コミュニティ主導の成長:プロダクト主導の成長の拡張パック

プロダクト主導の成長の基本的な前提は、ユーザーがプロダクトを見つけ、採用し、使用するよう後押しするGo-to-Marketジャーニーの主役はプロダクトである、ということです。マーケット参入戦略として、プロダクト主導型はユーザー中心の企業にとって非常に効果的です。

しかし、現実には、ソフトウェアを見つけ、採用し、使い始め、そして使い続けるというプロセスは、あなたとユーザーとの間のバブルの中で起こるものではありません。人は本来、アドバイスを求める生き物です。つまり、プロセスのあらゆる段階で、ツールを探し始める前から、外部の意見を求めているのです。私たちは常に、友人や同僚、インターネット上の見知らぬ人から、何を食べるべきか、どんな服を着るべきか、どこに住むべきか、といった情報を入手しているのです。これは、ソフトウェアを購入する際にも当てはまります。

コミュニティ主導の成長は、プロダクト主導の成長に加え、乗数として機能します。ユーザーとの交流を積極的に促進し、プロダクト以外の価値を提供することで、コミュニティ主導の成長は、企業が顧客のパイプライン、機能要求、リアルタイムのサポートをより強く把握できるようにし、ユーザーがプロダクトを最大限に活用できるようにします。そして、このようなユーザーがチャンピオンとなり、コミュニティを強化するアクティブなメンバーで構成されるフライホイールとなるのです。


▼ 本記事の内容
  1. なぜ今なのか?
  2. すべての創業者がコミュニティ主導の成長について考えるべき理由
  3. コミュニティ主導の成長のプレイブック
    1. 1.コミュニティ・オブ・プラクティスの作成から始める
    2. 2. ベスト・チャンピオンを認定して報酬を与える
    3. 3.企業コンテンツにステークホルダーを参加させる
    4. 4.ユーザーが作成したテンプレートとチュートリアルを促進する
  4. 優れたコミュニティには、優れた責任が伴う

この記事は、「Community-Led Growth: The Product-Led Growth Expansion Pack」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Corinne Marie Riley
翻訳者: 渡辺圭祐


私たちが考えるプロダクト主導の成長とはどのようなものか

プロダクト主導+コミュニティ主導の成長とは、実際にはどのようなものなのか

なぜ今なのか?

ネットで居場所を見つける必要性を感じている人が増えているので、テクノロジーの多くの側面と同様に、COVIDはコミュニティ主導の成長を加速させる役割を担ってきました。しかし、コミュニティ主導の成長の実現には長い時間がかかりました。このようにSaaSが細分化された世界では、ユーザーは選択肢に圧倒され、ツールを選択するためにインフルエンサーに注目するようになり、一方でコミュニケーションや共有のチャネルも増えました。買い手が何を探しているのかわからないままセールスコールに現れる時代はとうに過ぎ去り、買い手は利用可能なツールについてより明確な意見を持ってテーブルにつくようになっているのです。

  • セールス主導の世界では、セールス担当者を信頼しなければなりません。
  • プロダクト主導の成長の世界では、ユーザーは自分自身を信頼して最適なプロダクトを選びます。
  • コミュニティ主導の成長の世界では、買い手は友人や仲間といったコミュニティに指針を求めます。

すべての創業者がコミュニティ主導の成長について考えるべき理由

1. ユーザーとの共生を実現する:コミュニティ主導の成長では、ユーザーにとってより魅力的なもの、つまりユーザーが興味のあるトピックを中心に展開されるムーブメントを作り出すことができます。そうすることで、自社プロダクトの枠を超えた価値を提供することができ、自然とユーザーとの共生関係を築くことができるのです。

2. マーケットのオピニオンリーダーになる:コミュニティを知り、理解したら、そのコミュニティが最も必要とするコンテンツやサービスを提供するようにしましょう。よく管理されたコミュニティは、夜中に互いの質問に答え、仲間とトラブルシューティングを行い、ベストプラクティスに関するコンテンツを共有することで、他の方法では考えられなかったような新しい解決策を思いつくことができます。このようなソート・リーダーシップは、やがてあなたの会社のブランドとなるのです。

3. リアルタイムの洞察と実行可能な反応:多くの場合、企業との最初の接点はコミュニティ・チャネルである可能性があります。カスタマーサポートは、リアルタイムで問題に答えることができるようになり、ピアツーピアの応答によってチケットの数を減らし、よりスリムになるという利点があります。また、プロダクトチームは、ユーザーがどのような問題で困っているのか、どのようなリクエストがあるのか、そして一般的にどのようなフィードバックがあるのかを確認することができます。

コミュニティ主導の成長のプレイブック

コミュニティは通常、コミュニティ・プラットフォームでユーザーを集め、複数のコミュニティ・チャンネル(イベント、ジョブボード、ニュースレターなど)を通じて、時間をかけてエコシステムを拡大していくことでスタートします。規模の大小にかかわらず、参加者の多いコミュニティは積極的に管理する必要があります。それには、時間、1対1の会話、パーソナライズ、そしてリーダーシップが必要です。コミュニティのエコシステムが拡大するにつれ、コミュニティ責任者の役割はますます重要になるでしょう。

「どんなに優れたコミュニティツールでも、運営する人がコミュニティだと感じられなければ、うまくいきません。Slackのグループチャットに人を放り込んでも、コミュニティを作ることにはなりません。」

サラ・ウッド アップストリームのグロース&コミュニティ責任者
(Sarah Wood, Head of Growth & Community Upstream)

コミュニティ主導の成長を最適化する方法についてのプレイブックはまだありませんが、企業が何千人ものアクティブな参加者を持つコミュニティを作るためにうまく組み合わせている4つの主要な戦略があります。

1.コミュニティ・オブ・プラクティス(実践共同体)の作成から始める

コミュニティは、ほとんどのメンバーやコンテンツ(企業やユーザーが作成したもの)を見ることができる中心的なハブであり、コミュニティのほとんどが「住んでいる」場所です。Slackはコミュニティを作るための出発点として知られていますが、コミュニティを可能にするSaaSの世界は指数関数的に成長しています。コミュニティ・プラットフォームは、オープンソースの開発者向け、会員制、音声、イベント、チャットなど、コミュニティの種類やインタラクションの形態に合わせて、よりニッチで機能特化したものになってきています。

では、現在、コミュニティ構築者たちは、自分たちのコミュニティで何が起こっているかだけでなく、そもそも実践ベースのコミュニティを構築するための方法論や哲学をよりよく理解するために、どこに行けばいいのでしょうか?大まかに言えば、CMXのようなハブは、コミュニティのリーダーが人脈を構築するのに役立ちます。そして、Uncommonのようなコミュニティプログラムは、AsanaのJoshua Zerkel、LoomのShahed Khan、NotionのKate Taylorなど、コミュニティ空間での深い経験を持つエキスパートからの学びを共有することに焦点をあてています。ニュースレターや今後のイベントを通じて、コミュニティ構築者同士を結びつけ、実践のコミュニティを育み、成長させるための力を与えてくれるでしょう。その他の便利なツールは?Community Clubが提供するコミュニティに関する、このディレクトリ/マーケットマップのようなものは、各セグメントにおけるツールの概要、フィードバック、価格を見ることができます(詳細は以下からご覧ください)。

十分な規模があれば、コミュニティを「自社で」構築することも可能です(例:Atlassian CommunitySalesforce Communityなど)。

プロダクトに関係なく、企業主導のコミュニティには主に2つのタイプがあります。

  • プロダクトのコミュニティプロダクトに特化して構築され、主にユーザーがプロダクトについて質問したり、互いにインサイトを共有したり、会社とつながりを維持するためのスペースとして機能します。
  • 実践共同体(Community of Practice):実践共同体という考え方は、人類学者ジャン・レーヴと教育理論家エティエンヌ・ヴェンガーの著書『Situated Learning』の中で生み出されたものです。実践共同体は、特定の分野について学ぶという共通の目的を持ったメンバーを結びつけるものです。これを技術分野に応用すると、実践コミュニティが大きく発展することが分かってきました。企業は、自社のプロダクトよりも広い範囲で何かを構築するというアイデアを受け入れ、その代わりに、ある役割やスペース内のすべての人々を含めることを目的としています。例えば、FunlRevOps Co-Opを作り、RevOpsの役割を持つ誰もが参加でき、同時にそのユーザーのために特別に設計されたFunlのGTMプロダクトについて学ぶことができるようにしました。同様に、TwineはCPOに特化したソフトウェアを販売しながら、すべてのCPOのためのコミュニティを作りました。コミュニティ・マネージャーとセールス・チームは、プロダクトの使用例を紹介し、適切なタイミングで潜在的なユーザーに直接コンタクトを取ることができます。

私たちは、コミュニティで何かをするたびに、「これはRevOpsコミュニティにとって価値があるのか?」と自問します。もし、その答えがノーであれば、私たちはそのようなことはしません。このおかげで、90日間でコミュニティを0人から1,000人以上に拡大し、持続的な関係を築き、彼らが抱えている課題を把握することができ、プロダクト開発に役立っています。

マシュー・ヴォルム(Funl CEO / RevOps Co-Op)

2. ベスト・チャンピオンを認定して報酬を与える

一部の企業は、コミュニティのメンバーがコンテンツを投稿し、その結果、プロダクトの支持者になるためのインセンティブとして、「認定」プログラムを作成し、成功を収めています。最も効果的なケースは、「無料の」販売員、つまり自社プロダクトの熱心な信奉者を生み出し、その見返りとして、キャリアを決定づけるような個人的な専門的検証を受けることです(例えば、履歴書やLinkedInに堂々と認定証を掲示することになります)。認定プログラムは、その価値を薄めず、かつ優秀な人材を惹きつけるだけの関心と話題性を生み出すというバランスに依存しているため、実行するのは容易ではありません。

成功例としては、以下のようなものがあります。

3.企業コンテンツにステークホルダーを参加させる

コンテンツマーケティングは誰にとっても新しいものではありませんが、変化しているのは、ユーザーがコンテンツを作成し、参加する役割です。これは2つのインパクトがあります。1つは、あなたが活動しているマーケットや、あなたのツールが持つ多くの使用例についてユーザーを「教育」する機会であり、もう1つは、「クリエイター」の輪を広げることで生まれるネットワーク効果です。主な媒体は以下の2つです。

ポッドキャスト – マーケットや特定のツールに関するポッドキャストを開始し、その分野のユーザーや専門家を招き、真のソートパートナーシップを築く企業が増えています。Utmost(グレイロックのポートフォリオ企業)は、過去9ヶ月間にエクステンド・ワークフォースに関する30話のポッドキャストを作成し、マーケットのあらゆる側面の関係者や企業(自社の顧客ではない場合でも)を招いて、この分野の重要性とユートモストがソリューションにおいて果たす役割についてリスナーを教育しています。もう一つの成功例は、AstronomerのチームによるThe Airflow Podcastで、NetlifyがAirflowを使って複雑なSparkジョブの集合からオーケストレーションロジックを切り離す方法など、プロダクトのアップデートとベストプラクティスを共有しています。

