プロダクトマネージャーの役割とスキル

プロダクトマネージャーについて解説した記事はたくさんありますが、私にとって、たくさんの記事は部分最適に過ぎず、通常、全体像を理解することは難しいものです。そこで、プロダクトマネージャーの役割とスキルに関する記事をリストアップし、全体像がわかるように構成してみました。

最初の部分は、プロダクトマネジャーの役割と責任についてです。2つ目は、プロダクトマネージャーのスキルについてです。

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。

それでは、さっそく始めましょう。


目次

  1. プロダクトマネージャーの役割
  2. プロダクトマネージャー – スキル

*この記事は「Product Manager’s Role and Skills」を翻訳したものです。

著者・翻訳者: 渡辺圭祐


プロダクトマネージャーの役割

プロダクトマネジメント – スタートはここから (Product Management — Start Here)
https://svpg.com/product-management-start-here/
著者: Marty Cagan (@cagan)

優れたプロダクトは、ユーザーや顧客の真の問題を解決し、顧客に愛され、かつ我々のビジネスに役立つ方法で提供されます。

プロダクトマネージャーは、開発されるものが価値あるものであり、かつ実現可能なものであることを確認する役割を担っています。そして、プロダクトディスカバリーとは、ユーザーにとって価値があって、使い勝手がよく、実現可能で、実行可能なソリューションを発見することです。これがプロダクトマネジメントの核心です。

もし、プロダクトの機能をディスカバーする権限がなかったり、プロダクトをアップデートする権限がなければ、あなたがいるのはフィーチャーチームやデリバリーチームということになります。真のプロダクトマネージャーになりたいのであれば、その違いと重要性を理解している企業に転職する必要がありそうです。

プロダクトマネージャーの仕事
https://joshelman.medium.com/a-product-managers-job-63c09a43d0ec
著者: Josh Elman (@joshelman)

プロダクトマネージャーの仕事は、あなたのチーム (そして会社) が正しいプロダクトをユーザーに出荷できるようにすることです。

ソース: A Product Manager’s Job

プロダクトマネジメントとは、価値があって、使えて、実現可能で、実行可能なソリューションを見つけることです。そして、プロダクトマネージャーとは、チームや会社のためになる優先順位の高いことに全時間を費やす人なのです。プロダクトマネージャーは、会社全体の目標と目的を正確に理解し、ビジョンに自分のチームを適合させる方法を理解する必要があります。

1) チームを助ける: 優れたプロダクトマネージャーは、自分のチームにとって最も重要なタスクに全神経を注ぎます。これには基本的に、(a)コーディネーション: チームが明確な目標と焦点を持って計画し、決定を下し、うまく協力していることを確認すること、(b)コミュニケーション: チームが互いに効果的にコミュニケーションをとり、何がいつ起こり、なぜそれが起こっているのか、特に状況が変化する中で理解していることを確認すること、が含まれます。最も優れたプロダクトマネージャーは、チームメンバー全員からインプットを受け、議論を表面化させ、時には結束を断ち切り、選択する際には合意を得る (あるいは最低でも全員が計画にコミットする) 責任を負います。

2) (と会社) : プロダクトマネージャーとして、会社の一般的な目的と目標、そして自分のチームが全体像の中でどのように位置づけられるかを意識する必要があります。そして、チームメンバーが会社にとって必要だと考えるものを提供するのではなく、他のチームと協力しながら会社にとって必要なものを提供し、貢献していると感じてもらわなければなりません。

3) 出荷: 顧客にプロダクトを届けることほど重要なことはありません。優れたプロダクトマネージャーは、完璧に仕上げることと、出荷することの間で微妙なバランスを保たなければならないことを知っています。ゴールと目的が明確で、ユーザーとユーザーに達成してほしいことをよく理解しているチームは、究極のトレードオフを強いられるかもしれません。このタスクを達成するのを助けるのが、優れたプロダクトマネジメントです。

4) 適切なプロダクト: 出荷は重要ですが、優れたプロダクトマネージャーはチームと協力して、プロダクトが適切なものであることを保証します。優れたプロダクトマネージャーは、何が正しいか、何が間違っていると思われるかについて確かな感覚を持っており、また、テスターや他の試用者からの初期の意見に効果的に耳を傾けています。さらに重要なのは、プロダクトが出荷された後、優れたプロダクトマネージャーはそれが正しいプロダクトであるかどうかを評価することができるということです。

5) ユーザーのために: プロダクトを作る上で最も難しいのは、主要なユースケースを表現すること、つまり、誰がなぜそのプロダクトを使うべきかというストーリーを伝えることです。最高のプロダクトマネージャーは、消費者の代弁者として、プロダクトに関するあらゆるやりとりの中で消費者の声を代弁します。そのためには、ターゲットとなる消費者、彼らが抱える問題や困難、そして彼らが求める価値や喜びをどのように提供すべきかを徹底的に把握することが必要です。

プロダクトマネジメントのトライアングル
https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/
著者: Dan Schmidt (@danielfschmidt)

プロダクトマネジメントの責任には、「余白を埋める」ことや、部門を超えたチーム間の「接着剤の役割を果たす」ことが含まれます。正しいプロダクトをユーザーに届けるためには、多くのチームメンバーが関係しているため、それぞれの役割の間にギャップが生じます。

下の図は「プロダクトネットワーク」と呼ばれるもので、ソフトウェアプロダクトのコンテクストの基本的な要素を描いたものです。企業では、プロダクトネットワークに欠落したリンクを意味するホワイトスペースが残ります。もし、それが埋まっていれば、プロダクトネットワークがより良く機能し、より成功したプロダクトにつながります。

プロダクトマネージャーの責任は、プロダクトネットワーク内の4つの領域すべての健全な機能を維持することです。そのため、プロダクトマネージャーは、重要なホワイトスペースを認識し、リンクとして機能するか、それを埋める方法を見つけることによって、これらの重要なリンクを維持する必要があります。そのためには、プロダクトマネージャーは、ウェブ解析やプロジェクトマネジメントなど、プロダクトマネジメントに関連するすべての役割を担うことができなければなりません。

領域Aは、開発者、プロダクト、ユーザーの間に存在するホワイトスペースです。開発者とユーザーでは、プロダクトに関するメンタルモデルが異なります。ユーザーはユーザーインターフェースを通してしかプロダクトを見ることができませんが、開発者はコードを覗き込むことができます。この余白を埋められるのがデザイナーです。

領域Bは、ユーザー、プロダクト、ビジネスの間にあるホワイトスペースです。この領域では、人々がプロダクトを使って見出した価値を、利益に変換していきます。ビジネスモデルに応じて、この領域の複雑さは異なります。

領域Cは、開発者、プロダクト、ビジネスの間に存在します。この領域では、企業のリソースと努力の焦点を決定することができます。

プロダクトマネジメントではないもの
https://svpg.com/what-product-management-is-not/
著者: Josh Elman (@joshelman)

上記の記事で紹介したように、プロダクトマネジメントとは、価値があって、使えて、実現可能なソリューションを発見し、出荷することです。しかし、多くの企業にとって、プロダクトマネジメントという仕事自体が曖昧なものです。だから、プロダクトマネージャーを求める声が多いのですが、求めていることはプロダクトマネージャーの仕事ではないことが多々あります。何がプロダクトマネジャーの仕事ではないのか、リストを一つずつ見ていきましょう。

プロダクトマネジメントはビジネスケースを定義することではない
ビジネスケースを定義するプロダクトマネージャーもいますが、それは実際のプロダクト作りに何ら貢献しません。経営陣が投資の選択をする際に、それを必要とするため、それを行っているだけでしょう。

プロダクトマネジメントは市場要求事項を定義するものではない
多くの企業は、プロダクトマネージャーが市場の要求を決定し、エンジニアがその要件を満たすプロダクトを作ると考えています。しかし、このプロダクトの定義を行う責任者は、個人的にこれらの人々(ユーザー/顧客)と話をしなければなりません。そして、プロダクトマネジメントの目的はプロダクト・マーケット・フィットを見つけることであり、そのためには市場の要求と技術力の両方を十分に把握する必要があります。したがって、プロダクトマネージャーはプロダクト要件と市場要件を別々に考えてはなりません。

プロダクトマネジメントは要件収集ではない
プロダクトマネジャーは、顧客のニーズを通じてプロダクトの要件を文書化するのではありません。真のプロダクト組織は、顧客が解決すべき問題を抱えていることを理解していますが、プロダクトの仕様を指示することはできません。別の言い方をすれば、顧客の要求とプロダクトの要求を混同してはいけないということです。

プロダクトマネジメントはプロジェクトマネジメントではない
企業によっては、プロダクトマネージャーとは、要件を収集・文書化し、構想から出荷までを取りまとめる人だと考えているところもあります。しかし、プロダクトマネジメントがプロジェクトマネジメントと異なるのは、価値ある、使用可能な、実現可能な、解決策を発見する、プロダクトディスカバリープロセスであることです。

プロダクトマネジメントはプロダクトマーケティングではない
人々は、価格設定、プロモーション、ポジショニング、メッセージなどのプロダクトマーケティングや、プロダクトの発売活動を期待しています。しかし、実はこれらはプロダクトマネジャーの仕事ではありません。何度も言いますが、価値があり、使用可能で、実現・実行可能な、ソリューションを発見するのがプロダクトマネージャーの仕事です。

プロダクトマネージャー – スキル

プロダクトマネージャーのスキル(年功序列) – 詳細
https://medium.com/agileinsider/product-manager-skills-by-seniority-level-a-deep-breakdown-cd0690f76d10
著者: Brent Tworetzky (@tworetzky)

XO Groupは、プロダクトマネージャーの6つのスキルエリアを分解しました。

以下は、プロダクトマネージャーのキャリアパスの選択肢を、個人貢献者 (左側) とマネージャー (右側) の場合で示したものです。

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

スキル1:戦略的思考

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

これは、「ますます大きくなる問題やプロダクト領域に対して、社内のソート・リーダーシップを発揮して答えを導き出す能力です。含まれるものは、ブレーンストーミング、思考の構造化、戦略の推進、専門家になること」です。

アソシエイト・プロダクト・マネージャーには、「他者と建設的にブレーンストーミングを行う」スキルが求められます。このレベルでは、より高度な戦略的思考は必要ありませんが、ユーザーへの共感を示すことが必要です。

スキル2:コミュニケーション

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

コミュニケーションは、「より大きな、より高い利害関係のある人々に対して、明確な文章と口頭でのコミュニケーション。この中には、明確なメールを書くこと、直接会って明確にコミュニケーションをとること、文章を書くこと、プレゼンテーションを行うことが含まれる」と説明されています。

コミュニケーションはどのレベルのプロダクトマネージャーにとっても重要ですが、レベルが上がれば上がるほど、グループミーティングや、プレゼンテーションのスキルが必要となります。

スキル3: コラボレーション

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

コラボレーションは、「チーム内外で、より多くのファシリテーションを行い、物事を成し遂げることができるようになります。含まれるもの: 会議への積極的な参加、会議の主導、班のプロセスの運営、他のチームとの問題解決、適切に対立を回避させること」と説明されています。

上位のプロダクトマネージャーには、組織内の幹部や幅広いチームと連携し、リードやファシリテーションを行うスキルが求められます。

スキル4:テクニカル

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

テクニカルスキルとは、「プロダクトマネジメントとパートナー機能 (エンジニアリング、デザイン) のツールを使い、チーム全体でうまく連携することです。含まれるものは、ストーリーを書くこと、分析すること、プロトタイプの構築・実行、SEOの理解」です。

テクニカルスキルはプロダクトマネージャーにとって重要であり、ミドルレベルのプロダクトマネージャーであってもプロトタイプをうまく構築することが求められます。

スキル5:詳細と品質

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

これは、「拡大するスコープの中で結果を出し、ミスをキャッチする。ユースケースを含む明確な仕様書の作成、大小のプロダクトを期限内にバグの少ない状態で出荷すること、障害に対処するための選択肢を操り、成果を上げることが含まれます。」です

アソシエイトプロダクトマネージャーの場合、担当するのはプロダクトの小さな領域ですが、機能の仕様書を書き、それを出荷するスキルが求められます。

スキル6:ユーザーサイエンスと共感

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

ユーザーサイエンスと共感は、「ユーザーをより理解し、ユーザーのニーズや行動にプロダクトを適合させるため、ユーザーサイエンスのツールキットを習得する。含まれるのは、調査、インタビュー、プロトタイピング、A/Bテスト、分析ツールをきちんと実行できること、異なるユーザータイプとそのニーズを理解し表現すること、ユーザーサイエンスをインサイトに統合すること」です。

表の一番上にあるように、ユーザーへの共感がプロダクトマネージャーの基本であることが理解できます。

スキル7:マネジメント

ソース: Product Manager Skills by Seniority Level — A Deep Breakdown

マネジメントは「人と組織をうまく成長させることです。含まれるものは、メンタリング、マネジメント、チームの成長、組織の成長」です。

アソシエイトマネージャーやプロダクトマネージャーの場合、デザイナーやエンジニアなどのチームメンバーがプロダクトマネージャーの下で働くことはないため、このスキルは必要ありません。しかし、シニアプロダクトマネージャーであれば、他のジュニアプロダクトマネージャーを指導する必要があります。

プロダクトマネージャーとテクニカルスキル…ディールについて
https://productschool.com/blog/product-management-2/technical-skills-product-managers/
著者: Product School (@productschool)

プロダクトマネジャーになるには、実は技術的なスキルは必要ありません。調べてみると、そのようなスキルは必要ないと安心させる記事や資料がたくさん見つかるでしょう。しかし、新任のプロダクトマネージャーはテクニカルスキルがないことを恐れているのです。もちろん、テクニカルスキルがあるに越したことはありません。核となるテクニカルスキルは、コーディングとプログラミングになります。基本的なスキルは以下です。

• コーディング・プログラミングの知識:  HTML、CSS、Javascript、C+、Pythonなど
• SQL: データの管理・操作に活用
• データ構造とアルゴリズム

プロダクトマネジメントは、デザイン、ビジネス、テクノロジーの間に存在します。この3つのうち1つでも長けていて、他の2つを学ぶ意欲があれば、プロダクトマネージャーを目指す上で大きなプラスになるはずです。以下は、Product Schoolのプロダクトマネージャーの技術力に関するQ&Aです。

Q: プロダクトマネージャーは技術系出身でなければならないのでしょうか?
A: いいえ。すべての道はプロダクトに通じており、最強の開発チームにはあらゆる経歴を持つプロフェッショナルがいます。

Q: プロダクトマネージャーの役割には、技術的な要件があるものもあるのでしょうか。
A: はい。一部の職務では、CSの学位や、職務に必要なテクニカルスキルの実証的な知識が必要とされます。

Q: プロダクトマネージャーはコードを書く必要がありますか?
A: 理解しているに越したことはありませんが、あなたの仕事はソフトウェア開発者ではありません。テクニカルプロダクトマネージャーには、もちろんコードの知識が求められます。

Q: では、プロダクトマネジャーになるために大学に戻ってCSの学位を取得する必要はないのでしょうか?
A: いいえ。CSの学位を必要とする職種のほとんどは、そうでない類似の職種があります。例えば、Googleのあるチームはプロダクト・マネージャーに技術的なバックグラウンドを求めますが、そうでないチームもあります。

Q&Aにあるように、プロダクトマネージャーにとって技術的なスキルは必ずしも必要なものではありません。プロダクトマネージャーとテクニカルスキルの関係は、プロダクトマネージャーとデザインスキルの関係にも似ています。プロダクトマネージャーは、実際のデザイン作業を行うわけではありませんが、デザイナーと協力して、デザインが必要なプロダクトを管理・実現することになります。デザインに対する理解が深ければ、その貢献度はより高いものになるでしょう。

プロダクトマネージャーの重要な特徴のひとつに、「好奇心」があります。好奇心は、テクニカルの世界での成功へとあなたを導きます。

技術力を一から身につけるなら以下が参考になります。

• CS50: コンピュータサイエンスの基礎を学べます。ハーバード大学が提供する無料のオンラインコースです。
• Codecademy: 入門するには、このコースの受講がおすすめです。さまざまな学習パスやプロジェクトが無料で提供されています。


優れたプロダクトマネジャーになるために必要なこと
https://hbr.org/2017/12/what-it-takes-to-become-a-great-product-manager
著者: Julia Austin (@austinfish)

プロダクトマネージャーを目指す場合、その役割を評価する上で、「コアコンピテンシー」「EQ (感情知能)」「会社への適合性」という3つの大きな要素について考える必要があります。

コア・コンピテンシー: すべてのPMが持っていなければならないコア・コンピテンシーは以下のものです。

• 顧客インタビューとユーザーテストの実施
• デザインスプリントの実施
• 機能の優先順位付けとロードマップの計画
• リソース配分の技術 (科学ではありません!)
• マーケットアセスメントの実施
• ビジネス要件と技術要件、またはその逆の変換
• 価格設定と収益のモデル化
• 成功指標の定義と追跡

優れたプロダクトマネージャーは、長年にわたってプロダクトを定義し、出荷し、反復することで、これらのスキルを磨き続けています。

エモーショナルインテリジェンス(EQ): インタビューにおいて、一流のPMは顧客に共感し、彼らのボディランゲージや感情を察知し、そのプロダクトや機能が解決すべき苦悩を推し量ることができます。ダニエル・ゴールマンは、EQの4つの主要な特徴を定義しました。次に、それらがPMの役割とどのように関連しているかを見てみましょう。

1. リレーションシップ・マネジメント: 成功するPMの最も重要な特性の1つです。優れたPMは、社内外のステークホルダーと誠実で信頼できる関係を築くことで、人々のモチベーションを高め、その潜在能力を最大限に発揮できるようにします。

2. 自己認識: 公平であり続け、自分の個人的な好みをプロダクトに投影することを避けるために、PMは自己認識を持っている必要があります。自己認識が欠けていると、他の本質的な目標が頓挫したり、機能が十分に評価されない場合にエンジニアとの関係が悪化し、PMへの信頼が失われる可能性があります。

3. 自己管理: 最高のプロダクトマネージャーは、緊急性がある中でも恐怖やストレスを感じることなく、正しい優先順位で積極的に物事を進めていく方法を知っています。また、一歩下がって立て直しを図るタイミングも心得ています。

4. 社会的認識: プロダクトマネージャーは、共感、組織意識、そしてサービスという社会的な意識を持つべきです。プロダクトマネージャーは、顧客のプロダクトに対する気持ちや悩み、営業チームの売り方に対する悩み、サポートチームのサポートに対する悩み、エンジニアリングチームの開発に対する悩みを理解しなければなりません。このような社会的な認識を持つことで、優れたプロダクトマネジャーは、顧客のやるべき仕事を処理するプロダクトを提供することができ、それがプロダクト・マーケット・フィットにつながります。

企業フィット: コアコンピテンシーと高いEQだけでなく、企業との適合性もプロダクトマネージャーのキャリアを成功に導きます。企業のタイプによってプロダクトマネジャーに求められるものは異なります。

1. PMがエンジニアリングを推進する(企業): PMはニーズを収集し、古典的なプロダクト要件書を作成し、それをエンジニアリングに渡して、技術要件を仕様化する「壁越し」手法をとります。

2. エンジニアリングがプロダクトを動かす: エンジニアはその分野の技術を発展させ、PMはソリューションのテストやフロントエンドのアクセスポイント (UI、API) の設計などを行う、より技術的にフォーカスしたプロダクト企業 (クラウド、ビッグデータ、ネットワーク) ではこのスタイルになります。

PMとエンジニアリングのパートナーシップ: このような状況では、PMとエンジニアリングは、相互に発見し、意思決定し、責任を共有する、強い陰陽の関係を持っています。エンジニアはPMと一緒に顧客インタビューに参加し、PMはスプリントミーティングに参加してタスクのブロック解除や要件の説明をサポートします。

また、会社のステージや役員との関係によって、プロダクトマネージャーの役割も以下のように異なります。

スタートアップ: プロダクトマネージャーは、プロダクトの発見、定義、出荷だけでなく、プロダクトの価格、マーケティング、サポート、そして販売まで担当することがあります。プロダクト・マーケット・フィットを目指し、規模に応じた機能を身につけるため、プロダクトマネージャーはスクラップ的な雰囲気の中で成長し、あいまいさや頻繁な方向転換にも対応できる必要があります。

長所: PMは企業戦略に関与する可能性が高く、シニアリーダーや取締役会にアクセスでき、より大きなリスクと影響力を行使することができます。また、会社のリソースに対してより大きなパワーとコントロールを持つことができます。

短所: 組織内には通常、メンターやロールモデル、ベストプラクティスがほとんど存在しません。予算が限られていることが多く、プロダクトマネージャーは与えられた仕事をこなすのに必要な経験が不足していることがあります。

成熟した企業: PMの役割はより限定的になり、価格設定や市場参入戦略などを担当する社員がいる場合があります。プロダクトマネージャーは、より広範なプロダクトマネジメントチームの一員となることがほとんどでしょう。

• 長所: メンターやロールモデル、開発標準やベストプラクティスがPMに提 供される可能性が高くなります。

• 短所: PMは企業戦略に対する理解が浅く、消費者の声の一つに過ぎません。PMは企業戦略への理解が浅く、消費者の声の一つに過ぎないため、政治的・経済的な制約を受ける可能性があります。


創業者/CTO/CEOとPMの関係: 
創業者/CEO/CTOがプロダクト開発プロセスにどれだけ積極的であるかを知ることは、特に初期段階の組織では非常に重要です。創業者・CEO・CTOが非常に積極的であれば、PMの役割は自らアイデアを出し、それを押し進めるというより、創業者等のアイデアを具体化する手助けや顧客とコンセプトを確認するといったサポート的なものになるかもしれません。

長所: 創業者やチーフレベル役員と一緒にプロダクトイノベーションに取り組むのが好きな人にとっては、とても楽しい仕事となります。

短所: プロダクトの方向性をより大きくコントロールしたいPMにとっては、フラストレーションがたまるかもしれません。また、より技術的な創業者やチーフレベルの人々がエンジニアと直接仕事をすることを好む場合、PMにとっては仲間外れになるなど、困難が伴います。

この記事が、プロダクトマネージャーの役割とスキルの全体像を理解する一助となれば幸いです。何か質問があれば、TwitterLinkedInでDMをください。

次に何をすべきか覚えているでしょうか?

この記事や添付されているプロダクトマネジメントの記事をただ読んで終わりにするのではなく、共感したところをハイライトして、感想や学びをGlaspに残しておきましょう。そうすれば、いつでも見返すことができ、私たち皆が同時に学習することができます。

それでは、また次回お会いしましょう。

Kei


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クリプトとNFT: Web3におけるネットワーク効果

クリプトとNFTを活用したWeb3プロジェクトは、複数の種類のネットワーク効果を組み合わせているが、それらのネットワーク効果も比較的弱い…少なくとも今のところ。


▼本記事の内容
  1. イーサリアム: レイヤー1 プロトコル
  2. アクシー・インフィニティ プレイ・トゥー・アーンのNFTゲーム
  3. 結論

*この記事は「Crypto & NFTs: Network Effects in Web3」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Sameer Singh
翻訳者: 渡辺圭祐


Web3は、2021年の技術トレンドを決定付けるものとなっており、その中心はネットワーク効果です。まず、文脈を整理することから始めましょう。

• Web 1.0は、ユーザーがオンラインで情報にアクセスできる「読み取り専用」のインターネットの段階でした (例: Yahoo, Googleなど)。

• Web 2.0は、ユーザーが情報にアクセスするだけでなく、それを作成することもできる「読み書き」の段階への移行でした (例: Facebook、Wikipedia)。この時代の価値創造は、企業からユーザーへと移行しましたが、依然として企業が所有・運営する閉じたネットワークの中で行われていました。

Web3はインターネットの次のフェーズで、ユーザーによって所有・運営される分散型ネットワーク上で価値創造が行われることを意味しています。これは、暗号プロトコルやNFTを含む様々な補完的イノベーションによって実現されています。

この記事の目的は、Web3の可能性や技術的な複雑さを解明することではなく、この時代におけるネットワーク効果の本質に焦点を当てたいと思います。

これまで、私は様々なWeb3プロジェクトにおいて、4つのユニークなネットワーク効果モデルのうち3つ(マーケットプレイスインタラクションネットワークプラットフォーム)に出会ってきました。これらのWeb3モデルには、いくつかの共通した特徴があります。

1. ネットワーク効果はネイティブにレイヤー化されており、どのプロジェクトでも複数の形態のネットワーク効果が組み合わされています。
2. また、そのネットワーク効果は、少なくともこれまでのところWeb 2.0の亜種と比べると弱く、防御力に欠けます。

これらのパターンについて、2つのケーススタディ (イーサリアムアクシー・インフィニティ) を使って説明します。それらはまた、そのネットワーク効果がより広いWeb3の背景と多くの特性を共有しているため、代表的な例です。

イーサリアム: レイヤー1 プロトコル

イーサリアムはしばしばレイヤー1プロトコル(大文字の「L」)と呼ばれます。つまり、他のプロジェクトが作成される際の基盤となるブロックチェーンの「コンピュータ」です。上のアニメーションは、イーサリアムにおける3つの異なるタイプのネットワーク効果を示しています。それらをより深く見てみましょう。

ネットワーク効果1:イーサリアムのブロックチェーンとイーサトークン(インタラクションネットワーク)

イーサリアムのブロックチェーンは、基本的に相互に接続されたコンピュータまたはノードのネットワークです。これらのノードはトランザクションを検証し、その努力の報酬として新しいイーサトークンを「造幣」します。ノードの追加により、プロトコルのスループットまたは容量が増加し、より多くのトークン取引と開発者の活動をサポートできるようになります。一見すると、これは単純で一方的なネットワーク効果に見えます。しかし、これは見た目よりも微妙なものです。なぜなら、より多くのノードが追加されても、他のノードのプロトコルの価値が上がるわけではないからです。むしろ他のノードにとっては、取引を検証して新しいトークンを鋳造するための競争が激しくなるため、価値が下がるのです。しかし、ノードが増えることで、イーサトークンの買い手にとっては容量が増え、その分価値が上がります。トークンの買い手が増えればイーサトークンの価値が上がり、その結果、ノードがトランザクションを検証する価値が高まります。言い換えれば、これらは2サイドのインタラクションネットワークにおけるクロスサイドネットワーク効果であり、サイドスイッチングが組み込まれています (トークン購入者はバリデーターにもなり得ますし、その逆もしかりです) 。

しかし、このネットワーク構造は、いくつかの課題も生み出しています。(1) 独特の負のネットワーク効果、(2) コモディティ化リスクです。まず、負のネットワーク効果について掘り下げましょう。イーサリアムやその他の暗号プロトコルは、ネットワーク輻輳のリスクに直面しています。つまり、アクティビティが多すぎるとプロトコルのキャパシティを圧迫し、取引手数料や処理時間の高騰につながる可能性があります。そのため、ある点を超えると、あるトークン購入者の追加は、他のすべてのトークン購入者のネットワークの価値を低下させます。このような負のネットワーク効果は、Web 2.0プロダクトには存在しません。これは暗号と電話やブロードバンドのような物理的ネットワークに特有のもので、トラフィックが多すぎると速度やサービス品質が低下してしまうのです。

2つ目の課題はコモディティ化リスクです。これは、ブロックチェーンがIDに依存しない、つまり各ノードのIDが他のノードやトークン購入者にとって重要でないことが一因です。そのため、新しいノードが増えるたびに、ネットワークへの付加価値が減少していきます。これをオリジナルの電話網のネットワーク効果と比較してみましょう。ブロックチェーンプロトコルとは異なり、電話ネットワークはアイデンティティに焦点を当てたものでした。つまり、特定の人が電話を持っていない場合、他の人が持っていても、その人と連絡を取ることはできませんでした。つまり、電話網のユーティリティは普及が進むにつれて、電話できる特定の個人の数が増えるにつれて、成長し続けたのです。これに対し、ブロックチェーンのインタラクションネットワークのネットワーク効果は、その規模が大きくなるにつれて弱まり、防御力が低下します。競合するブロックチェーンプロトコルは、単に取引量や活動量に対して「十分に大きく」なれば、競争することができます。そのため、競合するブロックチェーンプロトコルとトークンが乱立することになったのです。

ネットワーク効果2: イーサリアムのスマートコントラクト(プラットフォーム)

スマートコントラクトや分散型アプリ (DAppsまたは「レイヤー2」) を作成・実行する機能は、イーサリアムのプロトコルの要となるものです。DAppsはブロックチェーンの上に作成されたプログラムで、あらかじめ指定された条件に基づいて自動的に実行されます。エンドユーザーはこのDAppsと対話・取引するためにイーサトークンを取得する必要があります。その結果、イーサリアムのプロトコルにDApp開発者が加わることで、買い手にとってのイーサトークンの価値が高まります。これは、プラットフォームの特性を多く持っていますが、いくつかの重要な違いがあります。

第一に、Web 2.0プラットフォーム (iPhone、Salesforce、Shopifyなど) に見られる「マッチング」(または「アプリストア」) 要素がありません。これは、Web3がオープンなアーキテクチャを重視しているため、設計上そうなっています。しかし、これではユーザーが適切なDAppを見つけることが難しくなり、ネットワーク効果を弱める可能性があります。もちろん、サードパーティのアプリストアが時間をかけてこれを補うことは可能です。

第二に、ここにはイーサトークン以外の基礎的なプロダクトが存在しません。プラットフォームは通常、ユーザーがプラットフォームと一緒に関与する基礎的なプロダクトを持っています。この基礎となるプロダクトは、プラットフォームによって生み出される価値のほとんどを獲得することになります。例えば、iPhoneは、iOSアプリストアの最大の経済的利益を享受しています。アプリストア (プラットフォーム) に開発者が加わることで、ユーザーにとってiPhone (基礎プロダクト) の価値が高まったのです。しかし、イーサリアムの場合、開発者の追加は、買い手にとってイーサトークンの価値を高めるだけです (参照:Fat protocols)。イーサトークンは流動的でスイッチングコストがゼロであるため、ユーザーはいつでもそれを売却して別のトークンを購入し、別のブロックチェーン (例:ソラナ) 上に構築されたDAppsにアクセスできるため、これは防御力に直接影響を及ぼします。あなたがiPhoneをAndroid携帯、Windows携帯、Blackberryに数回タップするだけで変えることができ、それぞれの開発者のエコシステムにアクセスできると想像してください。もしそうだとしたら、iPhoneのプラットフォームネットワーク効果は、たとえそれが開発者によるより迅速なイノベーションにつながったとしても、意味のある防御の形ではなくなります。これがレイヤー1ブロックチェーン・プロトコルの才能であり、呪いでもあるのです。

この2つの要因によって、ビットコインやイーサリアムを超えて、カルダノからソラナなど、新しいレイヤー1ブロックチェーン・プロトコルの波が押し寄せているのです。

ネットワーク効果3: 構築可能性 (インタラクションネットワーク)

これは、レイヤー1プロトコルに防御力が無いということではありません。レイヤー1プロトコルは、開発者側のスイッチング・コストの恩恵を受けることができます。これは、スマートコントラクトの構築可能性、つまり開発者が既存のスマートコントラクトのコンポーネントを「リミックス」して新しいスマートコントラクトを作成できることに大きく起因しています。これは、TikTokのクリエイターが他の動画をリミックスして新しい動画を作成することと類似している部分があります。これは、プラットフォームの上に重ねられた別のネットワーク効果 (インタラクションネットワーク) と考えてください。あるプロトコルのスマートコントラクトが多ければ多いほど、開発者が新しいものを作るのは容易になります。しかし、クロスチェーンの構築可能性、つまりプロトコルをまたいで構築されたスマートコントラクトの構築可能性は、防御力への影響を希薄にする可能性があります。

ここで、イーサリアムや他のレイヤー1プロトコルの上に構築された実際の例であるDAppsに話が及びます。これらの多くはNFTを利用しており、簡単に言えば、ユニークなデジタル資産 (例えば、コレクションカード) と考えることができます。LootBored Ape Yacht ClubCryptoPunksのように、魅力的なコミュニティと行動を生み出しているものもあります。しかし、その価値や有用性がまだ不明確であるため、彼らのネットワーク効果を分類することは困難です。これは技術サイクルの初期段階では珍しいことではなく、実験することと伝道することが常に実用性に先行しています。他のタイプのDAppsはすでに明確なネットワーク効果を持っています。例えば、プレイ・トゥ・アーンのゲーム、つまりプレイヤーが遊ぶことによってトークンを獲得できるゲームです。その中で最も顕著なものを見てみましょう。

アクシー・インフィニティ プレイ・トゥー・アーンのNFTゲーム

アクシー・インフィニティは、2021年11月現在、月間プレイヤー数が220万人を超える最大のP2E (Play to Earn) ゲームです。上のアニメーションでご覧いただけるように、アクシー・インフィニティは4つの異なるネットワーク効果を兼ね備えています。

ネットワーク効果1:P2Eゲーム (インタラクションネットワーク)

このゲームはポケモンと似ているところがあり、プレイヤーはアクシーと呼ばれる生き物を育成し、バトルし、トレードできます。各アクシィは様々な属性とタイプを持っており、他のタイプに対して効果があったりなかったりします。プレイヤーは、バトルやその他のゲーム内のチャレンジに勝つと、報酬としてスムーズラブポーション (SLP) トークンを獲得します。このトークンを取引したり、売却することで、プレイヤーの収入源とすることができ、これが本作の「稼ぐ」要素です。

もちろん、これはマルチプレイヤーゲームなので、『Minecraft』や『Fortnite』のようなインタラクションネットワークになります利用者数が高ければ、他のプレイヤーとの発見、バトル、トレードの機会も多くなります。そのため、収入を得る能力も利用率に関係しています。ただし、これもアイデンティティにとらわれないもので、各プレイヤーのアイデンティティは重要ではありません。そのため、プレイヤーの利用率が上がっても、ゲームのユーティリティや稼ぐ力はある一定以上には上がりません。これは、このネットワーク効果の防御力に直接的かつマイナスの影響を及ぼします。

実際、初期のデータでは、プレイヤーの普及が進むとネットワークの混雑が生じ、稼ぐポテンシャルが低下する、つまり負のネットワーク効果が生じていることが指摘されています。これは、他のP2Eゲームにプレイヤーを奪わせ、競争させる絶好の機会を与えることになります。ですから、Splinterlands のような代替 P2E プロジェクトが人気を博していることは、驚くことではありません。Illuvium や Blankos Block Party のような今後登場するプロジェクトも、強い関心を集めています。

ネットワーク効果2: アクシー・マーケットプレイス (マーケットプレイス)

アクシー・マーケットプレイスは、アクシー・インフィニティのネットワーク効果の第2レイヤーとなるものです。この名前は一目瞭然で、プレイヤーがアクシー (およびその他のゲーム内アイテム) を売買するためのマーケットプレイスです。これは、サイドスイッチのあるWeb 2.0のマーケットプレイス (例: Poshmark) と劇的に異なるものではありません。その結果、マーケットプレイスのネットワーク効果は、ゲームのインタラクションネットワーク効果を強化することになります。プレイヤーはより多くのアクシーを繁殖させ、ゲーム内アイテムの多様性を高め、ゲームの価値と魅力を高めるのです。

注意すべき点は、アクシーはNFTであるということです。つまり、プレイヤーが自分のアクシーをOpenseaのような他のNFTマーケットプレイス (それ自体が強力なネットワーク効果を持つWeb 2.0スタイルのマーケットプレイス)で販売することを妨げるものは何もないのです。しかし、それぞれのアクシーはユニークな属性を持っており、アクシーの供給は非常に多様です。また、アクシー・マーケットプレイスはゲームと統合されているため、Openseaのようなサードパーティマーケットプレイスと比較して、ユニークなアクシーやゲーム内アイテムの「ロングテール」を集約することがはるかに容易です。その結果、2021年11月現在、アクシー・マーケットプレイスの取引者数はOpenseaの40%増となっています。

供給の差別化のおかげで、アクシー・インフィニティのマーケットプレイスを構成している要素は高い防御力を持ち、すなわちアクシー・マーケットプレイスはゲーム内アイテムの購入先であり続ける可能性が高いです。ただし、マーケットプレイスは、プレイヤーが他のP2Eゲームに移行するのを防ぐことはできないため、ゲームのエンゲージメントを維持するという防御力があることになります。

ネットワーク効果3:DAO(インタラクション・ネットワーク)

アクシー・インフィニティは、もともとスカイメイビスチームによって作られたものです。しかし、スカイメイビスはAxie Infinity Shards (AXS) という別のトークンの助けを借りて、アクシー・インフィニティのガバナンスをDAO (分散型自立組織) に移管することを目指しています。アトミコエンジェル (Atomico Angel) の仲間サラ・ドリンクウォーターはDAOを「目標とお金を共有したグループチャット」と表現していますが、これは正確な要約です。簡単に説明すると、AXSトークンの保有者は、アクシー・インフィニティ・プロジェクトの将来のロードマップを管理し投票するグループ (またはDAO) の一員となり、本質的に分散型経営陣の役割を担うことになるのです。

これはまた別の形のインタラクションネットワークであり、アイデンティティが防御力に影響します。この場合、ユーザーのアイデンティティの重要性はネットワークの規模に依存します。DAOの初期段階では、すべての参加者がお互いを知っており、信頼しているため、アイデンティティが重要になります。ユーザーが加わることで、視点の多様性が増し、アクシー・インフィニティ・プロジェクトへの影響も大きくなります。しかし、より多くの人がAXSトークンを取得し、エコシステムに参入することで、DAOは一握りの参加者から数千人以上に拡大することが可能です。スケールすると、AXS保有者の追加が、それ以上の価値をプロジェクトに与えることはなくなります。つまり、ネットワーク効果の価値は時間とともに平坦化または漸近化し、防御力が低下します。

しかし、DAOには他の利点もあります。オーナーシップとプロジェクトの将来について投票できるため、別の形の防衛力を導入できるのです。つまり、プロジェクト/コミュニティの成功 (および他者の失敗) に対する感情的な愛着や部族的な忠誠心です。これはネットワーク効果というよりも、心理的なスイッチングコストです。しかし、この場合、ネットワーク効果そのものよりも意味のある防衛力の一形態となる可能性があります。

ネットワーク効果4:アクシー・インフィニティ奨学金プログラム(プラットフォーム)

アクシー・インフィニティの最後のネットワーク効果レイヤーは、アクシー・インフィニティが生み出したエコシステムと関連しています。アクシー・インフィニティをプレイするためには、プレイヤーはアクシー・マーケットプレイスから3つのアクシーを購入する必要があり、最も安いものでも約200ドルかかります。これは、多くのプレイヤー、特に新興国のプレイヤーにとって大きな投資となります。この参入障壁を低くするために、アクシーを志望者に「レンタル」する「奨学金」プログラムが登場しました。奨学生がゲームから得た収益の一部を奨学金制度に提供する仕組みで、学生ローンとあまり変わりません。奨学金制度が増えれば、「アクシー・インフィニティ」は新たなプレイヤーにとって身近な存在になります。また、「アクシー・インフィニティ」を利用したい人が増えれば、奨学金制度の市場ポテンシャルが高まります。これは、アクシー・インフィニティを基軸としたプラットフォームとしての性格を持ちます。しかし、これはアクシー・インフィニティに限ったことではありません。これらのプログラムの多くは、Yield Guild Gamesのように、その後、The Sandboxのような他のP2Eゲームに拡張されています。それらのように、ここでのネットワーク効果は弱いままであり、持続的な防衛力の源泉とはなっていません。

結論

これらのケーススタディは、魅力的なクリプトとWeb3プロジェクトの多様なリストの中の2つに過ぎません。しかし、これらのネットワーク効果のパターンの多くは、Web3全体でも見られます。つまり、ネイティブにレイヤー化されたネットワーク効果で、防御力が比較的弱いのです。このことから、私は2つの予備的な仮説を立てました。

1つ目の可能性は、この時代、真のネットワーク効果はもはや構造的な防御力のソースとしては意味をなさないということです。その代わり、防御力は各プロジェクトコミュニティの部族的・心理的なスイッチングコストに依存することになります。この可能性は無視できませんが、私は懐疑的です。心理的なスイッチングコストは現実のものですが、この説明では、この時代にまだ起こっていないイノベーションの量をごまかすことになります。また、アクシー・マーケットプレイスやOpenseaは、たとえそれが今のところWeb 2.0を彷彿とさせるとしても、強力なネットワーク効果がまだ可能であることを示しています。

2つ目の可能性は、持続可能な防御性が現れるには、Web3のサイクルではまだ早すぎるということです。Web 1.0の初期の頃のYahooやWeb 2.0のMyspaceと似ていますね。言い換えれば、ほとんどのプロジェクトはまだWeb3の機能を試している段階であり、長期的な勝者 (より強力で防御可能なネットワーク効果) は、この実験段階の後にしか現れないでしょう。これが私の結論です。

もし、2つ目が最も可能性の高い説明であるならば、今後のWeb3プロジェクトにおけるネットワーク効果を評価するための幅広いフレームワークが必要です。ネットワーク効果には確かに面白いニュアンスがありますが、それを定義する基本的な問いは変わりません。

  • インタラクション: ユーザーはどのように他者と交流しているのか?
  • ネットワーク効果: あるユーザが加わることで、すべてのユーザの価値が向上するか?
  • スケーラビリティ (拡張性): 新しいユーザーはどのような形で価値に影響を与えるか?何か制限はあるか?
  • 防御性: 利用が進むにつれて、どのように変化するか?

これらの質問は、Web3プロジェクトの可能性を評価する上で非常に重要です。Web3の能力とより強力なネットワーク効果レイヤーを組み合わせたものが、この時代の最大の勝者になる可能性があります。

謝辞 サラ・ドリンクウォーターカイル・トレイジ
この記事についてご意見をいただきました。


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TikTokと組分け帽子(TikTokのアルゴリズムとインタレストグラフの構築)

私はよく自分のことを文化的決定論者と表現しますが、これは他の支配的な世界観を持つ人々と区別するための手段であり、厳密な信奉者ではありません。というよりも、多くの場合、人々が文化以外のものに因果関係のある力を与えようとするとき、私はすぐに疑ってしまうのです。


*この記事は、「TikTok and the Sorting Hat」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Eugene Wei
翻訳者: 渡辺圭祐


2010年代は、中国のコンシューマーテック業界を追う上で興味深い時期でした。私は2011年にHuluを退社しましたが、サテライトオフィスであるHulu北京オフィスのチームとは今でも連絡を取り合っています。2011年に最後にHulu北京オフィスを訪れたとき、私は中国の新しいハイテク企業が米国マーケットに進出することはないだろうと思っていました。

米国には強力な既存企業があるし、中国のハイテク企業はまだ発展途上であるというだけではなかったのです。私の初期の仮説は、私が「文化的無知のベール」と呼んでいるものが、あまりにも不可解な障壁であるというものでした。つまり、WEIRD (Joseph Henrichの略語で、Western、Educated、Industrialized、Rich、Democraticの頭文字) ではない国の企業は、WEIRDな文化に進出するのに苦労するだろうと。私はその逆、つまり米国企業が中国やインドで競争することにも懐疑的でした。2つの国の間の文化的な距離が長ければ長いほど、一方の国の企業が他方の国で競争するのはより困難になるでしょう。それを克服するには、現地のリーダーシップチームを雇うか、その国の文化を熟知した人材を米国から送り込むことが必要だと考えられました。

ほとんどの場合、それは正しいのです。WeChatは米国に進出しようとしましたが、中国の友人や家族、仕事仲間とのコミュニケーションにこのアプリを使っていた中国系米国人を取り込むことしかできませんでした。

逆に言えば、米国は中国に大きな影響を与えていないということになります。グレートファイアウォールが多くの米国企業を中国マーケットから締め出すのに大きな役割を果たしたのは明らかですが、Uber Chinaのように米国企業が中国のマーケットに参入した数少ないケースでは、その結果はまちまちでした。

そのため、私はTikTokに魅了されています。2020年、私を含む多くの人々にとって、TikTokは最も面白いショート動画アプリです。米国政府は国家安全保障上のリスクとしてTikTokを禁止することを検討しています。それは今、誰もが知っている話題ですが、私はTikTokがどのようにして中国以外のマーケット、特に強力な既存企業が存在する米国で足場を固めたのかを追跡することに興味があります。

人は失敗から最も多くを学ぶと言われますが、それと同じように、私は例外から自分のメンタルモデルについて最も多くを学びます。上海の二人の男がデザインしたアプリが、YouTube、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットといった米国の動画アプリを追い回し、それが作られた文化とは全く異なる文化の中で、ミームの発生、変異、拡散の最も肥沃な源となったのはなぜでしょうか?

