスタグラム、スナップチャット、Discord、TikTokなどの既存のネットワークの上に、新しい形のソーシャルネットワーク、つまりスーパーバースを構築し、時間をかけて適応し、繁栄させていくための材料が揃っているように思えます。

NFTの新規プロジェクトは、ソーシャルキャピタルと金融資本の強力な組み合わせで立ち上げることができます。オーナーシップは、ソーシャルキャピタル、ユーティリティ、エンターテインメントをもたらします。次の大きなものを見つけ出すことから、「Punks Comics」のようなブランド拡張を行うこと、コレクション全体の知名度を上げるために特定のNFTをマーケティングすることまで、常に進化し続けるプルーフ・オブ・ワークがあります。Punksのオーナーは、ニューヨーク、マイアミ、ロンドンでビルボードを買い占め、情報を広めています。NFTは 「偉大なるオンラインゲーム 」の一部であり、そのルールや機会は常に進化・拡大しています。お金、ステータス、そしてコミュニティを組み合わせることで、強力なものが生まれます。

いつものように、私はこれらの話がクレイジーに聞こえることを最初に認めます。NFTは新しい形のソーシャルネットワークというよりも、流行のように感じられます。しかし、ありがたいことに、Wei氏はソーシャルネットワークの強さを評価するためのフレームワークを提供してくれており、NFTはそれに対して衝撃的なほど良い結果を出しています。Status as a Serviceの19,825語の中には、NFTがソーシャルネットワークであることを否定するような内容はあまりなく、むしろ、ほぼすべてのセクションで、その考えを支持する小さなナゲットが含まれている。

次の大きなものは、最初はおもちゃのようなものだ。次の大きなソーシャルネットワークは、最初はソーシャルネットワークに見えないかもしれない。未来は私たちが予想する以上にクレイジーなものになるだろう。そして、JPEGの所有権に基づいたソーシャルネットワークは、まさにその条件に当てはまる。

さて、何が言いたいのか?この情報で何をしますか?

ソーシャルネットワークはアーリーアダプターに報い、お金が組み込まれたソーシャルネットワークはアーリービリーバーに二重の喜びを与えます。探ってみましょう。あなたの心に響くNFTを見つけてください。PartyBidに参加しましょう。参加しましょう。そして、神のご加護のためにも、NFTを嘲笑するような年配者にはならないでください。


Packy McCormickの他の記事を読む👀

👉 Packy McCormick

フォローして最新情報をチェック!

Status as a Service (サービスとしてのステータス)

編集部注1: 私には編集者はいません。

編集部注2: このブログを初めて購読する方には、私の記事のほとんどがこの記事ほど長くないことを保証したいと思います。また、前回の記事ほどでもありません。このブログへの投稿を長い間中断していたため、この作品は、通常ならば一連の短い投稿をまとめたものになっています。下にセクションタイトルをつけていますので、興味のないものは読み飛ばしてください。私の短い記事はツイッターにあります。以上、何もお詫びすることはありません。

編集部注3: 嘘ですが、一つだけ謝りたいことがあります。仕事用のパソコンがないため、7年前の13インチのMacbook Proをメインに使わざるを得ず、さらに昨年末には手根管症候群が再発し、手首の痛みで衰弱してしまいました。メインのパソコンはノートパソコンか、iPadだという人もいると思いますが、コンパクトなキーボードで長時間入力すると、手が動かなくなってしまうのです。そこで、昔から愛用しているKinesis Advantage 2エルゴキーボードを使って入力するようにしたところ、調子が戻ってきたのです。

編集部注4: 先日、パトリック・オショーネシー氏のポッドキャスト「Invest Like the Best」に出演した際、ディスカッションの最後に、ソーシャルネットワークとICOの類似性について取り組んでいた新しいエッセイについて触れました。これがその作品です。


▼本記事の内容
  1. ステータスを求めるサル
  2. ソーシャルネットワークの伝統的なネットワーク効果モデル
  3. ユーティリティとソーシャルキャピタルのフレームワーク
  4. ICOとしてのソーシャルネットワーク
  5. プルーフ・オブ・ワークが重要な理由
  6. フェイスブックの独自のプルーフ・オブ・ワーク
  7. ソーシャルキャピタルのROI
  8. ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?
  9. テクノロジー史上最大のソーシャルキャピタル創出イベント
  10. ソーシャルキャピタルの蓄積が若年層に偏る理由
  11. 私には多くのものが含まれている(若き血の言葉)
  12. ソーシャルネットワークの共通点
  13. ソーシャルキャピタルとユーティリティの両立
  14. ソーシャルネットワークの漸近線1:プルーフ・オブ・ワーク
  15. ソーシャルネットワークの漸近線2:ソーシャルキャピタルのインフレーションとデバリュエーション
  16. ソーシャルキャピタルの金利上昇
  17. ソーシャルキャピタル・デフレーション: 希少性の不安定さまたはグルーチョ・マルクスの難問
  18. ソーシャルキャピタルの評価低下リスクの軽減、そしてスナップチャットの戦略
  19. ステータスゲームの半減期を長くする
  20. ソーシャルに苦戦する企業が出てくる理由
  21. ケーキを食べればいいじゃない
  22. ソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルの交換
  23. ソーシャルキャピタルの蓄積と保管
  24. ソーシャルキャピタル・アービトラージ
  25. 一時的なエネルギー源としてのソーシャルキャピタル・ゲーム
  26. 有名人のアプリが失敗する理由
  27. 結論: 誰もが世界を支配したいと思っている

* この記事は、「Status as a Service (StaaS)」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Eugene Wei
翻訳者: 渡辺圭祐


ステータスを求めるサル

“財産が少ない人は、より多くの社会資本を求めているに違いないというのは、誰もが認める真実である。” 

これはジェーン・オースティンが書いたものですが、もし彼女が今の時代を記録していたら、そうしていたと思います(代わりにテイラー・ローレンツがいますが、これはありがたいことです)。

まず、2つの原則から始めましょう。

・人はステータス(地位)を求めるサルである*。
・人はソーシャルキャピタル(社会資本)を最大化するために最も効率的な道を探す

* もし私がギターを弾けるようになってバンドを始めたら、「ステータスを求めるサル」は私のインディーズバンドの名前になるでしょう。

訳者注:
ステータス = 社会的地位: 社会の中に確立された、人々の名誉や威信を伴う位置。Wikipediaより引用
ソーシャルキャピタル: プルーフ・オブ・ワークによって得られるソーシャルネットワーク上の資本。正の方向に蓄積する = ステータスが上昇するという関係にある。

この2つの人間性に関する観察に異論を唱える人はほとんどいないと思いますが、世界史上最大規模で急成長している企業であるソーシャルネットワークがステータスやソーシャルキャピタルの次元で分析されているのを見たことはほとんどありません。

これは測定の問題でもあります。数字は正統性と信頼性をもたらします。私たちは、金融資本とその流れを分母にして測定する方法を古くから持っています。貨幣の価格や動きについては、ウェブサイトの一部や新聞の一部、そして多くの機関が正確に報告しています。

しかし、ソーシャルキャピタルの価値や動きを測定する方法は、少なくともそのような精度や正確さではありません。研究の範囲は広く、かつ貧弱です。もし、ユーザー数以外にも優れた測定方法があれば、この記事や他の多くの記事は、分析に知的な重みを与えるチャートやグラフでいっぱいになるでしょう。MeekerのInternet Trends Reportのように、State of Socialと呼ばれる年次発表が行われるでしょうし、あるいは彼女の年次報告書の50ページのサブセクションになるかもしれません。

それにもかかわらず、私たちが調査したソーシャルメディアネットワークのほとんどは、特にその初期段階では、実際の金融資本よりもはるかに多くのソーシャルキャピタルを生み出しています。そのような企業のほとんどは、シリコンバレーの有名な定説の一つである「初期段階では、ネットワークの急速な拡大を優先して、収益を上げることを先延ばしにすべきだ」という考え方を取り入れています。ソーシャルネットワークが熱を失い、失速し、時には完全に消滅してしまう理由には、ソーシャルキャピタルが大きく関わっています。そして、ソーシャルキャピタルを数値化することはできないかもしれませんが、非常に鋭敏な社会的生物である私たちはそれを感じることができます。

ソーシャルキャピタルは多くの意味で金融資本の先行指標であり、その性質はより厳密に吟味されるべきものです。投資やビジネスの手法として優れているだけでなく、ソーシャルキャピタルのダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理と思われるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができます。

ここ数年、SaaS (Software as a Service)ビジネスに対する分析は大きく進展してきました。しかし、ソーシャルネットワークの分析はそれほど進んでいません。ソーシャルネットワークの分析は、Paul Romerの内生的技術変化に関する論文が発表されるずっと前の経済成長理論のようだと私は感じています。しかし、ソーシャルネットワークをSaaSビジネスと同じように考えれば、ソーシャルネットワークの謎を解くことができます。この記事では、私がStaaS (Status as a Service)ビジネスと呼んでいるものについて深く掘り下げてみました。

この記事は一連の強力な仮説と考えてください。私が存在するかどうかさえ分からない種類のデータにアクセスできない限り、決定的なことを言うのは困難です。これまで同様、賢明な読者の皆様には、いつものように補足や反論をしていただきたいと思います。

ソーシャルネットワークの伝統的なネットワーク効果モデル

ソーシャルネットワークが成功するための基本的な教訓の一つは、ユーザー数が少ないときに、まず人々にアピールしなければならないということです。一般的には、シングルユーザー向けのユーティリティーを提供することで実現されます。

これはソーシャルネットワークの典型的なコールドスタート問題です。 伝統的なニワトリ卵の問題の答えは、実際に答えることができます。それは、最初に来るのは一羽のニワトリで、次にもう一羽のニワトリが来て、さらにもう一羽のニワトリが来て…という具合です。この問題を難しくするのは、他のニワトリがいないときになぜ最初のニワトリが来て留まり、他のニワトリが後に続くのかという点です。

基本的な教訓の二つ目は、ソーシャルネットワークには強力なネットワーク効果がなければならないということです。ネットワーク効果があれば、ユーザーが増えれば増えるほど、ネットワークはポジティブなフライホイールのように成長し、正のネットワーク効果による複合的な価値により、うなぎ上りの成長がもたらされます。「ツールのために来て、ネットワークのために留まる (Come for the tool, stay for the network)」というクリス・ディクソンの言葉はこの仕組みを表す最も印象的な格言でしょう。

ソーシャルネットワーク以前にも通信ネットワークには「メトカーフの法則」がありました。

通信ネットワークの価値は、そのシステムに接続しているユーザーの数の二乗 (n^2) に比例する。

これはソーシャルネットワークにもきれいに適用されます。直感的に理解できますし、ソーシャルネットワークの成長曲線が古典的な成長S字カーブの足首の部分で急激に曲がる理由を説明する、興味をそそる数式も含まれています。

しかし、より深く掘り下げると多くの疑問が残ります。なぜ大規模なソーシャルネットワークが突然衰退したり、新しい小さなネットワークに負けてしまうのか?シングルプレイヤー用の優れたツールを持つ新しいソーシャルネットワークの中には、ネットワークへの転換に失敗するものがある一方で、一見軽薄な目的を持つものが躍進するのはなぜでしょうか?ユーザー数が増えると価値が下がるネットワークがあるのはなぜなのでしょうか?ユーザー数が増えると失速するネットワークがあるのはなぜでしょうか?なぜ国境を簡単に越えるネットワークと、特定の国に閉じこもるネットワークがあるのでしょうか?メトカーフの法則が成り立つとしたら、フェイスブックが他のソーシャルネットワークの機能をコピーした時、失敗したものもあれば、インスタグラムストーリーズのように成功するものもあるのはなぜなのでしょうか?

これらの説明の多くを結びつけているのがソーシャルキャピタル理論であり、ソーシャルネットワークの分析方法には、ソーシャルキャピタル資産の蓄積やステータスゲームの性質と構造の研究が含まれているはずです。言い換えれば、人はステータスを求めるサルであり、常に最も効率的な方法でより多くのステータスを求めようとしているという事実を、意識的にせよそうでないにせよ、企業はどのように利用しているのでしょうか。

ニッキー・ミナージュの言葉を借りれば、”If I’m fake I ain’t notice because my followers ain’t. (私が偽物であれば、フォロワーがいないので気づかれない) “です。

[(編集部注:実際にはフォロワーが偽物の場合もある)。]

ユーティリティとソーシャルキャピタルのフレームワーク

古典的なネットワーク効果理論はまだ有効であり、私はそれを捨て去るつもりはありません。その代わりに、ソーシャルキャピタルの理論を加えてみましょう。私はこれらを合わせてソーシャルネットワークの健全性を分析する際の2つの軸としています。

実際には、私はソーシャルネットワークを分析するのに、3つの軸を使うことが多いです。

(ソーシャルネットワークの強さを評価する3つの軸)

この記事では、ユーティリティとソーシャルキャピタルの2つの軸だけを見てみたいと思います。

(この記事のソーシャルネットワーク分析の多くを導く基本的な2軸のフレームワーク)

ユーティリティ(実用性)についてはあまり説明する必要はありませんが、私たちはしばしばこの言葉を非常に緩く使い、それほど有用ではないのにユーティリティがあると分類してしまうことがあります(私たちは一般的にサーカスをパンと混同しますが、その逆はありません。フェイスブックのようなソーシャルネットワークは、他の方法では追跡するのが難しい多くの人々と連絡を取ることができ、それは有用です)。 WhatsAppのようなメッセージングアプリを使えば、テキスト料金や追加のデータ料金を支払うことなく、世界中の人々とコミュニケーションをとることができ、それは便利なことです。QuoraやReddit、Discordなど、ほとんどのソーシャルネットワークが何らかの形でユーティリティを提供しています。

もう1つの軸は、正確な言葉ではありませんが、ソーシャルキャピタル軸、またはステータス軸です。ソーシャルネットワークを使ってソーシャルキャピタルを蓄積することができますか?どんな形で?それはどのように測定されますか?そして、そのステータスを獲得するにはどうすればいいのでしょうか?

ソーシャルネットワークの成功にはいくつかの異なる方法がありますが、ソーシャルキャピタル軸で競争するものは、純粋なユーティリティ軸で競争するものよりも神秘的であることが多いです。純粋なユーティリティでの競争は、ダーウィン的で、冷酷で、非常に判断しやすい傾向があります。例えば、メッセージングやビデオ会議などのコミュニケーションサービスの世界がそうです。 この分野への投資は、アプリやサービスの有用性、配信方法の構築など、もう少しわかりやすいものになりがちです。この分野の投資家からデッキが送られてくると、私は喜んで意見を述べますが、それ以上に人工的な名声の世界に思いを馳せるのが楽しいのです。

ステータスゲームの成功は錬金術のように神秘的なものです。そのため、この分野で成功した起業家は、私たちをある種のシャーマンのように考えています。おそらく、投資家の多くは、すでにステータスが高く、人々がなぜバーチャルなステータスを求めるのかをまったく理解していない中年の白人男性だからでしょう(詳しくは後述します)。

写真とフィルターに焦点を当てたインスタグラム、刹那的なメッセージングを行うスナップチャット、6秒の動画制限を設けたVineの台頭により、しばらくの間、新しいソーシャルネットワークは何か新しいコミュニケーション様式の上に構築されるのではないかと考えられていました。しかし、それらは一部であって、全体像ではありません。だからこそ、私たちはスマホでコミュニケーションをする際の、奇妙なコミュニケーション機能やフィルター、人工的な制約といったありとあらゆる組み合わせの失敗実験を目の当たりにしてきたのです。スナップチャットの対抗馬であるフェイスブックのSlingshotを覚えていますか?受け取ったメッセージを見るために、メッセージに返信しなければなりませんでした。あれはまるでマッド・リブによるプロダクト・デザインのようでした。

成功したソーシャルネットワークがどのようにしてプレイする価値のあるステータスゲームを生み出すのかをモデル化する際に、便利なメタファーとなるのが流行のテクノロジーのひとつである暗号通貨です。

ICOとしてのソーシャルネットワーク

新しいソーシャルネットワークは、どのようにICOと類似しているのでしょうか?