ブログ記事/ニュースレター:強力なコミュニティ主導のコンテンツマーケティングとは、企業が主要なステークホルダーにインタビューを行い、さらに自社のユーザーがプロダクトの最適な使用方法についてコンテンツを提供することを奨励することです(「証明書」の例の多くでは、ブログ記事を書くことが必須となっています)。

4.ユーザーが作成したテンプレートとチュートリアルを促進する

最後に、コミュニティを巻き込むには、プロダクトを成功させるための手順、アイデア、テンプレートを提供することが必要です。しかし、ある程度の規模になると、作成しなければならないコンテンツの量が、作成できる速度よりも多くなります。十分なプロダクト愛があれば、ユーザーが自らチュートリアルを共有するようになるかもしれません(これは素晴らしい兆候です)。もし人々があなたのプロダクト(例:Zapier)の使い方についてDIYのYouTube動画を投稿しているなら、おそらくあなたはこの周りにコミュニティを作るべきでしょう。彼らがこれらのインサイトを公に共有するためのスペースを作ることは、彼らがより多くを作成することを奨励するだけでなく、あなたの見込み客のための「リポジトリ」を集中化します。成功した事例をいくつか紹介します。

優れたコミュニティには、優れた責任が伴う

コミュニティ主導の成長を実現する企業の波がやってくる。

1. 次世代コミュニティ・プラットフォーム: 新しいコミュニティ・プラットフォーム(Slack 2.0)は、コンテンツ共有、ナレッジ・リポジトリ、イベント企画、ユーザーオンボーディング、セグメンテーション、Q&Aなど、差別化されたユースケースと高い機能性を備えています。一方、既存の大規模プラットフォームは、Discordが2つの小規模スタートアップByte(ビデオ中心のコミュニティ)とZyper(ブランド中心のコミュニティ)を買収したように、無機的にでも利用者を拡大しようとしている。

2.コミュニティ・データ分析:インサイトマイニング、プラットフォームに依存しないソフトウェアで、コミュニティのすべてのエンドポイントを統合し、セールス、成功、サポートチーム、プロダクトチームなどのための実行可能なワークフローを推進します。コミュニティ・データのマイニングは自明な問題ではありません。なぜなら、何十ものソースがあり、それぞれが大規模なデータ・ポイントを持ち、ユーザーごとに異なる名前、異なるタイプの行動をとり、多くの場合、完全な情報を伝達しないことがあるからです。しかし、これはコミュニティから価値を得るための重要な要素でもあります。これらのツールで追跡する指標は、これらのチャネルを成長させる上で非常に貴重なものとなります。3月末にステルスから登場したCommon Roomのような新しいツールは、組織がチャンネルを超えてコミュニティ・データからインサイトを見て、理解し、分析することを可能にし、Twitter、Slack、GitHub、Intercom、Discourse、Discordなどのプラットフォームにおいて、適切かつパーソナルな方法でコミュニティの人々との関係を深め、より効果的にコミュニティを運営することができるようマーケットに出てきています。

優れたコミュニティには大きな責任が伴います。企業は、コミュニティへの参加を企業文化やアイデンティティの一部として積極的に取り入れる必要があります。ユーザーが参加する可能性のある多くのコミュニティで差別化を図ることは容易ではありませんが、効果的に管理すれば、GTMに重大な影響を与える可能性があります。

もしあなたがコミュニティを実現するためのツールを作っていたり、コミュニティ主導の成長を使っているなら、ぜひノートを交換し、corinne@greylock.com で詳細を教えてください。

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クリエイターエコノミーの中産階級の構築

アメリカン・ドリームは存在するが、現実はどうなのか?

[読者の皆さん、こんにちは。この記事は本日『Harvard Business Review』に掲載されました。楽しんでいただけると幸いです。また、以下のコメントであなたのご意見をお聞かせください。-Li].

[Update March 14, 2021: 私は初めてNFT “The Creator Middle Class “を作成しました。これは下の表紙イラストのアニメーション版で、現在は@jamesyoungさんが所有しています!].


▼本記事の内容
  1. 消えたクリエイターの中産階級
  2. クリエイターの中産階級を育てる10の戦略
  3. 不平等を助長する力
  4. より強い社会とプラットフォームへの道

* この記事は、「Building the Middle Class of the Creator Economy」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Li Jin
翻訳者: 渡辺圭祐


1788年、ジョージ・ワシントンは、アメリカは「産業と倹約の精神に富む人々にとって世界で最も好ましい国」であり、「財産が平等に分配され、人が住んでいない土地が大量にあり、生活手段を確保できる」という点で、社会的に最も低い階級の人々にとっても理想的な移民先になるだろうと予測しました。その広大な土地と宗教的寛容さに機会は内在していると彼は主張しました。

それから228年後の2016年、Musical.lyの共同CEOであり、後にBytedanceのプロダクト担当副社長を務めたAlex Zhuは、新しいソーシャルネットワークを立ち上げるという文脈で、ワシントンの言葉を繰り返しました。新しいプラットフォームを立ち上げることは、新しい国を立ち上げるようなものだと彼は言います。硬直化した経済や社会階層を持つ既存のネットワークから、新しいネットワークにユーザーを移行させるには、成功の可能性、つまりアメリカンドリームの魅力が必要です。さらに、新しいソーシャルネットワークでは、すべてのユーザーに上昇志向を持たせ、「中産階級が出てくるようにしなければならない」としました。

8歳から12歳の子供たちを対象に行った最近の調査によると、子供たちの約30%がユーチューバーを目指していることがわかりました。昨年、YouTubeクリエイターのDavid Dobrikは、平均6,000万回の再生回数で、毎月27万5,000ドルのアドセンス収入を得ていました。Substackでは、トップ10のクリエイターが合計で年間700万ドル以上の収入を得ています。先日、TikTokクリエイターとして初めてフォロワー数が1億人を突破したCharli D’Amelioは、16歳にして400万ドルの価値があると言われています。彼女がTikTokを始めたのはわずか1年半前です。

しかし、大スターダムにのし上がった人はいても、プラットフォーム上で幅広い層が経済的に安定した生活を送っている例はほとんどありません。現在のクリエイターの状況は、上流階級に富が集中する経済に近いのです。Patreonでは、2017年に連邦政府の最低賃金である月1,160ドルを稼いだクリエイターはわずか2%でした。Spotifyでは、フルタイムの最低賃金労働者の年間収入である1万5,080ドルを達成するためには、アーティストは年間350万回のストリーミングが必要です。そのため、ほとんどのアーティストはツアーやグッズで収入を補っています。一方、2016年のアメリカでは、成人の52%が48,500ドルから145,500ドルまでの中所得世帯で生活しています。

消えたクリエイターの中産階級

国家の持続可能性やプラットフォームの防衛力は、上位1%の人々に富が集中していない方が優れています。現実の世界では、健全な中産階級層は、社会的信頼を高め、製品やサービスへの安定した需要を提供し、イノベーションを推進する上で重要です。プラットフォームでは、富が集中していないということは、競合他社がトップクリエイターを奪い、ビジネス全体を脅かすリスクが少ないことを意味します。

WIRED誌の編集者であるクリス・アンダーソンが2004年に「ロングテール」理論を発表して以来、この考えは強化され、否定され、議論され続けてきました。アンダーソン氏は、インターネットが物理的な制限 (視聴者の地域性、希少な棚のスペース) を取り除くことで、ニッチな製品やクリエイターが活躍できるようになると主張しました。

検索カテゴリーでは、この現象が真実であることが証明されています。Google社は、日々、全クエリの15%が一度も検索されたことのないものであることを明らかにしており、この数字は2013年以降、安定しています。

しかし、コンテンツプラットフォームでは、デジタルコンテンツへの移行とロングテールの急増は相関していません。トップクリエイターは大成功を収めていますが、ロングテールのクリエイターはほとんど生き残れていません。例えば、Spotifyでは、上位43,000人のアーティスト (プラットフォーム利用者の約1.4%) がロイヤリティの90%を稼ぎ、1人当たり四半期平均22,395ドルを稼いでいます。それ以外の300万人のクリエイター、つまり98.6%のアーティストは、1人当たり36ドルの収入しかありません。

ビデオゲームの世界でも、少数のゲームクリエイターに成功がより集中している兆候が見られます。エレクトロニック・アーツのプロダクトリードであるラン・モーは、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」において、総利用者数が増加しているにもかかわらず、トップへの集中度が高まっていると指摘しています。この集中の理由として、ゲームへの参加に上限がないこと、ゲームのソーシャル性が勝者総取りのネットワーク効果をもたらすこと、の2点を挙げています。

1981年にシカゴ大学の経済学者シャーウィン・ローゼンが発表した論文には、テクノロジーの発達によって「スーパースター現象」がより顕著になることを予見する記述があります。ローゼンは、クリエイターエコノミーのように提供者が異質な市場では、成功は上位の者に偏ってもたらされると主張しました。「才能のない者が才能のある者の代わりにはなりません。 (中略) 平凡な歌手の歌を次々と聞いても、1つの傑出したパフォーマンスにはならない」。この現象は、流通コストを下げるテクノロジーによってさらに悪化しています。ある分野で最高の演奏者は、コンサートホールの大きさのような物理的な制約から解放され、無限の市場に対応し、より多くの収益を得ることができます。

では、クリエイター間の不平等は避けられないのでしょうか?ある程度は仕方がないでしょう。誰もが有名人になれるわけではありませんが、有名ではなくても、きちんとした収入の基盤となる顧客を持っている中産階級のクリエイターの例もあります。

クリエイターのプラットフォームは、誰もが成長し、成功できる機会を提供することで繁栄する」。これは確かなことです。アメリカンドリームがただの夢になってしまうと、プラットフォームの命運は不安定になります。Vineは、その教訓的な物語です。Vineは短編コメディ動画のフォーマットを発明し、2015年11月には月間アクティブユーザー数が2億人に達したにもかかわらず、インスタグラム、YouTube、スナップチャットなど、より多くの収入を得られ、より多くの視聴者を獲得でき、より幅広いクリエイティブツールを利用できるプラットフォームに、徐々にクリエイターを奪われていきました。他のプラットフォームの方が視聴者の増加や経済的成功などの機会が容易に得られるようになり、プラットフォームの衰退へとつながりました。

CharliとAddison Raeは常に出現し、存在しますが、クリエイターのプラットフォームには上昇志向の道筋を提供し、成功の機会を民主化することが不可欠です。そのためにはどうすればいいのでしょうか?