その答えは、国境を越えた技術競争の将来や、プロダクト開発者がどのようにプロダクト・マーケット・フィットを達成するかを理解する上で、重要な意味を持つと私は考えています。TikTokの台頭は、私の考えを一新しました。いくつかのカテゴリーでは、機械学習アルゴリズムの応答性と精度が高ければ、文化的な無知のベールを突き破ることができることがわかりました。今日では、文化が抽象化されることもあります。

TikTokの物語は、2014年、上海から始まります。Alex ZhuとLuyu “Louis” Yangは、教育用の短編動画アプリを立ち上げていましたが、全く人気がありませんでした。彼らは、口パクのミュージック動画に軸足を移すことを決め、米国と中国でMusical.lyを立ち上げました。皮肉なことに、このアプリは太平洋を越えてからの方が人気が出たため、彼らは自国である中国での取り組みをやめ、アメリカのマーケットに力を注ぎました。

初期のユーザー層は、アメリカの10代の女の子が中心でした。人気曲の公式バージョンに合わせて口パクをし、その動画を視聴者に配信して社会的なフィードバックを得ることができるアプリがついに登場したのです。

このアプリが人気を博したことは進歩的でした。しかし、このアプリには、アレックスとルイス、そして彼らのチームに問題がありました。アメリカのティーンエイジャーの女の子たちは、アレックスとルイスが本当に理解している視聴者ではありませんでした[1]。

[1] 公平に言えば、ほとんどのアメリカの親たちは、自分たちがティーンエイジャーの娘を理解していないと言うでしょう。

中国とアメリカの技術背景が重なり合っているこの時代、中国のマーケットはグレートファイアウォールのために、アメリカのテック企業にとってほとんど理解できないものでした。しかし、その逆に、アメリカは中国企業にとって、アメリカの文化的なファイヤーウォールともいえるもののために、ほとんど侵入できない状況にあります。ドローンのDJIを除けば[2]、Musical.ly以前に米国で本格的に進出した中国製アプリは思いつきません。初期の牽引力を高めるために、Musical.lyはこの文化的障壁を乗り越えなければなりません。

[2] DJIがアメリカで成功した理由の一つは、ドローンのオペレーションインターフェースが、標準的なオペレーションインターフェースを多用しており、文化的に特異なものではなかったということです。

「顧客の要望を聞けば、より速い馬を求めるだろう」と言われてきました (ヘンリー・フォードの言葉ですが、本当ではないかもしれない)。率直に言って、これは半分馬の言葉です。まず、お客さまが騎手だったらどうでしょう?

第二に、顧客の声だけに耳を傾けることはできませんが、顧客の声に耳を傾けることは堅実なSaaSビジネスを構築するための確実な方法であり、 コンシューマー分野であっても有用なシグナルを提供してくれます。以前にも書きましたが、顧客は「もっと速い馬が欲しい」と言うかもしれません。あなたが聞くべきことは、 馬にステロイドを注射することではなく、顧客の現在の移動手段である馬が遅すぎると感じているということです。

アレックスとルイスは、Musical.lyのアーリーアダプターの声に耳を傾けました。このアプリではフィードバックチャンネルを簡単に見つけることができました。また、このアプリを毎日使っているアメリカの10代の女の子たちは動画作成を簡単にするために何が必要かを積極的に話してくれました。彼女たちはプロダクトリクエストを大量に送り、Musical.lyチームのプロダクトロードマップの作成に貢献しました。また、透かしの入った動画を簡単にダウンロードして、YouTube、フェイスブック、インスタグラムなど他のネットワークで配信できるようにするなど、巧妙なグロースハックと相まって、ターゲットマーケットでうなぎ上りの成長を達成することができたのです。

しかし、Musical.lyは最終的に見えない漸近線にぶつかってしまいました。アメリカの10代の女の子の数は限られています。そのマーケットを飽和させてしまうと、利用者数と成長率は横ばいになってしまいました。そのとき、それまで断っていた中国のテクノロジー企業であるBytedanceが、『リトル・ウーマン』の最後に登場するジョー・マーチのベアー教授のように、突然魅力的に見えてきたのです。Musical.lyは中国で開発されたものの、中国では失敗し、代わりに米国で人気を博したアプリです。それを模倣してDouyinというアプリを作り、中国で成功していたBytedanceが皮肉なことに、その元のアプリであるMusical.lyを買収することになりました。

買収後、Bytedance社はMusical.lyをTikTokとして再ブランド化しました。しかし、もしそれだけであれば、なぜこのアプリが新しいオーナーの下で、停滞から見事に脱却したのかは明らかではありません。結局のところ、Bytedanceは米国政府がこの取引を承認すれば300億ドルから700億ドルで売れると噂されているアプリに、わずか100億ドルを支払ったにすぎません。

Bytedanceは、TikTokの成長を促進するために、特に二つのことを行いました。

まず一つ目は、財布を開き、かつて中国の富裕層がアメリカの不動産にお金をかけたように、アメリカでのユーザー獲得にお金をかけ始めました (6年前のコンドミニアム探しで、中国の全額現金払いのオファーに何度も負けたことを今でも恨んでいるわけではありませんよ)。TikTokは月に8〜9桁の広告費を費やしていると噂されていました。

TikTokの広告がどこにでもあることが、この説の信憑性を高めました。YouTube、インスタグラム、ツイッター、フェイスブック、モバイルゲームなど、いたるところでTikTokの広告を目にしました[3]。もしBytedance社が、私のまぶたの裏の広告を20ドル以下のCPMで購入できるのであれば、間違いなくそうしていたと思います。

[3] TikTokの広告は奇抜です。モバイルゲームで見るアプリの動画広告は、アプリが何であるか、何をするかについて何も伝えていません。何十回も見た広告では、おばあさんがリビングで突きをしていたり、子供が髪を乾かすと髪の色が変わったりしています。広告はもっとうまくアプリを売ることができると思うのですが、どうでしょう?

最初は賢明な投資とは思えませんでした。噂ではファネルの頂点に注ぎ込まれた新規ユーザーの30日間のリテンションは10%以下だと言われていました。彼らは広告費に火をつけているように見えました。

最終的には、その費用に対するROIは編曲点を迎えることになりますが、それは米国のマーケット獲得のための第二の要素である、BytedanceがTikTokに導入した最も重要な技術の一部、更新されたFor You Pageフィードアルゴリズムのおかげです。

Bytedanceはソフトウェアエンジニアのうち、アルゴリズムに注力している割合が非常に高く、最終的には半分以上を占めています。アルゴリズムの会社として知られており、最初はアルゴリズムを使ったニュースアプリ「Toutiao」でブレイクし、次にMusical.lyクローンの「Douyin」、そして今回のTikTokでもその名を知られています。

TikTokが登場する前、私はYouTubeが動画における最強の活用アルゴリズムを持っていると言っていましたが[4]、TikTokと比較するとYouTubeのアルゴリズムは原始的に感じられます (YouTubeのトップクリエイターたちは、クリック率と視聴時間に大きく依存するYouTubeのアルゴリズムを攻略する方法をとっくに見つけ出していますが、そのために多くのYouTube動画が徐々に長くなっているのは、私にとっては残念なことです) 。

[4] 探索と活用の問題は、アルゴリズム設計の古典のようなもので、通常は多腕バンディット問題との関連で語られます。ここでは単純に「どの動画を見せるか」という問題と考えてください。活用型のアルゴリズムは、あなたが好きなものをより多く提供し、探索型のアルゴリズムは、あなたが好きだと示したものだけでなく、より多くのものにあなたを触れさせようとします。YouTubeはよく活用型アルゴリズムと言われますが、それはあなたが好きなものをより多く押し付ける傾向があるからで、いつの間にかあなたを再教育しようとするオルタナティブ・ライトの動画を見ていることになります。

Bytedance社がMusical.lyを買収してTikTokというブランドに変更する前、DouyinというMusical.lyのクローンは、その効果的なアルゴリズムのおかげで、すでに中国マーケットでセンセーションを巻き起こしていました。数年前に北京を訪れた際、Hulu北京の元同僚たちと再会したのですが、彼らは皆、Douyinのフィードを見せてくれました。彼らはこのアプリが恐ろしく中毒性があり、アルゴリズムが不気味なほど鋭敏だと述べました。彼らの中には、毎晩ベッドに横になって動画を見るだけで1〜2時間が過ぎてしまうため、何ヶ月もスマホからアプリを削除せざるを得なかったという人もいました。

同じ旅行中に、元Huluの開発者で、現在はBytedanceのエンジニアリング部の上級幹部になっている人とコーヒーを飲みました。もちろん、アルゴリズムの仕組みについては口を閉ざしていましたが、アルゴリズムに特化した彼らのインフラの規模は明らかでした。街中にいくつかあるBytedanceのオフィスのひとつであるこのオフィスに出入りするたびに、オープンなフロアプランの中で何百人ものワーカーが横一列に並んで座っている様子に目を奪われました。それは、アメリカのフェイスブックのような巨大企業で見たものに似ていたが、さらに密度の高いものでした [5]。

[5] 目まぐるしいほどの雰囲気です。彼がうまくやっていることはよくわかりました。彼は私と友人たちをオフィスの地下にあるLuckin Coffeeに連れて行き、彼のスマホのアプリで飲み物を注文するように言いました。私が飲み物の代金を払おうとポケットから人民元を取り出そうとすると、彼は私の腕に手をかけて止めました。すると彼は「大丈夫、俺にはこれくらいの余裕があるよ」と笑いながら言ったのです。彼は決して自慢しているわけではなく、自分たちがどれだけうまくやっているかについて、まるで羊のように語っていました。その後、事務所の外の駐車場で待っていると、彼が通りかかり「車で送ろうか」と声をかけてきた。と聞かれたので「いや、地下鉄で行くよ」と答えました。すると、テスラのモデルXがやってきて、係員が車を降りると、彼は車に飛び乗って走り去っていきました。

Bytedanceでは、他社よりも多くの動画の特徴を調べているという噂があります。もしあなたがゲームのキャプチャをフィーチャーした動画が好きなら、アルゴリズムはその動画に注目します。子犬をフィーチャーした動画が好きなら、その動画は注目されます。私が調べたDouyinのフィードはどれも特徴的でした。私の友人たちは皆、このアプリで短時間過ごしただけで、自分の味覚にロックされてしまったと言っていました。

これこそが、何よりもBytedance社がMusical.lyをTikTokに変えるために採用した重要なアップグレードだったのです。Bytedance社の友人たちは、Musical.ly (現在のTikTok) をBytedance社のバックエンドアルゴリズムに接続した後、アプリの使用時間が2倍になったと、誇りを持って主張していました。私はその前後のデータを持っている友人たちに聞くまでは半信半疑でした。グラフの段階的な変化は、決して微妙なものではありませんでした。

Musical.lyがTikTokに改名された当時、Musical.lyはまだティーンエイジャーの女の子が口パクで動画を撮るのが主流でした。当時、米国の10代の若者の多くは、TikTokを「キモイ」と評していました。これは何がクールかということに気まぐれな若者の間で拡大しようとしているネットワークにとって、死を意味します。当時、このアプリをスクロールしていると、高校時代の劇団員の集まりを盗み聞きしているような気分になりました。面白かったですが、メインストリームのエンターテイメントの定番とは言えませんでした。

そこで、Bytedance社の莫大なマーケティング費用とTikTokのアルゴリズムの力のワンツーコンビネーションが救いの手を差し伸べたのです。ネットワークがアーリーアダプターグループから脱却するためには、多くの新しい人々やサブカルチャーをアプリに呼び込む必要があり、そこには莫大なマーケティング費用が必要となりますが、それに加えて、これらの異なるグループが1) すぐにお互いを見つけ、2) それぞれのスペースに分岐する方法も必要となります。

Bytedanceのショート動画アルゴリズムは、私が記憶している他のどのフィードアルゴリズムよりも、この2つの要件を満たしていました。それは、迅速かつ超効率的なマッチメーカーです。単にいくつかの動画を見るだけで、誰かをフォローしたり友達になったりしなくても、自分の好きなものをTikTokにすぐに教え込むことができます。TikTokという両面性のあるエンターテイメントネットワークにおいて、アルゴリズムは迅速で効率的なマーケットメーカーとして機能し、動画とその動画が喜ぶべきオーディエンスを結びつけます。アルゴリズムは、明示的なフォロワーグラフがなくてもこれを可能にします

同様に重要なのは、FYPのフィードをパーソナライズすることで、TikTokは異なる嗜好を持つサブカルチャーを分離するのに役立っているということです。ある人がドン引きする動画でも、他の人にとっては喜びとなり得ますが、どれがどれだかを見極めるのは簡単なことではありません。

TikTokのアルゴリズムは、ハリー・ポッターの世界に出てくる「組分け帽子」です。その魔法の帽子が、ホグワーツの生徒をグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの各寮に振り分けるように、TikTokのアルゴリズムは、ユーザーを何十ものサブカルチャーに振り分けます[6]。FYPのフィードには同じものはありません。

[6] 組分け帽子は、おそらくハリー・ポッターの世界で最も不思議なプロットデバイスである。これは遺伝子の決定論のメタファーなのでしょうか?ドラコはスリザリンになりたくないと思っていたのでしょうか?ドラコをその家に振り分けることで、彼の運命を形成したのでしょうか?帽子はバイアスがかかっていることで知られるアメリカの大学入試制度のメタファーでしょうか?グリフィンドールに振り分けられたハリー・ポッターは、レガシー入学なのでしょうか?

いわゆる「アイデアのマーケット」という素朴で理想的な夢を描いていたにもかかわらず、大規模なソーシャルネットワークの第一世代には、結果として生じる文化戦争に対処するための準備や装備がほとんど整っていないことが判明しました。意見の合わない他人同士を仲介するというコストのかかる仕事を引き受けるための、実質的なアイデアやインセンティブが得られるまでは、そのような人々を選別したほうがよいでしょう。意見の合わない人たちと一緒にネット上の剣闘士のような場に放り込まれることを喜ぶのは、結果として生じる暴力から非対称的に利益を得るトロールのようなタイプの人たちだけのようです。

ツイッターのコンテンツ・モデレーション問題を考えてみましょう。リベラル派と保守派を一緒のタイムラインに放り込んだ結果、どれだけのことが起きているのでしょうか。ツイッター社の社員は、公共の場での会話を改善したいとよく言っていますが、信頼度の低い会話の問題を解決するための実質的なアイデアが出るまでは、スリザリンとグリフィンドールを離しておいた方がいいでしょう (社会も同様です) [7]。

[7] 同じことが、NextDoorや歩道を歩いているだけのマイノリティを人種差別的にレポートするという問題にも言えます。この機能を削除したほうがいいでしょう。ある時点で、NextDoorは人種差別を解決できないという事実を直視する必要があります。あの機能をいじるのは自由ですし、ユーザーがレポートするためにあらゆる手段を講じることもできますが、逆選択の結果、その手段を講じるモチベーションが最も高い人が人種差別者であることが確実になります。

しばらくすると、TikTokに新しいサブカルチャーが出現しました。10代の女の子が口パクするだけではなくなったのです。TikTokには非常に多くのサブカルチャーが存在しており、私はそれらの一部を自分専用のFYPで見るだけなので、ほとんど追跡することができません。これにより、TikTokの魅力と、対応可能なマーケットが大きくなりました。中国ではDouyinがその道を歩んでいたので、Bytedanceには少なくともこのような高価な賭けに踏み切った前例がありましたが、メディアやエンターテイメントマーケットの競争が激しい米国でうまくいくかどうかはわかりませんでした。

大規模なソーシャルネットワークの中では、サブカルチャーであっても、ある程度の規模が必要です。Bytedanceはファネルの最上部を埋めるために多額の費用を払いましたが、そのアルゴリズムによって、最終的には存立可能な最小の規模を超えた多くのサブカルチャーを集めることができました。さらに特筆すべきは、それが驚くべき速さで行われたということです。

他の多くのソーシャルネットワークがどのように規模を拡大してきたかを考えてみましょう。通常の方法はオーガニックです。ユーザーはお互いにフォローしたり、友達になったりして、一度に一つずつ自分のグラフを構築していきます。この方法の課題は、ほとんどの場合、構築に時間がかかるという点です。また、ユーザーがグラフを構築するためには、「ツールのために来て、ネットワークのために残る (Come for the tool, stay for the network)」という格言に象徴されるように、何らかの理由を提供しなければなりません。今日では「ツール」の部分を構築するのはそれほど簡単ではありません。というのも、すでに多くの風景が採掘され、スケールの大きなネットワークは、どんなレベルの牽引力を持つツールでもコピーすることを学んでいるからです [8]。

[8] 欧米では、フェイスブックはファストフォローの達人です。彼らは、自分たちが発明した新しいソーシャル・グラフを立ち上げるのに苦労していますが、競合するソーシャルネットワークが少しでも人気を博しているのを発見すると、目にも止まらぬ速さでロックダウンしてクローンを出荷します。良い芸術家は借り、偉大な芸術家は盗み、最高の芸術家は最も早く盗む?競合他社としてのフェイスブックは、映画に出てくる、酔っ払ってふらふら歩きながらも、ターゲットを見つけた瞬間にチーターの群れのように疾走するゾンビのようなものを思い起こさせます。「28日後」や「アイ・アム・レジェンド」に出てくるようなタイプです。恐ろしいですね。

新しいソーシャルネットワークは、新しいコンテンツフォーマットを中心に構築されると考えている人もいますが、コンパクトなフェイスブックチームがケータリングディナーを用意して監禁しても、2〜3ヶ月でコピーできないようなフォーマットを考えることはほとんど不可能です。「Status as a Service」で書いたように、確かに新しいコンテンツフォーマットは、新しいプルーフ・オブ・ワークを作り出すかもしれません。しかし、それと同じくらい重要なのは、そのようなコンテンツを適切なオーディエンスに配信し、ソーシャルフィードバックループを閉じるための適切な構造を構築することです。

近年、規模を拡大させた新しいソーシャルネットワークは何でしょうか?思いつかないかもしれませんが、それは本当にないからです。フェイスブックでさえ、本当に成功した新しいソーシャルプロダクトを立ち上げることができませんでした。その理由の多くは、彼らがコンテンツフォーマットのギミックを中心に構築することに固執しているからです。

「Status as a Service」でネットワークを区別するために使った3つの目的、すなわちソーシャルキャピタル (ステータス)、エンターテイメント、ユーティリティを思い出してください。近いうちに別の記事で、なぜ私がネットワークをこの3つの軸で分類しているのかを説明する予定ですが、今はほとんどのネットワークがこの3つの目的をミックスして提供している一方で、ほとんどのネットワークがこの3つの目的のうちの1つに大きく傾いていることを知っておいてください。

例えば、VenmoやUberのようなネットワークは、ほとんどがユーティリティを目的としています。例えば、VenmoやUberのようなネットワークは、誰かにお金を支払う必要があったり、ここからあそこまで移動する必要があったりと、ユーティリティを重視しています。YouTubeのようなネットワークは、どちらかというとエンターテイメントを目的としています。また、多くの人が「ソーシャルネットワーク」という言葉を使うときに参照するネットワークの中には、よりソーシャルキャピタルに焦点を当てたものもあります。例えば、Soho Houseです。

TikTokは、純粋なソーシャルネットワークというよりは、ソーシャルキャピタルに焦点を当てたエンターテイメントネットワークです。私はTikTok上の人とは付き合いませんし、ほとんど知りません。TikTokは人と人とのネットワークで構成されていますが、クリエイターが短い動画で視聴者を獲得するという明確な理由でつながっています[9]。

[9] BytedanceはWeChatに対抗するソーシャルネットワークの構築に成功していませんが、努力が足りなかったわけではありません。そのための様々な選択肢があると思いますが、ソーシャルファーストではなかった多くの企業と同様に、彼らのDNAにはそれがないのです。フェイスブックが過小評価されているのは、機能的なソーシャル配管を大規模に構築する能力があるからで、これは稀なデザインスキルです。アマゾンやNetflixなど、さまざまな企業がソーシャル機能の構築を試みたものの、後に放棄しています。しかし、ソーシャルのDNAを持たない彼らがそれを実現するのは難しいでしょう。しかし、ソーシャルファーストのDNAを持っているということは、フェイスブックがソーシャル以外のサービスを構築するのが得意ではないということでもあります。彼らの動画や視聴タブは、依然として奇妙で焦点の定まらない混乱状態にあります。

何をもってソーシャルネットワークとするかは永遠に議論されるべきですが、ここで重要なのはエンターテイメントネットワークを別の表現で表すと、インタレストネットワークであるということです。TikTokは、あるグループのコンテンツを、そのコンテンツを楽しみたい他の人々にマッチングさせます。TikTokは世界中の何億人もの視聴者が何に興味を持っているかを把握しようとしているのです。このようにTikTokのアルゴリズムをフレーム化すると、TikTokの未実現の大きな可能性が見えてきます。

ソーシャル・グラフを利用してインタレストベースのネットワークを構築するというアイデアは、これまでもある種の近似性やハックのようなものでした。あるアプリで何人かの人をフォローすると、その人たちが投稿した内容の多くが自分にとって興味あるものであるという前提で、その人たちのコンテンツの一部を提供してくれるのです。大学時代にフェイスブックが成功したのは、刺激の多い大学生がお互いに興味を持っていたからです。ツイッターでも、時間はかかりましたが、うまくいきました。ツイッターの一方通行のフォローグラフは、フェイスブックの初期の双方向の友達モデルよりも柔軟にフォローする相手を選ぶことができましたが、ツイッターはユーザーが何をつぶやくべきかを訓練するためのフィードバックメカニズムを初期の段階で十分に提供していませんでした。初期の頃はソーシャルメディアを批判する人たちが引き合いに出すような、さまざまなステータスの更新が多く見られました 「ランチに何を食べたかなんて誰も気にしない 」というようなものです [10]。

[10] ツイッターがプロダクトマーケットフィットするまでの遅い道のりについては「Status as a Service」で述べています。

しかし、もし誰かをフォローしなくても、インタレスト・グラフを作ってくれる方法があったらどうでしょう?ソーシャル・グラフを作成するという長くて骨の折れる中間ステップを飛ばして、直接インタレスト・グラフに飛び込めるとしたらどうでしょう?そして、それを何百万人ものユーザーを対象とした大規模なスケールで、非常に迅速かつ安価に行うことができるとしたらどうでしょうか。そして、そのアルゴリズムが、あなたが積極的に調整しなくても、ほぼリアルタイムであなたの進化する好みに合わせて調整できるとしたらどうでしょう?

インタレスト・グラフをソーシャル・グラフで近似する際に問題となるのは、ソーシャル・グラフには規模に応じた負のネットワーク効果があるということです。ツイッターのようなソーシャル・ネットワークを例にとると、一方通行のフォロー・グラフ構造はインタレスト・グラフの構築に適していますが、問題はフォローしている一人の人物のすべてに興味を持つことはほとんどないということです。グルーバーのAppleに対する考えは好きでも、彼のヤンキースに関するツイートは好きではないかもしれません。あるいは、技術に関する私のツイートは好きだけど、映画のツイートは好きじゃないといった具合です。ツイッターのリストを使ったり、特定の人やトピックをミュートしたりブロックしたりすることもできますが、いずれも大きな手間で、取り組む気力や意志がある人はほとんどいないでしょう。

フェイスブックのユーザーが、同級生をフレンドにしていたのが、同僚や両親、結婚披露宴のオープンバーで知り合った人など、何百人、何千人もの人をフレンドにするようになったとき、フェイスブックに何が起こったかを考えてみてください。これを「コンテクストの崩壊」と呼ぶ人もいますが、どのような名称であっても、誰もが理解できる厄介な問題です。この現象は、多くのコホートにおいて、フェイスブックの訪問回数や投稿回数が減少していることに現れています。

スナップチャットは、友人間のコミュニケーション手段としてのユーティリティと、有名人が自分のファンに向けてコンテンツを発信する場としてのエンターテイメントを区別するのに苦労しています。物議を醸したデザイン変更で、スナップチャットはインフルエンサーが発信するコンテンツを右側の「発見」タブに分割し、友人との会話は左側の「チャット」に残しました。このデザイン変更は「カイリー・ジェンナーはあなたの友人ではない」と言っているように見えます。

TikTokにはソーシャル・グラフが存在しないため、大規模なソーシャル・グラフを使用することによる負のネットワーク効果がありません。TikTokは短い動画コンテンツから得られる純粋なインタレスト・グラフであり、そのアルゴリズムが非常に効率的であるため、ユーザーに大きな負担をかけることなくインタレスト・グラフを構築することができるのです。これは受動的なパーソナライゼーションであり、消費することによる学習です。動画は非常に短いので、ユーザーが単位時間あたりに提供する学習データの量は多くなります。映像が面白いので、ユーザーにとっては、このトレーニングプロセスが楽に感じられ、楽しくさえあります。

私は「あなたがTikTokを見つめるとき、TikTokはあなたを見つめる」という言葉が好きです。プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアがソーシャルのグロースハックに費やした時間を考えてみてください。友達を追加したり、フォローしたり、連絡先リストへのアクセスを許可するように人々を誘導したり、すべてはデッドゾーンを超えて、健全で堅牢なフィードを提供するために必要な最小の存立可能なグラフサイズに運ぶための試みです (ソーシャルプロダクトマネージャーなら誰でも、フェイスブックやツイッターの友達やフォローのグラフサイズを最小化するための重要な指標の話を何度も聞いたことがあるでしょう)。 新しいソーシャルプロダクトを使い始める前に、興味のあるテーマは何か、好きなミュージシャンは誰か、好きな映画は何か、といった興味をかきたてるようなUIをどれだけ見てきたかを考えてみてください [11]。

[11] 前回、ツイッターの新しいユーザー登録フローを使おうとしたら、とりわけドナルド・トランプのアカウントをフォローするよう勧められました。もっと効率的にオンボーディングして、すぐに素晴らしい体験をしてもらう方法は無数にあると思いますが、それはその中のひとつではありません。

TikTokが登場したことで、そのすべてがバイパスされました。TikTokは、二つの側面を持つエンターテイメントマーケットにおいて、クリエイターには比類のない動画作成ツールと潜在的な超スケールの配信を提供し、視聴者には時間とともによりパーソナライズされたエンターテイメントの無限の流れを提供します。このようにして、TikTokはプロダクトチームとインフラのほとんどが中国にありながら、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャット、YouTube、Netflixなどの大手企業と同じ土俵で、注目を集めるマーケットのプレーヤーになったのです。シンデレラストーリーというよりは、ムーランストーリーでしょうか。

TikTokはアメリカでブレイクしただけではありません。TikTokはアメリカだけでなく、インドや中東など、中国のBytedance社のプロダクトチームにとっては文化や言語が異なる国々でも、信じられないほどの人気を博しました。別のマーケットや文化を完全なブラックボックスとして扱うことができる、非常に賢いアルゴリズムを想像してみてください。その国の人々は何が好きなのか?いや、それ以上に、その外国のそれぞれの国の個々の人は何が好きなのか?あなたはそれを理解する必要はありません。アルゴリズムがそれを処理します。アルゴリズムは知っています。

近年、私が中国で出会った中国のプロダクトチームは、アメリカのような異国の文化を理解するという点で、2011年に出会ったチームよりもはるかに進んでいるとは思えません。しかし、Bytedanceのアルゴリズムは、その問題を抽象化してしまいました [12] 。

[12]中国共産党とBytedanceの関係については、対米プロパガンダに利用されるのではないかという懸念がありますが、私はその問題は過大評価されているのではないかと考えています。しかし、文化を一連の刺激反応に抽象化するアルゴリズムは、文化をより危険なものにしているのではないでしょうか?

このレベルの超効率的なインタレストマッチングが、他の機会やマーケットにも適用されることを想像してみてください。未来のパーソナライズドTV?そうです。教育?私のTikTokのフィードには、料理やマジック、iPhoneのハックなど、さまざまな教育動画がすでにたくさんあります。アレックスとルイスがMusical.lyの前に作ろうとしていた、短い動画を使った教育アプリの夢がついに実現するかもしれません。

ショッピング?DouyinとToutiaoによって、中国ではすでに多くの商取引が行われています。求人情報の提供?少し無理がありますが、不可能ではありません。もしマイクロソフトがTikTokを買収したら、私はTikTokチームに私のLinkedInフィードの改善を任せるでしょう。本やニュースレター、ブログなど、パーソナライズされた読み物はどうでしょう?音楽は?ポッドキャストは?はい、はい、はい、お願いします。デートは?世界はTinderのような高いGINI係数、高くて不平等なデートマーケットに代わるものを絶対に必要としています。

Douyinは、より多様な動画と収益モデルで、この未来の多くをすでに可視化しています。中国では、動画によるEコマースが米国よりも何年も先に進んでいます (さまざまな理由がありますが、克服できないものはありません。これも別の記事で取り上げます)。TikTokは、私にとってはまだ純粋な娯楽のための時間つぶしのように感じられます。しかし、Douyinは研究のために中国語のアプリを使うためだけに持っている別のスマホで追っていますが、それ以上のものに感じられます。これは、幅広いユースケースのプラットフォームとしてのショート動画を実現したものだと感じています。

今日、米国の多くの人々がソーシャルメディアを仕事と表現するのには理由があります。そして、私のように多くの人がTikTokをもっと楽しいアプリだと感じるようになったのには理由があります。フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなどのアプリは、ソーシャル・グラフの上に構築されているため、私たちのパフォーマンス的な社会的負担の規模、偏在性、リーチを増幅させています。ソーシャル機能をエンターテイメントやユーティリティ機能から切り離すのに苦労し、これまで存在しなかったソーシャルな人工物の側面を注入しています。

フェイスブックは中国のWeChatのように社会的なOSになるための道筋となるユーティリティへの移行に苦戦してきました。公平に見て、これらの機能の多くに対する競争は、米国でははるかに厳しいものとなっています。例えば、決済においてフェイスブックは、米国では問題なく機能し、ほとんどの人がデフォルトで利用しているクレジットカードと競争しなければなりませんが、中国ではAliPayやWeChat Payは、現金を主とする文化と競争していました。しかし、米国ではフェイスブックはコマースのような実用的なユースケースにはまだ本格的に進出していません [13]。

[13] 私は技術系のエリートたちが動画というメディアをどれだけ過小評価しているかについて、よく話しています。フェイスブックの別の歴史では、彼らは動画専用アプリへのシフトをより強力に進め、テキスト、写真、動画と梯子を登っていき、もしかしたらTikTokの前にTikTokになっていたかもしれません。もしそうなっていたら、今日の彼らの滞在時間の数字はもっと高くなっていたと思います。これまでのフェイスブックの破壊的な動きには限界があります。今後、中国と米国の技術エコシステムを比較する予定ですが、最も広くかつ重要なポイントのひとつは、中国が数ある中でも動画へのシフトにおいて米国を凌駕しているということです。次は米国が中国を追い越さないというわけではありませんが、今のところ、米国はいくつかのカテゴリーで後塵を拝しています。

インスタグラムはソーシャル・グラフとインタレスト・グラフの奇妙なハイブリッドですが、今では様々なフォーマットが混在しています。ストーリーズ・フィードはアプリのトップ・バーに追いやられ、より停滞していてあまり活発ではないオリジナル・フィードはデフォルトで縦に表示され続けています。メッセージは別のページに配置され、別のアプリで提供されます。長時間の動画は「Instagram TV」で表示されますが、これは制限時間を超えた動画のためのアプリということでしょうか。近いうちに、おそらくコマースも組み込まれるのではないでしょうか?一方、TikTokのように興味関心に基づいたアプローチを取りたいのであれば、デフォルトのタブになりそうな「発見」タブと呼ばれるものもあります。しかし、このアプリはフィードやフォーマット、機能がやや混乱したアプリ群に分散したフランケンシュタインのような状態になっていて、難しい決断をすることをずっと先延ばしにしてきたように思えます。

ツイッターは自分が何者であるかを理解していないようです。10人のツイッター社員に聞けば10通りの答えが返ってくるでしょう。そのためか、この会社のプロダクト哲学の主流は、時折危機を回避するために行われる、ある種の絶え間ない麻痺状態のように見えます。ツイッターがオープンなプロトコルになって、開発者コミュニティに任せればいいのにとずっと思ってきた理由のひとつは、かたつむりのようなペースでツイッターが動くからです。

残念なのはツイッターがインタレスト・グラフを先行して開発していたことです。これは主にユーザーの働きによるもので、ユーザーは自分が気になっていることをグラフにして知らせることができました。これはツイッターにとってあらゆる種類の新しいマーケットの基盤となったはずです。しかし、その代わりに、ユーザーはほとんど無視されているDMを使ってお互いに連絡を取り合うことで、自らその価値を引き出してきました [14] 。

[14] ツイッターはかつてVineを買収しましたが、その後、Vineを枯らしてしまいました。TikTokを買収できるテクノロジー企業の中で、ツイッターは最もそれに値しない企業なのかもしれません。少なくとも、自分たちが買ったものが何であるかを理解していることを示す読書感想文を提出するよう求められるべきでしょう。

他にもいくつかのハイテク企業を紹介しておきます。YouTubeは巨大な動画ネットワークですが、正直なところ、彼らは長年にわたってツイッターよりも出荷数が少ないかもしれません。動画作成ツールを持たず (持っているのでしょうか?)、TikTokにショート動画の分野を奪われてしまったことは、衝撃的でもあり、同時にそうでもありません。

アマゾンは少し前にショート動画のコマースアプリを立ち上げました。私はそれを試す時間もなく、あっという間に終わってしまいました。アマゾンは多くのことに長けていますが、TikTokのようなものを作るDNAを持っていませんでした。中国がリードしてきたショート動画コマースのビジョンを実現できなかったのは、彼らにとって衝撃的なミスです。

これらの動画の多くが撮影されている実際のカメラはAppleが所有していますが、彼らはソーシャルを理解していません [15] 。少なくとも、iPhoneがリリースされるたびに、カメラのハードウェアを改善し続けるでしょう。

[15] iMessagesはAppleにソーシャルのDNAがあれば、ソーシャルネットワークの巨人になれるかもしれませんが、日々、他のメッセージングアプリに機能性とデザイン性で引き離されています。でも、次のiOSリリースでは、ついにiMessagesにスレッド機能が追加されるのではないでしょうか。

TikTokの市場価値が、前述のアメリカの大手企業の市場価値に近いというわけではありません。もしあなたがまだTikTokを目新しいミーム・ショート動画アプリと考えているなら、それは真実から遠くないでしょう。さらにレベルを上げると、BytedanceとTikTokが米国でまだ活用できていない機会のリストは長く、米国政府からの禁止を食い止めたとしても、その多くを逃しても不思議ではありません。その多くは新しいフォームファクターを必要とし、特にBytedance社から切り離された場合、TikTok社のプロダクトチームがどれほど強力なものになるのかは不明です。また、コンシューマーマーケットでの実績が乏しいマイクロソフト社の下では、TikTokの潜在能力が十分に発揮されるかどうかは不明です [16]。

[16] TikTokには欠陥があるでしょうか?もちろんあります。完璧とは言えません。アルゴリズムが固執しすぎることもあります。あるミームの動画を気に入ると、翌日にはTikTokが同じミームのフォローアップ動画を大量に提供してくることがあります。しかし、反応性の高いアルゴリズムの優れた点は、GPT-3のプライミングのようにすぐにチューニングして、思い通りの結果を得られることです。TikTokのフィードに新しいサブカルチャーを注入するのに必要なのは、その中の動画を見つけて (YouTubeや自分のフィードとは異なる友人経由で簡単に見つけることができます)、それに「いいね!」をつけることだけということがよくあります。TikTokのもう一つの問題は、ポートレートモードのリップシンク動画アプリとして設計されたものに、他の多くのユースケースが詰め込まれていることです。縦長の動画は人やダンス、メイクの動画には適していますが、他の種類のコミュニケーションやストーリーテリングには適していません (私はいまだに、バスケットボールやサッカーのハイライトクリップで、水平方向の競技場をもっと見せることができないのが嫌で、これはインスタグラムとTikTokの両方に当てはまります) 。

しかし、そのプロダクト開発はどれもロケットサイエンスではありません。その多くは私の頭の中では明確になっています。さらに重要なことは、TikTokは、もし売却の一環としてBytedanceアルゴリズムで武装していれば、一般化されたインタレストマッチアルゴリズムを持っているので、米国のテックジャイアントに正面からではなく、斜めから切り込むことができるということです。このアプリを単なる子供向けの目新しいミーム動画アプリと見なすことは、そのはるかに大きな破壊的可能性を見逃すことになります。中国で開発されたアプリが米国に上陸し、注目を集めるマーケットで文化的な人気を獲得したことは、満足している米国のハイテク企業に警鐘を鳴らすべきです。これらの企業の多くが、ユーザーの関心事を把握することで、商品を販売したり広告を表示したりしていることを考えると、TikTokのようにインタレスト・グラフを作成するための近道を見つけた企業は、あらゆる種類の警鐘を鳴らすべきだと思います。

噂されているCFIUSの鉄槌によってTikTokが完全な禁止に至らなかったとしても、より多くの米国のハイテク企業が買収を試みないのは、私にとっては驚きです。一世代に一度の強制的な特売資産に入札しない企業があるとは思えません。ネット上では300億ドルという価格を見たことがあります。もしそれが本当なら、絶対にお買い得だと思います。私は迷わずその2倍を支払うでしょう。

欠点を挙げればきりがありませんが、最終的には正しいプロダクトビジョンと実行力があれば、簡単に解決できるものばかりです。TikTokは最も困難な部分であるアルゴリズムを解明しました。このアルゴリズムによって、中国から出たことのない、そしてこれからも出ないであろう人々で構成された巨大なチームが、彼らが直接経験したことのない文化やマーケットで巨大なマーケットシェアを獲得したのです。私のような文化決定論者にとっては、それは黒魔術のように感じられます。

Bytedanceを訪問した2018年の同じ中国旅行で、Huluの元同僚がNewsdogへの訪問を企画してくれました。それは、北京に本社を置くスタートアップが作った、インドマーケット向けのニュースアプリでした。エレベーターを降りてロビーに入ると、向かいの壁にはジェフ・ベゾスの有名な言葉「It’s Always Day One」の巨大な壁画が描かれていました。

その会社は友人の友人がCEOを務めています。私は会議室に座りアプリの説明を受けました。彼らはその年のわずか数カ月前にテンセントから5,000万ドルを調達しており、当時はインドでナンバーワンのニュースアプリでした。

彼は自分のスマホでアプリを開き、私に手渡しました。中国の「Toutiao」と同じように、上部のスクロールバーにさまざまなトピックが表示され、その下に縦に記事が並んでいました。これらはすべて、中国の「Toutiao」や多くのアプリのスタイルと同様に、アルゴリズムによって選ばれたストーリーでした。

すべてヒンディー語で書かれたストーリーに目を通しました。(そうそう、あるフィードには滝などの下に立っている、かなり挑発的な衣装を着た魅力的なインド人女性の写真が、どさくさに紛れて掲載されていたこともありました)。そして、アプリから顔を上げると、会議室のガラス越しに約40人の中国人エンジニア (ほとんどが男性) がパソコンを叩いているオフィスが見えました。そして、アプリの中のヒンディー語の物語のページに視線を戻しました。

「待てよ」その時思いました。「このオフィスにも、会社にも、ヒンディー語を読める人はいないの?」

彼は笑顔で私を見た。

「いや、いない 」と彼は言いました。「私たちの誰もが、何も読めません」。

NEXT POST: TikTokについての考察パート2、アプリのデザインがアルゴリズムに影響され、その逆の好循環が生じていることについて述べています。


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👉 Eugene Wei

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クリエイターエコノミーの中産階級の構築

アメリカン・ドリームは存在するが、現実はどうなのか?

[読者の皆さん、こんにちは。この記事は本日『Harvard Business Review』に掲載されました。楽しんでいただけると幸いです。また、以下のコメントであなたのご意見をお聞かせください。-Li].

[Update March 14, 2021: 私は初めてNFT “The Creator Middle Class “を作成しました。これは下の表紙イラストのアニメーション版で、現在は@jamesyoungさんが所有しています!].