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。

訳者注:
プルーフ・オブ・ワーク (Proof of work): ソーシャルメディアにおいて、何らかの努力、アクションをし、他のユーザーからコンセンサスを得ること。
例えば、インスタグラムでユーザーが素晴らしい写真を投稿することがプルーフ・オブ・ワークとなる。そして、ユーザーは「いいね!」や「コメント」という社会的通貨を採掘する。もしユーザーが日常的な物のつまらない写真を投稿したら、それは非常に弱いプルーフ・オブ・ワークとなる。しかし、例えば美しい夕日の写真を投稿すると、最高の位置に移動し、夕日を待って、正確なタイミングで写真を撮ったということで、強いプルーフ・オブ・ワークを意味する。その証拠として「いいね!」や「コメント」という社会的通貨が与えられる。
参照: 🏆📸🔨Exploring “Proof-of-Work” Within The Non-Fungible Token Space

[ソーシャルネットワークでは、「あなたがランチに何を食べたかなんて、誰も気にしないでしょう」というのが定番の反論ですが、それも時代とともに薄れてきています。ソーシャルネットワークもICOも、無から価値を生み出すように見えるため、懐疑的な人を夢中にさせる傾向があります。希少性の移り変わりは、常に懐疑と不信の跡を残します]。

数年前、私は友人の家に泊まり、その家の2階には友人の高校生の娘と同級生がいました。私たち大人が1階のキッチンでワインを飲みながら、夕食がオーブンで焼き上がるのを待っていると、2階から音楽や足踏み、笑い声などがたくさん聞こえてきました。

ようやく夕食のために彼らを呼んだとき、私は彼らにこの騒動は何だったのかと尋ねました。友人の娘は、Musical.lyというアプリに投稿した録音を誇らしげに見せてくれました。それは、自分たちで作った振り付けを使ったリップシンクとダンスでした。彼らはこの曲を数え切れないほど何度もリハーサルしていました。その結果、汗で顔がテカテカになり、息も荒くなっていました。まさにプルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)です。

私は夕食の間、アプリを夢中で見ながら、彼女たちにアプリのどこが好きなのか、なぜアプリを使っているのか、自由時間のうちどのくらいをアプリに使っているのかをインタビューしました。しかし、これらを分析するのに十分な指標がないため、私はジェーン・グドールが提唱する「対象を研究する方法」を支持しています。大人のステータスゲームはアプリ以外にも、文学から映画まで、既存のメディアで十分にカバーされています。時間の経過とともに記憶から消えていく、私たちも一度は経験した子供時代のステータスゲームの現代的な形態はソーシャルメディアによって大きく変化しています。

他にも様々な例があります。QuoraやRedditに投稿されたランダムな人の長文の回答を読んだことがあるかもしれませんし、YouTubeのブロガーが毎晩のように公開しているのを見たことがあるかもしれませんし、Vineの人気スターが一緒の家に住んでいて、6秒の動画の撮影や編集をお互いに手伝っているのを聞いたことがあるかもしれません。ビットコインの採掘をコンピュータに任せることはできても、ソーシャルネットワーク上のソーシャルキャピタルを採掘するのは、主に自分の血と汗と涙です。

[余談: あなた自身がソーシャルネットワークのスターを目指していないのであれば、スターと一緒に生活することは…お勧めできません] 。

おそらく、現代の若者と一緒に過ごしたことがある人なら、10代の若者が何十枚もの自撮り写真を撮った後、一番きれいに撮れた写真をインスタグラムに公開し、最初の1時間で「いいね!」が集まらないと削除する様子を、恐怖と魅力が入り混じった目で見たことがあるでしょう。これも、プルーフ・オブ・ワーク、あるいは少なくとも精力的な市場調査の一例です。

注目すべきソーシャルネットワークのほとんどは、初期の特徴的なプルーフ・オブ・ワークのハードルを持っていました。フェイスブックでは、気の利いたテキストベースの近況報告を投稿していました。インスタグラムでは、面白い四角い写真を投稿することでした。Vineでは、6秒のおもしろい動画を投稿していました。ツイッターでは、140文字以下の面白いテキストを書くことでした。ピンタレストは?魅力的な写真をピンすること。他にもQuoraやReddit、Twitchなど様々なソーシャルネットワークの成功例があります。成功しているソーシャルネットワークでは、最初からトリッキーな質問をすることはなく、何をユーザーに求めているのかはたいてい明確です。

[外生的なソーシャルキャピタルについて余談ですが、例えばドナルド・トランプのツイートよりも自分のツイートの方が面白く、文法的にも優れていると訴えるかもしれません(おそらくその通りでしょう!)。あるいは、キム・カーダシアンの写真よりも、あなたの写真の方が構図が良く、写真技術の深いレベルで面白いと思うかもしれません。違うのは、彼らはもうひとつのステータスゲームである名声ゲームから、外生的な既存のソーシャルキャピタルをプラットフォームに大量に持ち込んでいることであり、ソーシャルキャピタルのなかにはプラットフォームを超えてうまく伝達されるものもあります。一般的な名声はその一つです。例えば、ツイッターでポール・クルーグマンをフォローしていても、彼のインスタグラムのアカウントには全く興味がないかもしれません。彼がインスタグラムのアカウントを持っているかどうかは知りませんが、もし持っていたとしてもおそらくフォローしないでしょう。]

これらのソーシャルネットワークに早期に参加したことがある人は、相対的に見て、初期の方がソーシャルキャピタル(フォロワー、「いいね!」など) の面で他の人より簡単に成功できるということを知っています。ツイッターの黎明期に推奨フォロワーリストに掲載されていた人の中には、フォロワー数が7桁に達している人もいます。Musical.lyやVineの黎明期の達人たちが大量のフォロワー数を積み重ねていたのもそうです。リーダーボードや推奨フォロワーのアルゴリズムなど、一般的な発見のメカニズムにより、自分をフォローする人が増えれば増えるほど、フォロワー数も増えていきます。

確かに、ネットワークに参加する人が増えれば増えるほど、全体としてはより多くのソーシャルキャピタルが手に入ることになります。しかし、一般的には、後からソーシャルネットワークに参加した場合、信じられないほどの外生的なソーシャルキャピタル(テイラー・スウィフトが地球上のあらゆるソーシャルネットワークに参加して、すぐに膨大なフォロワーを集めることができる) がもたらされない限り、アテンションを集めるための競争は初期の頃よりも激しくなるでしょう。誰もがゲームの仕組みを理解しているので、競争が激しくなるのです。

プルーフ・オブ・ワークが重要な理由

なぜソーシャルネットワークではプルーフ・オブ・ワークが重要なのでしょうか?もし人々がソーシャルキャピタルを最大化したいのであれば、なぜそれをできるだけ簡単にしないのでしょうか?

暗号通貨のように、もしそれが簡単であれば、何の価値もありません。価値は希少性と結びついており、ソーシャルネットワークにおける希少性はプルーフ・オブ・ワークに由来しています。マイニングに必要なスキルや努力がなければ、ステータスにはあまり価値がありません。多くのユーザーが簡単に成果を上げられるソーシャルネットワークが有用でないというわけではありませんが、相対的なステータスを求めて競争することは人間のモチベーションを高めます。「人間はステータス(地位)を求めるサルである」という最初の考え方を思い出してください。ステータスとは相対的なものです。誰もがある種のステータスを得ることができれば、それはステータスではなく、参加型のトロフィーであると定義されています。

Musical.lyは、フォロワーやステータスを得るために、多くの人にとって簡単にはクリアできないハードルを設けました。しかし、それは一部の人たち、特に10代の女の子にとっては、自分が勝つのに適したステータスゲームだったのです。なぜなら、私の2つ目の信条によれば、人は最も効率的にソーシャルキャピタルを蓄積する方法を探すからです。

初期のツイッターを思い出してみてください。その頃のツイッターは、無害ではありますが、あまり活発でない近況報告サービスでした。約12年前に自分が最初にツイートした内容を見てみると、約1年の間隔を置いて最初の2つのツイートをしており、どちらも「税金を払う」という内容でした。振り返ってみると、自分でもあきれるほどでした。初期のツイッターは無害ですが退屈な近況報告がほとんどで、「これはオンになっているのか」という確認的なものが大半でした。結局、私はあなたがランチに何を食べたかなんて気にしない派なんですね。つまり私の携帯画面から出て行ってくださいということです。

ツイッターを変えたのは、FavstarFavrd (どちらも現在は廃止され、ツイッターに無慈悲に殺されました) というグローバルなリーダーボードの登場でした。思い起こせば、当時のツイッターのグラフは今ほど緻密ではなく、ワンクリック・リツイートやモーメントのような配信促進装置もまだ存在していませんでした。

FavstarとFavrdが行ったのは、本当に素晴らしいツイートを表面化させ、スコアボードにランク付けすることでした。私にとっては、これがツイッターにおける遂行的な革命の始まりでした。これにより、フィードバックループに必要なフィードバックが追加され、140文字以下のオチの達人という新しいタイプのコメディアンが誕生しました(インターネットがジョークを消滅させ、Googleのおかげでジョークの設定が常識となった今、ユーモアはすべてオチになっています)。

このような世界規模のツイートスコアボードの登場は、今や名作となった映画**「バトル・ロワイアル」で、ビートたけしが問題児の小学生たちに、島に送還されて死闘を繰り広げることになり、最後に立っていた生徒が勝ち、指定された戦闘区域から抜け出そうとした者は爆発物の首輪で殺されると伝えた瞬間を思い起こさせます。ツイッターが生死を分ける戦いだとは言いませんが、プロダクトマーケットフィット前のツイッターにタイムスリップすれば、そのトーンの違いがよくわかります。

**バトルロワイヤルはその後、ハンガー・ゲーム、フォートナイト、メイズ・ランナー、そして世の中のあらゆるYAフランチャイズからパクられ、オマージュされて来ました。なぜなら、ティーンエイジャーほど野蛮なゲームを理解している人はいないからです。

Favstar.fmのスクリーンショット。これらの古いが馴染みのあるアバターを見るだけで、感傷的になります。おそらく、初期のバーニングマンの信奉者が、金持ち階級が入ってきてドラッグ、ヌード、…のユートピアを台無しにする前の初期の時代を振り返るのと同じようなものでしょう。

昔のFavrdのスクリーンショットを追いかけていると、浮上してきたツイートに今でも笑ってしまいます。

懐かしのFavrdのスクリーンショットをもう1枚

誰もがこのように上手にツッコミを入れられるわけではないことが重要です。このようにして、ツイッター上で自分のプルーフ・オブ・ワークをすることができました。そして、そのフィードバックループが回転し、締め付けられることで、ツイートの全体的な質が向上していきました。そして、「いいね!」を多く獲得した戦略は、人々のタイムラインにどんどん流れていき、皆が学び、競い合いました。

今日のツイッターを読んでみると、思春期前のようなぎこちないありふれた生活情報のツイートはほとんどありません。現在は、パフォーマティブ・ツイッターの後期段階にあり、ほとんどすべてのツイートがお気に入りやリツイートに飢えていて、誰もが訓練された評論家やコメディアンになっています。話題性のある言葉やクールなことわざで溢れています。無害な近況報告のツイッターは、それほど渇いた状況ではありませんでしたが、ビジネスとしては大したものではありませんでした。それでも時々、すべてのツイートが喉の渇きを誘うものではなかった、健全な時代が懐かしくなります。新しいKanye、機嫌の悪いKanye、いつも失礼なKanye、ニュースで騒ぐKanye、甘いKanyeが恋しい、ビートを刻むKanyeが嫌いです。

ステータスへの渇望はポテンシャルエネルギーです。それはStaaSビジネスの生命線です。ソーシャルネットワークは市場で独自のポジションを築くために、何らかの特徴的なプルーフ・オブ・ワークによって得られる独自のステータストークンを提供しています。

逆に、SNSにピボットしようとした写真フィルターアプリの「Prisma」を見てみましょう。Prismaはニューラルネットワークを利用した多数のフィルターを使って、写真を美術品のように仕上げることができるということで、発売と同時に人気を博しました。

Prismaはうまくいきました。あまりにもうまくいきました。

ほとんどの写真がワンクリックで豪華な絵画に変身するため、一枚の写真が際立つことはありません。主役はフィルターであって、ユーザーではありません。だから、他の誰よりも特定の人をフォローすることには意味がありませんでした。スキルという要素がなければ、ステータスゲームやスキルベースのネットワークといった枠組みは存在し得ません。PrismaはStaaSになり損ねたユーティリティでした。

一方、インスタグラムのフィルターは、その初期においては、当時のスマートフォンで撮影された写真の品質を向上させるものでしたが、その品質はほとんどの場合、撮影者に依存していました。構図や被写体の選び方など、撮影者の技量に依存しており、どんなフィルターを使っても、下手な写真を名作にすることはできません。

先ほどの「新しいソーシャルネットワークはどのようにして定着するのか」という質問に対して、StaaSという新しいビジネスは、ユーザー間の差別化を図るために、実際の技術に依存したプルーフ・オブ・ワークを考案しなければならない、と付け加えておきましょう。そうすれば、ICOのように、ユーザーにとって価値のある新しい形のソーシャルキャピタル通貨を生み出すことができます。

ソーシャルネットワークが成功する方法は、これだけではありません。前述したように、ユーティリティやエンターテイメントを中心にネットワークを構築することもできます。しかし、ステータスを追加することで、一見意味のあるユーティリティをほとんど提供していないように見えるネットワークが、なぜ人気を博しているのかを説明することができます(6秒の動画しか作らせないサービスが有用なのでしょうか?)