クリエイターの中産階級を育てる10の戦略

アメリカの中産階級は自然に生まれたものではなく、20世紀に広く繁栄をもたらした政策によって生まれました。ルーズベルトのニューディール政策、最低賃金や残業代、未成年者の雇用禁止などを定めた公正労働基準法、組合活動の活発化、GIビルの成立、連邦住宅管理局の設立などです。これらの政策は労働者に力を与え、富を生み出す機会を分配し、所得格差の拡大を緩和し、1960年代末にはアメリカの成人の61%を占める強力な中産階級を築くのに役立ちました。しかし、政策の優先順位が変わるにつれ、2019年には51%にまで減少しました。

プラットフォームは自らのエコシステムに影響を与える決定を下すこともできます。パッションエコノミーの性質上、不平等はつきものです。供給は異質で代替不可能であり、クリエイターが視聴者との間に築く信頼と親和性は評価されるべきものです。しかし、プラットフォームは、既存のものから新しいものまで、クリエイターの中間層を強化し、成功への道を広げるためにもっとできることがあります。多くの人が成功を手に入れられるようにするためのプラットフォームのデザインにはどのようなものがあるでしょうか。

1. リプレイバリューの低いコンテンツに絞る
人は同じポッドキャストを何回聞くことができますか?おそらく、何度も聴いているうちに、内容が繰り返しになって飽きてしまうでしょう。これに対して、好きな曲は何度でも繰り返し聴くことができます。ビデオゲームでは、何度もプレイすることに価値があるだけでなく、何百時間もプレイしているうちにプレイヤーが熟練し、ゲームをより楽しめるようになるため、限界効用が高まります。このことから、音楽やゲームプラットフォームのようにリプレイバリューが高いカテゴリーは、一部のメガヒットに集中しやすいと考えられます。より公平なクリエイターのエコシステムを構築するために、プラットフォームは多様なコンテンツを体験することがより魅力的なコンテンツタイプにユーザーを誘導することができます。

2. ユーザーの好みの異質性に対応し、ニッチを強化する
ローゼンのスーパースター経済学の理論は、「品質の異なる商品間の不完全代替」を前提としています。つまり、10%多くの命を救うことができる偉大な外科医は、10%の需要増よりもはるかに多くの需要を得ることができるのです。これは品質の客観性と呼ぶべき、様々なコンテンツカテゴリーの属性を強調するものです。つまり、あるコンテンツカテゴリーは、他のものよりも明確で普遍的な品質基準を持っているのです。例えば、「最高の」受験指導者は、テストの点数などの指標によって知ることができますが、「最高の」ファンフィクション作家は、ユーザーの好みが多様であるため、普遍的には存在しないかもしれません。

ユーザーの好みや意見が多様化すれば、多様なクリエイターが成功する機会が増えていきます。プラットフォームは、クリエイターやユーザーがこのようなニッチな分野を開拓し、発展させることを促すことができます。例えば、子供向けオンライン教育市場「Outschool」では、親御さんからの新しい授業テーマのリクエストを集約したメールを毎週先生に送っています。「ゴールデンドゥードルの絵を描く」や 「スクーターのレッスンとテクニック」など、毎週数十件の新しいリクエストが寄せられています。この機能により、クリエイターはどのようなニッチにクラスを提供すれば実りあるものになるかを理解することができます。

3. アルゴリズムでコンテンツを推薦し、ランダム性を持たせる
デジタル製品が無限にある中で、ロングテールが普及しない理由として、ユーザーが何を検索したらいいのかわかりにくいことや、レコメンドシステムの多くが、他のユーザーが消費・購入したものを勧めるだけの基本的なものであることが挙げられます。このシステムの弱点はユーザーが自分の興味のある分野以外のものを目にすることが少なく、フィルターバブルに閉じ込められてしまうことです。また、人気のあるクリエイターはますます人気になり、新人が抜きん出るのは困難となります。

しかし、ユーザーの検索をアルゴリズムが行うことで、ニッチな分野が発展する機会が増えます。TikTokのブログでは、ユーザーが動画を最後まで見たかどうか、シェアしたかどうか、クリエイターをフォローしたかどうか、デバイスの種類、言語、国など、レコメンドシステムに使用される多数のシグナルについて詳しく説明しています。しかし、注目すべきなのはTikTokはフィルターバブルに対抗し、フィードに多様性を導入することが直接の目標であるとも述べており、そのために、ユーザーのこれまでの興味とは異なる動画もFor Youページに表示しているという点です。

あなたのフィードには、あなたの興味に関連していない動画や、膨大な数の「いいね!」が集まっている動画が表示されることがあります。これは私たちのレコメンド手法の重要かつ意図的な要素です。For Youフィードに多様な動画を表示させることで、フィードをスクロールする際に、新しいカテゴリーのコンテンツを見たり、新しいクリエイターを発見したり、新しい視点やアイデアを体験する機会が増えます。

このようにランダム性を持たせることで、多くの視聴者を持たない一般的な新しいクリエイターが露出できるようになり、「金持ちがより金持ちになる」という硬直した社会的階層を作るのではなく、誰もがプラットフォームで成功できるようになるのです。実際、TikTokは「フォロワー数や、過去に高視聴率を記録したことがあるかどうかは、レコメンドシステムの直接的な要因ではありません」と明示しています。

4. コラボレーションとコミュニティを促進する
ダニエル・ピンクは、2001年に出版した『フリーエージェント・ネーション』の中で、「フリーエージェントは一人でボーリングをしているかもしれないが、一人でやっているわけではない (中略) 忠誠心がなくなったわけではなく、縦から横へと変わっただけだ」と書いています。これは、アメリカでは自営業が主流であり、会社が提供するネットワークがない世界では、仲間との強力なネットワークを構築する必要があることを指しています。これは現在のコンテンツクリエイターにも言えることです。

コラボレーションは様々な意味でクリエイターの成長と成功を促します。コンテンツの消費は、ユーザーがどのクリエイターをフォローしているかによって左右されるため、共同でコンテンツを制作することはクロスプロモーションの機会となります。音楽業界やYouTubeのクリエイターの間ではコラボレーションによる発見の促進という大きな前例があります。テイラー・ローレンツは、Hype HouseをはじめとするTikTokのコラボハウスについての記事で、クリエイターが一緒に生活しながらコンテンツを制作することのメリットを「一緒に住むことでチームワークが高まり、成長が早くなる。クリエイターは過酷なキャリアを精神的に支えることができる」と紹介しています。

Hype Houseの共同設立者であるトーマス・ペトロウは「私たちが入居したとき、チェイスには350万人のフォロワーがいました。もし彼が一人でアパートを借りていたとしたら、今は500万人か600万人かもしれません。しかし、900万人ではないでしょう。また、家があるとみんなが来たがる。2ベッドルームのアパートには誰も行きたがらない。今では、あらゆるビッグクリエイターを家に招くことが可能です」と述べました

スタートアップにとってのチャンスとは?まず、草の根的なクリエイターのコミュニティはすでに多く生まれていますが、プラットフォームはクリエイター同士が心の支えになったり、協力したり、教育を受けたりするために、もっと多くのことができるはずです。例えば、「Stir」では、YouTubeの動画や商品の販売など、コラボレーションの金銭面での処理を容易にしています。Teachableのオンライン教師コミュニティは、クリエイターが同じようなビジネスフェーズにいる人たちとネットワークを築くための専用スペースを提供しています。このように、新しいアンバンドルワークの世界では、正式な仲間がいないため、クリエイターは別のコミュニティを利用することで、より良いサービスを受けることができます。

5. 新進気鋭のクリエイターへの資金投資
クリエイターが新しいスモールビジネスであるならば、新しいスモールビジネス・レンディングとは何でしょうか?クリエイターの業種によっては、次の成長を実現するために先行投資が必要なものもあり、参入障壁を下げるために資金を提供することが有効です。クリエイターとして成功するためのリターンはベンチャー規模ではないかもしれませんが、ソーシャルトークンやクリエイターに特化したニッチなファンドなど、資金提供と教育をセットにした新しいモデルが考えられます。ポッドキャスティング分野のPodfundは後者の例で、ポッドキャストスタジオや有望なクリエイターに、レベニューシェアと引き換えに2万5,000ドルから15万ドルの資金を提供しています。

Patreon Capitalは、同社が2020年初頭に開始した取り組みで、クリエイターにマーチャントキャッシング(MCA)を提供しています。ニコラス・クアは、「Patreonはシリーズの制作予算をまかなうために約7万5,000ドルのキャッシングをチームに提供し、Multitude (ポッドキャスト制作会社) が今後2年間でNext StopのPatreonの収益から少し多めに返済することを想定しています。」と報告しています

作家、画家、音楽家、その他のクリエイティブな才能に関わらず、クリエイターの収益化のパラダイムは、継続的に支払いやサポートを受けること (パトロン) 、または何かを作る前に需要を確信すること (コミッション) でした。収入の予測可能性を高め、クリエイターに前もって資金を提供するプラットフォームはこのような前例に基づいています。

6. クリエイターへの報酬と視聴者層の関係を切り離す
他の多くのプラットフォームとは異なり、TikTok Creator Fundはコンテンツを商業的な必要性から切り離していますが、これはHank Greenが検討した結果です。TikTokでは、クリエイターファンドの支払いはエンゲージメントと再生回数に応じて行われます。一方、YouTubeは動画に表示された広告収入の55%をクリエイターに支払うため、クリエイターは広告主が好む富裕層向けのコンテンツを作るように仕向けられます。広告料が高く、広告主が求める視聴者であればあるほど、クリエイターの動画収益は大きくなります。同様に、インスタグラムでは、アフィリエイトリンクやブランドスポンサーによるマネタイズモデルが主流であるため、クリエイターは高収入の視聴者に向けてコンテンツを作ることになります。

Hank Greenはクリエイターファンドについて、「裕福な視聴者を抱えているクリエイターが、貧しい視聴者を抱えているクリエイターよりも自動的に多く稼ぐわけではない」と書いています。クリエイターファンドの「根本的な平等主義」は消費額の大きいクリエイターではなく、エンゲージメントの高いクリエイターに報酬を与えることに由来します。

コンテンツ制作の場がすでに不平等であるため、より裕福なクリエイターに金銭的な報酬を与えるだけでなく、意図的にシステムを設計することが重要です。2013年に「Journal of Computer-Mediated Communication」に掲載された論文によると、「オンラインコンテンツのクリエイターは比較的恵まれたグループに属する傾向がある」とのことです。この論文では、その理由については詳しく述べられていませんが、一般的な起業を妨げるより広範な理由、すなわち資本へのアクセス金銭的リスクを取る能力に関連しているのではないかと思います。

7. クリエイターがスーパーファンを利用できるようにする
購読やファンからの寄付によって、視聴者数がそれほど多くないクリエイターでも、多くの収入を得ることができます。このようなファンからの直接支払いモデルは、規模やリーチに報いる広告ベースのモデルとは対照的に、スーパーファンの収益化を促進します。YouTubeではクリエイターは1,000回の動画再生でわずか3~5ドルしか稼げません。一方、Twitchの購読料は月額4.99ドル、9.99ドル、24.99ドルと段階的に設定されています。Twitchの登録者1人が1ビューに相当するとすれば、YouTubeのRPM (Revenue Per Mille)の1,000倍以上のマネタイズレートになります。

Streamlootsはゲーム実況者がスーパーファンをさらに高いレベルでマネタイズすることを可能にします。平均的な購入者は、Streamlootsで実況者とのデジタルインタラクションに毎月26ドルを費やすのに対し、Twitchの購読料には6ドルを費やします。両方のプラットフォームを利用している実況者の場合、Streamlootsは総収益の62%を占めていますが、購入者の割合は27%に過ぎません。ユーザーはクリエイターに近づくために、より多くのお金を費やすことを厭わないのですが、一方で、購読によって受動的なサポートを示すこともあります。