▼本記事の内容
  1. 消えたクリエイターの中産階級
  2. クリエイターの中産階級を育てる10の戦略
  3. 不平等を助長する力
  4. より強い社会とプラットフォームへの道

* この記事は、「Building the Middle Class of the Creator Economy」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Li Jin
翻訳者: 渡辺圭祐


1788年、ジョージ・ワシントンは、アメリカは「産業と倹約の精神に富む人々にとって世界で最も好ましい国」であり、「財産が平等に分配され、人が住んでいない土地が大量にあり、生活手段を確保できる」という点で、社会的に最も低い階級の人々にとっても理想的な移民先になるだろうと予測しました。その広大な土地と宗教的寛容さに機会は内在していると彼は主張しました。

それから228年後の2016年、Musical.lyの共同CEOであり、後にBytedanceのプロダクト担当副社長を務めたAlex Zhuは、新しいソーシャルネットワークを立ち上げるという文脈で、ワシントンの言葉を繰り返しました。新しいプラットフォームを立ち上げることは、新しい国を立ち上げるようなものだと彼は言います。硬直化した経済や社会階層を持つ既存のネットワークから、新しいネットワークにユーザーを移行させるには、成功の可能性、つまりアメリカンドリームの魅力が必要です。さらに、新しいソーシャルネットワークでは、すべてのユーザーに上昇志向を持たせ、「中産階級が出てくるようにしなければならない」としました。

8歳から12歳の子供たちを対象に行った最近の調査によると、子供たちの約30%がユーチューバーを目指していることがわかりました。昨年、YouTubeクリエイターのDavid Dobrikは、平均6,000万回の再生回数で、毎月27万5,000ドルのアドセンス収入を得ていました。Substackでは、トップ10のクリエイターが合計で年間700万ドル以上の収入を得ています。先日、TikTokクリエイターとして初めてフォロワー数が1億人を突破したCharli D’Amelioは、16歳にして400万ドルの価値があると言われています。彼女がTikTokを始めたのはわずか1年半前です。

しかし、大スターダムにのし上がった人はいても、プラットフォーム上で幅広い層が経済的に安定した生活を送っている例はほとんどありません。現在のクリエイターの状況は、上流階級に富が集中する経済に近いのです。Patreonでは、2017年に連邦政府の最低賃金である月1,160ドルを稼いだクリエイターはわずか2%でした。Spotifyでは、フルタイムの最低賃金労働者の年間収入である1万5,080ドルを達成するためには、アーティストは年間350万回のストリーミングが必要です。そのため、ほとんどのアーティストはツアーやグッズで収入を補っています。一方、2016年のアメリカでは、成人の52%が48,500ドルから145,500ドルまでの中所得世帯で生活しています。

消えたクリエイターの中産階級

国家の持続可能性やプラットフォームの防衛力は、上位1%の人々に富が集中していない方が優れています。現実の世界では、健全な中産階級層は、社会的信頼を高め、製品やサービスへの安定した需要を提供し、イノベーションを推進する上で重要です。プラットフォームでは、富が集中していないということは、競合他社がトップクリエイターを奪い、ビジネス全体を脅かすリスクが少ないことを意味します。

WIRED誌の編集者であるクリス・アンダーソンが2004年に「ロングテール」理論を発表して以来、この考えは強化され、否定され、議論され続けてきました。アンダーソン氏は、インターネットが物理的な制限 (視聴者の地域性、希少な棚のスペース) を取り除くことで、ニッチな製品やクリエイターが活躍できるようになると主張しました。

検索カテゴリーでは、この現象が真実であることが証明されています。Google社は、日々、全クエリの15%が一度も検索されたことのないものであることを明らかにしており、この数字は2013年以降、安定しています。

しかし、コンテンツプラットフォームでは、デジタルコンテンツへの移行とロングテールの急増は相関していません。トップクリエイターは大成功を収めていますが、ロングテールのクリエイターはほとんど生き残れていません。例えば、Spotifyでは、上位43,000人のアーティスト (プラットフォーム利用者の約1.4%) がロイヤリティの90%を稼ぎ、1人当たり四半期平均22,395ドルを稼いでいます。それ以外の300万人のクリエイター、つまり98.6%のアーティストは、1人当たり36ドルの収入しかありません。

ビデオゲームの世界でも、少数のゲームクリエイターに成功がより集中している兆候が見られます。エレクトロニック・アーツのプロダクトリードであるラン・モーは、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」において、総利用者数が増加しているにもかかわらず、トップへの集中度が高まっていると指摘しています。この集中の理由として、ゲームへの参加に上限がないこと、ゲームのソーシャル性が勝者総取りのネットワーク効果をもたらすこと、の2点を挙げています。

1981年にシカゴ大学の経済学者シャーウィン・ローゼンが発表した論文には、テクノロジーの発達によって「スーパースター現象」がより顕著になることを予見する記述があります。ローゼンは、クリエイターエコノミーのように提供者が異質な市場では、成功は上位の者に偏ってもたらされると主張しました。「才能のない者が才能のある者の代わりにはなりません。 (中略) 平凡な歌手の歌を次々と聞いても、1つの傑出したパフォーマンスにはならない」。この現象は、流通コストを下げるテクノロジーによってさらに悪化しています。ある分野で最高の演奏者は、コンサートホールの大きさのような物理的な制約から解放され、無限の市場に対応し、より多くの収益を得ることができます。

では、クリエイター間の不平等は避けられないのでしょうか?ある程度は仕方がないでしょう。誰もが有名人になれるわけではありませんが、有名ではなくても、きちんとした収入の基盤となる顧客を持っている中産階級のクリエイターの例もあります。

クリエイターのプラットフォームは、誰もが成長し、成功できる機会を提供することで繁栄する」。これは確かなことです。アメリカンドリームがただの夢になってしまうと、プラットフォームの命運は不安定になります。Vineは、その教訓的な物語です。Vineは短編コメディ動画のフォーマットを発明し、2015年11月には月間アクティブユーザー数が2億人に達したにもかかわらず、インスタグラム、YouTube、スナップチャットなど、より多くの収入を得られ、より多くの視聴者を獲得でき、より幅広いクリエイティブツールを利用できるプラットフォームに、徐々にクリエイターを奪われていきました。他のプラットフォームの方が視聴者の増加や経済的成功などの機会が容易に得られるようになり、プラットフォームの衰退へとつながりました。

CharliとAddison Raeは常に出現し、存在しますが、クリエイターのプラットフォームには上昇志向の道筋を提供し、成功の機会を民主化することが不可欠です。そのためにはどうすればいいのでしょうか?

クリエイターの中産階級を育てる10の戦略

アメリカの中産階級は自然に生まれたものではなく、20世紀に広く繁栄をもたらした政策によって生まれました。ルーズベルトのニューディール政策、最低賃金や残業代、未成年者の雇用禁止などを定めた公正労働基準法、組合活動の活発化、GIビルの成立、連邦住宅管理局の設立などです。これらの政策は労働者に力を与え、富を生み出す機会を分配し、所得格差の拡大を緩和し、1960年代末にはアメリカの成人の61%を占める強力な中産階級を築くのに役立ちました。しかし、政策の優先順位が変わるにつれ、2019年には51%にまで減少しました。

プラットフォームは自らのエコシステムに影響を与える決定を下すこともできます。パッションエコノミーの性質上、不平等はつきものです。供給は異質で代替不可能であり、クリエイターが視聴者との間に築く信頼と親和性は評価されるべきものです。しかし、プラットフォームは、既存のものから新しいものまで、クリエイターの中間層を強化し、成功への道を広げるためにもっとできることがあります。多くの人が成功を手に入れられるようにするためのプラットフォームのデザインにはどのようなものがあるでしょうか。

1. リプレイバリューの低いコンテンツに絞る
人は同じポッドキャストを何回聞くことができますか?おそらく、何度も聴いているうちに、内容が繰り返しになって飽きてしまうでしょう。これに対して、好きな曲は何度でも繰り返し聴くことができます。ビデオゲームでは、何度もプレイすることに価値があるだけでなく、何百時間もプレイしているうちにプレイヤーが熟練し、ゲームをより楽しめるようになるため、限界効用が高まります。このことから、音楽やゲームプラットフォームのようにリプレイバリューが高いカテゴリーは、一部のメガヒットに集中しやすいと考えられます。より公平なクリエイターのエコシステムを構築するために、プラットフォームは多様なコンテンツを体験することがより魅力的なコンテンツタイプにユーザーを誘導することができます。

2. ユーザーの好みの異質性に対応し、ニッチを強化する
ローゼンのスーパースター経済学の理論は、「品質の異なる商品間の不完全代替」を前提としています。つまり、10%多くの命を救うことができる偉大な外科医は、10%の需要増よりもはるかに多くの需要を得ることができるのです。これは品質の客観性と呼ぶべき、様々なコンテンツカテゴリーの属性を強調するものです。つまり、あるコンテンツカテゴリーは、他のものよりも明確で普遍的な品質基準を持っているのです。例えば、「最高の」受験指導者は、テストの点数などの指標によって知ることができますが、「最高の」ファンフィクション作家は、ユーザーの好みが多様であるため、普遍的には存在しないかもしれません。

ユーザーの好みや意見が多様化すれば、多様なクリエイターが成功する機会が増えていきます。プラットフォームは、クリエイターやユーザーがこのようなニッチな分野を開拓し、発展させることを促すことができます。例えば、子供向けオンライン教育市場「Outschool」では、親御さんからの新しい授業テーマのリクエストを集約したメールを毎週先生に送っています。「ゴールデンドゥードルの絵を描く」や 「スクーターのレッスンとテクニック」など、毎週数十件の新しいリクエストが寄せられています。この機能により、クリエイターはどのようなニッチにクラスを提供すれば実りあるものになるかを理解することができます。

3. アルゴリズムでコンテンツを推薦し、ランダム性を持たせる
デジタル製品が無限にある中で、ロングテールが普及しない理由として、ユーザーが何を検索したらいいのかわかりにくいことや、レコメンドシステムの多くが、他のユーザーが消費・購入したものを勧めるだけの基本的なものであることが挙げられます。このシステムの弱点はユーザーが自分の興味のある分野以外のものを目にすることが少なく、フィルターバブルに閉じ込められてしまうことです。また、人気のあるクリエイターはますます人気になり、新人が抜きん出るのは困難となります。

しかし、ユーザーの検索をアルゴリズムが行うことで、ニッチな分野が発展する機会が増えます。TikTokのブログでは、ユーザーが動画を最後まで見たかどうか、シェアしたかどうか、クリエイターをフォローしたかどうか、デバイスの種類、言語、国など、レコメンドシステムに使用される多数のシグナルについて詳しく説明しています。しかし、注目すべきなのはTikTokはフィルターバブルに対抗し、フィードに多様性を導入することが直接の目標であるとも述べており、そのために、ユーザーのこれまでの興味とは異なる動画もFor Youページに表示しているという点です。

あなたのフィードには、あなたの興味に関連していない動画や、膨大な数の「いいね!」が集まっている動画が表示されることがあります。これは私たちのレコメンド手法の重要かつ意図的な要素です。For Youフィードに多様な動画を表示させることで、フィードをスクロールする際に、新しいカテゴリーのコンテンツを見たり、新しいクリエイターを発見したり、新しい視点やアイデアを体験する機会が増えます。

このようにランダム性を持たせることで、多くの視聴者を持たない一般的な新しいクリエイターが露出できるようになり、「金持ちがより金持ちになる」という硬直した社会的階層を作るのではなく、誰もがプラットフォームで成功できるようになるのです。実際、TikTokは「フォロワー数や、過去に高視聴率を記録したことがあるかどうかは、レコメンドシステムの直接的な要因ではありません」と明示しています。

4. コラボレーションとコミュニティを促進する
ダニエル・ピンクは、2001年に出版した『フリーエージェント・ネーション』の中で、「フリーエージェントは一人でボーリングをしているかもしれないが、一人でやっているわけではない (中略) 忠誠心がなくなったわけではなく、縦から横へと変わっただけだ」と書いています。これは、アメリカでは自営業が主流であり、会社が提供するネットワークがない世界では、仲間との強力なネットワークを構築する必要があることを指しています。これは現在のコンテンツクリエイターにも言えることです。

コラボレーションは様々な意味でクリエイターの成長と成功を促します。コンテンツの消費は、ユーザーがどのクリエイターをフォローしているかによって左右されるため、共同でコンテンツを制作することはクロスプロモーションの機会となります。音楽業界やYouTubeのクリエイターの間ではコラボレーションによる発見の促進という大きな前例があります。テイラー・ローレンツは、Hype HouseをはじめとするTikTokのコラボハウスについての記事で、クリエイターが一緒に生活しながらコンテンツを制作することのメリットを「一緒に住むことでチームワークが高まり、成長が早くなる。クリエイターは過酷なキャリアを精神的に支えることができる」と紹介しています。

Hype Houseの共同設立者であるトーマス・ペトロウは「私たちが入居したとき、チェイスには350万人のフォロワーがいました。もし彼が一人でアパートを借りていたとしたら、今は500万人か600万人かもしれません。しかし、900万人ではないでしょう。また、家があるとみんなが来たがる。2ベッドルームのアパートには誰も行きたがらない。今では、あらゆるビッグクリエイターを家に招くことが可能です」と述べました

スタートアップにとってのチャンスとは?まず、草の根的なクリエイターのコミュニティはすでに多く生まれていますが、プラットフォームはクリエイター同士が心の支えになったり、協力したり、教育を受けたりするために、もっと多くのことができるはずです。例えば、「Stir」では、YouTubeの動画や商品の販売など、コラボレーションの金銭面での処理を容易にしています。Teachableのオンライン教師コミュニティは、クリエイターが同じようなビジネスフェーズにいる人たちとネットワークを築くための専用スペースを提供しています。このように、新しいアンバンドルワークの世界では、正式な仲間がいないため、クリエイターは別のコミュニティを利用することで、より良いサービスを受けることができます。

5. 新進気鋭のクリエイターへの資金投資
クリエイターが新しいスモールビジネスであるならば、新しいスモールビジネス・レンディングとは何でしょうか?クリエイターの業種によっては、次の成長を実現するために先行投資が必要なものもあり、参入障壁を下げるために資金を提供することが有効です。クリエイターとして成功するためのリターンはベンチャー規模ではないかもしれませんが、ソーシャルトークンやクリエイターに特化したニッチなファンドなど、資金提供と教育をセットにした新しいモデルが考えられます。ポッドキャスティング分野のPodfundは後者の例で、ポッドキャストスタジオや有望なクリエイターに、レベニューシェアと引き換えに2万5,000ドルから15万ドルの資金を提供しています。

Patreon Capitalは、同社が2020年初頭に開始した取り組みで、クリエイターにマーチャントキャッシング(MCA)を提供しています。ニコラス・クアは、「Patreonはシリーズの制作予算をまかなうために約7万5,000ドルのキャッシングをチームに提供し、Multitude (ポッドキャスト制作会社) が今後2年間でNext StopのPatreonの収益から少し多めに返済することを想定しています。」と報告しています

作家、画家、音楽家、その他のクリエイティブな才能に関わらず、クリエイターの収益化のパラダイムは、継続的に支払いやサポートを受けること (パトロン) 、または何かを作る前に需要を確信すること (コミッション) でした。収入の予測可能性を高め、クリエイターに前もって資金を提供するプラットフォームはこのような前例に基づいています。

6. クリエイターへの報酬と視聴者層の関係を切り離す
他の多くのプラットフォームとは異なり、TikTok Creator Fundはコンテンツを商業的な必要性から切り離していますが、これはHank Greenが検討した結果です。TikTokでは、クリエイターファンドの支払いはエンゲージメントと再生回数に応じて行われます。一方、YouTubeは動画に表示された広告収入の55%をクリエイターに支払うため、クリエイターは広告主が好む富裕層向けのコンテンツを作るように仕向けられます。広告料が高く、広告主が求める視聴者であればあるほど、クリエイターの動画収益は大きくなります。同様に、インスタグラムでは、アフィリエイトリンクやブランドスポンサーによるマネタイズモデルが主流であるため、クリエイターは高収入の視聴者に向けてコンテンツを作ることになります。

Hank Greenはクリエイターファンドについて、「裕福な視聴者を抱えているクリエイターが、貧しい視聴者を抱えているクリエイターよりも自動的に多く稼ぐわけではない」と書いています。クリエイターファンドの「根本的な平等主義」は消費額の大きいクリエイターではなく、エンゲージメントの高いクリエイターに報酬を与えることに由来します。

コンテンツ制作の場がすでに不平等であるため、より裕福なクリエイターに金銭的な報酬を与えるだけでなく、意図的にシステムを設計することが重要です。2013年に「Journal of Computer-Mediated Communication」に掲載された論文によると、「オンラインコンテンツのクリエイターは比較的恵まれたグループに属する傾向がある」とのことです。この論文では、その理由については詳しく述べられていませんが、一般的な起業を妨げるより広範な理由、すなわち資本へのアクセス金銭的リスクを取る能力に関連しているのではないかと思います。

7. クリエイターがスーパーファンを利用できるようにする
購読やファンからの寄付によって、視聴者数がそれほど多くないクリエイターでも、多くの収入を得ることができます。このようなファンからの直接支払いモデルは、規模やリーチに報いる広告ベースのモデルとは対照的に、スーパーファンの収益化を促進します。YouTubeではクリエイターは1,000回の動画再生でわずか3~5ドルしか稼げません。一方、Twitchの購読料は月額4.99ドル、9.99ドル、24.99ドルと段階的に設定されています。Twitchの登録者1人が1ビューに相当するとすれば、YouTubeのRPM (Revenue Per Mille)の1,000倍以上のマネタイズレートになります。

Streamlootsはゲーム実況者がスーパーファンをさらに高いレベルでマネタイズすることを可能にします。平均的な購入者は、Streamlootsで実況者とのデジタルインタラクションに毎月26ドルを費やすのに対し、Twitchの購読料には6ドルを費やします。両方のプラットフォームを利用している実況者の場合、Streamlootsは総収益の62%を占めていますが、購入者の割合は27%に過ぎません。ユーザーはクリエイターに近づくために、より多くのお金を費やすことを厭わないのですが、一方で、購読によって受動的なサポートを示すこともあります。

観客の数と収益を切り離すことができる他のタイプのプロダクトとは何でしょうか?サブスクリプションのファンコミュニティ (MightyCircleなど) 、クリエイターへの有料アクセス (CameoLoopedOnlyFansなど) 、コースや電子書籍などの高額商品の販売などは、視聴者数が少ないクリエイターが成功するために役立ちます。私の「100人の真のファン」という記事は、ケビン・ケリーの名著「1,000人の真のファン」をもじったもので、少数のユーザーから収益を得ているクリエイターのための指針を示しています。

8.クリエイターに受動的(またはほぼ受動的)な収入機会を提供する
現実のアメリカでは、小学校の先生、トラックの運転手、看護師、営業の責任者などが中産階級の代表的な仕事です。これらの職業に共通していることは何でしょうか?それは、限界費用がゼロではないということです。つまり、1人でも多くの患者を治療したり、1人でも多くの人に販売したりするためには、より多くの時間と労力が必要になります。そのため、お客様の数には上限があり、結果的に収益の平準化が図られます。一方、デジタルコンテンツの世界では、視聴者を増やすための限界費用はゼロです。

限界費用がゼロに近いことで、デジタル・スーパースターが大量のオーディエンスを獲得する一方で、限界費用がないことで、わずかな労力や時間でデジタル商品を販売できる新興のクリエイターに有利に働くこともあります。例えば、クリエイターがソフトウェアや電子書籍、PDFなどのデジタルグッズを販売できるEコマースサイト「Gumroad」では、収益に極端なべき乗則が見られます。2020年9月に何かを獲得した19,480人のクリエイターのうち、その月に1,000ドル以上を稼いだのは9%、1万ドル以上を稼いだのは1%、10万ドル以上を稼いだのはわずか10人 (0.05%)でした。このように収益の集中が見られる一方で、すべてのクリエイターにとって、売上は (商品を最初に作った後の) 受動的な収入であり、クリエイターは時間をかけずに収益を拡大することができます。収入が増加すると、クリエイターは他の収入源に時間を割くことができ、様々な収入源のポートフォリオを作ることができます。

9. ユニバーサル・クリエイティブ・インカム(UCI)の提供
ユニバーサル・ベーシック・インカム (UBI) とは、政府による理論的な公的プログラムで、手段テストや労働条件なしにすべての国民に定期的な支払いが行われるというもので、最近になって急速に関心が高まっているアイデアです。

UBIのような政策は、経済学者から広く支持されており、1995年にアメリカの経済学者を対象に行われた調査では、78%が「政府は負の所得税に沿って福祉制度を再構築すべきだ」という提案を支持しています (一定の基準以上の所得者は国にお金を支払い、それ以下の所得者はお金を受け取る)。2020年3月のCovid-19を受けて、アメリカではUBIに似たCARES法が成立し、大人一人当たり1200ドル、子供一人当たり500ドルの直接現金支給が行われました。オーストリアでは、政府がフリーランスのアーティストを支援するために9,000万ユーロの基金を設立し、1万5,000人のアーティストに毎月1,000ユーロを6カ月間支給しています。

クリエイタープラットフォームがユニバーサル・クリエイティブ・インカムを検討する理由は何でしょうか?コンテンツ制作者に限って言えば、アメリカ人の71%が従業員よりも自営業を好むと回答しているにもかかわらず、自営業に踏み切れない理由はたくさんあります。障害となっているものの上位を占めるのは金銭的なものです。Freshbooks社の「2019 Self-Employment in America Report」によると、自営業の上位の障害は次のようなものでした。「収入が安定しないことを心配する」(35%)、「投資する現金がない」(28%)、「収入が減ることを心配する」(27%)となっています。

クリエイターにベーシックインカムを提供することは、より多くのクリエイターにコンテンツ制作により多くの時間を割いてもらうためのインセンティブとなる賢明な戦略かもしれません。TikTokのクリエイターファンドの発表は、この感情を反映しています。「米国のファンドは2億ドルでスタートし、革新的なコンテンツによって生計を立てる機会を求めている野心的なクリエイターを支援します。」

10. クリエイターへの教育・研修の実施
クリエイター・コラボ・ハウスが、学びを共有し、アイデアを交換することで参加者を部分的に高めているように、プラットフォームはこうした学びを促進し、クリエイターが成功するために何をすべきかを提案・指導することができます。

テイラー・ローレンツのHype Houseに関する記事によると、「チャーリー(D’Amelio) も、このグループが彼女の創造性を広げ、Vlogのような新しいコンテンツフォーマットに進出するのに役立ったと考えています。自分の部屋に一人でいたらやらなかったかもしれないことを、自分のコンフォートゾーンの外で試しています」と語っています。」

中国のインフルエンサー・インキュベーターは、この教育的な観点をさらに進めて、インフルエンサー (キーオピニオンリーダー、KOLと呼ばれる) の育成、成長、収益化に焦点を当てたマルチステップモデルを採用しています。2019年4月にIPOした業界リーダーのRuhnnは、新進気鋭のKOLに対して、コンテンツの作成方法、フォロワーとのエンゲージメント、メイクアップなどのトレーニングを含む一連のサービスを提供しています。マネタイズは、ファンをKOLのオンラインストアの顧客になるように誘導し、商品デザインから顧客サービスまで、Eコマースのロジスティクスをすべて管理するという形で行われます。2018年、Ruhnnの113人の契約KOLは、総売上高20億元(3億ドル)を生み出し、さまざまなソーシャルチャネルで約1億5000万人のファンを獲得しました。

ここでは、米国におけるクリエイター教育の製品化の例をいくつかご紹介します。

年間10億ドルの売り上げを誇るオールインワン・コース・プラットフォームのKajabiでは、オンライン・ビジネスを構築するためのコースを提供するKajabi Universityや、顧客の目標や次のステップについて顧客と戦略を練るカスタマー・サクセス・チームなどの教育リソースを提供しています。

Substackのブリッジ・メンターシップ・プログラムは、新しいSubstackライターと既存のSubstackライターがペアになって行う2ヶ月間のプログラムです。このプログラムでは、メンティーが「編集戦略やビジネスの支援を受け、ライティングスタイル、フィードバックの求め方、自分の価値の位置づけなど、クリエイティブなスキルを磨く」ことを約束しています。

On Deck Fellowshipはクリエイター教育の一環として、ポッドキャスターライターを対象としたフェローシップで、それぞれ教育プログラム、第一線で活躍するクリエイターとのセッション、ピアコミュニティで構成されています。

不平等を助長する力

アメリカではこの半世紀の間に、中産階級が四面楚歌の状態にあり、1971年から2011年にかけて全体に占める割合が10ポイントも減少しています。賃金の低迷に加えて、医療や育児など中産階級の生活を支える重要な要素のコストが上昇している現象は「中産階級の圧迫」と呼ばれています。アメリカ人の約半数が、中産階級の収入を得ることは若い頃よりも難しくなったと考えています。

現実の世界でもクリエイターの世界でも、不平等が拡大している大きな要因は、高所得者層が持つレバレッジにあります。急速な技術進歩により、熟練した労働者には賃金プレミアムが発生し、一方、オフショアリングや自動化が進む中で、低スキルの労働者は仕事を見つけることすら困難になっています。OECD諸国の中で、米国はスキルプレミアムが最も高い国です。

例えば、Twitchでは他のプラットフォームに移ることができ、視聴者にフォローしてもらうことができるレバレッジの効いたトップ配信者は、より多くの収益を得ることができます。例えばTwitchでは、平均視聴者数が1万人以上の配信者は、登録者の毎月の支払額の70%を保持しますが、小規模な配信者は50%です。

Shopify、Teachable、KajabiなどのSaaS型クリエイターツールは、基本的にクリエイターへの逆進性の高い税金として機能しており、トップクリエイターの収入に占める月額固定費の割合は少なくなっています。また、一般的には、GMVの増加に伴い、段階的なテイクレートが減少 (または交渉により引き下げられる)します。

多くの広告ベースのプラットフォームでは、広告収入へのアクセスは、すでに視聴者を集めているクリエイターに限られています。例えば、YouTubeのパートナープログラムの参加資格は、過去12ヶ月間に4,000時間以上の公開視聴時間があり、1,000人以上のチャンネル登録者がいることです。ポッドキャストの世界では、スポンサーシップ契約はポッドキャスターとブランドの間で直接交渉されることが多く、ポッドキャスターのロングテールは取り残されています。

より強い社会とプラットフォームへの道

パッションエコノミーは、クリエイターのレバレッジという概念に根ざし、それを称賛するものです。クリエイターは自分の個性を強調し、壊れないサービスや製品を提供しているため、完全に代替可能なギグワーカーよりも、プラットフォームに対してはるかに大きな力を持っています。クリエイターのプラットフォームは、様々な代替品や忠実な視聴者層が存在する中で、トップクリエイターにとどまってもらうためのインセンティブを与える必要があり、プラットフォームが不平等に陥りやすい要因となっています。課題は、トップクリエイターが持つレバレッジ、つまりトップの才能にスポットライトを当てることと、新人を引き上げることのバランスをとることです。

すべての人が上昇志向を持ち、経済的な安定を得て、学び成長する道があるとき、社会とプラットフォームは繁栄します。美しいのは、現実の世界でもデジタルの世界でも、この道を築くのは私たち自身だということです。


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排他性の諸刃の剣 (The Double Edge Sword of Exclusivity)

先日、Bessemer Venture Partnersの投資家であるGaby Goldberg氏の素晴らしいMirror記事を読みました。

▼本記事の内容
  1. ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減
  2. 排他性という諸刃の剣

*この記事は、「The Double Edge Sword of Exclusivity」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Mason Nystrom
翻訳者: 渡辺圭祐


ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減

この記事の中でGoldberg氏は、彼女が「ソーシャル・トークン・パラドックス」と呼ぶものについて論じています。これは排他性に基づくソーシャル・トークン・コミュニティで生じる問題です。その問題とはソーシャル・トークンは新しいメンバーを加えることで価値が上がるのに、会員制のゲーテッド・コミュニティはグループを排他的に保たなければならず、そうしないと社会的価値やユーティリティの価値が下がってしまうというものです。このようにして、ソーシャル・トークンのパラドックスが生まれたのです。

訳者注: ゲーテッドコミュニティ(英語: Gated community)
ゲート(門)を設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、防犯性を向上させたまちづくりの手法。Wikipedia

他の方法でユーティリティを高めることができなければ、排他的なコミュニティはソーシャルトークン・パラドックスに直面し、以下のような悪循環を繰り返す運命にあります。

第1段階: ソーシャル・トークンを使って排他的なコミュニティを構築し、一定数のトークンを保有することでメンバーになる。

第2段階: 早期参入者がトークンを獲得することで、トークンの価値が上がる。また、新規参入者は、そのグループが排他的で社会的に価値があるという考えを強化するため、一時的に排他性が高まる。

第3段階: ある閾値(グループによって異なる)を超えると、新規メンバーの継続的な増加により、グループの社会的ユーティリティと排他性が低下し始める。しかし、新規メンバーはトークンを獲得せざるを得ないため、トークン価格は上昇する。

第4段階: 最終的に新規メンバーは、トークンの価値を確実にするために新規メンバーをリクルートするインセンティブが与えられる。しかし、十分な規模になると、新規メンバーは排他性の価値のリターンを減少させる結果となる。この時点でトークンは価値があり、ある程度のメンバー数でピークを迎える。

第5段階: メンバーは利益を得るため、または排他性/ユーティリティの低下を理由にトークンを売却する。最終的にコミュニティはある程度の均衡を保った後、再びこのサイクルを繰り返すことになる。

このパラドックスは、メンバーシップベースではないトークンでは起こりません。例えばビットコインの新規購入者は、それぞれビットコインの価値を高め(希少性を高め)、その結果、すべてのメンバーの目的が揃うことになります。ネットワークに新しいノードやメンバーが加わることで、ネットワークの価値が高まります。

排他性という諸刃の剣

残念ながら、排他的なコミュニティの成長には収穫逓減があります。一般的に、人が増えると排他性が減り、社会的価値が下がります。金銭的な価値と引き換えにメンバーになることは、排他性の最も一般的な形態です。カントリークラブ、イベント、購読料などは、金銭的価値と排他性を交換する形態です。 会員資格にはイベントなどの一時的なものもあれば、会費などの定期的なものもあります。

金銭的に得られる排他性やメンバーシップは諸刃の剣であり、ソーシャル・トークン・パラドックスに陥ります。また、コミュニティの規模や潜在的な成長を制限することになります。

バリュープロポジションとしての排他性は常に存在しますが、金銭的に完全に依存する必要はありません。

パフォーマンスまたは業績の排他性
パフォーマンスや業績は社会的に価値のあるシグナルです。パフォーマンスの評価は曖昧なことが多いですが、Rabbitholeはすでに、特定のタスクを完了したことをチェーン上に記録することを始めています。さらに、様々なDAOでタスクを完了した個人(例:ブロンズメンバー、シルバーメンバーなど)や過去の投票者にメンバーシップを与えることができます。実績や参加状況に応じてメンバーシップを階層化することで、異なるコミュニティの個人を1つのDAOやコミュニティに集めることができます。様々なDAOからトップの貢献者や投票者が1つのDAOに集まっていることを想像してみてください。

時間の排他性
時間に基づいたメンバーシップを作成することで、長期的なプレイヤーが集まり、ゲームや金銭などでは購入できない要素が加わります。時間によるメンバーシップは、達成されるまで何時間も何週間も作業に没頭するようなタスクのような成果と組み合わせることもできます。このモデルは参加するために多大な努力を必要とするコミュニティを発展させる動機付けとなります。

経験やサービスの排他性
経験を共有することで、社交クラブや大学生、同じ地域に住む人など、さまざまな人が結びつきます。経験は、慈善団体への加盟などの目的志向のものや、アーティストのコンサートに参加してからDiscordチャンネルへのアクセスを提供するNFTを得るというイベント志向のものもあります。

排他性についての最終的な考え
金銭的な独占性が否定されるわけではありません。活動や会員権など、人々がどのように資本を配分するかは、すべてトレードオフの関係にあります。排他性は目的や目標を共有するコミュニティに価値をもたらします。ソーシャル・トークン・コミュニティがネットワークを拡大しようとするとき、金銭的なものだけではないユーティリティや価値をもたらす方法を想像することが重要になるでしょう。


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The Dao of DAOs

皆さん、こんにちは👋

自分で仕事をする面白さは仕事の内容が決まってないことですが、もし決まっていたとしたら、そのうちの1つは次のようなものになるかもしれません。「インターネットで遊んだ中で見つけた、最も面白いものを翻訳する」

数ヶ月前、私はNFTに関するツイートを目にするようになりました。私はNFTが何なのか知りませんでしたが、現場で働いている人たちは知っていたので、読んで、話して、考えて、書きました。何よりも学ぶために書きました。今ではNFTはどこにでもあります。BeepleのEverydaysはクリスティーズ(Christie’sというサイト)で6,900万ドルで落札されました。あなたのおばあさんもNFTを持っているかもしれませんね。NFTは急速に普及しています。

NFTについてツイッターやクラブハウスで話していた人たちは、次のものに向かっています。DAOです。

Web3の世界で新たな深みにはまるたびに、自分の手に負えないと感じるようになりました。Seed Clubを運営しているJess Sloss氏にDAOを調べていることを伝えると「🐇 meet 🕳」と書いてくれました。DAO (Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)は、次に深みに嵌ってしまう対象です。

この深さになると物事は乱暴になり始めます。私は声を大にして探求しています。すべての答えを持っているわけではありませんが、できれば一緒に何かを学びたいと思っています。

では、さっそく行ってみましょう。


▼本記事の内容
  1. The Dao of DAOs
  2. From NFTs to DAOs
  3. DAOの登場
  4. イーサリアムとDAO
  5. UniswapとCoinbaseの比較
  6. SushiSwapのフォーク
  7. 漸進的分散化(Progressive Decentralization)
  8. なぜDAOなのか?
  9. DAOの7つの力
  10. DAOの現在と未来

*この記事は、「The Dao of DAOs」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Packy McCormick
翻訳者: 渡辺圭祐


The Dao of DAOs

2016年6月17日にハッカーがThe DAOから盗んだイーサ(ETH)は、ハードフォークされていなかったとしたら、今日では66億ドルの価値があります。

2016年4月30日に発足したThe DAOは初期のDAO(Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)とベンチャーキャピタルファンドです。1万1,000人が当時の総供給量の14%にあたる1,150万ETH (約1億5,000万ドル相当) を投資し、その資金をまとめてクリプトプロジェクトに投資する予定でした。

機関投資家や富裕層(リミテッド・パートナー、LP)が資金を投じ、他の人々(ジェネラル・パートナー、GP)が企業に投資する従来のファンドとは異なり、The DAOの投資家はスマートコントラクトで設定された事前のルールに基づいて議案に投票することができます。各人の票数は、保有しているトークン数で重み付けされます。提案されたプロジェクトが十分な票を獲得することがトリガーとなり、スマートコントラクトは自動的にThe DAOの資金をプロジェクトのETHウォレットに投資しました。

The DAOのクラウドファンディングキャンペーンが始まって2週間後、TechCrunchは「The DAOは経済組織の考え方そのもののパラダイムシフトだ。完全な透明性、完全な株主管理、前例のない柔軟性、自律的なガバナンスを提供する」と書きました。

それから2ヶ月も経たないうちに、6月17日にハッカーがThe DAOを攻撃し、360万ETHを奪いました。当時、その額は約5,000万ドルにのぼりました。ETHが1,851ドルで取引されている今日、盗まれたETHは66億ドルの価値があり、史上最も高価なハッキングの一つに数えられています。

しかし、ハッカーたちは億万長者になったわけではありません。資金はスマートコントラクトの契約条件に基づいて28日間保留されたため、The DAOとより広範なイーサリアムコミュニティは、どう対応すべきかを考えるのに約1カ月かけることができました。議論の末、Vitalik Buterin率いるイーサリアムコアチームはイーサリアムブロックチェーンをハードフォークしました。それは基本的に強盗が起こらなかったことを除いては、すべてが同じである新バージョンでした。

訳者注:
後方互換性のないソフトウェアアップデートのことです。一般的には、ノードが古いノードのルールと競合する方法で新ルールを追加した場合に発生します。新しいノードは、新しいバージョンを操作する他のノードとのみ通信できます。その結果、ブロックチェーンは分割され、古いルールと新しいルールの2つのネットワークが作成されます。
参照: ハードフォークとソフトフォークの説明

イーサリアムのコアチームは、人々を強制的に移行させることはできませんでした。人々は以下の質問に答えながら、自らの意思で投票しました。「ハッキングを消去することのメリットは、人々の介入がイーサリアムへの信頼を失うというデメリットを上回るか?」ほとんどの人にとって、答えはイエスでした。一部の人々はハッキングが行われたイーサリアムのブロックチェーンをイーサリアムクラシックと名前を変えて使い続けましたが、私たちが知っているイーサリアムはフォークされたバージョンです。現在のイーサリアムのブロックチェーンを見ても、強盗の痕跡はありません。危害も反則もありません。

From NFTs to DAOs

しかし、オフチェーンではDAOの初期の勢いが失われたという弊害がありました。ビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなどの言葉は知っていても、DAOが何なのかは知らないかもしれません。実際、最後の400語はおそらくちんぷんかんぷんだと思います。

しかし、DAOは5年後に多様なユースケース、成長するソフトウェアツールキット、そして新しいガバナンスとインセンティブモデルを伴って再登場しています。私がフォローしている多くの賢い人々がNFTの次はDAOだと最近話しています。

私はジルの話を聞いていました。それで深みに嵌ってみることにしたのですが、予想以上に深かったですね。

NFTは比較的親しみやすいものです。キャッチーな見出しをつけるのも簡単です。「高価なJPEG?笑」なぜならNFTは最も基本的なもので、デジタルメディアを所有・収集可能なものにし、人々は時にそれに大金を払うからです。

DAOはNFTよりも一段階上の存在で、DAOはNFTを所有したり、NFTを作成したり、NFT以外の様々なことを行うことができ、NFTよりも大きな変革の可能性を秘めています。NFTはデジタルメディアの一部ですが、DAOはメディア企業全体になる可能性があります。

DAOはより複雑であるため、ヘッドラインやサウンドバイト、プライスタグで表現するのはそれほど簡単ではありません。しかし、そのために私たちはここにいるのです。

これは、DAOとは何か、どのように機能するのか、Web3の他の部分とどのように相互作用するのか、どのような利点があるのか、そしてこれらすべてがどこにつながっていくのかを考える私自身のプロセスを紹介する探求の始まりです。まずはシンプルに、そして積み重ねていきましょう。

• DAOの登場
• イーサリアムとDAO
• UniswapとCoinbaseの比較
• SushiSwapのフォーク
• 漸進的な分散化(Progressive Decentralization)
• なぜDAOなのか?
• DAOの7つの力
• DAOの現在と未来

すべての道はDAOに通ず。「Secure the BaaG」、「Power to the Person」、「We’re Never Going Back」、「The Value Chain of the Open Metaverse」、「Conjuring Scenius」など、私が書いてきた多くの探求的な作品は、知らず知らずのうちにDAOに向かっていました。これらの作品はすべて「ますますデジタル化が進むグローバルな世界で、私たちはどのように働き、投資し、創造し、一緒に遊ぶのか」という問いかけをしていました。

「Power to the Person」が「一人でどれだけのことができるか」であるならば、「DAO」は「みんなでどれだけのことができるか」です。

でも、待ってください。DAOって何でしょう?

DAOの登場

注: Web3に馴染みのない方、または復習が必要な方は「The Value Chain of the Open Metaverse」をお読みください。

まず、定義から説明しましょう。Scalar CapitalのLinda Xie氏は、彼女の投稿「A Beginner’s Guide to DAO」の中で、良い定義をしています。

DAO (Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン上で実行される、ルールを共有して調整を行う、ミッションを中心に組織されたグループのことです。

DAOはブロックチェーン上で運営され、役員や理事ではなくステークホルダーに意思決定権を与えるという点で「分散型」であり、スマートコントラクトを使用するという点で「自律型」です。スマートコントラクトとは、一般にアクセス可能なブロックチェーン上で実行され、一定の条件を満たした場合に人間の介入を必要とせずに行動を起こすアプリケーションやプログラムのことです。

DAOはプロジェクトの資金調達、コミュニティの運営、価値の共有のための新しい方法です。DAOはトップダウンのヒエラルキー構造ではなく、Web3テクノロジーと急速に進化するガバナンスとインセンティブシステムを用いて、意思決定権と金銭的報酬を分配します。一般的には、参加、貢献、投資に応じてトークンを発行することで実現しています。トークンの保有者は、提案を提出したり、投票したり、利益を共有したりすることができます。

ブロックチェーン、NFT、スマートコントラクト、DeFiプロトコル、DAppsがツールであるとすれば、DAOはそれらを使って新しいものを生み出す集団です。それらが「何」であるならば、DAOは「どのように」であると言えます。彼らはWeb3版の企業やコミュニティです。そして、人々が新しい要素や構造を試していくうちに、DAOは今では予測できないような特性を持つようになるでしょう。

DAOは、私たちの働き方、グループでの意思決定、資源の配分、富の分配、そして世界の大きな問題を解決する可能性を秘めていると支持者は考えています。DAOは、そもそもイーサリアムが誕生した理由でもあります。

イーサリアムとDAO

そもそも最初からDAOは存在していました。イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterinは、2013年のEthereum White Paperの序文で、Decentralized Autonomous Organizations(分散型自律組織)について言及しました。

Vitalikは、彼が2011年に設立したBitcoin Magazineに以前書いた「Bootstrapping a Decentralized Autonomous Corporation」という記事を参照していました。その中で、彼は次のような質問をし、答えようとしています。

この問題を別の方向からアプローチすることはできないだろうか。つまり、ある種の専門的な仕事をするのに人間が必要だとしても、その代わりに管理者を方程式から取り除くことはできないだろうか?