フェイスブックの独自のプルーフ・オブ・ワーク

フェイスブックはどのようにしてMySpaceと差別化したのでしょうか?最初は、テキストによる近況報告が中心で、必ずしも革新的なものではありませんでした。

実際には、フェイスブックが立ち上がった時にはハーバード大学の学生でなければならないという、世界で最も有名なプルーフ・オブ・ワークのハードルがありました。harvard.eduのメールアドレスを必要とすることで、フェイスブックは世界で最もエリートな文化的フィルターを利用していたのです。これほど強力なエリート主義のぱちんこは他にはないでしょう。

フェイスブックは、まずアイビーリーグの学校に展開し、次に一般の大学に展開することで、狭い年齢層と学歴に基づく排他性を維持しながら規模を拡大していきました。

大学生活の多くを占める、魅力的な異性をストーキングするという幅広い社会的ステータスのゲームに加えて、フェイスブックは世界で最も熱いソーシャルキャピタル競争の予備軍を利用したサービスだったのです。

ソーシャルキャピタルのROI

ある人が何か面白いことをプラットフォームに投稿した場合、どのくらいの速さで「いいね!」やコメント、リアクション、フォロワーを獲得することができるのでしょうか?2つ目の考え方は、人々は自分のソーシャルキャピタルを最大化するために最も効率的な方法を探すというものです。そのためには、戦略の違いによる効果の違いを把握する必要があります。多くの人間はこの点に優れているようです。

ソーシャルメディアの利用率が非常に高い若者は、ソーシャルメディアにかける労力の回収期間やROIに最も敏感な層です。例えば、若者はツイッターを好まず、インスタグラムを好む傾向にあります。

ツイッターでは、たまにバイラルの超新星が生まれないわけではありません。たまに、1,000以上、そして10,000以上の「いいね!」や「リツイート」を獲得したツイートを作成する人がいます(ツイッターは、マネタイズを補うために、1Kクラブや10Kクラブの指定を受けた銀や金の額装を購入できるようにすべきです)。しかし、それは一般的ではなく、ほとんどのツイートは誰にも見られていないのが現状です。若者が文字媒体よりも視覚媒体に偏り、技術的な優位性を持っているという事実を考慮すると、インスタグラムが彼らのソーシャルな戦いの場として好まれるのも不思議ではありません(ソーシャルネットワークの定義を広げれば、若者にとって最も有益な戦いの場はビデオゲームかもしれません。それは十分に合理的ですが、その戦場は男性に偏っています)。

インスタグラムは、公式の再共有オプションがないにもかかわらず、ほぼ無制限のハッシュタグ・スパムを可能にしており、これにより、より決定性の高い、自分で生成した配信が可能になります。また、ツイッターは、携帯電話の画面あたりのツイート密度を一定に保つために写真をトリミングすることに固執しているため、視覚的なミームを広めるのには適していません。

ネットワークのソーシャルキャピタルROIの勾配は、異なる人口層での市場シェアを左右することがよくあります。初期のMusical.lyに若い女の子が集まってきたのは、彼女たちがMusical.lyの基盤であるリップシンク・ダンスルーティンのビデオを得意としていたからです。ソーシャルメディアのヘビーユーザーは、通知が途切れない時代にあって、自分が使っているアプリの間でROIの状況が異なることを強く意識しています。

私はFlickrとインスタグラムに同じ写真を投稿していたとき、インスタグラムがFlickrを追い越すのに時間がかかったことを覚えています。もし私が投資家、あるいは従業員だったら、ソーシャルキャピタルの利率や様々なサービス間の流動性を追跡するために、様々なテストアカウントから様々なソーシャルメディアネットワークに投稿するコンテンツの代表的なカゴのようなものを持っているかもしれません。

どのネットワークでも、コンテンツのリーチを増やすことができる機能があります。リツイートボタンのような再共有オプションは、ソーシャルグラフによってフィードのコンテンツが決まるアプリにおいて、バイラル性を大幅に加速させることができます。ツイッターは、エンゲージメントを高めるために、数年前からツイートの流動性を高めることに積極的に取り組んでいます。ツイッターは、フォローしている人がリツイートしていなくても、その人がいいね!したツイートを表示するようになりました。また、検索タブにはモーメンツが表示されます。モーメンツとは、インスタグラムの「発見タブ」のように、あなたが好きそうなコンテンツを推測し、コンテンツで埋め尽くし、無限にスクロールできるようにしたものです。

TikTokは、ソーシャルメディアにおける新たなプレーヤーとして興味深い存在です。なぜなら、デフォルトのフィードである「For You」は、機械学習アルゴリズムに依存して各ユーザーが見るものを決定しているからです。これに対して、あなたがフォローしているクリエーターのコンテンツのフィードは、1区画上に隠されています。もしあなたがTikTokを始めたばかりで、素晴らしい動画をアップロードしたなら、この選択アルゴリズムによって、多くの人が長い時間をかけて築き上げてきたフォロワーの規模に依存するネットワークで共有するよりも、はるかに早く投稿を配信することができます。逆に、1つだけ素晴らしい動画を作っても、それ以外の作品が平凡だった場合、TikTokでの継続的な配信は期待できません。なぜなら、あなたのフォロワーは、彼らのフォローグラフではなく、TikTokのアルゴリズムによって動かされるフィードの中で生きているからです。

その結果、他のソーシャルネットワークよりも、正負両方のフィードバックループがきつくなってしまうのです。理論的には、アルゴリズムが正確であれば、あなたのフィードに表示されるコンテンツは、あなたがフォローしているアカウントの作品からの引用ではなく、作品の質やあなたの個人的な興味との関連性に最も近いものになるはずです。Bytedanceが国際市場でのユーザー獲得のために何千万(何億?)ものマーケティング費用を費やしている今、新人クリエイターの作品に対するROIの早さは、彼らが定着するために役立つ特質です。

もうひとつ興味深いことがあります。それは、グラフを利用したソーシャルキャピタルの配分メカニズムでは、勝者総取り効果の暴走に悩まされることがあるからです。つまり、早い段階で多くのフォロワーを獲得した人は、その投稿の質に関わらず、他のユーザーよりも多くのフォロワーを獲得し続けることになるのです。ソーシャルネットワークの規模が大きくなると熱が冷めてしまうのは、このようなオールドマネーが一掃されず、新規参入者がゲームに参加するインセンティブを失ってしまうからではないかという仮説があります。

シリコンバレーとマンハッタンなどの東海岸の権力回廊とを比較して、シリコンバレーの地域としての特徴は、オールドマネーの少なさです。例外はありますが、ベイエリアの財閥のほとんどは、ただのニューマネーではなく、今の世代の技術者から生まれたばかりのニューマネーなのです。古いVCや半導体業界の財閥もありますが、ほとんどの人はまだ生きています。

ニューヨークではマンハッタンのアッパーイーストサイドやウエストサイドで何世代にもわたって続くオールドマネーに遭遇したり、偶然良い家系に生まれた若い名士が古い富を街中にまき散らしていたりします。トリクルダウン経済は効果がありますが、多くの場合、家系内で相続されるだけです。

オールドマネーや古いソーシャルキャピタルの存在が、ソーシャルネットワークを必然的に停滞させるというわけではありませんが、ソーシャルネットワークは、品質の定義が何であれ、制作したユーザーの年代が何であれ、最高のコンテンツの配信を優先し続けるべきです。そうしないと、ソーシャルキャピタルの不平等が発生し、現実世界よりも出口コストがはるかに低い仮想世界では、新しいユーザーは、自分の仕事がより適切に報われる、ステータスの流動性が高い新しいネットワークに簡単に移ってしまいます。

シリコンバレーがオールドマネーに支配されることはないかもしれませんが、それは地域にとってはプラスだと思います。停滞した準独占企業が富にしがみついて、イノベーションを助長しない肥大化した規模になるよりは、最も生産性の高い新しい仕事が市場から一貫して報われる方が良いです。これは、ソーシャルネットワークや多人数参加型のビデオゲームでも同じです。初心者の場合、仕事に打ち込めば、どれだけ早く「ゲームに参加」したことになるでしょうか。プルーフ・オブ・ワークは、それら独自の実力主義を定義する必要があります。

多くのソーシャルネットワークがフォロワー数Xまでの時間などの重要な指標を追跡するのと同じように、新規ユーザーに対する投稿のROIを追跡すべきです。それは、リテンションやチャーンを支配する主要な指標となるでしょう。投資家として、あるいは好奇心旺盛な野次馬として、テストアカウントから様々なコンテンツを投稿してソーシャルネットワークをテストし、配信アルゴリズムの効率性と公平性を測ることも有効です。

どのようなメカニズムであれ、ソーシャルネットワークは、ユーザーが自分の仕事に十分な見返りを感じることができるように、コンテンツとそのコンテンツに適したオーディエンスとの間のマーケットメイキングに多くのリソースを費やす必要があります。ソーシャルキャピタルを配分する場合でも、特にそうである場合でも、配信が非常に重要です。

ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?

新しいソーシャルネットワークが、成功している既存のソーシャルネットワークをコピーして、ちょっとした工夫を加えたものをよく見かけます。フェイスブックの最近の問題を受けて、プライバシー・ファーストのソーシャルネットワークが登場するかもしれませんが、実際、模造品を研究するには限りがありません。App.netとMastodonは、差別化を約束しながらも、同じ一般的なオープンメッセージングフレームワーク上に構築された2つの著名なツイッタークローンでした。

このようなクローンに近いものはほとんどが失敗しており、今後も失敗すると思われます。StaaSの既存企業が基本的なプルーフ・オブ・ワークのハードルを満たすことができない理由は、一般的にすでに存在するステータスゲームを複製してしまうからです。定義上、プルーフ・オブ・ワークが同じであれば、実際には新しいステータスのラダーゲームを作っているわけではないので、新しいネットワークに誰もいない場合には、乗り換えるための説得力のある理由がありません。

しかし、既存の成功例を真似て成功できないというわけではありません。現実の世界では、新しいお金が新しい古いお金になることがあります。より優れたステータスゲームを構築したり、より価値のあるステータスの形を作ったりすることができます。しかし、通常、このような置き換えが起こるときは、純粋なユーティリティという別の次元に沿って行われます。

例えば、地域的なネットワーク効果によって特定の地域の市場を獲得しただけで、企業として成り立つようになったメッセージングアプリが複数あります。世界を支配する1つのメッセージングアプリがあるわけではなく、特定の地域で勝利を収めたアプリがたくさんあるのです。結局のところ、ほとんどの国や大陸で最も優れたメッセージングアプリは、他の多くの人々がすでにそこで使っているものなのです。

しかし、同じ市場ではどうでしょうか?そこでのプルーフ・オブ・ワークをコピーするのは、厳しい道のりです。先行者の優位性とは、圧倒的なグラフを持ち、最も価値のあるソーシャルキャピタルを持つリーダーが、先行者が立ち上げた新機能を見て、逆にコピーし、より広範で圧倒的な現存者のグラフに移植するようなものです。

中国では、Tencentがショートビデオ分野でのBytedanceの勢いを抑えようと必死になっており、Douyinが第一の敵となっています。テンセントはクローンを立ち上げましたが、視聴者がどの動画にも反応して横並びの動画を記録できる機能を追加しました。BytedanceがそれをDouyinに取り入れるのに約0.5秒かかりましたが、今では世界中のTikTokで人気の機能となっています。挑戦者としてプルーフ・オブ・ワークの競争を変えることができないなら、コピー&スロットルは現存者にとって有効な戦略です。

言うまでもなく、他のアプリの丸パクリは、お粗末なものとして嫌われる傾向にあります。知的財産権の保護が緩いと言われる中国でも、あからさまなコピーアプリには、ユーザーが不愉快なレビューを投稿する傾向があります。中国のユーザーは、アメリカのアプリが中国で模倣されていることをあまり意識していないかもしれませんが、中国国内では、ユーザーは明らかな模倣アプリに飛びつくことはありません。切り替えコストを上回るインセンティブが必要であり、それは中国でも他の国でも同じです。

ここで、いくつかの具体的な注意点があります。私はかつてソーシャルネットワークについて、「The network’s the thing (ネットワークこそが重要である)」と書きました。つまり、ソーシャルネットワークの規模が大きくなったときのグラフの構成が、そのネットワークの最もユニークな品質であるということです。今日、私はそれを更新して、ある機能と特定のグラフのユニークな組み合わせが、ネットワークの最も重要な競争力であると言いたいと思います。あるネットワークの機能をコピーしても、そのグラフをコピーできなければ十分ではありませんが、他の方法で獲得したユニークなグラフにその機能を適用できれば、それは防御可能な優位性となります。

このことは、フェイスブックがスナップチャットの刹那的なメッセージング機能をコピーして若者を取り戻そうとしたり、フェイスブックがLassoでTikTokをコピーしようとしたり、あるいはフェイスブックがどこかで人気のあるソーシャルアプリをほぼすべてコピーしようとしたりすることによく現れています。スナップチャットをコピーすることの問題点は、若者がフェイスブックからスナップチャットに移った理由の大部分が、親がフェイスブックに侵入したからだということです。父親が樽を持ってきてビールポンをしようと言ったからといって、同級生とのパーティを抜け出して親が開いているパーティに戻ることはありません。

フェイスブックの巨大なグラフと、他のアプリのプルーフ・オブ・ワークが組み合わさることで、ステータスゲームの本質が変わり、時には望ましくない方向に変化します。LassoでNellyの「It’s Getting Hot in Here」を口パクで歌っているところを、同僚や仕事仲間、家族や友人に見られたいと思うでしょうか?フェイスブックは、若者を呼び戻そうと、特別なミームタブを考えていると噂されていましたが、これもまた、若者がミーム・ステータス・ゲームをどのようにプレイするかを完全に誤解しています。最終的には、この計画は棚上げされました。

もちろん、有識者がうまくいったとよく引き合いに出すフェイスブックの典型的な機能獲得は、スナップチャットのストーリーズフォーマットをインスタグラムがコピーしたものです。以前にも書きましたが、私はストーリーズのフォーマットは、ソーシャルネットワークの社会的謙虚さの問題に対する真の革新だと思います。つまり、最もひどい目立ちたがり屋を除いて、フォロワーに多くのことを公開するのは気が引けるということです。ストーリーズでは、コンテンツを引き出す責任を視聴者に負わせることで、誰もが罪悪感を感じることなく、定期的に投稿できます。アルゴリズムによるフィードが投稿の流れを分断してしまう世界において、ストーリーズは才能あるクリエイターが連続した物語を作ることを可能にします。

このように、ストーリーズは本質的にユーザーの投稿のハードルを下げ、新しいストーリーテリングの方法を提供するものであり、成長が鈍化している多面的なネットワークは、供給側の社会的な謙虚さを解決できるかどうかを確かめるために、いつかは自分たちのネットワークに移植しテストすることになるでしょう。

皮肉なことに、サービスがストーリー機能にフィルターや機能をどんどん追加していくと、ストーリーズでのプルーフ・オブ・ワークゲームがエスカレートしていくのがわかります。今日のインスタグラムストーリーズの多くは、通常の投稿よりも手の込んだもので、公開するのに時間がかかります。ストーリーズのコンポーザーに用意されているフィルターやステッカー、GIFなどのツールの種類は、インスタグラムの通常の投稿で利用できる限られたフィルターを凌駕しています。軽い気持ちで始めた投稿フォーマットが、今ではより洗練された複雑なものになっています。

ステータスを求めるゲームからサルを連れ出すことはできても、サルからステータスを求める欲求を連れ出すことはできないのです。

テクノロジー史上最大のソーシャルキャピタル創出イベント

テクノロジー史上、いや世界史上、最大のソーシャルキャピタル・ブームを巻き起こした出来事は、フェイスブックのニュースフィードの開始でした。

ニュースフィードが登場する前は、例えばMySpaceやフェイスブックを利用していても、自分のネットワーク内のすべての活動を見つけるためには、あちこちを見て回らなければなりませんでした。特定の年齢層の人々はMySpaceで友人をストーキングする際に、プロフィールを次々とクリックしなければならなかったことを思い出すでしょう。今にして思えば、ソーシャルメディアのユーザーにこのような重いUIの負担を強いることは、滑稽に思えます。もしも、インスタグラムのネットワークに投稿された新しい写真をすべて見るために、新しい写真が投稿されていないかどうかを確認するために、1人1人のプロフィールをクリックしなければならないと想像できますか?ニュースフィードが導入される以前のソーシャルメディアの閲覧は、まるで冬の雪の中、木の皮でできたモカシンを履いて小学校に通うために何キロも歩かなければならなかったという両親の話のようですが、本当に途方もない苦痛でした。

フェイスブックのニュースフィードは、フォローしているすべてのアカウントからのすべての更新情報を1つの連続したスクリーンに統合し、それをデフォルトとすることで、新しい投稿の配信効率を高めると同時に、各投稿に即時アップデートされるスコアボードを付け、事実上1つの巨大なアテンションを集める競技場でユーザー同士を競わせました。まるでパノプティコンが一夜にして反転したかのように、巨大なスポットライトが点灯したかのように、フェイスブックで承認を得るためにパフォーマンスをしている私たち全員が、同じ観客席にいて、1つの大きなつながった無限のステージで、同じ時間に同じ観客に向かってカラオケを歌っていることに突然気づいたのです。

小さな部族の中でステータスを競い合って育った何億人、やがては何十億人もの人間が、いきなりタレントショーに放り出され、これまでに出会った人たちと競い合うことになったのですから、どれほどの重大な変化だったかは、いくら強調してもし過ぎることはありません。

予想通り、すべてが爆発しました。投稿数が増えました。その投稿に対するエンゲージメントも高まりました。これは映画で、何かを立ち上げた後、大勢の人が広い戦場に立って待っていると、突然、コンピューターを見つめるオタクが目を見開いて、「オーマイガー」と叫ぶシーンです。そして、その部屋にいる上級士官(おそらく不機嫌なエド・ハリスかカイル・チャンドラーが演じている)がスクリーンを見に行くと、そこには何か目に見えるカウンターが急速に増加していて、見ている間に絶対的な桁数がリアルタイムで増加していく。そして、会場は歓声に包まれ、さまざまな人がお互いに抱き合ったり、背中を叩いたりしている。そして、ランダムなエキストラが背景のスクリーンを駆け抜け、シャンパンのボトルを振って爆発させ、泡立った泡の流れを空中に射ち出しました。