観客の数と収益を切り離すことができる他のタイプのプロダクトとは何でしょうか?サブスクリプションのファンコミュニティ (MightyCircleなど) 、クリエイターへの有料アクセス (CameoLoopedOnlyFansなど) 、コースや電子書籍などの高額商品の販売などは、視聴者数が少ないクリエイターが成功するために役立ちます。私の「100人の真のファン」という記事は、ケビン・ケリーの名著「1,000人の真のファン」をもじったもので、少数のユーザーから収益を得ているクリエイターのための指針を示しています。

8.クリエイターに受動的(またはほぼ受動的)な収入機会を提供する
現実のアメリカでは、小学校の先生、トラックの運転手、看護師、営業の責任者などが中産階級の代表的な仕事です。これらの職業に共通していることは何でしょうか?それは、限界費用がゼロではないということです。つまり、1人でも多くの患者を治療したり、1人でも多くの人に販売したりするためには、より多くの時間と労力が必要になります。そのため、お客様の数には上限があり、結果的に収益の平準化が図られます。一方、デジタルコンテンツの世界では、視聴者を増やすための限界費用はゼロです。

限界費用がゼロに近いことで、デジタル・スーパースターが大量のオーディエンスを獲得する一方で、限界費用がないことで、わずかな労力や時間でデジタル商品を販売できる新興のクリエイターに有利に働くこともあります。例えば、クリエイターがソフトウェアや電子書籍、PDFなどのデジタルグッズを販売できるEコマースサイト「Gumroad」では、収益に極端なべき乗則が見られます。2020年9月に何かを獲得した19,480人のクリエイターのうち、その月に1,000ドル以上を稼いだのは9%、1万ドル以上を稼いだのは1%、10万ドル以上を稼いだのはわずか10人 (0.05%)でした。このように収益の集中が見られる一方で、すべてのクリエイターにとって、売上は (商品を最初に作った後の) 受動的な収入であり、クリエイターは時間をかけずに収益を拡大することができます。収入が増加すると、クリエイターは他の収入源に時間を割くことができ、様々な収入源のポートフォリオを作ることができます。

9. ユニバーサル・クリエイティブ・インカム(UCI)の提供
ユニバーサル・ベーシック・インカム (UBI) とは、政府による理論的な公的プログラムで、手段テストや労働条件なしにすべての国民に定期的な支払いが行われるというもので、最近になって急速に関心が高まっているアイデアです。

UBIのような政策は、経済学者から広く支持されており、1995年にアメリカの経済学者を対象に行われた調査では、78%が「政府は負の所得税に沿って福祉制度を再構築すべきだ」という提案を支持しています (一定の基準以上の所得者は国にお金を支払い、それ以下の所得者はお金を受け取る)。2020年3月のCovid-19を受けて、アメリカではUBIに似たCARES法が成立し、大人一人当たり1200ドル、子供一人当たり500ドルの直接現金支給が行われました。オーストリアでは、政府がフリーランスのアーティストを支援するために9,000万ユーロの基金を設立し、1万5,000人のアーティストに毎月1,000ユーロを6カ月間支給しています。

クリエイタープラットフォームがユニバーサル・クリエイティブ・インカムを検討する理由は何でしょうか?コンテンツ制作者に限って言えば、アメリカ人の71%が従業員よりも自営業を好むと回答しているにもかかわらず、自営業に踏み切れない理由はたくさんあります。障害となっているものの上位を占めるのは金銭的なものです。Freshbooks社の「2019 Self-Employment in America Report」によると、自営業の上位の障害は次のようなものでした。「収入が安定しないことを心配する」(35%)、「投資する現金がない」(28%)、「収入が減ることを心配する」(27%)となっています。

クリエイターにベーシックインカムを提供することは、より多くのクリエイターにコンテンツ制作により多くの時間を割いてもらうためのインセンティブとなる賢明な戦略かもしれません。TikTokのクリエイターファンドの発表は、この感情を反映しています。「米国のファンドは2億ドルでスタートし、革新的なコンテンツによって生計を立てる機会を求めている野心的なクリエイターを支援します。」

10. クリエイターへの教育・研修の実施
クリエイター・コラボ・ハウスが、学びを共有し、アイデアを交換することで参加者を部分的に高めているように、プラットフォームはこうした学びを促進し、クリエイターが成功するために何をすべきかを提案・指導することができます。

テイラー・ローレンツのHype Houseに関する記事によると、「チャーリー(D’Amelio) も、このグループが彼女の創造性を広げ、Vlogのような新しいコンテンツフォーマットに進出するのに役立ったと考えています。自分の部屋に一人でいたらやらなかったかもしれないことを、自分のコンフォートゾーンの外で試しています」と語っています。」

中国のインフルエンサー・インキュベーターは、この教育的な観点をさらに進めて、インフルエンサー (キーオピニオンリーダー、KOLと呼ばれる) の育成、成長、収益化に焦点を当てたマルチステップモデルを採用しています。2019年4月にIPOした業界リーダーのRuhnnは、新進気鋭のKOLに対して、コンテンツの作成方法、フォロワーとのエンゲージメント、メイクアップなどのトレーニングを含む一連のサービスを提供しています。マネタイズは、ファンをKOLのオンラインストアの顧客になるように誘導し、商品デザインから顧客サービスまで、Eコマースのロジスティクスをすべて管理するという形で行われます。2018年、Ruhnnの113人の契約KOLは、総売上高20億元(3億ドル)を生み出し、さまざまなソーシャルチャネルで約1億5000万人のファンを獲得しました。

ここでは、米国におけるクリエイター教育の製品化の例をいくつかご紹介します。

年間10億ドルの売り上げを誇るオールインワン・コース・プラットフォームのKajabiでは、オンライン・ビジネスを構築するためのコースを提供するKajabi Universityや、顧客の目標や次のステップについて顧客と戦略を練るカスタマー・サクセス・チームなどの教育リソースを提供しています。

Substackのブリッジ・メンターシップ・プログラムは、新しいSubstackライターと既存のSubstackライターがペアになって行う2ヶ月間のプログラムです。このプログラムでは、メンティーが「編集戦略やビジネスの支援を受け、ライティングスタイル、フィードバックの求め方、自分の価値の位置づけなど、クリエイティブなスキルを磨く」ことを約束しています。

On Deck Fellowshipはクリエイター教育の一環として、ポッドキャスターライターを対象としたフェローシップで、それぞれ教育プログラム、第一線で活躍するクリエイターとのセッション、ピアコミュニティで構成されています。

不平等を助長する力

アメリカではこの半世紀の間に、中産階級が四面楚歌の状態にあり、1971年から2011年にかけて全体に占める割合が10ポイントも減少しています。賃金の低迷に加えて、医療や育児など中産階級の生活を支える重要な要素のコストが上昇している現象は「中産階級の圧迫」と呼ばれています。アメリカ人の約半数が、中産階級の収入を得ることは若い頃よりも難しくなったと考えています。

現実の世界でもクリエイターの世界でも、不平等が拡大している大きな要因は、高所得者層が持つレバレッジにあります。急速な技術進歩により、熟練した労働者には賃金プレミアムが発生し、一方、オフショアリングや自動化が進む中で、低スキルの労働者は仕事を見つけることすら困難になっています。OECD諸国の中で、米国はスキルプレミアムが最も高い国です。

例えば、Twitchでは他のプラットフォームに移ることができ、視聴者にフォローしてもらうことができるレバレッジの効いたトップ配信者は、より多くの収益を得ることができます。例えばTwitchでは、平均視聴者数が1万人以上の配信者は、登録者の毎月の支払額の70%を保持しますが、小規模な配信者は50%です。

Shopify、Teachable、KajabiなどのSaaS型クリエイターツールは、基本的にクリエイターへの逆進性の高い税金として機能しており、トップクリエイターの収入に占める月額固定費の割合は少なくなっています。また、一般的には、GMVの増加に伴い、段階的なテイクレートが減少 (または交渉により引き下げられる)します。

多くの広告ベースのプラットフォームでは、広告収入へのアクセスは、すでに視聴者を集めているクリエイターに限られています。例えば、YouTubeのパートナープログラムの参加資格は、過去12ヶ月間に4,000時間以上の公開視聴時間があり、1,000人以上のチャンネル登録者がいることです。ポッドキャストの世界では、スポンサーシップ契約はポッドキャスターとブランドの間で直接交渉されることが多く、ポッドキャスターのロングテールは取り残されています。

より強い社会とプラットフォームへの道

パッションエコノミーは、クリエイターのレバレッジという概念に根ざし、それを称賛するものです。クリエイターは自分の個性を強調し、壊れないサービスや製品を提供しているため、完全に代替可能なギグワーカーよりも、プラットフォームに対してはるかに大きな力を持っています。クリエイターのプラットフォームは、様々な代替品や忠実な視聴者層が存在する中で、トップクリエイターにとどまってもらうためのインセンティブを与える必要があり、プラットフォームが不平等に陥りやすい要因となっています。課題は、トップクリエイターが持つレバレッジ、つまりトップの才能にスポットライトを当てることと、新人を引き上げることのバランスをとることです。

すべての人が上昇志向を持ち、経済的な安定を得て、学び成長する道があるとき、社会とプラットフォームは繁栄します。美しいのは、現実の世界でもデジタルの世界でも、この道を築くのは私たち自身だということです。


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排他性の諸刃の剣 (The Double Edge Sword of Exclusivity)

先日、Bessemer Venture Partnersの投資家であるGaby Goldberg氏の素晴らしいMirror記事を読みました。

▼本記事の内容
  1. ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減
  2. 排他性という諸刃の剣

*この記事は、「The Double Edge Sword of Exclusivity」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Mason Nystrom
翻訳者: 渡辺圭祐


ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減

この記事の中でGoldberg氏は、彼女が「ソーシャル・トークン・パラドックス」と呼ぶものについて論じています。これは排他性に基づくソーシャル・トークン・コミュニティで生じる問題です。その問題とはソーシャル・トークンは新しいメンバーを加えることで価値が上がるのに、会員制のゲーテッド・コミュニティはグループを排他的に保たなければならず、そうしないと社会的価値やユーティリティの価値が下がってしまうというものです。このようにして、ソーシャル・トークンのパラドックスが生まれたのです。

訳者注: ゲーテッドコミュニティ(英語: Gated community)
ゲート(門)を設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、防犯性を向上させたまちづくりの手法。Wikipedia

他の方法でユーティリティを高めることができなければ、排他的なコミュニティはソーシャルトークン・パラドックスに直面し、以下のような悪循環を繰り返す運命にあります。

第1段階: ソーシャル・トークンを使って排他的なコミュニティを構築し、一定数のトークンを保有することでメンバーになる。

第2段階: 早期参入者がトークンを獲得することで、トークンの価値が上がる。また、新規参入者は、そのグループが排他的で社会的に価値があるという考えを強化するため、一時的に排他性が高まる。

第3段階: ある閾値(グループによって異なる)を超えると、新規メンバーの継続的な増加により、グループの社会的ユーティリティと排他性が低下し始める。しかし、新規メンバーはトークンを獲得せざるを得ないため、トークン価格は上昇する。