この投稿の中でVitalikは、Bitshares社の創業者ダニエル・ラリマーの「ビットコインは実はプロトDAOのようなもので、従来の会社に相当する新しいタイプの分散型企業である」という考えに言及しています。

• 株式 ≈ ビットコイン
• 株主 ≈ ビットコインの所有者
• 従業員 ≈ マイナー、バリデーター
• 給料 ≈ チェーンにブロックを追加した際のビットコインの報酬
• マーケティング ≈ ビットコインを宣伝するレーザーアイを持った人たち

しかし、ビットコインには限界があります。ちょっと間抜けな感じがします。実際にはあまり知らず、自分自身を変えることもできず、実際には何もしません。「ただ存在しているだけで、それを認識するのは世界に委ねられている」のです。それは本当に金のようなもので、人々がそれに何かをしたり、価値を与えたりするのをじっと待っているのです。

もっと親身になって、同じくらい複雑な例え話をすると(これが賢い読者がいることの良い点です!)、ビットコインが人工狭義知能(ANI)のようなものだとしたら、DAOは人工一般知能(AGI)のようなものです。ビットコインはプログラムされたことを上手にこなしますが、DAOは理論的には何でも上手にこなすことができます。

Vitalikはイーサリアムを紹介したときに以下のように言いました。

イーサリアムが提供しようとしているのは、任意の状態遷移関数をエンコードするための「コントラクト」を作成するために使用できる、本格的なチューリング完全プログラミング言語が組み込まれたブロックチェーンであり、ユーザーは数行のコードでロジックを書き上げるだけで、上述したあらゆるシステムや、まだ想像していない他の多くのシステムを作成することができます。

ビットコインはデジタルマネー。イーサリアムはアプリケーションから組織全体まで、あらゆるものを作ることができるプラットフォームです。

イーサリアム、ビットコイン、その他のブロックチェーンは、Web3技術スタックのレイヤー1です。ビットコインの場合、すべての魔法はレイヤー1で起こりますが、イーサリアムの場合、魔法のほとんどはレイヤー2、プロトコルとスマートコントラクトのレイヤーで起こります。

ソース: readthedocs.ioExample

レイヤー2は、プロトコルやスマートコントラクトのレゴブロックを作るところで、無数の組み合わせや形態で配置することができ、アート作品の作成からクリプトの取引まで、サードパーティを必要とせずに直接行うことができます。

ZoraはNFTプロトコルで、クリエイターが自分の作品を作成し、所有し、販売することができます。Uniswapプロトコルは「開発者、リクイディティ・プロバイダー(LP)、トレーダー、誰もがオープンでアクセス可能な金融市場に参加できる 」分散型の取引所です。Mirrorの分散型出版プラットフォームは「私たちが自分の考えを表現し、共有し、収益化する方法に革命を起こす」としています。

Zora、Mirror、Uniswapは全てのプロトコルですが、全てのプロトコルが必ずしもDAOではなく、その逆もまた然りです。その違いを理解するために、まずは中央集権型プラットフォームと分散型プロトコルを比較し、分散型プロトコルがDAOに進化するまでを説明します。

UniswapとCoinbaseの比較

クリプト化されているからといって分散化されているとは限らないし、分散化されているからといってDAOであるとは限らないのです。

Coinbaseはクリプトの売買を可能にしますが、それ以外の点では、株式や債券、通貨、商品などを取引する中央取引所のようなものです。一定の価格で買いたい人と、その価格で売りたい人をマッチングさせ、取引を円滑に進めるために取引ごとに手数料を取るのです。

企業としてのCoinbaseは典型的な中央集権的企業のように振る舞います。投資家がいて、取締役会があり、CEOがいて、良くも悪くも組織の方向性を決める決定を下します。どのクリプトをプラットフォームに上場させるかは、ユーザーではなくCoinbaseが決定します。Coinbaseは中央集権的な性質を持っているため、理解と使用が比較的簡単です。銀行口座に接続して資金を預け、クリプトを買い始めるだけです。それはうまくいきます。CoinbaseはダイレクトリスティングIPOで上場し、会社の価値は1000億ドルを超えると思われます。

翻訳者注: Coinbaseは2021年4月14日に米ナスダックに上場し、時価総額は一時1120億ドル(約12兆2000億円)を超えた。参照

一方、Uniswapはイーサリアムブロックチェーン上で運営される分散型の取引所です。Coinbaseとは異なり、Uniswapにはウォレットすらなく、純粋な取引所であるため、ユーザーは自分のクリプトを別の場所で保有する必要があります。

Uniswapは分散型であるため取引対象を決定することも、流動性を提供することも、銀行口座を持つこともありません。その代わりに、Uniswapは利用可能な流動性に基づいて価格を設定するスマートコントラクトを通じて、ユーザーが直接取引できるAutomated Market Maker(自動化マーケットメーカー)です。中間業者は存在せず、Uniswapはどのトークンが取引できるかを選びません。

その代わり、誰もがUniswapのリクイディティ・プロバイダー(LP)になることができます。例えばETHとUSDTのような安定したコインなど、任意のERC20トークンのペアをロックアップします(文字通りデジタル金庫に入れてしばらく触らないようにします)。 その代わり、そのペアの流動性の割合を表す流動性トークンを受け取ります。誰かがUniswapで取引をする際には、0.3%の取引手数料を支払い、その手数料は流動性トークンの保有量に応じてリクイディティ・プロバイダーに支払われます(もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください)。

Uniswap自体は単なるプロトコルであり、課金される取引手数料は一切受け取りません。昨年末までUniswapはDAOではありませんでした。トークンもなければ、時価総額もありませんでした。

今日、Uniswapの1日の取引量は10億ドル近くになり、1日の取引手数料が3000万ドル近くになり、今日の時点で170億ドルの時価総額になっています。

何が変わったのでしょうか?8月に入ってから事態は荒れていきました。

SushiSwapのフォーク

二つの道が森の中で分岐していて、私は…
私は道なき道を進んだ。
それがすべての違いを生んだのだ。
— ロバート・フロスト「The Road Not Taken」より

分散型プロトコルの優れた点は、コード、スマートコントラクト、取引履歴が公開されており、誰もが見たり、監査したり、コピーしたりできることです。このオープン性がチェック&バランスの役割を果たし、良い行動やプロトコルの最適化を促すことになります。なぜなら、プロトコルを開発しているチームのやり方に反対する人や、もっと良い方法で価値を生み出すことができると考える人が多ければ、そのプロトコルをフォークすることができるからです。

それがSushiSwapを開発したチームであるChef Nomi(仮名)がUniswapに対して行ったことです。

Uniswapの最初の2年間は創設者であるHayden Adamsの決定と、その上に構築されたスマートコントラクトに支配された、シンプルなプロトコルとして存在していました。トークンをLPに発行し、取引手数料のシェアを得ていましたが、それらのトークンはプロトコル自体には結びついておらず、ホルダーにはUniswapのガバナンスに対する発言権はなく、リクイディティ・プロバイダー(LP)が流動性の提供を止めるとすぐにオーナーシップは消滅してしまいました。

SushiSwapはそれを変えるために、Uniswapの進化形として2020年8月にローンチされました。

ブログ記事でSushiSwapチームはこう書いています。「Uniswapのエレガントなコアデザインを受け継ぎ、プロトコルのデザインを改善するのに役立つと信じているコミュニティ指向の機能を追加し、関係者にさらなる利益を提供しました。」

この文章を伝統的な企業として公の場で書くことを想像してみてください。「フェイスブックのソースコードとデザインを使って…」 そんなことはあり得ません。しかし、Web3は違います。フォークは期待されているのです。

SushiSwapはUniswapと一点を除いてほぼ同じです。SushiSwapでは0.30%の手数料が分割され「0.25%はアクティブなリクイディティプロバイダーに直接支払われ、残りの0.05%はSUSHIに変換されて(明らかにSushiSwapを通して)SUSHIトークンホルダーに分配される」という点です。SUSHIトークンを導入し、0.05%をトークンに配分することで、トークン保有者は積極的に流動性を提供していなくても、アップサイドに参加できることになります。早期に参入したり、取引可能なトークンでSUSHIを購入したりすることができます。

なるほど、ではSushiSwapはDAOなのでしょうか?そうではありません。

SUSHIは経済的には参加できますが、(今のところ)ガバナンストークンではありません。ガバナンスフレームワークであるOmakase DAOに取り組んでいて、プロトコルのコントロールをコミュニティに委ねる予定です。今のところ、コミュニティはSnapshotの改善提案に投票できますが、投票に拘束力はありません。

さて、今はDAOとは何かわかりますね?Uniswapです。

SushiSwapのフォークへの対応として、フォークされたプロトコルに移行させないために、Uniswapは2020年9月16日に待望のUNIトークンを発表しました。SUSHIとは異なり、UNIトークンは保有者にガバナンス権(提案に対する投票権や承認権やパートナーシップなどにUNIを割り当てる権利)を与えます。その投稿の中で、Uniswapのチームはこう書いています。

高度に分散化された金融インフラへのプロダクトマーケットフィットを独立して繁栄してきたプラットフォームで証明したUniswapは、現在、コミュニティ主導の成長、開発、自立に向けて特に有利な立場にあります。

UNIを発行すると同時に、UNI保有者は以下の所有権を得ました。

• Uniswapガバナンス権
• UNIコミュニティの財務
• プロトコルフィースイッチ
• uniswap.eth ENS名
• Uniswapデフォルトリスト(tokens.uniswap.eth)
• SOCKS流動性トークン

Uniswapは今日のSUSHISwapのように0.05%をUNIに還元するわけではありませんが、180日間のタイムロックの遅延を条件に、コミュニティは「プロトコルフィースイッチ」を所有し、そのロックアップが終了したときにコミュニティはその可否を投票することができます。

では、その結果はどうなるのでしょうか?Uniswapはフィー・スプリットの変更なしにDAOになったプロトコルで、SushiSwapはUniswapをフォークして新しいフィー・スプリットを作りましたが、まだDAOにはなっていません。

この例は重要なポイントを浮かび上がらせます: クリプト会社は初日からDAOになる必要はありませんし、一般的にはそうすべきではありません。進化することができるのです。初日からDAOとしてスタートしたThe DAOとは異なり、UniswapとSushiSwapの両社はVariant FundのJesse Walden氏が提唱する 「Progressive Decentralization」を経ています。

漸進的分散化(Progressive Decentralization)

Jesse Waldenは、私がWeb3やオーナーシップエコノミーについて理解しようとする際、最もよく参考にする人物です。そこで、MirrorのPatrick Rivera氏に、私がずっと疑問に思っていた「委員会で優れたプロダクトをデザインすることができるのか?」 と質問したところ、意外にもWalden氏の「Progressive Decentralization」の記事を紹介してくれました。

Waldenは委員会でプロダクトをデザインしようとしたり、初日からトークンを与えたりすることは意味がないと書いています。その代わりにWaldenは、「持続可能で、コンプライアンスを守り、コミュニティが所有するプロダクトを構築することを目標」として、3段階のプロセスで分散化に取り組む枠組みを示しました。

1. プロダクトマーケットフィット(製品と市場の適合)
クリプトスタートアップの初期は、他のスタートアップの初期と同じように、小規模で集中したチームが、プロダクトマーケットフィットを見つけるまで、構築、学習、反復に全力を注ぎます。プロダクトがひどいものであれば、コミュニティはそれを救うことはできず、トークンの所有権にかかわらず、関心を失ってしまうでしょう。VC が勝者と敗者にどれだけの時間を費やすかを見てみましょう。

Web3のスタートアップはオープンな性質を持っているため、既存のスマートコントラクトやコード、プロダクトを新しいものにスナップさせることで、素早く構築し、テストすることができます。DeFiが「お金のレゴ」と呼ばれるのには理由があって、誰かが何か新しいものを作るたびに、それが他の人が使えるビルディングブロックになるからです。魔法は新しいレゴを作ることではなく、チームが既存のレゴを組み合わせることで生まれることが多いです。

Waldenは「この段階では分散化を装うべきではない。プロダクトマーケットフィットを見極めるためには、必然的にコアチームがすべてのプロダクトに関する決定を行うことになる」と述べています。

これは私にとってWeb3企業に対する考え方が変わるきっかけとなりました。私はすべてのクリプトスタートアップを「Decentralization Maximalist(分散化最大主義者)」と呼ばれるグループに分類していましたが、実際にはそれはごく一部であり、トップのクリプトスタートアップはそれよりも現実的です。

多くのクリプトスタートアップは、プロダクトマーケットフィットを発見するために、従来のベンチャーキャピタルから調達しています。これはProtocol LabsとCooleyが開発した構造で、Y CombinatorのSAFEに似ていますが、会社が将来トークンを発行した場合に株式ではなくトークンに変換するという点が異なります。

2.コミュニティへの参加
プロダクトマーケットフィットを達成した企業は、より多くのステークホルダーに直接参加してもらうための実験を始めるべきです。

Waldenはそれをオープンソースの開発になぞらえ、コミュニティからの参加を募り、報奨金や助成金などのインセンティブを与え、オープンに開発を進め、コミュニティを構築し、意思決定に大まかなコンセンサスを導入しました。TwilioやStripeのようなオープンソースではない企業でも、自社のAPIをベースに構築する開発者の間にコミュニティを形成することで、強い競争力を築きました。

しかし、StripeやTwilioは開発者コミュニティに株式を配布していませんが、現時点では、クリプト企業はコミュニティへの参加と忠誠心を高めるために、継続的な貢献のインセンティブとして手数料やトークンを使用する方法について考え始めることができますし、そうすべきです。

手数料の面では、ユーザーに手数料を課して貢献者に還元するか、プラットフォームが十分なネットワーク効果を構築するまで手数料を課さないかというトレードオフがあります。クリプトサービスはオープンソースなので、高い料金を請求すると誰かがサービスをフォークしてしまう可能性がありますが、貢献者に還元できる料金を請求しないということは、貢献を促すための資金がないということになります。ここでの均衡状態はプロトコルが最小限の抽出を行うこと、つまり、コストをカバーするのに十分な料金を徴収することです。例えば、Uniswapはわずか0.30%の課金で、それをリクイディティ・プロバイダーに直接支払っています。

トークンの面では、チームは少数のコミュニティメンバーにトークンを発行し、ガバナンスのダイナミクスを試すことができます。この期間はコアチームに十分な意思決定権を与え、自分たちのビジョンに向けて意思決定に影響を与えられるようにするためのトレーニング期間です。この時点で、コアチームと初期の貢献者への報酬と、継続的な参加へのインセンティブとのバランスを考慮したトークンの配布計画を発表し、フィードバックを募る必要があります。ゲーム理論、数学、観察された行動、会話などを用いて、新しいインセンティブモデルやガバナンスモデルが構築され、日々テストされています。これについては、別のエッセイで紹介します(または、a16zの「On Crypto Governance」を読んだり、ゲーム理論の適用に関するこのビデオを見たり、Maker DAOのようなホワイトペーパーを読んだりしてください)。

3. 十分な非中央集権化
チームが最初の2つのステップを成功させた後は、トークンをより広いコミュニティに配布する準備ができています。これは従来のIPO、SPAC、買収に代わるもので「コミュニティへのイグジット(Exit to Community)」と呼ばれ、プロジェクトや企業がDAOになるポイントです。

これはスマートコントラクトを起動することで行われます。このスマートコントラクトは、今日誰がどれだけのトークンを取得するか、将来どのようにトークンを配布するか、トークンの所有権がどのような経済的・ガバナンス権を与えるかなど、すべてを決定する事前に定義されたルールに基づいて、トークンを採掘・配布します。

この時点から、プロトコルの将来の開発はコミュニティの手に委ねられています。コアチームはコミュニティでの地位や保有しているトークンの数に応じて意思決定に影響を与えるかもしれませんが、スマートコントラクトで定められたルールと、コミュニティの投票に基づいて行われた修正が将来の変化を決定します。新製品、採用、料金変更、マーケティングキャンペーンなど、あらゆることが提案され、トークン保有者の投票によって決定されます。おめでとうございます: あなたのプロトコルはDAOに移行しました。

しかし、プロジェクトをアイデアからDAOに移行させる方法がわかったところで、私を悩ませていたもう一つの疑問に答えなければなりません。そもそも、なぜコミュニティ参加や分散管理が望ましいのでしょうか?

なぜDAOなのか?

もし、分散化最大主義者(Decentralization Maximalist)がWeb3コミュニティのごく一部に過ぎず、関係者のほとんどが論理的で経済的に動機づけられた行動者であると信じるならば(そうでなければ、なぜインセンティブデザインがこれほどコアになるのでしょうか)、DAO構造には経済的・戦略的な利点があるはずです。「Progressive Decentralization」でWalden氏は2つの利点を強調しています。

1. コミュニティの参加とコントロールにより、プラットフォームのリスクが限定される
Chris Dixon氏はプラットフォームはユーザーや開発者を惹きつけるためにオープンな状態でスタートし、一定の規模やスケールに達した時点で利益を上げ、株主価値を最大化するために抜き取りを開始すると主張しています。

DAOはステークホルダーの価値を最大化することを目的としています。ユーザーや貢献者は、投資家でありオーナーでもあります。コミュニティ・オーナーシップは、奇妙で斬新なヒッピーのように見えますが、実際には、少数の外部投資家や役員が会社に大金を投じて、会社が何をすべきかを決定するよりも、より自然なモデルです。私たちがこのようにしている理由は、これまでは多くの小規模なオーナーやステークホルダーが意思決定において発言権を持つように調整することが困難だったからです。しかし、テクノロジーの進歩により、より自然なモデルが可能になりつつあります。

これを逆に考えてみましょう。もし私たちが幅広いコミュニティ・オーナーシップから始めて、現在のような外部投資家によるコントロールのモデルを導入しようとしたらどうなるでしょうか?人々がそれを許すはずがないと思います。

DAOの構造はプロトコルやプラットフォームが時間をかけてステークホルダーと一致することを意味しています。

2. 規制コンプライアンス
クリプトトークンは、Howeyテストで証券とみなされる可能性があり、その場合、流通が困難で高価になりますが、情報の非対称性やコアチームへの依存を解消して価値を生み出すことができれば、トークンは証券から非証券に変わる可能性があると分析されています。
(トークンの発行を考えている場合は、弁護士に相談してください)。

DAOを検討する確かな理由は2つありますが、それだけで勢いのある経済エンジンを作った多くの起業家がコミュニティに支配権を譲るほど説得力があるとは思えません。自分の周りにシステムを構築して、将来的に価値を引き出せるかどうかをチェックするような自意識の高い人もいるかもしれませんが、それほど多くはないでしょう。DAOモデルには何か他の利点があるはずです。

ハミルトン・ヘルマー(Hamilton Helmer)は何と言うでしょうか?

DAOの7つの力

現在、DAOは実験段階にあります。コンセプト自体が、メタ・プロダクトマーケットフィットするように取り組んでいます。この段階では、多くの人々が好奇心と、コミュニティへの参加、創造、コラボレーションの新しいモデルを試してみたいという思いから、DAOを作成しています。DAOはより良いものである必要はなく、ただ新しいものであればいいのです。

しかし、長期的には、Vitalikのビジョンである「経営者のいない会社」を実現するために、DAOは他の組織やガバナンスの形態と比較して、競争力のある優位性を持つ必要があります。DAOになるということは、堀(moat)を作ることです。「競争の破壊的な力からビジネスのマージンを守るための障壁」です。ハミルトン・ヘルマー氏は「7 Powers」の中で競争優位性の源泉を7つ挙げています。

ここでは、DAO構造がチームの堀を築くのに役立ちそうな点を見てみましょう。

規模の経済: 3/5 Helmers (5点満点中3点)
生産量が増えれば増えるほど、単位当たりのコストが下がるビジネスのこと。

DAOは世界中の人々や組織に、より大きな目標に向かって資源をプールする手段と動機を与えます。理論的には新しいユニットを生産したり、新しいユーザーを受け入れたりするたびにコストを下げることができます。また、DAOの構造は従来の組織よりも摩擦が少なく、必要に応じて多くのサービスに支払うことで、人件費を削減することができるかもしれません。しかし、DAOには従来の構造に比べて明確な利点がないため、3/5点としました。

ネットワーク経済: 5/5 Helmers
新しいユーザーがネットワークに参加すると、各ユーザーにとってサービスの価値が高まる。

ネットワーク経済はDAOが成功し、既存の企業を打ち負かす可能性がある領域です。これは成功したDAOにとって最強の堀となるでしょう。

ネットワーク経済の典型的な例はFacebookで、友人が参加するたびに、彼らと話したり、彼らが何をしているかを見ることができるので、その価値が高まります。DAOはステートフルなプロトコルと貨幣を直接組み合わせたクリプトネットワーク上に構築されており、ネットワーク効果をステロイドのように発揮します。DAOではユーザーがオーナーとなり、誰かがDAOに参加したりプロトコルを使用したりするたびに、そのユーザーのトークンの価値が理論上高くなります。さらに、DAOが強くなると、その上にさらに多くの人が集まり、さらに強くなり、さらに多くの人が集まる、というようにDAOが強くなっていきます。イーサリアムにはWindowsのようなプラットフォームネットワーク効果がありますが、金融のステロイドが入っています。いったんDAOが勢いづくと、それを元に戻すのは非常に難しいでしょう。

カウンターポジショニング: 4/5 Helmers
新規参入者が新しい優れたビジネスモデルを採用すると、既存のビジネスにダメージを与えることが予想されるため、既存企業は真似しない。

DAOモデル自体が他の点で有利であれば、DAOはDAOであるということだけで既存の企業に対して強い堀を築くことができます。FacebookのDAO版は、ユーザーが新しいメンバーを招待したり、自分のデータを共有したり、コンテンツに貢献したりすることで報酬を得ることができ、ZuckがFacebookをDAOにする可能性は雪だるま式に増えるわけではないという点で、Facebookに対して堀を築くことができます。この堀は伝統的な企業に対する堀である一方で、他のDAOに対する堀であるとは限らないため、5番目のHelmersをわずかに逃しています。

スイッチングコスト: 2/5 ヘルマー
追加購入の際に代替業者に切り替えることで発生する、顧客が期待する価値の損失。

これはやっかいなものです。一方で、DAOのメンバーは、あるDAOで所有しているトークンが競合するDAOに乗り換えると価値が下がる可能性があるため、スイッチングコストが発生します。しかし、SushiSwapの例が示すように、ブロックチェーンベースのプロトコルは、既存のプロトコルと互換性のある、非常に類似した新しいプロトコルにフォークすることができます。これにより、プロトコルがステークホルダーを満足させ、十分な報酬を得るために常に競争するというダーウィンの力学が生まれます。これは堀としては低いスコアですが、スイッチングコストの低さはDAOの美しさの一部です。

ブランド: 4/5 Helmers
売り手の歴史的な情報に基づいて、客観的に同一の提供物に高い価値を永続的に帰属させること。

特定のブランドが同じ商品に高い値段をつけられる理由の一つは、人々が自分のアイデンティティをそのブランドに結びつけているからである。ティファニーのブレスレットを身につけていると、普通のシルバーのブレスレットとは何かが違います。同じように、人々は自分が貢献しているメンバーやオーナーであるDAOに自分のアイデンティティを結びつけます。ビットコインがDAOだとすると、ビットコインを所有することでアイデンティティを確立している人たちのことを考えてみてください。彼らはビットコインを市場に出したり、押し目買いをしたり、信者ではない人を無料で叩いたりしています。

これでは5番目のHelmerにはなれません。なぜなら、それは両極端だからです。感情が高ぶり、DAOがメンバーの同意を得られないことをすれば、すぐに逃げ出してしまうかもしれません。イーサリアムのエコシステムを発展させるための助成金を授与するMoloch DAOには「rage quit」メカニズムが組み込まれていて、メンバーは特定のコミュニティの決定に同意できない場合、それを通して怒りをもって辞め、トークンを撤回することができるようになっているほどです。

追い詰められたリソース: 4/5 Helmers
価値を高めることができる魅力的な資産を、魅力的な条件で優先的に入手することができる権利。

DAOのコミュニティはその追い詰められた資源である。多くのDAOは人々を雇用したり、貢献に対して報酬を与えたりしていますが、DAOやその上に構築されたブロックチェーンの価値を高めるためだけに人々がDAOに貢献しているケースも多くあります。Moloch DAOではETHの価値を高めるために、メンバー自身がプールしたETHから助成金を与えたり、イーサリアムをより良くするために無償で作業をする提案をしたりすることができます。それらのエンジニアの時間は独立して価値があります。

プロセスパワー: 2/5 Helmers
コスト削減や優れたプロダクトを可能にする、企業の組織や活動のセットが組み込まれていること。

これも「エコシステムにとっては良いが、堀にとっては悪い」という評価です。DAOは、スマートコントラクト自体にプログラムされているため、本質的に文字通り組織や活動のセットが組み込まれていますが、同じ理由で、他のDAOやプロトコルに対して防御することはできません。レゴや取扱説明書を公開することの難しさは、誰もがプロセスをコピー&ペーストできるということです。最高のガバナンスとインセンティブの構造はコピーされ、微調整されるでしょう。

DAOのユーザー、貢献者、より広範なエコシステムのステークホルダーに経済的インセンティブを与え、それらのステークホルダーにDAOのガバナンスに対する発言権を与えることで、DAOは非常に強力な堀を構築する機会を得ます。最も強力なのはネットワーク効果で、いったんDAOが脱出速度に達すると、それを取り壊すのは難しいでしょう。特に、コミュニティのガバナンスによって、コミュニティが最も長期的な価値を生み出すと信じる方法で適応し、進化することができるはずだからです。

とはいえ、DAOはその堀を利用して安住することには注意が必要です。価値を引き出しすぎたり、少数のステークホルダーに権力を与えすぎたり、動きが遅すぎたり、その他にもコミュニティの十分に大きな部分を怒らせるようなことをしてはいけません。そんなことをすれば、他の人に隙を与えることになるからです。フォークの脅威は常に存在しています。適者生存なのです。

DAOの現在と未来

DAOは、The DAOのハッキングの問題から這い上がってきた後、自分たちの足場を見つけ始めたところです。非常に早い時期です。DeepDAOによると、上位のDAOの運用資産は9億5200万ドルに過ぎません。これは、すべてのDAOの資産を合わせると、時価総額で86番目に価値のあるクリプトにランクされることになります。

しかし、すでに魅力的な実験や動きが行われています。

Louis Grxは以下のようないくつかの異なるタイプのDAOを紹介しています。

クリエイターDAO: Jarrod Dicker氏、Patrick Rivera氏、Brian Flynn氏はクリエイターが自分の作品を所有し、その利益を真のファンと共有する可能性について書いています。現在、Creator DAOの主な例はありませんが、今日NFTを制作している人たちの中には、明日、ファンに購読ではなく投資をさせるDAOを立ち上げる人もいるのではないでしょうか。

プロトコルDAO: 金利プロトコルのCompoundや流動性プロトコルのAaveのようなDeFiプロトコルにより、クリプト所有者は何十億ドルもの価値のある資産から収入を得て、財務的報酬やガバナンスをコミュニティと共有することができます。

トークン化されたコミュニティ: 先週、ソーシャルマネープラットフォーム「Roll」がハッキングされ、トークン化されたコミュニティは打撃を受けました。しかし、DAOとは異なり、ハッキングはトークン化されたコミュニティを消滅させるのではなく、バラバラになったコミュニティとそのメンバーが集まって、影響を受けた人々を全体的にまとめることで、コミュニティをより強くしました。リチャード・キムのRNGはトークン化されたコミュニティの代表的な例であり、Miquelaの生みの親であるトレバー・マクフェドリーズが設立したFWBもそうである。

投資家DAO: ここで私たちは一周します。LAOはDAOが失敗したところを拾っています。LAOのメンバーは14,809ETHを拠出し、Flamingoのような他のDAOを含むブロックチェーンベースのプロジェクトに投資しています。

NFTと同様に、現在行われている初期の実験は将来の可能性のほんの一部である可能性が高い。DAOが数千億ドル規模の上場企業と競争するのは、数十年後かもしれません。例えば、分散型ライドシェアリングネットワークや、最小限の抽出手数料を徴収するアプリストアなどですが、私たちが考えるよりも早く実現するかもしれません。ジャックは最近絶好調で、クリプトを愛しています(最初のツイートをNFTとして販売したこともあります)。もしかしたら、Twitterの分散型ネットワーク「Blue Sky」を立ち上げ、その所有権とガバナンスをコミュニティに委ねることができるかもしれません。

小さく始まって進化する可能性の方が高いでしょう。今日、バランスシート上でビットコインを購入し、NFTを作成している企業(Charminタコベルがそうですね)は近い将来、小さなプロジェクトや会社の機能のためにDAOを実験的に導入するかもしれません。より多くのDAOツールが登場すれば、小規模なテストを行うことはますます容易になるでしょう。すでに、DAOレゴキットは充実してきています。

新しいツールは、より多くのアクセスを意味します。Seed Clubは、そのすべてをナビゲートすることもできます。新しい企業が、構築、実験、学習、反復、リミックス、再構築、テスト、プロダクトマーケットフィットの発見、コミュニティへの参加、そしていつの日かコミュニティへの還元を行うことが、これまで以上に容易になります。

この分野のエネルギーは伝染しやすく、コミュニティは非常に包括的で親切です。クリプトの残高が膨らんでいるからかもしれませんが、彼らは昨年のクリプトの冬にも建設を続け、次の冬が来ても建設を続けるでしょう。

ETHを買わされて深みに嵌った後、私は以前よりも混乱し、以前よりも好奇心が強くなり、この空間で人々が一緒に何を構築するかを見ることに非常に興奮しています。私は自分でCreator DAOを作ってみたいと思っています。DAOが最終的にどのような形になるのか、どのようなガバナンスやインセンティブモデルが主流となり、最もエネルギーを集めるのか、いつ1兆ドル規模のDAOが登場するのかはわかりませんが、必然的なもののように感じています。

DAOは斬新で、ちょっとしたヒッピーのように感じられます。プロジェクトや会社の所有権や支配権をコミュニティに与えるというのは、物事のやり方としては間違っていると思います。しかし、考えれば考えるほど、ステークホルダー・オーナーシップは自然な状態であり、このように広く分散したガバナンスやオーナーシップを調整する技術やモデルはこれまでなかったのではないかと思います。

タブラ・ラサと現代のテクノロジーがあれば、取締役会のコントロールが大きく集中しているシステムよりも、DAOのようなシステムを設計することができると思います。

私は、私たちがそこに到達すると信じ始めています。十分な情熱、ツール、発言力、インセンティブを持った賢い人々が、友好的な適者生存の文化と相まって、次の大きなものへの道を迅速に実験することができるのです。そうなれば、世界は大きく変わるでしょう。

透明性と価値の共有の精神に基づき、私がこの作品の研究に使用したすべてのソース資料のドキュメントを紹介します。DAO Links. クリプトの深みへの旅をお楽しみください。

Web3をサポートしてくれたPatrick、Jess、Ryan、そして編集を担当してくれたDanに感謝します。

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Status Monkeys (Status as a Serviceフレームワークを用いた社会的ネットワークとしてのNFTの分析)

Status as a Serviceフレームワークを用いた社会的ネットワークとしてのNFTの分析

先週の月曜日から新たにNot Boringに参加された1,901名の方々を歓迎します。67,713人のスマートで好奇心旺盛な人たちと一緒に、ここで購読してみませんか?

こんにちは、皆さん👋 

土曜日、プジャと私はCOVID以来初めての郊外での結婚式に行ってきました(クープとリズ、おめでとう!)。リッチモンドまでの往復で車の中にいる時間が長かったので、ワイルドなアイデアを考える時間がたくさんありました。

では、さっそくご紹介しましょう。


▼本記事の内容
  1. Status Monkeys
  2. Status as a Service(サービスとしてのステータス)
  3. NFTの最近の歴史を振り返る
  4. Investment as a Status(ステータスとしての投資)

* この記事は、「Status Monkeys」を著者の了承を得て翻訳したものです。

著者: Packy McCormick
翻訳者: 渡辺圭祐


Status Monkeys

この週末、ツイッターではThe DEADが私を追いかけてきました。Haley Joel Osment的な意味ではなく、このアバターがどこにでも出てきていたのです。

知らない人のために説明すると、この緑の男はCryptoPunkです。CryptoPunksは24×24ピクセルアートのNFTで、その数は10,000個にも及びますが、今後増えることはないでしょう。2017年6月にLarva Labsが作成したCryptoPunksは、OG NFTです。新しいNFTプロジェクトが刻々と登場する中、CryptoPunksはその古さゆえに希少価値があります。

そのため、ここ数週間でNFTの価値が急上昇すると、CryptoPunksがその先頭に立ちました。最も高価なPunkは、3月に4.2k ETHで販売されました。現在では757万米ドルの価値があります(2021年8月9日時点)。今、自分だけのPunkを購入したい場合、最も安いものでも51.85ETHです。これが最低価格です。この価格では、より一般的なPunkが購入できます。上の写真のようなApe、Alien、ZombieなどのレアなPunkを購入するには、もっと多くのETHを支払う必要があります。

その他、CryptoPunksについて知っておくべきことをいくつかリストアップします。

• Punkを所有することは、フェラーリや高価なハンドバッグを所有するようなステータスシンボルです。
• Punkのオーナーは、自分のPunkの画像をプロフィール画像(PFP = picture for proof and profile pic)として使用することがよくあります。
• 自分が所有していないPunkをプロフィール画像として表示すると、顰蹙を買います。

この週末、何百人もの人がプロフィール写真を、金曜日のオークションで1,201.725ETH(375万円)で落札された、あのたった一枚のZombie Punkに変えました。これほど多くの人が、分解されたパーティーハットの絵文字をつけたPunkを表示しても、誰も眉をひそめませんでした。

金曜日のオークションでは、478人の人々がPartyBidに参加しました。PartyBidは、Anish Agnihotri氏とPartyDAOのクルーが作った新製品で、人々がチームを結成してNFTに入札することができ、リソースをプールして、金持ちクジラに対抗して数百万ドルのPunkを狙うことができます。彼らは自らをParty of the Living Deadと呼びました。そして、彼らは勝利したのです。

ソース: Chuck Anderson

PartyBidは、NFTをよりソーシャルなものにしています。前もって文字通りのパーティーを行い、後ろでは何百人もの人々が高価なNFTを購入し、所有し、一緒に管理する機会を提供しています。そのソーシャル性はウェブサイトを見れば一目瞭然で、まるでFigmaMasterworksが子供を産んだかのように、カーソルやコメントがリアルタイムで飛び交っています。金曜日のオークションが進むにつれ、動くカーソルや絵文字で表現された何百人もの人々が、目に見えてサイト内をズームしていきました。言葉で説明するのは難しいのですが、上の画像を見ていただければわかると思います。ぜひ、ご自身で訪れて確認してみてください

ゾンビのようにNFTは死んでいるはずでしたが、どうなっているんでしょうか?

私には仮説があります。

木曜日の夜、Sriram KrishnanAarthi Ramamurthyと共にクラブハウスのGood Time Showに出演し、Gabby Dizon(YieldGuild)、3LAU、Donnie Dinch(Bitski)、Jarrodd Dicker(The Chernin Group)、Jon Lai(a16z)、Jesse Walden(Variant)とメタバースについて議論しました。

Not Boringの読者は、この時点でメタバースについてよく知っているでしょう。何ヶ月も何ヶ月も前から話題にしていますからね。メタバースに結びつけられそうなものは何でもメタバースに結びつけてしまう罪深さがあります。

ここ数週間でメタバースは主流になりました。Matthew Ballは9部作のシリーズを発表しました。Satya Nadellaはエンタープライズメタバースについて語りました(楽しそう!)。ZuckとCoは、この2週間で100万回も「メタバース」と口にしました。Ben Thompson氏はメタバースに関する記事を書いています。

メタバースではNFTが重要な役割を果たします。あらゆるものがデジタル化されたとき、自分が何かを所有していることを証明し、それをインターネット上で持ち運べるかどうかが鍵となります。しかし、これはメタバースの一部ではありません。ソーシャルネットワークの一部なのです。

Good Time Showでの会話の中で、Jarrod DickerがWeb3におけるコミュニティとステータスの重要性を持ち出したこと子供の頃の考えを呼び起こしました。NFTは、Eugene Wei氏のStatus as a Serviceにあるように、ソーシャルネットワークとして成功するための多くの要素を満たしています

完全なメタバースが登場する前に、JPEGよりも大きな何かがすでに起こっています。NFTは他のソーシャルネットワークやコミュニティの上に位置する新しいタイプのソーシャルネットワーク、つまりスーパーバースのようなものだと感じ始めており、ソーシャルネットワークを評価するのに、Wei氏が提唱したStatus as a Service(StaaS)以上のフレームワークはありません。

Status as a Service(サービスとしてのステータス)

(Status as a Serviceを読んで理解された方は、このセクションは読み飛ばしていただいて構いません)

Amazon、Hulu、Flipboard、Oculusでプロダクトリーダーを務めたEugene Weiは、インターネット上で最高の技術系エッセイストの一人です。彼が書いたものはすべて実質的に規範となりますが、2019年2月に書いたStatus as a Serviceは、彼の最大の貢献と言えるかもしれません。

この作品を見るとNot Boringが短く感じられます。なんと19,825語もあるのです。まだ読んでいない方はぜひ読んでいただきたいのですが、とりあえず、この作品に関連するいくつかの要点をまとめておきます。

StaaSは2つの原則から始まります。

• 人はステータスを求めるサルである
• 人はソーシャルキャピタルを最大化するために最も効率的な道を探す

これらは議論の余地がないですが、Wei氏は社会的ネットワークをステータスやソーシャルキャピタルの次元で分析してはいけないと主張しています。お金の方が簡単で、数字があり、測定されたものが分析されるからです。

ソーシャルキャピタルは多くの意味で金融資本の先行指標であり、その性質はより厳密に吟味されるべきものです。投資やビジネスの手法として優れているだけでなく、ソーシャルキャピタルのダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理と思われるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができるのです

Wei氏はNFTが流行する2年前に、1,000語にも満たない文章で、知らず知らずのうちに、今起きていることを分析するための基礎を築いていたのです。NFTはソーシャルキャピタルと金融資本の境界線を曖昧にするもので、メディアがすぐに指摘したように、数千ドル、数百万ドルのJPEG画像を購入することは不合理に思えます。

NFTを否定する人々が犯している過ちは、ソーシャルネットワークの分析において人々が犯している過ちと同じで、ソーシャルキャピタルの重要性を見落としているということです。従来、ソーシャルネットワークのネットワーク効果を説明する際には、以下のメトカーフの法則が用いられてきました。

通信ネットワークの価値は、そのシステムに接続しているユーザーの数の二乗(n^2)に比例する

この法則によれば、ソーシャルネットワークのユーザー数が多ければ多いほど、新しいユーザーにとっての価値が高まることになります。

問題はメトカーフの法則が現実の世界で起こっていることを完璧には説明できないことでした。メトカーフの法則によると、最初に大きくなったネットワークが新しいユーザーにとって最も価値があるため、ますます乗り越えられないリードを築き続けることが予測されます。しかし、フェイスブックはMySpaceを倒し、インスタグラムとスナップチャットは若いユーザーの関心をフェイスブックから奪いました。人々の嗜好はそれほどきれいには捉えられません。

ネットワーク効果やメトカーフの法則が間違っているのではなく、人々が純粋なユーティリティを超えてソーシャルネットワークを利用する理由が捉えられていなかったのです。そこでWei氏は、ソーシャルキャピタルを加えた、ソーシャルネットワークの強さを分析する新しいフレームワークを提案しました。

ソース: Eugene Wei

Wei氏はソーシャルネットワークの強さをソーシャルキャピタル、エンターテインメント、ユーティリティの3つの軸で評価しています。彼は記事の中でソーシャルキャピタルとユーティリティに注目しました。

ユーティリティは比較的理解しやすいです。Quoraで質問の答えを見つけたり、フェイスブックで連絡先がわからなくなった高校時代の友人に簡単に連絡が取れたりすれば、それらの製品はあなたにユーティリティを提供していることになります。

一方、ソーシャルキャピタルは定義が難しく、「成功したステータス・ゲーム」の創造に依存しています。新しいソーシャルネットワークが成功するものと失敗するものがある理由を説明するために、彼は暗号通貨というメタファーを使いました。

新しいソーシャルネットワークは、4つの点でイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に似ていると言います。

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。

実にいい比喩ですね。ビットコインとツイッターを例にとります。

1. ビットコインはビットコイン(BTC)を発行する。ツイッターはフォロワーを「発行」する。
2. マイナー(採掘者)はネットワークの安全性を確保するためにBTCを受け取る。ツイッターのユーザーは、140字/280字以内で気の利いたこと、面白いこと、心を開くようなことをつぶやくことでフォロワーを得る。
3. BTCを採掘するには以前よりもコストがかかり、2100万BTCがすべて採掘されるまでは、さらに難しくなる。ツイッターの初期には昼食に何を食べたかをつぶやくことでフォロワーを得ることができたが、現在では長いスレッドに頼るようになった。
4. これは自明である。

ビットコインもツイッターも15年前には存在しませんでした。しかし、今ではどちらも圧倒的な存在感を示しています。これらはアーリーアダプターに報酬を与え、ネットワークのために仕事をするインセンティブを与え、新しいトークンを採掘するのがますます困難になるようにすることで、無から有へと起動したのです。

4つのポイントはどれも理解しておく必要がありますが、最も役に立つのはステータスゲームにおけるプルーフ・オブ・ワークの考え方です。ツイッターに登録した人が登録しただけで100万人のフォロワーを獲得したとしても、100万人のフォロワーを持つことにソーシャルキャピタルはありません。フォロワー数が多いということは希少価値があるということであり、プルーフ・オブ・ワークの要件がその希少性を生み出しているのです。

エンターテインメントを抜きにして、Wei氏はソーシャルネットワークが辿ることのできる5つの曲線について語っていますが、そのうちの4つはソーシャルキャピタルと時間経過によるユーティリティのトレードオフです。

ソース: Eugene Wei

• 最初にユーティリティ、次にソーシャルキャピタル
ツールのために来て、ネットワークのために留まる(Come for the tool, stay for the network)」。インスタグラムはまず簡単な写真編集ツールでユーザーを魅了し、写真をベースにしたネットワーク上に人々が巨大なフォロワーやビジネスを構築するようになりました。

• 最初にソーシャルキャピタル、次にユーティリティ
Wei氏はFoursquare、Wikipedia、Quora、Redditをソーシャルキャピタルの付与を約束して人々に無料で仕事をさせ、それが大衆にとってのユーティリティーとなった製品として紹介しています。

• ユーティリティはあるが、ソーシャルキャピタルはない
メッセージングアプリは知り合いとのコミュニケーションには非常に便利ですが、ユーザーがソーシャルキャピタルを構築するのにはあまり役立ちません。

• ソーシャルキャピタルはあるが、ユーティリティは少ない
Wei氏はフェイスブックをこのカテゴリーに入れており、彼の友人の多くがフェイスブックを使うのをやめても生活に何の影響もなかったと述べています(これは私にも当てはまりますし、皆さんの多くにも当てはまるのではないでしょうか)。

• ソーシャルキャピタルとユーティリティーの両方を同時に持つ
5つ目のカテゴリー「聖杯」です。その例として、Wei氏は中国のWeChatを挙げています。WeChatはフェイスブックのようなMomentsフィード(ソーシャルキャピタル)と、私が過去の記事で書いたような多くのユーティリティーを組み合わせています。

人々はWeChat を使って友人にメッセージを送ったり、買い物をしたり、ニュースを読んだり、ゲームをしたり、実店舗で支払いをしたりしています……携帯電話でできることはほとんどすべてWeChatでできます。

WeChatは最初からソーシャルキャピタルとユーティリティーの組み合わせを実現していましたが、これは欧米ではあまり真似されていません。

しかし、Wei氏はうまくいったソーシャルネットワークであっても、成長を制限したり、完全な崩壊につながる2つの漸近線があることを指摘しています。

社会的漸近線の1つ目は、プルーフ・オブ・ワークです。
世界中の誰もが特定のソーシャルネットワーク上でソーシャルキャピタルを獲得するために必要なことをできるわけではないので、上限ができてしまうのです。私はTikTokに魅了されていますが、TikTokで動画を作ったことはありません。私はダンスが得意ではありませんし、TikTokのアルゴリズムが要求することを上手にこなすための努力はしないからです。TikTokは今でもとんでもない速さで成長していますが、ソーシャルネットワークが大好きな私でさえ使わないのであれば、どこかに天井があるのではないでしょうか。

社会的漸近線の2つ目は、ソーシャルキャピタルのインフレとデフレです。
インフレの側面は、あるソーシャルネットワークが成功しすぎて、多くの人が利用するようになると、その企業は必然的にアルゴリズムフィードを導入して、ノイズを全て処理する必要が出てくるということです。Wei氏はフェイスブックがアルゴリズムフィードを導入するのは、常にあり得ることだったと主張しています。なぜなら、豊富なデジタル世界で唯一の希少な資源はユーザーのアテンションであり、ユーザーが最も関心を持ちそうなものを配信する必要があるからです。理にかなっていますが、オーディエンスとのつながりをフェイスブックに依存していた企業にとっては厳しい状況でした。

デフレの側面では、ソーシャルネットワークは多くの人が参加すればするほど、クールでなくなっていきます。典型的な例は、フェイスブックに親が参加し始めた時に起こったことで、若者は皆、インスタグラムやスナップチャットに移ってしまいました。クールな子供たちが去り始めると、少しばかりクールでない子供たち、次のグループ、その次のグループと続き、また、クールでないグループ(この場合は親)がどんどん参加してくるので、クールである割合は急速に悪化していきます。

その時点で、その製品やサービスはユーティリティ軸上で可能な限り遠くに移動していなければ、解約の速度が速く鼻血が出る可能性がある」とWei氏は注意を促しています。

以下が議論の重要ポイントです。

• ソーシャルネットワークは、ネットワーク効果だけでなく、それ以外の要素も含めて分析する必要がある。

• 分析には3つの軸があります。ソーシャルキャピタル、ユーティリティー、エンターテイメントである。

• 新しいソーシャルネットワークはICOのようなもので、特に成功したものは適切な難易度のプルーフ・オブ・ワークを用いて希少性とステータスを生み出すことができる。

• ソーシャルネットワークには様々な道筋があるが、一番良いのは最初からソーシャルキャピタルとユーティリティが高いことである。

• 成功したソーシャルネットワークであっても、プルーフ・オブ・ワークの上限とソーシャルキャピタルのインフレ/デフレという2つの漸近線に直面する可能性がある。

• 高いソーシャルキャピタルでスタートしたネットワークが生き残り、成功するためには、これらの漸近線に到達する前にユーティリティを構築する方法を見つけ出す必要がある。