もちろん、ユーザーは最初はニュースフィードに不満を持っていましたが、彼らの行動はその言葉を裏切るものでした。このことは、後にフェイスブックが、ユーザーは常に泣き寝入りするものであり、世間の反対にかかわらず、将来的に同じような変更を行うことが正しい行動であるという証拠として受け止めることになったということにつながります。

しかし、その昔、ニュースフィードはソーシャルキャピタルの蓄積のためのゴールドラッシュをもたらしました。うわー、あっちの投稿には私の最新の投稿の10倍の「いいね!」がついている!よし、そこから何を学んで次の投稿に生かすか?さて、そこから何を学んで次の投稿に活かせばいいのか?私のコンテンツの中で、最も「いいね!」を集めているのはどれだろう?現代では機械学習の奇跡が語られていますが、社会的な生き物である人間も、オーディエンスにウケるものを解読し、内面化する能力には劣らないものがあります。

10代の若者がインスタグラムの投稿をA/Bテストして、最初の1時間で「いいね!」を獲得できなかった投稿を削除するという話は、風刺の域を超えています。「ブラックミラー」のような番組では、現実にすでに起こったことを示すエピソードに終始します。10,000時間ルールにおいて重要なのは、意図のある練習をすること、そしてすぐにフィードバックが得られるという点です。ソーシャルメディアは、文字通りのリアルタイムフィードバックではないかもしれませんが、それに近いものがあり、その到達範囲は、歴史上のどのソーシャルパフォーマンスの場よりも桁違いに大きいのです。今、私たちの世代は、何十万、何百万ものソーシャルメディア担当者を通して、どのプラットフォームで何が人々を惹きつけるのかを学んできました。それぞれの方法で、私たちは皆、バズフィードです。私たちは皆、キム・カーダシアンなのです。

フィードバックのループがしっかりしていればいるほど、適応が早くなります。初期のツイッターと現代のツイッターを比較すると、カラオケバーで同僚の話を聞いていたのが、ビヨンセのコーチェラ公演を見るようなものです。かつて私は、フォロワーが増えたツイッターアカウントはフォーチュンクッキーのようになってしまうと書きましたが、私は皆がその最終状態に到達するのがどれだけ早いかを過小評価していました。

(フォロワーを増やし続けるツイッターアカウントのレトリックは、フォーチュンクッキーに集約されています。)

SNSでフォローするアカウントの数が増えてくると、候補となるストーリーの数が自分のキャパシティを超えてしまうことがあります。それより前にも、S/N比が低下して、エンゲージメントに影響が出ることがあります。このような変曲点を迎えたネットワークは、ほとんどの場合、アルゴリズムによるフィードという同じ解決策にたどり着きます。

覚えておいてほしいのは、ステータスはある種の希少性から価値を引き出すということです。豊かな時代の基本的な希少性とは何でしょうか?ユーザーのアテンションです。アルゴリズム・フィードの登場は、ソーシャルメディアのゲームの賭け金を高めます。誰かがあなたをフォローしていても、もはやあなたの投稿をすべて見ることはできないかもしれません。「Django Unchained」でディカプリオが言ったように、”You had my curiosity, but now, under the algorithmic feed, you must be earn my attention.” (あなたは私の好奇心を持っていたが、アルゴリズムフィードの下では、私のアテンションを集めなければならない)。

人間は直感的に、自分のステータスに満足することの何割かは相対的なものだと理解しています。重要なのは、自分の絶対的なステータスよりも、周りの人と比べて自分がどうなのかということです。自分のステータスの範囲を仮想的なものとすることで、私たちはそれを思いのほか大きくしてしまったのです。他の人がいかに素晴らしい生活を送っているかを一生懸命アピールしているのを見ると、幸福度が下がるのは当然のことでしょう。

この変化が人類にとってどれほど異常なものであるかを示す証拠として、感覚の移り変わりによってとっくに削除されているはずの、攻撃的なソーシャルメディアへの投稿履歴を持つ有名人がどれほどいるかを見てみましょう。ケビン・ハート、ジョシュ・ヘイダー、トレア・ターナー、ショーン・ニューカムなどの野球選手、その他多くの著名人とそのマネジメントチームは、ダウンサイドオプションしかないにもかかわらず、過去にさかのぼって以前のソーシャルメディアへの投稿を削除しようとは思わなかったのです。

ソーシャルネットワークは、「いいね!」などの投稿の評価を非公開にして、受け取った人だけが見られるようにすることはできなかったのでしょうか。ソーシャルキャピタルの軍拡競争がエスカレートするのを防ぐことはできなかったのでしょうか。技術系のCEOの中には、アラン・グリーンスパンのように、不合理な高揚感が今の状況を招いたと嘆く人もいますが、正直に言うと、これらのネットワークのソーシャルキャピタルの金利を下げるインセンティブは、彼らの目的や投資家の目的を考えると、あまりにも大きかったのです。ある企業が市場にステータスを氾濫させなければ、他の企業が何倍にもなってその穴を埋めていたでしょう。

Pathのようなソーシャルネットワークは、ソーシャルグラフのサイズをダンバー数に制限し、ソーシャルキャピタルの蓄積の可能性に上限を設け、投稿の配布にも上限を設けようとしました。その代償として、より高い透明性、より純粋な自己表現を期待したのです。アンチフェイスブックですね。残念ながら、ソーシャルキャピタル理論が予測するように、Pathは実際にアンチフェイスブックになることに成功しました: 十分なユーザーのいないネットワークです。ビジネスには規模が大きいほどうまくいくものがあります。人々ができるだけ効率的にソーシャルキャピタルを蓄積したいと考えているのであれば、彼らが獲得できる金額に制限を設けることは、残念かもしれませんが、挑戦的なビジネスモデルとなります。

ソーシャルキャピタルの蓄積が若年層に偏る理由

ソーシャルキャピタルの運用資産をユーザー層別にグラフ化してみたいものです。賭けてもいいですが、若者、特に子供が初めて携帯電話を与えられた10代から20代前半の若者がゲームを支配していることがわかります。私の甥っ子が肘の写真をインスタグラムに投稿すると、数百の「いいね!」がつきます。私は、バラク・オバマやビヨンセと一緒にコンガ・ラインを組み、ジェニファー・ローレンスが私の肩に座ってクリスタルを注いでいる写真をシェアしても、甥っ子が肘の写真を投稿したときの「いいね!」の数分の1しかつきません。これは若者のゲームであり、私が成人したLivejournal/Blogger/Flickr/Friendster/MySpaceの時代は、ソーシャルの先史時代のように感じられます。

私たちは皆、ステータスを求めるサルのようなものですが、StaaSという新しいビジネスを立ち上げる際には、若者が槍の穂先となる傾向があり、今後もそうなるでしょう。なぜこのような傾向があるのかについては、ちょっとした余談があります。

第一に、年配の方はより多くのソーシャルキャピタル(社会資本)を蓄えている傾向があります。肩書き、配偶者、子供、家などの不動産、車、自分で組み立てなくてもよい家具、履歴書、大学の学位などです。

[もちろん、これは文化によって異なります。私が育ったアメリカでは、仕事は最も重要なステータスであり、だからこそ、多くの会話が「何をしていますか?」から始まるのです。]

若者は、幸運にも多額の遺産を手に入れない限り、ソーシャルキャピタルに乏しいものです。肩書きもなく、大学を卒業していないかもしれず、家や車などの資産も少なく、大学を卒業していても多額の借金を背負っていることが多いのです。彼らにとって、ソーシャルキャピタルを得るための最速かつ最も効率的な方法は、社内政治のような大人向けのゲームで勝てるようにレベルアップするのを待つ間に、ソーシャルメディア(またはビデオゲーム)で商売をすることです。

第二に、大人はこれまでに蓄積されたソーシャルキャピタルがあるため、オンラインで遊ぶよりもさらにステータスを高めるための効率的な手段を持っている傾向があります。既存のソーシャルキャピタルを維持することは、新しいソーシャルネットワークでより多くの収入を得るために戦うよりも、蓄えられた大きなステータスに利子をつけるだけの簡単な方法なので、より効率的な時間の使い方であることが多いのです。これは数学的な話で、特に損失回避を考慮に入れればなおさらです。

若者は、ガレージに停めてある車のブランドや、住むのに余裕のある地域、組織の中でCEOより何階級下かなど、年配者のステータスゲームの多くを見て、そしてVineやMusical.lyなどのアプリを見てから、次のようなアプリを調べます。VineとMusical.lyです。そして彼らは唯一現実的で最適な道を選ぶのです。2つ目の原則は、人は自分のソーシャルキャピタルを最も効率的な方法で最大化するということです。若い人も年配の人も最適な戦略を追求します。

若い人たちのソーシャルキャピタルが、フォロワーや「いいね!」、仲間や見知らぬ人からのコメントという形で提供されているからといって、その価値が下がるわけではありません。自分の10代の頃を思い出してみてください。そのような規模のソーシャルキャピタルがあったでしょうか。若い頃は、仲間や同世代の人たちに認められることが何よりも大切で、ソーシャルメディアは若者のステータスゲームの範囲をあらゆる方向に広げています。

さらに、年配の方は、新しい技術を習得することに躊躇する傾向があります。それは、新しいステータスゲームを含めて、特にそれが目障りな新しい技術を伴う場合です。理由はいろいろあるが、子育てなどの大人としての責任や、神経の柔軟性の衰えなどが挙げられるでしょう。老犬が新しい芸を覚えないのは、死期が近くなり、その投資に対してプラスのリターンを得られる期間が短くなるからかもしれません。ある時点で、新しい芸を覚える価値が全くなくなり、私たちは皆、テレビ番組に出てくる無愛想な老婦人、例えば「ダウントン・アビー」のマギー・スミスのようになり、周囲の人間の愚かさを痛烈に批判するようになります。私は、死という避けられない現象によって、勇気を持って真実を語るというDGAFの段階に自然に落ち着く時を楽しみにしています。

最後に、多くの大人が「時間がない」と嘆くように、若者には余剰の時間があります。若者の時間のハードルは低いので、余剰の時間を使って新しいソーシャルネットワークを探索したり、ソーシャルキャピタルのリターンが魅力的かどうかを調べるためにマイニングしたりする余裕があるのです。若者たちは、世の中のあらゆるステータスゲームに対して、一貫した言葉で答えます。「身代金を要求されたら、私はお金を持っていないと答えます。私が持っているのは非常に特殊なスキルです。その中には、Blocboy JBの『Shoot』を寝室で踊りながら曲に合わせてリップシンクする器用さと協調性、そしてうまくいくまで何度も何度も繰り返し行う時間があります」(これを書いたのは、リーアム・ニーソンが自分のソーシャルキャピタルの多くに火をつけ、「不義理を働いた復讐心に満ちた父親で、驚異的な戦闘能力と銃器のスキルを持つ」という役を次の高齢男性スターに明け渡した最近の出来事よりもずっと前のことです)。

これらの現代的なソーシャルキャピタルは、新しいお金のようなものです。ニューヨークのアッパーウェストサイドやアッパーイーストサイドに住む年配の人々が、シリコンバレーのパーカーを着た億万長者のような新しいお金を持った俗物を見下すのと同じように、若者よりもこうした新しいバッジを蓄えるのが苦手な年配の人々は、子供たちがアプリで時間を無駄にしているのを嘲笑することが多いのも当然です。

例外は、このソーシャルメディアの最初の黄金時代に育った人たちかもしれません。この世代の若いNBAプレーヤーの中には、初めて携帯電話を手にしたときからインスタグラムを利用していた人もいて、投稿するのは自然なことであり、リーグに持ち込む習慣になっているかもしれません。昔のスター選手が「Sportscenter」で自分を検索したように、多くの若いNBAスター選手が「House of Highlights」で自分の姿を追跡しているのを見てもわかるでしょう。

ソーシャルメディアにおける老若男女の世代間格差が、ソーシャルネットワークが誕生して間もない頃の単なる一過性の異常であり、将来の世代が胎内から墓場までバーチャルなステータスを求める専門家になるとすれば、ソーシャルネットワークにとって、ソーシャルメディアの形成期にあるユーザーを捉えることがより重要になります。

私には多くのものが含まれている(若き血の言葉)

“I contain multitudes” (said the youngblood)
ちなみに、中高年よりも10代や20代の方が、より多くのアイデンティティを持ち合わせている傾向があります。中学・高校では、学校では同級生の中でのアイデンティティ、家庭では家族の中でのアイデンティティを維持しなければなりません。20代の人は、昼間は同僚の中で1つのアイデンティティを作り、仕事以外では友人の中で1つのアイデンティティを作ります。それらの領域では、ステータスゲームが異なることが多く、それらのアイデンティティを統合することには何らかのペナルティがあります。学校の友達に送るはずだったメールを親に送ったり、ハッピーアワーの仲間に送るはずだったメールを上司や同僚に送ったりしたことがある人は、文脈の崩壊という危険な性質を知っています。

さらに、若い世代がビジュアルコミュニケーションを好み、得意としていることを考えると、若者が好むソーシャルネットワークがインスタグラムであり、メッセンジャーがスナップチャットであり、どちらもフェイスブックよりも好きな理由は明らかです。インスタグラムは、自分のアイデンティティのポートフォリオに合わせて複数のアカウントを簡単に作ることができ、スナップチャットは、特定の受信者に個人的にビジュアルメッセージを送ることができる最高の使い勝手の良さがあります。賞味期限切れのコンテンツの削除は、インスタグラムで明示的に実行される場合(例えば、ミームアカウントを使い切った後に簡単に削除できます)でも、スナップチャットのようなサービスで自動的に処理される場合でも、複数のアイデンティティ管理が必要な人にとっては、必須の機能です。

現実世界のグラフとの関連性を明確にし、単一の公開アイデンティティを強制するフェイスブックは、若者のより複雑なソーシャルキャピタルの要件には構造的に適合しないのです。

ソーシャルネットワークの共通点

2軸モデルを使って、ソーシャルネットワークが経時的にたどる共通の道筋を見てみるとよいでしょう。すべてのソーシャルネットワークが同じ経路を辿って有名になったわけではありません。また、それぞれのソーシャルネットワークが今後成長していくための最も生産的な戦略を明らかにすることができます。

最初にユーティリティ、次にソーシャルキャピタル

ツールのために来て、ネットワークのために留まる
(Come for the tool, stay for the network)

これはよく知られている「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」という経路です。インスタグラムは、フィルターを使ったユーティリティからソーシャル写真共有の巨大企業へと成長したことを考えると、その良い例です。今日、私は最後にインスタグラムのフィルターを使ったことを覚えていません。

結局のところ、ほとんどのソーシャルネットワークは、このような道のりを歩んだとしても、真に耐久性のあるものにするためには、ユーティリティに回帰する必要があると思います。コマースは、インスタグラムがユーザーのためにユーティリティを高めることができる分野のひとつです。

最初にソーシャルキャピタル、次にユーティリティ

インターネットの偉大なリソースの多くは、名声や認知度を求める人々によって構築されました。

名声のために来て、ツールのために残る?
(Come for the fame, stay for the tool?)