第4段階: 最終的に新規メンバーは、トークンの価値を確実にするために新規メンバーをリクルートするインセンティブが与えられる。しかし、十分な規模になると、新規メンバーは排他性の価値のリターンを減少させる結果となる。この時点でトークンは価値があり、ある程度のメンバー数でピークを迎える。

第5段階: メンバーは利益を得るため、または排他性/ユーティリティの低下を理由にトークンを売却する。最終的にコミュニティはある程度の均衡を保った後、再びこのサイクルを繰り返すことになる。

このパラドックスは、メンバーシップベースではないトークンでは起こりません。例えばビットコインの新規購入者は、それぞれビットコインの価値を高め(希少性を高め)、その結果、すべてのメンバーの目的が揃うことになります。ネットワークに新しいノードやメンバーが加わることで、ネットワークの価値が高まります。

排他性という諸刃の剣

残念ながら、排他的なコミュニティの成長には収穫逓減があります。一般的に、人が増えると排他性が減り、社会的価値が下がります。金銭的な価値と引き換えにメンバーになることは、排他性の最も一般的な形態です。カントリークラブ、イベント、購読料などは、金銭的価値と排他性を交換する形態です。 会員資格にはイベントなどの一時的なものもあれば、会費などの定期的なものもあります。

金銭的に得られる排他性やメンバーシップは諸刃の剣であり、ソーシャル・トークン・パラドックスに陥ります。また、コミュニティの規模や潜在的な成長を制限することになります。

バリュープロポジションとしての排他性は常に存在しますが、金銭的に完全に依存する必要はありません。

パフォーマンスまたは業績の排他性
パフォーマンスや業績は社会的に価値のあるシグナルです。パフォーマンスの評価は曖昧なことが多いですが、Rabbitholeはすでに、特定のタスクを完了したことをチェーン上に記録することを始めています。さらに、様々なDAOでタスクを完了した個人(例:ブロンズメンバー、シルバーメンバーなど)や過去の投票者にメンバーシップを与えることができます。実績や参加状況に応じてメンバーシップを階層化することで、異なるコミュニティの個人を1つのDAOやコミュニティに集めることができます。様々なDAOからトップの貢献者や投票者が1つのDAOに集まっていることを想像してみてください。

時間の排他性
時間に基づいたメンバーシップを作成することで、長期的なプレイヤーが集まり、ゲームや金銭などでは購入できない要素が加わります。時間によるメンバーシップは、達成されるまで何時間も何週間も作業に没頭するようなタスクのような成果と組み合わせることもできます。このモデルは参加するために多大な努力を必要とするコミュニティを発展させる動機付けとなります。

経験やサービスの排他性
経験を共有することで、社交クラブや大学生、同じ地域に住む人など、さまざまな人が結びつきます。経験は、慈善団体への加盟などの目的志向のものや、アーティストのコンサートに参加してからDiscordチャンネルへのアクセスを提供するNFTを得るというイベント志向のものもあります。

排他性についての最終的な考え
金銭的な独占性が否定されるわけではありません。活動や会員権など、人々がどのように資本を配分するかは、すべてトレードオフの関係にあります。排他性は目的や目標を共有するコミュニティに価値をもたらします。ソーシャル・トークン・コミュニティがネットワークを拡大しようとするとき、金銭的なものだけではないユーティリティや価値をもたらす方法を想像することが重要になるでしょう。


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The Dao of DAOs

皆さん、こんにちは👋

自分で仕事をする面白さは仕事の内容が決まってないことですが、もし決まっていたとしたら、そのうちの1つは次のようなものになるかもしれません。「インターネットで遊んだ中で見つけた、最も面白いものを翻訳する」

数ヶ月前、私はNFTに関するツイートを目にするようになりました。私はNFTが何なのか知りませんでしたが、現場で働いている人たちは知っていたので、読んで、話して、考えて、書きました。何よりも学ぶために書きました。今ではNFTはどこにでもあります。BeepleのEverydaysはクリスティーズ(Christie’sというサイト)で6,900万ドルで落札されました。あなたのおばあさんもNFTを持っているかもしれませんね。NFTは急速に普及しています。

NFTについてツイッターやクラブハウスで話していた人たちは、次のものに向かっています。DAOです。

Web3の世界で新たな深みにはまるたびに、自分の手に負えないと感じるようになりました。Seed Clubを運営しているJess Sloss氏にDAOを調べていることを伝えると「🐇 meet 🕳」と書いてくれました。DAO (Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)は、次に深みに嵌ってしまう対象です。

この深さになると物事は乱暴になり始めます。私は声を大にして探求しています。すべての答えを持っているわけではありませんが、できれば一緒に何かを学びたいと思っています。

では、さっそく行ってみましょう。


▼本記事の内容
  1. The Dao of DAOs
  2. From NFTs to DAOs
  3. DAOの登場
  4. イーサリアムとDAO
  5. UniswapとCoinbaseの比較
  6. SushiSwapのフォーク
  7. 漸進的分散化(Progressive Decentralization)
  8. なぜDAOなのか?
  9. DAOの7つの力
  10. DAOの現在と未来

*この記事は、「The Dao of DAOs」を著者の了承を得た上で翻訳したものです。

著者: Packy McCormick
翻訳者: 渡辺圭祐


The Dao of DAOs

2016年6月17日にハッカーがThe DAOから盗んだイーサ(ETH)は、ハードフォークされていなかったとしたら、今日では66億ドルの価値があります。

2016年4月30日に発足したThe DAOは初期のDAO(Decentralized Autonomous Organizations/分散型自律組織)とベンチャーキャピタルファンドです。1万1,000人が当時の総供給量の14%にあたる1,150万ETH (約1億5,000万ドル相当) を投資し、その資金をまとめてクリプトプロジェクトに投資する予定でした。

機関投資家や富裕層(リミテッド・パートナー、LP)が資金を投じ、他の人々(ジェネラル・パートナー、GP)が企業に投資する従来のファンドとは異なり、The DAOの投資家はスマートコントラクトで設定された事前のルールに基づいて議案に投票することができます。各人の票数は、保有しているトークン数で重み付けされます。提案されたプロジェクトが十分な票を獲得することがトリガーとなり、スマートコントラクトは自動的にThe DAOの資金をプロジェクトのETHウォレットに投資しました。

The DAOのクラウドファンディングキャンペーンが始まって2週間後、TechCrunchは「The DAOは経済組織の考え方そのもののパラダイムシフトだ。完全な透明性、完全な株主管理、前例のない柔軟性、自律的なガバナンスを提供する」と書きました。

それから2ヶ月も経たないうちに、6月17日にハッカーがThe DAOを攻撃し、360万ETHを奪いました。当時、その額は約5,000万ドルにのぼりました。ETHが1,851ドルで取引されている今日、盗まれたETHは66億ドルの価値があり、史上最も高価なハッキングの一つに数えられています。

しかし、ハッカーたちは億万長者になったわけではありません。資金はスマートコントラクトの契約条件に基づいて28日間保留されたため、The DAOとより広範なイーサリアムコミュニティは、どう対応すべきかを考えるのに約1カ月かけることができました。議論の末、Vitalik Buterin率いるイーサリアムコアチームはイーサリアムブロックチェーンをハードフォークしました。それは基本的に強盗が起こらなかったことを除いては、すべてが同じである新バージョンでした。

訳者注:
後方互換性のないソフトウェアアップデートのことです。一般的には、ノードが古いノードのルールと競合する方法で新ルールを追加した場合に発生します。新しいノードは、新しいバージョンを操作する他のノードとのみ通信できます。その結果、ブロックチェーンは分割され、古いルールと新しいルールの2つのネットワークが作成されます。
参照: ハードフォークとソフトフォークの説明

イーサリアムのコアチームは、人々を強制的に移行させることはできませんでした。人々は以下の質問に答えながら、自らの意思で投票しました。「ハッキングを消去することのメリットは、人々の介入がイーサリアムへの信頼を失うというデメリットを上回るか?」ほとんどの人にとって、答えはイエスでした。一部の人々はハッキングが行われたイーサリアムのブロックチェーンをイーサリアムクラシックと名前を変えて使い続けましたが、私たちが知っているイーサリアムはフォークされたバージョンです。現在のイーサリアムのブロックチェーンを見ても、強盗の痕跡はありません。危害も反則もありません。

From NFTs to DAOs

しかし、オフチェーンではDAOの初期の勢いが失われたという弊害がありました。ビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなどの言葉は知っていても、DAOが何なのかは知らないかもしれません。実際、最後の400語はおそらくちんぷんかんぷんだと思います。

しかし、DAOは5年後に多様なユースケース、成長するソフトウェアツールキット、そして新しいガバナンスとインセンティブモデルを伴って再登場しています。私がフォローしている多くの賢い人々がNFTの次はDAOだと最近話しています。

私はジルの話を聞いていました。それで深みに嵌ってみることにしたのですが、予想以上に深かったですね。

NFTは比較的親しみやすいものです。キャッチーな見出しをつけるのも簡単です。「高価なJPEG?笑」なぜならNFTは最も基本的なもので、デジタルメディアを所有・収集可能なものにし、人々は時にそれに大金を払うからです。

DAOはNFTよりも一段階上の存在で、DAOはNFTを所有したり、NFTを作成したり、NFT以外の様々なことを行うことができ、NFTよりも大きな変革の可能性を秘めています。NFTはデジタルメディアの一部ですが、DAOはメディア企業全体になる可能性があります。

DAOはより複雑であるため、ヘッドラインやサウンドバイト、プライスタグで表現するのはそれほど簡単ではありません。しかし、そのために私たちはここにいるのです。

これは、DAOとは何か、どのように機能するのか、Web3の他の部分とどのように相互作用するのか、どのような利点があるのか、そしてこれらすべてがどこにつながっていくのかを考える私自身のプロセスを紹介する探求の始まりです。まずはシンプルに、そして積み重ねていきましょう。

• DAOの登場
• イーサリアムとDAO
• UniswapとCoinbaseの比較
• SushiSwapのフォーク
• 漸進的な分散化(Progressive Decentralization)
• なぜDAOなのか?
• DAOの7つの力
• DAOの現在と未来

すべての道はDAOに通ず。「Secure the BaaG」、「Power to the Person」、「We’re Never Going Back」、「The Value Chain of the Open Metaverse」、「Conjuring Scenius」など、私が書いてきた多くの探求的な作品は、知らず知らずのうちにDAOに向かっていました。これらの作品はすべて「ますますデジタル化が進むグローバルな世界で、私たちはどのように働き、投資し、創造し、一緒に遊ぶのか」という問いかけをしていました。

「Power to the Person」が「一人でどれだけのことができるか」であるならば、「DAO」は「みんなでどれだけのことができるか」です。

でも、待ってください。DAOって何でしょう?