Wei氏は記事の残りの部分で、例を挙げて、この問題に豊かさを加えています。読んでいただきたいのですが、今回の目的のために、特に価値のある豆知識をいくつか紹介します。

• ソーシャルキャピタルは一時的なエネルギーとして利用できる
「このようなソーシャルキャピタル蓄積のインセンティブは、ステータスへのポテンシャル(位置)エネルギーを、ベンチャーが必要とするあらゆる形の運動エネルギーに変換する方法と考えることができます」。

• 新しいプルーフ・オブ・ワークがステータスゲームを長くする
ソーシャルネットワークが、ステータスゲームの半減期を長くするために新しい形のプルーフ・オブ・ワークを追加する必要がある理由と、ゲーム会社から学べることについて。「ラスベガスのカジノゲームは、リアルマネーを支払うことで、プレイのROIに魅力的なフロアを設定しています。MMORPGの中には、ゲームをプレイするという純粋なスキルの挑戦よりも長く続く、コミュニティの感覚のような他の利益をプレイヤーに提供しているものもあります。」

• ソーシャルキャピタルと金融資本はお互いに交換可能である
「レベルアップしたWorld of Warcraftのキャラクターという無形の資産がマーケットで売られた時にその価値が分かるように、こうした取引によってソーシャルキャピタルに具体的な価値を与えることができるのです。」

• ソーシャルグラフの移植性の欠如は、ユーザーにとってフラストレーションとなる
これは特に重要で、従来のソーシャルネットワークとNFTの主な違いを強調しているので、ここで大きく引用しておきます。

グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークの観点からはポジティブなことですが、ユーザーの観点からはフラストレーションが溜まります。独占禁止法の消費者福祉基準に基づいてソーシャルネットワークに取り組むことの難しさを考慮すると、巨大なネットワーク効果ビジネスの力を抑制するためのオプションとして、(多くの人が提案しているように)ユーザーが自分のグラフを他のネットワークに持ち込むことを許可することが挙げられるでしょう。これにより、ソーシャルネットワークはソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティーやエンターテイメントの軸での競争を余儀なくされます。

もし、ソーシャルネットワークの利点を、よりポータブルで分散化されたパッケージで得られるとしたらどうでしょう?今こそ、それをNFTに委ねる時なのです。

NFTの最近の歴史を振り返る

非常に簡単なおさらいですが、NFTはNon-Fungible Tokenの略です。NFTの特徴は、デジタル資産に希少性を持たせることです。希少性はエキゾチックカーや美術品、希少な切手のように、デジタル資産に価値を与えます。BeepleのEverydaysは、もし所有者が公式版を購入したことを証明する手段がなければ、6930万ドルでは売れなかったでしょう。

ソース: Beeple

NFTは2017年にCryptoKittiesで始まりましたが、2021年初頭に本当に熱くなりました(私が最初に書いたのは1月後半です)。BTCとETHが史上最高値を更新する中、BeepleとNBA TopShotが牽引しました。新しく暗号化された金持ちは、金持ちがすることをした: アートを買った。NFTは、信じられないような顔をされ、おもちゃのように扱われた。

ソース: The New York Times

そして、4月には暗号価格が暴落し、それに伴ってNFTも冷え込みました。NFTを信じられない人たちは、「ほら、jpegに何百万ドルも払う人が出てきたときにバブルだとわかったんだよ!」と言っていました。

6月には、暗号サイトのProtosが多くのブログの1つとしてこのような記事を掲載し、いずれも90%の取引量の崩壊を挙げています。

ソース: Protos

記事の2文目にはこう書かれていました。「NFTは5月3日にピークを迎え、1日で1億200万ドル分が販売された」。しかし、パーティーは正式に終わりました。「しかし、Protosが分析したデータによると、過去1週間に処理されたNFTの売上はわずか1,940万ドルでした。」

そして、この1ヶ月ほどの間におかしなことが起こりました。NFTが復活したのです。この24時間の間に、OpenSeaとAxie Infinityという2つのマーケットプレイスで1億600万ドル相当のNFTが取引されたのです。

DappRadarによると、過去30日間でトップ10のNFT市場の取引量は18億6000万ドルに達しました。

ソース: DappRadar

今回はゲイリー・ゲンスラー新会長の下でSECが規制に関心を高めていることや、インフラ法案へのワーナー・ポートマン修正案による潜在的な弊害にもかかわらず、ETHやBTCの価格が上昇していることから、ETHやBTCがNFTの価格を引っ張っているのではなく、逆にNFTが引っ張っているように感じられます。

では、なぜNFTが復活したのか、そしてなぜNFTはずっと存在し続けるのか。ここで友人のEugene Wei氏に話を聞いてみましょう。

Investment as a Status(ステータスとしての投資)

まずは、Wei氏自身が行った2つの原則から始めるのがよいでしょう。

・人はステータスを求めるサルである
・人はソーシャルキャピタルを最大化するための最も効率的な方法を探す

ステータスを求めるサルがソーシャルキャピタルを最大化するための最も効率的な方法として、デジタル・サルに変わり始めているという事実には非常にメタ的なものを感じます。

NFTサマーでは、サルが主導的な役割を果たしました。

先月のNFTコレクションの第3位は、Bored Ape Yacht Club(BAYC)です。CryptoPunksのようにBored Apesは1万匹しかいません。

ソース: DappRadar

Bored Ape Yacht Clubのウェブサイトでは、「トークンがサルのための沼地クラブの会員権を兼ねる限定NFTコレクション 」と称しています。

ソース: Bored Ape Yacht Club

CryptoPunksとは異なり、BAYCは4月30日に発売されたばかりのブランドです。しかし、ソーシャルキャピタルとユーティリティを兼ね備えていることから、すでにNFTコレクションの中で3番目に人気のあるコレクションとなっています。『The New Yorker』誌のKyle Chayka記者は、「Why Bored Ape Avatars Are Taking Over Twitter」という記事を書いていますが、その中でXMTPの創設者であるMatt Galligan氏(彼はツイッターのアバターにApeを使っています)は「高級時計や珍しいスニーカーを履くように、一種のステータスシンボルになった」と述べています。

ヨットクラブのデジタルな壁の外でも「サル」がテーマになっています。これまでで最も高価なCryptoPunks4枚のうち2枚が、そして7月に販売された最も高価な2枚が、希少なApesでした。

ソース: Larva Labs

人々がピクセル化されたサルの写真に何百万ドルも費やすことが不合理に思えるとしたら、「ソーシャルキャピタル・ダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理に思えるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができる」ということを思い出しましょう。

というわけで、明らかに現実味を帯びてきたものを否定するのではなく、もう少し深く掘り下げて、エンターテインメントも含め、StaaSの軸にNFTを取り入れてみましょう。

ソース: Status Monkeys


上のグラフこそが価値あるNFTの力なのです。ソーシャルキャピタルとユーティリティーが高く、エンターテイメント性も高い。ソーシャルネットワークの三要素が揃っているのです。

ソーシャルキャピタル
NFTはゲームに参加しているソーシャルキャピタルです。それはステータスとしての投資です。CryptoPunkとApeは1万人しかいませんが、その限られたセットの中に、特に価値のあるもの、つまりステータスの高いものがあります。CryptoPunkやBored Apeを所有し、それをツイッターやDiscord、Telegramのプロフィール写真として表示することは、あなたについて何かを語ることになります。早い時期から始めたか、金持ちか、早い時期から初めて今金持ちになったかのどちらかだと言われています。高価なものを使ってソーシャルキャピタルを増やすことは、新しいことではありません。美術品、高級車、ヨット、プライベートジェット、ハンドバッグなど、大金持ちがステータスを示すために購入する希少価値の高いものはたくさんあります。ただ、NFTはより見やすく、公共性が高いのです。

ユーティリティ
NFTは投資として、Discordグループへのアクセスチケットとして、さらにはデジタルで壁に掛けられるものとしてのユーティリティも備えています。NFTが進化し、より多くの人々に浸透していけば、NFTの所有者はイベントやユニークな体験にアクセスできるようになるでしょう。

すでに、Bored Apeを購入すると、Bored Ape Yacht Clubにアクセスできます。AxiesのようなNFTは、所有することで何万人もの人々の雇用につながるという、真のユーティリティを提供します。CryptoPunk社を設立したLarva Labs社のMeebitsは、3Dモデルとアニメーションが付属しており、ゲームのキャラクターとして利用することができます。

Meebits, from Larva Labs

エンターテイメント
Wei氏は(TikTokとSorting Hatという記事が出るまで)手を出しませんでしたが、成功しているソーシャルネットワークのほとんどは、エンターテインメント軸でも高得点を出しています。TikTokはソーシャルネットワークであると同時にエンターテインメントネットワークであると言っても過言ではありません。YouTubeも同様です。人々は毎日何時間もツイッターをスクロールして、何もせずに純粋に受動的なエンターテインメントを楽しんでいます。NFTも同様にエンターテインメントです。販売状況を見るのは楽しいですし、ApesやPunkを主役にしたペルソナやオンラインキャラクターをすでに作っている人もいます。PartyBidでの入札は投資であると同時に社会的な活動でもあります。

NFTのエンターテインメントの軸はまだ始まったばかりです。Punks Comicでは16人のPunksをモチーフにしたキャラクターが登場するコミックブックを制作しており、今後も続々と登場する予定です。Bored Apesにも近々展開される予定です。

ソース: Punks Comic

それは明らかに最初のステップに過ぎません。多くのNFT支持者はNFTとして記念されない大きな文化的イベントは存在しないと考えており、それはイベント自体に反映され、現実世界で何が起こるかによって変わるかもしれません。

では、NFTはソーシャルキャピタル、ユーティリティー、エンターテイメントを提供するものですが、新しいソーシャルネットワークはICOに似ているというWei氏の考えに対して、NFTはどうなのでしょうか?両者が暗号プロジェクトであることを考えると、これはあまりにも簡単なことです。

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。✅
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。✅
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。✅
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。✅✅✅

ここにはいくつかのニュアンスがあります。

NFTはソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルをより直接的に結びつけるものです。貴重なNFTを手に入れるには、鋳造されたばかりのものや、まだコミュニティが関心を持っていない時期のものをいち早く手に入れるのが一つの方法です。もう1つは、ただ飛びついて購入することです。前者は、どのプロジェクトを早期に支援すべきかを判断するためのプルーフ・オブ・ワークであり、後者はETHを提供してプロジェクトを支援し、参加するためのプルーフ・オブ・ステークに近いかもしれません。

直接的な類似点もあります。多くの人、特に年配の人は嘲笑するでしょう。

私も認めますが、NFTをソーシャルネットワークとして利用するのは橋を渡りすぎた感があります。

NFTはソーシャルネットワークではなく、どちらかというと、小さなコミュニティのように見えます。しかし、地元のエキゾチック・カー・クラブは、カントリー・クラブと同様に、ある種のソーシャルネットワークであり、分析に十分な意味を持つには小さすぎます。NFTはステータス・シグナリングとソーシャルキャピタルをグローバル・スケールでオンライン化します。しかし、フェイスブックやスナップチャット、TikTok、ツイッターがソーシャルネットワークだとすると、NFTは何か違うように感じます。

私もそう思います。しかし、それは正しい戦略でもあります。

Status as a Serviceの中で、Wei氏は「ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?」というセクションを書いています。基本的には既存のソーシャルネットワークと同じ中核的なプルーフ・オブ・ワークの仕組みを使い、いくつかの機能を追加しても、それぞれを使いこなすには同じスキルが必要であり、人々はより多くの人がいる方に引き寄せられてしまうため、うまくいかないのです。Bitcloutはツイッターのようなものですが、暗号化されており、ツイッターと同じように、気の利いたこと、面白いこと、知的なことを言う人に報酬を与えます。違うのは、Bitcloutで成功すれば自分のトークンの価値が上がり、お金を稼ぐことができるということです。ソーシャルキャピタルと金融資本を直接交換することで、人々が仕事を複製したり、仕事を新しいプラットフォームに移したりすることは可能ですが、それは困難です。

そうではなく、全く新しい行動に報酬を与える必要があります。NFTは既存のお気に入りのソーシャルネットワークから離れてもらうわけではないので、十分に機能するでしょう。むしろ、みんなが自分の好きな既存のSNSでNFTを自慢したり、話題にしたりする方が、NFTコレクションやその保有者全員にとって良いことだと思います。話題になることで、直接的に需要が増えることもあれば、間接的にチャンスが生まれることもあります。Netflixの幹部がツイッターでみんながCryptoPunksについて話しているのを見たら、それを所有者に報酬を与える番組にするかもしれません。もしChristie’sの誰かが、自分が参加しているDiscordでみんながArt Blocksについて話しているのを見たら、Squiggleをオークションに出して、コレクション全体に信頼性と広がりをもたらすかもしれません。

SnowfroによるChromie Squiggle #5994, ArtBlocks

そうなれば、各NFTオーナー(またはオーナーグループ)は、ネットワーク上で利用できる膨大な量のソーシャルキャピタルを構築することになります。もしCryptoPunksがNetflixで番組を配信すれば、その番組に出演したPunksはそれだけで有名人になり、さまざまなソーシャルネットワークで利用できる外生的なソーシャルキャピタルを構築することができるかもしれません。

NFTは伝統的な意味でのソーシャルネットワークではありません。NFT社は存在しません。NFTには、すべてのNFTオーナーが集まり、NFT, Inc.が集約するようなホームとなる場所がありません。もしかしたらOpenSeaがやっているのかもしれません。CryptoVoxelsやDecentraland、The Sandboxのようなブロックチェーンゲーム/仮想世界のようなものかもしれません。フェイスブックの@harvard.eduアドレスのように、NFTを所有することが入場料になるような偽名のソーシャルネットワークを誰かが構築するのかもしれません。もっとも、上記のどれでもないでしょう。それは何か新しいもの、つまりスーパーバースです。

「スーパー 」は「超」という意味ではありません。NFTは他のネットワークの上に位置する、つまりスーパーなソーシャルネットワークかもしれないという意味です。

Wei氏が書いているように「グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークから見ればプラスですが、ユーザーから見ればフラストレーションが溜まります」。彼は、もし規制当局がソーシャルネットワークにグラフの移植を強制すれば、「ソーシャルネットワークは、ソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティやエンターテイメントの軸で競争することになります」と述べています。

もし、規制の代わりに、ポータビリティ(移植可能性)の力を証明する新規参入者がいたとしたらどうでしょう。私が「暗号は偉大なオンラインゲームのネイティブトークンのようなものだ」と書いたのは、そのポータビリティのことを指しています。ある場所でステータスを獲得し、プラットフォームのリスクなしに所有し、インターネット上で持ち歩くことができます。NFTの場合もプラットフォームの盛衰に関わらず、同じことが言えます。プロフィール写真があるソーシャルネットワーク(つまり、すべてのソーシャルネットワーク)は、NFTが広がるための肥沃な土壌となります。オーナーはすでに、ツイッターのアバターとしてPunkを表示したり、インスタグラムの写真にRTFKTのスニーカーを表示したりしています。

また、移動するのは個人だけではありません。特定のNFTを集団で所有するグループ、例えばPARTY OF THE LIVING DEADやNFTを所有するDAOなどは、Discordをベースキャンプにして、新しいプラットフォームには群れをなして移動し、そこから新たな領域へのミッションを開始することができます。新しいプラットフォームでも既存のプラットフォームでも、メンバーは貴重なNFTを所有することで得られる外生的なソーシャルキャピタルをもたらし、グループとしてNFTアバターのソーシャルキャピタルを構築することができます。このスレッドでは、ミニネットワークとしての小数化されたNFTと、1万個の希少価値のある資産を何十万人、何百万人もの人々に支えられ、宣伝された1万個の希少価値のある資産に変える能力について語っています。

(アバターは新しいクランタグやギルドバナーと考えてください。NFTはメタバースの新しいソーシャルハブとなるでしょう。突然、1万人のユニークなPFPが、1万人をはるかに超える人々の間で統一されたスレッドになるのです。これが実現するのを見るのが楽しみです。パンクスとBAYCにとって非常に有望だと思います。)

Wei氏はクリス・ディクソンの「ツールのために来て、ネットワークのために残る」というアイデアについて書きました。NFTは社会的にも経済的にも最も価値のある場所に、ツールのために来て、ネットワークをもたらすことを可能にします。

NFTに関する議論はほとんど、特定のNFTの価格やNFTの総需要がもしかしたら急激に下がるかもしれないというものです。バブルでない状態にもバブルとなる箇所があります。最近では、別の2017年ヴィンテージNFTコレクションEther Rocksの需要が急増し、ロックが10万ドル以上で取引されています。このプロジェクトのクリエーターでさえ「ブロックチェーン上のペットの石」と呼んでいます。この復活はコミュニティがどこまで自分の力を発揮して価値あるものを作れるかを試すもののようです。

ソース: EtherRocks

とはいえ、NFTはWei氏の2つの漸近線に対して耐性を持つという特性を持っているようです。

漸近線1のプルーフ・オブ・ワークに対して、NFTは無限に新しいプルーフ・オブ・ワークを追加する能力を持っており、Wei氏はそれによってステータスゲームの半減期を長くすることができると述べています。Wei氏は、ゲームの寿命を一般的なゲームの寿命よりも延ばすことに成功した2つの例として、ラスベガスのカジノゲームとMMORPGを挙げていますが、これらはNFTと共通する特徴を持っています。ラスベガスのカジノゲームのように、NFTは「リアルマネーを使って、プレイのROIに魅力的な下限を設定できる」。MMORPGのように、NFTのコミュニティの感覚は純粋なスキルによるプレイの難しさよりも長く続きます。とはいえ、NFTは暗号の採用と手頃な価格からの漸進に直面するでしょう。NBA TopShotとFractionalは正しい方向への一歩であり、希少性のメリットを維持しながら、あるいは希少性をコミュニティのような他のメリットに置き換えながら、NFTをより多くの人が利用できるようにするために、さらなるイノベーションが起こることは間違いありません。

社会的漸近線2のソーシャルキャピタルのインフレーションとデフレーションに対して、NFTには分散化されているという利点があります。あるプラットフォームでは、アルゴリズムによるフィードでNFTを紹介することがありますが、NFT自体は持ち運びが可能で、所有者が好きな場所で使用・表示することができます。また、NFTは一枚岩ではなく、小さなコミュニティの集合体であり、それぞれが独自の基準を持っているため、蒸発冷却の影響を受けにくいのです。パンクは1万人しかいませんが、最終的には、それぞれが独自の基準やルールを持つ小さなコミュニティを形成する何千ものDAOや小数所有グループが存在するかもしれません。そのフラクタル構造が、よりレジリエンスを高めてくれるはずです。さらに、出資の証明や所有者が売却時期を選択できることから、親がフェイスブックを買収したようにCryptoPunksを買収するには多くの時間とお金が必要になるでしょう。

まだ早いですよ。この手のものが大好きな私でさえ、PunkやApe、その他の主要なコレクションを所有していません。もっとインフラを整備して、バラバラのNFTプロジェクトをつなぐ布陣を整える必要があります。しかし、NFTには、ツイッター、インスタグラム、スナップチャット、Discord、TikTokなどの既存のネットワークの上に、新しい形のソーシャルネットワーク、つまりスーパーバースを構築し、時間をかけて適応し、繁栄させていくための材料が揃っているように思えます。

NFTの新規プロジェクトは、ソーシャルキャピタルと金融資本の強力な組み合わせで立ち上げることができます。オーナーシップは、ソーシャルキャピタル、ユーティリティ、エンターテインメントをもたらします。次の大きなものを見つけ出すことから、「Punks Comics」のようなブランド拡張を行うこと、コレクション全体の知名度を上げるために特定のNFTをマーケティングすることまで、常に進化し続けるプルーフ・オブ・ワークがあります。Punksのオーナーは、ニューヨーク、マイアミ、ロンドンでビルボードを買い占め、情報を広めています。NFTは 「偉大なるオンラインゲーム 」の一部であり、そのルールや機会は常に進化・拡大しています。お金、ステータス、そしてコミュニティを組み合わせることで、強力なものが生まれます。

いつものように、私はこれらの話がクレイジーに聞こえることを最初に認めます。NFTは新しい形のソーシャルネットワークというよりも、流行のように感じられます。しかし、ありがたいことに、Wei氏はソーシャルネットワークの強さを評価するためのフレームワークを提供してくれており、NFTはそれに対して衝撃的なほど良い結果を出しています。Status as a Serviceの19,825語の中には、NFTがソーシャルネットワークであることを否定するような内容はあまりなく、むしろ、ほぼすべてのセクションで、その考えを支持する小さなナゲットが含まれている。

次の大きなものは、最初はおもちゃのようなものだ。次の大きなソーシャルネットワークは、最初はソーシャルネットワークに見えないかもしれない。未来は私たちが予想する以上にクレイジーなものになるだろう。そして、JPEGの所有権に基づいたソーシャルネットワークは、まさにその条件に当てはまる。

さて、何が言いたいのか?この情報で何をしますか?

ソーシャルネットワークはアーリーアダプターに報い、お金が組み込まれたソーシャルネットワークはアーリービリーバーに二重の喜びを与えます。探ってみましょう。あなたの心に響くNFTを見つけてください。PartyBidに参加しましょう。参加しましょう。そして、神のご加護のためにも、NFTを嘲笑するような年配者にはならないでください。


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Status as a Service (サービスとしてのステータス)

編集部注1: 私には編集者はいません。

編集部注2: このブログを初めて購読する方には、私の記事のほとんどがこの記事ほど長くないことを保証したいと思います。また、前回の記事ほどでもありません。このブログへの投稿を長い間中断していたため、この作品は、通常ならば一連の短い投稿をまとめたものになっています。下にセクションタイトルをつけていますので、興味のないものは読み飛ばしてください。私の短い記事はツイッターにあります。以上、何もお詫びすることはありません。

編集部注3: 嘘ですが、一つだけ謝りたいことがあります。仕事用のパソコンがないため、7年前の13インチのMacbook Proをメインに使わざるを得ず、さらに昨年末には手根管症候群が再発し、手首の痛みで衰弱してしまいました。メインのパソコンはノートパソコンか、iPadだという人もいると思いますが、コンパクトなキーボードで長時間入力すると、手が動かなくなってしまうのです。そこで、昔から愛用しているKinesis Advantage 2エルゴキーボードを使って入力するようにしたところ、調子が戻ってきたのです。

編集部注4: 先日、パトリック・オショーネシー氏のポッドキャスト「Invest Like the Best」に出演した際、ディスカッションの最後に、ソーシャルネットワークとICOの類似性について取り組んでいた新しいエッセイについて触れました。これがその作品です。


▼本記事の内容
  1. ステータスを求めるサル
  2. ソーシャルネットワークの伝統的なネットワーク効果モデル
  3. ユーティリティとソーシャルキャピタルのフレームワーク
  4. ICOとしてのソーシャルネットワーク
  5. プルーフ・オブ・ワークが重要な理由
  6. フェイスブックの独自のプルーフ・オブ・ワーク
  7. ソーシャルキャピタルのROI
  8. ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?
  9. テクノロジー史上最大のソーシャルキャピタル創出イベント
  10. ソーシャルキャピタルの蓄積が若年層に偏る理由
  11. 私には多くのものが含まれている(若き血の言葉)
  12. ソーシャルネットワークの共通点
  13. ソーシャルキャピタルとユーティリティの両立
  14. ソーシャルネットワークの漸近線1:プルーフ・オブ・ワーク
  15. ソーシャルネットワークの漸近線2:ソーシャルキャピタルのインフレーションとデバリュエーション
  16. ソーシャルキャピタルの金利上昇
  17. ソーシャルキャピタル・デフレーション: 希少性の不安定さまたはグルーチョ・マルクスの難問
  18. ソーシャルキャピタルの評価低下リスクの軽減、そしてスナップチャットの戦略
  19. ステータスゲームの半減期を長くする
  20. ソーシャルに苦戦する企業が出てくる理由
  21. ケーキを食べればいいじゃない
  22. ソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルの交換
  23. ソーシャルキャピタルの蓄積と保管
  24. ソーシャルキャピタル・アービトラージ
  25. 一時的なエネルギー源としてのソーシャルキャピタル・ゲーム
  26. 有名人のアプリが失敗する理由
  27. 結論: 誰もが世界を支配したいと思っている

* この記事は、「Status as a Service (StaaS)」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Eugene Wei
翻訳者: 渡辺圭祐


ステータスを求めるサル

“財産が少ない人は、より多くの社会資本を求めているに違いないというのは、誰もが認める真実である。” 

これはジェーン・オースティンが書いたものですが、もし彼女が今の時代を記録していたら、そうしていたと思います(代わりにテイラー・ローレンツがいますが、これはありがたいことです)。

まず、2つの原則から始めましょう。

・人はステータス(地位)を求めるサルである*。
・人はソーシャルキャピタル(社会資本)を最大化するために最も効率的な道を探す

* もし私がギターを弾けるようになってバンドを始めたら、「ステータスを求めるサル」は私のインディーズバンドの名前になるでしょう。

訳者注:
ステータス = 社会的地位: 社会の中に確立された、人々の名誉や威信を伴う位置。Wikipediaより引用
ソーシャルキャピタル: プルーフ・オブ・ワークによって得られるソーシャルネットワーク上の資本。正の方向に蓄積する = ステータスが上昇するという関係にある。

この2つの人間性に関する観察に異論を唱える人はほとんどいないと思いますが、世界史上最大規模で急成長している企業であるソーシャルネットワークがステータスやソーシャルキャピタルの次元で分析されているのを見たことはほとんどありません。

これは測定の問題でもあります。数字は正統性と信頼性をもたらします。私たちは、金融資本とその流れを分母にして測定する方法を古くから持っています。貨幣の価格や動きについては、ウェブサイトの一部や新聞の一部、そして多くの機関が正確に報告しています。

しかし、ソーシャルキャピタルの価値や動きを測定する方法は、少なくともそのような精度や正確さではありません。研究の範囲は広く、かつ貧弱です。もし、ユーザー数以外にも優れた測定方法があれば、この記事や他の多くの記事は、分析に知的な重みを与えるチャートやグラフでいっぱいになるでしょう。MeekerのInternet Trends Reportのように、State of Socialと呼ばれる年次発表が行われるでしょうし、あるいは彼女の年次報告書の50ページのサブセクションになるかもしれません。

それにもかかわらず、私たちが調査したソーシャルメディアネットワークのほとんどは、特にその初期段階では、実際の金融資本よりもはるかに多くのソーシャルキャピタルを生み出しています。そのような企業のほとんどは、シリコンバレーの有名な定説の一つである「初期段階では、ネットワークの急速な拡大を優先して、収益を上げることを先延ばしにすべきだ」という考え方を取り入れています。ソーシャルネットワークが熱を失い、失速し、時には完全に消滅してしまう理由には、ソーシャルキャピタルが大きく関わっています。そして、ソーシャルキャピタルを数値化することはできないかもしれませんが、非常に鋭敏な社会的生物である私たちはそれを感じることができます。

ソーシャルキャピタルは多くの意味で金融資本の先行指標であり、その性質はより厳密に吟味されるべきものです。投資やビジネスの手法として優れているだけでなく、ソーシャルキャピタルのダイナミクスを分析することで、他の方法では不合理と思われるあらゆる種類のオンライン行動を説明することができます。

ここ数年、SaaS (Software as a Service)ビジネスに対する分析は大きく進展してきました。しかし、ソーシャルネットワークの分析はそれほど進んでいません。ソーシャルネットワークの分析は、Paul Romerの内生的技術変化に関する論文が発表されるずっと前の経済成長理論のようだと私は感じています。しかし、ソーシャルネットワークをSaaSビジネスと同じように考えれば、ソーシャルネットワークの謎を解くことができます。この記事では、私がStaaS (Status as a Service)ビジネスと呼んでいるものについて深く掘り下げてみました。

この記事は一連の強力な仮説と考えてください。私が存在するかどうかさえ分からない種類のデータにアクセスできない限り、決定的なことを言うのは困難です。これまで同様、賢明な読者の皆様には、いつものように補足や反論をしていただきたいと思います。

ソーシャルネットワークの伝統的なネットワーク効果モデル

ソーシャルネットワークが成功するための基本的な教訓の一つは、ユーザー数が少ないときに、まず人々にアピールしなければならないということです。一般的には、シングルユーザー向けのユーティリティーを提供することで実現されます。

これはソーシャルネットワークの典型的なコールドスタート問題です。 伝統的なニワトリ卵の問題の答えは、実際に答えることができます。それは、最初に来るのは一羽のニワトリで、次にもう一羽のニワトリが来て、さらにもう一羽のニワトリが来て…という具合です。この問題を難しくするのは、他のニワトリがいないときになぜ最初のニワトリが来て留まり、他のニワトリが後に続くのかという点です。

基本的な教訓の二つ目は、ソーシャルネットワークには強力なネットワーク効果がなければならないということです。ネットワーク効果があれば、ユーザーが増えれば増えるほど、ネットワークはポジティブなフライホイールのように成長し、正のネットワーク効果による複合的な価値により、うなぎ上りの成長がもたらされます。「ツールのために来て、ネットワークのために留まる (Come for the tool, stay for the network)」というクリス・ディクソンの言葉はこの仕組みを表す最も印象的な格言でしょう。

ソーシャルネットワーク以前にも通信ネットワークには「メトカーフの法則」がありました。

通信ネットワークの価値は、そのシステムに接続しているユーザーの数の二乗 (n^2) に比例する。

これはソーシャルネットワークにもきれいに適用されます。直感的に理解できますし、ソーシャルネットワークの成長曲線が古典的な成長S字カーブの足首の部分で急激に曲がる理由を説明する、興味をそそる数式も含まれています。

しかし、より深く掘り下げると多くの疑問が残ります。なぜ大規模なソーシャルネットワークが突然衰退したり、新しい小さなネットワークに負けてしまうのか?シングルプレイヤー用の優れたツールを持つ新しいソーシャルネットワークの中には、ネットワークへの転換に失敗するものがある一方で、一見軽薄な目的を持つものが躍進するのはなぜでしょうか?ユーザー数が増えると価値が下がるネットワークがあるのはなぜなのでしょうか?ユーザー数が増えると失速するネットワークがあるのはなぜでしょうか?なぜ国境を簡単に越えるネットワークと、特定の国に閉じこもるネットワークがあるのでしょうか?メトカーフの法則が成り立つとしたら、フェイスブックが他のソーシャルネットワークの機能をコピーした時、失敗したものもあれば、インスタグラムストーリーズのように成功するものもあるのはなぜなのでしょうか?

これらの説明の多くを結びつけているのがソーシャルキャピタル理論であり、ソーシャルネットワークの分析方法には、ソーシャルキャピタル資産の蓄積やステータスゲームの性質と構造の研究が含まれているはずです。言い換えれば、人はステータスを求めるサルであり、常に最も効率的な方法でより多くのステータスを求めようとしているという事実を、意識的にせよそうでないにせよ、企業はどのように利用しているのでしょうか。

ニッキー・ミナージュの言葉を借りれば、”If I’m fake I ain’t notice because my followers ain’t. (私が偽物であれば、フォロワーがいないので気づかれない) “です。

[(編集部注:実際にはフォロワーが偽物の場合もある)。]

ユーティリティとソーシャルキャピタルのフレームワーク

古典的なネットワーク効果理論はまだ有効であり、私はそれを捨て去るつもりはありません。その代わりに、ソーシャルキャピタルの理論を加えてみましょう。私はこれらを合わせてソーシャルネットワークの健全性を分析する際の2つの軸としています。

実際には、私はソーシャルネットワークを分析するのに、3つの軸を使うことが多いです。

(ソーシャルネットワークの強さを評価する3つの軸)

この記事では、ユーティリティとソーシャルキャピタルの2つの軸だけを見てみたいと思います。

(この記事のソーシャルネットワーク分析の多くを導く基本的な2軸のフレームワーク)

ユーティリティ(実用性)についてはあまり説明する必要はありませんが、私たちはしばしばこの言葉を非常に緩く使い、それほど有用ではないのにユーティリティがあると分類してしまうことがあります(私たちは一般的にサーカスをパンと混同しますが、その逆はありません。フェイスブックのようなソーシャルネットワークは、他の方法では追跡するのが難しい多くの人々と連絡を取ることができ、それは有用です)。 WhatsAppのようなメッセージングアプリを使えば、テキスト料金や追加のデータ料金を支払うことなく、世界中の人々とコミュニケーションをとることができ、それは便利なことです。QuoraやReddit、Discordなど、ほとんどのソーシャルネットワークが何らかの形でユーティリティを提供しています。

もう1つの軸は、正確な言葉ではありませんが、ソーシャルキャピタル軸、またはステータス軸です。ソーシャルネットワークを使ってソーシャルキャピタルを蓄積することができますか?どんな形で?それはどのように測定されますか?そして、そのステータスを獲得するにはどうすればいいのでしょうか?

ソーシャルネットワークの成功にはいくつかの異なる方法がありますが、ソーシャルキャピタル軸で競争するものは、純粋なユーティリティ軸で競争するものよりも神秘的であることが多いです。純粋なユーティリティでの競争は、ダーウィン的で、冷酷で、非常に判断しやすい傾向があります。例えば、メッセージングやビデオ会議などのコミュニケーションサービスの世界がそうです。 この分野への投資は、アプリやサービスの有用性、配信方法の構築など、もう少しわかりやすいものになりがちです。この分野の投資家からデッキが送られてくると、私は喜んで意見を述べますが、それ以上に人工的な名声の世界に思いを馳せるのが楽しいのです。

ステータスゲームの成功は錬金術のように神秘的なものです。そのため、この分野で成功した起業家は、私たちをある種のシャーマンのように考えています。おそらく、投資家の多くは、すでにステータスが高く、人々がなぜバーチャルなステータスを求めるのかをまったく理解していない中年の白人男性だからでしょう(詳しくは後述します)。

写真とフィルターに焦点を当てたインスタグラム、刹那的なメッセージングを行うスナップチャット、6秒の動画制限を設けたVineの台頭により、しばらくの間、新しいソーシャルネットワークは何か新しいコミュニケーション様式の上に構築されるのではないかと考えられていました。しかし、それらは一部であって、全体像ではありません。だからこそ、私たちはスマホでコミュニケーションをする際の、奇妙なコミュニケーション機能やフィルター、人工的な制約といったありとあらゆる組み合わせの失敗実験を目の当たりにしてきたのです。スナップチャットの対抗馬であるフェイスブックのSlingshotを覚えていますか?受け取ったメッセージを見るために、メッセージに返信しなければなりませんでした。あれはまるでマッド・リブによるプロダクト・デザインのようでした。

成功したソーシャルネットワークがどのようにしてプレイする価値のあるステータスゲームを生み出すのかをモデル化する際に、便利なメタファーとなるのが流行のテクノロジーのひとつである暗号通貨です。

ICOとしてのソーシャルネットワーク

新しいソーシャルネットワークは、どのようにICOと類似しているのでしょうか?

1. 新しいソーシャルネットワークは、新しい形のソーシャルキャピタルであるトークンを発行する。
2. トークンを獲得するためには、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)をしなければならない。
3. 時間が経てば経つほど、各ソーシャルネットワークで新しいトークンを採掘することが難しくなり、希少性が生まれる。
4. 多くの人々、特に年配の人々は、ソーシャルネットワークと暗号通貨の両方を嘲笑する。

訳者注:
プルーフ・オブ・ワーク (Proof of work): ソーシャルメディアにおいて、何らかの努力、アクションをし、他のユーザーからコンセンサスを得ること。
例えば、インスタグラムでユーザーが素晴らしい写真を投稿することがプルーフ・オブ・ワークとなる。そして、ユーザーは「いいね!」や「コメント」という社会的通貨を採掘する。もしユーザーが日常的な物のつまらない写真を投稿したら、それは非常に弱いプルーフ・オブ・ワークとなる。しかし、例えば美しい夕日の写真を投稿すると、最高の位置に移動し、夕日を待って、正確なタイミングで写真を撮ったということで、強いプルーフ・オブ・ワークを意味する。その証拠として「いいね!」や「コメント」という社会的通貨が与えられる。
参照: 🏆📸🔨Exploring “Proof-of-Work” Within The Non-Fungible Token Space

[ソーシャルネットワークでは、「あなたがランチに何を食べたかなんて、誰も気にしないでしょう」というのが定番の反論ですが、それも時代とともに薄れてきています。ソーシャルネットワークもICOも、無から価値を生み出すように見えるため、懐疑的な人を夢中にさせる傾向があります。希少性の移り変わりは、常に懐疑と不信の跡を残します]。

数年前、私は友人の家に泊まり、その家の2階には友人の高校生の娘と同級生がいました。私たち大人が1階のキッチンでワインを飲みながら、夕食がオーブンで焼き上がるのを待っていると、2階から音楽や足踏み、笑い声などがたくさん聞こえてきました。

ようやく夕食のために彼らを呼んだとき、私は彼らにこの騒動は何だったのかと尋ねました。友人の娘は、Musical.lyというアプリに投稿した録音を誇らしげに見せてくれました。それは、自分たちで作った振り付けを使ったリップシンクとダンスでした。彼らはこの曲を数え切れないほど何度もリハーサルしていました。その結果、汗で顔がテカテカになり、息も荒くなっていました。まさにプルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)です。

私は夕食の間、アプリを夢中で見ながら、彼女たちにアプリのどこが好きなのか、なぜアプリを使っているのか、自由時間のうちどのくらいをアプリに使っているのかをインタビューしました。しかし、これらを分析するのに十分な指標がないため、私はジェーン・グドールが提唱する「対象を研究する方法」を支持しています。大人のステータスゲームはアプリ以外にも、文学から映画まで、既存のメディアで十分にカバーされています。時間の経過とともに記憶から消えていく、私たちも一度は経験した子供時代のステータスゲームの現代的な形態はソーシャルメディアによって大きく変化しています。

他にも様々な例があります。QuoraやRedditに投稿されたランダムな人の長文の回答を読んだことがあるかもしれませんし、YouTubeのブロガーが毎晩のように公開しているのを見たことがあるかもしれませんし、Vineの人気スターが一緒の家に住んでいて、6秒の動画の撮影や編集をお互いに手伝っているのを聞いたことがあるかもしれません。ビットコインの採掘をコンピュータに任せることはできても、ソーシャルネットワーク上のソーシャルキャピタルを採掘するのは、主に自分の血と汗と涙です。

[余談: あなた自身がソーシャルネットワークのスターを目指していないのであれば、スターと一緒に生活することは…お勧めできません] 。

おそらく、現代の若者と一緒に過ごしたことがある人なら、10代の若者が何十枚もの自撮り写真を撮った後、一番きれいに撮れた写真をインスタグラムに公開し、最初の1時間で「いいね!」が集まらないと削除する様子を、恐怖と魅力が入り混じった目で見たことがあるでしょう。これも、プルーフ・オブ・ワーク、あるいは少なくとも精力的な市場調査の一例です。

注目すべきソーシャルネットワークのほとんどは、初期の特徴的なプルーフ・オブ・ワークのハードルを持っていました。フェイスブックでは、気の利いたテキストベースの近況報告を投稿していました。インスタグラムでは、面白い四角い写真を投稿することでした。Vineでは、6秒のおもしろい動画を投稿していました。ツイッターでは、140文字以下の面白いテキストを書くことでした。ピンタレストは?魅力的な写真をピンすること。他にもQuoraやReddit、Twitchなど様々なソーシャルネットワークの成功例があります。成功しているソーシャルネットワークでは、最初からトリッキーな質問をすることはなく、何をユーザーに求めているのかはたいてい明確です。

[外生的なソーシャルキャピタルについて余談ですが、例えばドナルド・トランプのツイートよりも自分のツイートの方が面白く、文法的にも優れていると訴えるかもしれません(おそらくその通りでしょう!)。あるいは、キム・カーダシアンの写真よりも、あなたの写真の方が構図が良く、写真技術の深いレベルで面白いと思うかもしれません。違うのは、彼らはもうひとつのステータスゲームである名声ゲームから、外生的な既存のソーシャルキャピタルをプラットフォームに大量に持ち込んでいることであり、ソーシャルキャピタルのなかにはプラットフォームを超えてうまく伝達されるものもあります。一般的な名声はその一つです。例えば、ツイッターでポール・クルーグマンをフォローしていても、彼のインスタグラムのアカウントには全く興味がないかもしれません。彼がインスタグラムのアカウントを持っているかどうかは知りませんが、もし持っていたとしてもおそらくフォローしないでしょう。]

これらのソーシャルネットワークに早期に参加したことがある人は、相対的に見て、初期の方がソーシャルキャピタル(フォロワー、「いいね!」など) の面で他の人より簡単に成功できるということを知っています。ツイッターの黎明期に推奨フォロワーリストに掲載されていた人の中には、フォロワー数が7桁に達している人もいます。Musical.lyやVineの黎明期の達人たちが大量のフォロワー数を積み重ねていたのもそうです。リーダーボードや推奨フォロワーのアルゴリズムなど、一般的な発見のメカニズムにより、自分をフォローする人が増えれば増えるほど、フォロワー数も増えていきます。

確かに、ネットワークに参加する人が増えれば増えるほど、全体としてはより多くのソーシャルキャピタルが手に入ることになります。しかし、一般的には、後からソーシャルネットワークに参加した場合、信じられないほどの外生的なソーシャルキャピタル(テイラー・スウィフトが地球上のあらゆるソーシャルネットワークに参加して、すぐに膨大なフォロワーを集めることができる) がもたらされない限り、アテンションを集めるための競争は初期の頃よりも激しくなるでしょう。誰もがゲームの仕組みを理解しているので、競争が激しくなるのです。

プルーフ・オブ・ワークが重要な理由

なぜソーシャルネットワークではプルーフ・オブ・ワークが重要なのでしょうか?もし人々がソーシャルキャピタルを最大化したいのであれば、なぜそれをできるだけ簡単にしないのでしょうか?