Foursquareは私にとってこれでした。最初の頃は、ランダムな場所でメイヤーの座を獲得しようとチェックインしていました。最近のFoursquareは、単なる風変わりな分散型ソーシャルキャピタル・ゲームではなく、自分の周りの場所に関する情報を提供する、より実用的なものになろうとしています。ヘビーユーザーは、それがどれほど成功しているかについて考えているかもしれませんが、他のアプリが構築できる場所のデータベースをコンパイルするだけで、彼らはユーティリティのストアを構築しています。

IMDb、Wikipedia、Reddit、Quoraなどがその代表例です。ユーザーはステータスを求めてやってきましたが、結果的にコモンズのためのツールを構築するのに役立ちました。

ユーティリティはあるが、ソーシャルキャピタルはない

巨大なソーシャルアプリの多くは、ほとんど実用主義的なものですが、それは厳しい競争の中にあります。

一部の企業は、ネットワークのユーティリティを高めることには成功しても、実際のソーシャルキャピタルを構築することには成功していません(あるいは、試みようともしていません)。

ほとんどのメッセージング・アプリはこのカテゴリーに入ります。すでに知っている人に連絡を取るのには役立ちますが、あまり新しい人を紹介してくれないし、「いいね!」や「フォロー」でステータスを競うものでもありません。Skype、Zoom、FaceTime、Google Hangouts、Viber、Marco Poloなどのビデオチャットアプリも、このカテゴリーに当てはまります。メッセージングアプリの中には、ストーリーズのような機能を追加して、従来のソーシャルメディアのようなパフォーマティブな領域に踏み込もうとしているものもありますが、インスタグラムのような純粋なStaaSアプリと比較すると、そのような機能が普及するかどうかは疑わしいと思います。

この右下の象限には、10億人以上のユーザーを抱える企業が存在しますが、ソーシャルキャピタルを最小限に抑え、純粋にユーティリティ由来のネットワーク効果で勝負しているため、わずかな堀でも血と汗を流して争うような過酷な競争の場になりがちです。

ソーシャルキャピタルはあるが、ユーティリティは少ない

ソーシャルネットワークがユーティリティを確立する前に熱を失ってしまうと、立ち上がりと同じくらいの速さで衰退してしまいます。

Foursquareがここに位置していると主張する人もいるかもしれませんが、この象限で議論する上で最も興味深い企業は明らかにフェイスブックです。フェイスブックにユーティリティがないと言っているわけではありません。いくつかの市場では、それはインターネットのようなものです。Messengerは明らかに10億人以上の人々にとって便利なメッセージング・ユーティリティです。

しかし、米国はフェイスブックにとって重要な市場であり、特に収益化に関しては、もしフェイスブックがユーティリティの軸をさらに押し広げることに成功していたら、今日の状況はどう変わっていただろうかと考える価値があります。私の知り合いの多くは、この1年でフェイスブックを生活から切り離しましたが、日々の生活にはほとんど影響がありませんでした。商取引や決済など、明らかに最大のユーティリティを持つカテゴリーの中で、フェイスブックは広告以外ではトップレベルのプレイヤーではありません。

このことは、フェイスブックが最もよく対比されるソーシャルネットワークと比較すると、特に顕著です。

ソーシャルキャピタルとユーティリティの両立

ソーシャルネットワークの聖杯は、2×2マトリックスの右上象限に収まるほどのソーシャルキャピタルとユーティリティを生み出すことです。ほとんどのソーシャルネットワークでは、この2つの要素が混在していますが、WeChatほどのものはありません。

フェイスブックを捨てて二度と振り返らなかった人の話を耳にしますが、中国ではWeChatを捨てた人はいないでしょう。これは、WeChatがどれほど組み込まれたユーティリティになっているかを物語っており、これを削除することはほとんどの市民にとって大きな不便を強いることになります。

典型的な中国のユーザーのために、WeChatやWePay、AliPayのメニューにあるサービスのリストを見て、フェイスブックがそのどれにも支払いの選択肢がないことを考えてみてください。

画像11を拡大表示
画像12を拡大表示
画像13を拡大表示
画像14を拡大表示


もちろん、競合の状況は重要です。フェイスブックは、これらのカテゴリーにおいて、WeChatよりもはるかに厳しい競争にさらされていました。フェイスブックがこれらのカテゴリーのいずれかでより良いネズミ捕りを作るためには、WeChatよりもはるかに高い要件が求められます。

決済を例に挙げてみましょう。中国人はさまざまな理由からクレジットカードをほとんど使いません。また、Visa、Mastercard、American Expressの3社が中国に進出できなかったことも理由の1つです。そのため、AlipayとWePayは、身の回りの不便さの解消という課題を主に現金と競い合うことになりました。これを例えばApple Payが米国でクレジットカードを使う習慣をなくそうとしていることと比較してみましょう。特に、多くの人々がクレジットカードのポイントやマイルに夢中になっていることを考えると(航空会社のマイレージプログラムも、人々の意思決定に影響を与えるステータスの力を証明しています)。

コマースや決済などの新しいカテゴリーに本格的に参入するには、フェイスブックとその子会社であるWhatsAppやインスタグラムに長期で考える力と大量のリソースが必要になります。例えば、フェイスブックの検索機能を向上させたり、フェイスブックを決済手段として位置づけたり、フェイスブックにバーチャルアシスタントを導入したりするなどの過去の取り組みは、放棄されたように見えます。フェイスブックの暗号通貨への取り組みや、インスタグラムのコマースへの取り組みのような新しい取り組みには、十分な長さの鎖が与えられるのでしょうか?

ソーシャルネットワークの漸近線1:プルーフ・オブ・ワーク

StaaSビジネスの成長が止まる時期をどうやって見分けるのでしょうか?メトカーフの法則によれば、ネットワークの価値はそのユーザーの二乗に比例して成長するのに、ネットワークが突然S字カーブの肩の部分にぶつかるのはなぜなのでしょうか?なぜ、ネットワークがすべての人を取り込むまで成長し続けないのか、それを説明するために欠けている変数は何でしょうか?

理由はたくさんありますが、ここではソーシャルキャピタル理論に焦点を当ててみましょう。暗号通貨の例えに戻りますが、プルーフ・オブ・ワークの選択は、選択されるスキルが均等に分布していないため、定義上、漸近線となります。

訳者注:
漸近線とは十分遠くで曲線との距離が0に近づき、かつ曲線と一致しない直線のことである。Wikipediaより引用

具体的な例として、今話題のアプリということで、以前Musical.lyとして知られていたアプリ、TikTokを見てみましょう。

TikTokの動画を見たことはあっても、作ったことはあるでしょうか?私の推測では、多くの人はやったことがないし、これからもやらないでしょう(でも、もしやったことがあるならリンクを送ってください)。もちろん、私もやったことはありません。

あなたは、あなたの評価によれば、身もだえするほどの尊厳を持っているかもしれません。関節炎のあなたには”Orange Justice”を行うことができないかもしれません。いずれにしても、TikTokのクリエイターコミュニティは、どんなに独創的なツールがあったとしても、最終的にはそのプルーフ・オブ・ワークの性質によって制限されてしまいます。ツイッターでも同じことが言えます。140文字、そして今では280文字の気の利いた情報を作ることを楽しむ人の数は限られています。どのようなネットワークでも、最終的な貢献者の数にはある程度の上限があり、それは多くの場合、そのプルーフ・オブ・ワークの直接的な機能です。

もちろん、ネットワークの価値や総ユーザー数は、投稿者数の直接的な関数だけではありません。ソーシャルネットワークの1/9/90ルールを信じるかどうかにかかわらず、どんなネットワークもそのクリエーター以外の人々にとって価値があることは方向性として正しいです。実際、ほとんどのネットワークでは、閲覧するだけのユーザー数がアクティブな参加者の数をはるかに上回っています。人生は観客動員型のスポーツではないかもしれませんが、多くのソーシャルメディアはそうです。

プルーフ・オブ・ワークが悪いと言っているわけではありません。実際、多くの人の創造性を引き出すような制約条件を考えることは、まさにStaaSビジネスがプロダクト・マーケット・フィットを達成する方法です。制約があるからこそ、圧縮された状態になり、芸術的な美しさが生まれることが多いのです。また、クリエイターに制約を課すことで、全く制約のない探求では得られないような集中的な努力を促すことができます。

しかし、天井は天井です。ネットワークの最終的な価値を知りたいのであれば、プルーフ・オブ・ワークの種類は考慮すべき重要な変数です。なぜMusical.lyが成長を止めてBytedanceに売却したのか、なぜDouyinが中国でユーザー数の上限に達するのか(まだ達していないのであれば)、あるいはどのソーシャルネットワークでもアクティブユーザー数の上限を知りたいのであれば、まず、その分野で競争するスキルと興味を持っている人がどれだけいるのかを自問してみてください。

ソーシャルネットワークの漸近線2:ソーシャルキャピタルのインフレーションとデバリュエーション

投資家や従業員にとって、漸近線よりも恐ろしいのは崩壊です。ギリシャ神話の虚栄心の神Myspakosにちなんで名付けられたMyspaceの崩壊の教訓的な神話を思い出してください(編集部注: 作り話で、実際はNarcissusです)。メトカーフの法則やそれに関連するネットワーク効果の理論があるにもかかわらず、ソーシャルネットワークの中には、成長が止まるだけでなく、さらに悪いことに、縮小して枯れてしまうものがあるのはなぜでしょうか?

StaaSビジネスに内在する脆弱性を理解するには、ステータスの変動性を理解する必要があります。

ソーシャルキャピタルの金利上昇

よくある罠の一つに、ソーシャルメディアの勝者の呪いがあります。ソーシャルネットワークが十分な成功を収めると、その規模が大きくなり、ほとんどのユーザーにとって高いS/Nを維持するために、アルゴリズムによるフィードを課さなければならなくなるのです。これは、FRBが金利を上げることでインフレを管理しようとするのと似ています。

もちろん、問題はこれによって、どのユーザーからのどのような投稿であっても、その配信量が減少してしまうことです。このような決定の中でも最も物議を醸したのは、フェイスブックがニュースフィードに配信するコンテンツの量を減らしたことでした。

多くの機関、特に報道機関は、ニュースフィードに掲載される目玉商品にアクセスするためにフェイスブックを利用していました。彼らは、自分たちのフェイスブックページをフォローしてもらうために、あらゆる種類のプレゼントやプロモーションを考案しました。フォロワーを獲得すると、メディア企業は自由にニュースフィードに何度でも掲載することができ、ユーザーが1日に何度もフェイスブックを開いていることを考えると、魅力的な提案でした。ただでさえインターネットの普及でビジネスモデルが混沌としていたメディア企業にとっては、道行く人に記事を振りまくことから、世界中の人のまぶたの内側に、1日に何度も記事をホチキスで留めることにアップグレードしたような感覚でした。決定的な保証された眼球です。

しかし、ある日、フェイスブックがサノスのように指を鳴らし、その確実なリーチの多くが灰になってしまいました。あなたのページのフォロワー全員が、あなたの投稿のすべてを見ることはできなくなったのです。フェイスブックは、中央銀行がインフレ対策として行うように、ニュースフィードからアテンションを集めるための金利を引き上げました。

このような動きは避けられなかったのでしょうか?必ずしもそうではありませんが、可能性は常にありました。というのも、今日のすべてのソーシャルネットワークやメディア企業には、自然に制限されている希少な資源があり、それはユーザーのアテンションです。ソーシャルネットワークがそのアテンションの一部をパートナーと共有することは、常にそのアテンションを最初に集めて維持することに次ぐものです。例えば、フェイスブックは、ニュースフィードに関しては、コモンズの悲劇に常に注意しなければなりません。メディア機関を救うことは、二の次になるかもしれません。

ソーシャルキャピタル・デフレーション: 希少性の不安定さまたはグルーチョ・マルクスの難問

ソーシャルネットワークに存在する特有のリスクとして、次のようなものがあります。「本来ソーシャルであるものには、ネットワーク効果が正の方向にも負の方向にも強力に働く」というものです。

エラッド・ギル著『High Growth Handbook』の中で、マーク・アンドリーセンはこう述べています。

ネットワーク効果は素晴らしいものだと思いますが、ある意味では少し過大評価されていると思います。ネットワーク効果の問題点は、同じようにすぐに元に戻ってしまうことです。そのため、持続している間は素晴らしいのですが、逆転するときは猛烈に逆転します。MySpaceの人にネットワーク効果がどうなっているか聞いてみてください。ネットワーク効果は、明白な理由により、非常に強力なポジションを作り出すことができます。しかし、別の意味では、それは非常に弱い立場と言えます。なぜなら、もしネットワークに亀裂が入ったら、あなたは解けてしまうからです。私がいつも心配するのは、答えがネットワーク効果だけだと考えている企業です。ネットワーク効果の耐久性は?

ソーシャルネットワーク効果はなぜ逆転するのでしょうか?私がソーシャルネットワークを判断するもう一つの軸である「ユーティリティ」は、価値に上限がない傾向があります。商品やサービスが便利になりすぎたと表現することはまずありません。つまり、ユーティリティを過剰に提供することは難しいのです。VisaやMastercard、Alipayのような決済手段は、利用者が多ければ多いほど便利です。便利になりすぎたからといって、そのサービスを使わなくなることはありません。

ソーシャルネットワーク効果は違います。ニューヨークに住んだことがある人なら、何ヶ月も前から盛り上がっていたナイトクラブが、しばらくして突然潰れてしまうのを何度も見たことがあるでしょう。ソーシャルキャピタルの多くのタイプは、壊れやすい性質を持っています。ステータスは、その価値を決定する希少性を定義するために、調整されたコンセンサスに依存しています。コンセンサスは一瞬にして変化します。『スウィンガーズ』に登場する友人は、LAの混雑したパーティで「ここはどうせ死んでいる」と言い放っていました。また、著名な社会学者であるグルーチョ・マルクスの名言を思い出してください。「私は、私を会員にしてくれるクラブには所属したくない。」

グルーチョ・マルクスの効果はすぐには現れません。そもそもステータスヒエラルキーでは、ステータスの高い人が自分がどれだけ大衆の上に立っているかを実感するために、ステータスの低い人が入会する必要があります。ラスベガスの八海山でボトルサービスを頼んでも、ベルベットロープの反対側に誰も座っていなければ意味がありませんし、ハイスコアが1つしかないリーダーボードも意味がありません。

しかし、レストランやクラブ、ソーシャルネットワークには、その人気を超えてしまうようなティッピングポイントがあります。マルコム・グラッドウェルが「ティッピングポイント」という言葉を世間に広めたとき、彼は物事がどの方向に傾いているのかを明確にしませんでした。私たちは、S字カーブのつま先である急速な普及への転換を美化しがちですが、ファッションのようなステータスゲームでは、人気の弧はS字カーブではなくベルカーブを描きます。ベルカーブの頂点では、あまり華やかではないティッピングポイント、つまり急落する前のポイントに到達します。

ステータスの定義が分散している場合、多くの場合、ある少数派が不釣り合いな影響力を持っています。そのグループ、つまりクールな子供たちが引き金を引けば、誰もが彼らに続いて出口に向かう傾向があります。実際、ソーシャルネットワークの蒸発冷却効果により、最初に出て行くのは最もステータスの高い人や好ましい人であることが多いのです。その時点で、そのプロダクトやサービスはユーティリティ軸上で可能な限り遠くに移動していなければならず、そうでなければ解約の速度が速く鼻血が出てしまいます

[模倣的欲望は残酷な愛人である。ジラードはFyre Festivalで大騒ぎしたことでしょう。おめでとうビリー・マクファーランド、あなたはインフルエンサーの恩恵を欲しがるという罪を私たちが清めるための儀式の生け贄だ」。]

ファッションは、ネットワーク効果の中で繰り返されるブームとバストのパターンを理解し、自らのステータスの切り下げサイクルを所有している、最も興味深い産業のひとつです。雑誌編集者やファッションデザイナーの奇妙な陰謀は、毎シーズン、恣意的に新しいスタイルを今のファッションと宣言し、過去に推奨したものは陳腐化する前に撤退させます。基本的に機能的な変化はありません。今シーズンに買ったシャツは、昨シーズンに買ったシャツ機能的に同じです。業界全体としては、皆がサーフィンしようとしている波のように、希少性のフロンティアを前進させているだけなのです。

今シーズンの流行色はサフランかもしれません。なぜでしょうか?それは、私よりもクールな人がそう言ったからです。テック業界では、デジタル情報が非競争的で限界費用がゼロであることから、何が何でも成長を優先する傾向があります。豊かな世界では、それは理にかなっています。しかし、商品が競合する場合に重要となる、希少性を積極的に管理する方法について、テクノロジーはファッションのような産業から学ぶべきことがたくさんあります。多くの種類のステータスは相対的なものであるため、定義上、ライバル関係にあると言えます。ソーシャルネットワークに適用されるローテーション理論に相当するものがありますが、それはまだ標準的な技術のプレイブックには含まれていません。