DAOの登場

注: Web3に馴染みのない方、または復習が必要な方は「The Value Chain of the Open Metaverse」をお読みください。

まず、定義から説明しましょう。Scalar CapitalのLinda Xie氏は、彼女の投稿「A Beginner’s Guide to DAO」の中で、良い定義をしています。

DAO (Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン上で実行される、ルールを共有して調整を行う、ミッションを中心に組織されたグループのことです。

DAOはブロックチェーン上で運営され、役員や理事ではなくステークホルダーに意思決定権を与えるという点で「分散型」であり、スマートコントラクトを使用するという点で「自律型」です。スマートコントラクトとは、一般にアクセス可能なブロックチェーン上で実行され、一定の条件を満たした場合に人間の介入を必要とせずに行動を起こすアプリケーションやプログラムのことです。

DAOはプロジェクトの資金調達、コミュニティの運営、価値の共有のための新しい方法です。DAOはトップダウンのヒエラルキー構造ではなく、Web3テクノロジーと急速に進化するガバナンスとインセンティブシステムを用いて、意思決定権と金銭的報酬を分配します。一般的には、参加、貢献、投資に応じてトークンを発行することで実現しています。トークンの保有者は、提案を提出したり、投票したり、利益を共有したりすることができます。

ブロックチェーン、NFT、スマートコントラクト、DeFiプロトコル、DAppsがツールであるとすれば、DAOはそれらを使って新しいものを生み出す集団です。それらが「何」であるならば、DAOは「どのように」であると言えます。彼らはWeb3版の企業やコミュニティです。そして、人々が新しい要素や構造を試していくうちに、DAOは今では予測できないような特性を持つようになるでしょう。

DAOは、私たちの働き方、グループでの意思決定、資源の配分、富の分配、そして世界の大きな問題を解決する可能性を秘めていると支持者は考えています。DAOは、そもそもイーサリアムが誕生した理由でもあります。

イーサリアムとDAO

そもそも最初からDAOは存在していました。イーサリアムの共同創設者であるVitalik Buterinは、2013年のEthereum White Paperの序文で、Decentralized Autonomous Organizations(分散型自律組織)について言及しました。

Vitalikは、彼が2011年に設立したBitcoin Magazineに以前書いた「Bootstrapping a Decentralized Autonomous Corporation」という記事を参照していました。その中で、彼は次のような質問をし、答えようとしています。

この問題を別の方向からアプローチすることはできないだろうか。つまり、ある種の専門的な仕事をするのに人間が必要だとしても、その代わりに管理者を方程式から取り除くことはできないだろうか?

この投稿の中でVitalikは、Bitshares社の創業者ダニエル・ラリマーの「ビットコインは実はプロトDAOのようなもので、従来の会社に相当する新しいタイプの分散型企業である」という考えに言及しています。

• 株式 ≈ ビットコイン
• 株主 ≈ ビットコインの所有者
• 従業員 ≈ マイナー、バリデーター
• 給料 ≈ チェーンにブロックを追加した際のビットコインの報酬
• マーケティング ≈ ビットコインを宣伝するレーザーアイを持った人たち

しかし、ビットコインには限界があります。ちょっと間抜けな感じがします。実際にはあまり知らず、自分自身を変えることもできず、実際には何もしません。「ただ存在しているだけで、それを認識するのは世界に委ねられている」のです。それは本当に金のようなもので、人々がそれに何かをしたり、価値を与えたりするのをじっと待っているのです。

もっと親身になって、同じくらい複雑な例え話をすると(これが賢い読者がいることの良い点です!)、ビットコインが人工狭義知能(ANI)のようなものだとしたら、DAOは人工一般知能(AGI)のようなものです。ビットコインはプログラムされたことを上手にこなしますが、DAOは理論的には何でも上手にこなすことができます。

Vitalikはイーサリアムを紹介したときに以下のように言いました。

イーサリアムが提供しようとしているのは、任意の状態遷移関数をエンコードするための「コントラクト」を作成するために使用できる、本格的なチューリング完全プログラミング言語が組み込まれたブロックチェーンであり、ユーザーは数行のコードでロジックを書き上げるだけで、上述したあらゆるシステムや、まだ想像していない他の多くのシステムを作成することができます。

ビットコインはデジタルマネー。イーサリアムはアプリケーションから組織全体まで、あらゆるものを作ることができるプラットフォームです。

イーサリアム、ビットコイン、その他のブロックチェーンは、Web3技術スタックのレイヤー1です。ビットコインの場合、すべての魔法はレイヤー1で起こりますが、イーサリアムの場合、魔法のほとんどはレイヤー2、プロトコルとスマートコントラクトのレイヤーで起こります。

ソース: readthedocs.ioExample

レイヤー2は、プロトコルやスマートコントラクトのレゴブロックを作るところで、無数の組み合わせや形態で配置することができ、アート作品の作成からクリプトの取引まで、サードパーティを必要とせずに直接行うことができます。

ZoraはNFTプロトコルで、クリエイターが自分の作品を作成し、所有し、販売することができます。Uniswapプロトコルは「開発者、リクイディティ・プロバイダー(LP)、トレーダー、誰もがオープンでアクセス可能な金融市場に参加できる 」分散型の取引所です。Mirrorの分散型出版プラットフォームは「私たちが自分の考えを表現し、共有し、収益化する方法に革命を起こす」としています。

Zora、Mirror、Uniswapは全てのプロトコルですが、全てのプロトコルが必ずしもDAOではなく、その逆もまた然りです。その違いを理解するために、まずは中央集権型プラットフォームと分散型プロトコルを比較し、分散型プロトコルがDAOに進化するまでを説明します。

UniswapとCoinbaseの比較

クリプト化されているからといって分散化されているとは限らないし、分散化されているからといってDAOであるとは限らないのです。

Coinbaseはクリプトの売買を可能にしますが、それ以外の点では、株式や債券、通貨、商品などを取引する中央取引所のようなものです。一定の価格で買いたい人と、その価格で売りたい人をマッチングさせ、取引を円滑に進めるために取引ごとに手数料を取るのです。

企業としてのCoinbaseは典型的な中央集権的企業のように振る舞います。投資家がいて、取締役会があり、CEOがいて、良くも悪くも組織の方向性を決める決定を下します。どのクリプトをプラットフォームに上場させるかは、ユーザーではなくCoinbaseが決定します。Coinbaseは中央集権的な性質を持っているため、理解と使用が比較的簡単です。銀行口座に接続して資金を預け、クリプトを買い始めるだけです。それはうまくいきます。CoinbaseはダイレクトリスティングIPOで上場し、会社の価値は1000億ドルを超えると思われます。

翻訳者注: Coinbaseは2021年4月14日に米ナスダックに上場し、時価総額は一時1120億ドル(約12兆2000億円)を超えた。参照

一方、Uniswapはイーサリアムブロックチェーン上で運営される分散型の取引所です。Coinbaseとは異なり、Uniswapにはウォレットすらなく、純粋な取引所であるため、ユーザーは自分のクリプトを別の場所で保有する必要があります。

Uniswapは分散型であるため取引対象を決定することも、流動性を提供することも、銀行口座を持つこともありません。その代わりに、Uniswapは利用可能な流動性に基づいて価格を設定するスマートコントラクトを通じて、ユーザーが直接取引できるAutomated Market Maker(自動化マーケットメーカー)です。中間業者は存在せず、Uniswapはどのトークンが取引できるかを選びません。

その代わり、誰もがUniswapのリクイディティ・プロバイダー(LP)になることができます。例えばETHとUSDTのような安定したコインなど、任意のERC20トークンのペアをロックアップします(文字通りデジタル金庫に入れてしばらく触らないようにします)。 その代わり、そのペアの流動性の割合を表す流動性トークンを受け取ります。誰かがUniswapで取引をする際には、0.3%の取引手数料を支払い、その手数料は流動性トークンの保有量に応じてリクイディティ・プロバイダーに支払われます(もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください)。

Uniswap自体は単なるプロトコルであり、課金される取引手数料は一切受け取りません。昨年末までUniswapはDAOではありませんでした。トークンもなければ、時価総額もありませんでした。

今日、Uniswapの1日の取引量は10億ドル近くになり、1日の取引手数料が3000万ドル近くになり、今日の時点で170億ドルの時価総額になっています。

何が変わったのでしょうか?8月に入ってから事態は荒れていきました。

SushiSwapのフォーク

二つの道が森の中で分岐していて、私は…
私は道なき道を進んだ。
それがすべての違いを生んだのだ。
— ロバート・フロスト「The Road Not Taken」より

分散型プロトコルの優れた点は、コード、スマートコントラクト、取引履歴が公開されており、誰もが見たり、監査したり、コピーしたりできることです。このオープン性がチェック&バランスの役割を果たし、良い行動やプロトコルの最適化を促すことになります。なぜなら、プロトコルを開発しているチームのやり方に反対する人や、もっと良い方法で価値を生み出すことができると考える人が多ければ、そのプロトコルをフォークすることができるからです。

それがSushiSwapを開発したチームであるChef Nomi(仮名)がUniswapに対して行ったことです。

Uniswapの最初の2年間は創設者であるHayden Adamsの決定と、その上に構築されたスマートコントラクトに支配された、シンプルなプロトコルとして存在していました。トークンをLPに発行し、取引手数料のシェアを得ていましたが、それらのトークンはプロトコル自体には結びついておらず、ホルダーにはUniswapのガバナンスに対する発言権はなく、リクイディティ・プロバイダー(LP)が流動性の提供を止めるとすぐにオーナーシップは消滅してしまいました。

SushiSwapはそれを変えるために、Uniswapの進化形として2020年8月にローンチされました。

ブログ記事でSushiSwapチームはこう書いています。「Uniswapのエレガントなコアデザインを受け継ぎ、プロトコルのデザインを改善するのに役立つと信じているコミュニティ指向の機能を追加し、関係者にさらなる利益を提供しました。」

この文章を伝統的な企業として公の場で書くことを想像してみてください。「フェイスブックのソースコードとデザインを使って…」 そんなことはあり得ません。しかし、Web3は違います。フォークは期待されているのです。

SushiSwapはUniswapと一点を除いてほぼ同じです。SushiSwapでは0.30%の手数料が分割され「0.25%はアクティブなリクイディティプロバイダーに直接支払われ、残りの0.05%はSUSHIに変換されて(明らかにSushiSwapを通して)SUSHIトークンホルダーに分配される」という点です。SUSHIトークンを導入し、0.05%をトークンに配分することで、トークン保有者は積極的に流動性を提供していなくても、アップサイドに参加できることになります。早期に参入したり、取引可能なトークンでSUSHIを購入したりすることができます。

なるほど、ではSushiSwapはDAOなのでしょうか?そうではありません。

SUSHIは経済的には参加できますが、(今のところ)ガバナンストークンではありません。ガバナンスフレームワークであるOmakase DAOに取り組んでいて、プロトコルのコントロールをコミュニティに委ねる予定です。今のところ、コミュニティはSnapshotの改善提案に投票できますが、投票に拘束力はありません。

さて、今はDAOとは何かわかりますね?Uniswapです。

SushiSwapのフォークへの対応として、フォークされたプロトコルに移行させないために、Uniswapは2020年9月16日に待望のUNIトークンを発表しました。SUSHIとは異なり、UNIトークンは保有者にガバナンス権(提案に対する投票権や承認権やパートナーシップなどにUNIを割り当てる権利)を与えます。その投稿の中で、Uniswapのチームはこう書いています。

高度に分散化された金融インフラへのプロダクトマーケットフィットを独立して繁栄してきたプラットフォームで証明したUniswapは、現在、コミュニティ主導の成長、開発、自立に向けて特に有利な立場にあります。