暗号通貨のように、もしそれが簡単であれば、何の価値もありません。価値は希少性と結びついており、ソーシャルネットワークにおける希少性はプルーフ・オブ・ワークに由来しています。マイニングに必要なスキルや努力がなければ、ステータスにはあまり価値がありません。多くのユーザーが簡単に成果を上げられるソーシャルネットワークが有用でないというわけではありませんが、相対的なステータスを求めて競争することは人間のモチベーションを高めます。「人間はステータス(地位)を求めるサルである」という最初の考え方を思い出してください。ステータスとは相対的なものです。誰もがある種のステータスを得ることができれば、それはステータスではなく、参加型のトロフィーであると定義されています。

Musical.lyは、フォロワーやステータスを得るために、多くの人にとって簡単にはクリアできないハードルを設けました。しかし、それは一部の人たち、特に10代の女の子にとっては、自分が勝つのに適したステータスゲームだったのです。なぜなら、私の2つ目の信条によれば、人は最も効率的にソーシャルキャピタルを蓄積する方法を探すからです。

初期のツイッターを思い出してみてください。その頃のツイッターは、無害ではありますが、あまり活発でない近況報告サービスでした。約12年前に自分が最初にツイートした内容を見てみると、約1年の間隔を置いて最初の2つのツイートをしており、どちらも「税金を払う」という内容でした。振り返ってみると、自分でもあきれるほどでした。初期のツイッターは無害ですが退屈な近況報告がほとんどで、「これはオンになっているのか」という確認的なものが大半でした。結局、私はあなたがランチに何を食べたかなんて気にしない派なんですね。つまり私の携帯画面から出て行ってくださいということです。

ツイッターを変えたのは、FavstarFavrd (どちらも現在は廃止され、ツイッターに無慈悲に殺されました) というグローバルなリーダーボードの登場でした。思い起こせば、当時のツイッターのグラフは今ほど緻密ではなく、ワンクリック・リツイートやモーメントのような配信促進装置もまだ存在していませんでした。

FavstarとFavrdが行ったのは、本当に素晴らしいツイートを表面化させ、スコアボードにランク付けすることでした。私にとっては、これがツイッターにおける遂行的な革命の始まりでした。これにより、フィードバックループに必要なフィードバックが追加され、140文字以下のオチの達人という新しいタイプのコメディアンが誕生しました(インターネットがジョークを消滅させ、Googleのおかげでジョークの設定が常識となった今、ユーモアはすべてオチになっています)。

このような世界規模のツイートスコアボードの登場は、今や名作となった映画**「バトル・ロワイアル」で、ビートたけしが問題児の小学生たちに、島に送還されて死闘を繰り広げることになり、最後に立っていた生徒が勝ち、指定された戦闘区域から抜け出そうとした者は爆発物の首輪で殺されると伝えた瞬間を思い起こさせます。ツイッターが生死を分ける戦いだとは言いませんが、プロダクトマーケットフィット前のツイッターにタイムスリップすれば、そのトーンの違いがよくわかります。

**バトルロワイヤルはその後、ハンガー・ゲーム、フォートナイト、メイズ・ランナー、そして世の中のあらゆるYAフランチャイズからパクられ、オマージュされて来ました。なぜなら、ティーンエイジャーほど野蛮なゲームを理解している人はいないからです。

Favstar.fmのスクリーンショット。これらの古いが馴染みのあるアバターを見るだけで、感傷的になります。おそらく、初期のバーニングマンの信奉者が、金持ち階級が入ってきてドラッグ、ヌード、…のユートピアを台無しにする前の初期の時代を振り返るのと同じようなものでしょう。

昔のFavrdのスクリーンショットを追いかけていると、浮上してきたツイートに今でも笑ってしまいます。

懐かしのFavrdのスクリーンショットをもう1枚

誰もがこのように上手にツッコミを入れられるわけではないことが重要です。このようにして、ツイッター上で自分のプルーフ・オブ・ワークをすることができました。そして、そのフィードバックループが回転し、締め付けられることで、ツイートの全体的な質が向上していきました。そして、「いいね!」を多く獲得した戦略は、人々のタイムラインにどんどん流れていき、皆が学び、競い合いました。

今日のツイッターを読んでみると、思春期前のようなぎこちないありふれた生活情報のツイートはほとんどありません。現在は、パフォーマティブ・ツイッターの後期段階にあり、ほとんどすべてのツイートがお気に入りやリツイートに飢えていて、誰もが訓練された評論家やコメディアンになっています。話題性のある言葉やクールなことわざで溢れています。無害な近況報告のツイッターは、それほど渇いた状況ではありませんでしたが、ビジネスとしては大したものではありませんでした。それでも時々、すべてのツイートが喉の渇きを誘うものではなかった、健全な時代が懐かしくなります。新しいKanye、機嫌の悪いKanye、いつも失礼なKanye、ニュースで騒ぐKanye、甘いKanyeが恋しい、ビートを刻むKanyeが嫌いです。

ステータスへの渇望はポテンシャルエネルギーです。それはStaaSビジネスの生命線です。ソーシャルネットワークは市場で独自のポジションを築くために、何らかの特徴的なプルーフ・オブ・ワークによって得られる独自のステータストークンを提供しています。

逆に、SNSにピボットしようとした写真フィルターアプリの「Prisma」を見てみましょう。Prismaはニューラルネットワークを利用した多数のフィルターを使って、写真を美術品のように仕上げることができるということで、発売と同時に人気を博しました。

Prismaはうまくいきました。あまりにもうまくいきました。

ほとんどの写真がワンクリックで豪華な絵画に変身するため、一枚の写真が際立つことはありません。主役はフィルターであって、ユーザーではありません。だから、他の誰よりも特定の人をフォローすることには意味がありませんでした。スキルという要素がなければ、ステータスゲームやスキルベースのネットワークといった枠組みは存在し得ません。PrismaはStaaSになり損ねたユーティリティでした。

一方、インスタグラムのフィルターは、その初期においては、当時のスマートフォンで撮影された写真の品質を向上させるものでしたが、その品質はほとんどの場合、撮影者に依存していました。構図や被写体の選び方など、撮影者の技量に依存しており、どんなフィルターを使っても、下手な写真を名作にすることはできません。

先ほどの「新しいソーシャルネットワークはどのようにして定着するのか」という質問に対して、StaaSという新しいビジネスは、ユーザー間の差別化を図るために、実際の技術に依存したプルーフ・オブ・ワークを考案しなければならない、と付け加えておきましょう。そうすれば、ICOのように、ユーザーにとって価値のある新しい形のソーシャルキャピタル通貨を生み出すことができます。

ソーシャルネットワークが成功する方法は、これだけではありません。前述したように、ユーティリティやエンターテイメントを中心にネットワークを構築することもできます。しかし、ステータスを追加することで、一見意味のあるユーティリティをほとんど提供していないように見えるネットワークが、なぜ人気を博しているのかを説明することができます(6秒の動画しか作らせないサービスが有用なのでしょうか?)

フェイスブックの独自のプルーフ・オブ・ワーク

フェイスブックはどのようにしてMySpaceと差別化したのでしょうか?最初は、テキストによる近況報告が中心で、必ずしも革新的なものではありませんでした。

実際には、フェイスブックが立ち上がった時にはハーバード大学の学生でなければならないという、世界で最も有名なプルーフ・オブ・ワークのハードルがありました。harvard.eduのメールアドレスを必要とすることで、フェイスブックは世界で最もエリートな文化的フィルターを利用していたのです。これほど強力なエリート主義のぱちんこは他にはないでしょう。

フェイスブックは、まずアイビーリーグの学校に展開し、次に一般の大学に展開することで、狭い年齢層と学歴に基づく排他性を維持しながら規模を拡大していきました。

大学生活の多くを占める、魅力的な異性をストーキングするという幅広い社会的ステータスのゲームに加えて、フェイスブックは世界で最も熱いソーシャルキャピタル競争の予備軍を利用したサービスだったのです。

ソーシャルキャピタルのROI

ある人が何か面白いことをプラットフォームに投稿した場合、どのくらいの速さで「いいね!」やコメント、リアクション、フォロワーを獲得することができるのでしょうか?2つ目の考え方は、人々は自分のソーシャルキャピタルを最大化するために最も効率的な方法を探すというものです。そのためには、戦略の違いによる効果の違いを把握する必要があります。多くの人間はこの点に優れているようです。

ソーシャルメディアの利用率が非常に高い若者は、ソーシャルメディアにかける労力の回収期間やROIに最も敏感な層です。例えば、若者はツイッターを好まず、インスタグラムを好む傾向にあります。

ツイッターでは、たまにバイラルの超新星が生まれないわけではありません。たまに、1,000以上、そして10,000以上の「いいね!」や「リツイート」を獲得したツイートを作成する人がいます(ツイッターは、マネタイズを補うために、1Kクラブや10Kクラブの指定を受けた銀や金の額装を購入できるようにすべきです)。しかし、それは一般的ではなく、ほとんどのツイートは誰にも見られていないのが現状です。若者が文字媒体よりも視覚媒体に偏り、技術的な優位性を持っているという事実を考慮すると、インスタグラムが彼らのソーシャルな戦いの場として好まれるのも不思議ではありません(ソーシャルネットワークの定義を広げれば、若者にとって最も有益な戦いの場はビデオゲームかもしれません。それは十分に合理的ですが、その戦場は男性に偏っています)。

インスタグラムは、公式の再共有オプションがないにもかかわらず、ほぼ無制限のハッシュタグ・スパムを可能にしており、これにより、より決定性の高い、自分で生成した配信が可能になります。また、ツイッターは、携帯電話の画面あたりのツイート密度を一定に保つために写真をトリミングすることに固執しているため、視覚的なミームを広めるのには適していません。

ネットワークのソーシャルキャピタルROIの勾配は、異なる人口層での市場シェアを左右することがよくあります。初期のMusical.lyに若い女の子が集まってきたのは、彼女たちがMusical.lyの基盤であるリップシンク・ダンスルーティンのビデオを得意としていたからです。ソーシャルメディアのヘビーユーザーは、通知が途切れない時代にあって、自分が使っているアプリの間でROIの状況が異なることを強く意識しています。

私はFlickrとインスタグラムに同じ写真を投稿していたとき、インスタグラムがFlickrを追い越すのに時間がかかったことを覚えています。もし私が投資家、あるいは従業員だったら、ソーシャルキャピタルの利率や様々なサービス間の流動性を追跡するために、様々なテストアカウントから様々なソーシャルメディアネットワークに投稿するコンテンツの代表的なカゴのようなものを持っているかもしれません。

どのネットワークでも、コンテンツのリーチを増やすことができる機能があります。リツイートボタンのような再共有オプションは、ソーシャルグラフによってフィードのコンテンツが決まるアプリにおいて、バイラル性を大幅に加速させることができます。ツイッターは、エンゲージメントを高めるために、数年前からツイートの流動性を高めることに積極的に取り組んでいます。ツイッターは、フォローしている人がリツイートしていなくても、その人がいいね!したツイートを表示するようになりました。また、検索タブにはモーメンツが表示されます。モーメンツとは、インスタグラムの「発見タブ」のように、あなたが好きそうなコンテンツを推測し、コンテンツで埋め尽くし、無限にスクロールできるようにしたものです。

TikTokは、ソーシャルメディアにおける新たなプレーヤーとして興味深い存在です。なぜなら、デフォルトのフィードである「For You」は、機械学習アルゴリズムに依存して各ユーザーが見るものを決定しているからです。これに対して、あなたがフォローしているクリエーターのコンテンツのフィードは、1区画上に隠されています。もしあなたがTikTokを始めたばかりで、素晴らしい動画をアップロードしたなら、この選択アルゴリズムによって、多くの人が長い時間をかけて築き上げてきたフォロワーの規模に依存するネットワークで共有するよりも、はるかに早く投稿を配信することができます。逆に、1つだけ素晴らしい動画を作っても、それ以外の作品が平凡だった場合、TikTokでの継続的な配信は期待できません。なぜなら、あなたのフォロワーは、彼らのフォローグラフではなく、TikTokのアルゴリズムによって動かされるフィードの中で生きているからです。

その結果、他のソーシャルネットワークよりも、正負両方のフィードバックループがきつくなってしまうのです。理論的には、アルゴリズムが正確であれば、あなたのフィードに表示されるコンテンツは、あなたがフォローしているアカウントの作品からの引用ではなく、作品の質やあなたの個人的な興味との関連性に最も近いものになるはずです。Bytedanceが国際市場でのユーザー獲得のために何千万(何億?)ものマーケティング費用を費やしている今、新人クリエイターの作品に対するROIの早さは、彼らが定着するために役立つ特質です。

もうひとつ興味深いことがあります。それは、グラフを利用したソーシャルキャピタルの配分メカニズムでは、勝者総取り効果の暴走に悩まされることがあるからです。つまり、早い段階で多くのフォロワーを獲得した人は、その投稿の質に関わらず、他のユーザーよりも多くのフォロワーを獲得し続けることになるのです。ソーシャルネットワークの規模が大きくなると熱が冷めてしまうのは、このようなオールドマネーが一掃されず、新規参入者がゲームに参加するインセンティブを失ってしまうからではないかという仮説があります。

シリコンバレーとマンハッタンなどの東海岸の権力回廊とを比較して、シリコンバレーの地域としての特徴は、オールドマネーの少なさです。例外はありますが、ベイエリアの財閥のほとんどは、ただのニューマネーではなく、今の世代の技術者から生まれたばかりのニューマネーなのです。古いVCや半導体業界の財閥もありますが、ほとんどの人はまだ生きています。

ニューヨークではマンハッタンのアッパーイーストサイドやウエストサイドで何世代にもわたって続くオールドマネーに遭遇したり、偶然良い家系に生まれた若い名士が古い富を街中にまき散らしていたりします。トリクルダウン経済は効果がありますが、多くの場合、家系内で相続されるだけです。

オールドマネーや古いソーシャルキャピタルの存在が、ソーシャルネットワークを必然的に停滞させるというわけではありませんが、ソーシャルネットワークは、品質の定義が何であれ、制作したユーザーの年代が何であれ、最高のコンテンツの配信を優先し続けるべきです。そうしないと、ソーシャルキャピタルの不平等が発生し、現実世界よりも出口コストがはるかに低い仮想世界では、新しいユーザーは、自分の仕事がより適切に報われる、ステータスの流動性が高い新しいネットワークに簡単に移ってしまいます。

シリコンバレーがオールドマネーに支配されることはないかもしれませんが、それは地域にとってはプラスだと思います。停滞した準独占企業が富にしがみついて、イノベーションを助長しない肥大化した規模になるよりは、最も生産性の高い新しい仕事が市場から一貫して報われる方が良いです。これは、ソーシャルネットワークや多人数参加型のビデオゲームでも同じです。初心者の場合、仕事に打ち込めば、どれだけ早く「ゲームに参加」したことになるでしょうか。プルーフ・オブ・ワークは、それら独自の実力主義を定義する必要があります。

多くのソーシャルネットワークがフォロワー数Xまでの時間などの重要な指標を追跡するのと同じように、新規ユーザーに対する投稿のROIを追跡すべきです。それは、リテンションやチャーンを支配する主要な指標となるでしょう。投資家として、あるいは好奇心旺盛な野次馬として、テストアカウントから様々なコンテンツを投稿してソーシャルネットワークをテストし、配信アルゴリズムの効率性と公平性を測ることも有効です。

どのようなメカニズムであれ、ソーシャルネットワークは、ユーザーが自分の仕事に十分な見返りを感じることができるように、コンテンツとそのコンテンツに適したオーディエンスとの間のマーケットメイキングに多くのリソースを費やす必要があります。ソーシャルキャピタルを配分する場合でも、特にそうである場合でも、配信が非常に重要です。

ステータス重視のネットワークでは、なぜプルーフ・オブ・ワークをコピーすることが不適切なのか?

新しいソーシャルネットワークが、成功している既存のソーシャルネットワークをコピーして、ちょっとした工夫を加えたものをよく見かけます。フェイスブックの最近の問題を受けて、プライバシー・ファーストのソーシャルネットワークが登場するかもしれませんが、実際、模造品を研究するには限りがありません。App.netとMastodonは、差別化を約束しながらも、同じ一般的なオープンメッセージングフレームワーク上に構築された2つの著名なツイッタークローンでした。

このようなクローンに近いものはほとんどが失敗しており、今後も失敗すると思われます。StaaSの既存企業が基本的なプルーフ・オブ・ワークのハードルを満たすことができない理由は、一般的にすでに存在するステータスゲームを複製してしまうからです。定義上、プルーフ・オブ・ワークが同じであれば、実際には新しいステータスのラダーゲームを作っているわけではないので、新しいネットワークに誰もいない場合には、乗り換えるための説得力のある理由がありません。

しかし、既存の成功例を真似て成功できないというわけではありません。現実の世界では、新しいお金が新しい古いお金になることがあります。より優れたステータスゲームを構築したり、より価値のあるステータスの形を作ったりすることができます。しかし、通常、このような置き換えが起こるときは、純粋なユーティリティという別の次元に沿って行われます。

例えば、地域的なネットワーク効果によって特定の地域の市場を獲得しただけで、企業として成り立つようになったメッセージングアプリが複数あります。世界を支配する1つのメッセージングアプリがあるわけではなく、特定の地域で勝利を収めたアプリがたくさんあるのです。結局のところ、ほとんどの国や大陸で最も優れたメッセージングアプリは、他の多くの人々がすでにそこで使っているものなのです。

しかし、同じ市場ではどうでしょうか?そこでのプルーフ・オブ・ワークをコピーするのは、厳しい道のりです。先行者の優位性とは、圧倒的なグラフを持ち、最も価値のあるソーシャルキャピタルを持つリーダーが、先行者が立ち上げた新機能を見て、逆にコピーし、より広範で圧倒的な現存者のグラフに移植するようなものです。

中国では、Tencentがショートビデオ分野でのBytedanceの勢いを抑えようと必死になっており、Douyinが第一の敵となっています。テンセントはクローンを立ち上げましたが、視聴者がどの動画にも反応して横並びの動画を記録できる機能を追加しました。BytedanceがそれをDouyinに取り入れるのに約0.5秒かかりましたが、今では世界中のTikTokで人気の機能となっています。挑戦者としてプルーフ・オブ・ワークの競争を変えることができないなら、コピー&スロットルは現存者にとって有効な戦略です。

言うまでもなく、他のアプリの丸パクリは、お粗末なものとして嫌われる傾向にあります。知的財産権の保護が緩いと言われる中国でも、あからさまなコピーアプリには、ユーザーが不愉快なレビューを投稿する傾向があります。中国のユーザーは、アメリカのアプリが中国で模倣されていることをあまり意識していないかもしれませんが、中国国内では、ユーザーは明らかな模倣アプリに飛びつくことはありません。切り替えコストを上回るインセンティブが必要であり、それは中国でも他の国でも同じです。

ここで、いくつかの具体的な注意点があります。私はかつてソーシャルネットワークについて、「The network’s the thing (ネットワークこそが重要である)」と書きました。つまり、ソーシャルネットワークの規模が大きくなったときのグラフの構成が、そのネットワークの最もユニークな品質であるということです。今日、私はそれを更新して、ある機能と特定のグラフのユニークな組み合わせが、ネットワークの最も重要な競争力であると言いたいと思います。あるネットワークの機能をコピーしても、そのグラフをコピーできなければ十分ではありませんが、他の方法で獲得したユニークなグラフにその機能を適用できれば、それは防御可能な優位性となります。

このことは、フェイスブックがスナップチャットの刹那的なメッセージング機能をコピーして若者を取り戻そうとしたり、フェイスブックがLassoでTikTokをコピーしようとしたり、あるいはフェイスブックがどこかで人気のあるソーシャルアプリをほぼすべてコピーしようとしたりすることによく現れています。スナップチャットをコピーすることの問題点は、若者がフェイスブックからスナップチャットに移った理由の大部分が、親がフェイスブックに侵入したからだということです。父親が樽を持ってきてビールポンをしようと言ったからといって、同級生とのパーティを抜け出して親が開いているパーティに戻ることはありません。

フェイスブックの巨大なグラフと、他のアプリのプルーフ・オブ・ワークが組み合わさることで、ステータスゲームの本質が変わり、時には望ましくない方向に変化します。LassoでNellyの「It’s Getting Hot in Here」を口パクで歌っているところを、同僚や仕事仲間、家族や友人に見られたいと思うでしょうか?フェイスブックは、若者を呼び戻そうと、特別なミームタブを考えていると噂されていましたが、これもまた、若者がミーム・ステータス・ゲームをどのようにプレイするかを完全に誤解しています。最終的には、この計画は棚上げされました。

もちろん、有識者がうまくいったとよく引き合いに出すフェイスブックの典型的な機能獲得は、スナップチャットのストーリーズフォーマットをインスタグラムがコピーしたものです。以前にも書きましたが、私はストーリーズのフォーマットは、ソーシャルネットワークの社会的謙虚さの問題に対する真の革新だと思います。つまり、最もひどい目立ちたがり屋を除いて、フォロワーに多くのことを公開するのは気が引けるということです。ストーリーズでは、コンテンツを引き出す責任を視聴者に負わせることで、誰もが罪悪感を感じることなく、定期的に投稿できます。アルゴリズムによるフィードが投稿の流れを分断してしまう世界において、ストーリーズは才能あるクリエイターが連続した物語を作ることを可能にします。

このように、ストーリーズは本質的にユーザーの投稿のハードルを下げ、新しいストーリーテリングの方法を提供するものであり、成長が鈍化している多面的なネットワークは、供給側の社会的な謙虚さを解決できるかどうかを確かめるために、いつかは自分たちのネットワークに移植しテストすることになるでしょう。

皮肉なことに、サービスがストーリー機能にフィルターや機能をどんどん追加していくと、ストーリーズでのプルーフ・オブ・ワークゲームがエスカレートしていくのがわかります。今日のインスタグラムストーリーズの多くは、通常の投稿よりも手の込んだもので、公開するのに時間がかかります。ストーリーズのコンポーザーに用意されているフィルターやステッカー、GIFなどのツールの種類は、インスタグラムの通常の投稿で利用できる限られたフィルターを凌駕しています。軽い気持ちで始めた投稿フォーマットが、今ではより洗練された複雑なものになっています。

ステータスを求めるゲームからサルを連れ出すことはできても、サルからステータスを求める欲求を連れ出すことはできないのです。

テクノロジー史上最大のソーシャルキャピタル創出イベント

テクノロジー史上、いや世界史上、最大のソーシャルキャピタル・ブームを巻き起こした出来事は、フェイスブックのニュースフィードの開始でした。

ニュースフィードが登場する前は、例えばMySpaceやフェイスブックを利用していても、自分のネットワーク内のすべての活動を見つけるためには、あちこちを見て回らなければなりませんでした。特定の年齢層の人々はMySpaceで友人をストーキングする際に、プロフィールを次々とクリックしなければならなかったことを思い出すでしょう。今にして思えば、ソーシャルメディアのユーザーにこのような重いUIの負担を強いることは、滑稽に思えます。もしも、インスタグラムのネットワークに投稿された新しい写真をすべて見るために、新しい写真が投稿されていないかどうかを確認するために、1人1人のプロフィールをクリックしなければならないと想像できますか?ニュースフィードが導入される以前のソーシャルメディアの閲覧は、まるで冬の雪の中、木の皮でできたモカシンを履いて小学校に通うために何キロも歩かなければならなかったという両親の話のようですが、本当に途方もない苦痛でした。

フェイスブックのニュースフィードは、フォローしているすべてのアカウントからのすべての更新情報を1つの連続したスクリーンに統合し、それをデフォルトとすることで、新しい投稿の配信効率を高めると同時に、各投稿に即時アップデートされるスコアボードを付け、事実上1つの巨大なアテンションを集める競技場でユーザー同士を競わせました。まるでパノプティコンが一夜にして反転したかのように、巨大なスポットライトが点灯したかのように、フェイスブックで承認を得るためにパフォーマンスをしている私たち全員が、同じ観客席にいて、1つの大きなつながった無限のステージで、同じ時間に同じ観客に向かってカラオケを歌っていることに突然気づいたのです。

小さな部族の中でステータスを競い合って育った何億人、やがては何十億人もの人間が、いきなりタレントショーに放り出され、これまでに出会った人たちと競い合うことになったのですから、どれほどの重大な変化だったかは、いくら強調してもし過ぎることはありません。

予想通り、すべてが爆発しました。投稿数が増えました。その投稿に対するエンゲージメントも高まりました。これは映画で、何かを立ち上げた後、大勢の人が広い戦場に立って待っていると、突然、コンピューターを見つめるオタクが目を見開いて、「オーマイガー」と叫ぶシーンです。そして、その部屋にいる上級士官(おそらく不機嫌なエド・ハリスかカイル・チャンドラーが演じている)がスクリーンを見に行くと、そこには何か目に見えるカウンターが急速に増加していて、見ている間に絶対的な桁数がリアルタイムで増加していく。そして、会場は歓声に包まれ、さまざまな人がお互いに抱き合ったり、背中を叩いたりしている。そして、ランダムなエキストラが背景のスクリーンを駆け抜け、シャンパンのボトルを振って爆発させ、泡立った泡の流れを空中に射ち出しました。

もちろん、ユーザーは最初はニュースフィードに不満を持っていましたが、彼らの行動はその言葉を裏切るものでした。このことは、後にフェイスブックが、ユーザーは常に泣き寝入りするものであり、世間の反対にかかわらず、将来的に同じような変更を行うことが正しい行動であるという証拠として受け止めることになったということにつながります。

しかし、その昔、ニュースフィードはソーシャルキャピタルの蓄積のためのゴールドラッシュをもたらしました。うわー、あっちの投稿には私の最新の投稿の10倍の「いいね!」がついている!よし、そこから何を学んで次の投稿に生かすか?さて、そこから何を学んで次の投稿に活かせばいいのか?私のコンテンツの中で、最も「いいね!」を集めているのはどれだろう?現代では機械学習の奇跡が語られていますが、社会的な生き物である人間も、オーディエンスにウケるものを解読し、内面化する能力には劣らないものがあります。

10代の若者がインスタグラムの投稿をA/Bテストして、最初の1時間で「いいね!」を獲得できなかった投稿を削除するという話は、風刺の域を超えています。「ブラックミラー」のような番組では、現実にすでに起こったことを示すエピソードに終始します。10,000時間ルールにおいて重要なのは、意図のある練習をすること、そしてすぐにフィードバックが得られるという点です。ソーシャルメディアは、文字通りのリアルタイムフィードバックではないかもしれませんが、それに近いものがあり、その到達範囲は、歴史上のどのソーシャルパフォーマンスの場よりも桁違いに大きいのです。今、私たちの世代は、何十万、何百万ものソーシャルメディア担当者を通して、どのプラットフォームで何が人々を惹きつけるのかを学んできました。それぞれの方法で、私たちは皆、バズフィードです。私たちは皆、キム・カーダシアンなのです。

フィードバックのループがしっかりしていればいるほど、適応が早くなります。初期のツイッターと現代のツイッターを比較すると、カラオケバーで同僚の話を聞いていたのが、ビヨンセのコーチェラ公演を見るようなものです。かつて私は、フォロワーが増えたツイッターアカウントはフォーチュンクッキーのようになってしまうと書きましたが、私は皆がその最終状態に到達するのがどれだけ早いかを過小評価していました。

(フォロワーを増やし続けるツイッターアカウントのレトリックは、フォーチュンクッキーに集約されています。)

SNSでフォローするアカウントの数が増えてくると、候補となるストーリーの数が自分のキャパシティを超えてしまうことがあります。それより前にも、S/N比が低下して、エンゲージメントに影響が出ることがあります。このような変曲点を迎えたネットワークは、ほとんどの場合、アルゴリズムによるフィードという同じ解決策にたどり着きます。

覚えておいてほしいのは、ステータスはある種の希少性から価値を引き出すということです。豊かな時代の基本的な希少性とは何でしょうか?ユーザーのアテンションです。アルゴリズム・フィードの登場は、ソーシャルメディアのゲームの賭け金を高めます。誰かがあなたをフォローしていても、もはやあなたの投稿をすべて見ることはできないかもしれません。「Django Unchained」でディカプリオが言ったように、”You had my curiosity, but now, under the algorithmic feed, you must be earn my attention.” (あなたは私の好奇心を持っていたが、アルゴリズムフィードの下では、私のアテンションを集めなければならない)。

人間は直感的に、自分のステータスに満足することの何割かは相対的なものだと理解しています。重要なのは、自分の絶対的なステータスよりも、周りの人と比べて自分がどうなのかということです。自分のステータスの範囲を仮想的なものとすることで、私たちはそれを思いのほか大きくしてしまったのです。他の人がいかに素晴らしい生活を送っているかを一生懸命アピールしているのを見ると、幸福度が下がるのは当然のことでしょう。

この変化が人類にとってどれほど異常なものであるかを示す証拠として、感覚の移り変わりによってとっくに削除されているはずの、攻撃的なソーシャルメディアへの投稿履歴を持つ有名人がどれほどいるかを見てみましょう。ケビン・ハート、ジョシュ・ヘイダー、トレア・ターナー、ショーン・ニューカムなどの野球選手、その他多くの著名人とそのマネジメントチームは、ダウンサイドオプションしかないにもかかわらず、過去にさかのぼって以前のソーシャルメディアへの投稿を削除しようとは思わなかったのです。

ソーシャルネットワークは、「いいね!」などの投稿の評価を非公開にして、受け取った人だけが見られるようにすることはできなかったのでしょうか。ソーシャルキャピタルの軍拡競争がエスカレートするのを防ぐことはできなかったのでしょうか。技術系のCEOの中には、アラン・グリーンスパンのように、不合理な高揚感が今の状況を招いたと嘆く人もいますが、正直に言うと、これらのネットワークのソーシャルキャピタルの金利を下げるインセンティブは、彼らの目的や投資家の目的を考えると、あまりにも大きかったのです。ある企業が市場にステータスを氾濫させなければ、他の企業が何倍にもなってその穴を埋めていたでしょう。

Pathのようなソーシャルネットワークは、ソーシャルグラフのサイズをダンバー数に制限し、ソーシャルキャピタルの蓄積の可能性に上限を設け、投稿の配布にも上限を設けようとしました。その代償として、より高い透明性、より純粋な自己表現を期待したのです。アンチフェイスブックですね。残念ながら、ソーシャルキャピタル理論が予測するように、Pathは実際にアンチフェイスブックになることに成功しました: 十分なユーザーのいないネットワークです。ビジネスには規模が大きいほどうまくいくものがあります。人々ができるだけ効率的にソーシャルキャピタルを蓄積したいと考えているのであれば、彼らが獲得できる金額に制限を設けることは、残念かもしれませんが、挑戦的なビジネスモデルとなります。

ソーシャルキャピタルの蓄積が若年層に偏る理由

ソーシャルキャピタルの運用資産をユーザー層別にグラフ化してみたいものです。賭けてもいいですが、若者、特に子供が初めて携帯電話を与えられた10代から20代前半の若者がゲームを支配していることがわかります。私の甥っ子が肘の写真をインスタグラムに投稿すると、数百の「いいね!」がつきます。私は、バラク・オバマやビヨンセと一緒にコンガ・ラインを組み、ジェニファー・ローレンスが私の肩に座ってクリスタルを注いでいる写真をシェアしても、甥っ子が肘の写真を投稿したときの「いいね!」の数分の1しかつきません。これは若者のゲームであり、私が成人したLivejournal/Blogger/Flickr/Friendster/MySpaceの時代は、ソーシャルの先史時代のように感じられます。

私たちは皆、ステータスを求めるサルのようなものですが、StaaSという新しいビジネスを立ち上げる際には、若者が槍の穂先となる傾向があり、今後もそうなるでしょう。なぜこのような傾向があるのかについては、ちょっとした余談があります。

第一に、年配の方はより多くのソーシャルキャピタル(社会資本)を蓄えている傾向があります。肩書き、配偶者、子供、家などの不動産、車、自分で組み立てなくてもよい家具、履歴書、大学の学位などです。

[もちろん、これは文化によって異なります。私が育ったアメリカでは、仕事は最も重要なステータスであり、だからこそ、多くの会話が「何をしていますか?」から始まるのです。]

若者は、幸運にも多額の遺産を手に入れない限り、ソーシャルキャピタルに乏しいものです。肩書きもなく、大学を卒業していないかもしれず、家や車などの資産も少なく、大学を卒業していても多額の借金を背負っていることが多いのです。彼らにとって、ソーシャルキャピタルを得るための最速かつ最も効率的な方法は、社内政治のような大人向けのゲームで勝てるようにレベルアップするのを待つ間に、ソーシャルメディア(またはビデオゲーム)で商売をすることです。

第二に、大人はこれまでに蓄積されたソーシャルキャピタルがあるため、オンラインで遊ぶよりもさらにステータスを高めるための効率的な手段を持っている傾向があります。既存のソーシャルキャピタルを維持することは、新しいソーシャルネットワークでより多くの収入を得るために戦うよりも、蓄えられた大きなステータスに利子をつけるだけの簡単な方法なので、より効率的な時間の使い方であることが多いのです。これは数学的な話で、特に損失回避を考慮に入れればなおさらです。

若者は、ガレージに停めてある車のブランドや、住むのに余裕のある地域、組織の中でCEOより何階級下かなど、年配者のステータスゲームの多くを見て、そしてVineやMusical.lyなどのアプリを見てから、次のようなアプリを調べます。VineとMusical.lyです。そして彼らは唯一現実的で最適な道を選ぶのです。2つ目の原則は、人は自分のソーシャルキャピタルを最も効率的な方法で最大化するということです。若い人も年配の人も最適な戦略を追求します。

若い人たちのソーシャルキャピタルが、フォロワーや「いいね!」、仲間や見知らぬ人からのコメントという形で提供されているからといって、その価値が下がるわけではありません。自分の10代の頃を思い出してみてください。そのような規模のソーシャルキャピタルがあったでしょうか。若い頃は、仲間や同世代の人たちに認められることが何よりも大切で、ソーシャルメディアは若者のステータスゲームの範囲をあらゆる方向に広げています。

さらに、年配の方は、新しい技術を習得することに躊躇する傾向があります。それは、新しいステータスゲームを含めて、特にそれが目障りな新しい技術を伴う場合です。理由はいろいろあるが、子育てなどの大人としての責任や、神経の柔軟性の衰えなどが挙げられるでしょう。老犬が新しい芸を覚えないのは、死期が近くなり、その投資に対してプラスのリターンを得られる期間が短くなるからかもしれません。ある時点で、新しい芸を覚える価値が全くなくなり、私たちは皆、テレビ番組に出てくる無愛想な老婦人、例えば「ダウントン・アビー」のマギー・スミスのようになり、周囲の人間の愚かさを痛烈に批判するようになります。私は、死という避けられない現象によって、勇気を持って真実を語るというDGAFの段階に自然に落ち着く時を楽しみにしています。

最後に、多くの大人が「時間がない」と嘆くように、若者には余剰の時間があります。若者の時間のハードルは低いので、余剰の時間を使って新しいソーシャルネットワークを探索したり、ソーシャルキャピタルのリターンが魅力的かどうかを調べるためにマイニングしたりする余裕があるのです。若者たちは、世の中のあらゆるステータスゲームに対して、一貫した言葉で答えます。「身代金を要求されたら、私はお金を持っていないと答えます。私が持っているのは非常に特殊なスキルです。その中には、Blocboy JBの『Shoot』を寝室で踊りながら曲に合わせてリップシンクする器用さと協調性、そしてうまくいくまで何度も何度も繰り返し行う時間があります」(これを書いたのは、リーアム・ニーソンが自分のソーシャルキャピタルの多くに火をつけ、「不義理を働いた復讐心に満ちた父親で、驚異的な戦闘能力と銃器のスキルを持つ」という役を次の高齢男性スターに明け渡した最近の出来事よりもずっと前のことです)。

これらの現代的なソーシャルキャピタルは、新しいお金のようなものです。ニューヨークのアッパーウェストサイドやアッパーイーストサイドに住む年配の人々が、シリコンバレーのパーカーを着た億万長者のような新しいお金を持った俗物を見下すのと同じように、若者よりもこうした新しいバッジを蓄えるのが苦手な年配の人々は、子供たちがアプリで時間を無駄にしているのを嘲笑することが多いのも当然です。

例外は、このソーシャルメディアの最初の黄金時代に育った人たちかもしれません。この世代の若いNBAプレーヤーの中には、初めて携帯電話を手にしたときからインスタグラムを利用していた人もいて、投稿するのは自然なことであり、リーグに持ち込む習慣になっているかもしれません。昔のスター選手が「Sportscenter」で自分を検索したように、多くの若いNBAスター選手が「House of Highlights」で自分の姿を追跡しているのを見てもわかるでしょう。

ソーシャルメディアにおける老若男女の世代間格差が、ソーシャルネットワークが誕生して間もない頃の単なる一過性の異常であり、将来の世代が胎内から墓場までバーチャルなステータスを求める専門家になるとすれば、ソーシャルネットワークにとって、ソーシャルメディアの形成期にあるユーザーを捉えることがより重要になります。

私には多くのものが含まれている(若き血の言葉)

“I contain multitudes” (said the youngblood)
ちなみに、中高年よりも10代や20代の方が、より多くのアイデンティティを持ち合わせている傾向があります。中学・高校では、学校では同級生の中でのアイデンティティ、家庭では家族の中でのアイデンティティを維持しなければなりません。20代の人は、昼間は同僚の中で1つのアイデンティティを作り、仕事以外では友人の中で1つのアイデンティティを作ります。それらの領域では、ステータスゲームが異なることが多く、それらのアイデンティティを統合することには何らかのペナルティがあります。学校の友達に送るはずだったメールを親に送ったり、ハッピーアワーの仲間に送るはずだったメールを上司や同僚に送ったりしたことがある人は、文脈の崩壊という危険な性質を知っています。

さらに、若い世代がビジュアルコミュニケーションを好み、得意としていることを考えると、若者が好むソーシャルネットワークがインスタグラムであり、メッセンジャーがスナップチャットであり、どちらもフェイスブックよりも好きな理由は明らかです。インスタグラムは、自分のアイデンティティのポートフォリオに合わせて複数のアカウントを簡単に作ることができ、スナップチャットは、特定の受信者に個人的にビジュアルメッセージを送ることができる最高の使い勝手の良さがあります。賞味期限切れのコンテンツの削除は、インスタグラムで明示的に実行される場合(例えば、ミームアカウントを使い切った後に簡単に削除できます)でも、スナップチャットのようなサービスで自動的に処理される場合でも、複数のアイデンティティ管理が必要な人にとっては、必須の機能です。

現実世界のグラフとの関連性を明確にし、単一の公開アイデンティティを強制するフェイスブックは、若者のより複雑なソーシャルキャピタルの要件には構造的に適合しないのです。

ソーシャルネットワークの共通点

2軸モデルを使って、ソーシャルネットワークが経時的にたどる共通の道筋を見てみるとよいでしょう。すべてのソーシャルネットワークが同じ経路を辿って有名になったわけではありません。また、それぞれのソーシャルネットワークが今後成長していくための最も生産的な戦略を明らかにすることができます。

最初にユーティリティ、次にソーシャルキャピタル

ツールのために来て、ネットワークのために留まる
(Come for the tool, stay for the network)

これはよく知られている「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」という経路です。インスタグラムは、フィルターを使ったユーティリティからソーシャル写真共有の巨大企業へと成長したことを考えると、その良い例です。今日、私は最後にインスタグラムのフィルターを使ったことを覚えていません。

結局のところ、ほとんどのソーシャルネットワークは、このような道のりを歩んだとしても、真に耐久性のあるものにするためには、ユーティリティに回帰する必要があると思います。コマースは、インスタグラムがユーザーのためにユーティリティを高めることができる分野のひとつです。

最初にソーシャルキャピタル、次にユーティリティ

インターネットの偉大なリソースの多くは、名声や認知度を求める人々によって構築されました。

名声のために来て、ツールのために残る?
(Come for the fame, stay for the tool?)

Foursquareは私にとってこれでした。最初の頃は、ランダムな場所でメイヤーの座を獲得しようとチェックインしていました。最近のFoursquareは、単なる風変わりな分散型ソーシャルキャピタル・ゲームではなく、自分の周りの場所に関する情報を提供する、より実用的なものになろうとしています。ヘビーユーザーは、それがどれほど成功しているかについて考えているかもしれませんが、他のアプリが構築できる場所のデータベースをコンパイルするだけで、彼らはユーティリティのストアを構築しています。

IMDb、Wikipedia、Reddit、Quoraなどがその代表例です。ユーザーはステータスを求めてやってきましたが、結果的にコモンズのためのツールを構築するのに役立ちました。

ユーティリティはあるが、ソーシャルキャピタルはない

巨大なソーシャルアプリの多くは、ほとんど実用主義的なものですが、それは厳しい競争の中にあります。

一部の企業は、ネットワークのユーティリティを高めることには成功しても、実際のソーシャルキャピタルを構築することには成功していません(あるいは、試みようともしていません)。

ほとんどのメッセージング・アプリはこのカテゴリーに入ります。すでに知っている人に連絡を取るのには役立ちますが、あまり新しい人を紹介してくれないし、「いいね!」や「フォロー」でステータスを競うものでもありません。Skype、Zoom、FaceTime、Google Hangouts、Viber、Marco Poloなどのビデオチャットアプリも、このカテゴリーに当てはまります。メッセージングアプリの中には、ストーリーズのような機能を追加して、従来のソーシャルメディアのようなパフォーマティブな領域に踏み込もうとしているものもありますが、インスタグラムのような純粋なStaaSアプリと比較すると、そのような機能が普及するかどうかは疑わしいと思います。

この右下の象限には、10億人以上のユーザーを抱える企業が存在しますが、ソーシャルキャピタルを最小限に抑え、純粋にユーティリティ由来のネットワーク効果で勝負しているため、わずかな堀でも血と汗を流して争うような過酷な競争の場になりがちです。

ソーシャルキャピタルはあるが、ユーティリティは少ない

ソーシャルネットワークがユーティリティを確立する前に熱を失ってしまうと、立ち上がりと同じくらいの速さで衰退してしまいます。

Foursquareがここに位置していると主張する人もいるかもしれませんが、この象限で議論する上で最も興味深い企業は明らかにフェイスブックです。フェイスブックにユーティリティがないと言っているわけではありません。いくつかの市場では、それはインターネットのようなものです。Messengerは明らかに10億人以上の人々にとって便利なメッセージング・ユーティリティです。

しかし、米国はフェイスブックにとって重要な市場であり、特に収益化に関しては、もしフェイスブックがユーティリティの軸をさらに押し広げることに成功していたら、今日の状況はどう変わっていただろうかと考える価値があります。私の知り合いの多くは、この1年でフェイスブックを生活から切り離しましたが、日々の生活にはほとんど影響がありませんでした。商取引や決済など、明らかに最大のユーティリティを持つカテゴリーの中で、フェイスブックは広告以外ではトップレベルのプレイヤーではありません。

このことは、フェイスブックが最もよく対比されるソーシャルネットワークと比較すると、特に顕著です。

ソーシャルキャピタルとユーティリティの両立

ソーシャルネットワークの聖杯は、2×2マトリックスの右上象限に収まるほどのソーシャルキャピタルとユーティリティを生み出すことです。ほとんどのソーシャルネットワークでは、この2つの要素が混在していますが、WeChatほどのものはありません。

フェイスブックを捨てて二度と振り返らなかった人の話を耳にしますが、中国ではWeChatを捨てた人はいないでしょう。これは、WeChatがどれほど組み込まれたユーティリティになっているかを物語っており、これを削除することはほとんどの市民にとって大きな不便を強いることになります。

典型的な中国のユーザーのために、WeChatやWePay、AliPayのメニューにあるサービスのリストを見て、フェイスブックがそのどれにも支払いの選択肢がないことを考えてみてください。

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もちろん、競合の状況は重要です。フェイスブックは、これらのカテゴリーにおいて、WeChatよりもはるかに厳しい競争にさらされていました。フェイスブックがこれらのカテゴリーのいずれかでより良いネズミ捕りを作るためには、WeChatよりもはるかに高い要件が求められます。

決済を例に挙げてみましょう。中国人はさまざまな理由からクレジットカードをほとんど使いません。また、Visa、Mastercard、American Expressの3社が中国に進出できなかったことも理由の1つです。そのため、AlipayとWePayは、身の回りの不便さの解消という課題を主に現金と競い合うことになりました。これを例えばApple Payが米国でクレジットカードを使う習慣をなくそうとしていることと比較してみましょう。特に、多くの人々がクレジットカードのポイントやマイルに夢中になっていることを考えると(航空会社のマイレージプログラムも、人々の意思決定に影響を与えるステータスの力を証明しています)。

コマースや決済などの新しいカテゴリーに本格的に参入するには、フェイスブックとその子会社であるWhatsAppやインスタグラムに長期で考える力と大量のリソースが必要になります。例えば、フェイスブックの検索機能を向上させたり、フェイスブックを決済手段として位置づけたり、フェイスブックにバーチャルアシスタントを導入したりするなどの過去の取り組みは、放棄されたように見えます。フェイスブックの暗号通貨への取り組みや、インスタグラムのコマースへの取り組みのような新しい取り組みには、十分な長さの鎖が与えられるのでしょうか?