このタイプのステータス切り下げカスケードの変形は、特定のグループが参加したときに引き起こされます。これは、ステータスの格子の安定性が、ネットワークの総サイズと同じくらい、ネットワークの構成に依存するからです。テクノロジー分野での典型的な例は、親が強制的にサインオンしたときに若者がフェイスブックから移行したことです。ニュースフィードの配信が驚くほど効率的になったことで、フェイスブックは若者にとって事実上の監視装置となりました。ママやパパが見ているだけでなく、将来の大学や雇用主、デート相手がタイムトラベルして、いつかあなたのプロフィールを精査するのです。フェイスブックが若者のプラットフォームとして魅力的でなくなると、彼らの多くは新しいメッセージング・ソリューションとしてスナップチャットに集まってきました。

以前、スナップチャットの不透明なイースターエッグUIが、親に対するいたずら防止用の蓋のようなものであると書きましたが、ソーシャルネットワークユーティリティ理論と第二言語としての自撮りに関する記事を組み合わせると、スナップチャットは、テキストを優先的に使用する高齢者にとっては最適ではないメッセージングプラットフォームであることも明らかになります。スナップチャットを開くと、カメラが表示されます。誰かにメールを送りたいときは、左にスワイプしないとテキストメッセージ画面にたどり着かないので余計な手間がかかります。

過去に他のアプリの奇妙なクローンを検討したことを考えると、フェイスブックがある時点で、ニュースフィードではなくカメラを最初に開くバージョンのアプリを検討していなかったとしたら、私はショックを受けるでしょう。もしそうなら、リリースされなくてよかったと思います。若い人たちにとっては、親が写ったままのグラフに公開するのは、やはり抵抗があったでしょうし、ビジュアルメディアにそれほど偏っていないお年寄りにとっては、このようなUIは最適ではなかったでしょう。フェイスブックにとっては、悲惨な負け惜しみになってしまうのです。

Patrick Collisonは、物理的な世界におけるネットワーク効果の罠に関する興味深い論文(PDF)を参照しています。これは仮想世界にも存在し、StaaSビジネスには特に多くの罠があります。もう一つの例は、経路依存的なユーザー構成です。熱狂的なアーリーアダプターのグループは、自分たちが好きなコンテンツをサービスに流すだけで、新しいソーシャルネットワークが誰のためのものかを決定することができます。例えばピンタレストは、フロントページのパーソナライズ化が急速に進む前は、基本的なツールセットが男性にも有用であるにもかかわらず、主に女性をターゲットにしたサービスのように見えました。新規ユーザーのフロントページには、すでにサービスを利用している友人のピンが表示されるため、女性に近い初期のコホートが新規ユーザーのフィードの大半を占めていました。私が最初に見たピンタレストのトップページは、化粧品、女性用の服、家の装飾品などが延々と並んでいましたが、これは私の友人たちがさまざまなプロジェクトのためにピンしていたものと同じだったからです。

グルーチョ・マルクスは、ソーシャルキャピタルの哲学者としては時代の先端を行っていましたが、私たちは彼の仕事をベースにすることができます。彼の有名なアフォリズムに、いくつかのバリエーションを加えるべきだと思います。蒸発冷却に関しては、2つのことが思い浮かびます。「あの人たちがメンバーになるようなクラブには所属したくない」「あの人たちがメンバーになりたくないようなクラブには所属したくない」。

ソーシャルキャピタルの評価低下リスクの軽減、そしてスナップチャットの戦略

昨年末に流出したメモの中で、Evan Spiegelは、スナップチャットのコア・バリューの1つが、最速のコミュニケーション手段にすることであることを書いています。

私たちが成長するための最も永続的な方法は、最速のコミュニケーション手段であることに執拗に集中することです。

最近、私はiPhone 4でスナップチャット v5.0を使う機会がありました。スナップチャット v5.0には、Bobbyのオリジナルコードと、私のオリジナルグラフィックが多く使われていました。私のiPhone Xで動作する現在のスナップチャットよりもはるかに高速でした。

イノベーションを起こして多くの新プロダクトを世に送り出そうとするあまり、私たちはスナップチャットを最速のコミュニケーション手段にした核心部分を失ってしまいました。

2019年は、スナップチャットを最速のコミュニケーション手段にすることに注力し、まだスナップチャットの使い方を知らない何十億人もの人々に、当社サービスのコアバリューを解き放つことを目指します。スナップチャットのコアバリューを解き明かすことができなければ、カメラのパワーを最大限に発揮することはできません。

そのためには、仕事のやり方を変えて「最速のコミュニケーション手段」というプロダクトのコアバリューを、スナップのすべての仕事の最優先事項にする必要があります。また、付加価値の高い機能があっても、コアプロダクトの価値が損なわれてしまうような市場では、プロダクトを変更する必要があるかもしれません。

以上、私のソーシャルメディア・フレームワークの3つの軸におけるスナップチャットの戦略を明らかにしました。スナップチャットは、ソーシャルキャピタルの軸を犠牲にして、ユーティリティの軸をさらに推し進めようとしていますが、これは以前にも述べたように、長期的なビジネスを構築するには不安定な要素です。

多くの人は、特にスナップチャット自身は、ずっとアンチフェイスブックであったと言うでしょう。スナップチャットには「いいね!」がないため、破壊的なステータスゲームから人々を解放することができるのです。しかし、そう考えるのは、どんなネットワークでもステータスゲームの武器にすることができるという人類の創意工夫を過小評価していることになります。

スナップチャットを使っている子供たちを研究したことがある人なら、スナップチャットが高校生のステータスゲームやFOMO戦争にフェイスブックと同様に欠かせない存在であることを知っているでしょうし、そのような子供たちがほとんどフェイスブックを使わなくなった今、間違いなくスナップチャットはより重要な存在となっています。ソーシャルメディアアプリの中で、これほど尖った軸を持っているのはインスタグラムだけで、インスタグラムの方がよりあからさまなソーシャルキャピタル蓄積メカニズムを持っているのは事実です。しかし、子供たちがスナップチャットを純粋なメッセージング・ユーティリティのように使っているという考えは、笑い話であり、10代の学生生活がどのようなものだったかを忘れてしまったのではないかと思わせるものです。招待されていないパーティに参加している人たちをインスタグラムで見ても、誰かのスナップで見ても、やはり嫌な気分になるものです。

スナップチャットのオリジナルのBest Friendsリストを覚えていますか?先に述べたように、その時点でスナップチャットの使い方がわかっていたとしても、お年寄りはおそらくそのステータスゲームをしていなかったでしょう。この機能は、10代の若者向けに開発されたものとしては、純粋なステータスゲーム機能でした。スナップの頻度が高い上位3人が表示されるだけでなく、連絡先のベストフレンドの上位3人を確認することもできました。つまり、全員の「友人関係」の階層を公開し、人気度のスコアボードを明示したのです。

私が高校生の時にこれが存在しなくてよかった、私は本当に私がどれだけの敗者であるかの指標を必要としませんでした。

スーパーBFF-domを達成するためのプルーフ・オブ・ワークを知りたくないですか?

フォロワー数や「いいね!」数の集計と同様に、ベストフレンドリストは、人々が非常に特殊な形のソーシャルキャピタルを蓄積するためのメカニズムでした。しかし、プラットフォームの観点から見ると、この機能には大きな問題があります。それは、各ユーザーが1人のベストフレンドしか持てないことです。ベストフレンドは1人しかいないということで、ソーシャルキャピタルの獲得量に上限が設けられていました。

スナップチャットは、ソーシャルキャピタルの蓄積を制限し、ゼロサムゲームをポジティブサムゲームに変えて、頑張っているユーザーや魅力的なユーザーの数を増やすために、非常に人気のあったベストフレンドリストを廃止し、ストリークに置き換えました。

スナップチャットの連絡先リストの右側に表示される数字や絵文字を見たことがない人は、誰からも愛されていません(冗談です、それはあなたが年をとっているということです)。

友達と何日も連続してスナップチャットを利用すると、ストリークが蓄積され、友達リストに記録されます。若者たちはすぐに、友達とのストリークの構築と維持に心血を注ぎました。これは文字通り、友情の証としてのプルーフ・オブ・ワークであり、数値化され、追跡されるものでした。

もちろん、ストリークには制限がないという素晴らしい特性があります。好きなだけストリークを維持することができます。ソーシャルキャピタルに価値がないと思っている人は、携帯電話を持たずに旅行に行ったり、携帯電話や無線LANが使えない場所に行ったりして、自分のストリークがすべて途切れてしまうことに泣きじゃくる若者を見たことがないでしょう。海外旅行を余儀なくされたときには、携帯電話を友人に預けて、その友人がすべての連勝記録を維持してくれるという、ある種のソーシャルキャピタルなベビーシッターやサロゲートのような方法をとっている子もいます。

笑えるのは、若者がいかに効率よくストリークを維持しているかということです。それは毎日の儀式のようなもので、友達のリストをざっと見て、何かランダムなものをスナップして、ストリークのカウントを増やすというものです。私の甥っ子は、カメラを構えることすらせず、ほとんどのストリークを維持するためのスナップは、肘の横や肩の半分などのぼやけた写真でした。

もちろん、ソーシャルキャピタル構造の脆弱性の証拠として、ストリークは熱を失い始めています。スナップチャットの若いユーザーの多くは、もはやストリークを気にしていません。ソーシャルキャピタル・ゲームを維持することは、常に不安定なゲームであり、突然の大規模なデフレ現象に見舞われやすいのですが、ストリークが機能している間は、とんでもない麻薬のようなものです。10代の若者のように頻繁にスナップをしている人にとって、ベストフレンドリストを配信リストの一番上に並べておくことは時間の節約になります。ソーシャルキャピタルとユーティリティはきれいに分けられないことが多いです。

とはいえ、ステータスが不安定であることや、インスタグラムがソーシャルキャピタルの蓄積を目的としたサービスであることを考えると、スナップチャットがメッセージングのユーティリティを高めることを目指すのは悪い戦略ではありません。しかし、メッセージング分野で競争している人なら誰でも知っているように、持続的なユーティリティの優位性を生み出すことは非常に難しいことです。技術競争のゲーム理論では、コピーできる機能はすべてコピーされると考えたほうがいいでしょう。そしてメッセージングは、利益の観点から見ると、決して最も有利なビジネスではないかもしれません。

余談ですが、スナップチャットは「Discover(発見)」ページでエンターテイメントの軸を打ち出しています。ある程度の規模のソーシャルネットワークであれば、ソーシャルキャピタル、ユーティリティ、エンターテイメントの3つの要素を組み合わせて利用することになりますが、それぞれの要素をどれだけ強調するかは、それぞれが選択することになります。

ステータスゲームの半減期を長くする

プルーフ・オブ・ワークが変わらないことの危険性は、いずれその社会的通貨を採掘したいと思う人が皆そうしてしまい、そのほとんどが枯渇してしまうことです。その時点で、ソーシャルネットワークに残されたステータス主導のポテンシャルエネルギーの量は平坦になります。その時点で、サービスが多くのユーティリティを付加することに成功していなければ、ネットワークは陳腐化してしまいます。

この問題に対処する一つの方法は、ユーザーが潜在的なソーシャルキャピタルの新たな蓄えを効果的に作り出す、新しい形のプルーフ・オブ・ワークを追加することです(最大手のソーシャルネットワークは他のソーシャルネットワークよりも優れている傾向があります)。インスタグラムは、正方形の写真とフィルターで始まりましたが、その後、アスペクト比の制約を取り除き、動画を追加し、動画の制限を長くし、BoomerangやStoriesなどのフォーマットを追加しています。親会社であるフェイスブックは、世界中のソーシャルネットワークの中で最も拡大したと言っても過言ではありません。ハーバード大学の学生たちがテキストベースの近況報告をするためのツールだったのが、今では数え切れないほど多くのフォーマットやオプションを持つソーシャルネットワークになりました。これらの新しいハードルは、ビデオゲームにおけるダウンロードコンテンツのようなもので、慣れ親しんだゲームに新しいレベルのスパイスを加えるようなものです。

というのも、フェイスブックは多くの人にとって様々なものであり、もはや誰にとっても何でもないものになっている可能性があるからです。すべての人を受け入れながらも、一貫したステータスの梯子を提供したいと考えるクラブになるのは難しいことです。フェイスブックはステータスゲームに参加したくないと主張することもできますが、そうであれば、もっとたくさんのユーティリティを追加しなければなりません。

ビデオゲームは、その急速なライフサイクルと明らかなスキル対報酬のトレードオフを考えると、この種の分析においてショウジョウバエのようなものです。例えば、大ヒットしたゲームのライフサイクルが約1年半であるのはなぜでしょうか。

新しいゲームは、全く新しいレベルと課題を提供し、プレイヤーはステータス競争に夢中になります。しかし、最終的にはスキルの差別化によって、プレイヤー層がきれいに整理される傾向があります。プレイヤーは自分が極めたレベルに到達した後停滞します。同時に、プレイヤーはゲームの課題に慣れすぎてしまい、達成感によるドーパミンの分泌が少なくなってしまうのです。

例えばCall of Dutyのようなフランチャイズは、何億ドルもの投資をして定期的に新バージョンを出すことで、このサイクルを管理しています。それぞれのゲームは、慣れ親しんだものでありながら、新たなレベルや課題、環境を提供しています。これがライフサイクルです。

ゲームによっては、そのサイクルを長くすることができます。例えば、ラスベガスのカジノゲームでは、リアルマネーを支払うことで、プレイのROIに魅力的なフロアを設定しています。MMORPGの中には、ゲームをプレイするという純粋なスキルの挑戦よりも長く続く、コミュニティの感覚のような他の利点をプレイヤーに提供するものがあります。World of Warcraft、League of Legends、Fortniteなどの長寿命のビデオゲーム・フランチャイズを見ると、並行する業界がいかにしてトップ・プロパティの生産的な中年期を長くすることに成功したかがよくわかります。

ソーシャルネットワーク戦略のフロンティアは、これらの隣接した、より古いソーシャルキャピタルゲームを深く研究することで、ますます広がっていくのではないでしょうか。ファッションも、ゲームも、宗教も、そして社会も、元々はStaaSビジネスだったのです。

ソーシャルに苦戦する企業が出てくる理由

ステータスゲームを嫌悪する人もいます。にもかかわらず、私の知り合いは皆、複数のステータスゲームに参加しています。インスタグラムでハッシュタグスパムをしている人を嘲笑する人もいれば、ツイッターで賞賛のリツイートをする人もいます。ある人は、インスタグラムでハッシュタグをつけている人を嘲笑しながらも、ツイッターで褒められたらリツイートします。親は子供の発表会の写真を見せびらかし、人々は鏡を見ながら自分の服装を評価し、従業員は会議で同僚をねぎらい、起業家は30アンダー30のリストに載りたいと思いながら文句を言い、記者はTechmemeのリーダーボードをチェックするなど、人生はステータスコンテストの入れ子構造になっています。

私は人生の中で、ステータスゲームを超越したような人に何人か会ったことがあります。しかし、それは奇跡のような人であり、他の人たちに虚栄心を抱かせてしまうようなごく僅かな人達です。

ステータスゲームを超えていると主張する人の数は、実際に超えている人の数よりも多いです。彼らが嫌悪感を表明しているのは本物だと思いますが、そうでないとしても、彼らの憤りの危険性は、自分たちのプロダクトがある意味でStaaSを提供するビジネスとして機能していることが見えなくなってしまうことです。

実際、多くのハイテク企業は、経営者の交代や賢い買収がなければ、社会的な活動が苦手であることに変わりはないでしょう。例えばAppleは、ソーシャル機能の構築に幾度か挑戦したことがあります。以前、音楽の分野でソーシャル機能を構築した際には、すぐに消滅してしまいました。また、iOSのフォトアルバムにソーシャル機能を追加しようとしましたが、試してみるたびに何よりも困惑してしまいました。