UNIを発行すると同時に、UNI保有者は以下の所有権を得ました。

• Uniswapガバナンス権
• UNIコミュニティの財務
• プロトコルフィースイッチ
• uniswap.eth ENS名
• Uniswapデフォルトリスト(tokens.uniswap.eth)
• SOCKS流動性トークン

Uniswapは今日のSUSHISwapのように0.05%をUNIに還元するわけではありませんが、180日間のタイムロックの遅延を条件に、コミュニティは「プロトコルフィースイッチ」を所有し、そのロックアップが終了したときにコミュニティはその可否を投票することができます。

では、その結果はどうなるのでしょうか?Uniswapはフィー・スプリットの変更なしにDAOになったプロトコルで、SushiSwapはUniswapをフォークして新しいフィー・スプリットを作りましたが、まだDAOにはなっていません。

この例は重要なポイントを浮かび上がらせます: クリプト会社は初日からDAOになる必要はありませんし、一般的にはそうすべきではありません。進化することができるのです。初日からDAOとしてスタートしたThe DAOとは異なり、UniswapとSushiSwapの両社はVariant FundのJesse Walden氏が提唱する 「Progressive Decentralization」を経ています。

漸進的分散化(Progressive Decentralization)

Jesse Waldenは、私がWeb3やオーナーシップエコノミーについて理解しようとする際、最もよく参考にする人物です。そこで、MirrorのPatrick Rivera氏に、私がずっと疑問に思っていた「委員会で優れたプロダクトをデザインすることができるのか?」 と質問したところ、意外にもWalden氏の「Progressive Decentralization」の記事を紹介してくれました。

Waldenは委員会でプロダクトをデザインしようとしたり、初日からトークンを与えたりすることは意味がないと書いています。その代わりにWaldenは、「持続可能で、コンプライアンスを守り、コミュニティが所有するプロダクトを構築することを目標」として、3段階のプロセスで分散化に取り組む枠組みを示しました。

1. プロダクトマーケットフィット(製品と市場の適合)
クリプトスタートアップの初期は、他のスタートアップの初期と同じように、小規模で集中したチームが、プロダクトマーケットフィットを見つけるまで、構築、学習、反復に全力を注ぎます。プロダクトがひどいものであれば、コミュニティはそれを救うことはできず、トークンの所有権にかかわらず、関心を失ってしまうでしょう。VC が勝者と敗者にどれだけの時間を費やすかを見てみましょう。

Web3のスタートアップはオープンな性質を持っているため、既存のスマートコントラクトやコード、プロダクトを新しいものにスナップさせることで、素早く構築し、テストすることができます。DeFiが「お金のレゴ」と呼ばれるのには理由があって、誰かが何か新しいものを作るたびに、それが他の人が使えるビルディングブロックになるからです。魔法は新しいレゴを作ることではなく、チームが既存のレゴを組み合わせることで生まれることが多いです。

Waldenは「この段階では分散化を装うべきではない。プロダクトマーケットフィットを見極めるためには、必然的にコアチームがすべてのプロダクトに関する決定を行うことになる」と述べています。

これは私にとってWeb3企業に対する考え方が変わるきっかけとなりました。私はすべてのクリプトスタートアップを「Decentralization Maximalist(分散化最大主義者)」と呼ばれるグループに分類していましたが、実際にはそれはごく一部であり、トップのクリプトスタートアップはそれよりも現実的です。

多くのクリプトスタートアップは、プロダクトマーケットフィットを発見するために、従来のベンチャーキャピタルから調達しています。これはProtocol LabsとCooleyが開発した構造で、Y CombinatorのSAFEに似ていますが、会社が将来トークンを発行した場合に株式ではなくトークンに変換するという点が異なります。

2.コミュニティへの参加
プロダクトマーケットフィットを達成した企業は、より多くのステークホルダーに直接参加してもらうための実験を始めるべきです。

Waldenはそれをオープンソースの開発になぞらえ、コミュニティからの参加を募り、報奨金や助成金などのインセンティブを与え、オープンに開発を進め、コミュニティを構築し、意思決定に大まかなコンセンサスを導入しました。TwilioやStripeのようなオープンソースではない企業でも、自社のAPIをベースに構築する開発者の間にコミュニティを形成することで、強い競争力を築きました。

しかし、StripeやTwilioは開発者コミュニティに株式を配布していませんが、現時点では、クリプト企業はコミュニティへの参加と忠誠心を高めるために、継続的な貢献のインセンティブとして手数料やトークンを使用する方法について考え始めることができますし、そうすべきです。

手数料の面では、ユーザーに手数料を課して貢献者に還元するか、プラットフォームが十分なネットワーク効果を構築するまで手数料を課さないかというトレードオフがあります。クリプトサービスはオープンソースなので、高い料金を請求すると誰かがサービスをフォークしてしまう可能性がありますが、貢献者に還元できる料金を請求しないということは、貢献を促すための資金がないということになります。ここでの均衡状態はプロトコルが最小限の抽出を行うこと、つまり、コストをカバーするのに十分な料金を徴収することです。例えば、Uniswapはわずか0.30%の課金で、それをリクイディティ・プロバイダーに直接支払っています。

トークンの面では、チームは少数のコミュニティメンバーにトークンを発行し、ガバナンスのダイナミクスを試すことができます。この期間はコアチームに十分な意思決定権を与え、自分たちのビジョンに向けて意思決定に影響を与えられるようにするためのトレーニング期間です。この時点で、コアチームと初期の貢献者への報酬と、継続的な参加へのインセンティブとのバランスを考慮したトークンの配布計画を発表し、フィードバックを募る必要があります。ゲーム理論、数学、観察された行動、会話などを用いて、新しいインセンティブモデルやガバナンスモデルが構築され、日々テストされています。これについては、別のエッセイで紹介します(または、a16zの「On Crypto Governance」を読んだり、ゲーム理論の適用に関するこのビデオを見たり、Maker DAOのようなホワイトペーパーを読んだりしてください)。

3. 十分な非中央集権化
チームが最初の2つのステップを成功させた後は、トークンをより広いコミュニティに配布する準備ができています。これは従来のIPO、SPAC、買収に代わるもので「コミュニティへのイグジット(Exit to Community)」と呼ばれ、プロジェクトや企業がDAOになるポイントです。

これはスマートコントラクトを起動することで行われます。このスマートコントラクトは、今日誰がどれだけのトークンを取得するか、将来どのようにトークンを配布するか、トークンの所有権がどのような経済的・ガバナンス権を与えるかなど、すべてを決定する事前に定義されたルールに基づいて、トークンを採掘・配布します。

この時点から、プロトコルの将来の開発はコミュニティの手に委ねられています。コアチームはコミュニティでの地位や保有しているトークンの数に応じて意思決定に影響を与えるかもしれませんが、スマートコントラクトで定められたルールと、コミュニティの投票に基づいて行われた修正が将来の変化を決定します。新製品、採用、料金変更、マーケティングキャンペーンなど、あらゆることが提案され、トークン保有者の投票によって決定されます。おめでとうございます: あなたのプロトコルはDAOに移行しました。

しかし、プロジェクトをアイデアからDAOに移行させる方法がわかったところで、私を悩ませていたもう一つの疑問に答えなければなりません。そもそも、なぜコミュニティ参加や分散管理が望ましいのでしょうか?

なぜDAOなのか?

もし、分散化最大主義者(Decentralization Maximalist)がWeb3コミュニティのごく一部に過ぎず、関係者のほとんどが論理的で経済的に動機づけられた行動者であると信じるならば(そうでなければ、なぜインセンティブデザインがこれほどコアになるのでしょうか)、DAO構造には経済的・戦略的な利点があるはずです。「Progressive Decentralization」でWalden氏は2つの利点を強調しています。

1. コミュニティの参加とコントロールにより、プラットフォームのリスクが限定される
Chris Dixon氏はプラットフォームはユーザーや開発者を惹きつけるためにオープンな状態でスタートし、一定の規模やスケールに達した時点で利益を上げ、株主価値を最大化するために抜き取りを開始すると主張しています。

DAOはステークホルダーの価値を最大化することを目的としています。ユーザーや貢献者は、投資家でありオーナーでもあります。コミュニティ・オーナーシップは、奇妙で斬新なヒッピーのように見えますが、実際には、少数の外部投資家や役員が会社に大金を投じて、会社が何をすべきかを決定するよりも、より自然なモデルです。私たちがこのようにしている理由は、これまでは多くの小規模なオーナーやステークホルダーが意思決定において発言権を持つように調整することが困難だったからです。しかし、テクノロジーの進歩により、より自然なモデルが可能になりつつあります。

これを逆に考えてみましょう。もし私たちが幅広いコミュニティ・オーナーシップから始めて、現在のような外部投資家によるコントロールのモデルを導入しようとしたらどうなるでしょうか?人々がそれを許すはずがないと思います。

DAOの構造はプロトコルやプラットフォームが時間をかけてステークホルダーと一致することを意味しています。

2. 規制コンプライアンス
クリプトトークンは、Howeyテストで証券とみなされる可能性があり、その場合、流通が困難で高価になりますが、情報の非対称性やコアチームへの依存を解消して価値を生み出すことができれば、トークンは証券から非証券に変わる可能性があると分析されています。
(トークンの発行を考えている場合は、弁護士に相談してください)。

DAOを検討する確かな理由は2つありますが、それだけで勢いのある経済エンジンを作った多くの起業家がコミュニティに支配権を譲るほど説得力があるとは思えません。自分の周りにシステムを構築して、将来的に価値を引き出せるかどうかをチェックするような自意識の高い人もいるかもしれませんが、それほど多くはないでしょう。DAOモデルには何か他の利点があるはずです。

ハミルトン・ヘルマー(Hamilton Helmer)は何と言うでしょうか?