ソーシャルネットワークの漸近線1:プルーフ・オブ・ワーク

StaaSビジネスの成長が止まる時期をどうやって見分けるのでしょうか?メトカーフの法則によれば、ネットワークの価値はそのユーザーの二乗に比例して成長するのに、ネットワークが突然S字カーブの肩の部分にぶつかるのはなぜなのでしょうか?なぜ、ネットワークがすべての人を取り込むまで成長し続けないのか、それを説明するために欠けている変数は何でしょうか?

理由はたくさんありますが、ここではソーシャルキャピタル理論に焦点を当ててみましょう。暗号通貨の例えに戻りますが、プルーフ・オブ・ワークの選択は、選択されるスキルが均等に分布していないため、定義上、漸近線となります。

訳者注:
漸近線とは十分遠くで曲線との距離が0に近づき、かつ曲線と一致しない直線のことである。Wikipediaより引用

具体的な例として、今話題のアプリということで、以前Musical.lyとして知られていたアプリ、TikTokを見てみましょう。

TikTokの動画を見たことはあっても、作ったことはあるでしょうか?私の推測では、多くの人はやったことがないし、これからもやらないでしょう(でも、もしやったことがあるならリンクを送ってください)。もちろん、私もやったことはありません。

あなたは、あなたの評価によれば、身もだえするほどの尊厳を持っているかもしれません。関節炎のあなたには”Orange Justice”を行うことができないかもしれません。いずれにしても、TikTokのクリエイターコミュニティは、どんなに独創的なツールがあったとしても、最終的にはそのプルーフ・オブ・ワークの性質によって制限されてしまいます。ツイッターでも同じことが言えます。140文字、そして今では280文字の気の利いた情報を作ることを楽しむ人の数は限られています。どのようなネットワークでも、最終的な貢献者の数にはある程度の上限があり、それは多くの場合、そのプルーフ・オブ・ワークの直接的な機能です。

もちろん、ネットワークの価値や総ユーザー数は、投稿者数の直接的な関数だけではありません。ソーシャルネットワークの1/9/90ルールを信じるかどうかにかかわらず、どんなネットワークもそのクリエーター以外の人々にとって価値があることは方向性として正しいです。実際、ほとんどのネットワークでは、閲覧するだけのユーザー数がアクティブな参加者の数をはるかに上回っています。人生は観客動員型のスポーツではないかもしれませんが、多くのソーシャルメディアはそうです。

プルーフ・オブ・ワークが悪いと言っているわけではありません。実際、多くの人の創造性を引き出すような制約条件を考えることは、まさにStaaSビジネスがプロダクト・マーケット・フィットを達成する方法です。制約があるからこそ、圧縮された状態になり、芸術的な美しさが生まれることが多いのです。また、クリエイターに制約を課すことで、全く制約のない探求では得られないような集中的な努力を促すことができます。

しかし、天井は天井です。ネットワークの最終的な価値を知りたいのであれば、プルーフ・オブ・ワークの種類は考慮すべき重要な変数です。なぜMusical.lyが成長を止めてBytedanceに売却したのか、なぜDouyinが中国でユーザー数の上限に達するのか(まだ達していないのであれば)、あるいはどのソーシャルネットワークでもアクティブユーザー数の上限を知りたいのであれば、まず、その分野で競争するスキルと興味を持っている人がどれだけいるのかを自問してみてください。

ソーシャルネットワークの漸近線2:ソーシャルキャピタルのインフレーションとデバリュエーション

投資家や従業員にとって、漸近線よりも恐ろしいのは崩壊です。ギリシャ神話の虚栄心の神Myspakosにちなんで名付けられたMyspaceの崩壊の教訓的な神話を思い出してください(編集部注: 作り話で、実際はNarcissusです)。メトカーフの法則やそれに関連するネットワーク効果の理論があるにもかかわらず、ソーシャルネットワークの中には、成長が止まるだけでなく、さらに悪いことに、縮小して枯れてしまうものがあるのはなぜでしょうか?

StaaSビジネスに内在する脆弱性を理解するには、ステータスの変動性を理解する必要があります。

ソーシャルキャピタルの金利上昇

よくある罠の一つに、ソーシャルメディアの勝者の呪いがあります。ソーシャルネットワークが十分な成功を収めると、その規模が大きくなり、ほとんどのユーザーにとって高いS/Nを維持するために、アルゴリズムによるフィードを課さなければならなくなるのです。これは、FRBが金利を上げることでインフレを管理しようとするのと似ています。

もちろん、問題はこれによって、どのユーザーからのどのような投稿であっても、その配信量が減少してしまうことです。このような決定の中でも最も物議を醸したのは、フェイスブックがニュースフィードに配信するコンテンツの量を減らしたことでした。

多くの機関、特に報道機関は、ニュースフィードに掲載される目玉商品にアクセスするためにフェイスブックを利用していました。彼らは、自分たちのフェイスブックページをフォローしてもらうために、あらゆる種類のプレゼントやプロモーションを考案しました。フォロワーを獲得すると、メディア企業は自由にニュースフィードに何度でも掲載することができ、ユーザーが1日に何度もフェイスブックを開いていることを考えると、魅力的な提案でした。ただでさえインターネットの普及でビジネスモデルが混沌としていたメディア企業にとっては、道行く人に記事を振りまくことから、世界中の人のまぶたの内側に、1日に何度も記事をホチキスで留めることにアップグレードしたような感覚でした。決定的な保証された眼球です。

しかし、ある日、フェイスブックがサノスのように指を鳴らし、その確実なリーチの多くが灰になってしまいました。あなたのページのフォロワー全員が、あなたの投稿のすべてを見ることはできなくなったのです。フェイスブックは、中央銀行がインフレ対策として行うように、ニュースフィードからアテンションを集めるための金利を引き上げました。

このような動きは避けられなかったのでしょうか?必ずしもそうではありませんが、可能性は常にありました。というのも、今日のすべてのソーシャルネットワークやメディア企業には、自然に制限されている希少な資源があり、それはユーザーのアテンションです。ソーシャルネットワークがそのアテンションの一部をパートナーと共有することは、常にそのアテンションを最初に集めて維持することに次ぐものです。例えば、フェイスブックは、ニュースフィードに関しては、コモンズの悲劇に常に注意しなければなりません。メディア機関を救うことは、二の次になるかもしれません。

ソーシャルキャピタル・デフレーション: 希少性の不安定さまたはグルーチョ・マルクスの難問

ソーシャルネットワークに存在する特有のリスクとして、次のようなものがあります。「本来ソーシャルであるものには、ネットワーク効果が正の方向にも負の方向にも強力に働く」というものです。

エラッド・ギル著『High Growth Handbook』の中で、マーク・アンドリーセンはこう述べています。

ネットワーク効果は素晴らしいものだと思いますが、ある意味では少し過大評価されていると思います。ネットワーク効果の問題点は、同じようにすぐに元に戻ってしまうことです。そのため、持続している間は素晴らしいのですが、逆転するときは猛烈に逆転します。MySpaceの人にネットワーク効果がどうなっているか聞いてみてください。ネットワーク効果は、明白な理由により、非常に強力なポジションを作り出すことができます。しかし、別の意味では、それは非常に弱い立場と言えます。なぜなら、もしネットワークに亀裂が入ったら、あなたは解けてしまうからです。私がいつも心配するのは、答えがネットワーク効果だけだと考えている企業です。ネットワーク効果の耐久性は?

ソーシャルネットワーク効果はなぜ逆転するのでしょうか?私がソーシャルネットワークを判断するもう一つの軸である「ユーティリティ」は、価値に上限がない傾向があります。商品やサービスが便利になりすぎたと表現することはまずありません。つまり、ユーティリティを過剰に提供することは難しいのです。VisaやMastercard、Alipayのような決済手段は、利用者が多ければ多いほど便利です。便利になりすぎたからといって、そのサービスを使わなくなることはありません。

ソーシャルネットワーク効果は違います。ニューヨークに住んだことがある人なら、何ヶ月も前から盛り上がっていたナイトクラブが、しばらくして突然潰れてしまうのを何度も見たことがあるでしょう。ソーシャルキャピタルの多くのタイプは、壊れやすい性質を持っています。ステータスは、その価値を決定する希少性を定義するために、調整されたコンセンサスに依存しています。コンセンサスは一瞬にして変化します。『スウィンガーズ』に登場する友人は、LAの混雑したパーティで「ここはどうせ死んでいる」と言い放っていました。また、著名な社会学者であるグルーチョ・マルクスの名言を思い出してください。「私は、私を会員にしてくれるクラブには所属したくない。」

グルーチョ・マルクスの効果はすぐには現れません。そもそもステータスヒエラルキーでは、ステータスの高い人が自分がどれだけ大衆の上に立っているかを実感するために、ステータスの低い人が入会する必要があります。ラスベガスの八海山でボトルサービスを頼んでも、ベルベットロープの反対側に誰も座っていなければ意味がありませんし、ハイスコアが1つしかないリーダーボードも意味がありません。

しかし、レストランやクラブ、ソーシャルネットワークには、その人気を超えてしまうようなティッピングポイントがあります。マルコム・グラッドウェルが「ティッピングポイント」という言葉を世間に広めたとき、彼は物事がどの方向に傾いているのかを明確にしませんでした。私たちは、S字カーブのつま先である急速な普及への転換を美化しがちですが、ファッションのようなステータスゲームでは、人気の弧はS字カーブではなくベルカーブを描きます。ベルカーブの頂点では、あまり華やかではないティッピングポイント、つまり急落する前のポイントに到達します。

ステータスの定義が分散している場合、多くの場合、ある少数派が不釣り合いな影響力を持っています。そのグループ、つまりクールな子供たちが引き金を引けば、誰もが彼らに続いて出口に向かう傾向があります。実際、ソーシャルネットワークの蒸発冷却効果により、最初に出て行くのは最もステータスの高い人や好ましい人であることが多いのです。その時点で、そのプロダクトやサービスはユーティリティ軸上で可能な限り遠くに移動していなければならず、そうでなければ解約の速度が速く鼻血が出てしまいます

[模倣的欲望は残酷な愛人である。ジラードはFyre Festivalで大騒ぎしたことでしょう。おめでとうビリー・マクファーランド、あなたはインフルエンサーの恩恵を欲しがるという罪を私たちが清めるための儀式の生け贄だ」。]

ファッションは、ネットワーク効果の中で繰り返されるブームとバストのパターンを理解し、自らのステータスの切り下げサイクルを所有している、最も興味深い産業のひとつです。雑誌編集者やファッションデザイナーの奇妙な陰謀は、毎シーズン、恣意的に新しいスタイルを今のファッションと宣言し、過去に推奨したものは陳腐化する前に撤退させます。基本的に機能的な変化はありません。今シーズンに買ったシャツは、昨シーズンに買ったシャツ機能的に同じです。業界全体としては、皆がサーフィンしようとしている波のように、希少性のフロンティアを前進させているだけなのです。

今シーズンの流行色はサフランかもしれません。なぜでしょうか?それは、私よりもクールな人がそう言ったからです。テック業界では、デジタル情報が非競争的で限界費用がゼロであることから、何が何でも成長を優先する傾向があります。豊かな世界では、それは理にかなっています。しかし、商品が競合する場合に重要となる、希少性を積極的に管理する方法について、テクノロジーはファッションのような産業から学ぶべきことがたくさんあります。多くの種類のステータスは相対的なものであるため、定義上、ライバル関係にあると言えます。ソーシャルネットワークに適用されるローテーション理論に相当するものがありますが、それはまだ標準的な技術のプレイブックには含まれていません。

このタイプのステータス切り下げカスケードの変形は、特定のグループが参加したときに引き起こされます。これは、ステータスの格子の安定性が、ネットワークの総サイズと同じくらい、ネットワークの構成に依存するからです。テクノロジー分野での典型的な例は、親が強制的にサインオンしたときに若者がフェイスブックから移行したことです。ニュースフィードの配信が驚くほど効率的になったことで、フェイスブックは若者にとって事実上の監視装置となりました。ママやパパが見ているだけでなく、将来の大学や雇用主、デート相手がタイムトラベルして、いつかあなたのプロフィールを精査するのです。フェイスブックが若者のプラットフォームとして魅力的でなくなると、彼らの多くは新しいメッセージング・ソリューションとしてスナップチャットに集まってきました。

以前、スナップチャットの不透明なイースターエッグUIが、親に対するいたずら防止用の蓋のようなものであると書きましたが、ソーシャルネットワークユーティリティ理論と第二言語としての自撮りに関する記事を組み合わせると、スナップチャットは、テキストを優先的に使用する高齢者にとっては最適ではないメッセージングプラットフォームであることも明らかになります。スナップチャットを開くと、カメラが表示されます。誰かにメールを送りたいときは、左にスワイプしないとテキストメッセージ画面にたどり着かないので余計な手間がかかります。

過去に他のアプリの奇妙なクローンを検討したことを考えると、フェイスブックがある時点で、ニュースフィードではなくカメラを最初に開くバージョンのアプリを検討していなかったとしたら、私はショックを受けるでしょう。もしそうなら、リリースされなくてよかったと思います。若い人たちにとっては、親が写ったままのグラフに公開するのは、やはり抵抗があったでしょうし、ビジュアルメディアにそれほど偏っていないお年寄りにとっては、このようなUIは最適ではなかったでしょう。フェイスブックにとっては、悲惨な負け惜しみになってしまうのです。

Patrick Collisonは、物理的な世界におけるネットワーク効果の罠に関する興味深い論文(PDF)を参照しています。これは仮想世界にも存在し、StaaSビジネスには特に多くの罠があります。もう一つの例は、経路依存的なユーザー構成です。熱狂的なアーリーアダプターのグループは、自分たちが好きなコンテンツをサービスに流すだけで、新しいソーシャルネットワークが誰のためのものかを決定することができます。例えばピンタレストは、フロントページのパーソナライズ化が急速に進む前は、基本的なツールセットが男性にも有用であるにもかかわらず、主に女性をターゲットにしたサービスのように見えました。新規ユーザーのフロントページには、すでにサービスを利用している友人のピンが表示されるため、女性に近い初期のコホートが新規ユーザーのフィードの大半を占めていました。私が最初に見たピンタレストのトップページは、化粧品、女性用の服、家の装飾品などが延々と並んでいましたが、これは私の友人たちがさまざまなプロジェクトのためにピンしていたものと同じだったからです。

グルーチョ・マルクスは、ソーシャルキャピタルの哲学者としては時代の先端を行っていましたが、私たちは彼の仕事をベースにすることができます。彼の有名なアフォリズムに、いくつかのバリエーションを加えるべきだと思います。蒸発冷却に関しては、2つのことが思い浮かびます。「あの人たちがメンバーになるようなクラブには所属したくない」「あの人たちがメンバーになりたくないようなクラブには所属したくない」。

ソーシャルキャピタルの評価低下リスクの軽減、そしてスナップチャットの戦略

昨年末に流出したメモの中で、Evan Spiegelは、スナップチャットのコア・バリューの1つが、最速のコミュニケーション手段にすることであることを書いています。

私たちが成長するための最も永続的な方法は、最速のコミュニケーション手段であることに執拗に集中することです。

最近、私はiPhone 4でスナップチャット v5.0を使う機会がありました。スナップチャット v5.0には、Bobbyのオリジナルコードと、私のオリジナルグラフィックが多く使われていました。私のiPhone Xで動作する現在のスナップチャットよりもはるかに高速でした。

イノベーションを起こして多くの新プロダクトを世に送り出そうとするあまり、私たちはスナップチャットを最速のコミュニケーション手段にした核心部分を失ってしまいました。

2019年は、スナップチャットを最速のコミュニケーション手段にすることに注力し、まだスナップチャットの使い方を知らない何十億人もの人々に、当社サービスのコアバリューを解き放つことを目指します。スナップチャットのコアバリューを解き明かすことができなければ、カメラのパワーを最大限に発揮することはできません。

そのためには、仕事のやり方を変えて「最速のコミュニケーション手段」というプロダクトのコアバリューを、スナップのすべての仕事の最優先事項にする必要があります。また、付加価値の高い機能があっても、コアプロダクトの価値が損なわれてしまうような市場では、プロダクトを変更する必要があるかもしれません。

以上、私のソーシャルメディア・フレームワークの3つの軸におけるスナップチャットの戦略を明らかにしました。スナップチャットは、ソーシャルキャピタルの軸を犠牲にして、ユーティリティの軸をさらに推し進めようとしていますが、これは以前にも述べたように、長期的なビジネスを構築するには不安定な要素です。

多くの人は、特にスナップチャット自身は、ずっとアンチフェイスブックであったと言うでしょう。スナップチャットには「いいね!」がないため、破壊的なステータスゲームから人々を解放することができるのです。しかし、そう考えるのは、どんなネットワークでもステータスゲームの武器にすることができるという人類の創意工夫を過小評価していることになります。

スナップチャットを使っている子供たちを研究したことがある人なら、スナップチャットが高校生のステータスゲームやFOMO戦争にフェイスブックと同様に欠かせない存在であることを知っているでしょうし、そのような子供たちがほとんどフェイスブックを使わなくなった今、間違いなくスナップチャットはより重要な存在となっています。ソーシャルメディアアプリの中で、これほど尖った軸を持っているのはインスタグラムだけで、インスタグラムの方がよりあからさまなソーシャルキャピタル蓄積メカニズムを持っているのは事実です。しかし、子供たちがスナップチャットを純粋なメッセージング・ユーティリティのように使っているという考えは、笑い話であり、10代の学生生活がどのようなものだったかを忘れてしまったのではないかと思わせるものです。招待されていないパーティに参加している人たちをインスタグラムで見ても、誰かのスナップで見ても、やはり嫌な気分になるものです。

スナップチャットのオリジナルのBest Friendsリストを覚えていますか?先に述べたように、その時点でスナップチャットの使い方がわかっていたとしても、お年寄りはおそらくそのステータスゲームをしていなかったでしょう。この機能は、10代の若者向けに開発されたものとしては、純粋なステータスゲーム機能でした。スナップの頻度が高い上位3人が表示されるだけでなく、連絡先のベストフレンドの上位3人を確認することもできました。つまり、全員の「友人関係」の階層を公開し、人気度のスコアボードを明示したのです。

私が高校生の時にこれが存在しなくてよかった、私は本当に私がどれだけの敗者であるかの指標を必要としませんでした。

スーパーBFF-domを達成するためのプルーフ・オブ・ワークを知りたくないですか?

フォロワー数や「いいね!」数の集計と同様に、ベストフレンドリストは、人々が非常に特殊な形のソーシャルキャピタルを蓄積するためのメカニズムでした。しかし、プラットフォームの観点から見ると、この機能には大きな問題があります。それは、各ユーザーが1人のベストフレンドしか持てないことです。ベストフレンドは1人しかいないということで、ソーシャルキャピタルの獲得量に上限が設けられていました。

スナップチャットは、ソーシャルキャピタルの蓄積を制限し、ゼロサムゲームをポジティブサムゲームに変えて、頑張っているユーザーや魅力的なユーザーの数を増やすために、非常に人気のあったベストフレンドリストを廃止し、ストリークに置き換えました。

スナップチャットの連絡先リストの右側に表示される数字や絵文字を見たことがない人は、誰からも愛されていません(冗談です、それはあなたが年をとっているということです)。

友達と何日も連続してスナップチャットを利用すると、ストリークが蓄積され、友達リストに記録されます。若者たちはすぐに、友達とのストリークの構築と維持に心血を注ぎました。これは文字通り、友情の証としてのプルーフ・オブ・ワークであり、数値化され、追跡されるものでした。

もちろん、ストリークには制限がないという素晴らしい特性があります。好きなだけストリークを維持することができます。ソーシャルキャピタルに価値がないと思っている人は、携帯電話を持たずに旅行に行ったり、携帯電話や無線LANが使えない場所に行ったりして、自分のストリークがすべて途切れてしまうことに泣きじゃくる若者を見たことがないでしょう。海外旅行を余儀なくされたときには、携帯電話を友人に預けて、その友人がすべての連勝記録を維持してくれるという、ある種のソーシャルキャピタルなベビーシッターやサロゲートのような方法をとっている子もいます。

笑えるのは、若者がいかに効率よくストリークを維持しているかということです。それは毎日の儀式のようなもので、友達のリストをざっと見て、何かランダムなものをスナップして、ストリークのカウントを増やすというものです。私の甥っ子は、カメラを構えることすらせず、ほとんどのストリークを維持するためのスナップは、肘の横や肩の半分などのぼやけた写真でした。

もちろん、ソーシャルキャピタル構造の脆弱性の証拠として、ストリークは熱を失い始めています。スナップチャットの若いユーザーの多くは、もはやストリークを気にしていません。ソーシャルキャピタル・ゲームを維持することは、常に不安定なゲームであり、突然の大規模なデフレ現象に見舞われやすいのですが、ストリークが機能している間は、とんでもない麻薬のようなものです。10代の若者のように頻繁にスナップをしている人にとって、ベストフレンドリストを配信リストの一番上に並べておくことは時間の節約になります。ソーシャルキャピタルとユーティリティはきれいに分けられないことが多いです。

とはいえ、ステータスが不安定であることや、インスタグラムがソーシャルキャピタルの蓄積を目的としたサービスであることを考えると、スナップチャットがメッセージングのユーティリティを高めることを目指すのは悪い戦略ではありません。しかし、メッセージング分野で競争している人なら誰でも知っているように、持続的なユーティリティの優位性を生み出すことは非常に難しいことです。技術競争のゲーム理論では、コピーできる機能はすべてコピーされると考えたほうがいいでしょう。そしてメッセージングは、利益の観点から見ると、決して最も有利なビジネスではないかもしれません。

余談ですが、スナップチャットは「Discover(発見)」ページでエンターテイメントの軸を打ち出しています。ある程度の規模のソーシャルネットワークであれば、ソーシャルキャピタル、ユーティリティ、エンターテイメントの3つの要素を組み合わせて利用することになりますが、それぞれの要素をどれだけ強調するかは、それぞれが選択することになります。

ステータスゲームの半減期を長くする

プルーフ・オブ・ワークが変わらないことの危険性は、いずれその社会的通貨を採掘したいと思う人が皆そうしてしまい、そのほとんどが枯渇してしまうことです。その時点で、ソーシャルネットワークに残されたステータス主導のポテンシャルエネルギーの量は平坦になります。その時点で、サービスが多くのユーティリティを付加することに成功していなければ、ネットワークは陳腐化してしまいます。

この問題に対処する一つの方法は、ユーザーが潜在的なソーシャルキャピタルの新たな蓄えを効果的に作り出す、新しい形のプルーフ・オブ・ワークを追加することです(最大手のソーシャルネットワークは他のソーシャルネットワークよりも優れている傾向があります)。インスタグラムは、正方形の写真とフィルターで始まりましたが、その後、アスペクト比の制約を取り除き、動画を追加し、動画の制限を長くし、BoomerangやStoriesなどのフォーマットを追加しています。親会社であるフェイスブックは、世界中のソーシャルネットワークの中で最も拡大したと言っても過言ではありません。ハーバード大学の学生たちがテキストベースの近況報告をするためのツールだったのが、今では数え切れないほど多くのフォーマットやオプションを持つソーシャルネットワークになりました。これらの新しいハードルは、ビデオゲームにおけるダウンロードコンテンツのようなもので、慣れ親しんだゲームに新しいレベルのスパイスを加えるようなものです。

というのも、フェイスブックは多くの人にとって様々なものであり、もはや誰にとっても何でもないものになっている可能性があるからです。すべての人を受け入れながらも、一貫したステータスの梯子を提供したいと考えるクラブになるのは難しいことです。フェイスブックはステータスゲームに参加したくないと主張することもできますが、そうであれば、もっとたくさんのユーティリティを追加しなければなりません。

ビデオゲームは、その急速なライフサイクルと明らかなスキル対報酬のトレードオフを考えると、この種の分析においてショウジョウバエのようなものです。例えば、大ヒットしたゲームのライフサイクルが約1年半であるのはなぜでしょうか。

新しいゲームは、全く新しいレベルと課題を提供し、プレイヤーはステータス競争に夢中になります。しかし、最終的にはスキルの差別化によって、プレイヤー層がきれいに整理される傾向があります。プレイヤーは自分が極めたレベルに到達した後停滞します。同時に、プレイヤーはゲームの課題に慣れすぎてしまい、達成感によるドーパミンの分泌が少なくなってしまうのです。

例えばCall of Dutyのようなフランチャイズは、何億ドルもの投資をして定期的に新バージョンを出すことで、このサイクルを管理しています。それぞれのゲームは、慣れ親しんだものでありながら、新たなレベルや課題、環境を提供しています。これがライフサイクルです。

ゲームによっては、そのサイクルを長くすることができます。例えば、ラスベガスのカジノゲームでは、リアルマネーを支払うことで、プレイのROIに魅力的なフロアを設定しています。MMORPGの中には、ゲームをプレイするという純粋なスキルの挑戦よりも長く続く、コミュニティの感覚のような他の利点をプレイヤーに提供するものがあります。World of Warcraft、League of Legends、Fortniteなどの長寿命のビデオゲーム・フランチャイズを見ると、並行する業界がいかにしてトップ・プロパティの生産的な中年期を長くすることに成功したかがよくわかります。

ソーシャルネットワーク戦略のフロンティアは、これらの隣接した、より古いソーシャルキャピタルゲームを深く研究することで、ますます広がっていくのではないでしょうか。ファッションも、ゲームも、宗教も、そして社会も、元々はStaaSビジネスだったのです。

ソーシャルに苦戦する企業が出てくる理由

ステータスゲームを嫌悪する人もいます。にもかかわらず、私の知り合いは皆、複数のステータスゲームに参加しています。インスタグラムでハッシュタグスパムをしている人を嘲笑する人もいれば、ツイッターで賞賛のリツイートをする人もいます。ある人は、インスタグラムでハッシュタグをつけている人を嘲笑しながらも、ツイッターで褒められたらリツイートします。親は子供の発表会の写真を見せびらかし、人々は鏡を見ながら自分の服装を評価し、従業員は会議で同僚をねぎらい、起業家は30アンダー30のリストに載りたいと思いながら文句を言い、記者はTechmemeのリーダーボードをチェックするなど、人生はステータスコンテストの入れ子構造になっています。

私は人生の中で、ステータスゲームを超越したような人に何人か会ったことがあります。しかし、それは奇跡のような人であり、他の人たちに虚栄心を抱かせてしまうようなごく僅かな人達です。

ステータスゲームを超えていると主張する人の数は、実際に超えている人の数よりも多いです。彼らが嫌悪感を表明しているのは本物だと思いますが、そうでないとしても、彼らの憤りの危険性は、自分たちのプロダクトがある意味でStaaSを提供するビジネスとして機能していることが見えなくなってしまうことです。

実際、多くのハイテク企業は、経営者の交代や賢い買収がなければ、社会的な活動が苦手であることに変わりはないでしょう。例えばAppleは、ソーシャル機能の構築に幾度か挑戦したことがあります。以前、音楽の分野でソーシャル機能を構築した際には、すぐに消滅してしまいました。また、iOSのフォトアルバムにソーシャル機能を追加しようとしましたが、試してみるたびに何よりも困惑してしまいました。

Appleファンなら、「iMessages」と叫ぶかもしれません。何億人ものユーザーがいて、10代の若者の間で大量に使用されている、それはAppleがソーシャルをできるという証拠ではないでしょうか?ある意味ではそうですが、ほとんどはユーティリティの問題です。Appleのソーシャルへの取り組みは、ソーシャルキャピタルが少ない傾向にあります。

Appleは自らをユーザーのプライバシー擁護の第一人者と位置づけているため、ソーシャル機能の多くがプライバシーとトレードオフの関係にあることから、ソーシャル機能の構築には常に制約があると思われます。しかし、すべてがそうではなく、完全にプライバシーに基づいたソーシャルネットワークが成功する可能性もありますが、1)それは困難なことであり、2)多くの人々がプライバシーを犠牲にしてまで自分の最高の生活をオンラインで見せたいと思っているかどうかは定かではありません。

もちろん、これこそが多くの人々がAppleを愛し、選ぶ理由であり、彼らは使い切れないほどの現金を持っています。誰もAppleに同情する必要はありません。よくあることですが、企業の強みと弱みは、その企業の本質の中にある同じ性質からきています。私はむしろ、Appleが世界で最高のコンピュータを作ることに集中し続けることを望みます。Appleがプライバシーを重視することを、iOSでの写真共有のような厄介なやり取りの言い訳とみなすのは、誤ったトレードオフです。

同じような社会的な近視眼が、Googleにもあります。Googleは、Google+で独自のソーシャルネットワークの構築に挑戦したことで有名です。アップルと同様、マウンテンビューのチームは、ソーシャルキャピタルというよりも、ユーティリティ的なネットワークを構築するのに適しているようです。グーグルは、ソフトウェアエンジニアが最も力を持っている会社だとよく言われます。私の経験では、エンジニアは論理で動く人であり、ステータス中心のプロダクトは彼らにとって嫌悪感や謎めいたものであり、その両方であることが多いです。グーグルは今後もソーシャルが苦手でしょうが、アップルと同様に独自の強みでカバーしています。

奇妙なことに、Googleは2大モバイルプラットフォームの1つを支配しているにもかかわらず、いまだにメッセージングアプリで成功できないでいます。これは、GoogleがGmailで大きな市場シェアを持っているEメールのように、ユーティリティを重視したソーシャルアプリケーションとほぼ同じです。Googleは、特にGoogle Mapsをはじめとする多くのプロダクトで、ユーティリティを高めるためにソーシャルを利用することができたはずなのに、残念なことです。

アマゾンもNetflixもソーシャルの取り組みを開始しましたが、ほとんど忘れ去られています。おそらく、これらの試みは時期尚早で、フライホイール効果を発揮できるだけの十分な規模になる前に世に送り出されたのだと思われます。新しいソーシャルネットワークを立ち上げるのは大変なことですが、買い物やDVDの郵送レンタルなど、発生頻度の低い行動を中心としたソーシャル機能を立ち上げるのはさらに困難です。また、両社のソーシャル活動は、最も洗練されたデザインではありませんでした(フェイスブックは、数十億人のユーザーに対応するソーシャルプロダクトを立ち上げる能力があり、そのデザインチームは、あらゆる文化や年齢のユーザーに使いやすさを提供することに長けていると評価されています)。

偽のレビューが氾濫していることや、プライムアカウントを持っている人の数を考えれば、アマゾンがソーシャルサービスを構築することで、知り合いや信頼できる人からの商品の推薦やレビューを容易にすることができるでしょう。私は、アマゾンの極端にポジティブなレビューもネガティブなレビューも、たとえそれが検証済みの購入者からのものだと記載されていたとしても、ますます懐疑的な目で見るようになりました。このような機能の重要な価値はユーティリティですが、商品の専門家であることによるステータスの向上は、フライホイールを回すエネルギーになります。しかし、アマゾンは、レビュアーランキングやグローバルセールスランクなどの機能を使って、ソーシャルダイナミクスを小売ビジネスに活用してきた実績があります(両方とも、もう少し下の方で説明します)。

Netflixに関しては、私は実際のところ、ビデオのレコメンデーションを生成する上で、ソーシャルは多くの人が考えるほど有用ではないと考えています(これについては別の日に議論しますが、映画の趣味に関しては、小さな違いにこだわるナルシシズムがあると言えば十分でしょう)。しかし、Netflixtにとってソーシャルアクティビティは、今のところ、アプリ内のユーザーにはほとんど見えない、噂話を増幅させ、群衆行動を促す程度の話題性に関する追加レイヤーとして機能します。これはNetflixのような規模の加入者数を達成できなければ成立しない戦略であり、したがって、Netflixがもっと活用できる二次的な規模の優位性の一形態です。

しかし、ソーシャルネットワークであっても、ほとんどの企業の上級幹部が、ソーシャル機能をデザインして活用することに不向きである理由はもう一つあります。それは、勝者の呪いの一種です。

ケーキを食べればいいじゃない

何度も耳にする言葉ですが、ユーザーに共感する最も簡単な方法は、自分自身が標準的なユーザーになることです。私はこの考えを支持する傾向がありますが、残念なことに、私の携帯電話には常に何百ものアプリがインストールされており、プロダクトの時代の流れについていくのが精一杯です。

ソーシャルネットワークでは、ユーザーの目を通して自社のサービスを見ると、誰をフォローしているか、サービスのアルゴリズムが何を提供しているかによって、人によって異なる体験をするという問題があります。何億人、何十億人ものユーザーがいて、文化も違うのに、どうやって状況を正確に把握するのでしょうか。エンゲージメントが高く、成長していることは指標でわかるかもしれませんが、その活動の構成はどうなっていて、誰がどの部分に触れているのでしょうか。

健康的な活動と不健康な活動を区別する指標ができるまでは、ソーシャルネットワークの幹部は、風向きを確認するために指をなめたり、空気中に突っ込んだりして、逸話に基づいて舵取りをするしかありません。自分たちのサービスの問題点を指摘された幹部が無知を訴えても、信じられない人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。コミュニティを運営する上で、最も厚い無知のベールは、何百人、何千人、何百万人ものコホートをわずか一握りのコホートに集約した、整然としたメトリクスダッシュボードです。

ソーシャルネットワークの健全性を実感するためには、ネットワークのトポロジーや、何億、何十億というユーザー間のつながりやインタラクションの量と性質を理解する必要があります。それらをすべて処理することは不可能ですが、重要な詳細部分を失わずに要約することも同様に困難です。

しかし、さらに困惑させられるのは、成功しているソーシャルネットワークの幹部は、世界で最も高いステータスにある人々であるということです。彼らが抱えているのは0.1%か0.001%の問題です。彼らは日々、コアユーザーが常に取り組んでいる問題に直面することはほとんどありません。エンゲージメントの目標は、ソーシャルキャピタル・ゲームとして最適化されたサービスを構築することに向けられるかもしれませんが、彼ら自身はより多くのステータスを必要としているわけではありません(彼らが自分のネットワークでは見つけられないタイプのステータスを除きます)。

[ジャック・ドーシーは例外かもしれませんが、彼が投稿するツイートには、怒りのリプライが絶え間なく寄せられています。彼がパブリックメッセージングプロトコルのマイナス面のリスクを身をもって理解していないとは言い切れません。ツイッターでハラスメントを受けた被害者のためには、厚顔無恥でストイックではないジャックが必要なのかもしれません]。

ソーシャルキャピタルとファイナンシャルキャピタルの交換

[ソーシャルキャピタルの存在と価値を完全に信じているのであれば、このセクションは読み飛ばしても構いませんが、その価値を推定するいくつかの方法を理解するには興味があるかもしれません]。

歴史上最も大きく、最も価値のある企業のいくつかが、ステータス・ゲームを生み出すことで短期間で築き上げられたことを考えると、ソーシャルキャピタルの存在と価値を確信できるでしょう。私たちはソーシャルメディアの時代に生きているので、おそらく文明の歴史の中でソーシャルキャピタル資産のピークにいるのです。しかし、先に述べたように、ソーシャルキャピタルを研究する上での課題の一つは、ソーシャルキャピタルをどのように測定し、その流れをどのように追跡するかについて、合意された定義がないことです。

私はソーシャルキャピタルの明確な定義を見つけていませんが、ソーシャルキャピタルとは、人々のネットワークから生まれる資本だと考えています。この概念をもっと詳しく知りたい方は、このページに定義に関する文献の長いリストがあります。実際のところ、私はソーシャルキャピタルに関しては、最高裁のポッター・スチュワート判事がかつてポルノについて言ったように「見ればわかる」と読者の皆さんを深く信頼しています。

しかし、それ以上に、ソーシャルキャピタルという暗黒物質は、それがより身近な価値のあるものに変換されるような交換を通じて検出することができます。

近所の人からミルクを借りたり、子供の面倒を見てもらったりしたことがある人は、ソーシャルキャピタルの価値を知っています。また、小さな遊牧民が放浪し、他の部族の人々を棒や石で殺すことが日常的に行われていた人類史の初期段階に生きていた人は、ソーシャルキャピタルの存在による保護の繭と、不在時の突然の暴力を通して、ソーシャルキャピタルの価値を知っています。

ソーシャルキャピタルを見極める最も簡単な方法は、人々がソーシャルキャピタルを金融資本と交換している場所を見ることでしょう。ソーシャルネットワークの成熟に伴い、このような交換を促進するためのインフラは大きく進化しています。レベルアップしたWorld of Warcraftのキャラクターという無形の資産がマーケットで売られた時にその価値が分かるように、こうした取引によってソーシャルキャピタルに具体的な価値を与えることができるのです。

ソーシャルキャピタルから金融資本への交換の例として最もよく挙げられるのは、インスタグラムやYouTubeのインフルエンサーたちが行うものでしょう。私は、別の人生ではアバクロンビー&フィッチの外でモグモグしていたり、ロサンゼルスの高級レストランでフロントドアを担当していたりするかもしれないモデルに会ったことがありますが、その代わりに、特定のリゾート地で贅沢に過ごし、特定のスポンサーのプロダクトを身につけたり使用したりしている写真を投稿することで、年収7桁以上の収入を得ています。ジェイクやローガン・ポールが、YouTube配信で得た資金で購入した豪邸の車道で、新しいランボルギーニの前でおめかししている動画を投稿したら、上流でソーシャルキャピタルと金融資本の交換が行われたことになります。流通を再構築すれば、世界も再構築されます。

同様に、逆方向の流れも見られます。ツイッターで何十万人ものフォロワーを買う人たちは、金融資本とソーシャルキャピタルを交換している最もクリーンな例の一つです。その後、そのソーシャルキャピタルを金融資本に戻すには、スポンサーに投稿料を請求するなど、さまざまな方法があります。両者の相対的な価値に応じて、アービトラージが可能です。

[ネット上で多くの人に馬鹿にされているKlout社は、ネット上の人々のソーシャルキャピタルの評価をより正確に追跡しようと試みましたが、真の富裕層が成金を無粋だと馬鹿にするように、多くの人が明確な測定の試みを見苦しいと感じました。しかし、これらの人々の多くは、オンライン上でソーシャルキャピタルを求めて激しく競争しているため、どのようなステータス・ゲームが許容されるかを指定すること自体がステータス・ゲームなのです]。

文化的、文脈的に様々な理由でマネタイズモデルが異なるアジアでは、ソーシャルキャピタルの評価がより明確になります。アジアの多くのソーシャルネットワークでは、ネットワークを離れることなく、ソーシャルキャピタルを直接金融資本に変えることができます。例えば、YYのようなライブストリーミングサイトでは、視聴者から実際にお金がかかるデジタルギフトを得ることができ、その価値をプラットフォームと分け合うことができます。初期のYYは、かわいい女の子がポップソングを歌うだけのものが多かったです。最近では、魅力的なドキュメンタリー映画『People’s Republic of Desire』に見られるように、もっと多くのものに進化しています。

中国では、インフルエンサーを育成・管理する機関が設立されていますが、これは選手の育成やコーチングをする野球のファームシステムのようなものです。ソーシャルキャピタルを自社ブランドのプロダクトラインに変換するスピードは飛躍的に加速していますが、中国ほどそのスピードが速い国はありません。

一方、ツイッターでは、もし自分のツイートが大規模なバイラルになったとしても、GoFundMeページへのリンクを添付したフォローアップのツイートをしなければならず、それに比べると下品なマネタイズハックです。インフルエンサー産業化の最先端を行くのは、アメリカではなく中国なのです。

アジアのマネタイズスキームのすべてがアメリカの文化に移植されるかどうかは懐疑的ですが、この記事で重要なのは、ソーシャルキャピタルには実際の金銭的価値があり、ネットワークはその交換がどれだけ簡単にできるかという点で異なるということです。

ソーシャルキャピタルの蓄積と保管

暗号通貨のように、ソーシャルキャピタルを蓄積しても、それを所有して安全に保管できなければ意味がありません。成功しているソーシャルネットワークのほとんどは、蓄積と保管の両方の仕組みを提供することに長けています。

今となっては当たり前のことかもしれませんが、このような仕組みを提供できず、価値が他のソーシャルネットワークに流出してしまった多くのアプリやサービスを考えてみてください。Hipstamaticは、インスタグラムよりも先に登場し、私がモバイルで使った最初の写真フィルターアプリでした。しかし、インスタグラムとは異なり、フィルターは有料で、プロフィールページもソーシャルネットワークもフィードもありませんでした。私はHipstamaticのフィルターを使ってiPhoneの写真を加工し、それをフェイスブックなどの他のソーシャルネットワークに投稿していました。Hipstamaticはユーティリティを提供してくれましたが、フィルターを使うことで得られるソーシャルキャピタルは何も得られませんでした。

この点を、先に述べたMusical.lyのような企業と比較してみましょう。彼らはユニークなプルーフ・オブ・ワークを考え出しましたが、Hipstamaticとは異なり、ユーザーがミュージカル・スキットを作成することで得られるソーシャルキャピタルの価値を獲得しようとしました。彼らは、これらの寸劇が単にインスタグラムやフェイスブックなどのネットワークにアップロードされることを望んでいませんでした。

そこで、アプリ内にフィードを作成し、優秀なユーザーが自身の作品を配信できるようにしたのです。そうすることで、Musical.lyは自分が生み出したソーシャルキャピタルを所有することができました。もしあなたのサービスが無料であれば、あなたが生み出した価値を獲得するための最良の方法は、その価値が実現され交換される市場を所有することです。

Musical.lyの創業者であるAlex Zhuは、新しいソーシャルネットワークを立ち上げることを、新しい国を設立して既存の国から市民を呼び込もうとすることに例えています。これは面白い例えですが、私は暗号通貨の例えの方が好きです。というのも、ほとんどのユーザーはテクノロジーの世界で複数のソーシャルネットワークの市民となっており、ステータスの分散されたポートフォリオのように、すべてのネットワークでソーシャルキャピタル資産を管理しているからです。

いくつかの基本的なソーシャルキャピタルの蓄積メカニズムは個々のユーザーのために標準化されました。まず、プロフィールがあり、そこにはフォロワー数やリストなどの指標が表示されます。フォロワーやフレンドは、多くのソーシャルネットワークの最小単位であり、フォロワー数の利点は、一般的に時間の経過とともに増加する傾向がある点です。また、フォロワー数はグローバルなランキング指標としても有効です。