Appleファンなら、「iMessages」と叫ぶかもしれません。何億人ものユーザーがいて、10代の若者の間で大量に使用されている、それはAppleがソーシャルをできるという証拠ではないでしょうか?ある意味ではそうですが、ほとんどはユーティリティの問題です。Appleのソーシャルへの取り組みは、ソーシャルキャピタルが少ない傾向にあります。

Appleは自らをユーザーのプライバシー擁護の第一人者と位置づけているため、ソーシャル機能の多くがプライバシーとトレードオフの関係にあることから、ソーシャル機能の構築には常に制約があると思われます。しかし、すべてがそうではなく、完全にプライバシーに基づいたソーシャルネットワークが成功する可能性もありますが、1)それは困難なことであり、2)多くの人々がプライバシーを犠牲にしてまで自分の最高の生活をオンラインで見せたいと思っているかどうかは定かではありません。

もちろん、これこそが多くの人々がAppleを愛し、選ぶ理由であり、彼らは使い切れないほどの現金を持っています。誰もAppleに同情する必要はありません。よくあることですが、企業の強みと弱みは、その企業の本質の中にある同じ性質からきています。私はむしろ、Appleが世界で最高のコンピュータを作ることに集中し続けることを望みます。Appleがプライバシーを重視することを、iOSでの写真共有のような厄介なやり取りの言い訳とみなすのは、誤ったトレードオフです。

同じような社会的な近視眼が、Googleにもあります。Googleは、Google+で独自のソーシャルネットワークの構築に挑戦したことで有名です。アップルと同様、マウンテンビューのチームは、ソーシャルキャピタルというよりも、ユーティリティ的なネットワークを構築するのに適しているようです。グーグルは、ソフトウェアエンジニアが最も力を持っている会社だとよく言われます。私の経験では、エンジニアは論理で動く人であり、ステータス中心のプロダクトは彼らにとって嫌悪感や謎めいたものであり、その両方であることが多いです。グーグルは今後もソーシャルが苦手でしょうが、アップルと同様に独自の強みでカバーしています。

奇妙なことに、Googleは2大モバイルプラットフォームの1つを支配しているにもかかわらず、いまだにメッセージングアプリで成功できないでいます。これは、GoogleがGmailで大きな市場シェアを持っているEメールのように、ユーティリティを重視したソーシャルアプリケーションとほぼ同じです。Googleは、特にGoogle Mapsをはじめとする多くのプロダクトで、ユーティリティを高めるためにソーシャルを利用することができたはずなのに、残念なことです。

アマゾンもNetflixもソーシャルの取り組みを開始しましたが、ほとんど忘れ去られています。おそらく、これらの試みは時期尚早で、フライホイール効果を発揮できるだけの十分な規模になる前に世に送り出されたのだと思われます。新しいソーシャルネットワークを立ち上げるのは大変なことですが、買い物やDVDの郵送レンタルなど、発生頻度の低い行動を中心としたソーシャル機能を立ち上げるのはさらに困難です。また、両社のソーシャル活動は、最も洗練されたデザインではありませんでした(フェイスブックは、数十億人のユーザーに対応するソーシャルプロダクトを立ち上げる能力があり、そのデザインチームは、あらゆる文化や年齢のユーザーに使いやすさを提供することに長けていると評価されています)。

偽のレビューが氾濫していることや、プライムアカウントを持っている人の数を考えれば、アマゾンがソーシャルサービスを構築することで、知り合いや信頼できる人からの商品の推薦やレビューを容易にすることができるでしょう。私は、アマゾンの極端にポジティブなレビューもネガティブなレビューも、たとえそれが検証済みの購入者からのものだと記載されていたとしても、ますます懐疑的な目で見るようになりました。このような機能の重要な価値はユーティリティですが、商品の専門家であることによるステータスの向上は、フライホイールを回すエネルギーになります。しかし、アマゾンは、レビュアーランキングやグローバルセールスランクなどの機能を使って、ソーシャルダイナミクスを小売ビジネスに活用してきた実績があります(両方とも、もう少し下の方で説明します)。

Netflixに関しては、私は実際のところ、ビデオのレコメンデーションを生成する上で、ソーシャルは多くの人が考えるほど有用ではないと考えています(これについては別の日に議論しますが、映画の趣味に関しては、小さな違いにこだわるナルシシズムがあると言えば十分でしょう)。しかし、Netflixtにとってソーシャルアクティビティは、今のところ、アプリ内のユーザーにはほとんど見えない、噂話を増幅させ、群衆行動を促す程度の話題性に関する追加レイヤーとして機能します。これはNetflixのような規模の加入者数を達成できなければ成立しない戦略であり、したがって、Netflixがもっと活用できる二次的な規模の優位性の一形態です。

しかし、ソーシャルネットワークであっても、ほとんどの企業の上級幹部が、ソーシャル機能をデザインして活用することに不向きである理由はもう一つあります。それは、勝者の呪いの一種です。

ケーキを食べればいいじゃない

何度も耳にする言葉ですが、ユーザーに共感する最も簡単な方法は、自分自身が標準的なユーザーになることです。私はこの考えを支持する傾向がありますが、残念なことに、私の携帯電話には常に何百ものアプリがインストールされており、プロダクトの時代の流れについていくのが精一杯です。

ソーシャルネットワークでは、ユーザーの目を通して自社のサービスを見ると、誰をフォローしているか、サービスのアルゴリズムが何を提供しているかによって、人によって異なる体験をするという問題があります。何億人、何十億人ものユーザーがいて、文化も違うのに、どうやって状況を正確に把握するのでしょうか。エンゲージメントが高く、成長していることは指標でわかるかもしれませんが、その活動の構成はどうなっていて、誰がどの部分に触れているのでしょうか。

健康的な活動と不健康な活動を区別する指標ができるまでは、ソーシャルネットワークの幹部は、風向きを確認するために指をなめたり、空気中に突っ込んだりして、逸話に基づいて舵取りをするしかありません。自分たちのサービスの問題点を指摘された幹部が無知を訴えても、信じられない人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。コミュニティを運営する上で、最も厚い無知のベールは、何百人、何千人、何百万人ものコホートをわずか一握りのコホートに集約した、整然としたメトリクスダッシュボードです。

ソーシャルネットワークの健全性を実感するためには、ネットワークのトポロジーや、何億、何十億というユーザー間のつながりやインタラクションの量と性質を理解する必要があります。それらをすべて処理することは不可能ですが、重要な詳細部分を失わずに要約することも同様に困難です。

しかし、さらに困惑させられるのは、成功しているソーシャルネットワークの幹部は、世界で最も高いステータスにある人々であるということです。彼らが抱えているのは0.1%か0.001%の問題です。彼らは日々、コアユーザーが常に取り組んでいる問題に直面することはほとんどありません。エンゲージメントの目標は、ソーシャルキャピタル・ゲームとして最適化されたサービスを構築することに向けられるかもしれませんが、彼ら自身はより多くのステータスを必要としているわけではありません(彼らが自分のネットワークでは見つけられないタイプのステータスを除きます)。

[ジャック・ドーシーは例外かもしれませんが、彼が投稿するツイートには、怒りのリプライが絶え間なく寄せられています。彼がパブリックメッセージングプロトコルのマイナス面のリスクを身をもって理解していないとは言い切れません。ツイッターでハラスメントを受けた被害者のためには、厚顔無恥でストイックではないジャックが必要なのかもしれません]。

ソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルの交換

[ソーシャルキャピタルの存在と価値を完全に信じているのであれば、このセクションは読み飛ばしても構いませんが、その価値を推定するいくつかの方法を理解するには興味があるかもしれません]。

歴史上最も大きく、最も価値のある企業のいくつかが、ステータス・ゲームを生み出すことで短期間で築き上げられたことを考えると、ソーシャルキャピタルの存在と価値を確信できるでしょう。私たちはソーシャルメディアの時代に生きているので、おそらく文明の歴史の中でソーシャルキャピタル資産のピークにいるのです。しかし、先に述べたように、ソーシャルキャピタルを研究する上での課題の一つは、ソーシャルキャピタルをどのように測定し、その流れをどのように追跡するかについて、合意された定義がないことです。

私はソーシャルキャピタルの明確な定義を見つけていませんが、ソーシャルキャピタルとは、人々のネットワークから生まれる資本だと考えています。この概念をもっと詳しく知りたい方は、このページに定義に関する文献の長いリストがあります。実際のところ、私はソーシャルキャピタルに関しては、最高裁のポッター・スチュワート判事がかつてポルノについて言ったように「見ればわかる」と読者の皆さんを深く信頼しています。

しかし、それ以上に、ソーシャルキャピタルという暗黒物質は、それがより身近な価値のあるものに変換されるような交換を通じて検出することができます。

近所の人からミルクを借りたり、子供の面倒を見てもらったりしたことがある人は、ソーシャルキャピタルの価値を知っています。また、小さな遊牧民が放浪し、他の部族の人々を棒や石で殺すことが日常的に行われていた人類史の初期段階に生きていた人は、ソーシャルキャピタルの存在による保護の繭と、不在時の突然の暴力を通して、ソーシャルキャピタルの価値を知っています。

ソーシャルキャピタルを見極める最も簡単な方法は、人々がソーシャルキャピタルを金融資本と交換している場所を見ることでしょう。ソーシャルネットワークの成熟に伴い、このような交換を促進するためのインフラは大きく進化しています。レベルアップしたWorld of Warcraftのキャラクターという無形の資産がマーケットで売られた時にその価値が分かるように、こうした取引によってソーシャルキャピタルに具体的な価値を与えることができるのです。

ソーシャルキャピタルから金融資本への交換の例として最もよく挙げられるのは、インスタグラムやYouTubeのインフルエンサーたちが行うものでしょう。私は、別の人生ではアバクロンビー&フィッチの外でモグモグしていたり、ロサンゼルスの高級レストランでフロントドアを担当していたりするかもしれないモデルに会ったことがありますが、その代わりに、特定のリゾート地で贅沢に過ごし、特定のスポンサーのプロダクトを身につけたり使用したりしている写真を投稿することで、年収7桁以上の収入を得ています。ジェイクやローガン・ポールが、YouTube配信で得た資金で購入した豪邸の車道で、新しいランボルギーニの前でおめかししている動画を投稿したら、上流でソーシャルキャピタルと金融資本の交換が行われたことになります。流通を再構築すれば、世界も再構築されます。

同様に、逆方向の流れも見られます。ツイッターで何十万人ものフォロワーを買う人たちは、金融資本とソーシャルキャピタルを交換している最もクリーンな例の一つです。その後、そのソーシャルキャピタルを金融資本に戻すには、スポンサーに投稿料を請求するなど、さまざまな方法があります。両者の相対的な価値に応じて、アービトラージが可能です。

[ネット上で多くの人に馬鹿にされているKlout社は、ネット上の人々のソーシャルキャピタルの評価をより正確に追跡しようと試みましたが、真の富裕層が成金を無粋だと馬鹿にするように、多くの人が明確な測定の試みを見苦しいと感じました。しかし、これらの人々の多くは、オンライン上でソーシャルキャピタルを求めて激しく競争しているため、どのようなステータス・ゲームが許容されるかを指定すること自体がステータス・ゲームなのです]。

文化的、文脈的に様々な理由でマネタイズモデルが異なるアジアでは、ソーシャルキャピタルの評価がより明確になります。アジアの多くのソーシャルネットワークでは、ネットワークを離れることなく、ソーシャルキャピタルを直接金融資本に変えることができます。例えば、YYのようなライブストリーミングサイトでは、視聴者から実際にお金がかかるデジタルギフトを得ることができ、その価値をプラットフォームと分け合うことができます。初期のYYは、かわいい女の子がポップソングを歌うだけのものが多かったです。最近では、魅力的なドキュメンタリー映画『People’s Republic of Desire』に見られるように、もっと多くのものに進化しています。

中国では、インフルエンサーを育成・管理する機関が設立されていますが、これは選手の育成やコーチングをする野球のファームシステムのようなものです。ソーシャルキャピタルを自社ブランドのプロダクトラインに変換するスピードは飛躍的に加速していますが、中国ほどそのスピードが速い国はありません。

一方、ツイッターでは、もし自分のツイートが大規模なバイラルになったとしても、GoFundMeページへのリンクを添付したフォローアップのツイートをしなければならず、それに比べると下品なマネタイズハックです。インフルエンサー産業化の最先端を行くのは、アメリカではなく中国なのです。

アジアのマネタイズスキームのすべてがアメリカの文化に移植されるかどうかは懐疑的ですが、この記事で重要なのは、ソーシャルキャピタルには実際の金銭的価値があり、ネットワークはその交換がどれだけ簡単にできるかという点で異なるということです。

ソーシャルキャピタルの蓄積と保管

暗号通貨のように、ソーシャルキャピタルを蓄積しても、それを所有して安全に保管できなければ意味がありません。成功しているソーシャルネットワークのほとんどは、蓄積と保管の両方の仕組みを提供することに長けています。

今となっては当たり前のことかもしれませんが、このような仕組みを提供できず、価値が他のソーシャルネットワークに流出してしまった多くのアプリやサービスを考えてみてください。Hipstamaticは、インスタグラムよりも先に登場し、私がモバイルで使った最初の写真フィルターアプリでした。しかし、インスタグラムとは異なり、フィルターは有料で、プロフィールページもソーシャルネットワークもフィードもありませんでした。私はHipstamaticのフィルターを使ってiPhoneの写真を加工し、それをフェイスブックなどの他のソーシャルネットワークに投稿していました。Hipstamaticはユーティリティを提供してくれましたが、フィルターを使うことで得られるソーシャルキャピタルは何も得られませんでした。

この点を、先に述べたMusical.lyのような企業と比較してみましょう。彼らはユニークなプルーフ・オブ・ワークを考え出しましたが、Hipstamaticとは異なり、ユーザーがミュージカル・スキットを作成することで得られるソーシャルキャピタルの価値を獲得しようとしました。彼らは、これらの寸劇が単にインスタグラムやフェイスブックなどのネットワークにアップロードされることを望んでいませんでした。

そこで、アプリ内にフィードを作成し、優秀なユーザーが自身の作品を配信できるようにしたのです。そうすることで、Musical.lyは自分が生み出したソーシャルキャピタルを所有することができました。もしあなたのサービスが無料であれば、あなたが生み出した価値を獲得するための最良の方法は、その価値が実現され交換される市場を所有することです。

Musical.lyの創業者であるAlex Zhuは、新しいソーシャルネットワークを立ち上げることを、新しい国を設立して既存の国から市民を呼び込もうとすることに例えています。これは面白い例えですが、私は暗号通貨の例えの方が好きです。というのも、ほとんどのユーザーはテクノロジーの世界で複数のソーシャルネットワークの市民となっており、ステータスの分散されたポートフォリオのように、すべてのネットワークでソーシャルキャピタル資産を管理しているからです。

いくつかの基本的なソーシャルキャピタルの蓄積メカニズムは個々のユーザーのために標準化されました。まず、プロフィールがあり、そこにはフォロワー数やリストなどの指標が表示されます。フォロワーやフレンドは、多くのソーシャルネットワークの最小単位であり、フォロワー数の利点は、一般的に時間の経過とともに増加する傾向がある点です。また、フォロワー数はグローバルなランキング指標としても有効です。

局所的なソーシャルキャピタルのスコアリングは、通常、何らかの「いいね!」という形で存在しています。フィードの性質上、最近のアクティビティが優先的に配信されるため、「いいね!」はより刹那的な性質を持っていますが、フォロワーはよりゆっくりと蓄積される傾向にあるため、ほとんどのソーシャルネットワークでは何らかのバージョンが存在します。「いいね!」は自分のアクティビティの量との相関性が高く、長期的にはフォロワーや友達よりも価値が低いとしても、短期的には継続的なソーシャルキャピタルの注入源として機能します。

一部のネットワークでは、リツイートのように再共有することで、投稿の配信を加速させることができます(多くの意図しない結果をもたらしますが、それはまた別の機会に議論しましょう)。また、コメントを許可しているネットワークもありますし、その他のネットワーク固有の形態もありますが、これらのほとんどは、投稿に添付できる何らかのソーシャルキャピタルです。