DAOの7つの力

現在、DAOは実験段階にあります。コンセプト自体が、メタ・プロダクトマーケットフィットするように取り組んでいます。この段階では、多くの人々が好奇心と、コミュニティへの参加、創造、コラボレーションの新しいモデルを試してみたいという思いから、DAOを作成しています。DAOはより良いものである必要はなく、ただ新しいものであればいいのです。

しかし、長期的には、Vitalikのビジョンである「経営者のいない会社」を実現するために、DAOは他の組織やガバナンスの形態と比較して、競争力のある優位性を持つ必要があります。DAOになるということは、堀(moat)を作ることです。「競争の破壊的な力からビジネスのマージンを守るための障壁」です。ハミルトン・ヘルマー氏は「7 Powers」の中で競争優位性の源泉を7つ挙げています。

ここでは、DAO構造がチームの堀を築くのに役立ちそうな点を見てみましょう。

規模の経済: 3/5 Helmers (5点満点中3点)
生産量が増えれば増えるほど、単位当たりのコストが下がるビジネスのこと。

DAOは世界中の人々や組織に、より大きな目標に向かって資源をプールする手段と動機を与えます。理論的には新しいユニットを生産したり、新しいユーザーを受け入れたりするたびにコストを下げることができます。また、DAOの構造は従来の組織よりも摩擦が少なく、必要に応じて多くのサービスに支払うことで、人件費を削減することができるかもしれません。しかし、DAOには従来の構造に比べて明確な利点がないため、3/5点としました。

ネットワーク経済: 5/5 Helmers
新しいユーザーがネットワークに参加すると、各ユーザーにとってサービスの価値が高まる。

ネットワーク経済はDAOが成功し、既存の企業を打ち負かす可能性がある領域です。これは成功したDAOにとって最強の堀となるでしょう。

ネットワーク経済の典型的な例はFacebookで、友人が参加するたびに、彼らと話したり、彼らが何をしているかを見ることができるので、その価値が高まります。DAOはステートフルなプロトコルと貨幣を直接組み合わせたクリプトネットワーク上に構築されており、ネットワーク効果をステロイドのように発揮します。DAOではユーザーがオーナーとなり、誰かがDAOに参加したりプロトコルを使用したりするたびに、そのユーザーのトークンの価値が理論上高くなります。さらに、DAOが強くなると、その上にさらに多くの人が集まり、さらに強くなり、さらに多くの人が集まる、というようにDAOが強くなっていきます。イーサリアムにはWindowsのようなプラットフォームネットワーク効果がありますが、金融のステロイドが入っています。いったんDAOが勢いづくと、それを元に戻すのは非常に難しいでしょう。

カウンターポジショニング: 4/5 Helmers
新規参入者が新しい優れたビジネスモデルを採用すると、既存のビジネスにダメージを与えることが予想されるため、既存企業は真似しない。

DAOモデル自体が他の点で有利であれば、DAOはDAOであるということだけで既存の企業に対して強い堀を築くことができます。FacebookのDAO版は、ユーザーが新しいメンバーを招待したり、自分のデータを共有したり、コンテンツに貢献したりすることで報酬を得ることができ、ZuckがFacebookをDAOにする可能性は雪だるま式に増えるわけではないという点で、Facebookに対して堀を築くことができます。この堀は伝統的な企業に対する堀である一方で、他のDAOに対する堀であるとは限らないため、5番目のHelmersをわずかに逃しています。

スイッチングコスト: 2/5 ヘルマー
追加購入の際に代替業者に切り替えることで発生する、顧客が期待する価値の損失。

これはやっかいなものです。一方で、DAOのメンバーは、あるDAOで所有しているトークンが競合するDAOに乗り換えると価値が下がる可能性があるため、スイッチングコストが発生します。しかし、SushiSwapの例が示すように、ブロックチェーンベースのプロトコルは、既存のプロトコルと互換性のある、非常に類似した新しいプロトコルにフォークすることができます。これにより、プロトコルがステークホルダーを満足させ、十分な報酬を得るために常に競争するというダーウィンの力学が生まれます。これは堀としては低いスコアですが、スイッチングコストの低さはDAOの美しさの一部です。

ブランド: 4/5 Helmers
売り手の歴史的な情報に基づいて、客観的に同一の提供物に高い価値を永続的に帰属させること。

特定のブランドが同じ商品に高い値段をつけられる理由の一つは、人々が自分のアイデンティティをそのブランドに結びつけているからである。ティファニーのブレスレットを身につけていると、普通のシルバーのブレスレットとは何かが違います。同じように、人々は自分が貢献しているメンバーやオーナーであるDAOに自分のアイデンティティを結びつけます。ビットコインがDAOだとすると、ビットコインを所有することでアイデンティティを確立している人たちのことを考えてみてください。彼らはビットコインを市場に出したり、押し目買いをしたり、信者ではない人を無料で叩いたりしています。

これでは5番目のHelmerにはなれません。なぜなら、それは両極端だからです。感情が高ぶり、DAOがメンバーの同意を得られないことをすれば、すぐに逃げ出してしまうかもしれません。イーサリアムのエコシステムを発展させるための助成金を授与するMoloch DAOには「rage quit」メカニズムが組み込まれていて、メンバーは特定のコミュニティの決定に同意できない場合、それを通して怒りをもって辞め、トークンを撤回することができるようになっているほどです。

追い詰められたリソース: 4/5 Helmers
価値を高めることができる魅力的な資産を、魅力的な条件で優先的に入手することができる権利。

DAOのコミュニティはその追い詰められた資源である。多くのDAOは人々を雇用したり、貢献に対して報酬を与えたりしていますが、DAOやその上に構築されたブロックチェーンの価値を高めるためだけに人々がDAOに貢献しているケースも多くあります。Moloch DAOではETHの価値を高めるために、メンバー自身がプールしたETHから助成金を与えたり、イーサリアムをより良くするために無償で作業をする提案をしたりすることができます。それらのエンジニアの時間は独立して価値があります。

プロセスパワー: 2/5 Helmers
コスト削減や優れたプロダクトを可能にする、企業の組織や活動のセットが組み込まれていること。

これも「エコシステムにとっては良いが、堀にとっては悪い」という評価です。DAOは、スマートコントラクト自体にプログラムされているため、本質的に文字通り組織や活動のセットが組み込まれていますが、同じ理由で、他のDAOやプロトコルに対して防御することはできません。レゴや取扱説明書を公開することの難しさは、誰もがプロセスをコピー&ペーストできるということです。最高のガバナンスとインセンティブの構造はコピーされ、微調整されるでしょう。

DAOのユーザー、貢献者、より広範なエコシステムのステークホルダーに経済的インセンティブを与え、それらのステークホルダーにDAOのガバナンスに対する発言権を与えることで、DAOは非常に強力な堀を構築する機会を得ます。最も強力なのはネットワーク効果で、いったんDAOが脱出速度に達すると、それを取り壊すのは難しいでしょう。特に、コミュニティのガバナンスによって、コミュニティが最も長期的な価値を生み出すと信じる方法で適応し、進化することができるはずだからです。

とはいえ、DAOはその堀を利用して安住することには注意が必要です。価値を引き出しすぎたり、少数のステークホルダーに権力を与えすぎたり、動きが遅すぎたり、その他にもコミュニティの十分に大きな部分を怒らせるようなことをしてはいけません。そんなことをすれば、他の人に隙を与えることになるからです。フォークの脅威は常に存在しています。適者生存なのです。

DAOの現在と未来

DAOは、The DAOのハッキングの問題から這い上がってきた後、自分たちの足場を見つけ始めたところです。非常に早い時期です。DeepDAOによると、上位のDAOの運用資産は9億5200万ドルに過ぎません。これは、すべてのDAOの資産を合わせると、時価総額で86番目に価値のあるクリプトにランクされることになります。

しかし、すでに魅力的な実験や動きが行われています。

Louis Grxは以下のようないくつかの異なるタイプのDAOを紹介しています。

クリエイターDAO: Jarrod Dicker氏、Patrick Rivera氏、Brian Flynn氏はクリエイターが自分の作品を所有し、その利益を真のファンと共有する可能性について書いています。現在、Creator DAOの主な例はありませんが、今日NFTを制作している人たちの中には、明日、ファンに購読ではなく投資をさせるDAOを立ち上げる人もいるのではないでしょうか。

プロトコルDAO: 金利プロトコルのCompoundや流動性プロトコルのAaveのようなDeFiプロトコルにより、クリプト所有者は何十億ドルもの価値のある資産から収入を得て、財務的報酬やガバナンスをコミュニティと共有することができます。

トークン化されたコミュニティ: 先週、ソーシャルマネープラットフォーム「Roll」がハッキングされ、トークン化されたコミュニティは打撃を受けました。しかし、DAOとは異なり、ハッキングはトークン化されたコミュニティを消滅させるのではなく、バラバラになったコミュニティとそのメンバーが集まって、影響を受けた人々を全体的にまとめることで、コミュニティをより強くしました。リチャード・キムのRNGはトークン化されたコミュニティの代表的な例であり、Miquelaの生みの親であるトレバー・マクフェドリーズが設立したFWBもそうである。

投資家DAO: ここで私たちは一周します。LAOはDAOが失敗したところを拾っています。LAOのメンバーは14,809ETHを拠出し、Flamingoのような他のDAOを含むブロックチェーンベースのプロジェクトに投資しています。

NFTと同様に、現在行われている初期の実験は将来の可能性のほんの一部である可能性が高い。DAOが数千億ドル規模の上場企業と競争するのは、数十年後かもしれません。例えば、分散型ライドシェアリングネットワークや、最小限の抽出手数料を徴収するアプリストアなどですが、私たちが考えるよりも早く実現するかもしれません。ジャックは最近絶好調で、クリプトを愛しています(最初のツイートをNFTとして販売したこともあります)。もしかしたら、Twitterの分散型ネットワーク「Blue Sky」を立ち上げ、その所有権とガバナンスをコミュニティに委ねることができるかもしれません。

小さく始まって進化する可能性の方が高いでしょう。今日、バランスシート上でビットコインを購入し、NFTを作成している企業(Charminタコベルがそうですね)は近い将来、小さなプロジェクトや会社の機能のためにDAOを実験的に導入するかもしれません。より多くのDAOツールが登場すれば、小規模なテストを行うことはますます容易になるでしょう。すでに、DAOレゴキットは充実してきています。

新しいツールは、より多くのアクセスを意味します。Seed Clubは、そのすべてをナビゲートすることもできます。新しい企業が、構築、実験、学習、反復、リミックス、再構築、テスト、プロダクトマーケットフィットの発見、コミュニティへの参加、そしていつの日かコミュニティへの還元を行うことが、これまで以上に容易になります。

この分野のエネルギーは伝染しやすく、コミュニティは非常に包括的で親切です。クリプトの残高が膨らんでいるからかもしれませんが、彼らは昨年のクリプトの冬にも建設を続け、次の冬が来ても建設を続けるでしょう。

ETHを買わされて深みに嵌った後、私は以前よりも混乱し、以前よりも好奇心が強くなり、この空間で人々が一緒に何を構築するかを見ることに非常に興奮しています。私は自分でCreator DAOを作ってみたいと思っています。DAOが最終的にどのような形になるのか、どのようなガバナンスやインセンティブモデルが主流となり、最もエネルギーを集めるのか、いつ1兆ドル規模のDAOが登場するのかはわかりませんが、必然的なもののように感じています。

DAOは斬新で、ちょっとしたヒッピーのように感じられます。プロジェクトや会社の所有権や支配権をコミュニティに与えるというのは、物事のやり方としては間違っていると思います。しかし、考えれば考えるほど、ステークホルダー・オーナーシップは自然な状態であり、このように広く分散したガバナンスやオーナーシップを調整する技術やモデルはこれまでなかったのではないかと思います。

タブラ・ラサと現代のテクノロジーがあれば、取締役会のコントロールが大きく集中しているシステムよりも、DAOのようなシステムを設計することができると思います。

私は、私たちがそこに到達すると信じ始めています。十分な情熱、ツール、発言力、インセンティブを持った賢い人々が、友好的な適者生存の文化と相まって、次の大きなものへの道を迅速に実験することができるのです。そうなれば、世界は大きく変わるでしょう。

透明性と価値の共有の精神に基づき、私がこの作品の研究に使用したすべてのソース資料のドキュメントを紹介します。DAO Links. クリプトの深みへの旅をお楽しみください。

Web3をサポートしてくれたPatrick、Jess、Ryan、そして編集を担当してくれたDanに感謝します。

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