局所的なソーシャルキャピタルのスコアリングは、通常、何らかの「いいね!」という形で存在しています。フィードの性質上、最近のアクティビティが優先的に配信されるため、「いいね!」はより刹那的な性質を持っていますが、フォロワーはよりゆっくりと蓄積される傾向にあるため、ほとんどのソーシャルネットワークでは何らかのバージョンが存在します。「いいね!」は自分のアクティビティの量との相関性が高く、長期的にはフォロワーや友達よりも価値が低いとしても、短期的には継続的なソーシャルキャピタルの注入源として機能します。

一部のネットワークでは、リツイートのように再共有することで、投稿の配信を加速させることができます(多くの意図しない結果をもたらしますが、それはまた別の機会に議論しましょう)。また、コメントを許可しているネットワークもありますし、その他のネットワーク固有の形態もありますが、これらのほとんどは、投稿に添付できる何らかのソーシャルキャピタルです。

繰り返しになりますが、これはソーシャルネットワークを利用しているほとんどのユーザーにとっては衝撃的なことではありません。しかし、以下のようなソーシャルキャピタルの蓄積を困難にしているソーシャルネットワークを検証することは有益です。

例えば、WhisperやSecretのような匿名性の高いソーシャルネットワークがその例です。このようなソーシャルネットワークの前提は、匿名であることにより、ユーザーが他の人と関わることをためらうような情報や意見を共有できるということでした。しかし、よくあることですが、その強みは弱みとなり、ユーザーはそこで作られたソーシャルキャピタルを主張することができませんでした。これらのネットワークに書き込まれたものは非常に有害であり、それらの所有権を主張することは、全体としてソーシャルキャピタルに負の影響を与えます。

Redditのようなネットワークはカルマを導入することでこの問題を解決しましたが、Redditにとっては、ソーシャルキャピタルを現実のアイデンティティやレピュテーションから切り離すことで解き放たれる暗い非対称インセンティブを抑制することは長い闘いだったと言ってもいいでしょう。

[Balaji Srinivasanは、いつの日か暗号通貨によって、誰かが自分の身元を公にすることなく匿名のソーシャルネットワークから価値を引き出すことができるようになるかもしれないと述べていましたが、少なくとも今のところ、ソーシャルネットワーク上のステータスの多くは金銭的な性質のものではありません。その多くはただの笑い話です]。

一人のユーザーにとって、ソーシャルネットワークの粘着性は、そのネットワーク上に蓄積されたソーシャルキャピタルの量と強い相関関係があることが多いです。ソーシャルネットワークを捨ててしまう人もいますが、よほどのデフレでもない限り稀です。

また、ソーシャルキャピタルは腐らないものであるため、捨てやすい傾向にあります。ツイッターのフォロワーが他のネットワークでは何の価値もないのであれば、面倒なことをする価値がなくなれば、アカウントを手放す方が苦痛ではありません。ツイッターやフェイスブックのようなソーシャルネットワークでは、かつてユーザーが自分のグラフを他のネットワークに移植することができました。また、フェイスブックは、サードパーティのサービスやアプリが自分たちのグラフの上に構築することで得られるインバウンドのソーシャルキャピタルの価値を過大評価していたこともありました。

グラフの移植が制限されていることは、既存のソーシャルネットワークから見ればプラスですが、ユーザーから見ればフラストレーションが溜まります。独占禁止法の消費者福祉基準に照らしてソーシャルネットワークに取り組むことが難しいことを考えると、巨大なネットワーク効果ビジネスの力を抑制するための選択肢として、(多くの人が提案しているように)ユーザーが自分のグラフを他のネットワークに持ち込むことを認めるようにすることが考えられます。これにより、ソーシャルネットワークは、ソーシャルキャピタルの軸では力を失い、ユーティリティやエンターテイメントの軸で競争することになります。

ソーシャルキャピタル・アービトラージ

ソーシャルネットワークには異なるオーディエンスが集まることが多く、また、ユーザーが重なっていてもグラフの構成が異なることが多いため、アプリ間でソーシャルキャピタルを裁定する機会が存在します。

その代表的な例が、インスタグラムの人気アカウント「@thefatjewish」(本名はジョシュ・オストロフスキー)です。彼は、ツイッターやその他のソーシャルネットワークで他人が言ったジョークを、自分のジョークとしてインスタグラムに投稿することで、何百万人ものフォロワーを獲得しました。何百万人ものフォロワーと「いいね!」を集めただけでなく、CAAとの契約も獲得したのです。

そのことを指摘された彼は、「繰り返しになりますが、インスタグラムは、私が行っている、より大きなことの一部に過ぎません。私には、クイーンズのネイルサロンの裏で働いているインターン達がいます。たくさんのことをやっています。私は本を書いていて、ロゼを飲んでいます。彼らにお風呂に入ってもらわなければなりません。他にもいろいろとやってもらいたいことがあるんです。極めて切迫した状況であるとは思えませんでした」と主張しました。これは本当に長くて奇妙な言い方ですが、嘘がバレてしまいました。彼らを入浴させているインターンの軍隊を持たない者にに最初の石を投げさせましょう。

それ以来、インスタグラム上の同様のジョークアグリゲーターのアカウントは増殖し続けていますが、その中には写真の中にそれぞれのジョークの適切な属性を含めるという、太っ腹なスキャンダル後の社会的規範に従っているものもあります(例えば、「借りた」ツイートの写真の中にツイッターのユーザー名とプロフィール写真を含めるなど)。しかし、多くの人はそうしません。また、そうしている人でも、最も顕著なものは反発を引き起こすことがあります。fuckfuckjerryというハッシュタグは、人気のインスタグラムアカウント@fuckjerry に対する新たな抗議です。このアカウントは@fatjewishと同様に、他人の最高のジョークをキュレーションし、それをデイトレードして小さなメディア企業にしたものでFyre Festivalの大失敗にも登場しました。

同じようには機能しない複数のソーシャルネットワークがある限り、あるネットワークから別のネットワークに仕事をコピーして、流通のギャップを埋めるためのソーシャルキャピタルを蓄積するソーシャルメディアアービトラージが存在し続けるでしょう。インターネットが普及する前、男性は才能のあるコメディアンから個性やウィットを盗み、会話の中で映画やミッチ・ヘドバーグのジョークを引用していました。これは、その現代的な形であり、インターネットのスケールの大きさによって強化されています。

ソーシャルメディアへの投稿の多くは、誰かの作品からステータスを得ようとしているに過ぎません。冒頭の2つの考え方は、この種のアービトラージが常に存在することを示しています。例えば、誰かがツイッターやフェイスブックの記事にリンクしたり、他人の本の段落をスクリーンショットして投稿したりすることを考えてみましょう。再共有の利益をどのように分配するかによって、オリジナルの制作者の反応の大きさが変わってくるようです。インスタグラムの@thefatjewishや@fuckjerryのようなアカウントへの反発は、再共有するジョークの相手と価値を共有していないことが原因かもしれませんが、例えば、本の抜粋をツイッターに投稿すると、著者にとってはありがたい宣伝になります。

一時的なエネルギー源としてのソーシャルキャピタル・ゲーム

ソーシャルキャピタルのインセンティブ構造は、適切に構築されれば、かけがえのないインセンティブとして機能します。例えば、インターネット上の良質なコンテンツをキュレーションすることは、コンテンツが無限に存在するこの時代においては永遠の課題であり、面白いものを発見したら報酬を与えるというのはインターネット上の最も古くて信頼できるマーケットの一つです。

その代表的な例がRedditで、ユーザーは面白いリンクやその他のコンテンツを持ってくると、文字通り「カルマ」と呼ばれる通貨と交換します。カルマを貯めると、自分のサブレディットを作成したり、特定のプライベートなサブレディットに参加したりすることができるなどの特典があります。

ツイッターもまた、フォロワーや「いいね!」の数を増やすために、面白いコンテンツを発信する人が多いソーシャルネットワークです。適切なアカウントを十分にフォローすれば、ツイッターは面白みのある小粒の分配者となります。

また、ソーシャルネットワークとは思えないような企業でも、ある問題を解決するためにソーシャルキャピタルゲームを利用することがあります。あるクリスマス休暇に夜食を食べようと階下に降りていくと、3人の父親である友人がまだ起きていて、ノートパソコンを打っていました。数時間後には起きて子供たちの世話をしなければならないのに、何をしているのかと尋ねると、彼は恥ずかしそうにYelpエリートのステータスを維持するために、たくさんのレビューを書いていたと言いました。今でも私の友人の中には、昔参加したYelpエリートのパーティのことを懐かしそうに話す人がいます。

初期のYelpは、いくつかのパーティーを開くだけで、どれだけ多くのレビューを集めることができたかを考えてみてください。それは間違いなく価値のあることであり、そうでなくなった時点で(ニューヨークの一風堂の9655件目のレビューを書くことの限界値は何か?)簡単に縮小されたり、廃止されたりするものです。

アマゾンはソーシャルを理解している企業とはあまり思われていませんが、Yelpよりも前の初期の頃、ユーザーのレビュー数を増やすために同様の戦術を採用していました。アマゾントップレビュワーは、アマゾンのすべてのレビュワーを世界的にランク付けしたリストでした。自分のレビューに対して買い物客からより多くの「役に立った」を集めることで、自分の順位を上げることができました。私の記憶に残っているのは、このリストを何年にもわたって独占し、印刷されているほとんどすべての本をレビューしていたハリエット・クラウスナーです。アマゾンは今でもトップカスタマーレビュアーリストを維持していますが、レビューの量がアマゾンにとって現実的な問題ではなくなってきているため、時間とともに価値が下がってきています。

もうひとつの例は、アマゾンが効果的に採用していたステータスゲームで、今はもう存在しない「グローバルセールスランク」です。一時期、アマゾンのすべての商品は、他のすべての商品と比較され、動的な売上ランクのリーダーボードにランク付けされ、その数字は各商品の詳細ページの上部に目立つように表示されていました。本の著者は、自分の本の販売ランクを上げるために、顧客をアマゾンに誘導していました。これは、今日の著者が発売週にNYTimesのベストセラーリストに載ることを期待して、自分の本を発売時にある程度の量を購入することを約束するのと同じです。

IMDbやWikipediaは、その分野の専門家たちのステータスを求める気持ちと利他的な気持ちが同居する仕組みを構築することで、価値あるデータベース全体をほぼ完全に構築した2つの企業です。Redditと同様に、これらのサービスで一定の評判を蓄積することで、追加の能力が解放され、両社とも非常に低い制作・編集コストで巨大な情報データベースを構築しました。

このようなソーシャルキャピタルを蓄積するインセンティブは、ステータスというポテンシャルエネルギーを、ベンチャーが必要とする運動エネルギーに変換する方法と考えることができます。

有名人のアプリが失敗する理由

一時期、セレブの間では自分のアプリを立ち上げることが流行しました。カーダシアンのアプリが最も顕著な例ですが、他にもあります。

ソーシャルキャピタルの観点から見ると、これらのアプリは、有名人自身のステータスを下げるだけで、ほとんど価値を生み出しません。参加する人のほとんどは、その名を冠した有名人のコンテンツを求めています。アプリのユーザーであるファン同士の交流は、ほとんどないに等しいのです。基本的にこれらのアプリは、スター自身の配信チャンネルであり、耐久性のある資産というよりは、虚栄心の強いプロジェクトになる傾向があります。

このようなアプリがユーザー間の交流を促進しようとすることは想像できますが、それは非常に複雑な取り組みであり、そのような取り組みの多くは、これを引き受けるスキルも、それをやり遂げるために必要な意志や資本も持ち合わせていません。

このような有名人によるベンチャー企業を考える別の方法として、問題となっている有名人のソーシャルキャピタルをすべて取り除いた場合の、プロダクトやサービスのソーシャルキャピタルとユーティリティを測定することができます。たくさんの人からたくさんの人を引いたものは、ゼロに等しいのです。

結論: 誰もが世界を支配したいと思っている

オビ=ワン・ケノービの不朽の名言に「ステータスはジェダイに力を与えるものだ。それはすべての生物が作り出すエネルギーフィールドである。それは我々を取り囲み、我々を貫く。それが銀河を結びつけるのだ」というものがあります。

大手ハイテク企業の多くが部分的にはStaaSビジネスであるということは、あまり議論されていません。多くの人は、自分がステータスによって動機づけられていることを認めたがらないでしょうし、自分の会社でやるべき仕事が人々のエゴを満足させることだと認めるCEOはほとんどいないでしょう。

ユーザーの視点から見ると、常に接続されている携帯電話のソーシャルアプリで常にステータスゲームをしていると、心が疲れてしまうという話が増えてきています。StaaSをFOMO as a Serviceに置き換えることは簡単です。マンハッタンやシリコンバレーで、とんでもない大金持ちがいまだに悲惨な目に遭っているのはこのためです。

この記事は、ストイシズムや仏教、超越瞑想、心の平穏を得るためにスマホのアプリを削除することなどを説いたMediumの思想書という、よくあるジャンルに私が貢献するものではありません。自分の幸せをコントロールしたいのであれば、他人のスコアボードに縛られてはいけないということです。

映画『ヒート』でのニール・マコーリーの言葉を思い出してください。

快楽的なトレッドミルから抜け出すためには、ステータスをテーマにした名作映画『ヒート』に登場するロバート・デニーロ演じるニール・マコーリーの言葉に耳を傾けてみましょう。「熱を感じて30秒で逃げ出すことができないようなソーシャルキャピタルに執着してはいけません。」

ヒートの最後に、彼は自分のアドバイスに従わず、どうなったかを見てみましょう。

しかし、私はシーザーを葬るために来たのではなく,また彼を賞賛するために来たのでもない。むしろ、エミリー・ウィルソンが『オデュッセイア』の素晴らしい新訳の冒頭で述べているように、「複雑な男について教えてくれ」。インターネット全体の多くは、評判のような無形のインセンティブであるソーシャルキャピタルの基盤の上に構築されています。今日のような巨大ハイテク企業が出現する以前、私はニュースグループ、ブログ、膨大なFAQなど、世界全体に貢献することで得られる評価からドーパミンの刺激を感じている人々が作った無数のリソースを調べていました。アマゾンでは、このようなモチベーションを高めるための通貨を「egoboo」(egoboost)と呼んでいます。エゴブーで成り立っているウィキペディアのようなものは、とんでもない奇跡だと思います。私はそれを失いたくありません。私たちはそれを失う必要はないと思うのです。

もちろん、フォースのように、ステータスは人間の本質の最も暗く残酷な部分の燃料としても同様に強力です。ツイッターとフェイスブックのそれぞれのミッションステートメントを見てみると、「すべての人に障壁なくアイデアや情報を創造し、瞬時に共有する力を与える」、「人々に共有する力を与え、世界をよりオープンでつながりのあるものにする」というものですが、これらが基本的にポジティブな結果であるという前提に立っているのが印象的です。誰もがつながり、誰もがすぐに情報を共有できるようになることで、どのようなマイナス面があるのかについては何も問われていません。

もちろん、両社をはじめとする多くの企業は、何十億人もの人々を無防備に接続することで生じる、しばしば無制限のダウンサイドリスクに対処しなければなりませんでした。2016年の選挙でロシアがソーシャルネットワークに侵入したことに関する上院情報委員会の報告書を読むと、多くの点で、ロシア人はこれらのサービスを運営するプロダクトチームよりもユーザーをより正確に理解していたことがわかり、不安になります。いずれにしても、そのコストの多くは企業ではなく社会が負担しています。企業はそのモデルの無限のアップサイドから利益を得ているので、企業がコストを負担するのは不合理ではありません。工場で川を汚染するコストを企業が負担するのと同じです。そうすれば、ハンター・ウォークが指摘したように、利益率は下がりますが、社会や言論はより健全になるかもしれません。

ツイッターで人気のある意見とは逆に、これらの企業のリーダーが人文科学の学位を持っていないことが問題なのではありません。しかし、人間がソーシャルキャピタルを追求するようにできていることを無視しても、解決にはなりません。むしろ、このような人間の本質的な側面を見過ごしてきたために、ソーシャルネットワーク第一期の終わりに、どこですべてがおかしくなったのかと悩むことになったのではないでしょうか。もしこれらのネットワークをステータスではなく情報だけを取引する市場と考えるならば、私たちは機械の一部しか見ていないことになります。威嚇の電話は、ずっと家の中からかかってきていたのです。ベン・トンプソンは、技術系エグゼクティブのこのようなナイーブさを「ポリアン的な仮定」と呼んでいます。

私はこれまで複数のプロダクトに携わってきたので、人間との関わり合いを無傷で生き残れるプロダクトはないという事実に共感しています。しかし、StaaSビジネスの最初の時代は終わりつつあり、無知を訴えることは今後も通用しません。そうすると「カサブランカ」のルイ・ルノー船長のようになってしまいます。


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👉 Eugene Wei

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売れるもマーケ 当たるもマーケ – マーケティング22の法則

▼本記事の内容
  1. 第1章 一番手の法則
  2. 第2章 カテゴリーの法則
  3. 第3章 心の法則
  4. 第4章 知覚の法則
  5. 第5章 集中の法則
  6. 第6章 独占の法則
  7. 第7章 梯子の法則
  8. 第8章 二極分化の法則
  9. 第9章 対立の法則
  10. 第10章 分割の法則
  11. 第11章 遠近関係の法則
  12. 第12章 製品ライン拡張の法則
  13. 第13章 犠牲の法則
  14. 第14章 属性の法則
  15. 第15章 正直の法則
  16. 第16章 一撃の法則
  17. 第17章 予測不能の法則
  18. 第18章 成功の法則
  19. 第19章 失敗の法則
  20. 第20章 パブリシティの法則
  21. 第21章 成長促進の法則
  22. 第22章 財源の法則

著者プロフィール: アル・ライズ
アメリカ合衆国のマーケティング戦略家。インディアナ州のDePauw大学を卒業。ジャック・トラウトと共に、「アドバタイジング・エイジ」誌に連載した「ポジショニング時代の到来」で注目され、現代マーケティングの第一人者として知られるようになった。

著者プロフィール: ジャック・トラウト
アメリカ合衆国のマーケティング戦略家。ゼネラル・エレクトリック社の広告部門でキャリアをスタートさせた。その後、アメリカのタイヤ・メーカーユニロイヤル社の宣伝部長になった。アル・ライズと共に、「アドバタイジング・エイジ」誌に連載した「ポジショニング時代の到来」で注目され、現代マーケティングの第一人者として知られるようになった。

今回の本は、マーケティングでトップクラスに有名な本です。マーケティングは概念枠組みの組み立てであるという内容は、マーケティングの本質を突いていると言われています。
今回は、読んだ際に各章でハイライトした内容を若干の修正を加えてリストアップしています。

第1章 一番手の法則

• マーケティングの基本的な課題は、あなたが先頭を切れる分野を創造することである。
• マーケティングとは、知覚をめぐる戦いであって、商品をめぐる戦いではないのだ。

第2章 カテゴリーの法則

• 一番手になれる新しいカテゴリーを見つければいいのだ。

第3章 心の法則

• 市場に最初に参入するよりも顧客の心の中に最初に入り込むほうがベターなのである。一番手の法則においては、心の中に最初に入り込むことはあまり強調されないが、実はこれこそマーケティングのすべてである。

• もし人の心の中にある何かを変えたいのであれば、それは諦めたほうがいい。あるマインドがすでに出来上がっている場合は、それが変わることはまずありえない。マーケティングにおいて最も無駄な行為は、人の心の中を変えようとする試みである。
• あなたが他人に強い印象を与えたい場合には、その人の心の中に徐々に入り込み、ゆっくりと時間をかけて好意を醸成しようとしたのではだめだ。心というのはそんなふうには動かない。心の中には一気に入り込まなければならない。徐々にではなく一気に勝負すべき理由は、人々は自己の心を変えたがらないという点にある。

第4章 知覚の法則

• マーケティングの世界に存在するのは、ただ、顧客や見込客の心の中にある知覚だけである。知覚こそ現実であり、その他のものはすべて幻である。
• ある商品に関して、自分自身の知覚ではなく、だれか他の人の知覚をもとに購入決定をするのである。これが「周知の事実の法則」と呼ばれるものだ。

第5章 集中の法則

• 会社が見込客の心の中に一つの言葉を植えつける方法をみつけることができれば、信じがたいほどの成功を収めることが可能である。複雑な言葉である必要はない。独自な言葉である必要もない。辞書からすぐに引っ張りだせるような、簡単な言葉がベストである。
• マーケティングにおいておよそ無駄と思われるのは、自分が使ってきた言葉をほったらかしにして、他人の支配下にある言葉を物色することである。
• マーケティングの基本は、焦点を絞り込むことである。活動の領域を絞れば絞るほど、立場が強力になる。

第6章 独占の法則

• 自分の競合会社が顧客の心の中にある言葉を植えつけていたり、あるポジションを占めている場合に、その同じ言葉を植えつけようと試みるのは無駄である。

第7章 梯子の法則

• 二番手、二番手のブランド用に使える戦略がいくつかあるのだ。
• 顧客の心の中ではあれこれ選択が行なわれる。顧客は、どの情報を受入れ、どの情報を斥けるかを決めるに当たって、自分なりの梯子を使う。一般に心の中は、当該カテゴリーにおける自己の商品の梯子に合致する新しいデータのみを受け入れる。ほかのものはすべて無視される。
• 梯子の段数の上限はいくつであろうか。顧客の心の中には「七段の法則」なるものが存在しているように思われる。

第8章 二極分化の法則

• 初めのうち新しい商品カテゴリーの梯子には、多数の段がついている。ところが次第に、その梯子が二段式梯子に変わっていく。
• 明確なナンバーツーが不在というケースがしばしばある。その場合、以後の推移は、競争各社の戦術の巧みさによって決まる。

第9章 対立の法則

• あなたが梯子の上から二段目にしっかりした足場を築きたいのであれば、まずあなたの上段にいる会社を研究しなさい。その会社の強みはどこか。どうすればその強みを弱みに転じることができるか。
• あなたがしなければならないことは、ナンバーワンのエッセンスを見つけ出し、顧客にそれと反対のものを提供することである(相手の上を行こうとしないで、相手との差別化を図るのである)。これが、しばしば見られる伝統企業対新興企業の図式である。

第10章 分割の法則

• マーケティングの舞台は、たえず拡大を続けるカテゴリーの海とみなすことができる。
• カテゴリーは分割されこそすれ、結合することはないのだ。

第11章 遠近関係の法則

• 化学的に見れば、アルコールは強い抑制剤である。しかし飲んだ直後は、人の心の抑圧を押え込むことによって、あたかも興奮剤であるかのような働きをするのである。多くのマーケティング活動が同じような現象を示す。長期的なマーケティング効果は、短期的な効果の正反対である場合が多いのである。

第12章 製品ライン拡張の法則

• 本書の法則のうちで、断トツに破られている法則といえば、何と言っても「製品ライン拡張の法則」である。さらに悪いことに、ラインの拡張は企業サイドが意識的な努力をほとんどしないでも、連続して起こるプロセスなのである。
• 会社が商品や市場、提携先を増やせば増やすほど、収益は減少するのだ。「あらゆる方角にフルスピードで突っ走れ」というのは、危険な吊橋からの呼び声であるといってよい。

第13章 犠牲の法則

• 「犠牲の法則」は「製品ライン拡張の法則」の反対である。
• 犠牲にできるものとしては、三つのものが考えられる。すなわち、製品ライン、ターゲット市場、絶えぎる変更の三つである。

第14章 属性の法則

• あなたは独自の言葉を見つけ出して顧客に植えつけなければならない。何か別の属性を探し出さなくてはならないのである。
• ナンバーワンと張り合えるような正反対の属性を探してみるほうが、はるかに利口なやり方だ。ここでのキーワードは「正反対の」である。「同じような」ではだめだ。

第15章 正直の法則

• まず何よりも正直は、相手の心を開かせる。あなたが自分について語るネガティブな言葉は、即座に本当のこととして受け入れられるのである。
• 正直の法則は注意深く、かつ巧みに利用しなくてはならない。第一に、あなたのネガティブなメッセージが、ネガティブなものとして広く認知されることが肝心である。顧客の心に瞬間的に同調心が湧くようぞないといけないのだ。もしネガティブ性がとっさに理解されないようだと、顧客は戸惑い、「いったい、これは何だ」と、疑間を抱くことになるからだ。

第16章 一撃の法則

• 歴史の教訓によれば、マーケティングにおいて実効を上げうる唯一の行動は、一回きりの、大胆な一撃である。さらに、いかなる状況においても、実質的な成果を上げうる作戦行動は一つしかありえない。

第17章 予測不能の法則

• たいていのマーケティングプランにそれとなく含まれているのが、未来についての仮説である。けれども、未来予測に基づいて立てられたマーケティングプランは、たいがい失格である。
• 競合各社の反応を見通せないことが、マーケティングで失敗する主な理由である。

第18章 成功の法則

• あちこちで見られる製品ライン拡張の背後にある決定的なきっかけは、ブランドの成功である場合が多い。あるブランドが成功すると、会社はブランド成功の主な理由が、ブランドネームにあると思いがちである。そこで彼らはすぐさま別の商品を探してきて、それにそのブランドネームをくっつけるのだ。
• あなたが自分のブランドや社名にこだわればこだわるほど、ライン拡張の危険な罠にはまりやすくなる。

第19章 失敗の法則

• たいていの会社はとかく物事を見限るよりも、何とか取り繕ってみようとする。

第20章 パブリシティの法則

• 実態は、マスコミに現われる姿とは逆である場合が多い。
• 万事が順調であるとき、会社はパブリシティを必要としない。パブリシティを必要とするのは、たいてい困った時である。

第21章 成長促進の法則

• 成功するマーケティング計画は、―時的流行現象(ファッド)の上に築かれるのではない。トレンドの上に築かれるのだ。
• もしあなたが疑いもなくファッドの恩恵に浴して、急成長しているビジネスに携わっているとすれば、一番いいのはそのファッドに水を差すことである。水を差すことによって、ファッドを長持ちさせるのだ。そうすれば、ファッドがトレンドにより近いものとなる。

第22章 財源の法則

• マーケティングとは、顧客の心の中で争われるゲームである。顧客の心の中に入っていくには、資金が要る。そしていったん入り込んでも、そこに留まるにはまた資金が必要なのである。
• 金のないアイデアは全く無価値であるとはいえないにしても、まあ、無価値に近い。


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企画脳

著者プロフィール: 秋元康
作詞家。高校時代から放送作家として『ザ・ベストテン』など数々の番組構成を手がける。1983年以降、作詞家として、美空ひばり『川の流れのように』をはじめ、中島美嘉『WILL』、EXILE『EXIT』ほか、数々のヒット曲を生む。2008年11月、ジェロ『海雪』にて第41回日本作詩大賞受賞。1991年、松坂慶子・緒形拳主演『グッバイ・ママ』で映画監督デビュー。企画・原作の映画に『着信アリ』シリーズ、『伝染歌』など。2005年4月、京都造形芸術大学教授、2007年4月、同大学副学長。TV番組の企画構成、新聞・雑誌の連載など、多岐にわたり活躍中。アイドルユニット “AKB48″と”SKE48″の総合プロデューサーも務める。

今回は敏腕プロデューサーである秋元康さんの本です。
企画力で有名な秋元さんがどのようにアイデアを生み出しているかについて綴った本です。

本書の構成は以下のようになっていますが、今回は企画力に絞って紹介していきます。

第1章 企画・発想力をつける基礎体力術
第2章 抜群の切れ味を生む発想・企画術
第3章 「引き出し」と「裏切り」の企画術
第4章 相手に「YES」と言わせるプレゼンテーション術
第5章 感性と知性を磨きあげる勉強術
第6章 知的生活のための情報整理術
第7章 発想・企画のセンスを磨く恋愛術
第8章 信頼と人脈を広げる「つきあい」術
第9章 ツキを味方にする企画・発想術

本記事で扱っていくポイントは以下です。

▼本記事の内容

1. 企画の基本

一番はじめに述べられているのは、自信を持てということです。企画とはそもそも正解のない仕事であり、企画する際に自分以外信じられるものがないのです。これはどの仕事にも当てはまることですね。
以下、企画の基本です。

企画はこだわり・思いつきから生まれる
どんな大きな企画でも、最初の種は小さな記憶やこだわり、気付きから生まれてくるもので、それを大きく育てているのです。ここでは、苺の季節に苺の香りのお茶を出すという例が出されています。

プロデューサーたれ
アーティスト的な観察眼ではなく、プロデューサー的な観察眼・状況判断が必要です。「求められているものは何か?」と考え、そこから何かを作ったり、指示を与えたりするのがプロデューサーです。アーティストは逆に自分が作りたいものを作るという視点なので、それが世の中にうけるかどうかという視点は入っていません。

専門性・得意分野を持つ
ビジネスマンの基本は人付き合いです。そして人付き合いは自分の専門性によって深度が異なります。自分の専門性は自分の興味の対象や得意分野で決まってきます。ここでは記憶に残る幕の内弁当はないと述べられていますが、薄く広くのタイプは印象に残らないですね。

負の要素を持つ
意外かもしれませんが、自分の苦手分野を持つということも大事です。どんなに素晴らしい企画でも、必ず負の部分は存在するので、あえてそれを言って得意分野を際立たせる方が重要です。

日常からはみ出す
日常のルーティンから外れるというのは基本です。喫茶店で知らないメニューを頼む、違う道を歩くなど、抜きん出るためには同じ日常のリズムからどうはみ出していくかということ非常に大事になります。

武器を探す
武器を探す=「自分なら何で勝てるかを知る」ということです。武器は笑顔が素敵かもしれませんし、我慢強い、裏切らないかもしれません。自分はどうすれば勝てるのかというのを自分自身の中に探すことが大切です。

2. 企画・発想術

そもそも発想には2つの方法があります。
1つは机上で考える発想で、もう1つは街に出てからの発想です。

机上で考える発想は「モグラ叩き」と述べられていて、「〇〇のための企画を作る」といったゴールがあり、上のプロデューサー的視点が使われます。

本著の中では、

人と違うところに種を蒔く
時代はケーキ
「あの」がつくもの
予定調和をくずす

と表現されています。一つずつ見ていくと、

人と違うところに種を蒔く
「歴史は繰り返す」という基本の下、どこに種を蒔くかというのを考慮します。当たり前ですが、流行ったものの後追いでは優れた発想にはならず、今流行っているもの、かつ、世の中には反動があるという知識・前提の上に、世の中に受けそうなものを先回りして作らなければならないということですね。

時代はケーキ
世の中で流行るもののベースは同じだということです。ケーキはたくさんの種類がありますが、基本的には三角の形、上にはデコレーション、下はスポンジケーキというベースの構造は共通しています。企画を考える際には、「デコレーション」と「スポンジ」はどう変化していくか?と考えるのが原点になります。

「あの」がつくもの
「あの」コギャルの神様、「あの」モノマネしてるニューハーフ、「あの」節約生活対決。
ヒットする時は必ず、一言で言える「あの」が付きます。逆に企画視点では、どうやって「あの」を作り出すかが大切なポイントです。秋元氏の場合は売る対象物を思い浮かべてから、「あの」を考えまわすそうです。

予定調和をくずす
勝てる企画は、どう裏切っていくかが常に大事です。誰もが考えるような企画からは新しいものは生まれません。「セーラー服」ならおそらくこう来るだろうと予想される時、どれだけ違うモグラを出していけるかが発想して面白く、勝てる発想術です。

次に街に出てからの発想です。
こちらは普段の生活の中で、自分のフィルターを通して、どれだけ面白いものをインプットし、蓄積しておけるかに関してです。

そもそも、街の中にはたくさんのものがあり、その中から面白いものに気づくかどうかが一番の鍵です。そのためには、意識的に街を観察する、興味を持つ、見てみるといったように行動に移していかねければなりません。同じ街を歩くにしても、その景色をどれだけ目に入れられるか、面白いものに気づいて蓄積していけるかが、発想の豊かさにつながります。その蓄積したものを組み合わせていくというのが企画というわけです。

秋元氏の例では、「アメリカになぜガムシロップがないのか?」「ニューヨークの工事現場の塀にはなぜ穴が空いているのか」「ニューヨークのミュージカルでは開演の合図をシャンデリアの点灯で合図する」「ネギはそもそも万能なのになぜ万能とついているのか」といった例が紹介されています。

僕の理解した中では、ヒットする企画というのは時代の流れにあっていて、根本が優れており、キャッチーであるという要件を満たしています。
「時代がこうなる」という読みの下に、先回りしてリリースする感覚です。
時代の流れを読むというのは、マーケティング的&プロデューサー的視点です。上の「人と違うところに種を蒔く」「時代はケーキ」というのが当てはまります。

根本が優れているというのは、面白いものを作るということですね。時代が違っても、ヒットするものは根本が共通しています。これを秋元氏はカルピスの原液と表現していますね。これは人々の蓄積してきた面白いものの組み合わせによって生まれます。

キャッチーというのもセールス的・プロデューサー的視点です。時代のニーズに合うような対象物を人々の心に刺さるようなキャッチフレーズで売り込むことでヒットにつながります。

3. 勉強・情報整理術

ヒットする企画はユニークな価値ある情報から生まれます。

では、そもそも価値ある情報とはどういう情報のことを言うのでしょうか。
秋元氏によると、価値ある情報は「混沌としている整理できない、自分だけが面白いと思っている情報のこと」です。誰もが知っている情報は知識であり、価値はありません。

これを言語化すると、整理はされていないけれど、何か自分の面白いフィルターに引っかかって頭の中に蓄積されている情報となるでしょう。

これは先ほどの「万能ネギ」や「ニューヨークの工事現場の塀の穴」と言ったものです。

企画はこのような無数の、自分の面白いフィルターに引っかかった情報の組み合わせでできるものなのです。

では、このような状態をどのように作り出すことができるのでしょうか?
以下がポイントです。

専門・得意分野を持つ
勉強と身構えない
他人が捨てた情報に目を向ける
独断と偏見を意識する
整理できない情報こそ重要
ツールに踊らされない
時代の最先端にいる必要はない
何を捨てるかを考える


専門・得意分野を持つ
上でも出てきましたが、勉強の方向性と深度が重要です。ある分野に詳しければ、他の人に教えてあげることもでき、武器を作ることができます。

勉強と身構えない
勉強すると身構えるのではなく、普段の生活の中でアンテナを高く張っておき、吸収していく姿勢が重要です。勉強と身構えて、他の人と同じ情報を仕入れていても、それは知識に過ぎず、価値はありません。

他人が捨てた情報に目を向ける
逆にどんな情報を自分は持てば良いのかについてですが、他人が捨てた情報の中で、自分なりの読み方で面白いと思うものです。ここでも情報は整理する必要はなく、自分なりの解釈で面白いと思うものをピックアップすることで、アイデアが出やすい脳の状態にすることができます。

独断と偏見を意識する
上の項目とも重複しますが、情報は自分なりの読み方・面白いと思うものをピックアップするのが重要です。同じものを見ても、そこからどういう気付きを得るか、どういうフィルターをかけるかは完全に自分の独断と偏見によって良いのです。

整理できない情報こそ重要
これはなかなか理解が難しいかもしれませんが、価値ある情報は自分が面白いと思って頭に蓄積したもので、それは混沌としたまま「原石」として頭に蓄積されます。それが企画立案やアイデア出しの時に、何かの引っ掛かりで出てくるのです。その整理されていない情報をどう磨いていくかは、その人の感性によるところです。

ツールに踊らされない
カルピスの原液にも似ていますが、重要なのはツールではなく、面白いものを作るということです。ツールが面白いものを作るわけではないですね。

時代の最先端にいる必要はない
何か最先端の情報を取得していないと競争に関わる仕事の人以外、情報の最先端にいる必要はありません。情報の最先端には熱があり、それは人々を惑わせます。大事なのはそのねつに踊らされず、根本的に何が大事なのかを見極めることです。

何を捨てるかを考える
一番上の専門・得意分野を持つと表裏一体ですね。全てに詳しくということはありません。専門分野を持つために何かを捨てるという表現の方が正しいかもしれませんね。


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「ついやってしまう」体験の作り方

著者プロフィール: 玉樹真一郎
1977年生まれ。東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。プログラマーとして任天堂に就職後、プランナーに転身。全世界で1億台を売り上げた「Wii」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わり「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれる。
2010年任天堂を退社。青森県八戸市にUターンして独立・起業、「わかる事務所」を設立。全国の起業や自治体などで、コンセプト立案、効果的なプレゼン手法、デザイン等をテーマとしたセミナー、講演、ワークショップ、プレゼン等を年60回以上おこなうほか、コンサルティング、ウェブサービスやアプリケーションの開発等を行いながら、人材育成・地域活性化にも取り組む。
2011年5月より特定非営利活動法人プラットフォームあおもりフェロー。2014年4月より八戸学院大学・地域経営学部特任教授。2019年4月より八戸学院大学・学長特別補佐。2017年4月より三沢市まちづくりアドバイザー。著書に『コンセプトのつくりかた』(ダイヤモンド社)がある。

わかる事務所

「ついやってしまう」体験のつくりかた

この本は体験デザインに関する本です。以下の3つのテーマについて扱っています。

「つい」やりたくさせてしまう

「つい」熱中させてしまう

「つい」誰かに言いたくさせてしまう

「つい」やりたくさせてしまう

ここでは、「直感のデザイン」という体験デザインが使われています。直感のデザインとは、シンプルで簡単な体験をデザインし、ユーザーになにをすれば良いのかを「直感的」に伝え、物語全体の簡単な予感を抱かせる方法です。人間に共通する性質を利用することで、直感的にわかりやすく伝え、ユーザーの自発的な体験・学習を誘発し、「やってしまう」体験をデザインしています。

人間の脳は仮説を抱いて試行し、それが正しかった時に歓喜する性質があります。この体験ループ自体が、「ゲームが面白い」という状態です。なので、「つい」やりたくさせてしまうために、直感デザインを用い、以下のような体験ループが使われています。

1. 仮説 自発的に「◯◯するのかな?」という仮説を立てる
2. 試行 自発的に「◯◯してみようかな?」と試しに行動を起こす
3. 歓喜 自発的に「◯◯で正解だった!」と歓喜する

ここでポイントなのは、いかにこの体験がシンプルでわかりやすいかということです。この本の中では、マリオが例に使われていますが、マリオの初期画面はユーザーにいかにわかりやすく「右に行く」というルールを伝えるかが最重要視されており、そのわかりやすさのために面白そうという見た目を犠牲にしているそうです。

「つい」熱中させてしまう

直感のデザインは体験の基本となるデザインですが、欠点もあります。それは連続するとユーザーに疲れと飽きをもたらし、体験自体を止めてしまうという点です。
そこで必要となってくるのが、「驚きのデザイン」です。

「驚きのデザイン」は、ユーザーが持つ日常への思い込みや「こうなるだろう」という思い込みを覆し、驚かせることで、直感のデザインの疲れを拭い去ります。
ですので、「驚きのデザイン」の構造は以下のようになっています。

1. 誤解 自発的に「〇〇するのかな?」という誤った仮説を立てる
2. 試行 自発的に「〇〇してみよう」と試しに行動を起こす
3. 驚愕 自発的に「〇〇は間違いだった」と驚く

驚きのデザインのポイントは、前提や日常への思い込みを外すということなので、以下の10のタブーを意識することで、良い体験デザインが作れます。

1. 性: ときめく感じ、エッチな感じ
2. 食: 美味しそう感、腹減った感
3. 損得: お金欲しい感、損したくない感
4. 承認: 認められた感、所属してる感
5. けがれ: 汚い感、罪悪感
6. 暴力: 痛い感、一方的感
7. 混乱: 間違ってる感、クラクラ感
8. 死: 死に近づく感、オカルト感
9. 射幸心と偶然: 賭けている感、祈っている感
10. プライベート: 恥ずかしい感、秘密感

「つい」誰かに言いたくさせてしまう

「直感のデザイン」と「驚きのデザイン」を組み合わせることで、直感的かつ飽きることのない長時間の体験をデザインすることができます。しかし、その体験に意義がなければユーザーの心は動きません。そこで必要となってくるのが「物語のデザイン」です。

誰かに言いたくさせてしまう物語のデザインに入る前に考えなければならないのは、「そもそもゲームの意義は何か」ということです。時間の無駄と思われてしまえばそれまでですし、何かゲームをプレイする意義がなければなりません。

著者によると、ゲームの意義は「プレイヤーが成長すること」です。ゲームの中で展開される架空の物語は、あくまでプレイヤーが成長する体験をデザインするための手段にすぎません。

なので、ゲームという物語を通して、ユーザーがどのように成長するかということを考慮しなければならず、また、ゲームという物語に入り込んでもらわなければなりません。そのために、まずはユーザーを翻弄するところから始めます。

脳は物語を語る臓器だといえるほど、たくさんの目の前の情報を処理しながら、過去のストーリーと照らし合わせ、結局今目の前で起こっていることは〇〇だとストーリーを作り出します。その性質を利用し、一見わからない断片的な情報を提示し、翻弄するのです。
その翻弄の具体的なテクニックは以下の3つがあります。

1. 環境ストーリーテリング
– 環境の中に配置された断片的な情報をユーザーが自発的に集めながら、物語を構築していく方法
2. テンポとコントラスト
– シーンに含まれる情報量と受動的/能動的をコントロールする方法
3. 伏線
– ある情報の真意を提供した段階ではなく、時間差で気づかせる方法


次にどのようにユーザーを成長させるかについてです。ここでいう成長は定義が難しいのですが、よりできるようになる、知識を得る、決断力を得るというように認識しておくと良いと思います。

ユーザーの成長を促すために使われるテクニックは以下の3つがあります

1. 収集と反復のモチーフ{ 穴と全体像→収集と反復→成長 }
– コレクション、集めるという行為を繰り返す方法。
2. 選択と裁量のモチーフ { リスクとリターン→選択と裁量→成長 }
– 複数の選択肢の中から、ユーザーの意志によって選択し、物語を進めていく方法。
3. 翻意と共感のモチーフ{ 面倒な同行者→翻意と共感→成長 }
– ユーザーを苛立たせるように設計された同行者を痛め付け、ユーザーに共感を抱かせる。憎しみから共感を抱かせるというところまで、ユーザーを成長させる方法。

次にユーザーに究極の選択をさせ、自ら物語を進めるという意志を持たせる段階です。この段階を経験することで、ユーザーは他の誰かに自分の物語を語りたいという気持ちを持つのです。
究極の選択の例としては、今まで歩んできた同行者を殺すか殺さないか、旅を終わらせるか終わらせないか、などゲームによって様々です。テーマとしては、命のやり取りがある、未知の体験であるといったものが重要となります。

以上をまとめると、物語のデザインの構造は以下のようになっています。

1. 翻弄  物語を理解しようとするプレイヤーを翻弄し、物語らせる
2. 成長  物語中の主人公同様、プレイヤーを成長させる
3. 意志  プレイヤー自身の意志で運命を切り開かせる

多くのゲームが最終的にスタート地点に戻ってくるよう設計されているのは、ゲームを開始した時と終了した時のプレイヤー自信を比較させることで、成長を実感させているのですね。

最後に、体験デザインの正体について考慮します。
体験デザインとは、幾多の感情を一手ずつ繰り出し、その時その時の文脈を作りながら、ユーザーの心を動かしていくということです。

整理すると、体験→感情→記憶という順番で処理され、心に残っていきます。
この分野は、多くの専門分野にまたがり、まだまだ研究されている段階で、急速に知見が溜まってきているそうです。この後どのように発展していくのか楽しみです。


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