繰り返しになりますが、これはソーシャルネットワークを利用しているほとんどのユーザーにとっては衝撃的なことではありません。しかし、以下のようなソーシャルキャピタルの蓄積を困難にしているソーシャルネットワークを検証することは有益です。

例えば、WhisperやSecretのような匿名性の高いソーシャルネットワークがその例です。このようなソーシャルネットワークの前提は、匿名であることにより、ユーザーが他の人と関わることをためらうような情報や意見を共有できるということでした。しかし、よくあることですが、その強みは弱みとなり、ユーザーはそこで作られたソーシャルキャピタルを主張することができませんでした。これらのネットワークに書き込まれたものは非常に有害であり、それらの所有権を主張することは、全体としてソーシャルキャピタルに負の影響を与えます。

Redditのようなネットワークはカルマを導入することでこの問題を解決しましたが、Redditにとっては、ソーシャルキャピタルを現実のアイデンティティやレピュテーションから切り離すことで解き放たれる暗い非対称インセンティブを抑制することは長い闘いだったと言ってもいいでしょう。

[Balaji Srinivasanは、いつの日か暗号通貨によって、誰かが自分の身元を公にすることなく匿名のソーシャルネットワークから価値を引き出すことができるようになるかもしれないと述べていましたが、少なくとも今のところ、ソーシャルネットワーク上のステータスの多くは金銭的な性質のものではありません。その多くはただの笑い話です]。

一人のユーザーにとって、ソーシャルネットワークの粘着性は、そのネットワーク上に蓄積されたソーシャルキャピタルの量と強い相関関係があることが多いです。ソーシャルネットワークを捨ててしまう人もいますが、よほどのデフレでもない限り稀です。

また、ソーシャルキャピタルは腐らないものであるため、捨てやすい傾向にあります。ツイッターのフォロワーが他のネットワークでは何の価値もないのであれば、面倒なことをする価値がなくなれば、アカウントを手放す方が苦痛ではありません。ツイッターやフェイスブックのようなソーシャルネットワークでは、かつてユーザーが自分のグラフを他のネットワークに移植することができました。また、フェイスブックは、サードパーティのサービスやアプリが自分たちのグラフの上に構築することで得られるインバウンドのソーシャルキャピタルの価値を過大評価していたこともありました。

グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークから見ればプラスですが、ユーザーから見ればフラストレーションが溜まります。独占禁止法の消費者福祉基準に照らしてソーシャルネットワークに取り組むことが難しいことを考えると、巨大なネットワーク効果ビジネスの力を抑制するための選択肢として、(多くの人が提案しているように)ユーザーが自分のグラフを他のネットワークに持ち込むことを認めるようにすることが考えられます。これにより、ソーシャルネットワークは、ソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティやエンターテイメントの軸で競争することになります。

ソーシャルキャピタル・アービトラージ

ソーシャルネットワークには異なるオーディエンスが集まることが多く、また、ユーザーが重なっていてもグラフの構成が異なることが多いため、アプリ間でソーシャルキャピタルを裁定する機会が存在します。

その代表的な例が、インスタグラムの人気アカウント「@thefatjewish」(本名はジョシュ・オストロフスキー)です。彼は、ツイッターやその他のソーシャルネットワークで他人が言ったジョークを、自分のジョークとしてインスタグラムに投稿することで、何百万人ものフォロワーを獲得しました。何百万人ものフォロワーと「いいね!」を集めただけでなく、CAAとの契約も獲得したのです。

そのことを指摘された彼は、「繰り返しになりますが、インスタグラムは、私が行っている、より大きなことの一部に過ぎません。私には、クイーンズのネイルサロンの裏で働いているインターン達がいます。たくさんのことをやっています。私は本を書いていて、ロゼを飲んでいます。彼らにお風呂に入ってもらわなければなりません。他にもいろいろとやってもらいたいことがあるんです。極めて切迫した状況であるとは思えませんでした」と主張しました。これは本当に長くて奇妙な言い方ですが、嘘がバレてしまいました。彼らを入浴させているインターンの軍隊を持たない者にに最初の石を投げさせましょう。

それ以来、インスタグラム上の同様のジョークアグリゲーターのアカウントは増殖し続けていますが、その中には写真の中にそれぞれのジョークの適切な属性を含めるという、太っ腹なスキャンダル後の社会的規範に従っているものもあります(例えば、「借りた」ツイートの写真の中にツイッターのユーザー名とプロフィール写真を含めるなど)。しかし、多くの人はそうしません。また、そうしている人でも、最も顕著なものは反発を引き起こすことがあります。fuckfuckjerryというハッシュタグは、人気のインスタグラムアカウント@fuckjerry に対する新たな抗議です。このアカウントは@fatjewishと同様に、他人の最高のジョークをキュレーションし、それをデイトレードして小さなメディア企業にしたものでFyre Festivalの大失敗にも登場しました。

同じようには機能しない複数のソーシャルネットワークがある限り、あるネットワークから別のネットワークに仕事をコピーして、流通のギャップを埋めるためのソーシャルキャピタルを蓄積するソーシャルメディアアービトラージが存在し続けるでしょう。インターネットが普及する前、男性は才能のあるコメディアンから個性やウィットを盗み、会話の中で映画やミッチ・ヘドバーグのジョークを引用していました。これは、その現代的な形であり、インターネットのスケールの大きさによって強化されています。

ソーシャルメディアへの投稿の多くは、誰かの作品からステータスを得ようとしているに過ぎません。冒頭の2つの考え方は、この種のアービトラージが常に存在することを示しています。例えば、誰かがツイッターやフェイスブックの記事にリンクしたり、他人の本の段落をスクリーンショットして投稿したりすることを考えてみましょう。再共有の利益をどのように分配するかによって、オリジナルの制作者の反応の大きさが変わってくるようです。インスタグラムの@thefatjewishや@fuckjerryのようなアカウントへの反発は、再共有するジョークの相手と価値を共有していないことが原因かもしれませんが、例えば、本の抜粋をツイッターに投稿すると、著者にとってはありがたい宣伝になります。

一時的なエネルギー源としてのソーシャルキャピタル・ゲーム

ソーシャルキャピタルのインセンティブ構造は、適切に構築されれば、かけがえのないインセンティブとして機能します。例えば、インターネット上の良質なコンテンツをキュレーションすることは、コンテンツが無限に存在するこの時代においては永遠の課題であり、面白いものを発見したら報酬を与えるというのはインターネット上の最も古くて信頼できるマーケットの一つです。

その代表的な例がRedditで、ユーザーは面白いリンクやその他のコンテンツを持ってくると、文字通り「カルマ」と呼ばれる通貨と交換します。カルマを貯めると、自分のサブレディットを作成したり、特定のプライベートなサブレディットに参加したりすることができるなどの特典があります。

ツイッターもまた、フォロワーや「いいね!」の数を増やすために、面白いコンテンツを発信する人が多いソーシャルネットワークです。適切なアカウントを十分にフォローすれば、ツイッターは面白みのある小粒の分配者となります。

また、ソーシャルネットワークとは思えないような企業でも、ある問題を解決するためにソーシャルキャピタルゲームを利用することがあります。あるクリスマス休暇に夜食を食べようと階下に降りていくと、3人の父親である友人がまだ起きていて、ノートパソコンを打っていました。数時間後には起きて子供たちの世話をしなければならないのに、何をしているのかと尋ねると、彼は恥ずかしそうにYelpエリートのステータスを維持するために、たくさんのレビューを書いていたと言いました。今でも私の友人の中には、昔参加したYelpエリートのパーティのことを懐かしそうに話す人がいます。

初期のYelpは、いくつかのパーティーを開くだけで、どれだけ多くのレビューを集めることができたかを考えてみてください。それは間違いなく価値のあることであり、そうでなくなった時点で(ニューヨークの一風堂の9655件目のレビューを書くことの限界値は何か?)簡単に縮小されたり、廃止されたりするものです。

アマゾンはソーシャルを理解している企業とはあまり思われていませんが、Yelpよりも前の初期の頃、ユーザーのレビュー数を増やすために同様の戦術を採用していました。アマゾントップレビュワーは、アマゾンのすべてのレビュワーを世界的にランク付けしたリストでした。自分のレビューに対して買い物客からより多くの「役に立った」を集めることで、自分の順位を上げることができました。私の記憶に残っているのは、このリストを何年にもわたって独占し、印刷されているほとんどすべての本をレビューしていたハリエット・クラウスナーです。アマゾンは今でもトップカスタマーレビュアーリストを維持していますが、レビューの量がアマゾンにとって現実的な問題ではなくなってきているため、時間とともに価値が下がってきています。

もうひとつの例は、アマゾンが効果的に採用していたステータスゲームで、今はもう存在しない「グローバルセールスランク」です。一時期、アマゾンのすべての商品は、他のすべての商品と比較され、動的な売上ランクのリーダーボードにランク付けされ、その数字は各商品の詳細ページの上部に目立つように表示されていました。本の著者は、自分の本の販売ランクを上げるために、顧客をアマゾンに誘導していました。これは、今日の著者が発売週にNYTimesのベストセラーリストに載ることを期待して、自分の本を発売時にある程度の量を購入することを約束するのと同じです。

IMDbやWikipediaは、その分野の専門家たちのステータスを求める気持ちと利他的な気持ちが同居する仕組みを構築することで、価値あるデータベース全体をほぼ完全に構築した2つの企業です。Redditと同様に、これらのサービスで一定の評判を蓄積することで、追加の能力が解放され、両社とも非常に低い制作・編集コストで巨大な情報データベースを構築しました。

このようなソーシャルキャピタルを蓄積するインセンティブは、ステータスというポテンシャルエネルギーを、ベンチャーが必要とする運動エネルギーに変換する方法と考えることができます。

有名人のアプリが失敗する理由

一時期、セレブの間では自分のアプリを立ち上げることが流行しました。カーダシアンのアプリが最も顕著な例ですが、他にもあります。

ソーシャルキャピタルの観点から見ると、これらのアプリは、有名人自身のステータスを下げるだけで、ほとんど価値を生み出しません。参加する人のほとんどは、その名を冠した有名人のコンテンツを求めています。アプリのユーザーであるファン同士の交流は、ほとんどないに等しいのです。基本的にこれらのアプリは、スター自身の配信チャンネルであり、耐久性のある資産というよりは、虚栄心の強いプロジェクトになる傾向があります。

このようなアプリがユーザー間の交流を促進しようとすることは想像できますが、それは非常に複雑な取り組みであり、そのような取り組みの多くは、これを引き受けるスキルも、それをやり遂げるために必要な意志や資本も持ち合わせていません。

このような有名人によるベンチャー企業を考える別の方法として、問題となっている有名人のソーシャルキャピタルをすべて取り除いた場合の、プロダクトやサービスのソーシャルキャピタルとユーティリティを測定することができます。たくさんの人からたくさんの人を引いたものは、ゼロに等しいのです。

結論: 誰もが世界を支配したいと思っている

オビ=ワン・ケノービの不朽の名言に「ステータスはジェダイに力を与えるものだ。それはすべての生物が作り出すエネルギーフィールドである。それは我々を取り囲み、我々を貫く。それが銀河を結びつけるのだ」というものがあります。

大手ハイテク企業の多くが部分的にはStaaSビジネスであるということは、あまり議論されていません。多くの人は、自分がステータスによって動機づけられていることを認めたがらないでしょうし、自分の会社でやるべき仕事が人々のエゴを満足させることだと認めるCEOはほとんどいないでしょう。

ユーザーの視点から見ると、常に接続されている携帯電話のソーシャルアプリで常にステータスゲームをしていると、心が疲れてしまうという話が増えてきています。StaaSをFOMO as a Serviceに置き換えることは簡単です。マンハッタンやシリコンバレーで、とんでもない大金持ちがいまだに悲惨な目に遭っているのはこのためです。

この記事は、ストイシズムや仏教、超越瞑想、心の平穏を得るためにスマホのアプリを削除することなどを説いたMediumの思想書という、よくあるジャンルに私が貢献するものではありません。自分の幸せをコントロールしたいのであれば、他人のスコアボードに縛られてはいけないということです。

映画『ヒート』でのニール・マコーリーの言葉を思い出してください。

快楽的なトレッドミルから抜け出すためには、ステータスをテーマにした名作映画『ヒート』に登場するロバート・デニーロ演じるニール・マコーリーの言葉に耳を傾けてみましょう。「熱を感じて30秒で逃げ出すことができないようなソーシャルキャピタルに執着してはいけません。」

ヒートの最後に、彼は自分のアドバイスに従わず、どうなったかを見てみましょう。

しかし、私はシーザーを葬るために来たのではなく,また彼を賞賛するために来たのでもない。むしろ、エミリー・ウィルソンが『オデュッセイア』の素晴らしい新訳の冒頭で述べているように、「複雑な男について教えてくれ」。インターネット全体の多くは、評判のような無形のインセンティブであるソーシャルキャピタルの基盤の上に構築されています。今日のような巨大ハイテク企業が出現する以前、私はニュースグループ、ブログ、膨大なFAQなど、世界全体に貢献することで得られる評価からドーパミンの刺激を感じている人々が作った無数のリソースを調べていました。アマゾンでは、このようなモチベーションを高めるための通貨を「egoboo」(egoboost)と呼んでいます。エゴブーで成り立っているウィキペディアのようなものは、とんでもない奇跡だと思います。私はそれを失いたくありません。私たちはそれを失う必要はないと思うのです。

もちろん、フォースのように、ステータスは人間の本質の最も暗く残酷な部分の燃料としても同様に強力です。ツイッターとフェイスブックのそれぞれのミッションステートメントを見てみると、「すべての人に障壁なくアイデアや情報を創造し、瞬時に共有する力を与える」、「人々に共有する力を与え、世界をよりオープンでつながりのあるものにする」というものですが、これらが基本的にポジティブな結果であるという前提に立っているのが印象的です。誰もがつながり、誰もがすぐに情報を共有できるようになることで、どのようなマイナス面があるのかについては何も問われていません。

もちろん、両社をはじめとする多くの企業は、何十億人もの人々を無防備に接続することで生じる、しばしば無制限のダウンサイドリスクに対処しなければなりませんでした。2016年の選挙でロシアがソーシャルネットワークに侵入したことに関する上院情報委員会の報告書を読むと、多くの点で、ロシア人はこれらのサービスを運営するプロダクトチームよりもユーザーをより正確に理解していたことがわかり、不安になります。いずれにしても、そのコストの多くは企業ではなく社会が負担しています。企業はそのモデルの無限のアップサイドから利益を得ているので、企業がコストを負担するのは不合理ではありません。工場で川を汚染するコストを企業が負担するのと同じです。そうすれば、ハンター・ウォークが指摘したように、利益率は下がりますが、社会や言論はより健全になるかもしれません。

ツイッターで人気のある意見とは逆に、これらの企業のリーダーが人文科学の学位を持っていないことが問題なのではありません。しかし、人間がソーシャルキャピタルを追求するようにできていることを無視しても、解決にはなりません。むしろ、このような人間の本質的な側面を見過ごしてきたために、ソーシャルネットワーク第一期の終わりに、どこですべてがおかしくなったのかと悩むことになったのではないでしょうか。もしこれらのネットワークをステータスではなく情報だけを取引する市場と考えるならば、私たちは機械の一部しか見ていないことになります。威嚇の電話は、ずっと家の中からかかってきていたのです。ベン・トンプソンは、技術系エグゼクティブのこのようなナイーブさを「ポリアン的な仮定」と呼んでいます。

私はこれまで複数のプロダクトに携わってきたので、人間との関わり合いを無傷で生き残れるプロダクトはないという事実に共感しています。しかし、StaaSビジネスの最初の時代は終わりつつあり、無知を訴えることは今後も通用しません。そうすると「カサブランカ」のルイ・ルノー船長のようになってしまいます。


Eugeneの他の記事を読む👀

👉 Eugene Wei

フォローして最新情報をチェック!